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特許7450765マルチスパンファイバリンク上の分散型音響検知のための中継器設計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】マルチスパンファイバリンク上の分散型音響検知のための中継器設計
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240308BHJP
   H04B 10/071 20130101ALI20240308BHJP
   H04B 10/291 20130101ALN20240308BHJP
【FI】
G01H9/00 E
H04B10/071
H04B10/291
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022568575
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021031659
(87)【国際公開番号】W WO2021231340
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】63/023,286
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/314,006
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】イプ、 エズラ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ユエ-カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤマン、 ファティ
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 慎介
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-247878(JP,A)
【文献】特開2010-011021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0123467(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0241468(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0111112(US,A1)
【文献】欧州特許第03172533(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
H04B 10/071
H04B 10/291
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型光ファイバ検知/分散型音響検知システムであって、
各スパンの後段に配置されたインライン光増幅器が設けられた複数のファイバスパンを有する、ある長さの双方向光ファイバケーブルであって、少なくとも1つのファイバが第1の方向に光を伝搬し、少なくとも1つのファイバが第2の方向に光を伝搬し、前記第2の方向が前記第1の方向と対向する方向に伝搬するように構成されたケーブルと、
前記第1の方向に光を伝搬するファイバと、前記第2の方向に光を伝搬するファイバとを含む双方向光ファイバケーブルと光通信する分散型光ファイバ検知/分散型音響検知インタロゲータと、
DFOSインタロゲータシステムによって受信されたDFOS検知データを分析するように構成されたインテリジェントアナライザと、
前記光ファイバケーブルに沿った点に位置する1つ以上の中継器であって、複数のレイリー結合ユニット(RCU)と複数のレイリードロップユニット(RDU)とを含む中継器とを有し、
前記RCUおよびRDUは、レイリー後方散乱を対向する方向に伝搬する光ファイバに選択的にルーティングするように組み合わせて動作するように構成されており
前記RDUは、プローブパルス、通信信号および対向伝搬ファイバのレイリー後方散乱を通過させる一方、前記プローブパルスから生じるレイリー後方散乱をドロップするように構成されており、対向伝搬ファイバ上のRCUにスイッチングパルスを提供するように構成されており、
前記RCUは、前記プローブパルスおよび通信信号を通過させ、前記RDUによって前記対向伝搬ファイバ上にドロップされたレイリー後方散乱を受信するように構成され、前記RCUは、隣接するスパンにおける前記レイリー後方散乱と、同じ対向伝搬ファイバの上りスパンにおいて生成されるレイリー後方散乱とを組み合わせるために、前記RDUによって提供される前記スイッチングパルスに応答するように構成されている、検知システム。
【請求項2】
請求項に記載の検知システムにおいて、
前記RDUは、光信号をルーティングするための光サーキュレータと、プローブパルスに対応するレイリー後方散乱を抽出するための光バンドパスフィルタとを含む、検知システム。
【請求項3】
請求項に記載の検知システムにおいて、
前記RDUは、前記RCUにドロップする前にレイリー後方散乱を増幅する光増幅器を含むことを特徴とする検知システム。
【請求項4】
請求項に記載の検知システムにおいて、
前記RCUは、プローブパルスおよび通信信号から前記対向伝搬ファイバのレイリー後方散乱を抽出するための波長マルチプレクサおよびデマルチプレクサを含む、検知システム。
【請求項5】
請求項に記載の検知システムにおいて、
前記RDUおよびRCUは、インライン光増幅器の後段に、前記ケーブルのある点に配置される、検知システム。
【請求項6】
請求項に記載の検知システムにおいて、
前記RCUは、インライン光増幅器の前段の前記ケーブルのある地点に配置され、一方、前記RDUは、前記インライン光増幅器の後段の前記ケーブルのある地点に配置される、検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバ検知に関し、より詳細には、マルチスパンファイバリンク上の分散型音響検知に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、分散型光ファイバ検知(DFOS)およびより特に分散型音響検知は、任意の数の重要な用途に適用された場合に、大きな有用性を示している。そのような重要な適用可能性を考慮すると、分散型音響検知における改善は、当技術分野における歓迎すべき進歩を表す。
【発明の概要】
【0003】
本技術分野の進歩は、分散型音響検知を支持するマルチスパンファイバリンク上に強化された信号対雑音を提供するシステム、方法、および構造に向けられた本開示の態様に従ってなされる。
【0004】
従来技術とは対照的に、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、レイリー結合ユニット(RCU)およびレイリードロップユニット(RDU)を組み込んだ新規な海底中継器を採用する。これらの中継器は、好ましくは検知ファイバと同じ海底ケーブル内に配置される隣接する逆伝搬光リンクにルーティングすることによって、レイリー後方散乱信号の損失を有利に低減する。驚くべきことに、そのような構成は、インタロゲータによって受信されるレイリー後方散乱の信号対雑音比(SNR)を劇的に改善し、したがって、感度を増加させること、および/または達成可能な検知範囲を拡張することによって、音響検出の性能を改善する。また、RCUとRDUは、専用検知チャネルと共伝搬する電気通信信号によって見られる挿入損失を最小限に抑えるように設計されている。
【0005】
エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)の出力を各方向に相互接続する従来技術とはさらに対照的に、および従来技術の構成の代わりに、本開示の他の態様によるレイリー結合ユニット(RCU)とレイリードロップユニット(RDU)とは、光帯域通過フィルタ、光マルチプレクサ/デマルチプレクサ、低コストスイッチおよびフォトダイオードを組み込んで、レイリー後方散乱によって受ける損失と、同一伝搬する電気通信チャネルに関連する任意の挿入損失との両方を最小化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0007】
図1】本開示の態様によるデータ伝送だけでなく双方向における同時分散型音響検知を可能にする双方向ファイバリンクに採用される例示的な中継器アーキテクチャの概略図を示す。
【0008】
図2】マルチスパンファイバリンクのための従来のDASアーキテクチャを示す図である。
【0009】
図3】本開示の態様による、レイリー後方散乱が増幅される前の、結合器およびスパン損失の有無にかかわらず、マルチスパンファイバリンク上のコヒーレントOTDRについてのシミュレートされたSNR対送信距離のプロット/スペクトルを示す図である。
【0010】
図4】本開示の態様による、コヒーレントOTDRの改善されたSNRを示す、中継器アーキテクチャのための例示的な改善された構成の概略図を示す図である。
【0011】
図5】本開示の態様による、対向する方向に伝搬するリンクのためのRCUのためのスイッチングパルスを提供しながら、次のスパンのレイリー後方散乱をドロップする機能を有する例示的なレイリードロップユニット(RDU)の概略図を示す図である。
【0012】
図6】本開示の態様による、対向する方向に伝搬するリンクの観点から、上りスパンのレイリー後方散乱とともに最近のスパンのレイリー後方散乱を挿入しながら、プローブパルスおよび通信信号を通過させる機能を持つ例示的なレイリー結合ユニット(RCU)の概略図を示す図である。
【0013】
図7】本開示の態様による、RCUがインライン増幅器の前段に配置され、レイリー後方散乱が増幅される前に余分なスパン損失を有利に回避するRDUによってドロップされる例示的な代替アーキテクチャの概略図を示す図である。
【0014】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は、様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0016】
さらに、本明細書に列挙されるすべての実施例および条件付き言語は、読者が本開示の原理および本発明者によって当該技術分野を促進するために寄与される概念を理解するのを助けるための教育目的のためにのみ意図され、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0017】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を列挙する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的均等物の両方を包含することを意図する。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素の両方を含むことが意図される。
【0018】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図は、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことが当業者には諒解されよう。
【0019】
本明細書で明示的に指定されない限り、図面を含む図は、一定の縮尺で描かれていない。
【0020】
いくつかの追加的背景として、我々は、まず、分散型光ファイバ検知(DFOS)が、温度(分散型温度検知-DTS)、振動(分散型振動検知-DVS)、伸張レベルなどの環境条件を検出するための重要で広く使用されている技術であり、それは、今度はインタロゲータに接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所であることに着目することから始める。周知のように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、続いて受信された信号を検出/分析するシステムである。信号を分析し、ファイバの長さ方向に沿って遭遇する環境条件を示す出力を生成する。そのように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱のようなファイバ内の反射から生じることがある。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号にすることもできる。一般性を損なうことなく、以下の説明では、同様のアプローチを転送された信号にも適用することができるが、反射された信号を仮定する。
【0021】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、周期的に光パルス(または任意の符号化信号)を生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータを含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って搬送される。
【0022】
ファイバの長さ方向に沿った位置で、信号の小さな部分が反射され、インタロゲータに戻って搬送される。反射された信号は、インタロゲータが検出するために使用する情報、例えば、機械的振動を示すパワーレベル変化を搬送する。
【0023】
反射された信号は、電気領域に変換され、インタロゲータの内部で処理される。パルス注入時間および時間信号が検出されることに基づいて、インタロゲータは、信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを決定し、それにより、ファイバに沿った各位置の活動を検知することができる。
【0024】
インライン増幅を伴うマルチスパンファイバリンクにおけるレイリー後方散乱のコヒーレント検出を採用した分散型音響検知(DAS)は、部分的に、低い光信号対雑音比のため、実装が困難である。インライン増幅器がアイソレータを有するため、既存のDAS対応海底ケーブルは、レイリー後方散乱を別のファイバにルーティングするために結合器を採用し、このファイバは、次に、戻り信号をインタロゲータパルスとは対向する方向に搬送する。増幅前の結合器損失とファイバスパン損失との付加的な組み合わせは、低いSNRをもたらす。ここで示すように、本発明の中継器の設計および実装は、従来技術を悩ませるような過剰な損失を実質的に排除する。
【0025】
レイリー後方散乱を用いたコヒーレント光時間領域反射率測定(OTDR)は、分散型音響検知(DAS)のためのよく知られた方法であり、前方ラマン増幅と遠隔光ポンプ増幅器(ROPA)とによって支援される非中継ファイバリンクと同様に非増幅ファイバリンク上で実証されている。データ伝送と同様に、このようなシステムの達成可能範囲は、光信号対雑音比(OSNR)によって制限される。
【0026】
最近、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)を用いたインライン増幅を有する長距離光ファイバリンク上でDASを実装することが提案されている。EDFAの出力にアイソレータが存在するため、レイリー後方散乱は、インタロゲータが戻された検知信号を受信するための問い合わせ信号とは対向する方向の伝搬をサポートする異なるファイバにルーティングされなければならない。これは、地上と海底との両方のシステムで一般的なように、ファイバケーブルが双方向伝送を提供する場合に可能である。
【0027】
図1は、双方向ファイバリンクに採用される例示的な中継器アーキテクチャの概略図を示す。このアーキテクチャは、従来技術で知られているように、双方向における同時分散型音響検知ならびにデータ伝送を可能にする。
【0028】
図に例示的に示されるように、従来技術の中継器構成は、各中継器において2つの対向伝搬EDFAの出力を接続する結合器を含む。ファイバスパンn上でL-R方向に進行するプローブパルスによって生成されるレイリー後方散乱は、結合器によってR-Lリンクを介してインタロゲータに戻される。
【0029】
図2は、マルチスパンファイバリンクのための従来のDASアーキテクチャを示す。従来の従来技術のDAS構成と比較すると、サーキュレータのリターンポートを介してレイリー後方散乱を受けながら、光検知ファイバ内に同時にインタロゲータプローブパルスを発射するためにサーキュレータを使用する、増幅されていないリンクのための従来技術のDAS構成である。しかし、この図に示すように、レイリー後方散乱は別のファイバを介して受信される。
【0030】
当業者は、図1に例示的に示される中継器構成に関する1つの問題は、レイリー後方散乱が、増幅される前に、2つのカプラならびにファイバスパンn-1全体を通過しなければならないことを容易に認識し、理解するであろう。合成損失は通常25~35dBの範囲である。レイリー後方散乱がすでに弱いため、これらの挿入損失は、結果として生じる検知信号を検知不能にする。
【0031】
すべてのスパンが実質的に等しい長さであり、EDFAの利得がスパン損失と厳密に等しい海底ファイバケーブルについて、コヒーレントOTDRの最小信号対雑音比(SNR)は、
【数1】
と示すことができる。ここで、αはファイバ減衰であり、neffは伝搬の実効指数であり、Lはスパン長であり、ξはレイリー散乱係数(典型的には-70~-80dB/mのオーダーである)であり、αc図1に示される結合器の分割比である。
【0032】
プローブパルスのピーク電力および持続時間はそれぞれPtxおよびTsであり、一方、Gcodeは符号化利得である(個々のパルスではなくパルスの符号化シーケンスの送信を仮定する)ことに留意されたい。プローブパルスの帯域幅内で各EDFAによって付加される増幅された自然放出(ASE)雑音の分散は、次式で与えられる。
【数2】
【0033】
式(1)の分母の第1項は、前方伝搬(L-R)方向に増幅器が付加したASE雑音がレイリー散乱によって反射されることに由来する。分母の第2項は、リターンパス(R-L)内のEDFAによって追加されたASEノイズに由来する。
【0034】
図3は、本開示の態様による、レイリー後方散乱が増幅される前の、結合器およびスパン損失の有無にかかわらず、マルチスパンファイバリンク上のコヒーレントOTDRについてシミュレートされたSNR対伝送距離のプロット/スペクトルを示す。著者らは、このプロットが、減衰0.16dB/kmおよびレイリー係数-76dB/mの標準的な純粋シリカコアファイバの60kmスパンを仮定していることに留意する。プローブパルスは0dBmのピークパワーを持つと仮定し、100nsのパルス持続時間は10mの空間分解能でDASを許容し、Gcode=20dBを仮定した。EDFAは5dBの雑音指数を持ち、ファイバリンクには10%の結合器を用いた。
【0035】
レイリー後方散乱が増幅前に2つの結合器とスパン損失を通過しなければならないとき、わずか1スパン後でもSNRは0dB以下であることを観測したことに注意されたい。しかしながら、有利には、本開示の態様による本発明者らの新しい中継器構成は、増幅前にこれらの損失を有利に除去し、結果として、~30dBのSNRの大幅な改善をもたらす。
【0036】
図4は、本開示の態様による、コヒーレントOTDRの改善されたSNRを示す、中継器アーキテクチャのための例示的な改善された構成の概略図を示す。その図に例示的に示されるように、各方向において、EDFAの後段に「レイリー結合ユニット」(RCU)が続き、「レイリードロップユニット」(RDU)がある。
【0037】
プローブパルス、通信信号およびL-R方向が「前方」方向である視点を使用するレイリー後方散乱信号の伝搬を考える。RDUは、ファイバスパンnで運ばれるレイリー後方散乱を、後方方向に伝搬するR-Lリンクに向ける。図5には、RDUの多数の同等の実装のうちの1つが例示的に示されている。
【0038】
観察され得るように、図5は、本開示の態様による、対向する方向に伝搬するリンクのためのRCUのためのスイッチングパルスを提供しながら、次のスパンのレイリー後方散乱をドロップする機能を有する例示的なレイリードロップユニット(RDU)の概略図を示す。
【0039】
動作上、レイリー後方散乱は、R-LリンクのRCUに提供され、それは、全てのn+1からNspanの上りスパンのレイリー後方散乱と結合される。RCUの多数の等価な実装の1つが、図6に例示的に示されている。
【0040】
図6は、本開示の態様による、対向する方向に伝搬するリンクの観点から、上りスパンのレイリー後方散乱とともに最近のスパンのレイリー後方散乱を挿入しながら、プローブパルスおよび通信信号を通過させる機能を持つ例示的なレイリー結合ユニット(RCU)の概略図を示す。
【0041】
図5に例示的に示すRDU構成では、サーキュレータによって、R-Lリンクの順方向伝搬プローブパルス、通信信号およびレイリー後方散乱がL-R方向に継続することが可能になることに留意されたい。これらの順方向伝搬波長の各々は、それ自身のそれぞれのレイリー後方散乱を生成し、それは、サーキュレータのドロップポートに送られ、図中のそれぞれの破線の矢印によって示される。光バンドパスフィルタ(OBPF)は、プローブパルスによって生成される関心成分を選択する。この信号は、増幅される前に隣接リンク上のRCU、RDUおよびファイバスパンn-1を通過しなければならないため、任意の増幅器を挿入して、ドロップされた後方散乱の電力を所望のレベルまで上昇させることができる。
【0042】
RDUは、光後方散乱信号をドロップするだけでなく、R-Lリンク上のRCUにスイッチングパルスを提供する。
【0043】
L-Rプローブパルスが時間tnでファイバスパンnの入力に到達する状況を考える。スパンnのレイリー後方散乱は、tnからtn+2Tnまで存在する。ここで、Tn=(neff/c)Lnは、そのスパンの伝搬遅延である。
【0044】
一方、プローブパルスは時間tn+Tnでファイバスパンn+1の入力に到達し、スパンn+1のレイリー後方散乱は、スパンnのレイリー後方散乱が終了した後であるtn+2Tnよりも早く開始しない。ここでは、増幅器、RCUおよびRDUの遅延は無視できるものとする。
【0045】
RDUは、tnからtn+2Tnまでの持続時間を有するスイッチングパルスを提供することによって、R-LリンクのRCUを支援する。この間、RリンクのRCUはRDUの光出力を通過させる。それ以外の場合は、n+1からNspanの上りスパンのレイリー後方散乱を通過させる。
【0046】
スイッチングパルスは、図5に示すような結合器を用いてL-R信号の一部をタップし、プローブパルスを選択するためにOBPFを用いることによって発生させることができる。パルス持続時間TはTnよりもはるかに狭いため、パルスを正しい持続時間に引き延ばすために「スイッチングパルス生成」(SPG)ユニットが必要である。有利には、SPGユニットは、アナログまたはデジタルエレクトロニクスのいずれかを使用して実装されてもよい。
【0047】
RCUの例示的な実装が図6に示されている。前述したように、RCUは、R-LプローブパルスおよびR-L通信信号を通過させるように機能し、一方、L-R内のスパンnのレイリー後方散乱と、L-Rリンクにn+1からNspanのスパンによって生成されるレイリー後方散乱とを組み合わせる。当業者には理解されるように、これは、波長マルチプレクサ(多重)、波長デマルチプレクサ(分離)および2×1スイッチを用いて達成することができる。このような構成では、多重および分離は、L-Rリンクのレイリー後方散乱を他の波長から分離する。
【0048】
当業者は、図4図5、および図6に例示的に示される本発明の配置/アーキテクチャ/構成の利点が多数あることを容易に理解し、認識するであろう。第1に、RCUおよびRDU内の構成要素は、通信信号によって見られるように挿入損失を最小化するように選択される。これは、DASをサポートする結果として、中継器における電力効率の損失を有利に減少させる。例えば、RCU内のサーキュレータを結合器に置き換えることができたが、これは、通信信号上の挿入損失を増加させるとともに、RCUに引き渡されるレイリー後方散乱の電力を減少させ、DASをノイズの影響をより受けやすくすることになる。
【0049】
当業者に理解される別の利点は、増幅器の後段にRCUおよびRDUを配置することによって、その寄与する挿入損失が、EDFAの出力電力をわずかに増加させるだけで克服できることである。通信信号がまだDASの有無にかかわらず同じ電力でEDFA入力に到着するため、伝送到達距離に損失は無い。
【0050】
最後に、2×1のスイッチを使用して、本開示の態様による上りスパン、システム、方法、および構造と、最近のスパンのレイリー後方散乱とを組み合わせることによって、各々によって見られる挿入損失を有利に最小化する。スイッチを結合器に置き換えることは可能であるが、このような配置は挿入損失を増加させ、DASチャネルに対するSNRの低下を引き起こす可能性が高いことに注意した。
【0051】
ここに示すように、通信チャネル、L-R DASおよびR-L DASに割り当てられる波長は任意であることに留意されたい。図4に示す例示的な割り当ては、RCUにおける多重および分離の設計を単純化する。スルーチャネルが周波数において常に同じ側面にあるからである。
【0052】
本開示の態様による、および本明細書に例示的に示されるような中継器アーキテクチャの可能な欠点は、L-Rプローブパルスによって生成されるファイバスパンnのレイリー後方散乱が、増幅される前に、L-RリンクのRDU、R-LリンクのRCUおよびRDU、およびファイバスパンn-1を通過する必要があることであることに留意されたい。RCUとRDUの挿入損失(サーキュレータ、OBPF、スイッチ、および分離によって生じる)は最小限に抑えることができるが、スパンn-1のファイバ減衰は大きくなる可能性がある。これは、DAS操作のための許容できないOSNRをもたらし得る。
【0053】
図5では、オプションのEDFAがRDUに示されている。この時点で電力をブーストすることは、中継器上の電力要求を増加させる代償として、検知チャネルのOSNRを改善するのに役立つであろう。レイリー後方散乱パワーは通信チャネルと比較して弱いため、必要な追加ポンプパワーは無視できるはずである。また、このオプションのEDFA用のポンプは、図4に例示的に示すインラインR-L EDFAの不作動ポンプから来てもよい。
【0054】
図7の代替アーキテクチャに示されるインライン増幅器の前段にRCUを配置することによって、RDU内の追加のEDFAを回避することも可能である。図7は、例示的な代替アーキテクチャの概略図を示し、RCUは、インライン増幅器の前段に配置され、レイリー後方散乱は、RDUによってドロップされ、有利には、余分なスパン損失を回避し、その後、RCUは、本開示の態様に従って増幅される。
【0055】
このような代替アーキテクチャは、レイリー後方散乱に対するスパンn-1の大きなファイバ減衰を避けるために、増幅前の通信チャネルの電力のわずかな減少(従って伝送到達距離をわずかに犠牲にする)をトレードオフすることに留意されたい。
【0056】
いくつかの特定の例を使用して本開示を提示したが、当業者は、本教示がそのように限定されないことを認識するであろう。したがって、この開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7