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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】エンジンの排気構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
F01N3/24 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023505316
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008509
(87)【国際公開番号】W WO2022190946
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】202111009610
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】コヤンデ・クナル・シャンサンダー
(72)【発明者】
【氏名】有馬 久豊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘三
(72)【発明者】
【氏名】金嶽 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋史
(72)【発明者】
【氏名】藤木 章雄
(72)【発明者】
【氏名】竹下 友之
(72)【発明者】
【氏名】相澤 和輝
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133738(JP,A)
【文献】特開2001-271628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気を浄化する触媒コンバータを備えた排気構造であって、
前記触媒コンバータを収納する触媒管と、
前記触媒管に排気を導出する導出管と、を備え、
前記導出管は、下流側端が閉塞され、周壁に複数の排出孔が形成され、
前記導出管の軸心が、前記触媒管の軸心に対して傾斜し、かつ、前記触媒コンバータの上流端面を通過しているエンジンの排気構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの排気構造において、前記排出孔が、前記周壁の周方向の全域にわたって形成されているエンジンの排気構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンの排気構造において、前記導出管または前記導出管よりも上流側の配管に湾曲部分が設けられ、
湾曲の外側の前記排出孔の開口面積が、湾曲の内側の前記排出孔の開口面積よりも小さく設定されているエンジンの排気構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジンの排気構造において、円筒形の前記触媒管の内径が、前記導出管の内径よりも大きく設定されているエンジンの排気構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジンの排気構造において、前記排出孔の開口面積の合計が、前記導出管の閉塞された出口面積よりも大きいエンジンの排気構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のエンジンの排気構造において、前記エンジンが単気筒であるエンジンの排気構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のエンジンの排気構造を備えた鞍乗型車両であって、前記エンジンの前面に排気管が接続され、
前記導出管が、前記エンジンの前方に配置されている鞍乗型車両。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、2021年3月8日出願のインド特許出願202111009610の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、エンジンの排気を浄化する触媒コンバータを備えた排気構造に関するものである。
【背景技術】
【0003】
エンジンの排気構造において、排気通路に排気を浄化する触媒コンバータを設けたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-207571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気の浄化性能を維持するために、触媒コンバータの劣化を防ぐことが望まれる。
【0006】
本発明は、触媒コンバータの劣化を防ぐことができるエンジンの排気構造を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るエンジンの排気構造は、エンジンの排気を浄化する触媒コンバータを備えた排気構造であって、前記触媒コンバータを収納する触媒管と、前記触媒管に排気を導出する導出管とを備え、前記導出管は、下流側端が閉塞され、周壁に複数の排出孔が形成されている。
【0008】
この構成によれば、導出管の周壁に形成された複数の排出孔から排気が排出されて、触媒管に導入される。これにより、触媒コンバータの特定の箇所に排気が集中するのを防ぐことができる。その結果、触媒コンバータの特定の箇所が劣化したり、損傷したりするのを防ぐことができる。また、触媒コンバータの上流端の特定の箇所でなく、全体に排気が導入されるので、効率よく排気を浄化できる。その結果、例えば、触媒コンバータの担持量を減らすことができる。
【0009】
本発明において、前記排出孔が、前記周壁の周方向の全域にわたって形成されていてもよい。この構成によれば、導出管の径方向に向かって、周方向の全域から排気が排出されるので、排気の周方向における偏りを防ぐことができる。これにより、効率よく排気を浄化できる。
【0010】
本発明において、前記導出管の軸心が、前記触媒管の軸心に対して傾斜していてもよい。この構成によれば、触媒コンバータの上流側端面のより広い面積に排気を当てることができる。その結果、効率よく排気を浄化できる。
【0011】
本発明において、前記導出管または前記導出管よりも上流側の配管に湾曲部分が設けられ、湾曲の外側の前記排出孔の開口面積が湾曲の内側の前記排出孔の開口面積よりも小さく設定されていてもよい。この構成によれば、排気通路のレイアウト上の必要性から、排気通路が湾曲している場合でも、湾曲による排気の偏りを抑制できる。その結果、効率よく排気を浄化できる。
【0012】
本発明において、円筒形の前記触媒管の内径が、前記導出管の内径よりも大きく設定されていてもよい。この構成によれば、触媒コンバータを大形化して浄化性能を上げつつ、導出管の周壁に形成された排出孔により排気を分散させて効率よく触媒コンバータを利用できる。
【0013】
本発明において、前記排出孔の開口面積の合計が、前記導出管の閉塞された出口面積よりも大きく設定されていてもよい。上記構成によれば、十分な大きさの排出孔の開口面積が確保されるので、排出孔から十分な量の排気が排出され、排気の流れが阻害されない。これにより、エンジン出力の低下を防ぐことができる。
【0014】
本発明において、前記エンジンが単気筒であってもよい。排気量が同じとして比較した場合、単気筒エンジンは、多気筒に比べて1つの気筒から排出される排気圧が大きいが、上記構成によれば、排出孔により排気が分散されるので、触媒コンバータの特定の箇所が劣化したり、損傷したりするのを防ぐことができる。
【0015】
本発明の鞍乗型車両は、本発明のエンジンの排気構造を備え、前記エンジンの前面に排気管が接続され、前記導出管が前記エンジンの前方に配置されている。この構成によれば、導出管が排気通路における上流側部分に位置するので排気圧が大きいが、排出孔により排気が分散されるので、触媒コンバータの特定の箇所が劣化したり、損傷したりするのを防ぐことができる。
【0016】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきでない。本発明の範囲は添付のクレーム(請求の範囲)によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一部分を示す。
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの排気構造を備えた鞍乗り型車両の一種である自動二輪車を示す側面図である。
図2】同排気構造を示す縦断面図である。
図3】同排気構造の要部を示す一部破断した斜視図である。
図4】同排気構造の要部を示す断面図である。
図5】同排気構造の導出管の展開図である。
図6】本発明に関連するエンジンの排気構造を示す一部破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、「右」、「左」は、車両に乗車した運転者から見た「右」、「左」をいう。また、「前」「後」とは、車両の進行方向の「前」「後」をいう。さらに、「上流」「下流」とは、排気の流れ方向の「上流」「下流」をいう。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジンの排気構造を備えた鞍乗り型車両の一種である自動二輪車を示す側面図である。本実施形態の自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1は、前端のヘッドパイプ4から後方斜め下方に延びたのち、下方に湾曲して上下方向に延びている。リヤフレーム2は、メインフレーム1の後部から後方に延びている。
【0020】
ヘッドパイプ4に、ステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク6が支持され、このフロントフォーク6の下端部に前輪(図示せず)が支持されている。フロントフォーク6の上端部にハンドル8が取り付けられている。
【0021】
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット12が設けられている。スイングアームブラケット12に、スイングアーム14が上下揺動自在に支持されている。スイングアーム14の後端部に、後輪16が取り付けられている。
【0022】
メインフレーム1の下方でスイングアームブラケット12の前方に、駆動源であるエンジンEが取り付けられている。エンジンEにより、チェーンのような動力伝達部材(図示せず)を介して後輪16が駆動される。メインフレーム1の上部に燃料タンク18が配置され、リヤフレーム2に操縦者が着座するシート20が装着されている。
【0023】
本実施形態のエンジンEは、空冷単気筒エンジンである。ただし、エンジンの形式はこれに限定されず、水冷エンジンであってもよく、また、2気筒、4気筒等の多気筒エンジンであってもよい。エンジンEは、クランク軸21を回転自在に支持するクランクケース22と、クランクケース22から上方に突出するシリンダ24と、シリンダ24の上部に連結されたシリンダヘッド26とを有している。本実施形態では、クランク軸21は車幅方向(左右方向)に延びている。
【0024】
シリンダヘッド26の後面の吸気ポート26aに、吸気装置ISが接続されている。吸気装置ISは、外部の空気を吸気として取り入れ、燃料を噴霧して混合気を生成してエンジンEに供給する。
【0025】
シリンダヘッド26の前面の排気ポート26bに、排気管28が接続されている。排気管28は、エンジンEの前方領域を下方に延びた後、後方に湾曲し、エンジンEの右側下方を後方に延びてマフラ30に接続されている。マフラ30は、エンジンEよりも後方で、後輪16の右側方に配置されて、排気Gを放出する。マフラ30は、排気エネルギーを弱めて、外部に放出される排気音を低減させる。これら排気管28およびマフラ30によりエンジンEの排気装置EDが構成されている。
【0026】
エンジンEは、前輪と後輪16との前後方向の間であって、燃料タンク18の下方に配置されている。また、エンジンEは、スイングアームブラケット12よりも前方に配置されている。上述したとおり、エンジンEは、排気ポート26bが前方に向いて配置されることで、排気を車体前方に向かって排出する。
【0027】
つぎに、本実施形態のエンジンEの排気構造について説明する。排気管28は、上述のように、エンジンEの前面の排気ポート26bに接続され、後方のマフラ30に排気Gを導く。このため、排気管28は、略U字状に湾曲して形成されている。すなわち、排気管28は、排気ポート26bから前方に延びたのち、排気の流れの向きを下方に向けるために下方に湾曲して延び、さらに、排気の流れの向きを後方に向けるために後方に湾曲して延びている。換言すれば、排気管28は、第1の湾曲部分35で前方から下方に湾曲し、第2の湾曲部分40で下方から後方に湾曲している。
【0028】
この排気Gを導く過程において、排気Gに含まれる所定の有害成分を浄化する触媒コンバータ(触媒ユニット)31,32が設けられている。具体的には、触媒コンバータ31,32は、燃焼後の排気Gの酸化・還元反応によって特定成分を浄化する三元触媒が用いられる。触媒ユニット31,32は、排気管28の一部を構成する触媒管34に収容されている。本実施形態では、触媒管34は、湾曲した円筒形状である。触媒ユニット31,32は、触媒管34内を排気の流れ方向に間隔を開けて配置されている。ただし、触媒ユニット31,32は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0029】
以下の説明において、上流側触媒ユニット31を第1の触媒ユニット31と称し、下流側触媒ユニット32を第2の触媒ユニット32と称する。また、排気管28のうちで、第1の触媒ユニット31よりも上流側部分を排気管上流部分36と称し、第2の触媒ユニット32よりも下流側部分を排気管下流部分38と称する。
【0030】
排気Gは、排気管上流部分36から触媒管34に流入する。つまり、排気管上流部分36は、上流端部が排気ポート26bに接続され、下流端部が触媒管34に接続されている。一方、触媒管34を通過した排気Gは、排気管下流部分38からマフラ30に流入する。つまり、排気管下流部分38は、触媒管34とマフラ30を連通している。本実施形態では、排気管下流部分38は後方に向かって真直に延びている。
【0031】
本実施形態では、各触媒ユニット31,32は、金属製のハニカム構造体(触媒担体)に触媒物質が担持されたメタルハニカム触媒で構成されている。ただし、触媒ユニット31,32は、メタルハニカム触媒に限定されない。各触媒ユニット31,32は、中心線が直線状に延びる直管(非湾曲形状)で形成されている。本実施形態では、各触媒ユニット31,32は円柱状に形成される。各触媒ユニット31,32の排気流れ方向の長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
本実施形態では、触媒管34は第2の湾曲部分40を介して屈曲しており、触媒ユニット31,32は、第2の湾曲部分40を挟んで排気管28の上流側と下流側とにそれぞれ配置されている。したがって、一方の触媒ユニット31は、第2の湾曲部分40よりも上流側に配置され、他方の触媒ユニット32は、第2の湾曲部分40よりも下流側に配置される。ただし、触媒管34は、第2の湾曲部分40のない真直な管であってもよく、また、各触媒ユニット31,32が第2の湾曲部分40よりも一方側(例えば上流側)に配置されてもよい。第1の触媒ユニット31は、エンジンEの下部の前方に配置されている。
【0033】
図2に示すように、第1の触媒ユニット31は、排気管上流部分36よりも断面積、すなわち通路面積が大きく形成されている。換言すれば、触媒管34の内径D1が、排気管上流部分36の内径D2よりも大きく設定されている。好ましくは、触媒管34の内径D1が、排気管上流部分36の内径D2の2倍以上である(D1≧D2×2)。ただし、触媒管34の内径D1は、排気管上流部分36の内径D2の2倍以下かつD2よりも大きく設定されてもよい(D2≦D1≦D2×2)。
【0034】
このような外径の異なる排気管上流部分36と触媒管34は、テーパ管42を介して連結されている。テーパ管42は、その上流端が排気管上流部分36に接続され、下流端が触媒管34に接続され、下流に向かって通路面積が徐々に大きくなっている。
【0035】
本実施形態では、排気管上流部分36は二重管で構成されている。詳細には、排気ポート26bに接続されて排気が流れる内側管36aと、内側管36aと同心円状に形成されて内側管36aとの間に空間が形成される外側管36bとで二重管が構成されている。二重管により、排気ポート26bとテーパ管42とが接続されている。内側管36aの内部を排気が通過し、内側管36aと外側管36bの間には排気は流れない。つまり、排気管上流側部分36の内径は、内側管36aの内径に相当する。
【0036】
排気管28における第1の触媒ユニット31の上流側に、排気中の成分を検出する排ガスセンサ44が設けられている。具体的には、排ガスセンサ44は、テーパ管42に設けられている。より詳細には、排ガスセンサ44は、テーパ管42における車幅方向内側部分に設けられている。本実施形態では、排ガスセンサ44として酸素センサが用いられている。この構成により、排出孔50からの排気を排ガスセンサ44に十分当てることが可能となる。よって、排ガスセンサ44にてより正確な成分検出が可能となる。
【0037】
図3に示すように、排ガスセンサ44は、テーパ管42から上方に向かって車幅方向内側に傾斜して延びている。排ガスセンサ44は円筒形状であり、本実施形態では、その軸心AXが、テーパ管42の外周面に対して前記車幅方向内側への傾斜角度が鋭角となっている。
【0038】
図2に示すように、排気管上流部分36の上流端の中心線C1は、第1の触媒ユニット31の中心線C2に対して傾斜するように構成されている。具体的には、排気管上流部分36の上流端の中心線C1は、下方に進むにつれて後方に向かうように傾斜している。第1の触媒ユニット31の中心線C2に対する排気管上流部分36の上流端の中心線C1の傾斜角度θは、例えば、30~40°である。
【0039】
本実施形態では、排気管上流部分36の上流端の中心線C1が、第1の触媒ユニット31の中心線C2と交差する交点G1は、第1の触媒ユニット31のうちでハニカム構造上流端面上またはその近傍領域に設定されている。
【0040】
排気管上流部分36の下流端部に、導出管46が設けられている。導出管46は、エンジンEの排気Gを触媒管34に導出する。導出管46は、例えば、円筒形のパイプ部材である。導出管46は、耐熱性材料(例えば、オーステナイト系ステンレスSUS304)で形成されている。ただし、導出管46の材質はこれに限定されない。
【0041】
導出管46は、図4に示すように、その上流端部46aの内周面が排気管上流部分36の内側管36aの下流端の外周面に全周に渡って溶接されている。さらに、導出管46の上流端部46aの外周面に環状のリング部材45が溶接され、このリング部材45の外周面に排気管上流部分36の外側管36bの下流端部の内周面およびテーパ管42の上流端部の内周面が溶接で固着されている。導出管46の連結構造はこれに限定されない。
【0042】
本実施形態では、排気管上流部分36の内径D2と導出管46の内径D3とが同径に構成されている。したがって、図2の触媒管34の内径D1が、導出管46の内径D3よりも大きく設定されている。触媒管34の内径D1が、導出管46の内径D3の2倍以上(D1≧D3×2)であることが好ましい。ただし、排気管上流部分36の内径D2と導出管46の内径D3は異なっていてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、導出管46の軸心C3が、排気管上流部分36の下流端の軸心C1と一致している。したがって、導出管46の軸心C3が、第1の触媒ユニット31の中心線C2に対して傾斜している。換言すれば、導出管46の軸心C3が、触媒管34の入口の軸心C2に対して傾斜している。ただし、導出管46の軸心C3と、排気管上流部分36の下流端の軸心C1は一致していなくてもよい。
【0044】
導出管46の下流端部46bは閉塞されている。詳細には、図4に示す導出管46の下流端部46bの開口に、閉塞部材48が嵌合されている。閉塞部材48は、導出管46の下流端部46bの内周面に溶接で固着されている。つまり、排気Gは、導出管46の下流端部46bから排出されない。閉塞部材48の形状について、面状に形成される部分のほかに軸方向に延びる部分がある。これにより、導出管46の周面に溶接されることで、導出管46と強固に固定することができる。その結果、閉塞部材48が、排気圧を受けて、導出管46から離脱することが防がれる。
【0045】
図3に示すように、導出管46の周壁46cに、排出孔50が形成されている。排出孔50は、例えば、円形のパンチ孔であり、導出管46の周壁46cに複数形成されている。ただし、排出孔50は円形以外であってもよく、各排出孔50の形状が異なっていてもよい。本実施形態では、排出孔50は、周壁46cの周方向の全域にわたって形成されている。排出孔50は、周壁46cの軸方向にも並んで配置されている。本実施形態では、排出孔50は、千鳥状に配置され、同じ大きさに形成されている。ただし、排出孔50の大きさは異なっていてもよい。
【0046】
図1の排気管28における導出管46よりも上流側に第1の湾曲部分35が設けられており、この第1の湾曲部分35の湾曲の外側(前側)の排出孔50の開口面積S1、つまり、各排出孔50の合算値が湾曲の内側(後側)の排出孔50の開口面積S2よりも小さく設定されている(S1<S2)。本実施形態では、各排出孔50は同じ大きさに形成されており、排出孔50が湾曲の外側よりも内側に多く設けられている。各排出孔50の開口面積を湾曲の外側で大きくし、内側で小さくしてもよい。湾曲の外側の排出孔50の開口面積S1と、湾曲の内側の排出孔50の開口面積S2は同じでもよい。
【0047】
図5に示すように、本実施形態の導出管46は、パンチ孔(排出孔50)が設けられた鋼製の板材60を円筒形に曲げ加工して、両端縁60a,60aを溶接で接合することで形成されている。円筒の軸方向に接合領域Wを除いてパンチ孔が形成されている。これによって軸方向の溶接品質のばらつきが防がれる。言い換えると、この溶接される継ぎ目62には排出孔50は設けられていないので、この継ぎ目62付近の排出孔50の開口面積の合算値が小さくなる。本実施形態では、この継ぎ目62が湾曲の外側(前側)に位置するように導出管46を配置することで、湾曲の外側の排出孔50の合算した開口面積S1を湾曲の内側の排出孔50の開口面積S2よりも小さくしている。
【0048】
また、本実施形態では、図3に示す排出孔の開口面積の合計St(=S1+S2)が、導出管46の閉塞された出口面積S3よりも大きく設定されている(St>S3)。好ましくは、排出孔の開口面積の合計Stは、導出管46の出口面積S3の2倍以上(St≧(2×S3))である。排出孔の開口面積の合計Stと導出管46の出口面積S3の大きさの関係はこれに限定されない。
【0049】
本実施形態の排気構造における排気Gの流れを説明する。図1のエンジンEが始動すると、エンジンEの排気Gが排気管28に導出される。排気管上流部分36は触媒管34に比べて小径なので、排気管上流部分36では排気Gの流れが速い。
【0050】
図2に示すように、排気Gが、排気管上流部分36から導出管46に流入し、導出管46の排出孔50から排出される。排出孔50(図3)から排出された排気Gは、テーパ管42を介して第1の触媒ユニット31に導入される。排気Gは、第1の触媒ユニット31を通過する際に浄化される。
【0051】
第1の触媒ユニット31を通過した排気Gは、第2の湾曲部分40を介して第2の触媒ユニット32に導入される。排気Gは、第1の触媒ユニット31で整流されているので、第2の触媒ユニット32に均等に導入される。排気Gは、第2の触媒ユニット32を通過する際にさらに浄化される。
【0052】
第2触媒ユニット32から排出された排気Gは、排気管下流部分38からマフラ30に流入し、マフラ30で消音されたのち外部に排出される。
【0053】
上記構成によれば、図3に示す導出管46の周壁46cに形成された排出孔50から排気Gが排出されて、触媒管34に導入される。これにより、排気Gの流れの向きが、導出管46の軸方向から径方向に偏向され、複数の排出孔50から分散排出される。このように排気Gが導出管46内で拡散するから、触媒の特定の箇所に排気が集中するのを防ぐことができる。
【0054】
閉塞部材48がなく、導出管46の下流端の開口から排気Gが排出される場合、導出管46の軸方向に沿って排気が流れる。上記実施形態では、軸方向から径方向に向きが変わり、周方向に分散されるとともに、テーパ管42に沿って再度流れが変わって後方に向かう。このように、流れの向きが2回変わる。テーパ管42が設けられることで、第1の触媒ユニット31,32の上流端面における径方向外側の領域にも、排気Gを導くことができる。
【0055】
本実施形態では、排気Gの集中が回避されるので、第1の触媒ユニット31の特定の箇所が劣化するのを防ぐことができる。また、第1の触媒ユニット31の上流端の全体に排気Gが分散して導入されるので、上流端の一部に集中して導入されるのに比べて、第1の触媒ユニット31における排気Gに触れる領域を増して、効率よく排気を浄化できる。その結果、触媒の担持量を減らすことができ、担持に必要な触媒材料を減らしてコスト低減を図ることができる。
【0056】
図3に示す排出孔50が、周壁46cの周方向の全域にわたって形成されている。これにより、導出管46の径方向に向かって、周方向の全域から排気Gが排出されるので、排気Gの周方向における偏りを防ぐことができる。その結果、効率よく排気Gを浄化できる。
【0057】
図2に示す導出管46の軸心C3が、第1の触媒ユニット31の軸心C1に対して傾斜している。これにより、両軸心C1,C3が一致している場合に比べて、湾曲の外側の領域にまで排気Gが流れやすくなり、第1の触媒ユニット31の上流側端面のより広い面積に排気Gを当てることができる。その結果、効率よく排気Gを浄化できる。
【0058】
導出管46よりも上流側の排気管上流部分36に図1の第1の湾曲部分35が設けられているので、遠心力により第1の湾曲部分35の湾曲の外側(前側)に排気Gが偏りやすい。詳細には、慣性により向きが変わりにくく、湾曲の外側に多くの排気が流れやすい。上記構成では、第1の湾曲部分35の湾曲の外側に位置する図3の排出孔50の開口面積S1が湾曲の内側の排出孔50の開口面積S2よりも小さく設定されている。これにより、排気通路のレイアウト上の必要性から、排気通路が湾曲している場合でも、湾曲による排気Gの偏りを抑制できる。その結果、効率よく排気Gを浄化できる。また、開口面積S1と開口面積S2との偏りを接合領域W(図5)の向き(周方向位置)を変えることにより実現することで、排出孔50の大きさを変える場合に比べて、容易に実現することができる。
【0059】
図2に示す触媒管34の内径D1が、排気管上流部分36の内径D2よりも大きく設定されている。上記構成では、図3に示す導出管46の排出孔50から排気Gが径方向に排出されるので、高速の排気Gが第1の触媒ユニット31の特定の箇所に集中することが防がれる。これにより、第1の触媒ユニット31を大形化して浄化性能を上げつつ、排出孔50により排気Gを分散させて効率よく第1の触媒ユニット31を利用できる。また、排出孔50から排出された排気Gは、排気管上流部分36よりも通過面積が大きい領域を流れることで、流速が低下する。このように流速が低下することで、第1の触媒ユニット31の劣化をさらに抑えることができる。
【0060】
排出孔50の開口面積の合計Stが、導出管46の閉塞部材48により閉塞された出口面積S3よりも大きく設定されている。これにより、十分な大きさの排出孔50の開口面積Stを確保でき、排出孔50から排気Gが排出される場合の抵抗となることが抑えられる。その結果、排気Gの流れが阻害されることに起因するエンジン出力の低下を防ぐことができる。
【0061】
また、単気筒エンジンEは、多気筒に比べて排気圧が大きいが、上記構成によれば、排出孔50により排気Gが分散されるので、高圧の排気Gが第1の触媒ユニット31の特定の箇所に集中しない。これにより、第1の触媒ユニット31の特定の箇所が劣化したり、損傷したりするのを防ぐことができる。
【0062】
図2に示すように、導出管46が排気通路における上流側部分に位置していることで、比較的排気圧が大きくなる。上記構成によれば、図3の排出孔50により排気Gが分散されるので、導出管46を通過する排気Gが高圧であったとしても、排気Gが第1の触媒ユニット31の特定の箇所に集中することが防がれ、第1の触媒ユニット31の特定の箇所が劣化するのを防ぐことができる。
【0063】
図6は、本発明に関連する排気構造を示す。図6の例では、導出管46に代えて、テーパ管42に閉塞部材48Aが溶接で接合され、この閉塞部材48Aに複数の排出孔50Aが設けられている。図6の変形例においても、排気管上流部分36から排出される排気Gは、第1の触媒ユニット31の上流端面の全体に当たり、特定の箇所に集中しない。これにより、第1の触媒ユニット31の特定の箇所が劣化するのを防ぐことができる。
【0064】
上記実施形態では、エンジンEの前端よりも前方、具体的には、湾曲部分に隣接して第1の触媒ユニット31が配置されるので、比較的温度の高い排気Gが第1の触媒ユニット31に導かれる。これにより、第1の触媒ユニット31の温度上昇を促進でき、始動時の浄化性能が向上する。このように、比較的上流側に第1の触媒ユニット31が配置されても、本発明のように排気Gを分散することで、第1の触媒ユニット31の劣化を防ぐことができる。このように本実施形態では、始動時の浄化性能の向上と、劣化防止とを両立することができる。
【0065】
排出孔50が周方向だけでなく、軸方向にも並んで設けられることで、周方向だけではなく、軸方向にも排気Gを分散させることができる。このように、3次元的に排気を分散させることで、分散効果を高めることができる。また、導出管46の上流側で排出孔50から排出されて軸方向に流れる排気Gと、下流側で排出されて軸方向流れる排気Gとが干渉しあうことで、排気Gのエネルギーを消失させる効果も図ることが期待できる。
【0066】
排気管上流側部分36が2重管に構成され、内側管36aと外気との間に空間が形成されることで、排気管上流側部分36を通過する排気Gが外気によって冷却されるのを抑制することができ、始動時の浄化性能を向上させることができる。
【0067】
触媒ユニット31,32は、軸方向に延びる複数の通路を有するハニカム形状に形成されている。本実施形態では、2つの触媒ユニット31,32のうち、上流側の第1の触媒ユニット31に流れ込む排気Gが径方向および周方向に分散されている。これにより、上流側の第1の触媒ユニット31の複数の通路を通過して整流された排気Gが、下流側の第2の触媒ユニット32に流れる。したがって、第2の触媒ユニット32に対しても、排気Gが分散して導入される。これにより、上流側の第1の触媒ユニット31だけでなく、下流側の第2の触媒ユニット32の浄化効果も高めることができる。
【0068】
さらに、上流の第1の触媒ユニット31と下流の第2の触媒ユニット32との間に隙間SPが形成されることで、隙間部分での排気Gの拡散を図りやすい。これにより、下流側の触媒の浄化効果をさらに高めることができる。また、本実施形態では、2つの触媒ユニット31,32の間の隙間は湾曲形状に形成されている。これによって、隙間領域での排気Gの拡散を促進させやすい。その結果、上流側の第1の触媒ユニット31では触媒に触れなかった排気Gを下流側の第2の触媒ユニット32の触媒に触れやすくすることができる。これにより、浄化効果をさらに高めることができる。
【0069】
このように、本実施形態の排気構造は、触媒ユニット31の上流端面の全体に分散させて排気を導くことで、触媒ユニット31の劣化を防ぐだけでなく、コスト削減を図ることもできる。すなわち、排気Gに触れる触媒領域を増やすことによって単位面積当たりの浄化量を増やすことで、担持に必要な触媒材料を減らすことができる。その結果、触媒ユニット31のコスト低減を図ることができる。
【0070】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、排気管上流部分36と導出管46が別体で構成されて連結されていたが、排気管上流部分36と導出管46を単一の配管で構成してもよい。この場合、排気管上流部分36(導出管46)の下流端部に排出孔50が設けられる。また、触媒コンバータ31,32の位置は上記実施形態に限定されず、エンジンEの前端よりも後方に設けられてもよい。さらに、本発明のエンジンの排気構造は多気筒エンジンにも適用可能である。上記実施形態では、自動二輪車について説明したが、本発明のエンジンの排気構造は、自動二輪車以外の鞍乗型車両、例えば、三輪車、四輪バギー等にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
28 排気管
31,32 触媒コンバータ
34 触媒管
46 導出管
50 排出孔
E エンジン
G 排気
図1
図2
図3
図4
図5
図6