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特許7450779クロノグラフ機構を備える時計ムーブメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】クロノグラフ機構を備える時計ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04F 7/08 20060101AFI20240308BHJP
   G04B 18/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
G04F7/08 Z
G04B18/02 Z
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023025936
(22)【出願日】2023-02-22
(65)【公開番号】P2024002897
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】22180625.0
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】メディ・デンデン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-526958(JP,A)
【文献】特開2004-309339(JP,A)
【文献】特開2002-107472(JP,A)
【文献】特表2019-536036(JP,A)
【文献】スイス国特許出願公開第716841(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F 7/04- 7/08
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(100)であって、
- 前記時計ムーブメントの時分割に専用のランニングトレイン(110)であって、第1のエネルギ源(50)によって駆動される、ランニングトレイン(110)と、
- 前記ランニングトレイン(110)を調整する調整部材(120)と、
- 第2のエネルギ源(40)によって駆動されるクロノグラフトレイン(140)を備えるクロノグラフ機構(130)と、
- 要求に応じて、前記クロノグラフトレイン(140)を前記調整部材(120)にカップリングして、前記調整部材(120)を使用して、前記クロノグラフトレイン(140)を調整するように構成されたカップリング(150)と、
- 前記カップリング(150)と協働するクロノグラフ開始/停止制御デバイス(250)とを備え、
前記カップリング(150)は、
- 前記ランニングトレイン(110)によって駆動され、前記調整部材(120)によって調整される回転スピードを有する第1の入力ホイール(151)と、
- 前記クロノグラフトレイン(140)と噛み合う出力ホイール(152)と、
- 前記クロノグラフ開始/停止制御デバイス(250)と直接的または間接的に協働するアイドルホイールである第2の入力ホイール(153)とを備える差動カップリングであり、
前記カップリング(150)は、前記第2の入力ホイール(153)の回転が、前記クロノグラフ開始/停止制御デバイス(250)によって阻止されたとき、前記調整部材(120)によって調整された前記回転スピードで、前記出力ホイール(152)を回転させるように構成された駆動アセンブリ(165,166)を備えることを特徴とする、時計ムーブメント(100)。
【請求項2】
前記差動カップリング(150)は、差動ボールカップリングであることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項3】
前記第1の入力ホイール(151)は、前記ランニングトレイン(110)に組み込まれることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項4】
前記出力ホイール(152)は、前記第1の入力ホイール(151)と平行であり、前記出力ホイール(152)は、直接的または間接的に前記クロノグラフトレイン(140)と噛み合うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項5】
前記第1の入力ホイール(151)と前記出力ホイール(152)とは同軸であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項6】
前記駆動アセンブリは、前記第2の入力ホイール(153)によって移動され、前記第1の入力ホイール(151)と前記出力ホイール(152)との間でロールするように構成されたボール(165)と、前記第1の入力ホイール(151)および前記出力ホイール(152)を互いに押し付けるように構成された耐久要素(166)とによって形成され、前記第1の入力ホイール(151)および前記出力ホイール(152)と接触する前記ボール(165)の、滑りのないローリングを生成することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項7】
前記耐久要素(166)は、スプリングワッシャであることを特徴とする、請求項6に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項8】
前記ランニングトレイン(110)は、時間ディスプレイ(111)および分ディスプレイ(112)を駆動することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項9】
前記第2のエネルギ源(40)は、前記クロノグラフトレイン(140)に専用であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項10】
前記第2のエネルギ源(40)は、バレルであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項11】
前記クロノグラフトレイン(140)は、クロノグラフ分カウンタ(141)およびクロノグラフ秒カウンタ(142)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項12】
前記クロノグラフトレイン(140)は、分数秒カウンタ(143)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項13】
前記クロノグラフ機構(130)は、前記クロノグラフトレイン(140)に含まれる前記クロノグラフカウンタ(141,142,143)のうちの少なくとも1つをゼロリセットするためのゼロリセット機構(200)を備えることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項14】
前記調整部材(120)は、発振周波数が5Hz以上の高周波発振器(121)を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項15】
前記クロノグラフ開始/停止制御デバイス(250)は、開始/停止制御部材(252)が起動したときに、前記第2の入力ホイール(153)の自由回転を阻止するように構成されたカップリングヨーク(251)を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項16】
請求項1または請求項2に記載の時計ムーブメント(100)を備える計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロノグラフ機構を備える時計ムーブメントに関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、ムーブメントおよび時刻の表示に専用の、1次エネルギ源ではない補助エネルギ源と協働するクロノグラフ機構を備える時計ムーブメントに関する。
【0003】
より具体的には、本発明は、クロノグラフ機構が起動したときに、時計ムーブメントの調整部材を、クロノグラフ機構に迅速にカップリングするためのカップリングに関する。
【0004】
本発明はさらに、そのような時計ムーブメントを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0005】
クロノグラフ機構を備える既存の機械式時計ムーブメントは、クロノグラフ機構の異なる起動状態間、たとえば、クロノグラフの動作状態と停止状態との間で、ムーブメントの速度の変動、または調整部材の振幅の変動などの欠点を有する。
【0006】
ムーブメントの速度、および調整部材の等時性におけるこれら変動は、消費されるエネルギが、トリガされるクロノグラフ機構の機能(特に、動作中または停止中であるか)に応じて、同じではないという事実に、少なくとも部分的による。
【0007】
この欠点を克服するために提案された解決策のうちの1つは、クロノグラフトレインを、時計ムーブメントのランニングトレインの1次エネルギ源から分離し、このエネルギ源をランニングトレインおよび時間ディスプレイのための専用にすることからなる。したがって、時計ムーブメントのパワーリザーブは、クロノグラフ機構の起動状態(動作中または停止中)に依存しない。
【0008】
そのような解決策は、特にスイス特許第703797B1号に記載されている。この文献は、時間ディスプレイおよび分ディスプレイを起動させるランニングトレインを駆動するメインバレルと、ランニングトレインを調整する、バネ付きてんぷおよび脱進機を備える調整部材との使用のみならず、クロノグラフ機構と、クロノグラフトレインの駆動とに専用の二次バレルの使用について記載している。クロノグラフ機構が、クロノグラフ開始/停止制御デバイスを介して起動されると、ムーブメントの調整部材を使用して、クロノグラフトレインをカップリングおよび調整するために、カップリングが使用される。
【0009】
提案されたカップリングは、ジャンピング秒ピニオンシャフトを移動させるカップリングホイールセットと協働するがんぎ車と一体化されたウルフ歯と、ジャンピング秒ピニオンと一体化された6つの歯を有する第1のスターホイールと、ジャンピング秒ピニオンシャフトに自由に取り付けられ、第2のスターホイールにおける長方形のスロットを通過するピンによって第1のスターホイールに接続される6つの歯を有する第2のスターホイールとを備える。
【0010】
しかしながら、そのようなカップリングは製造が複雑で扱いにくく、時計ムーブメントにおいて非常に敏感な部分であるがんぎ車をより複雑にする必要がある。
【0011】
さらに、そのようなカップリングのエネルギ消費は、クロノグラフムーブメントが動作中または停止中であるかによって異なり、問題を引き起こす。
【0012】
したがって、時刻を表示するためのランニングトレインの1次エネルギ源ではないエネルギ源によって駆動されるクロノグラフ機構を備える時計ムーブメントを改良する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】スイス特許第703797B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これに関連して、本発明は、クロノグラフ機構と、クロノグラフ機構を必要に応じて瞬時にかつ小さい動力エネルギ消費で、ムーブメントの調整部材にカップリングできるようにする、カップリングとを備える時計ムーブメントを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この文脈において、本発明は、
- 前記時計ムーブメントの時分割に専用のランニングトレインであって、第1のエネルギ源によって駆動される、ランニングトレインと、
- ランニングトレインを調整する調整部材と、
- 第2のエネルギ源によって駆動されるクロノグラフトレインを備えるクロノグラフ機構と、
- 要求に応じて、クロノグラフトレインを調整部材にカップリングして、調整部材を使用して、クロノグラフトレインを調整するように構成されたカップリングと、
- カップリングと協働するクロノグラフ開始/停止制御デバイスとを備える時計ムーブメントに関し、
カップリングは、
- 前記ランニングトレインによって駆動され、調整部材によって調整される回転スピードを有する第1の入力ホイールと、
- 前記クロノグラフトレインと噛み合う出力ホイールと、
- クロノグラフ開始/停止制御デバイスと直接的または間接的に協働するアイドルホイールである第2の入力ホイールとを備える差動カップリングであり、
カップリングは、第2の入力ホイールの回転が、クロノグラフ開始/停止制御デバイスによって阻止されたとき、調整部材によって調整された前記回転スピードで、出力ホイールを回転させるように構成された駆動アセンブリを備える、ことを特徴とする。
【0016】
前の段落で述べた特徴に加えて、本発明による時計ムーブメントは、個別に、または技術的に可能な任意の組合せに従って考えられる、以下、すなわち、
- 差動カップリングは、差動ボールカップリングである、
- 第1の入力ホイールは、ランニングトレインに組み込まれる、
- 出力ホイールは、第1の入力ホイールと平行であり、出力ホイールは、直接的または間接的にクロノグラフトレインと噛み合う、
- 第1の入力ホイールと出力ホイールとは同軸である、
- 駆動アセンブリは、第2の入力ホイールによって移動され、第1の入力ホイールと出力ホイールとの間でロールするように構成されたボールと、第1の入力ホイールおよび出力ホイールを互いに押し付けるように構成された耐久要素とによって形成され、第1の入力ホイールおよび出力ホイールと接触するボールの、滑りのないローリングを生成する、
- 耐久要素は、スプリングワッシャである、
- 前記ランニングトレインは、時間ディスプレイおよび分ディスプレイを駆動する、
- 第2のエネルギ源は、クロノグラフトレインに専用である、
- 前記第2のエネルギ源はバレルである、
- クロノグラフトレインは、クロノグラフ分カウンタおよびクロノグラフ秒カウンタを備える、
- クロノグラフトレインは、分数秒カウンタを備える、
- クロノグラフ機構は、クロノグラフトレインに含まれるクロノグラフカウンタのうちの少なくとも1つをゼロリセットするためのゼロリセット機構を備える、
- 調整部材は、発振周波数が5Hz以上の高周波発振器を備える、
- クロノグラフ開始/停止制御デバイスは、開始/停止制御部材が起動したときに、第2の入力ホイールの自由回転を阻止するように構成されたカップリングヨークを備える、の中から、1つまたは複数の補完的な特徴を有することができる。
【0017】
本発明の別の態様は、本発明によるそのような時計ムーブメントを備える計時器に関する。計時器は、好ましくは、本発明による時計ムーブメントを受け入れて収容するように構成された腕時計ケースを備える腕時計である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の目的、利点、および特徴は、以下の図を参照して以下に与えられる詳細な説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明による時計ムーブメントの概略平面図である。
図2図2は、図1に示される本発明による時計ムーブメントの機能ブロック図である。
図3図3は、本発明による時計ムーブメントの差動カップリングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
すべての図において、別段の指示がない限り、共通の要素に同じ参照番号が付される。
【0021】
図1は、本発明による時計ムーブメント100の概略平面図を示す。
【0022】
図2は、図1に示される本発明による時計ムーブメント100の機能ブロック図であり、後述される時計ムーブメント100の様々な要素間の相互作用を示している。
【0023】
本発明による時計ムーブメント100は、時分割に専用のランニングトレイン110を備え、1次エネルギ源と呼ばれる第1のエネルギ源50によって駆動される。
【0024】
第1のエネルギ源50は、たとえば、ランニングトレイン110に動力を供給するためのエネルギのリザーブを構成するバレルである。
【0025】
ランニングトレイン110は、時刻表示の針、特に、時間目盛りと協働する時針111、分目盛りと協働する分針112、秒目盛りと協働する秒針113、別称トロテウス針を駆動する。
【0026】
ランニングトレイン110は、従来、時刻表示の時針111を移動させる時間ホイール、時刻表示の分針112を移動させる分ホイール、および時刻表示の秒針113を移動させる秒ホイールを備える。
【0027】
ランニングトレイン110はさらに、必要に応じて、中間ホイールセットを備えることができる。
【0028】
ランニングトレイン110は、調整部材120によって調整される。
【0029】
調整部材120は、従来、発振器121および脱進機122を備えている。
【0030】
発振器121は、電気的または機械的な発振器である。
【0031】
発振器121は、たとえば、機械式ばねてんぷ型の発振器である。そのようなばねてんぷは、たとえば、2.5から4Hzの間の発振周波数を有する。
【0032】
たとえば、発振器121は、高周波の電気的または機械的発振器であり、すなわち、4Hzを超える周波数で発振する。
【0033】
たとえば、発振器121は、高周波の電気的または機械的発振器であり、すなわち、5Hz以上の周波数で発振する。
【0034】
時計ムーブメント100はさらに、クロノグラフ機構130を備える。
【0035】
クロノグラフ機構130は、1次エネルギ源50とは異なる、2次エネルギ源と呼ばれる第2のエネルギ源40によって駆動されるクロノグラフトレイン140を備える。
【0036】
したがって、クロノグラフトレイン140全体は、ランニングトレイン110を起動させる第1のエネルギ源とは独立して、第2のエネルギ源40によって動力を供給される。
【0037】
好ましくは、この第2のエネルギ源40は、クロノグラフトレイン140の駆動に専用である。しかしながら、この第2のエネルギ源40は、時計ムーブメント100に追加される複雑機構に電力を供給するためにも使用できる。
【0038】
第2のエネルギ源40は、たとえば、クロノグラフトレイン140に専用のエネルギのリザーブを構成するバレルである。したがって、バレルは、クロノグラフ機構130を動作させるために必要なエネルギを提供するように寸法決めされる。
【0039】
したがって、第1のエネルギ源50および第2のエネルギ源40がバレルである場合、クロノグラフトレイン140によって消費されるエネルギのすべてが、第2のバレル40によって出力され、第1のバレル50のエネルギのすべてが、ランニングトレイン110のために単独で使用され、これは、ランニングトレイン110のパワーリザーブを増加させる。
【0040】
特に、クロノグラフトレイン140は、クロノグラフ分カウンタ141およびクロノグラフ秒カウンタ142を備える。
【0041】
クロノグラフ分カウンタ141は、クロノグラフ分針145を駆動する分カウンタホイール144を備える。
【0042】
クロノグラフ秒カウンタ142は、クロノグラフ秒針147を駆動する秒カウンタホイール146を備える。
【0043】
図示される例では、クロノグラフトレイン140はさらに、クロノグラフジャンピング秒針149を駆動するジャンピング秒ピニオン148を有する、分数秒カウンタ143別称ジャンピング秒カウンタを備える。
【0044】
クロノグラフトレイン140は、異なるカウンタ141,142,143間の所望の比率を取得するために、中間クロノグラフホイールセットを備える。さらに、クロノグラフトレイン140はさらに、ムーブメントの必要性およびアーキテクチャ、ならびに時計ムーブメント100内の分カウンタ141、秒カウンタ142、およびジャンピング秒カウンタ143のレイアウトに応じて、追加の中間ホイールセットを備えることができる。
【0045】
分カウンタ141、秒カウンタ142、およびジャンピング秒カウンタ143は、通常、(図2のブロック図で見ることができる)クロノグラフカウンタゼロリセット機構200によって、カウンタを、基準位置にゼロリセットするために、たとえば、カタツムリ、ハートなどの形をしたゼロリセットカムを備える。
【0046】
ゼロリセット機構200は、従来、たとえば、押しボタンまたは起動ピンを介して、ユーザによって操作されるゼロリセット制御210を備える。ゼロリセット制御210は、異なるカウンタ141,142,143それぞれのゼロリセットカムと協働する、ゼロリセットハンマ220と直接的または間接的に協働する。
【0047】
ゼロリセット機構200は、当業者に知られている従来のクロノグラフカウンタゼロリセット機構であるため、本発明を実施するためにさらなる説明を必要としない。
【0048】
時計ムーブメント100は、
- クロノグラフトレイン140を調整できるようにするために、必要に応じてクロノグラフトレイン140を、時計ムーブメント100の調整部材120にカップリングし、その結果、様々なクロノグラフカウンタ141,142,143を、調整部材120とリズムを合わせて調整し、
- クロノグラフトレイン140と、クロノグラフカウンタ141,142,143の様々な針145,147,149とを停止させるために、クロノグラフトレイン140を調整部材120から切り離すように構成されたカップリング150を備える。
【0049】
したがって、カップリング150は、クロノグラフトレイン140が、必要に応じて、クロノグラフ開始/停止制御デバイス250を介して脱進機122に動力学的に連結されることを可能にする。
【0050】
図3は、本発明による時計ムーブメント100のカップリング150の断面図である。
【0051】
カップリング150は差動カップリングであり、その第1の入力は、ランニングトレイン110であり、その第2の入力は、クロノグラフ開始/停止制御デバイス250であり、その出力は、クロノグラフトレイン140である。
【0052】
より具体的には、差動カップリング150は、
- ランニングトレイン110によって駆動され、したがって、調整部材120によって調整される回転スピードを有する、第1の入力ホイール151と、
- 前記クロノグラフトレイン140と噛み合う出力ホイール152と、
- クロノグラフ開始/停止制御デバイス250と直接的または間接的に協働するアイドルホイールである第2の入力ホイール153とを備える。
【0053】
出力ホイール152は、第1の入力ホイール151と平行である。
【0054】
好ましくは、第1の入力ホイール151と出力ホイール152とは同軸である。
【0055】
好ましくは、第1の入力ホイール151、第2の入力ホイール153、および出力ホイール152は同軸である。
【0056】
差動カップリング150はさらに、第2の入力ホイール153の回転が、クロノグラフ開始/停止制御デバイス250によって阻止されたときに、調整部材120によって調整された前記回転スピードで、出力ホイール152を回転させるように構成された駆動アセンブリ165,166を備える。
【0057】
好ましくは、差動カップリング150は、差動ボールカップリングである。したがって、駆動アセンブリは、ボール165と、スプリングワッシャ166によって形成される耐久要素との協働によって形成され、第1の入力ホイール151および出力ホイール152上でのボール165の滑りのないローリングを保証する。
【0058】
第1の入力ホイール151は、カップリングシャフト155と一体化されている。入力ピニオン161は、入力ピニオン161および第1の入力ホイール151が、入力ホイールセットを形成するように、カップリングシャフト155にリベット留めされる。
【0059】
たとえば、入力ホイールセットは、ランニングトレイン110に組み込まれる。例示的な実施形態では、入力ホイールセットは、ランニングトレイン110の秒ホイールセット115と、脱進機122と噛み合った増倍ホイールセット116との間に挿入される。したがって、入力ホイールセットは、第1のエネルギ源50と調整部材120との間のギアトレイン全体によって形成される第1の動力学的連鎖に組み込まれる。
【0060】
より具体的には、第1の入力ホイール151は、増倍ホイール116と噛み合い、入力ピニオン161は、ランニングトレイン110の秒ホイールセット115と噛み合う。
【0061】
差動カップリング150の出力ホイール152は、クロノグラフトレイン140の動力学的連鎖の末端にある。したがって、第2の動力学的連鎖が、第2のエネルギ源40と、差動カップリング150、特に出力ホイール152との間に形成される。
【0062】
出力ホイール152は、たとえば、ボールベアリング156によって、カップリングシャフト155の周りに固定されずに取り付けられる。
【0063】
第2の入力ホイール153は、カップリングシャフト155の周りを自由に回転するように取り付けられたアイドルホイールである。第2の入力ホイール153は、第1の入力ホイール151と出力ホイール152との間のカップリングを制御する。
【0064】
出力ホイール152の回転を駆動するボール165は、第2の入力ホイール153のプレート157を通して配置される。ボール165は、第1の入力ホイール151に、および出力ホイール152に押し付けられる。
【0065】
第1の入力ホイール151および出力ホイール152は、スプリングワッシャ166が、第1の入力ホイール151のプレート上、および出力ホイール152のプレート上での、ボール165の滑りのないローリングを保証することによって、応力を加えられたままにされる。
【0066】
したがって、そのような差動カップリング150は、クロノグラフ機構130がクロノグラフ開始/停止制御デバイス250によって起動されるとき、クロノグラフトレイン140が、出力ホイール152によって、第1の入力ホイール151を介して調整部材120によって調整されるランニングトレイン110に、カップリングされるようにする。
【0067】
クロノグラフ開始/停止制御デバイス250は、第2の入力ホイール153の自由回転を阻止するように構成されたカップリングヨーク251を動作させる、開始/停止制御部材252を備える。開始/停止制御部材252は、開始制御および停止制御のアセンブリによって形成することができ、2つの制御は、必ずしも単一の部材に組み合わされる必要はない。
【0068】
第2の入力ホイール153の回転を阻止することによるカップリングにより、出力ホイール152は、ランニングトレイン110の調整部材120の調整を受けて回転するように駆動される。
【0069】
そのような駆動は、第1の入力ホイール151および出力ホイール152のそれぞれのプレート上でのボール165の、滑りのないローリングによって可能である。
【0070】
図示される構成では、第1の入力ホイール151および出力ホイール152は、同じスピードおよび回転速度を有するが、反対方向に回転する。
【0071】
クロノグラフ機構130が停止すると、カップリングヨーク251が、秒入力ホイール153を解放して、秒入力ホイール153が自由に回転できるようにする。その結果、出力ホイール152と第1の入力ホイール151とのカップリングが解除される。クロノグラフ機構130のこの停止位置では、出力ホイール152が停止しており、2つの入力ホイール151,153が回転運動している。
【0072】
クロノグラフ開始/停止制御デバイス250はさらに、クロノグラフが停止されたときにクロノグラフカウンタを所定の位置に保持するための従来の手段を備えることができる。
【0073】
本願で提示されるようなボールを含むことが好ましいそのような差動カップリング150は、たとえば、専用のエネルギ源40を有するクロノグラフ機構130などの複雑機構を、必要に応じて調整することを可能にする。
【0074】
したがって、そのような差動カップリング150は、それに関連する同期の複雑さを伴う第2の調整部材を使用する必要性をなくす。
【0075】
本発明による差動カップリング150は、複雑機構、この場合はクロノグラフ機構130を、非常に迅速にカップリングおよびカップリング解除することを可能にする。
【0076】
本発明による差動カップリング150は、カップリングのカップリング位置(アクティブなクロノグラフ機構)とカップリング解除位置(非アクティブなクロノグラフ機構)との間で克服される、信頼できるクリアランスによる、反応性があり高精度のカップリングである。
【0077】
その結果、そのような差動カップリングは、高周波発振器および/または、秒分割を表示するフードロヤンテ(ジャンピング秒)を備えるクロノグラフ機構を備える時計ムーブメントに特に適合される。より具体的には、これら2つの例示的な用途は、非常に短い時分割(1秒未満)および/または高周波発振器の発振周波数が高いことを考えると、そのようなカップリングからの高度な反応性を必要とする。
【0078】
本発明はさらに、そのような時計ムーブメントを備える計時器、たとえば、腕時計に関する。
【符号の説明】
【0079】
40 第2のバレル、第2のエネルギ源
50 第1のバレル、第1のエネルギ源
100 時計ムーブメント
110 ランニングトレイン
111 時針
112 分針
113 秒針
115 秒ホイールセット
116 増倍ホイール
120 調整部材
121 発振器
122 脱進機
130 クロノグラフ機構
140 クロノグラフトレイン
141 分カウンタ
142 秒カウンタ
143 分数秒カウンタ、ジャンピング秒カウンタ
144 分カウンタホイール
145 クロノグラフ分針
146 秒カウンタホイール
147 クロノグラフ秒針
148 ジャンピング秒ピニオン
149 クロノグラフジャンピング秒針
150 差動カップリング
151 入力ホイール
152 出力ホイール
153 秒入力ホイール
155 カップリングシャフト
156 ボールベアリング
157 プレート
161 入力ピニオン
165 ボール
166 スプリングワッシャ
200 ゼロリセット機構
210 ゼロリセット制御
220 ゼロリセットハンマ
250 停止制御デバイス
251 カップリングヨーク
252 停止制御部材
図1
図2
図3