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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒドガス捕捉剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20240311BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240311BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61L9/014
B01J20/26 A
B01D53/14 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020006489
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112379
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】臨 護
(72)【発明者】
【氏名】本多 剛
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-190235(JP,A)
【文献】特開2018-052998(JP,A)
【文献】特開2019-217432(JP,A)
【文献】特開2002-119852(JP,A)
【文献】特開平10-204190(JP,A)
【文献】特開2019-166515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01J 20/00-20/34
B01D 53/14-53/18
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ビニルカルボン酸アミド、ポリビニル化合物、N-ビニルカルボン酸アミドと共重合が可能なモノマー、有機溶媒、重合開始剤、カチオン性高分子分散剤を塩水中で懸濁させ、任意の強度で撹拌することによりモノマー液滴を発生させ、ラジカル重合することにより製造した、粒径10μm~2mmの範囲の球状粒子であり、比表面積が1.0m /g以上であるポリビニルアミン架橋重合体粒子を含有することを特徴とするホルムアルデヒドガス捕捉剤の製造方法
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により製造したホルムアルデヒドガス捕捉剤が不織布に担持されたホルムアルデヒドガス吸着フィルターの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中のホルムアルデヒドガスを捕捉することができるホルムアルデヒドガス捕捉剤に関する。
【背景技術】
【0002】
室内環境は近年の気密性の向上に伴い、その中にある家具調度品、建材、住宅資材、壁紙クロス等から各種化学物質が低濃度といえども遊離することが知られている。その中でもホルムアルデヒドは特に接着剤として安価である事、使い勝手が良い事などから非常に広範囲に使用されている。
一方でホルムアルデヒドは健康に対して悪影響を及ぼす懸念から、労働安全衛生法では作業環境中においてきわめて低い水準になるように厳密に規制されている。更に家庭室内やオフィス内においては建築物衛生法での規制物質となっている。
この様な背景から近年の技術進歩によりホルムアルデヒドに関わる建物内環境は、ノンホルムアルデヒドまたは低ホルムアルデヒド材料を使用する、適切な換気装置を設置する事等により、従前より格段に改善されているものの、例えば家庭環境においては、ホルムアルデヒドを含む接着剤を使用した種々の発生源から放出される付随的なホルムアルデヒドが、空中浮遊ホルムアルデヒドとなって人体に対してアレルギー症状を引き起こす例も依然としてある。
そのため、これまで前記発生源からのホルムアルデヒドの遊離量を低減するため様々な技術が考案され実用化されている。
例えば、特許文献1にはエチレン尿素及びアンモニウム塩を含むホルムアルデヒド捕捉剤を、例えば合板に粉末のまま添加、或いは液体の状態で塗布することで該合板から発生するホルムアルデヒドを吸着し空気中への放散量を抑制する技術が開示されている。
特許文献2にはスルファニル酸水溶液あるいはアルコール溶液をホルムアルデヒド捕捉剤として使用する技術が開示されている。空気中のホルムアルデヒドを捕捉する場合には、一度乾燥させた後固体状物質に担持させて使用するとしている。
特許文献3にはカルボジイミド化合物をホルムアルデヒド捕捉剤として使用する技術が開示されている。
特許文献4には特定のアミン系化合物が空中に浮遊するホルムアルデヒドを捕捉するのに有効であることを開示している。
他にも数多くのホルムアルデヒドを捕捉するための技術が開示されているが、効果が十分でなかったり、捕捉剤が高価であったりなど、より効果的なホルムアルデヒド捕捉剤が求められているのが実状である。
遺体の移動保存や臓器の移動保存や臓器の検査消毒等の医療関係の保存作業、検査作業、移動作業などに広くホルマリンが用いられている。又、ホルマリンによって死滅する菌類や細菌類が多いことから、希釈した水溶液は消毒用に用いられている。しかし、ホルムアルデヒドの水溶液であるホルマリンは無色透明で刺激臭があり、生体に有害である。ところが、上記各作業中にホルマリンを収容した容器の蓋をあけることによって空気中にかなり高濃度のホルムアルデヒドが飛散する事は避けられない。
この様に一度空気中に放出されたホルムアルデヒドを効率よく捕捉することはかなり困難で、実際に有効に作用する捕捉剤がないのが現状である。
【0003】
【文献】特開2013-173814号公報
【文献】特開2013-94606号公報
【文献】特開2011-84563号公報
【文献】特表2012-509100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空中浮遊ホルムアルデヒドガスを除去する新しい技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明者は、鋭意検討した結果、ポリビニルアミン架橋重合体粒子が極めて効果的に、且つ迅速に空気中のホルムアルデヒドガスを吸着し捕捉できることを見出し、本発明に至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0006】
従来技術による捕捉剤の多くは、例えば木質複合材及び織物製造プロセス中に取り込む(例えば、ホルムアルデヒドベースの樹脂中に取り込むなど)ことを含むものであるが、これらとは異なり、本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子を含有するホルムアルデヒド捕捉剤は、ホルムアルデヒドと直接化学反応することより空気中のホルムアルデヒドを捕捉する事ができる。そのため周囲条件下の温度及び圧力では本質的に非可逆であり、従ってホルムアルデヒドが再放出されないように隔離する極めて効果的な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子を含有するホルムアルデヒドガス捕捉剤はホルムアルデヒドを放出する物品を取り囲む環境又は空間から、空中浮遊ホルムアルデヒドを捕捉するために使用される。
本捕捉剤は、例えば特定の応用に応じて、種々の形態で使用することが可能である。トレーの中でばらばらに分散させておくこともできるし、あるいは、ホルムアルデヒドで汚染された環境の中におかれた気体透過性の容器又はカートリッジに入れておくこともできる。
又、例えば、除湿用包装製品に通常入っているシリカゲルや酸化カルシウムの包装に用いられるようなタイプの紙の小袋中に入れて用いることもできる。
更に例えば合成繊維或いは天然物繊維から成る不織布シートや、金属、プラスチック等から作られたメッシュ状部材に担持(保持)させる事により、ホルムアルデヒドガス吸収フィルターとして用いる事もできる。特に本捕捉剤が不織布に担持されたホルムアルデヒドガス吸着フィルターが有効である。担持させる方法としては特に制限なく、例えば結着剤によりコーティングする方法、複数枚のシート間にサンドイッチして担持させる方法等が挙げられる。
【0008】
使用場所としては特に制限されないが、家庭室内、事務室内、ホルマリン使用現場は元より、倉庫、ホルムアルデヒド樹脂が用いられる木質複合材及び織物生産設備、屋根裏、空気処理システムのような継続的に空気が流れている場所、エアダクト、又は、暖房/冷房装置の吸気口又は排気口付近の空気流が濃縮されている場所での使用に適している。
本発明におけるホルムアルデヒド捕捉剤の有効性のために、化合物の周囲で積極的に空気を循環させる必要はない。実際、ホルムアルデヒド捕捉剤は周囲の環境から受動的に(すなわち機械的な空気循環を行わずに) ホルムアルデヒドを除去するように使用することが好適である。
【0009】
以下、本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子の製造方法について説明する。
【0010】
本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子の製造の手法としては、先ず一般的に使用される懸濁重合を適用する。即ち、N-ビニルカルボン酸アミド、ポリビニル化合物、必要に応じてN-ビニルカルボン酸アミドと共重合が可能なモノマー、重合開始剤、カチオン性高分子分散剤を塩水中で懸濁させ、任意の強度で撹拌することによりモノマー液滴を発生させ、ラジカル重合することにより製造することができる。モノマー液滴の粒径は分散剤、撹拌強度で制御されるが、0.01mm~10mm、好ましくは0.1mm~5mmである。
【0011】
本発明で使用するN-ビニルカルボン酸アミドのモノマーの例としては、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド、N-メチル-N-ビニルプロピオンアミド、N-ビニルブチルアミド、N-ビニルイソブチルアミド等が挙げられ、好ましくはN-ビニルホルムアミドである。N-ビニルカルボン酸アミドのモノマー以外にN-ビニルカルボン酸アミドと共重合が可能なモノマーを使用しても良く、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、(メタ)アクリロイルオキシアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、N-ビニルピロリドン、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられ、これらの中の1種使用しても良く、2種以上を組み合わせても良い。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0012】
ポリビニル化合物としては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族ポリビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等を用いることもできる。芳香族ジビニル化合物を用いるのが好ましい。最も好ましいのはジビニルベンゼンである。添加率はモノマーに対して0.1~50質量%の範囲であり、0.1~20質量%の範囲が好ましい。5質量%を越えるとN-ビニルカルボン酸アミドのみでは球状粒子が得られ難くなるので、N-ビニルカルボン酸アミドと共重合が可能なモノマーを使用した方が好ましい。共重合が可能なモノマーの添加率は、全モノマーに対して50質量%以下の範囲で使用する。特にアクリロニトリルを使用するのが好ましい。
【0013】
重合開始剤としてはアゾ系やパーオキサイド系の重合開始剤、例えば2、2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2、2’-アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩、4、4’-アゾビス-4-シアノバレリン酸、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩等、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。これらの中で、2、2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)等の油溶性開始剤が好ましい。又、開始剤二種以上を併用しても差し支えない。添加率はモノマーに対し通常0.02~5質量%、好ましくは0.05~2質量%である。
【0014】
カチオン性高分子分散剤としては、カチオン性モノマーである(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物などを重合したものであるが、これらカチオン性モノマーと非イオン性モノマーとの共重合体も使用可能である。非イオン性モノマーの例としては、アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N、N’-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カチオン性高分子分散剤の重量平均分子量としては、5000~200万、好ましくは5万~100万である。添加率は水に対し通常0.05~5質量%、好ましくは0.1~2質量%である。
【0015】
塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等が挙げられ、これらのうちでは、硫酸アンモニウムが特に好ましい。又、これらのものを単独で用いても、混合して用いてもよい。添加率は水に対し30~100質量%の範囲であり、30質量%より少ないとN-ビニルカルボン酸アミドが二相に分離が不十分であり、100質量%で塩による効果が十分得られており、100質量%を越えて添加しても不経済である。好ましくは50~90質量%であり、更に好ましくは60~90質量%である。
【0016】
本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子は、ホルムアルデヒドガスとの接触面積をできるだけ高めるため、多孔質構造を持たせることが好ましい。
多孔質構造を有するポリビニルアミン架橋重合体粒子を得るためには懸濁重合時に有機溶媒を使用する。使用する有機溶媒としては、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類の他、ブトキシエタノール、エトキシエタノール等の極性基を有する有機溶媒が使用可能である。これらの有機溶媒はある程度水に溶解するが、高濃度の塩を使用することにより、モノマー相に分配させることが可能である。これらの有機溶媒の添加量としては、全モノマーに対し5~200質量%、好ましくは10~100質量%である。
【0017】
重合反応は、通常、温度30℃~100℃、時間は1時間~15時間で行う。
重合後、水洗により塩、カチオン性高分子分散剤、有機溶媒、未反応モノマー等を除去することができる。又、残留する有機溶媒は留去等により除去することも可能である。
【0018】
前記製造方法によりポリビニルカルボン酸アミド架橋重合体粒子が得られる。その後、加水分解する事によりポリビニルアミン架橋重合体粒子を得ることができる。加水分解は、塩基性、酸性条件下いずれでも行うことができる。
加水分解のために適当な塩基としては、加水分解の際にpHを8~14の範囲とすることができれば制限はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの水溶液を用いることが最も好ましい。添加率は、ポリマーのホルミル基に対し0.05~2.0、更に好ましくは0.4~1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0019】
加水分解のために適当な酸としては、加水分解の際にpHを0~5の範囲とすることができれば制限はなく、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸といった無機酸、炭素数1~5の範囲のモノおよびジカルボン酸、スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸といった有機酸が例示でき、特にハロゲン化水素酸およびハロゲン化水素のガスを用いることが好ましく、ハロゲン化水素酸を用いることが最も好ましい。添加率は、ポリマーのホルミル基に対し0.05~2.0、更に好ましくは0.4~1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0020】
加水分解後、水等により洗浄することにより、ポリビニルアミン架橋重合体粒子を得ることができる。
【0021】
本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子は、粒径10μm~2mmの範囲の球状粒子である。多孔質構造の指標としては比表面積による。本発明においては、比表面積が1.0m/g以上であるならば、多孔質構造を有していると言える。多孔質構造を有さない架橋重合体粒子は0m/gあるいは0m/gに近い値である。比表面積は、BET法で求めることができる。例えば、架橋重合体球状粒子を真空乾燥後、Quantachrome ChemBET3000(カンタクローム社製)を用い、窒素30%+ヘリウムを使用し、BET1点法で求めることができる。
【実施例
【0022】
以下に本発明におけるポリビニルアミン架橋重合体粒子の製造例及びホルムアルデヒドガス捕捉剤としての効果について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
(製造例1)
500mLの4つ口フラスコに脱塩水216.0g、硫酸アンモニウム144.1g、ポリアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物水溶液(ポリマー濃度20質量%、重量平均分子量80万)9.1gを投入し、撹拌し、溶解させ、重合浴とした。N-ビニルホルムアミド33.0g、80%ジビニルベンゼン15.0g、アクリロニトリル12.1g、酢酸エチル60.1g、アゾ系重合開始剤2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)(V-70、和光純薬工業(株)製)0.6gを混合し、モノマー溶液とした。モノマー溶液と重合浴を混合、窒素でフラスコ内を置換しながら150rpmで撹拌した。30分後昇温し、50℃で3時間、続いて60℃で1時間重合した。重合後濾過、水洗し、濾過し、含水状態の凝集物のない重合体球状粒子148.1gを得た。
この様にして得られた反応生成物35.0gを4つ口フラスコに入れ、48質量%水酸化ナトリウム水溶液50.7g、水50.1gを加え、撹拌しながら80℃で5時間加水分解した。水洗、濾過し、含水状態のポリビニルアミン球状粒子32.8gを得た。顕微鏡観察の結果、50μm~1mmの球状粒子が観察された。真空乾燥後、白色球状粒子の比表面積を測定した結果、14m/gであり多孔質構造を有していた。このようにして得られたポリビニルアミン架橋重合体粒子をサンプルAとする。
【0024】
(製造例2)
500mLの4つ口フラスコに脱塩水217.1g、硫酸アンモニウム144.0g、ポリアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物水溶液(ポリマー濃度20質量%、重量平均分子量80万)9.0gを投入し、撹拌し、溶解させ、重合浴とした。N-ビニルホルムアミド49.8g、80%ジビニルベンゼン4.2g、アクリロニトリル6.0g、アゾ系重合開始剤2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)(V-70、和光純薬工業(株)製)0.6gを混合し、モノマー溶液とした。モノマー溶液と重合浴を混合、窒素でフラスコ内を置換しながら140rpmで撹拌した。30分後昇温し、50℃で3時間、続いて60℃で1時間重合した。重合後濾過、水洗、濾過し、含水状態の重合体球状粒子118.3gを得た。
このようにして得られた反応生成物105gを4つ口フラスコに入れ、48質量%水酸化ナトリウム水溶液150.1g、脱塩水150.0を加え、撹拌しながら80℃で5時間加水分解した。水洗、濾過し、含水状態のポリビニルアミン球状粒子112.1gを得た。顕微鏡観察の結果、50μm~2mmの球状粒子が観察された。真空乾燥後、白色球状粒子の比表面積を測定した結果、1m/g未満であった。このようにして得られたポリビニルアミン架橋重合体粒子をサンプルBとする。
【0025】
(実施例1)
臭気用サンプリングバッグ[容量5L、テドラーバッグ(アズワン株式会社製)]に製造例1で作成したサンプルAを入れたものを「試験測定」、サンプルAを入れていないものを「ブランク」とした。調製した臭気成分をバッグに1.5L充填し、15分、30分、60分静置後の臭気濃度を検知管により測定した。各試料3回測定し、その平均値を表1に示す。
【0026】
(表1)
【0027】
比較
実施例1においてサンプルAの代わりにサンプルBを用いたこと以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果を表2に示す。
【0028】
(表2)
【0029】
表1、表2の試験結果から明らかな様に、本発明によるポリビニルアミン架橋重合体粒子は非常に良好なホルムアルデヒド捕集能力を有することが判る。特に多孔質構造を有するポリビニルアミン架橋重合体粒子サンプルAは捕集速度も高く、極めて顕著なホルムアルデヒド捕集能力があることが判る。