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特許7450790射撃訓練装置、射撃訓練方法、及び射撃訓練プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】射撃訓練装置、射撃訓練方法、及び射撃訓練プログラム
(51)【国際特許分類】
   F41G 3/26 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
F41G3/26 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023180966
(22)【出願日】2023-10-20
【審査請求日】2023-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394025094
【氏名又は名称】三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 尚雄
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-018893(JP,A)
【文献】特開2004-108740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41G 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
追尾センサを備える射撃管制装置を用いた砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置であって、
設定シナリオに従って移動する模擬目標から前記追尾センサが信号を受信したものとして、前記追尾センサが前記模擬目標から受信した信号を模擬的に目標信号として生成する目標信号発生部と、
前記目標信号から前記模擬目標に対応する信号を検出し、検出した信号に基づいて前記模擬目標に対応する観測値を算出する目標検出部と、
算出された観測値に基づいて前記模擬目標の位置及び速度を算出する目標追尾部と、
第1弾着点として、算出された前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第1弾着点生成部と、
第2弾着点として、前記設定シナリオに基づく誤差を含まない前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第2弾着点生成部と、
前記第1弾着点と前記第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する弾着誤差評価部と
を備える射撃訓練装置。
【請求項2】
前記射撃訓練装置は、さらに、
前記設定シナリオに従って前記模擬目標の位置を逐次算出するシナリオ発生部
を備える請求項1に記載の射撃訓練装置。
【請求項3】
前記射撃訓練装置は、さらに、
砲射撃の訓練を実施する者が砲射撃の訓練中に操作する操作盤と、
砲射撃の訓練の状況を表示する表示器と
を備える請求項1又は2に記載の射撃訓練装置。
【請求項4】
前記射撃訓練装置は、さらに、
前記追尾センサが前記模擬目標から受信した信号に対応する画像であって、前記表示器に表示する画像である表示画像に対応する画像信号を生成する画像生成部
を備える請求項3に記載の射撃訓練装置。
【請求項5】
前記設定シナリオは、前記模擬目標の周囲における環境条件の変化により不要信号が発生するシナリオを示し、
前記目標信号発生部は、前記目標信号に対して前記設定シナリオが示す不要信号を含める請求項1又は2に記載の射撃訓練装置。
【請求項6】
前記目標信号発生部は、前記目標信号を生成する際に、前記射撃管制装置から前記模擬目標までの距離に応じた範囲である雑音生成範囲における受信機雑音を模擬する請求項1又は2に記載の射撃訓練装置。
【請求項7】
前記目標検出部は、前記模擬目標に対する測距及び測角を模擬し、前記模擬目標に対する測距において測距誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬し、前記模擬目標に対する測角において測角誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬する請求項1又は2に記載の射撃訓練装置。
【請求項8】
前記目標検出部は、前記模擬目標に対応する信号対雑音比に応じた測距誤差及び測角誤差を含む観測値を生成する請求項7に記載の射撃訓練装置。
【請求項9】
追尾センサを備える射撃管制装置を用いた砲射撃の訓練を模擬するコンピュータである射撃訓練装置が、
設定シナリオに従って移動する模擬目標から前記追尾センサが信号を受信したものとして、前記追尾センサが前記模擬目標から受信した信号を模擬的に目標信号として生成し、
前記目標信号から前記模擬目標に対応する信号を検出し、検出した信号に基づいて前記模擬目標に対応する観測値を算出し、
算出された観測値に基づいて前記模擬目標の位置及び速度を算出し、
第1弾着点として、算出された前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出し、
第2弾着点として、前記設定シナリオに基づく誤差を含まない前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出し、
前記第1弾着点と前記第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する射撃訓練方法。
【請求項10】
追尾センサを備える射撃管制装置を用いた砲射撃の訓練を模擬するコンピュータである射撃訓練装置が実行する射撃訓練プログラムであって、
設定シナリオに従って移動する模擬目標から前記追尾センサが信号を受信したものとして、前記追尾センサが前記模擬目標から受信した信号を模擬的に目標信号として生成する目標信号発生処理と、
前記目標信号から前記模擬目標に対応する信号を検出し、検出した信号に基づいて前記模擬目標に対応する観測値を算出する目標検出処理と、
算出された観測値に基づいて前記模擬目標の位置及び速度を算出する目標追尾処理と、
第1弾着点として、算出された前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第1弾着点生成処理と、
第2弾着点として、前記設定シナリオに基づく誤差を含まない前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第2弾着点生成処理と、
前記第1弾着点と前記第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する弾着誤差評価処理と
を前記射撃訓練装置に実行させる射撃訓練プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射撃訓練装置、射撃訓練方法、及び射撃訓練プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、射撃訓練を模擬する射撃訓練装置を開示している。当該射撃訓練装置によれば、模擬的な射撃訓練において、目標に対してロックオン可能となった場合に、射撃に必要な主要条件が成立したものとして射撃手順を確認することができる。目標は擬似移動目標とも呼ばれる。
当該射撃訓練装置は、プロジェクタと、訓練卓と、火器の照準位置をコンピュータへ入力する手段と、ビデオ映像発生部とを備える。コンピュータは、照準位置が入力された場合にビデオ映像発生部を用いて当該照準位置及び当該照準位置の周辺のビデオ映像を発生させる。また、当該射撃訓練装置は、訓練卓の表示部にビデオ映像を表示する手段と、スクリーン上における目標の位置と照準位置とに基づいて火器の照準が目標をロックオンしたか否かを判定する手段とを備えている。プロジェクタは、目標をスクリーン上に投影する。訓練卓は火器を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-018893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示している射撃訓練装置では、目標の映像をロックオンすれば以降の射撃手順を確認することができる。しかしながら、当該射撃訓練装置には、射撃管制装置による捕捉及び追尾状況により射撃の精度が変化するような仕組みはない。そのため、当該射撃訓練装置によれば、射撃管制装置の追尾センサの状況に基づく射撃精度を評価する訓練を実行することができない。即ち、特許文献1には、射撃訓練を模擬する射撃訓練装置において、当該射撃訓練装置に対応する射撃管制装置における目標観測誤差に起因する射撃精度を評価することができないという課題がある。
本開示は、砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置において、当該射撃訓練装置に対応する射撃管制装置における目標の捕捉及び追尾状況に応じて射撃の精度が変化することを模擬することにより、より現実的な砲射撃の訓練を実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る射撃訓練装置は、
追尾センサを備える射撃管制装置を用いた砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置であって、
設定シナリオに従って移動する模擬目標から前記追尾センサが信号を受信したものとして、前記追尾センサが前記模擬目標から受信した信号を模擬的に目標信号として生成する目標信号発生部と、
前記目標信号から前記模擬目標に対応する信号を検出し、検出した信号に基づいて前記模擬目標に対応する観測値を算出する目標検出部と、
算出された観測値に基づいて前記模擬目標の位置及び速度を算出する目標追尾部と、
第1弾着点として、算出された前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第1弾着点生成部と、
第2弾着点として、前記設定シナリオに基づく誤差を含まない前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第2弾着点生成部と、
前記第1弾着点と前記第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する弾着誤差評価部と
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、弾着誤差評価部が第1弾着点と第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する。ここで、第1弾着点は模擬的な誤差を含む模擬目標の位置及び速度に基づく弾着点である。第2弾着点は誤差を含まない模擬目標の位置及び速度に基づく弾着点である。
従って、本開示によれば、砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置において、当該射撃訓練装置に対応する射撃管制装置における目標の捕捉及び追尾状況に応じて射撃の精度が変化することを模擬することにより、射撃精度又は命中率などの評価を可能とする、より現実的な砲射撃の訓練を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】射撃管制装置200の構成例を示す図。
図2】追尾レーダの動作状態を示す図。
図3】実施の形態1に係る射撃訓練装置100の構成例を示す図。
図4】目標信号の様子を示す図。
図5】弾着点の誤差を示す図。
図6】実施の形態1に係るコンピュータ1のハードウェア構成例を示す図。
図7】実施の形態1に係る射撃訓練装置100の動作を示すフローチャート。
図8】実施の形態1の変形例に係るコンピュータ1のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略又は簡略化する。図中の矢印はデータの流れ又は処理の流れを主に示している。また、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。
【0009】
実施の形態1.
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
***構成の説明***
本実施の形態は、砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置100に関する。射撃訓練装置100は、センサとして追尾レーダを備える射撃管制装置200を用いた砲射撃の訓練を模擬する装置である。射撃訓練装置100は、訓練用の模擬目標に対する捕捉追尾状況を考慮し、射撃精度の評価することができる。射撃訓練装置100は、目標がロックオン状態となる条件を模擬する以外に、目標の信号対雑音比に応じた捕捉及び追尾精度も模擬する。追尾レーダは、目標の捕捉及び追尾を行うセンサであり、追尾センサとも呼ばれる。砲射撃の訓練は砲を管制する訓練である。砲射撃の訓練を単に訓練と表記することもある。砲射撃の訓練は射撃訓練とも呼ばれる。
【0011】
図1は、射撃管制装置200の具体例を示している。以下、射撃管制装置200の構成要素を説明する。
アンテナ12は、電磁波を送受信する。
アンテナ制御器13は、アンテナ12を駆動する。
サーキュレーター14は、送受信信号を切り替える。
送信機15は、レーダ送信波を生成する。
受信機16は、目標24からの反射波を受信する。
信号処理器17は、受信信号に基づいて目標信号を検出し、検出した目標信号に基づいて測距及び測角によりレーダ観測値を算出する。測角方式は、具体例として追尾レーダとして一般的なモノパルス方式である。受信信号をレーダ受信信号と呼ぶこともある。
計算機18は、算出されたレーダ観測値に基づいて目標の追尾処理を行い、追尾処理の結果に基づいて砲22に対して指向指令を行う。
表示器19は、射撃管制において必要な情報を表示する装置である。
操作盤20は、射撃管制において必要な操作を行うための装置である。
砲制御器21は、砲22の駆動制御及び発射制御等を行う装置である。
砲22は、射撃を実行する装置である。
ビーム23は、追尾レーダのビームである。
目標24は、砲射撃の訓練における目標である。
【0012】
図2は、図1に示すような射撃管制装置200が備える追尾レーダにおける送信と受信との動作状態の具体例を示している。図2において、横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示している。
図2において、送信時間帯25と、受信時間帯26とが示されている。即ち、図2は追尾レーダの処理を行う距離範囲を示している。受信時間帯26において、検波後における受信信号を距離分解能ごとにA/D(Analog-to-Digital)変換した振幅値が並んでいるものとする。また、図2において、送信パルス27と、目標信号28と、受信機雑音29とが示されている。目標信号28は、ビーム23を反射した目標24からの反射波に対応する信号である。
計算機18は、目標信号28を検出し、検出した目標信号28に関する測距及び測角を実行することによって観測値を生成する。射撃管制装置200は、送信及び受信を繰り返すことによって、目標24をビーム23内に捕捉し、目標24に対する追尾を継続する。
【0013】
射撃訓練装置100は、射撃管制装置200を模擬する装置であり、射撃操作に関する模擬的な砲射撃の訓練を行うことを目的とした装置である。図3は、射撃訓練装置100の構成例を示している。射撃訓練装置100は、コンピュータ1と、操作盤10と、表示器11とを備える。
射撃訓練装置100が実行する処理を説明する。
【0014】
コンピュータ1は、砲射撃の訓練全体の制御を行う汎用の計算機である。コンピュータ1は、シナリオ発生部2と、目標信号発生部3と、目標検出部4と、目標追尾部5と、第1弾着点生成部6と、第2弾着点生成部7と、弾着誤差評価部8と、画像生成部9との各々の機能を実現する。
【0015】
シナリオ発生部2は、模擬目標のレーダ有効反射面積と発生位置と速度と、起動時間と、終了時間等をシナリオとしてあらかじめ設定し、設定したシナリオに従った模擬目標の位置及び速度を逐次更新しながら模擬目標の位置及び速度を示す数値情報を生成し、生成した数値情報を目標信号発生処理3に送出する。この際、シナリオ発生部2は設定シナリオに従って模擬目標の位置を逐次算出する。模擬目標は、模擬的な目標24であり、設定されたシナリオに従って移動する。模擬目標を訓練用目標と呼ぶこともある。シナリオ発生部2が設定したシナリオは設定シナリオとも呼ばれる。
設定シナリオは、模擬目標の周囲における環境条件の変化により不要信号が発生するシナリオを示してもよい。
【0016】
目標信号発生部3は、設定シナリオに従って移動する模擬目標から追尾センサが信号を受信したものとして、追尾センサが模擬目標から受信した信号を模擬的に目標信号として生成する。目標信号発生部3は、目標信号に対して設定シナリオが示す不要信号を含めてもよい。目標信号発生部3は、目標信号を生成する際に、射撃管制装置200から模擬目標までの距離に応じた範囲である雑音生成範囲における受信機雑音を模擬してもよい。雑音生成範囲はどのように定められてもよい。
具体例として、目標信号発生部3は、シナリオ発生部2から模擬目標に対応する数値情報を受け取る。目標信号発生部3は、受け取った数値情報をもとに、訓練中における射撃管制用の追尾レーダによる受信信号を模擬した信号を、レーダ処理範囲のうち発生した模擬目標の近傍における振幅値として生成する。生成される受信信号には目標信号28及び背景雑音のような不要信号が重畳される。しかしながら、重畳される信号は、計算機の負荷を軽減するためにS/N(Signal-to-Noise)比を算出することに必要な距離範囲に対応する信号のみに限定される。生成された目標信号28は目標検出部4に送出される。
【0017】
まず、目標信号発生部3は、模擬目標からの反射による受信信号の振幅Pr(tgt)を、模擬目標の大きさ及び発生位置に応じた受信電力として[数1]に従い生成する。
【0018】
【数1】
【0019】
[数1]は一般的なレーダ方程式に従うものである。[数1]において、以下で説明する定数をあらかじめ設定しておく。
はレーダ送信電力である。
はレーダ送信アンテナ利得である。
はレーダ受信アンテナ利得である。
λはレーダ送信波長である。
σtgtは目標のレーダ有効反射面積である。
訓練対象である射撃管制装置200の追尾レーダの諸元にこれらのパラメータを合わせることにより、より現実的な訓練を行うことができる。
【0020】
Rは、砲22から模擬目標までの距離であり、訓練実施時に設定されたシナリオに従い逐次更新される。
【0021】
次に、目標信号発生部3は、受信機16における背景雑音Nを[数2]により生成する。Nは、雑音レベルの平均値を示しており、受信処理を行う距離範囲全体においてランダムに変動するものとする。ここでは、目標信号発生部3が目標24の前後の限定された距離範囲のみ受信機雑音29を模擬することにより、処理負荷を軽減する。
【0022】
【数2】
【0023】
[数2]は受信機16の熱雑音を示す一般的なレーダ方程式の一部である。[数2]において、以下で説明する定数をパラメータとしてあらかじめ設定しておく。
Kはボルツマン定数である。
Toは受信機温度である。
Bは受信機帯域幅である。
NFは受信機雑音指数である。
訓練対象である射撃管制装置200の追尾レーダの諸元にノイズレベルNも合わせることにより、より現実的な訓練を行うことができる。
【0024】
また、環境条件の変化等による不要信号の発生もシナリオに組み込み、Nに加算することもできる。具体例として、雨雲からの反射波又は妨害等による干渉信号を雑音の1種類として扱う。
【0025】
目標検出部4は、目標信号から模擬目標に対応する信号を検出し、検出した信号に基づいて模擬目標に対応する観測値を算出する。目標検出部4は、模擬目標に対応する信号対雑音比に応じた測距誤差及び測角誤差を含む観測値を生成してもよい。
具体例として、目標検出部4は、射撃管制用レーダによる信号検出と、模擬目標に対する測距及び測角とを模擬し、訓練中におけるレーダ観測値を逐次算出する。ここで、目標信号発生部3によって生成された目標信号Pr(tgt)と背景雑音Nとの比率は信号対雑音(S/N)比とされるものである。目標検出部4は、模擬目標に対する測距において測距誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬してもよい。目標検出部4は、模擬目標に対する測角において測角誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬してもよい。
【0026】
目標検出が可能な最小受信信号であるS/N比をS/N(min)とする。目標信号のレベルが雑音レベルよりも十分に大きく、S/N(min)以上となった場合に「目標にロックオン可能」となる。なお、S/N(min)は、誤検出を避けるために、背景雑音のレベルに対して十分に余裕があるように設定される。
【0027】
ただし、ロックオンの条件と、射撃管制装置200における目標観測精度とは異なるものである。具体例として、モノパルス方式による追尾レーダにおける一般的な測角精度σΘは[数3]により示される。
なお、σΘは一般的に正規分布に従うランダムな誤差である。
【0028】
【数3】
【0029】
[数3]は、モノパルスレーダにおける一般的な測角精度を示す数式である。[数3]において、Kmはモノパルススロープ定数であり、ΘBは追尾レーダのビーム幅であり、S/Nは目標受信電力におけるS/N比である。KmとΘBの値はパラメータとしてあらかじめ設定される。S/Nは訓練時のシナリオに合わせて[数1]と[数2]とをもとに逐次更新される。
【0030】
実際の追尾レーダでは、モノパルス測角を行うためアンテナの和パターン信号であるΣチャンネルと、測角用の差パターンであるΔチャンネルとの受信信号をもとに測角処理を行う方式が一般的である。しかしながら、本実施の形態に係る射撃訓練装置100では、測角誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬することにより処理負荷を軽減している。
【0031】
また、測距精度σRについてもS/N比の関数となる。測距精度σRは一般的に[数4]により示される。
【0032】
【数4】
【0033】
[数4]は、パルスレーダにおける一般的な測距精度を示す数式である。[数4]において、Cは光速であり、τはレーダの送信パルス幅であり、S/Nは目標受信電力におけるS/N比である。
Cとτの定数はパラメータとしてあらかじめ設定する。S/Nは訓練時のシナリオに合わせて[数1]と[数2]とをもとに逐次更新される。なお、σRは一般的に正規分布に従うランダムな誤差である。
【0034】
実際の追尾レーダでは、測距を行うため目標検出された受信信号の頂点及び重心位置を算出する方式が一般的である。しかしながら、本実施の形態に係る射撃訓練装置100では、測距誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬することにより処理負荷を軽減している。
【0035】
[数3]及び[数4]より、目標がロックオン状態となった場合であっても、ロックオン状態となった時点におけるS/N比に応じて観測精度が異なることが分かる。図4は、ロックオン状態となった時点における目標信号の様子の具体例を示している。
【0036】
図4において、横軸は時間Tを示しており、縦軸は信号の振幅を示している。Nは背景雑音の平均値を示している。S/N(min)は検出可能となるレベルを示している。
信号30と信号31と信号32とはそれぞれ目標からの受信信号を示している。信号30は、目標検出部4により検出されない信号である。信号31と信号32とは、目標検出部4により検出される信号を示している。即ち、信号31と信号32とは、ロックオン状態であることを示している。なお、信号31のS/N比が小さいために信号31に対応する観測精度は相対的に悪くなる。信号32のS/N比が大きいために信号32に対応する観測精度は相対的に良好となる。
【0037】
目標検出部4による模擬目標の測距及び測角の結果は、目標追尾部5に送出される。
【0038】
目標追尾部5は、目標検出部4によって算出された観測値に基づいて模擬目標の位置及び速度を算出する。
具体例として、目標追尾部5は、目標検出部4から受け取った検出結果に基づいて、目標検出時における模擬目標の位置及び速度を逐次算出する。目標追尾部5により算出された模擬目標の位置及び速度は、第1弾着点生成部6に送出される。
【0039】
第1弾着点生成部6は、第1弾着点として、算出された模擬目標の位置及び速度に基づいて模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する。
具体例として、第1弾着点生成部6は、射距離に対応する弾丸飛しょう時間をあらかじめ設定された数表により算出する。第1弾着点生成部6は、目標の位置及び速度と、この数表に基づく弾丸飛しょう時間とをもとに目標未来位置を算出し、算出した目標未来位置を第1弾着点とする。目標未来位置は、着弾時における模擬目標の位置である。
なお、目標未来位置を算出する際に、模擬目標の現在位置及び速度が用いられる。しかしながら、模擬目標の観測結果に誤差が含まれている場合に、含まれている誤差の影響により、目標未来位置、即ち弾着点にも誤差が含まれることになる。
【0040】
第2弾着点生成部7は、第2弾着点として、設定シナリオに基づく誤差を含まない模擬目標の位置及び速度に基づいて模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する。
具体例として、第2弾着点生成部7は、シナリオ発生部2による模擬目標の位置及び速度に基づいて弾着点を計算し、誤差を含まない模擬目標の位置及び速度をもとにした第2弾着点を算出する。この際、第2弾着点生成部7は第1弾着点生成部6と同様の処理を実行する。
【0041】
図5は、弾着点の誤差の具体例を示している。図5では、時刻t1と時刻t2と時刻t3との各々において移動する模擬目標と、時刻t3において射撃を行った場合における弾着点とを示している。図5おいて、砲33は射撃を行う砲を示している。目標位置34は、誤差を含まない目標位置、即ち目標真値を示している。目標観測値35は、目標追尾部5による目標観測値を示している。弾道36は、目標位置34に基づいて射撃を実施した場合における弾道を示している。弾道37は、目標観測値35に基づいて射撃を実施した場合における弾道を示している。弾着点38は、目標真値に対応する弾着点、即ち第2弾着点を示している。弾着点39は、観測値に対応する弾着点、即ち第1弾着点を示している。誤差40は、弾着点の誤差、即ち弾着点38と弾着点39との差異を示している。
目標位置は模擬目標の位置である。目標位置には誤差が含まれていることも誤差が含まれていないこともある。目標真値は、模擬目標の真の位置であり、シナリオが示す模擬目標の位置である。
【0042】
弾着誤差評価部8は、第1弾着点と第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する。
具体例として、弾着誤差評価部8は、第1弾着点生成部6により算出された弾着点と、第2弾着点生成部7により算出された弾着点とを比較し、比較した結果に基づいて訓練における弾着誤差を算出する。弾着誤差評価部8は、具体例として、平均値又は標準偏差のような統計値に基づいて射撃精度を計算するほか、模擬目標に対する命中率も算出することにより訓練を評価する。
【0043】
弾着誤差の平均値をmとすると、mは[数5]により算出される。
【0044】
【数5】
【0045】
[数5]において、nは発射弾数を示し、xrは誤差を含む弾着位置を示し、xtは誤差を含まない弾着位置を示す。これにより、弾着位置が特定の方向にずれているか否かを評価することができる。なお、ここでは弾着位置を1次元即ち直線上で表記しているが、弾着位置が平面又は3次元空間内である場合であっても同様に弾着誤差を算出することができる。
【0046】
次に、弾着誤差の標準偏差をSとすると、Sは[数6]により算出される。
【0047】
【数6】
【0048】
[数6]において、nは発射弾数を示し、xrは誤差を含む弾着位置を示し、xは平均弾着位置を示す。これにより、弾着位置のばらつきの度合いを評価する。
【0049】
さらに、命中率をPとすると、Pは[数7]により算出される。
【0050】
【数7】
【0051】
[数7]において、N1は有効弾数、即ち弾着誤差が一定のしきい値以下となった弾の数を示し、N2は全発射弾数を示す。
【0052】
画像生成部9は、目標信号発生部3による目標信号と、模擬目標及び弾着点の位置等を表示器11に表示するための画像信号を生成する。
具体例として、画像生成部9は、表示画像に対応する画像信号を生成する。表示画像は、追尾センサが模擬目標から受信した信号に対応する画像であって、表示器11に表示する画像である。
【0053】
操作盤10は、砲射撃の訓練において必要な操作を可能とするための装置である。砲射撃の訓練を実施する者は、砲射撃の訓練中に操作盤10を操作する。操作盤10は、目標を検出及び観測するためのレーダ制御と、射撃管制用の砲制御とを行うためのスイッチ類を具備する。
【0054】
表示器11は、砲射撃の訓練に必要な表示を行うための装置である。具体例として、表示器11は砲射撃の訓練の状況を表示する。
表示器11は、目標信号及び検出の状態、及び射撃管制の状態を示す表示を行うための表示画面を具備する。
【0055】
図6は、本実施の形態に係るコンピュータ1のハードウェア構成例を示している。射撃訓練装置100は複数のコンピュータから成ってもよい。
【0056】
コンピュータ1は、本図に示すように、プロセッサ51と、メモリ52と、補助記憶装置53と、入出力IF(Interface)54と、通信装置55等のハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線59を介して適宜接続されている。
【0057】
プロセッサ51は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)であり、かつ、コンピュータが備えるハードウェアを制御する。プロセッサ51は、具体例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はGPU(Graphics Processing Unit)である。
コンピュータ1は、プロセッサ51を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。複数のプロセッサはプロセッサ51の役割を分担する。
【0058】
メモリ52は、典型的には揮発性の記憶装置であり、具体例としてRAM(Random Access Memory)である。メモリ52は、主記憶装置又はメインメモリとも呼ばれる。メモリ52に記憶されたデータは、必要に応じて補助記憶装置53に保存される。
【0059】
補助記憶装置53は、典型的には不揮発性の記憶装置であり、具体例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、又はフラッシュメモリである。補助記憶装置53に記憶されたデータは、必要に応じてメモリ52にロードされる。
メモリ52及び補助記憶装置53は一体的に構成されていてもよい。
【0060】
入出力IF54は、入力装置及び出力装置が接続されるポートである。入出力IF54は、具体例として、USB(Universal Serial Bus)端子である。入力装置は、具体例として、キーボード及びマウスである。出力装置は、具体例として、ディスプレイである。
【0061】
通信装置55は、レシーバ及びトランスミッタである。通信装置55は、具体例として、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0062】
射撃訓練装置100の各部は、他の装置等と通信する際に、入出力IF54及び通信装置55を適宜用いてもよい。
【0063】
補助記憶装置53は射撃訓練プログラムを記憶している。射撃訓練プログラムは、射撃訓練装置100が備える各部の機能をコンピュータに実現させるプログラムである。射撃訓練プログラムは、メモリ52にロードされて、プロセッサ51によって実行される。射撃訓練装置100が備える各部の機能は、ソフトウェアにより実現される。
【0064】
射撃訓練プログラムを実行する際に用いられるデータと、射撃訓練プログラムを実行することによって得られるデータ等は、記憶装置に適宜記憶される。射撃訓練装置100の各部は記憶装置を適宜利用する。記憶装置は、具体例として、メモリ52と、補助記憶装置53と、プロセッサ51内のレジスタと、プロセッサ51内のキャッシュメモリとの少なくとも1つから成る。なお、データという用語と情報という用語とは同等の意味を有することもある。記憶装置は、コンピュータ1と独立したものであってもよい。
メモリ52及び補助記憶装置53の機能は、他の記憶装置によって実現されてもよい。
【0065】
射撃訓練プログラムは、コンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体に記録されていてもよい。不揮発性の記録媒体は、具体例として、光ディスク又はフラッシュメモリである。射撃訓練プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0066】
***動作の説明***
射撃訓練装置100の動作手順は射撃訓練方法に相当する。また、射撃訓練装置100の動作を実現するプログラムは射撃訓練プログラムに相当する。
【0067】
図7は、射撃訓練装置100の動作の一例を示すフローチャートである。図7を参照して射撃訓練装置100の動作を説明する。
【0068】
(ステップS101)
シナリオ発生部2は、設定シナリオとして訓練のシナリオを生成する。
【0069】
(ステップS102)
目標信号発生部3は、設定シナリオに従って模擬目標に対応する目標信号を生成する。
【0070】
(ステップS103)
目標検出部4は、ステップS102において生成された目標信号から模擬目標を検出する。
【0071】
(ステップS104)
目標追尾部5は、ステップS103において検出された模擬目標に基づいて模擬目標を追尾する。
【0072】
(ステップS105)
第1弾着点生成部6は、ステップS104における追尾結果に基づいて第1弾着点を算出する。
【0073】
(ステップS106)
第2弾着点生成部7は、設定シナリオに基づいて第2弾着点を算出する。
【0074】
(ステップS107)
弾着誤差評価部8は、算出された第1弾着点と第2弾着点とに基づいて弾着誤差を評価する。
【0075】
(ステップS108)
画像生成部9は、表示器11に表示する画像に対応する画像信号を生成する。
【0076】
***実施の形態1の効果の説明***
以上のように、射撃訓練装置100は、射撃訓練装置100に対応する射撃管制装置200において目標を観測する追尾センサの観測結果と、追尾センサの信号処理とを模擬機能として組み込むことにより、射撃管制装置200による目標の捕捉及び追尾の状態を模擬的に再現する。そのため、射撃訓練装置100は、模擬目標がロックオン状態である条件を考慮するだけでなく、模擬目標に対応する目標信号のS/N比に応じた観測値(距離及び角度)を生成し、生成した観測値に基づいて、射撃管制により発射された弾丸の弾着点を計算する。当該観測値には測距誤差及び測角誤差が含まれ得る。また、射撃訓練装置100は、誤差を含まない真の目標位置に対して発射された弾丸の弾着点を計算する。
従って、射撃訓練装置100は、射撃手順の確認のみならず、計算した2つの着弾点を比較することにより、射撃精度を評価することができる。これにより、射撃精度に対する目標観測誤差の影響を考慮することができる。また、本実施の形態によれば、より現実的な砲射撃の訓練を実施することができる。さらに、本実施の形態では追尾センサ信号処理模擬の処理負荷を軽減しているため、汎用の計算機により射撃訓練装置100を実現することが可能となる。
【0077】
また、射撃訓練装置100は、追尾センサによる目標捕捉及び追尾を良好な状態にするための信号処理の設定操作を操作盤10に組み込むことにより、より良好な射撃を行うための訓練に資することも可能となる。
【0078】
なお、本実施の形態では、追尾レーダをセンサとする射撃訓練装置を説明しているが、光学照準器をセンサとする射撃訓練装置に対して本実施の形態を適用することが可能である。また、砲の射撃管制以外にも、ミサイルの射撃管制に対応する訓練装置に対して本実施の形態を適用することが可能である。
【0079】
さらに、シナリオに設定された目標条件及び環境条件は、外部からの制御、即ち教官等による操作を通じて訓練中に変更することも可能である。そのため、本実施の形態によれば射撃訓練の自由度を上げることも可能である。
【0080】
***他の構成***
<変形例1>
図8は、本変形例に係るコンピュータ1のハードウェア構成例を示している。
コンピュータ1は、プロセッサ51、プロセッサ51とメモリ52、プロセッサ51と補助記憶装置53、あるいはプロセッサ51とメモリ52と補助記憶装置53とに代えて、処理回路58を備える。
処理回路58は、コンピュータ1が備える各部の少なくとも一部を実現するハードウェアである。
処理回路58は、専用のハードウェアであってもよく、また、メモリ52に格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
【0081】
処理回路58が専用のハードウェアである場合、処理回路58は、具体例として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はこれらの組み合わせである。
コンピュータ1は、処理回路58を代替する複数の処理回路を備えてもよい。複数の処理回路は、処理回路58の役割を分担する。
【0082】
コンピュータ1において、一部の機能が専用のハードウェアによって実現されて、残りの機能がソフトウェア又はファームウェアによって実現されてもよい。
【0083】
処理回路58は、具体例として、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせにより実現される。
プロセッサ51とメモリ52と補助記憶装置53と処理回路58とを、総称して「プロセッシングサーキットリー」という。つまり、射撃訓練装置100の各機能構成要素の機能は、プロセッシングサーキットリーにより実現される。
【0084】
***他の実施の形態***
実施の形態1について説明したが、本実施の形態のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、本実施の形態を部分的に実施しても構わない。その他、本実施の形態は、必要に応じて種々の変更がなされても構わず、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施されても構わない。
なお、前述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示と、その適用物と、用途の範囲とを制限することを意図するものではない。フローチャート等を用いて説明した手順は適宜変更されてもよい。
【0085】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0086】
(付記1)
追尾センサを備える射撃管制装置を用いた砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置であって、
設定シナリオに従って移動する模擬目標から前記追尾センサが信号を受信したものとして、前記追尾センサが前記模擬目標から受信した信号を模擬的に目標信号として生成する目標信号発生部と、
前記目標信号から前記模擬目標に対応する信号を検出し、検出した信号に基づいて前記模擬目標に対応する観測値を算出する目標検出部と、
算出された観測値に基づいて前記模擬目標の位置及び速度を算出する目標追尾部と、
第1弾着点として、算出された前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第1弾着点生成部と、
第2弾着点として、前記設定シナリオに基づく誤差を含まない前記模擬目標の位置及び速度に基づいて前記模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する第2弾着点生成部と、
前記第1弾着点と前記第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する弾着誤差評価部と
を備える射撃訓練装置。
【0087】
(付記2)
前記射撃訓練装置は、さらに、
前記設定シナリオに従って前記模擬目標の位置を逐次算出するシナリオ発生部
を備える付記1に記載の射撃訓練装置。
【0088】
(付記3)
前記射撃訓練装置は、さらに、
砲射撃の訓練を実施する者が砲射撃の訓練中に操作する操作盤と、
砲射撃の訓練の状況を表示する表示器と
を備える付記1又は2に記載の射撃訓練装置。
【0089】
(付記4)
前記射撃訓練装置は、さらに、
前記追尾センサが前記模擬目標から受信した信号に対応する画像であって、前記表示器に表示する画像である表示画像に対応する画像信号を生成する画像生成部
を備える付記3に記載の射撃訓練装置。
【0090】
(付記5)
前記設定シナリオは、前記模擬目標の周囲における環境条件の変化により不要信号が発生するシナリオを示し、
前記目標信号発生部は、前記目標信号に対して前記設定シナリオが示す不要信号を含める付記1から4のいずれか1項に記載の射撃訓練装置。
【0091】
(付記6)
前記目標信号発生部は、前記目標信号を生成する際に、前記射撃管制装置から前記模擬目標までの距離に応じた範囲である雑音生成範囲における受信機雑音を模擬する付記1から5のいずれか1項に記載の射撃訓練装置。
【0092】
(付記7)
前記目標検出部は、前記模擬目標に対する測距及び測角を模擬し、前記模擬目標に対する測距において測距誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬し、前記模擬目標に対する測角において測角誤差発生モデルにより捕捉追尾の外乱を模擬する付記1から6のいずれか1項に記載の射撃訓練装置。
【0093】
(付記8)
前記目標検出部は、前記模擬目標に対応する信号対雑音比に応じた測距誤差及び測角誤差を含む観測値を生成する付記7に記載の射撃訓練装置。
【符号の説明】
【0094】
1 コンピュータ、2 シナリオ発生部、3 目標信号発生部、4 目標検出部、5 目標追尾部、6 第1弾着点生成部、7 第2弾着点生成部、8 弾着誤差評価部、9 画像生成部、10 操作盤、11 表示器、12 アンテナ、13 アンテナ制御器、14 サーキュレーター、15 送信機、16 受信機、17 信号処理器、18 計算機、19 表示器、20 操作盤、21 砲制御器、22 砲、23 ビーム、24 目標、25 送信時間帯、26 受信時間帯、27 送信パルス、28 目標信号、29 受信機雑音、30,31,32 信号、33 砲、34 目標位置、35 目標観測値、36,37 弾道、38,39 弾着点、40 誤差、51 プロセッサ、52 メモリ、53 補助記憶装置、54 入出力IF、55 通信装置、58 処理回路、59 信号線、100 射撃訓練装置、200 射撃管制装置。
【要約】
【課題】砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置において、当該射撃訓練装置に対応する射撃管制装置における目標の捕捉及び追尾状況に応じて射撃の精度が変化することを模擬することにより、より現実的な砲射撃の訓練を実施したい。
【解決手段】追尾センサを備える射撃管制装置を用いた砲射撃の訓練を模擬する射撃訓練装置100は、第1弾着点生成部6と第2弾着点生成部7と弾着誤差評価部8とを備える。第1弾着点生成部6は、第1弾着点として、模擬的な誤差を含む模擬目標の位置及び速度に基づいて模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する。第2弾着点生成部7は、第2弾着点として、設定シナリオに基づく誤差を含まない模擬目標の位置及び速度に基づいて模擬目標に対して砲射撃を実施した場合における弾着点を算出する。模擬目標は設定シナリオに従って移動する。弾着誤差評価部8は、第1弾着点と第2弾着点とに基づいて弾着誤差を算出する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8