IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青島海爾洗衣机有限公司の特許一覧 ▶ ハイアールアジアインターナショナル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図1
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図2
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図3
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図4
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図5
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図6
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図7
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図8
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図9
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図10
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図11
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図12
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図13
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図14
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図15
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図16
  • 特許-靴用洗濯機および靴の洗濯方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】靴用洗濯機および靴の洗濯方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 23/02 20060101AFI20240311BHJP
   D06F 9/00 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
A47L23/02 A
D06F9/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019233506
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101784
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】八木 文也
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110226910(CN,A)
【文献】中国実用新案第204698491(CN,U)
【文献】特開昭62-240021(JP,A)
【文献】実公平04-004698(JP,Y2)
【文献】中国特許出願公開第103850088(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108937811(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107374561(CN,A)
【文献】中国実用新案第208864256(CN,U)
【文献】中国実用新案第204033293(CN,U)
【文献】中国実用新案第201234970(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L23/00-23/28
D06F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が溜められる外槽と、
前記外槽に収容される内槽と、
前記内槽に収容され、各々が1個の片靴を収容する偶数個の独立した個別槽と、
前記個別槽を回転させる駆動部と、を備え
前記個別槽が、
前記個別槽の内部に配置され、ここに収容される片靴を引っ掛けて支持するためのフック部と、
前記フック部の表面に複数の毛状部材が形成されてなる内ブラシと、
を備え、
前記個別槽がその中心軸の回りに回転すると、これに応じて前記フック部が昇降するように構成される、
ことを特徴とする、靴用洗濯機。
【請求項2】
水が溜められる外槽と、
前記外槽に収容される内槽と、
前記内槽に収容され、各々が1個の片靴を収容する偶数個の独立した個別槽と、
前記個別槽を回転させる駆動部と、を備え
前記駆動部は、
前記偶数個の個別槽の各々を、その中心軸の回りに回転させる個別回転モードと、
前記偶数個の個別槽を、前記内槽の中心軸の回りに回転させる全体回転モードと、
を選択的に実行することができる、
ことを特徴とする、靴用洗濯機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の靴用洗濯機であって、
前記個別槽が、
前記個別槽の周壁の内面に複数の毛状部材が形成されてなる外ブラシ、
を備えることを特徴とする、靴用洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴を洗濯するための靴用洗濯機および靴の洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりによりランニングや散歩がブームとなっており、これに伴い、スニーカーを着用する人が増えている。
【0003】
スニーカーの着用頻度が高まると、当然に汚れやすくなる。家庭用の洗濯機でスニーカーなどの靴を洗濯できる機能を備えるものは少ないため、多くの人は、スニーカーが汚れると自宅で手洗いしていた。しかしながら、スニーカーなどの靴を自宅で手洗いするのには手間がかかる。
【0004】
そこで、コインランドリー店舗を利用してスニーカーなどの靴を洗濯する人が増えている。すなわち、コインランドリー店舗には、靴の洗濯に特化した靴用洗濯機が設置されていることがあり、これを利用することで、手間をかけずにスニーカーなどの靴を洗濯することができる。
【0005】
従来の靴用洗濯機の構成は、例えば特許文献1に示されている。ここに示される靴用洗濯機は、外槽およびその内部に配置された内槽を備えており、内槽の底部の中央に回転軸が立設されている。この回転軸の周面には、径方向に突出する主ブラシが設けられる。また、内槽の底部側には、上向きに突出する補助ブラシが設けられている。そして、洗浄対象となる靴が内槽内に入れられた状態で回転軸が回転されることで、靴の表面が主ブラシおよび補助ブラシで擦られて、洗われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭62-120956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いうまでもなく、靴は、左右で一足である(以下、左あるいは右だけの靴を「片靴」とよび、左の片靴と右の片靴を合わせたものを「靴」とよぶ)。したがって、1足以上の靴を洗濯する場合、内槽には、2以上の偶数個の片靴が入れられて、これらが同時に洗濯されることになる。
【0008】
特許文献1に記載の構成において、内槽に2個以上の片靴が入れられると、回転軸が回転された際に、片靴同士が擦れたり、ある片靴の紐が別の片靴に絡まったりして、片靴がダメージを受けることが避けられない。また、内槽内で片靴同士が重なった姿勢となってしまうと、重なった部分が適切にブラシに接触せず、汚れが十分に除去されない。すなわち、洗いむらが生じる。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の構成において、内槽に入れられている片靴が、その靴底を内槽の周壁側に向けるような姿勢となっていると、内槽を高速回転させて片靴を脱水しようとしたときに、遠心力で周壁に寄った片靴の靴底によって該周壁に設けられている通水孔が塞がれてしまう。こうなると、内槽から適切に水が排出されず、脱水むらが生じたり、脱水が不十分になったりする。このような場合、内槽に入れられている片靴を、靴底が内槽の中心軸側に向くような姿勢に置き直してから、追加の脱水を行わせなければならない。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、靴に大きなダメージを与えることなくこれを適切に洗濯することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明の靴用洗濯機は、
水が溜められる外槽と、
前記外槽に収容される内槽と、
前記内槽に収容され、各々が1個の片靴を収容する偶数個の独立した個別槽と、
前記個別槽を回転させる駆動部と、を備え
前記個別槽が、
前記個別槽の内部に配置され、ここに収容される片靴を引っ掛けて支持するためのフック部と、
前記フック部の表面に複数の毛状部材が形成されてなる内ブラシと、
を備え、
前記個別槽がその中心軸の回りに回転すると、これに応じて前記フック部が昇降するように構成される、ことを特徴とする。
また、本発明の靴用洗濯機は、
水が溜められる外槽と、
前記外槽に収容される内槽と、
前記内槽に収容され、各々が1個の片靴を収容する偶数個の独立した個別槽と、
前記個別槽を回転させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
前記偶数個の個別槽の各々を、その中心軸の回りに回転させる個別回転モードと、
前記偶数個の個別槽を、前記内槽の中心軸の回りに回転させる全体回転モードと、
を選択的に実行することができる、ことを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記靴用洗濯機は、
前記個別槽が、
前記個別槽の周壁の内面に複数の毛状部材が形成されてなる外ブラシ、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る靴用洗濯機によると、内槽に偶数個の独立した個別槽が収容されており、各個別槽に1個の片靴が収容されるので、片靴同士が擦れたり、ある片靴の紐が別の片靴に絡まったりすることがなく、片靴がダメージを受けにくい。また、片靴同士が重なった姿勢とならないので、洗いや脱水のむらが生じにくい。したがって、靴に大きなダメージを与えることなくこれを適切に洗濯することができる。
特に、個別槽がフック部を備える場合、これに片靴を引っ掛けておくことで、片靴が個別槽の周壁の側に片寄ることを防止できる。したがって、個別槽を安定して回転させることができる。また、個別槽の周壁に形成されている通水孔が片靴の靴底で塞がれる(ひいては、脱水むらが生じたり、脱水が不十分になったりする)といった事態が生じない。さらに、個別槽がその中心軸の回りに回転したときにこのフック部が昇降するように構成さ
れる場合、フック部に引っ掛けられている片靴の内側を該フック部に設けられている内ブラシによって擦り洗いして、片靴の内側の汚れを除去することができる。
本発明に係る靴用洗濯機によると、内槽に偶数個の独立した個別槽が収容されており、各個別槽に1個の片靴が収容されるので、片靴同士が擦れたり、ある片靴の紐が別の片靴に絡まったりすることがなく、片靴がダメージを受けにくい。また、片靴同士が重なった姿勢とならないので、洗いや脱水のむらが生じにくい。したがって、靴に大きなダメージを与えることなくこれを適切に洗濯することができる。
特に、駆動部が、個別回転モードおよび全体回転モードを選択的に実行できる場合、動作のバリエーションを増やすことができる。すなわち、全体回転モードが実行された場合、各個別槽は比較的大きな回転半径で回転されるので、ここに収容されている片靴に大きな遠心力を作用させることができる。一方、個別回転モードが実行された場合、各個別槽は比較的小さな回転半径で回転されるが、その分、高速回転が可能となる。例えば、全体回転モードで個別槽を大きく回転させて片靴に含まれている水をある程度吹き飛ばしてその重さを軽くしてから、個別回転モードで個別槽を高速回転させて片靴に残存している水分をさらに吹き飛ばす、といった二段階の脱水を行うことで、片靴をむらなく十分に脱水することが可能となる。こうすることで、追加の脱水が不要となり、追加の脱水を行う手間が省かれるとともに、従来に比べて脱水に要する時間が短縮される。
【0018】
特に、個別槽が外ブラシを備える場合、例えば個別槽がその中心軸の回りに回転されることで、ここに収容されている片靴の外側を該外ブラシによって擦り洗いすることができる。このとき、各個別槽には1個の片靴が収容されるので、片靴同士が重なった姿勢となることがなく、片靴の外側の全体が満遍なく外ブラシに接触することができる。したがって、片靴の外側の汚れを十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る靴用洗濯機の全体を示す側面図。
図2】外槽および内槽とその内部に収容された4個の個別槽を、斜め上から見た斜視図。
図3図2を上から見た平面図
図4図3の矢印A方向から見た側断面図。
図5図3の矢印B方向から見た側断面図。
図6図3の矢印C方向から見た側断面図。
図7】個別槽の平面図および側断面図。
図8図6の矢印D方向から見た側断面図。
図9】制御部のハードウェア構成を示すブロック図。
図10】フックブラシユニットを斜め上から見た斜視図。
図11】フックブラシユニットの平面図および側面図。
図12】接続部の構成を説明するための図。
図13】接続部が、支持部の回転動作をブラシ部に伝達する態様を説明するための図。
図14】靴用洗濯機が靴を洗濯する動作の流れを示す図。
図15】第1出力軸が回転されず、第2出力軸が逆方向に回転されている状態を示す図。
図16】第1出力軸が回転されず、第2出力軸が順方向に回転されている状態を示す図。
図17】第2出力軸が回転されず、第1出力軸が回転されている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<1.構成>
実施形態に係る靴用洗濯機は、靴を洗濯するための装置であり、例えばコインランドリー店舗に設置される。この靴用洗濯機の構成について、図1図6を参照しながら説明する。図1は、靴用洗濯機100の全体を示す側面図である。図2は、入れ子状に配置された外槽2および内槽3とその内部に収容された4個の個別槽4を斜め上から見た斜視図である。図3は、図2を上から見た平面図である。図4は、図3の矢印A方向から見た側断面図である。図5は、図3の矢印B方向から見た側断面図である。図6は、図3の矢印C方向から見た側断面図である。
【0025】
靴用洗濯機100は、筐体1、筐体1に収容された外槽2、外槽2に収容された内槽3、内槽3に収容された偶数個(この実施形態では4個)の個別槽4、各個別槽4の内部に設けられるフックブラシユニット5、個別槽4を回転させる駆動部6、これらの各部を制御する制御部7、などを備える。
【0026】
(筐体1)
筐体1は、内部に収容空間を形成する略直方体状の部材であり、その上面に形成される開口を閉鎖/開放するための蓋11が設けられている。また、筐体1には、利用者からの各種の操作を受け付けるための操作部12が配置される。
【0027】
(外槽2)
外槽2は、水を溜めるための貯留槽であり、筐体1の内部に、吊棒(図示省略)によって弾性的に支持される。外槽2は、上面が開口するとともに底面が閉鎖される円筒状の部材であり、その中心軸L2を略鉛直に延在させるような姿勢で配置される。
【0028】
外槽2の上方には、一端が外部の給水設備などに接続される給水管21が、給水口を、外槽2の開口に臨ませるようにして、配置される。給水管21の途中部分には、給水バルブ211が設けられており、この給水バルブ211が開状態とされると、外部の給水設備などから供給される水が、給水管21を介して外槽2に収容されている内槽3に流入する。内槽3に流入した水は、ここに形成されている通水孔(図示省略)を通過して外槽2に流出するとともに、個別槽4に形成されている通水孔41を通過して個別槽4内に流入する。
【0029】
また、外槽2の底部には、一端が外部の排水設備などに接続される排水管22の他端が、接続されている。排水管22の途中部分には、排水バルブ221が設けられており、この排水バルブ221が開状態とされると、外槽2内の水が、排水管22を介して排水される。
【0030】
(内槽3)
内槽3は、いわゆる脱水槽であり、外槽2の内部に入れ子状に収容される。内槽3は、外槽2と同様、上面が開口するとともに底面が閉鎖される円筒状の部材であり、その中心軸L3が外槽2の中心軸L2と同軸になるような姿勢で、配置される。内槽3の周壁には、ほぼ全周にわたって多数の通水孔(図示省略)が穿孔されている。
【0031】
(個別槽4)
個別槽4について、主として図3図6および図7を参照しながら説明する。図7は、個別槽4の平面図(図7(a))および側断面図(図7(b))である。
【0032】
個別槽4は、1個の片靴Sを収容するための槽である。具体的には、個別槽4は、上面が開口した有底円筒状の部材であり、一般的な片靴Sを1個収容するのに必要十分な収容空間を、内部に形成する。
【0033】
内槽3の内部には、複数個の個別槽4が収容される。靴を洗濯する場合、左右の片靴Sを一度に洗濯することが普通であるため、内槽3の内部に収容される個別槽4の個数は、偶数とされる。後述するように、靴用洗濯機100は既存の洗濯機を利用して形成することも可能であり、既存の洗濯機の内槽のサイズを考慮すると、個別槽4の個数は、2個あるいは4個であることが好ましい。さらに、対称性を考慮すると、該個数は2個よりも4個であることが特に好ましい。この実施形態では、4個の個別槽4が設けられるものとする。
【0034】
4個の個別槽4は、互いに離間するように独立して設けられ、内槽3の中心軸L3に対して対称性をもつようにレイアウトされる。具体的には、各個別槽4は、上方から見て、各々の中心軸L4が、内槽3の中心軸L3と同心に配置された正方形の頂点にくるような位置に配置される。
【0035】
各個別槽4の周壁には、ほぼ全周にわたって多数の通水孔41が穿孔されている。また、各個別槽4の下面には、収容枠部42が形成されている。後述するように、この収容枠部42に、内槽3の内部であってその底面上に配置されているカバー部644から突出する軸部643の先端が収容され、これによって、各個別槽4は、中心軸L4を略鉛直に延在させるような姿勢で、内槽3の内部における上述した各位置に支持される。
【0036】
個別槽4の周壁の内面には、その周方向に沿って略等ピッチで配設された複数の外ブラシ43が設けられる。各外ブラシ43は、個別槽4に収容される片靴Sの外側を擦り洗いするための部材であり、個別槽4の周壁の内面に、その軸方向に沿って略等ピッチで形成された多数の毛状部材431からなる。各毛状部材431は、細長く弾力のある部材で形成され、個別槽4の周壁の法線方向に固着された基端部分から、先端部分に向かうにつれて後述する順方向AR1に緩やかに屈曲して延在している。
【0037】
(フックブラシユニット5)
フックブラシユニット5は、各個別槽4の内部に設けられ、ここに収容される片靴Sを係止するとともに、その内側を擦り洗いするための部材である。フックブラシユニット5の構成については後に説明する。
【0038】
(駆動部6)
駆動部6について、図1図6を参照しながら説明する。駆動部6は、個別槽4を回転させる(具体的には、個別槽4を、その中心軸L4の回りで、あるいは、内槽3とともにその中心軸L3の回りで、回転させる)ための機構であり、内槽3の下方に配置されたモータ61および動力分配部62を備える。モータ61の出力軸には第1プーリ611が、動力分配部62の入力軸には第2プーリ621が、それぞれ取り付けられており、第1プーリ611と第2プーリ621との間には、無端ベルト63が掛け回されている。これにより、モータ61から動力分配部62への動力の伝達を行うことができるようになっている。
【0039】
動力分配部62は、クラッチ機構を備えており、プーリ611,621を通じてモータ61より入力される駆動力の出力先を、第1出力軸621、あるいは、第2出力軸622に、選択的に切り換えることができる。両出力軸621,622はいずれも内槽3の中心軸L3と同軸に配置されているが、相対的に外側にある第1出力軸621は、内槽3の下面の中心に接続され、相対的に内側にある第2出力軸622は、内槽3の底部を貫通して内槽3の内部に突出して設けられ、ここに配置されている駆動ギヤ641(後述する)の中心に接続される。
【0040】
駆動部6は、さらに、ギヤユニット64を備える。ギヤユニット64について、図6図8を参照しながら説明する。図8は、図6の矢印D方向から見た側断面図である。
【0041】
ギヤユニット64は、駆動ギヤ641と、その周囲にこれと噛み合って設けられた複数の従動ギヤ642とを備える。ただし、従動ギヤ642の配設個数は、個別槽4と同数個であり、この実施形態では4個である。
【0042】
駆動ギヤ641および4個の従動ギヤ642は、内槽3の内部であって、その底面上に配置される。駆動ギヤ641の中心軸は、内槽3の中心軸L3と同心に配置され、ここに駆動部6の第2出力軸622が接続される。一方、各従動ギヤ642は、各個別槽4と対応して設けられる。すなわち、各従動ギヤ642は、上方から見て、中心軸が、いずれかの個別槽4の中心軸L4と重なるような位置に配置される。そして、各従動ギヤ642は、対応する個別槽4と、軸部643を介して接続される。この軸部643は、断面が円の一部が弦に沿って切り欠かれた切欠円形状の長尺部材であり、下端において従動ギヤ642の中心に貫設され、上端において個別槽4の下面に形成された切欠円形状の収容枠部42(図7参照)内に収容される。これによって、従動ギヤ642の回転が、対応する個別槽4に伝達されるようになっている。
【0043】
駆動ギヤ641および4個の従動ギヤ642は、カバー部644内に収容されることによって、内槽3内の水から遮断されるようになっている。カバー部644は、具体的には、下面が開口するとともに上面が閉鎖された扁平な略円筒形状の部材であり、内部に駆動ギヤ641および4個の従動ギヤ642を収容しつつ、内槽3の底面と液密に接続される。カバー部644には、各従動ギヤ642と接続される軸部643を挿通させる貫通孔が形成されているが、各貫通孔と軸部643の間はシール部645により気密に封鎖される。
【0044】
このような構成を備える駆動部6の動作について説明する。まず、動力分配部62が、駆動力の出力先を第1出力軸621に切り換えている場合、モータ61が駆動されると、第2出力軸622と接続されている駆動ギヤ641はその軸回りに回転せず、第1出力軸621と接続されている内槽3がその中心軸L3の回りで回転する。すると、内槽3内に設けられている4個の個別槽4が、内槽3の中心軸L3の軸の回りで回転する(以下、このような回転モードを「全体回転モード」ともいう)。
【0045】
一方、動力分配部62が、駆動力の出力先を第2出力軸622に切り換えている場合、モータ61が駆動されると、第1出力軸621と接続されている内槽3は回転せず、第2出力軸622と接続されている駆動ギヤ641がその中心軸の回りで回転する。すると、駆動ギヤ641と噛み合って設けられている4個の従動ギヤ642が、同期して、互いに同じ方向に回転する。これにより、4個の個別槽4が、各々の中心軸L4の回りに、同期して同じ方向に回転する(以下、このような回転モードを「個別回転モード」ともいう)。
【0046】
このように、駆動部6は、モータ61の駆動力の出力先を第1出力軸621と第2出力軸622との間で切り換えることで、4個の個別槽4を内槽3の中心軸L3の回りに回転させる全体回転モードと、4個の個別槽4の各々をその中心軸L4の回りに回転させる個別回転モードとを、選択的に実行することができる、
【0047】
(制御部7)
制御部7について、図1に加え、図9を参照しながら説明する。図9は、制御部7のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0048】
制御部7は、例えばマイクロコンピュータなどで構成されており、中央演算処理装置であるCPU71、RAM等の揮発性記憶装置からなるメモリ72、ROM等の不揮発性記憶装置からなる記憶部73、インターネットなどの通信ネットワークを介して外部機器と通信を行うためのネットワークインターフェースである通信部74、等を含んで構成される。記憶部73には、靴用洗濯機100において一連の動作を実行するためのプログラム、該プログラムの実行に用いられる各種のパラメータや制御フラグ、などが記憶される。制御部7は、靴用洗濯機100が備える各部(具体的には、給水バルブ211、排水バルブ221、モータ61、動力分配部62、など)と接続されており、記憶部73に記憶されたプログラムにしたがって、これら各部を制御する。
【0049】
<2.フックブラシユニット5>
次に、フックブラシユニット5について、図10図12を参照しながら説明する。図10は、フックブラシユニット5を斜め上から見た斜視図である。図11は、フックブラシユニット5の平面図(図11(a))および側面図(図11(b))である。図12は、接続部53の構成を説明するための図である。
【0050】
フックブラシユニット5は、各個別槽4の内部に設けられ、ここに収容される片靴Sを係止するとともに、その内側を擦り洗いするための部材であり、支持部51と、ブラシ部52と、接続部53とを備える。
【0051】
支持部51は、ブラシ部52を支持する部材であり、個別槽4の内部であって、その底面上に固定されるベース部511と、ベース部511から立設される軸部512と、軸部512の上端に設けられる円板状の支持円板513と、を備える。ベース部511、軸部512、および、支持円板513は、全て個別槽4の中心軸L4と同軸に配置される。
【0052】
ブラシ部52は、略円錐状の本体部(フック部)521を備える。フック部521は、個別槽4の内部に収容される片靴Sを引っ掛けて支持するため部材である。すなわち、片靴Sは、その内部にフック部521が差し込まれた状態とされることで、個別槽4の内部に支持される(図5参照)。フック部521には、上方から見て十字状であって、側方から見てフック部521の底部の近傍に到達するようなスリット522が形成される。このスリット522により分割された4個の部分が中心軸に近づく方向に弾性変形することにより、フック部521の先端側の部分が縮径されるようになっている。
【0053】
フック部521の周面の全体には、多数の毛状部材5231が満遍なく設けられている。各毛状部材5231は、細長く弾力のある部材で形成され、フック部521の径方向の外側に向かって延在している。これらの毛状部材5231が、個別槽4に収容される片靴Sの内側を擦り洗いするための内ブラシ523を構成する。
【0054】
接続部53は、支持部51とブラシ部52を接続する部分であり、支持部51の側に形成された一対の下スロープ部531,531と、ブラシ部52の側に形成された一対の上スロープ部532,532とを備える。
【0055】
一対の下スロープ部531,531は、支持円板513の上面に、その中心を挟んで対向するようにして設けられる。各下スロープ部531は、凸条の突出部であり、上方から見て支持円板513の周縁に沿って形成される。また、各下スロープ部531は、側方から見て緩やかな弧を描きながら立ち上がる傾斜面531aと、傾斜面531aと連なり、略水平に延在する頂面531bと、頂面531bと連なり、略鉛直に立ち下がる壁面531cと、を備える。
【0056】
一方、一対の上スロープ部532,532は、フック部521の底面に、その中心を挟んで対向するようにして設けられる。各上スロープ部532は、下スロープ部531の上下を逆向けにした形状であって、下スロープ部531と対応する位置に設けられる。すなわち、各上スロープ部532は、凸条の突出部であり、下方から見て、フック部521の底面に規定される仮想円(すなわち、該底面と同心で、支持円板513と同径であるような仮想円)の周縁に沿って形成される。各上スロープ部532は、側方から見て緩やかな弧を描きながら立ち下がる傾斜面532aと、傾斜面532aと連なり、略水平に延在する頂面532bと、頂面532bと連なり、略鉛直に立ち上がる壁面532cと、を備える。
【0057】
一対の下スロープ部531,531および一対の上スロープ部532,532は、カバー部533内に収容されることによって、内槽3内の水から遮断されるようになっている。カバー部533は、具体的には、逆円筒状の部材であり、その上面に、円筒状の凹部が形成されている。カバー部533は、この凹部の内部に一対の下スロープ部531,531および一対の上スロープ部532,532を収容しつつ、フック部521の下面に液密に接続される。
【0058】
上記の通り、支持部51のベース部511は個別槽4に対して固定されている。したがって、個別槽4がその中心軸L4の回りで回転すると、支持部51も個別槽4とともに回転するところ、この回転動作は、接続部53を介してブラシ部52に伝達される。この伝達の態様について、図13を参照しながら説明する。図13は、接続部53が支持部51の回転動作をブラシ部52に伝達する態様を説明するための図である。
【0059】
例えば、図13(a)に示すように、下スロープ部531の傾斜面531aが、上スロープ部532の傾斜面532aに近接した状態から、支持部51が順方向AR1に回転したとする。ただし、ここでいう順方向AR1とは、支持部51の下スロープ部531における壁面531cの側の端部から傾斜面531aの側の端部に向かう方向である。また、順方向AR1と逆の方向を逆方向AR2とする。
【0060】
この場合、まず、下スロープ部531の傾斜面531aが、上スロープ部532の傾斜面532aに当接した状態となる。ブラシ部52には、それ自身やこれに引っ掛けられている片靴Sが水から受ける抵抗などにより、回転を妨げる力が働いているので、ブラシ部52と支持部51との間には回転の遅れが生じる。すなわち、ブラシ部52は支持部51に対して相対的に逆方向AR2に回転する。ここでは、ブラシ部52と支持部51は、傾斜面532a,531aを介して当接しているので、ブラシ部52は、上スロープ部532の傾斜面532aを下スロープ部531の傾斜面531aに沿って摺動させつつ、支持部51に対して相対移動する。つまり、ブラシ部52は、支持部51に対して、逆方向AR2に相対回転しつつ、垂直上方に移動する。
【0061】
支持部51の回転が進むと、図13(b)に示すように、下スロープ部531の頂面531bが、上スロープ部532の頂面532bに当接した状態となる。こうなると、ブラシ部52は、上スロープ部532の頂面532bを下スロープ部531の頂面531bに沿って摺動させつつ、支持部51に対して逆方向AR2に相対回転する。
【0062】
支持部51の回転がさらに進むと、ブラシ部52に形成されている各上スロープ部532が、支持部51に形成されている一対の下スロープ部531,531の間に落ちる。つまり、ブラシ部52は、支持部51に対して、垂直下方に移動する。こうして、図13(a)に示される状態に戻る。
【0063】
このように、支持部51が順方向AR1に回転する場合、ブラシ部52は、支持部51に対して相対的に180°回転する間に、一回の昇降動作を行う。つまり、支持部51が順方向AR1に回転する間、ブラシ部52は昇降動作を反復して行う。このように、接続部53は、順方向AR1に回転する支持部51の該回転動作を、ブラシ部52の昇降動作に変換して伝達する。
【0064】
一方、図13(a)に示される状態から、支持部51が逆方向AR2に回転したとする。この場合、下スロープ部531の壁面531cが、上スロープ部532の壁面532cに当接した状態となる。上記の通り、ブラシ部52には、その回転を妨げる力が働いているので、支持部51はブラシ部52から逆方向AR2への回転を妨げる抵抗を受けるが、これに抗して支持部51が逆方向AR2に回転されると、ブラシ部52は支持部51と一体になって逆方向AR2に回転する。
【0065】
このように、支持部51が逆方向AR2に回転する場合、ブラシ部52は、支持部51と一体となって逆方向AR2に回転する。つまり、接続部53は、逆方向AR2に回転する支持部51の該回転動作を、そのままブラシ部52に伝達する。
【0066】
<3.動作>
次に、靴用洗濯機100が靴を洗濯する動作について、図1図13に加え、図14図17を参照しながら説明する。図14は、該動作の流れを示す図である。図15は、第1出力軸621が回転されず、第2出力軸622が逆方向AR2に回転されている状態を示す図である。図16は、第1出力軸621が回転されず、第2出力軸622が順方向AR1に回転されている状態を示す図である。図17は、第2出力軸622が回転されず、第1出力軸621が回転されている状態を示す図である。
【0067】
まず、利用者は、筐体1の蓋11を開けて、洗濯したい靴の左の片靴Sを、1個の個別槽4に入れる。このとき、利用者は、個別槽4内に設けられているフックブラシユニット5のブラシ部52が、片靴Sの中に差し込まれるようにして、片靴Sをブラシ部52に引っ掛ける。同様に、利用者は、右の片靴Sを別の個別槽4に入れる。靴用洗濯機100は4個の個別槽4を備えているので、2足の靴を一度に洗濯することができるが、1足の靴だけを洗濯する場合は、対称性に鑑みて、隣り合う個別槽4ではなく、対向する個別槽4に各片靴Sを入れることが好ましい。洗濯したい全ての片靴Sが個別槽4に入れられると、利用者は、筐体1の蓋11を閉じるとともに、コイン等を投入して、操作部12を介して洗濯開始の指示を入力する。
【0068】
操作部12を介して洗濯開始の指示が入力されると、靴の洗濯に係る一連の動作が開始される。以下に説明する一連の動作は、制御部7が、記憶部73に記憶されたプログラム(および、これに対応するパラメータなど)を読み出し、該プログラムにしたがって、靴用洗濯機100が備える各部を制御することによって実行される。
【0069】
ステップS1:給水工程
まず、制御部7は、蓋11をロックした上で、給水バルブ211を開状態とする。すると、外部の給水設備などから供給される水が、給水管21を介して外槽2に収容されている内槽3に流入する。内槽3に流入した水は、ここに形成されている通水孔(図示省略)を通過して外槽2内に流出してここに溜められるとともに、個別槽4に形成されている通水孔41を通過して個別槽4内に流入する。給水が開始されてから所定時間(例えば、1分)が経過して外槽2内の水位が所定の高さに達すると、制御部7は、給水バルブ211を閉状態として給水を停止させる。
【0070】
ステップS2:洗い工程
続いて、制御部7は、動力分配部62の出力先を第2出力軸622として、モータ61を駆動する。ただし、このときのモータ61の出力軸の回転方向は、各従動ギヤ642を順方向AR1に回転させるような方向とされる。ここでは、各従動ギヤ642と駆動ギヤ641は外歯車であるので、従動ギヤ642を順方向AR1に回転させるべく、モータ61の出力軸は逆方向AR2に回転される。このときの回転数としては例えば720rpmが好適である。
【0071】
このとき、モータ61の駆動力は、第1出力軸621には伝達されず、第2出力軸622だけに伝達される。したがって、図15に示されるように、内槽3は回転されずに静止されたまま、駆動ギヤ641が逆方向AR2に回転する。すると、駆動ギヤ641と噛み合って設けられている4個の従動ギヤ642が、同期して順方向AR1に回転し、4個の個別槽4が、各々の中心軸L4の回りに、同期して順方向AR1に回転する(個別回転モード)。これにより、個別槽4に収容されている片靴Sの外側(外面)が、個別槽4に形成されている外ブラシ43によって擦り洗いされる。
【0072】
また、各個別槽4がその中心軸L4の回りに順方向AR1に回転すると、ここに設けられているフックブラシユニット5の支持部51が個別槽4と一体になって順方向AR1に回転するところ、フックブラシユニット5の接続部53は、支持部51が順方向AR1に回転する場合、その回転動作をブラシ部52の昇降動作に変換して伝達する。したがって、各個別槽4がその中心軸L4の回りに順方向AR1に回転すると、これに応じて、ブラシ部52が昇降する。このとき、片靴Sは、その外面において外ブラシ43と接触しており、これによって昇降移動が阻まれているために、ブラシ部52に追従しない。つまり、ブラシ部52が片靴Sに対して相対的に昇降し、これにより、片靴Sの内側(内面)が、ブラシ部52に形成されている内ブラシ523によって擦り洗いされる。
【0073】
ステップS3:排水および脱水工程
ステップS2の洗い工程が開始されてから所定時間(例えば、10分)が経過すると、制御部7は、排水バルブ221を開状態として、外槽2に貯留されている水を排水させる。また、制御部7は、動力分配部62の出力先を第2出力軸622のままとしつつ、回転方向を逆方向AR2から順方向AR1に切り替えて、モータ61を駆動する。このときの回転数としては例えば720rpm程度が好適である。
【0074】
このときも、モータ61の駆動力は、第1出力軸621には伝達されず、第2出力軸622だけに伝達される。したがって、図16に示されるように、内槽3は回転されずに静止されたまま、駆動ギヤ641が順方向AR1に回転する。すると、駆動ギヤ641と噛み合って設けられている4個の従動ギヤ642が、同期して逆方向AR2に回転し、4個の個別槽4が、各々の中心軸L4の回りに、同期して逆方向AR2に回転する(個別回転モード)。
【0075】
各個別槽4がその中心軸L4の回りに逆方向AR2に回転すると、ここに設けられているフックブラシユニット5の支持部51が個別槽4と一体になって逆方向AR2に回転するところ、フックブラシユニット5の接続部53は、支持部51が逆方向AR2に回転する場合、その回転動作をそのままブラシ部52に伝達する。つまり、各個別槽4がその中心軸L4の回りに逆方向AR2に回転すると、ブラシ部52は支持部51(ひいては個別槽4)と一体になって逆方向AR2に回転する。片靴Sは、その外面において外ブラシ43と接触するとともに、その内面において内ブラシ52と接触しており、外ブラシ43および内ブラシ523が同期して個別槽4の中心軸L4の回りに回転すると、両ブラシ部43,523に連れ回されて個別槽4の中心軸L4の回りに回転する。これによって、片靴Sに含まれている水分が振り切られて通水孔41から排出され、片靴Sが脱水される。
【0076】
ステップS4:給水工程
ステップS3の排水および脱水工程が開始されてから所定時間(例えば、2分22秒)が経過すると、制御部7は、給水バルブ211を開状態として、外槽2に対する給水を開始させる。
【0077】
ステップS5:すすぎ工程
給水が開始されてから所定時間(例えば、1分)が経過して外槽2内の水位が所定の高さに達すると、制御部7は、所定時間(例えば、30秒)、給水バルブ211を開状態に維持することで、個別槽4内の片靴Sに注水すすぎを施す。
【0078】
ステップS6:第1脱水工程
ステップS5のすすぎ工程が開始されてから所定時間(例えば、1分45秒)が経過すると、制御部7は、排水バルブ221を開状態として、外槽2に貯留されている水を排水させるとともに、動力分配部62の出力先を第1出力軸621として、モータ61を駆動する。このときの回転数としては例えば720rpmが好適である。
【0079】
このとき、モータ61の駆動力は、第2出力軸622には伝達されず、第1出力軸621だけに伝達される。したがって、図17に示されるように、駆動ギヤ641はその中心軸の回りに回転されず、内槽3がその中心軸L3の回りに回転する。すると、内槽3に設けられている4個の個別槽4は、自身の中心軸L4の回りには回転されず、内槽3の中心軸L3の回りに回転する(全体回転モード)。これにより、個別槽4に収容されている片靴Sも、中心軸L4の回りに回転し、片靴Sに含まれている水分が遠心力によって振り切られて通水孔41から排出され、片靴Sが脱水される。
【0080】
ステップS7:第2脱水工程
ステップS6の第1脱水工程が開始されてから所定時間(例えば、2分30秒)が経過して片靴Sがある程度脱水されると、制御部7は、動力分配部62の出力先を第1出力軸621から第2出力軸622に切り換えて、モータ61を駆動する。ただし、このときのモータ61の出力軸の回転方向は、各従動ギヤ642を逆方向AR2に回転させるような方向(すなわち、順方向AR1)とされる。また、このときの回転数は、第1脱水工程における回転数よりも高いものとされる。該回転数としては例えば1080rpm程度が好適である。
【0081】
このとき、モータ61の駆動力は、第1出力軸621には伝達されず、第2出力軸622だけに伝達される。したがって、図16に示されるように、内槽3は回転されずに静止されたまま、駆動ギヤ641が順方向AR1に高速回転する。すると、駆動ギヤ641と噛み合って設けられている4個の従動ギヤ642が、同期して逆方向AR2に高速回転し、4個の個別槽4が、各々の中心軸L4の回りに、同期して逆方向AR2に高速回転する(個別回転モード)。
【0082】
上記の通り、各個別槽4がその中心軸L4の回りに逆方向AR2に回転すると、ブラシ部52は支持部51(ひいては個別槽4)と一体になって逆方向AR2に回転する。したがって、片靴Sは、外ブラシ43および内ブラシ523に連れ回されて、個別槽4の中心軸L4の回りに高速回転する。これによって、片靴Sに残っている水分が十分に振り切られて通水孔41から排出され、片靴Sが最終脱水される。
【0083】
ステップS7の第2脱水工程が開始されてから所定時間(例えば、1分30秒)が経過すると、制御部7は、モータ61の駆動を停止する。そして、各個別槽4の回転が止まると、蓋11のロックを解除する。これにより、靴の洗濯に係る一連の動作が終了する。
【0084】
<4.効果>
上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、水が溜められる外槽2と、外槽2に収容される内槽3(大ドラム)と、内槽3に収容され、各々が1個の片靴Sを収容する偶数個の独立した個別槽4(小ドラム)と、個別槽4を回転させる駆動部6と、を備える。
【0085】
この構成によると、内槽3に偶数個の独立した個別槽4が収容されており、各個別槽4に1個の片靴Sが収容されるので、片靴S同士が擦れたり、ある片靴Sの紐が別の片靴Sに絡まったりすることがなく、片靴Sがダメージを受けにくい。また、片靴S同士が重なった姿勢とならないので、洗いや脱水のむらが生じにくい。したがって、靴に大きなダメージを与えることなくこれを適切に洗濯することができる。
【0086】
また、上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、個別槽4が、個別槽4の周壁の内面に複数の毛状部材431が形成されてなる外ブラシ43、を備える。
【0087】
この構成によると、個別槽4がその中心軸L4の回りに回転されることで、ここに収容されている片靴Sの外側を外ブラシ43によって擦り洗いすることができる。このとき、各個別槽4には1個の片靴Sが収容されるので、片靴S同士が重なった姿勢となることがなく、片靴Sの外側の全体が満遍なく外ブラシ43に接触することができる。したがって、片靴Sの外側の汚れを十分に除去することができる。
【0088】
また、上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、個別槽4が、個別槽4の内部に配置され、ここに収容される片靴Sを引っ掛けて支持するためのフック部521と、フック部521の表面に複数の毛状部材5231が形成されてなる内ブラシ523と、を備え、個別槽4がその中心軸L4の回りに回転すると、これに応じてフック部521が昇降するように構成される。
【0089】
この構成によると、フック部521に片靴Sを引っ掛けておくことで、片靴Sが個別槽4の周壁の側に片寄ることを防止できる。したがって、個別槽4を安定して回転させることができる。また、個別槽4の周壁に形成されている通水孔41が片靴Sの靴底で塞がれる(ひいては、脱水むらが生じたり、脱水が不十分になったりする)といった事態が生じない。さらに、個別槽4がその中心軸L4の回りに回転したときにこのフック部521が昇降するので、フック部521に引っ掛けられている片靴Sの内側を該フック部521に設けられている内ブラシ523によって擦り洗いして、片靴Sの内側の汚れを除去することができる。
【0090】
また、上記の実施形態に係る靴用洗濯機100において、駆動部6は、偶数個の個別槽4の各々を、その中心軸L4の回りに回転させる個別回転モードと、偶数個の個別槽4を、内槽3の中心軸L3の回りに回転させる全体回転モードと、を選択的に実行することができる。
【0091】
この構成により、動作のバリエーションを増やすことができる。すなわち、全体回転モードが実行された場合、各個別槽4は比較的大きな回転半径で回転されるので、ここに収容されている片靴Sに大きな遠心力を作用させることができる。一方、個別回転モードが実行された場合、各個別槽4は比較的小さな回転半径で回転されるが、その分、高速回転が可能となる。したがって、上記の実施形態のように、全体回転モードで個別槽4を大きく回転させて片靴Sに含まれている水をある程度吹き飛ばしてその重さを軽くしてから、個別回転モードで個別槽4を高速回転させて片靴Sに残存している水分をさらに吹き飛ばす、といった二段階の脱水を行うことで、片靴Sをむらなく十分に脱水することが可能となる。こうすることで、追加の脱水が不要となり、追加の脱水を行う手間が省かれるとともに、従来に比べて脱水に要する時間が短縮される。
【0092】
また、上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、動力分配部62を備えることで、1個のモータ61で、個別回転モードと全体回転モードとを実現するので、構成が簡素化される。
【0093】
また、上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、ギヤユニット64を備えており、これによって1個のモータ61で複数個の個別槽4を回転させるので、部品点数が削減されるとともに構成が簡素化される。
【0094】
また、上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、フックブラシユニット5が、個別槽4の回転方向に応じてブラシ部52の移動態様を切り換える接続部53を備える。これにより、ステップS2の洗い工程においてブラシ52を片靴Sの内面を洗浄する要素として機能させるとともに、ステップS3の排水および脱水工程やステップS7の第2脱水工程において、ブラシ52を片靴Sの回転を促す要素として機能させることができる。
【0095】
また、上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、既存の洗濯機(すなわち、筐体、筐体の内部に支持された外槽、外槽の内部に設けられた内槽、内槽に設けられたパルセータ、内槽と接続された第1出力軸およびパルセータと接続された第2出力軸を選択的に回転させる駆動部、などを備える既存の洗濯機)を改造して得ることができる。すなわち、このような既存の洗濯機から靴用洗濯機100を得るためには、まず、既存の洗濯機からパルセータを取り外す。そして、パルセータが配置されていた部分にギヤユニット64を配置し、パルセータが連結されていた第2出力軸に駆動ギヤ641を接続する。さらに、駆動ギヤ641と噛み合って設けられている各従動ギヤ642と接続される軸部643の上端に、個別槽4を接続する。こうすることで、靴用洗濯機100が得られる。このようにして、筐体1、外槽2、内槽3および駆動部6として、既存の洗濯機に搭載されていたものをそのまま利用することで、既存の洗濯機から簡易に靴用洗濯機100を得ることができる。例えば、予め、ギヤユニット64と一群の個別槽4とをユニット化しておけば、これを既存の洗濯機のパルセータと交換するだけで、より簡単にこの改造を行うことができる。もっとも、靴用洗濯機100は必ずしも既存の洗濯機を改造して得る必要はなく、それ専用の部品で一から製造されてもよい。
【0096】
また、上記の実施形態に係る靴の洗濯方法は、外槽2に水を溜める給水工程(ステップS1)と、外槽2に収容された内槽3に収容され、各々が1個の片靴Sを収容する偶数個の独立した個別槽4の各々を、その中心軸L4の回りに回転させる洗い工程(ステップS2)と、外槽2に溜められた水を排水する排水工程(ステップS3)と、偶数個の個別槽4を、内槽3の中心軸L3の回りに回転させる第1脱水工程(ステップS6)と、偶数個の個別槽4の各々を、その中心軸L4の回りに回転させる第2脱水工程(ステップS7)と、を備える。
【0097】
この構成によると、内槽3に偶数個の独立した個別槽4が収容されており、各個別槽4に1個の片靴Sが収容されるので、靴に大きなダメージを与えることなくこれを適切に洗濯することができる。さらに、この構成においては、第1脱水工程および第2脱水工程の二段階の工程により脱水を行うところ、第1脱水工程では、各個別槽4は比較的大きな回転半径で回転されるので、ここに収容されている片靴Sに大きな遠心力を作用させて、片靴Sに含まれている水を吹き飛ばすことができる。この第1脱水工程によって片靴Sの重さが軽くなるので、続く第2脱水工程で各個別槽4を高速回転させることが可能となり、第2脱水工程において各個別槽4を高速回転させて片靴Sに残存している水分をさらに吹き飛ばすことができる。このような二段階の脱水を行うことで、片靴Sをむらなく十分に脱水することが可能となる。こうすることで、追加の脱水が不要となり、追加の脱水を行う手間が省かれるとともに、従来に比べて脱水に要する時間が短縮される。
【0098】
<5.変形例>
上記の実施形態では、内槽3内に設けられる個別槽4の個数は4個であるとしたが、個別槽4の個数はこれに限らない。もっとも、上記の通り、靴は左右一足で使用されるものであるため、個別槽4の個数は偶数であることが好ましい。個別槽4の個数がいくつであっても、各個別槽4は、内槽3の中心軸に対して対称性をもつように配置されることが好ましい。例えば、個別槽4が2個設けられる場合、各個別槽4は、上方から見て、各々の中心軸L4を結ぶ線分の中心が、内槽3の中心軸L3と一致するように配置されることが好ましい。また例えば、個別槽4がn個(ただしnは3以上の整数)設けられる場合、各個別槽4は、上方から見て、各々の中心軸L4が、内槽3の中心軸L3と同心に配置された正n角径の頂点にくるような位置に配置されることが好ましい。また、既存の洗濯機の内槽のサイズを考慮すると、個別槽4の個数は、2個あるいは4個であることが好ましいとしたが、例えば、子供靴の洗濯に特化した比較的小さな個別槽4であれば、これを6個以上配置することも可能である。
【0099】
上記の実施形態において、利用者が、洗濯したい靴を靴用洗濯機100に入れるのに先だって、操作部12を介して槽洗浄の指示を入力してもよい。該指示を受けた場合、制御部7は、槽洗浄を行う。具体的には、制御部7は、給水バルブ211を開状態として、外槽2に対して給水を行って、内槽3および個別槽4を水洗いする。所定時間の水洗いが実行されると、制御部7は、排水バルブ221を開状態として、外槽2の内部の水を排水する。利用者は、この槽洗浄が完了してから、洗濯したい靴を靴用洗濯機100に入れて、操作部12を介して、洗濯開始の指示を入力すればよい。
【0100】
上記の実施形態に係る靴用洗濯機100において、外ブラシ43を省略してもよい。また、フックブラシユニット5を省略してもよい。また、フックブラシユニット5において、内ブラシ523を省略してもよい。内ブラシ523が省略される場合、接続部53は、順方向AR1に回転する支持部51の該回転動作をブラシ部52の昇降動作に変換して伝達するものでなくともよい。
【0101】
上記の実施形態に係る靴用洗濯機100は、動力分配部62を備えることで、1個のモータ61で、個別回転モードと全体回転モードとを実現するものとしたが、動力分配部62を設けずに、各回転モード専用のモータをそれぞれ設けてもよい。
【0102】
上記の実施形態において、外槽2、内槽3および各個別槽4の中心軸L2,L3,L4は、いずれも、鉛直方向に沿って配置されるものとしたが、これらは、斜め方向あるいは水平方向に沿って配置されてもよい。
【0103】
上記の実施形態において、靴用洗濯機100は、コインランドリー店舗に設置されるものとしたが、いうまでもなく、靴用洗濯機100は、コインランドリー店舗以外(例えば、家庭、工場、商業施設、など)に設置されてもよい。
【0104】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。また、いうまでもなく、各実施形態にて例示された構成が部分的に互いに組み合わされることも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 筐体
2 外槽
3 内槽
4 個別槽
41 通水孔
42 収容枠部
43 外ブラシ
431 毛状部材
5 フックブラシユニット
51 支持部
52 ブラシ部
521 フック部
522 スリット
523 内ブラシ
5231毛状部材
53 接続部
531 下スロープ部
532 上スロープ部
6 駆動部
61 モータ
62 動力分配部
621 第1出力軸
622 第2出力軸
63 無端ベルト
64 ギヤユニット
641 駆動ギヤ
642 従動ギヤ
643軸部
7 制御部
100 靴用洗濯機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17