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  • 特許-レゾルバ 図1
  • 特許-レゾルバ 図2
  • 特許-レゾルバ 図3
  • 特許-レゾルバ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G01D5/20 110X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020102883
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196265
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 功
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/108431(WO,A1)
【文献】特開2019-078681(JP,A)
【文献】特開平04-027828(JP,A)
【文献】特開平06-300618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
H02K 11/00-11/40
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(20)とロータ(10)とを備え、回転角度を検出するレゾルバであって、
前記ステータ(20)は、前記ステータ(20)に伝達される振動により振動する振動検出部(30)を有し
前記振動検出部(30)は、共振周波数(f)が互いに異なるように構成された2つの振動検出部(30f1、30f2)を含んで構成される、
レゾルバ。
【請求項2】
前記振動検出部(30)は、振動体(40)と、
前記振動体(40)を収容する収容部(50)と、
前記振動体(40)と、前記収容部(50)との間の静電容量を検出する検出回路(60)とを有している、請求項1に記載のレゾルバ。
【請求項3】
前記振動体(40)と、前記収容部(50)との形状は、少なくとも一部が相似形に形成されている、請求項2に記載のレゾルバ。
【請求項4】
前記振動検出部(30)は、複数の振動検出部(30、31)を含んで構成され、
前記複数の振動検出部(30、31)は、振動検出方向を互いに異ならせて配置されている
請求項1~3の何れか一項に記載のレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置であるレゾルバに関し、特に振動検出機能を備えたレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等の回転軸の回転角度を検出するためにレゾルバが用いられており、例えば特許文献1の構成を挙げることができる。レゾルバは、ロータと、ステータとを備えている。ロータは回転軸に固定されており、ステータはホルダを介してモータ側に固定されている。リング状に形成されたステータの内周面には、ステータの中心に向かって伸びるティースが、周方向において等間隔に複数設けられている。複数のティースのそれぞれには、導線が巻かれてコイルが形成されている。
【0003】
レゾルバのロータは、ステータの中心穴内に、ティースの先端に対しわずかな隙間を有して配置されている。ロータが固定されているモータの回転軸は、両端部をそれぞれベアリングで回転可能に保持されている。すなわち、ロータと、ティースの先端との間のわずかな隙間は、ベアリングの精度により保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2008/108431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベアリングはモータの使用にともなって劣化すると共に、ガタが生じてくる。ガタが大きくなり限界まで来ると、レゾルバが取り付けられている装置の故障につながる。装置を修理する場合、修理期間中は装置の運用ができなくなるため、装置の利用に不便が生じることとなる。装置の故障を予測するには、ベアリングのガタ発生に伴う振動を検知することが考えられる。しかし、振動を検知するには、新たに振動センサを設けなければならず、振動センサを設置するためのレイアウト変更や、コストアップが生じるという短所がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ステータの一部を用いた比較的簡素な方法により、装置の故障予知等のために振動を検出する機能を備えたレゾルバを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレゾルバは、ステータとロータとを備え、回転角度を検出するレゾルバであって、前記ステータは、前記ステータに伝達される振動により振動する振動検出部を有している。
【0008】
また、本発明に係るレゾルバに設けられている振動検出部は、振動体と、振動体を収容する収容部と、振動体と収容部との間の静電容量Eを検出する検出回路とを有している。
【0009】
また、本発明に係るレゾルバの振動体と、収容部との形状は、少なくとも一部が相似形に形成されている。
【0010】
また、本発明に係る振動検出部は複数設けられており、複数の振動検出部は、振動検出方向を互いに異ならせて配置されている2つの前記振動検出部を含んでいる。
【0011】
また、本発明に係る振動検出部は複数設けられており、複数の振動検出部は、共振周波数が互いに異なる2つの振動検出部を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
したがって本発明によれば、ステータに伝達される振動を簡素な構造により検出することができる。したがって、レゾルバが取り付けられている装置の故障を簡素な構造により、予知することができる。すなわち、振動検出部により検出された静電容量について、静電容量の値(最大値、等)、静電容量の変動幅、変動周期、等を、あらかじめ決定された閾値と比較して、故障予知が行われる。
【0013】
したがって本発明によれば、振動検出部の振動を高精度に検出することができる。よって、簡素な構造でレゾルバが取り付けられている装置の故障予知を高精度にすることができる。
【0014】
したがって本発明によれば、振動体40をスペース効率上、効率よくステータコア21に収容できるとともに、振動体40を効率よく形成することができる。よって、簡素な構造、かつ低コストでレゾルバに伝達される振動を検出することができる。
【0015】
したがって本発明によれば、回転軸に垂直な平面上の何れの振動も検出することができる。
【0016】
したがって本発明によれば、周波数が異なる複数の振動を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係るステータを示した正面図である。
図2図1のC部の拡大図である。
図3】振動検出部の作動状態を示す概念図である。
図4】本発明の実施の形態2に係るステータを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1に係るレゾルバ100を説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るレゾルバ100を示す正面図である。また、図2は、図1のC部の拡大図である。
【0019】
レゾルバ100は、周知の構造であり、ロータ10と、ステータ20とを備えている。ロータ10は、導体によりリング状に形成されており、図示しない回転軸に固定され、回転軸と共に回転する。
【0020】
ステータ20は、ステータコア21と、前記ステータコア21の内周面上に一定角度間隔で設けられ、コイルが巻回されている、図示しない複数のティースとを有している。ステータ20は、中央部に中心穴22を有しており、中心穴22には、回転軸に固定された状態でロータ10が配置される。ステータコア21には、前記ステータコア21の固定用に、固定穴が複数設けられている。本実施の形態では、7つの固定穴23がステータコア21の周上に、所定の角度間隔で設けられている。ステータ20は、導体により一体的に形成されている。ステータ20は、導体である薄板鋼板を中心軸方向に複数積層して形成されている。
【0021】
前記ステータコア21には、振動検出部30が設けられている。振動検出部30は、振動体40と、前記振動体40を収容している収容部50とを有している。図2に示されているように、振動体40と、収容部50とは、長手方向を半径方向に対し平行に配置されている。前記振動体40は、細長い棒状に形成された基端部41と、基端部41の一端部に接続され、半径aの円形に形成された先端部42とを有している。一方、前記振動体40を収容する収容部50は、基端収容部51と、先端収容部52とを有している。収容部50の形状は、振動体40の外形である、円形と細長い長方形とを組み合わせた外径形状に合わせた相似形に形成されている。
【0022】
前記振動体40が収容部50に収容された状態で、振動体40の周囲には、わずかな隙間50aが均一に存在するように形成されている。振動体40は、基端部41が基端収容部51に、接着剤が塗布された接着部53により固定されている。
【0023】
ステータコア21と、振動体40とには、検出回路60が接続されており、振動体と、収容部50とを有する振動検出部30の静電容量Eが検出される。検出回路60のステータ側配線61はステータコア21に、検出回路60の振動体側配線62は基端部41に、それぞれ接続されている。検出回路60には、図示しない静電容量検出装置が接続され、振動体40と、収容部50との間の静電容量Eが検出される。
【0024】
図3には、上記のように形成された振動検出部30が振動を検出する状況が示されている。図3において、X方向が振動検出方向である。振動がない状態では、振動体40の周囲には、隙間50aが均一に存在している。先端部42は、基端部41が接着部53に固定された状態で、X方向に振動する。すなわち、基端部41の長手方向に垂直な方向が、振動検出部30による振動検出方向である。図3(A)及び(B)に示されているように、ステータコア21に振動が伝達されると、先端部42が揺れ、X1方向、及びX2方向に周期的に振動する。そうすると、均一だった隙間50aは、先端部42の振動にともない、狭い隙間部分と、広い隙間部分とが生じ、先端部42が振動し続けることで静電容量Eが周期的に変動する。すなわち、先端部42が振動し続けると、静電容量Eが変動する。この静電容量Eの変動を検出することにより、ステータ20に伝達されるベアリングのガタ等の振動を検知できる。具体的には、振動検出部により検出された静電容量について、静電容量の値(最大値、等)、静電容量の変動幅、変動周期、等を、あらかじめ決定された閾値と比較して、故障予知が行われる。
【0025】
なお、振動検出部30の共振周波数は、検出する振動に合わせて、調整可能である。振動検出部30の先端部42の質量、基端部41を固定している接着部53の長さを除いたb部の長さ、基端部41の剛性、等を変えると、振動検出部30の共振周波数を変えることができる。例えば、先端部42の質量を大きくする、基端部41の接着部分を除いたb部の長さを長くする、基端部41の剛性を下げる、と変更をすると、共振周波数を下げることができる。また、逆に、先端部42の質量を小さくする、基端部41の接着部53の長さを除いたb部の長さを短くする、基端部41の剛性を上げる、と変更すると、共振周波数を上げることができる。このように、想定し得る振動の周波数に合わせた共振周波数の振動検出部30を設けることにより、振動を精度よく検出することができる。
【0026】
次に、ステータ20の製造方法を説明する。上述したように、ステータ20は、導体である薄板鋼板を中心軸方向に複数積層して形成されている。収容部50は、ステータコア21に穴を設けることで形成される。また、収容部50を設ける時に打ち抜く薄板鋼板を利用することで、振動体40を容易に効率よく形成することができる。まず薄板鋼板を、収容部50を含みステータコア21の形状に複数枚打ち抜く。収容部50として打ち抜く部分の薄板鋼板を、ステータコア21の打ち抜きと同時に、又は、ステータコア21の打ち抜きのあと、振動体40の形状に成形し、複数枚重ねて接着する。作製された振動体40を、複数枚重ねて固定されたステータコア21の収容部50に収容し、基端部41を、基端収容部51に接着剤で固定する。以降、コイルの巻回等、必要な作業を行い、ステータ20を完成させる。この方法によれば、ステータコア21と、振動体40とは、同じ薄板鋼板で効率よく作製することができる。
【0027】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2に係るレゾルバのステータ25は、実施の形態1に対し、振動検出部30を2つ備えている点のみが異なっており、それ以外は同じである。実施の形態2については、実施の形態1に対して異なる特徴のみ説明し、同じ部材、同じ構造については、同じ符号を用い、説明は省略する。
【0028】
図4には、実施の形態2によるステータ25であって、図1に示されているステータ20に対して異なる振動検出部30のみを示したステータ25の概念図が示されている。実施の形態2のステータ20は、振動検出部30が振動検出部30及び31として2つ備えられており、それぞれの振動検出部30の振動検出方向は、直交して、すなわち90°異なって配置されている。本発明に係る振動検出部30は、構造上、振動検出方向が特定されている。したがって、検出する振動の検出方向が複数の場合には、振動検出部30を2つ設けることで、2方向の振動を検出することができる。図4のように、振動検出方向を直交、すなわち90°になるように配置させて振動検出部30を2つ備えることで、回転軸に直交する平面に平行な振動を検出することができる。したがって、振動をより精度よく検出することができる。
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3に係るレゾルバのステータ27は、実施の形態1に対し、それぞれの共振周波数f1及びf2が異なっている2つの振動検出部30として、振動検出部30f1及び30f2(図示せず)を備えている点が異なっており、それ以外は同じである。実施の形態3については、実施の形態1に対して異なる特徴のみ説明し、同じ部材、同じ構造については、同じ符号を用い、説明は省略する。
【0029】
振動検出部30f1及び30f2は、各々の共振周波数f1及びf2を、想定される振動の周波数に合わせて、それぞれ製作される。また、検出対象である振動の周波数のピーク値が複数考えられる場合は、共振周波数が異なる複数の振動検出部30f1及び30f2を設けることもできる。振動検出部30f1及び30f2は、振動検出部30の先端部42の質量、基端部41の接着部分を除いたb部の長さ、基端部41の剛性、等を変えて、両者の共振周波数を想定する振動数に合わせて製作される。2つの振動検出部30f1及び30f2を配置する向きについて、両者の振動検出方向を、予想される振動の振動方向に合わせて配置する。
【0030】
実施の形態3の変形例として、図4に示されている実施の形態2と同様に、共振周波数が異なる1組の振動検出部30f1及び30f2を、両者の振動検出方向が90°になるように配置してもよい。又は、共振周波数が異なる振動検出部30f1及び30f2を2つずつ用意し、同じ共振周波数f1同士の1組の振動検出部30f1について互いの振動検出方向が90°となる向きにして、同じ共振周波数f2同士の1組の振動検出部30f2について互いの振動検出方向が90°となる向きにして、共振周波数が異なる2組の振動検出部30f1及び30f2を配置してもよい。このように配置すれば、複数の周波数の振動を、X方向とY方向とによる2方向で、それぞれ検出できる。
【符号の説明】
【0031】
10 ロータ、20 ステータ、30,31 振動検出部、40 振動体、
50 収容部。
図1
図2
図3
図4