(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】固定状況判定システム、グローブ、情報処理装置、固定状況判定方法、および、固定状況判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G06F3/01 514
(21)【出願番号】P 2023579706
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2022020458
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 敬士
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0117271(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174897(US,A1)
【文献】特開2010-221359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0290202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が着用して対象物を把持するグローブを備える固定状況判定システムであって、前記対象物の固定状況を判定する固定状況判定システムにおいて、
前記グローブにおける前記対象物を把持する一対の指の間に相当する位置に配置され、前記一対の指により把持された前記対象物を対象画像として撮影する撮影装置と、
前記対象画像を用いて、前記対象物の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定部と、
前記対象画像を用いて、前記作業者の指先の動きを分析し、前記作業者の各指の指先の位置の移動範囲である指先移動範囲を算出する範囲算出部と、
前記対象物の位置および姿勢と前記指先移動範囲とに基づいて、前記対象物における前記指先の接触位置を算出する接触位置算出部と、
前記指先の接触位置における前記対象物に対する加振力の情報である加振力情報と前記対象物の変位とに基づいて、前記対象物の固定状況を判定する判定部と
を備える固定状況判定システム。
【請求項2】
前記グローブは、
前記作業者の各指の基節骨の内側に相当する位置にマーカを備え、
前記撮影装置は、
前記グローブが前記対象物を把持する際の前記マーカの位置を含む前記対象画像を撮影し、
前記範囲算出部は、
前記対象画像における前記マーカの位置を用いて前記作業者の各指の基節骨の角度を算出し、前記作業者の各指の基節骨の角度に基づいて前記指先移動範囲を算出する請求項1に記載の固定状況判定システム。
【請求項3】
前記グローブは、
前記作業者の各指の指先の外側に、前記指先の動きを検知するモーションセンサを備え、
前記範囲算出部は、
前記作業者の各指の基節骨の角度と前記モーションセンサにより検知された前記指先の動きとに基づいて、前記指先移動範囲を算出する請求項2に記載の固定状況判定システム。
【請求項4】
前記固定状況判定システムは、
前記対象物における位置と姿勢の複数の組合せの各々の画像を画像候補として蓄積した対象物データベースを備え、
前記位置姿勢推定部は、
前記対象画像と前記対象物データベースに蓄積されている前記画像候補を比較することにより、前記対象物の位置および姿勢を推定する請求項
1に記載の固定状況判定システム。
【請求項5】
前記グローブは、
前記作業者の指先の内側に対応する位置に接触力センサを備え、
前記判定部は、
前記接触力センサから前記指先の接触位置における前記対象物に対する加振力を取得し、前記対象画像から前記対象物の変位を取得する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固定状況判定システム。
【請求項6】
作業者が着用して対象物を把持するグローブと前記グローブと通信する情報処理装置を備え、前記対象物の固定状況を判定する固定状況判定システムに備えられるグローブにおいて、
前記対象物を把持する一対の指の間に相当する位置に配置され、前記一対の指により把持された前記対象物を対象画像として撮影する撮影装置と、
前記対象画像を用いて前記対象物の位置および姿勢を推定し、前記対象画像を用いて前記作業者の各指の指先の位置の移動範囲である指先移動範囲を算出し、前記対象物の位置および姿勢と前記指先移動範囲とに基づいて前記対象物における前記指先の接触位置を算出する前記情報処理装置に、前記対象画像を送信する通信装置と
を備えるグローブ。
【請求項7】
前記グローブは、
前記作業者の各指の基節骨の内側に相当する位置にマーカを備え、
前記撮影装置は、
前記グローブが前記対象物を把持する際の前記マーカの位置を含む前記対象画像を撮影し、
前記情報処理装置は、
前記対象画像における前記マーカの位置を用いて前記作業者の各指の基節骨の角度を算出し、前記作業者の各指の基節骨の角度に基づいて前記指先移動範囲を算出する請求項6に記載のグローブ。
【請求項8】
前記グローブは、
前記作業者の各指の指先の外側に、前記指先の動きを検知するモーションセンサを備え、
前記情報処理装置は、
前記作業者の各指の基節骨の角度と前記モーションセンサにより検知された前記指先の動きとに基づいて、前記指先移動範囲を算出する請求項7に記載のグローブ。
【請求項9】
前記グローブは、
前記グローブにおける前記一対の指の各指に設けられ、前記撮影装置を固定する固定具を備える請求項7または請求項8に記載のグローブ。
【請求項10】
前記固定具は、
前記グローブにおける前記一対の指の各指に設けられた指輪と、前記指輪と前記撮影装置とを連結する剛体とを備える状である請求項9に記載のグローブ。
【請求項11】
前記マーカは、突起形状を有している請求
項7に記載のグローブ。
【請求項12】
前記撮影装置は、複数備えられている請求
項6に記載のグローブ。
【請求項13】
前記グローブは、
前記作業者の指先の内側に対応する位置に接触力センサを備え、
前記情報処理装置は、
前記接触力センサから前記指先の接触位置における前記対象物に対する加振力の情報を加振力情報として取得し、前記対象画像から前記対象物の変位を取得する請求
項6に記載のグローブ。
【請求項14】
作業者が着用して対象物を把持するグローブと前記グローブと通信する情報処理装置を備え、前記対象物の固定状況を判定する固定状況判定システムに備えられる情報処理装置において、
前記グローブにおける前記対象物を把持する一対の指の間に相当する位置に配置され、前記一対の指により把持された前記対象物を対象画像として撮影する撮影装置により撮影された前記対象画像を用いて、前記対象物の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定部と、
前記対象画像を用いて、前記作業者の指先の動きを分析し、前記作業者の各指の指先の位置の移動範囲である指先移動範囲を算出する範囲算出部と、
前記対象物の位置および姿勢と前記指先移動範囲とに基づいて、前記対象物における前記指先の接触位置を算出する接触位置算出部と、
前記指先の接触位置における前記対象物に対する加振の加振力と前記対象物の変位とに基づいて、前記対象物の固定状況を判定する判定部と
を備える情報処理装置。
【請求項15】
作業者が着用して対象物を把持するグローブを備え、前記対象物の固定状況を判定する固定状況判定システムに用いられる固定状況判定方法において、
前記グローブにおける前記対象物を把持する一対の指の間に相当する位置に配置された撮影装置が、前記一対の指により把持された前記対象物を対象画像として撮影し、
コンピュータが、前記対象画像を用いて、前記対象物の位置および姿勢を推定し、
コンピュータが、前記対象画像を用いて、前記作業者の指先の動きを分析し、前記作業者の各指の指先の位置の移動範囲である指先移動範囲を算出し、
コンピュータが、前記対象物の位置および姿勢と前記指先移動範囲とに基づいて、前記対象物における前記指先の接触位置を算出し、
コンピュータが、前記指先の接触位置における前記対象物に対する加振の加振力と前記対象物の変位とに基づいて、前記対象物の固定状況を判定する固定状況判定方法。
【請求項16】
作業者が着用して対象物を把持するグローブを備え、前記対象物の固定状況を判定する固定状況判定システムに用いられる固定状況判定プログラムにおいて、
前記グローブにおける前記対象物を把持する一対の指の間に相当する位置に配置され、前記一対の指により把持された前記対象物を対象画像として撮影する撮影装置により撮影された前記対象画像を用いて、前記対象物の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定処理と、
前記対象画像を用いて、前記作業者の指先の動きを分析し、前記作業者の各指の指先の位置の移動範囲である指先移動範囲を算出する範囲算出処理と、
前記対象物の位置および姿勢と前記指先移動範囲とに基づいて、前記対象物における前記指先の接触位置を算出する接触位置算出処理と、
前記指先の接触位置における前記対象物に対する加振の加振力と前記対象物の変位とに基づいて、前記対象物の固定状況を判定する判定処理と
をコンピュータに実行させる固定状況判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定状況判定システム、グローブ、情報処理装置、固定状況判定方法、および、固定状況判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機器の固定状況の検査を遠隔で行うために、現地作業者が着用するグローブがある。
既存のグローブでは、接触面で印加されている力の変位、および、指先の振動を計測することができる。しかし、グローブに対する対象物の位置および姿勢、あるいは、対象物における指先の位置といった情報を取得できない。このため、対象物にかかっている力の向き、および、対象物の正確な変位といった情報を把握することができない。
【0003】
特許文献1には、対象物との接触を検知するために、弾性体でカバーした指先部の内側にCCDカメラを設置し、弾性体変形を計測するロボットハンド用フィンガが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機器のがたつきといった機器の固定状況の検査を行うためには、現地作業者がグローブを着用し、グローブで対象物を把持して加振するといった作業を実施する。
このとき、対象物における指先の位置を正確に把握することで、より高精度に固定状況を判定することができる。
特許文献1の技術をグローブに適用したとしても、対象物における指先の接触位置を正確に取得することができず、対象物にかかっている力の向き、および、対象物の正確な変位といった情報を把握することができない。よって、対象物の固定状況を高精度に判定することができないという課題がある。
【0006】
本開示では、対象物における指先の接触位置を正確に取得することにより、対象物の固定状況をより高精度に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る固定状況判定システムは、作業者が着用して対象物を把持するグローブを備える固定状況判定システムであって、前記対象物の固定状況を判定する固定状況判定システムにおいて、
前記グローブにおける前記対象物を把持する一対の指の間に相当する位置に配置され、前記一対の指により把持された前記対象物を対象画像として撮影する撮影装置と、
前記対象画像を用いて、前記対象物の位置および姿勢を推定する位置姿勢推定部と、
前記対象画像を用いて、前記作業者の指先の動きを分析し、前記作業者の各指の指先の位置の移動範囲である指先移動範囲を算出する範囲算出部と、
前記対象物の位置および姿勢と前記指先移動範囲とに基づいて、前記対象物における前記指先の接触位置を算出する接触位置算出部と、
前記指先の接触位置における前記対象物に対する加振力の情報である加振力情報と前記対象物の変位とに基づいて、前記対象物の固定状況を判定する判定部と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る固定状況判定システムでは、対象物における指先の接触位置を正確に取得することにより、対象物の固定状況をより高精度に判定することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る固定状況判定システムの全体構成例を示す図。
【
図2】実施の形態1に係る情報処理装置の構成例を示す図。
【
図3】実施の形態1に係るグローブの構成例を示す図。
【
図4】実施の形態1に係るグローブが対象物を把持した状態を示す図。
【
図5】実施の形態1に係る固定状況判定システムの動作例を示すフローチャート。
【
図7】実施の形態1に係る範囲算出処理における各指の基節骨の角度のイメージを示す図。
【
図8】実施の形態1に係る範囲算出処理における指先移動範囲のイメージを示す図。
【
図9】実施の形態1に係る接触位置算出処理における接触位置のイメージを示す図。
【
図10】実施の形態1の変形例1に係るグローブの構成例を示す図。
【
図11】実施の形態1の変形例2に係るグローブの構成例を示す図。
【
図12】実施の形態1の変形例3に係るグローブの構成例を示す図。
【
図13】実施の形態1の変形例4に係るグローブの構成例を示す図。
【
図14】実施の形態1の変形例5に係る情報処理装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について、図を用いて説明する。各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。図中の矢印はデータの流れまたは処理の流れを主に示している。また、以下の図では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、上、下、左、右、前、後、表、裏といった向きあるいは位置が示されている場合がある。これらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向および向きを限定するものではない。
【0011】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る固定状況判定システム500の全体構成例を示す図である。
固定状況判定システム500は、作業者10がグローブを着用して対象物300を把持し、対象物300に対して加振することにより、対象物300の固定状況を判定するシステムである。
固定状況判定システム500は、作業者10が着用して対象物300を把持するグローブ200と、グローブ200と通信する情報処理装置100を備える。グローブ200と情報処理装置100との通信は、優先でもよいし無線でもよい。
情報処理装置100とグローブ200の詳細構成については以下に記述する。
【0012】
図2は、本実施の形態に係る情報処理装置100の構成例を示す図である。
情報処理装置100は、コンピュータである。情報処理装置100は、プロセッサ910を備えるとともに、メモリ921、補助記憶装置922、入力インタフェース930、出力インタフェース940、および通信装置950といった他のハードウェアを備える。プロセッサ910は、有線通信あるいは無線通信により他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0013】
情報処理装置100は、機能要素として、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140と記憶部160とを備える。記憶部160には、対象物データベース161が記憶される。
【0014】
位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の機能は、ソフトウェアにより実現される。記憶部160は、メモリ921に備えられる。なお、記憶部160は、補助記憶装置922に備えられていてもよいし、メモリ921と補助記憶装置922に分散して備えられていてもよい。
【0015】
プロセッサ910は、固定状況判定プログラムを実行する装置である。固定状況判定プログラムは、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の機能を実現するプログラムである。なお、固定状況判定プログラムには、後述するグローブの機能を実現するプログラムも含まれる。
【0016】
プロセッサ910は、演算処理を行うICである。プロセッサ910の具体例は、CPU、DSP、GPUである。ICは、Integrated Circuit乗る悪後である。CPUは、Central Processing Unitの略語である。DSPは、Digital Signal Processorの略語である。GPUは、Graphics Processing Unitの略語である。
【0017】
メモリ921は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ921の具体例は、SRAM、あるいはDRAMである。SRAMは、Static Random Access Memoryの略語である。DRAMは、Dynamic Random Access Memoryの略語である。
補助記憶装置922は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置922の具体例は、HDDである。また、補助記憶装置922は、SD(登録商標)メモリカード、CF、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった可搬の記憶媒体であってもよい。なお、HDDは、Hard Disk Driveの略語である。SD(登録商標)は、Secure Digitalの略語である。CFは、CompactFlash(登録商標)の略語である。DVDは、Digital Versatile Diskの略語である。
【0018】
入力インタフェース930は、マウス、キーボード、あるいはタッチパネルといった入力装置と接続されるポートである。入力インタフェース930は、具体的には、USB端子である。なお、入力インタフェース930は、LANと接続されるポートであってもよい。USBは、Universal Serial Busの略語である。LANは、Local Area Networkの略語である。
【0019】
出力インタフェース940は、ディスプレイといった出力機器のケーブルが接続されるポートである。出力インタフェース940は、具体的には、USB端子またはHDMI(登録商標)端子である。ディスプレイは、具体的には、LCDである。出力インタフェース940は、表示器インタフェースともいう。HDMI(登録商標)は、High Definition Multimedia Interfaceの略語である。LCDは、Liquid Crystal Displayの略語である。
【0020】
通信装置950は、レシーバとトランスミッタを有する。通信装置950は、LAN、インターネット、WiFi(登録商標)、あるいは電話回線といった通信網に接続している。通信装置950は、具体的には、通信チップまたはNICである。NICは、Network Interface Cardの略語である。
【0021】
固定状況判定プログラムは、情報処理装置100において実行される。固定状況判定プログラムは、プロセッサ910に読み込まれ、プロセッサ910によって実行される。メモリ921には、固定状況判定プログラムだけでなく、OSも記憶されている。OSは、Operating Systemの略語である。プロセッサ910は、OSを実行しながら、固定状況判定プログラムを実行する。固定状況判定プログラムおよびOSは、補助記憶装置922に記憶されていてもよい。補助記憶装置922に記憶されている固定状況判定プログラムおよびOSは、メモリ921にロードされ、プロセッサ910によって実行される。なお、固定状況判定プログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
【0022】
情報処理装置100は、プロセッサ910を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、固定状況判定プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ910と同じように、固定状況判定プログラムを実行する装置である。
【0023】
固定状況判定プログラムにより利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値および変数値は、メモリ921、補助記憶装置922、または、プロセッサ910内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0024】
位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の各部の「部」を「回路」、「工程」、「手順」、「処理」、あるいは「サーキットリー」に読み替えてもよい。固定状況判定プログラムは、位置姿勢推定処理と範囲算出処理と接触位置算出処理と判定処理と画像設定処理を、コンピュータに実行させる。位置姿勢推定処理と範囲算出処理と接触位置算出処理と判定処理の「処理」を「プログラム」、「プログラムプロダクト」、「プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体」、または「プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」に読み替えてもよい。また、固定状況判定方法は、情報処理装置100が固定状況判定プログラムを実行することにより行われる方法である。
固定状況判定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよい。また、固定状況判定プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0025】
図3は、本実施の形態に係るグローブ200の構成例を示す図である。
図4は、本実施の形態に係るグローブ200が対象物300を把持した状態を示す図である。
グローブ200は、作業者10が対象物300を把持して加振する際に、対象物300を把持する作業者10の手に着用される。
図3では、作業者10の右手に着用されたグローブ200を示している。
図3の左図は、掌側から見たグローブ200の図である。
図3の右図は、手の甲側から見たグローブ200の図である。
また、
図4では、作業者10がグローブ200を着用して、対象物300を把持する様子を示している。
【0026】
グローブ200は、撮影装置201、接触力センサ202、センサデータ収集モジュール203、およびマーカ204を備える。
【0027】
撮影装置201は、グローブ200において対象物300を把持する一対の指の間に相当する位置に配置され、一対の指により把持された対象物300を対象画像25として撮影する。
撮影装置201は、例えば、光学的撮像素子を有するモジュールを基板上に配置した装置である。撮影装置201は、例えば、CCDカメラである。
通常は、人は親指と親指以外の指とを使って物体を把持する。
図3では、作業者10は、親指と人差し指を含む指を使って物体を把持している。よって、撮影装置201は、グローブ200において、掌側の親指と人差し指の間に相当する位置に配置される。なお、把持された対象物300を撮影する位置であれば、その他の位置でもよい。いずれかの指の根元に配置されていればよい。あるいは、掌の中央付近に配置されていても構わない。
【0028】
マーカ204は、グローブ200における作業者10の各指の基節骨の内側に相当する位置に配置されている。具体的には、マーカ204は、グローブ200における作業者10の各指の基節骨の内側に相当する位置に印刷されている。
撮影装置201は、グローブ200が対象物を把持する際のマーカの位置を含む対象画像25を撮影する。すなわち、対象画像25には、一対の指の各指に印刷されているマーカ204も含まれる。
【0029】
接触力センサ202は、グローブ200において、作業者10の指先の内側に対応する位置に配置される。接触力センサ202は、対象物300への加振力の情報を加振力情報26として取得する。加振力情報26は、例えば、加振力の大きさである。
【0030】
センサデータ収集モジュール203は、各種のセンサデータを収集し、情報処理装置100に送信する。具体的には、センサデータ収集モジュール203は、撮影装置201から対象画像25を収集し、接触力センサ202から加振力情報26を収集する。そして、センサデータ収集モジュール203は、対象画像25および加振力情報26を、有線通信、あるいは無線通信により情報処理装置100へ送信する。
【0031】
センサデータ収集モジュール203は、対象画像25および加振力情報26といったセンサデータを収集し、情報処理装置100に送信するコンピュータである。
例えば、情報処理装置100は、センサデータを入力させるための入力インタフェース、プロセッサ、および情報処理装置100と通信する通信装置といったハードウェアを備える。各ハードウェアについては、情報処理装置100における説明と同様である。
【0032】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る固定状況判定システム500の動作について説明する。固定状況判定システム500の動作手順は、固定状況判定方法に相当する。また、固定状況判定システム500の動作を実現するプログラムは、固定状況判定プログラムに相当する。
【0033】
図5は、本実施の形態に係る固定状況判定システム500の動作例を示すフローチャートである。
【0034】
<撮影処理>
ステップS101において、撮影装置201は、一対の指により把持された対象物300を対象画像25として撮影する。
具体的には、撮影装置201は、一対の指により把持された対象物300とともに、一対の指の各指に印刷されているマーカ204を含むように撮影する。
センサデータ収集モジュール203は、対象画像25を情報処理装置100へ送信する。
【0035】
図6は、本実施の形態に係る撮影装置201により対象画像25の例を示す図である。
図6に示すように、対象物300の形状によっては、対象物300と指先との接触部分が撮影できない場合がある。
なお、図示は無いが、対象画像25には、一対の指の各指に印刷されているマーカ204も含まれる。
【0036】
<位置姿勢推定処理>
ステップS102において、位置姿勢推定部110は、対象画像25を用いて、対象物300の位置および姿勢を推定する。位置姿勢推定部110は、対象画像25と対象物データベース161に蓄積されている画像候補61を比較することにより、対象物300の位置および姿勢を推定する。
具体的には、以下の通りである。
【0037】
対象物データベース161には、対象物300における位置と姿勢の複数の組合せの各々の画像を画像候補61として蓄積されている。
画像候補61は、対象物300を様々な角度および様々な位置の組み合わせで撮影した複数の3次元立体データである。
位置姿勢推定部110は、対象画像25と画像候補61とを比較し、最も類似度の高い画像候補61を選定することにより、対象画像25における対象物300の位置および姿勢を推定する。
【0038】
<範囲算出処理>
ステップS103において、範囲算出部120は、対象画像25を用いて、作業者10の指先の動きを分析し、作業者の各指の指先の位置の移動範囲である指先移動範囲Rを算出する。ステップS103は、ステップS31とステップS32を有する。
具体的には、以下の通りである。
【0039】
図7は、本実施の形態に係る範囲算出処理における各指の基節骨の角度のイメージを示す図である。
ステップS31において、範囲算出部120は、対象画像25における基節骨上のマーカ204の位置を用いて、作業者10の各指の基節骨の角度を算出する。
図7の例では、親指の基節骨の角度θ1と、人差し指の基節骨の角度θ2を算出する様子を示している。
【0040】
図8は、本実施の形態に係る範囲算出処理における指先移動範囲Rのイメージを示す図である。
ステップS32において、範囲算出部120は、作業者10の各指の基節骨の角度に基づいて、指先移動範囲Rを算出する。範囲算出部120は、通常の指の関節構造の情報を用いて、各指の基節骨の角度に基づいて、各指の指先移動範囲Rを算出する。
【0041】
<接触位置算出処理>
ステップS104において、接触位置算出部130は、対象物300の位置および姿勢と指先移動範囲Rとに基づいて、対象物300における指先の接触位置Pを算出する。
【0042】
図9は、本実施の形態に係る接触位置算出処理における接触位置Pのイメージを示す図である。
接触位置算出部130は、対象物300の位置および姿勢から対象物300の表面位置を算出する。そして、接触位置算出部130は、対象物300の表面位置と指先移動範囲Rとの交点から、対象物300と指先との接触位置Pを算出する。
【0043】
<判定処理>
ステップS105において、判定部140は、指先の接触位置Pにおける対象物300に対する加振力の情報である加振力情報26と、対象物300の変位とに基づいて、対象物300の固定状況を判定する。ステップS105は、ステップS51とステップS52を有する。
具体的には、以下の通りである。
【0044】
ステップS51において、作業者10がグローブ200を着用し、対象物300を把持して対象物300に対して加振を行う。センサデータ収集モジュール203は、接触力センサにより取得された加振力の大きさを加振力情報26として情報処理装置100に送信する。加振力情報26は、接触力センサ202により取得され、センサデータ収集モジュール203を介して、グローブ200から情報処理装置100に送信される。
【0045】
ステップS51において、判定部140は、接触位置Pと、加振力情報26と、対象物300の変位とに基づいて、対象物300の固定状況を判定する。
対象物300の変位は、判定部140により対象画像25から取得される。
判定部140は、加振力の大きさと接触位置Pにおける加振力の向きとを算出し、対象物300の応答である変位を取得し、これらの算出結果を統合することにより対象物300の固定状況あるいは固定状態の判定を行う。
以上のように、対象物300の変位と加振力の関係から、固定状況を指標として評価することができる。
【0046】
***他の構成***
<変形例1>
図10は、本実施の形態の変形例1に係るグローブ200の構成例を示す図である。
グローブ200は、作業者10の各指の指先の外側に、指先の動きを検知するモーションセンサを備えていてもよい。
範囲算出部120は、作業者10の各指の基節骨の角度と、モーションセンサ205により検知された指先の動きとに基づいて、指先移動範囲Rを算出する。
【0047】
モーションセンサ205は、例えば、加速度を計測可能な加速度センサである。範囲算出部120は、初期位置からの変位量から指先位置を推定する。想定する把持方法のバリエーションを踏まえて、利用するモーションセンサの数を変化させてもよい。
【0048】
変形例1に係るグローブ200によれば、指先の位置推定精度が向上し正確かつ、安定的に加振位置を推定できる。
【0049】
<変形例2>
図11は、本実施の形態の変形例2に係るグローブ200の構成例を示す図である。
グローブ200は、グローブ200における一対の指の各指に設けられ、撮影装置201を固定する固定具206を備えていてもよい。固定具206は、例えば、グローブ200における一対の指の各指に設けられた指輪261と、指輪261と撮影装置201とを連結する剛体262とを備える。
【0050】
変形例2に係るグローブ200によれば、指に固定する指輪261と撮影装置201とを剛体262で接続するので、指と撮影装置201の位置推定精度が向上し、指先位置の推定精度も向上する。
【0051】
<変形例3>
図12は、本実施の形態の変形例3に係るグローブ200の構成例を示す図である。
マーカ204は、突起形状を有していてもよい。
基節骨に対応するマーカとして、各指で形状の異なる立体物をグローブの表面に形成もしくは固定してもよい。基節骨の掌側に設置する位置検知用のマーカとして、突起として形状に特徴のあるものを用いることにより、カメラでマーカを検知できる基節骨の角度範囲が広がり、より安定的に指先位置推定を行うことができる。
【0052】
<変形例4>
図13は、本実施の形態の変形例4に係るグローブ200の構成例を示す図である。
撮影装置201は、複数備えられていてもよい。すなわち、グローブ上のカメラを複数台設置してもよい。光学的撮像素子として、2つ以上のカメラモジュールをグローブ上に配置することで、カメラでマーカを検知できる角度範囲が広がり、より安定的に指先位置推定を行うことができる。
【0053】
<変形例5>
本実施の形態では、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の機能がソフトウェアで実現される。変形例として、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の機能がハードウェアで実現されてもよい。
具体的には、固定状況判定システム500は、プロセッサ910に替えて電子回路909を備える。
【0054】
図14は、本実施の形態の変形例5に係る情報処理装置100の構成例を示す図である。
電子回路909は、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の機能を実現する専用の電子回路である。電子回路909は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略語である。
【0055】
位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。
【0056】
別の変形例として、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。また、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の一部またはすべての機能がファームウェアで実現されてもよい。
【0057】
プロセッサと電子回路の各々は、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。つまり、位置姿勢推定部110と範囲算出部120と接触位置算出部130と判定部140の機能は、プロセッシングサーキットリにより実現される。
なお、グローブ200に搭載されているコンピュータについても変形例5と同様である。
【0058】
***本実施の形態の効果の説明***
本実施の形態に係る固定状況判定システムでは、現地作業者が接触力センサを有するグローブを着用し、対象物を把持・加振し、その際のセンサ情報を元に、遠隔地の検査者に触力覚情報を提示する。
例えば、ロボットハンドで物体を把持する際に、ロボットハンド部に設置されたカメラで物体位置を検知するハンドアイシステムでは、把持中の指先は対象物による死角に入ってしまうため、指先の位置を把握できない。このため、指から対象物に印加される加振力の印加位置・向きを把握することができず、これにより判定精度が低下する恐れがあった。
一方、本実施の形態に係る固定状況判定システムによれば、対象物における指先の接触位置を正確に取得することができる。よって、対象物にかかっている力の向き、および、対象物の正確な変位といった情報を正確に把握することができる。よって、対象物の固定状況を高精度に判定することができる。
【0059】
本実施の形態に係る固定状況判定システムでは、掌側の、指の付け根の骨(基節骨)に対応する部分に指毎に異なるマーカを印刷し、親指と人差し指の間の空間に小型カメラを組み込んだグローブを利用する。そして、以下の処理を行う。
(1)検査対象の形状データを利用して、カメラにより対象物の位置を算出する。
(2)カメラに映る、マーカにより、各指の基節骨の角度を算出する。
(3)基節骨の角度情報を元に、指先位置の候補となる範囲を算出する。
(4)対象物の位置・形状情報と、指先位置の候補の関係から、接触位置を算出する。
(4)加振動作中の、指先の接触位置と接触力情報の変化から、3次元的な加振力の変化を算出し、対象物の変位の情報と統合することで、対象物の固定状況を算出する。
以上のように、本実施の形態に係る固定状況判定システムによれば、指先の位置推定精度が向上し正確かつ、安定的に加振位置を推定できる。
【0060】
以上の実施の形態1では、固定状況判定システムの各部を独立した機能ブロックとして説明した。しかし、固定状況判定システムの構成は、上述した実施の形態のような構成でなくてもよい。固定状況判定システムの機能ブロックは、上述した実施の形態で説明した機能を実現することができれば、どのような構成でもよい。また、固定状況判定システムは、1つの装置でなく、複数の装置から構成されたシステムでもよい。
また、実施の形態1のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、この実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、この実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0061】
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示の範囲、本開示の適用物の範囲、および本開示の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、フロー図あるいはシーケンス図を用いて説明した手順は、適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 作業者、25 対象画像、26 加振力情報、61 画像候補、100 情報処理装置、110 位置姿勢推定部、120 範囲算出部、130 接触位置算出部、140 判定部、160 記憶部、161 対象物データベース、200 グローブ、201 撮影装置、202 接触力センサ、203 センサデータ収集モジュール、204 マーカ、205 モーションセンサ、206 固定具、261 指輪、262 剛体、300 対象物、500 固定状況判定システム、909 電子回路、910 プロセッサ、921 メモリ、922 補助記憶装置、930 入力インタフェース、940 出力インタフェース、950 通信装置。
【要約】
固定状況判定システム(500)は、作業者(10)が着用して対象物(300)を把持するグローブ(200)を備える。撮影装置(201)は、グローブ(200)における対象物(300)を把持する一対の指の間に相当する位置に配置され、対象画像(25)を撮影する。位置姿勢推定部(110)は、対象物(300)の位置および姿勢を推定する。範囲算出部(120)は、作業者(10)の指先の動きの範囲である指先移動範囲を算出する。接触位置算出部(130)は、対象物(300)の位置および姿勢と指先移動範囲とに基づいて、対象物(300)における指先の接触位置を算出する。判定部(140)は、指先の接触位置における対象物(300)に対する加振力の加振力情報(26)と対象物(300)の変位とに基づいて、対象物(300)の固定状況を判定する。