(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】NK細胞のための人工HLA陽性フィーダー細胞株及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240311BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240311BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240311BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240311BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20240311BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240311BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240311BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61K35/12
A61P37/06
A61P43/00 105
C12N5/10
C07K14/55
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2021529003
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2019082283
(87)【国際公開番号】W WO2020104676
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-21
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516355139
【氏名又は名称】テクニスチェ ユニベルシタト ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アチム テンメ
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/037422(WO,A1)
【文献】特開2017-000149(JP,A)
【文献】特表2016-525124(JP,A)
【文献】有馬靖佳,「キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)が同種造血幹細胞移植に果たす役割」,日本造血細胞移植学会雑誌,2014年,第3巻、第1号,pp.12-26
【文献】PLOS ONE,2012年01月18日,Vol.7, No.1,e30264 (13pages),DOI: 10.1371/journal.pone.0030264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因的に投与されるサイトカインを必要とすることなく、人工フィーダー細胞を用いて、自己に寛容である非過剰活性化ヒトNK細胞の増殖及び拡大を特異的に誘導する方法であって、
(a)該NK細胞を人工フィーダー細胞と接触させること(ここで、該人工フィーダー細胞は、
・NK細胞の抑制性NKG2A受容体のHLA-Eリガンドを発現し、NK細胞のC1又はC2リガンドから選択されるキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の少なくとも1つの抑制性リガンド及びBw4又はBw6から選択される少なくとも1つのリガンドを同時に発現して、拡大用に選択される個々のドナーNK細胞とのKIR-リガンド:KIR一致をもたらし;
かつ
・インターロイキン-2
(IL-2)を発現及び分泌
する);
及び
(b)該NK細胞及び人工フィーダー細胞を該NK細胞の拡大を可能にする条件下で培養すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記人工フィーダー細胞が、サイトカインIL-15、IL-18、IL-21から選択される少なくとも1つの共刺激分子;並びに/又は4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質;シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)、及びウイルス由来分子から選択される少なくとも1つの活性化表面分子をさらに発現するか、又はこれらをさらに発現するように遺伝子改変されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象となるNK亜集団を含有するNKバルク細胞集団を人工フィーダー細胞と接触させることを含む、ナチュラル細胞傷害性受容体(NCR)、スモールテールKIR、又はNKG-受容体から選択される活性化NK細胞受容体を発現するNK細胞サブセットの増殖及び拡大の特異的誘導を含み、ここで、該人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、かつ該活性化NK細胞受容体の同族NK細胞リガンドを発現する発現ベクターを含むか;
又は
該人工フィーダー細胞が改変され、該対象となるNK亜集団の該活性化NK細胞受容体に特異的な膜結合型抗体を発現するか
又は
該人工フィーダー細胞が、該対象となるNK亜集団のCD94/NKG2ファミリーの活性化受容体に特異的なHLA-E分子上に活性化ペプチドをロードしている、
請求項1
又は2記載の方法。
【請求項4】
CAR-NK細胞を、CARの同族表面抗原を内在的に発現するか、又は遺伝子改変され、該CARの同族表面リガンドを発現する発現ベクターを含む、人工フィーダー細胞と接触させることを含む、人工キメラ抗原受容体(CAR)を提示する遺伝子改変NK細胞の増殖及び拡大の特異的誘導を含み、ここで、該同族リガンドがウイルス及び腫瘍関連抗原(TAA)によって表されるか、
又は
該人工フィーダー細胞が改変され、該CARに組み入れられたエピトープ-タグに特異的な膜結合型抗体を発現する、
請求項1
又は2記載の方法。
【請求項5】
前記人工フィーダー細胞が真核細
胞である、請求項1~
4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記人工フィーダー細胞が前立腺癌細胞の細胞株PC3又はその派生物である、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前
記人工フィーダー細胞が、NK細胞のHLA-E、Bw4-、C1-、及びC2-KIRリガンドと非KIR結合性Bw6リガンドとを同時に発現し、それゆえ、様々なドナー由来の任意のNK細胞と一致する、請求項1~
6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌し、かつ4-1BBLとヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)の少なくとも1つ又は両方を同時に発現する、請求項1~
7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
NK細胞のCARをコードする核酸を含むNK細胞を含み、ここで、該核酸が、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DAP10、CD3ζ、CD3εRI、及びDAP12シグナル伝達アダプターの細胞質領域から選択されるシグナル伝達ドメインを含む、NK細胞上の活性化トランスジェニック表面受容体ポリペプチドをコードするか;
又は
該核酸が、EGFRvIIIもしくはPSCAを特異的に認識す
る、該CARに組み入れられた少なくとも1つの単鎖可変断片(scFv)を含むCARをコードするか;
又は
該核酸が、FLAG-エピトープ、VSG-G-エピトープ、La-エピトープ、インフルエンザヘマグルチン(HA)-エピトー
プ、及び/もしくはc-myc-エピトープ
から選択されるエピトープ-タグを含む
、NK細胞上の人工活性化トランスジェニック表面受容体をコードする、
請求項1~
8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記人工フィーダー細胞が、配列番号3のHCMV株AD169のUL40リーダー配列に融合した人工β2-ミクログロブリン-HLA-Eを発現する発現ベクターを含むか、又は該人工フィーダー細胞が、HCMV株BE/1/2010由来のHLA-Gリーダー配列及びUL40リーダー配列に由来する配列番号2のノナマーペプチドをロードしており、ここで、該人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、少なくともヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌する、請求項1~
9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記人工フィーダー細胞が前記CARの同族表面抗原を発現する発現ベクターを含み、ここで、該同族抗原が少なくとも1つの腫瘍関連抗原によって表されるか;又は該人工フィーダー細胞が改変され、該CARに組み入れられたエピトープ-タグに特異的な膜結合型c-myc-単鎖抗体を発現する、請求項1~
9のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
発現ベクターを含む人工フィーダー細胞であって、該人工フィーダー細胞が、
・NK細胞の抑制性NKG2A受容体のHLA-Eリガンドを発現し、NK細胞のC1又はC2リガンドから選択されるキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の少なくとも1つの抑制性リガンド及びBw4又はBw6から選択される少なくとも1つのリガンドを同時に発現して、拡大用に選択される個々のドナーNK細胞とのKIR-リガンド:KIR一致をもたらし;かつ
・インターロイキン-2を発現及び分泌
する、前記人工フィーダー細胞。
【請求項13】
前記人工フィーダー細胞が、サイトカインIL-15、IL-18、IL-21から選択される少なくとも1つの共刺激分子;並びに/又は4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質;シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)、及びウイルス由来分子から選択される少なくとも1つの活性化表面分子をさらに発現するか、又はこれらをさらに発現するように遺伝子改変されている、請求項12記載の人工フィーダー細胞。
【請求項14】
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌し、4-1BBLとヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)の少なくとも1つ又は両方を同時に発現する、請求項
12又は13記載の人工フィーダー細胞。
【請求項15】
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、配列番号5又は配列番号6のHLA-E-UL40sp人工リガンドを細胞表面に発現し、ここで、該HLA-E-UL40spが活性化NKG2C NK細胞受容体に特異的に結合して、NKG2C+サブセットの拡大の誘導をもたらす、請求項1~11のいずれか一項記載の方
法。
【請求項16】
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、細胞表面上の膜結合型抗体誘導体又はCARもしくは活性化NK細胞受容体の同族リガンドを発現し、ここで、該膜結合型抗体誘導体又は同族リガンドが活性化NK細胞受容体又はCARに特異的に結合して、対象となるNKサブセット及びCAR-NK細胞の拡大の誘導をもたらす、請求項1~
11及び15のいずれか一項記載の方
法。
【請求項17】
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、配列番号5又は配列番号6のHLA-E-UL40sp人工リガンドを細胞表面に発現し、ここで、該HLA-E-UL40spが活性化NKG2C NK細胞受容体に特異的に結合して、NKG2C+サブセットの拡大の誘導をもたらす、請求項12~14のいずれか一項記載の人工フィーダー細胞。
【請求項18】
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、細胞表面上の膜結合型抗体誘導体又はCARもしくは活性化NK細胞受容体の同族リガンドを発現し、ここで、該膜結合型抗体誘導体又は同族リガンドが活性化NK細胞受容体又はCARに特異的に結合して、対象となるNKサブセット及びCAR-NK細胞の拡大の誘導をもたらす、請求項12~14及び17のいずれか一項記載の人工フィーダー細胞。
【請求項19】
NK細胞、NKG2C+ NKサブセット、及びCAR-NK細胞を活性化及び拡大するための、請求項
12~14、17及び18のいずれか一項記載の人工フィーダー細胞の使用。
【請求項20】
少なくとも1つの医薬として許容し得る担体又は希釈剤と一緒に
、請求項1~
11、
15、及び
16のいずれか一項記載の方法に従って拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+ NK細胞を含む医薬組成物であって;
前記拡大されたNK細胞が過剰活性化されておらず、防御レベルの抑制性自己リガンドを発現する細胞に寛容であり、防御的な抑制性自己リガンドを喪失した腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、活性化HLA-E-ペプチド複合体を提示する腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、ここで、
該拡大されたNK細胞がNK細胞の少なくとも30%でCD25の上方調節を示し;かつ
該拡大されたNK細胞が消耗されておらず、かつNK細胞の5%未満でTIGITの発現を示し、かつ25%未満でPD-1の発現を示すことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項21】
・チロシンキナーゼ阻害剤、並びにADCCによって標的細胞に対する細胞傷害性を促進するIgGのFc部分に融合した標的化部分に相当する、腫瘍標的化モノクローナル抗体、及び二重特異性又は三重特異性キラー細胞エンゲージャーからなる群から選択される、抗腫瘍薬;並びに
・免疫チェックポイント分子を標的とするモノクローナル抗体
から選択される少なくとも1つの薬剤を更に含む、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記拡大されたNK細胞が過剰活性化されておらず、防御レベルの抑制性自己リガンドを発現する細胞に寛容であり、防御的な抑制性自己リガンドを喪失した腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、活性化HLA-E-ペプチド複合体を提示する腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、ここで、
該拡大されたNK細胞がNK細胞の少なくとも30%でCD25の上方調節を示し;かつ
該拡大されたNK細胞が消耗されておらず、かつNK細胞の5%未満でTIGITの発現を示し、かつ25%未満でPD-1の発現を示すことを特徴とする;
癌療法及び/又はウイルス感染の治療において使用するための、請求項1~
11、
15、及び
16のいずれか一項記載の方法で拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、もしくはNKG2C+-NK細胞、又は請求項
20又は21記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、免疫学、分子生物学、及び治療薬の分野に関する。特に、本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化及び拡大のための新規の人工フィーダー細胞に関する。該人工フィーダー細胞は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の内在性リガンド(HLA C1、C2、及びBw4タイプ)、非KIR結合性Bw6リガンド、抑制性NKG2A受容体の内在性HLA-Eリガンドを発現し、膜結合型もしくは分泌型のいずれかの少なくとも1つの刺激性サイトカイン又は少なくとも1つの共刺激リガンドを含み、ここで、これらのリガンド及びサイトカインは、各々、対象となるNK細胞上の同族受容体に特異的に結合し、それにより、NK細胞の拡大を媒介する。本発明は、対象となるNK細胞又はNKサブセットを拡大し、また、キメラ抗原受容体(CAR)が修飾されたNK細胞を特異的に拡大するように容易に設計することができる「既製の」人工フィーダー細胞として使用することができる。候補遺伝子の遺伝子導入又はノックダウンにより、本発明の人工フィーダー細胞を用いて、NK細胞の増殖、拡大、及び細胞傷害性を媒介する刺激因子、共刺激因子、及び任意の他の因子を同定することができる。したがって、本発明は、NK細胞及びCAR-NK細胞の活性化及び拡大が利益を提供し得る新規の治療薬の開発のための強力なツールを提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景及び説明)
ナチュラルキラー(NK)細胞は、CD34+造血前駆細胞から発生し、CD56+ CD3-表面発現を特徴とし、循環リンパ球の約5~15%を含む。NK細胞は、自然免疫系に属し、ウイルス及び形質転換細胞に対する最初の防御線に立っている。NK細胞は、生殖系列でコードされた一連の活性化及び抑制性受容体を使用し、これらの受容体は、確率的な変化に富む様式でエピジェネティックに調節され、NK細胞サブセットの重複する多様性を生じる[1,2]。その受容体を用いて、NK細胞は、活性化及び抑制性NK細胞リガンドの表面発現の変化を示すウイルス感染細胞又は悪性細胞を感知する。NK細胞は、細胞標的に対する強力な細胞傷害性応答を発揮し、したがって、癌及びウイルス感染症の免疫療法の候補エフェクター細胞である。適切な活性化シグナルを受容しているNK細胞が拡大し、インターフェロン(IFN)-γなどのサイトカインを放出し、パーフォリン-グランザイム経路を介するか又は死受容体リガンドを介して標的細胞を死滅させる[3,4]。自己に対するNK細胞の寛容は、主に、体細胞上のHLAクラスI分子に対するNK細胞上の抑制性キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)及びCD94/NKG2A-受容体によって達成される[3]。「自己性喪失」仮説によって定義されているように、自己の正常細胞上でのこれらの抑制性受容体とHLAクラスI分子との相互作用は、活性化シグナルを無効化し、それゆえ、細胞傷害活性を妨げるドミナントネガティブなシグナルを誘導する[5,6]。抑制性ヘテロ二量体CD94/NKG2Aは、HLAクラスIリーダーペプチドを提示する非古典的HLA-Eに結合する[7,8]。それにより、CD94/NKG2Aは、細胞上のHLAクラスIの存在を間接的に感知する。抑制性KIR受容体をコードする遺伝子は、ハプロタイプとして受け継がれ、遺伝子組成と配列多型の両方に関して最も変化しやすい[9,10]。優性の抑制性KIRについては、その同族リガンドが同定されており: KIR2DL2/3及びKIR2DL1は、それぞれ、HLA-C遺伝子座のC1及びC2リガンドを認識する[11~13]。より弱いリガンドとしては、HLA-Bアレル及びKIR3DL1によって認識されるいくつかのHLA-分子並びにKIR3DL2に結合する特定のHLA-A3及びHLA-A11アレルのBw4モチーフが挙げられる[14~16]。これまで、HLA-BアレルのBw6モチーフに結合するKIRはヒトで検出されておらず、そのため、Bw6モチーフは、「非KIR結合性」アレルを規定している。白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LIRLB1)又はCD85jとも表記される、NK細胞サブセット上に発現される免疫グロブリン様転写物2(ILT2)という別の抑制性受容体は、広範囲のHLAクラスI分子に結合する[17]。ヒトにおける抑制性NK細胞受容体は全て、抑制性NK細胞シグナル伝達と関連するSHP-1及びSHIP-1ホスファターゼを動員及び活性化する少なくとも1つの細胞内免疫受容体チロシンベースの抑制モチーフ(ITIM)を含有する[3]。
【0003】
ヒト末梢NK細胞は、通常、相対的なCD56表面発現に基づいて、2つのサブセットに分類される。CD56bright細胞は、少数の末梢血NK細胞(~10%)を占めるに過ぎず、造血幹細胞から発生する[18]。実験的証拠から、末梢血NK細胞の約90%を占めるCD56dim NK細胞がCD56bright細胞から発生するという考えが支持される[19,20]。この発生の間に、CD56dim NK細胞は、NKG2A抑制性受容体の発現を喪失し、少なくとも1つのKIRの発現を獲得する。最終分化したCD56dim NK細胞は、CD57表面マーカーによってさらに特徴付けられる。特に、CD56brightからCD56dim NK細胞へのこの成熟プロセスは一方向性である[19]。CD56bright NK細胞サブセットは、より高い増殖能がCD56dimサブセットと異なり[19]、これは、NK細胞又はNK細胞サブセットの拡大方法を検討するときに重要な問題となる。移植されたCD56bright/NKG2A+ NK細胞が同種抗原反応を誘発することができないのに対し、単一又はそれより多くのKIRを有する移植されたCD56dim NK細胞は、同族レシピエントHLAクラスIリガンド(同族KIR-リガンド)の不在を感知したとき、同種抗原反応を示すことができる。
【0004】
特に、白血病の治療のためのヒト幹細胞移植(HSCT)及び養子NK細胞療法において、アロ反応性ドナー細胞は、移植片対白血病効果を達成するために利用される。しかしながら、NK細胞アロ反応性の有益な臨床効果は、おそらくは、調整レジメン、移植片製品、及び移植後の免疫抑制の違いを反映して、一様には証明されていない[21~23]。
【0005】
過去、NK細胞を用いる免疫療法は、癌治療のための十分な数の純粋なNK細胞集団を得ることができないことにより、制限されることが多かった。これまで、NK細胞拡大は、腫瘍細胞株又はPBMCに由来するフィーダー細胞によって大いに増強することができる。それゆえ、多数のNK細胞を生成させるために、IL-2、IL-15、及びIL-21を含有する培地中での放射線照射フィーダー細胞とNK細胞の共培養系が開発されている。一般に使用されるフィーダー細胞株は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)形質転換721.221、EBV形質転換B細胞(EBV-LCL)、EBV-/bcr-abl形質転換RPMI8866、及びbcr-abl形質転換K562である[24~27]。防御的HLAクラスI発現を欠くNK感受性K562細胞による刺激は、IL-2、IL-15、及びIL-21の組合せに対するNK細胞増殖を強化することが示されている[26,28]。
【0006】
さらなる開発において、K562細胞を遺伝子修飾して、4-1BBL(CD137L)+膜結合型IL-15を発現させるか、又は組換えヒト(rh)IL-15とともにK562細胞に内在性IL15Rαをロードして、NK細胞への接触分泌シグナル伝達をもたらした。4-1BBL及びIL-15シグナル伝達は、外因的に添加されるrhIL-2と相乗的に作用して、K562特異的なNK刺激能力を強化し、同時に起こるTリンパ球の増殖を伴わない末梢血NK細胞の強い拡大をもたらす[29,30]。
【0007】
放射線照射されたK562-mIL15-4-1BBL及びrhIL-15がロードされたK562-4-1BBLフィーダー細胞に基づくNK細胞の大規模な臨床等級の拡大方法が臨床試験で使用されており、癌の免疫療法のためのNK細胞を大量に拡大する最先端技術に相当する[31,32]。しかしながら、これらの人工フィーダー細胞及び例えば、膜結合型MIC-A+4-1-BBL[33]もしくは膜結合型IL-21+4-1BBL[34]で修飾された類似のこれまでに記載されているK562派生物を用いるNK細胞拡大技術は、望ましくないオフターゲット効果の可能性を伴い、これにより、その臨床使用が制限される。これまで、K562由来人工フィーダー細胞は全て、使用前に致死放射線照射されており、これにより、活性化NK細胞受容体NKG2Dに結合するMHCクラスIポリペプチド関連配列A/B(MIC-A/B)又はUL-16結合タンパク質(ULBP)などのストレス誘導性NK細胞リガンドが誘導される「誘導自己」)[35,36]。さらに、これらのK562フィーダー細胞は、防御的HLAクラスI発現を欠如しており、その結果、共培養されたNK細胞の拡大は、主に、「自己性喪失」[35]と「誘導自己」[36]認識との組合せ及び同時に起こるrhIL-2の外因性送達を伴うIL-15/4-1BBL又はmIL-21/4-1BBLによる過剰活性化によって達成される。移植されたとき、そのような拡大されたNK細胞は、一致した無関係なドナー及びIL-15/4-1BBL活性化NK細胞を受容している一致した兄弟姉妹ドナーのレシピエント又はmIL-21/4-1BBL活性化同種異系NK細胞を受容しているレシピエントで観察されるような、望ましくない「移植片対宿主病」(GvHD)を引き起こすより高い内在的能力を有する[31,37]。「自己性喪失」及び「誘導自己」駆動性の拡大を制限し、過剰に活性の高いNK細胞の発生を抑制するHLA-クラスI陽性フィーダー細胞株の開発は有利であり得るが、これまで模索されていない。
【0008】
さらに、K562由来人工フィーダー細胞を用いるNK細胞の連続拡大のために、新鮮なrhIL-2もしくはrhIL-15を連続的に添加すること又は新鮮なrhIL-2を、それぞれ、rhIL-15、rhIL-21、及びrhIL-18との組合せ使用で細胞培養培地に連続的に添加することが必須である。NK細胞の完全に独立した増殖を可能にする適度な量のインターロイキンを分泌するようにさらに遺伝子改変されたフィーダー細胞株は、経費を節減し、前臨床研究及び臨床使用に有利であるが、これまで記載されていない。
【0009】
癌細胞と戦うためのさらに有望なアプローチは、通常、「養子」又は「メモリー様」NK細胞と呼ばれる、高度に分化したCD56dim NK細胞のサブセットに基づく。そのようなNK細胞は、活性化NKG2C受容体及びCD57の獲得を特徴とし、NKG2A抑制性受容体を欠き、独特なKIRレパートリーの強い発現を示す[19,38]。抑制性NKG2Aは、活性化NKG2Cよりも高い親和性で、古典的HLA分子に由来するノナマーペプチドを提示するHLA-Eに結合することがよく知られている[39]。NKG2C細胞の頻度の増加は、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染に応答してインビボで自然に生じ、より高い頻度のNKG2C+ NK細胞は、HCMV血清反応陽性ドナーで観察されることが多い[40,41]。感染中、HCMVは、感染細胞の古典的HLA発現を下方調節し、それゆえ、T細胞による認識を逃れる。NK細胞による自己性喪失認識及び破壊を逃れるために、HCMVは、古典的HLAホモログを上方調節し[42]、HLAクラスI分子及び非古典的HLA-Gのシグナル配列に由来するノナマーペプチドと同一であるウイルスUL40タンパク質由来のシグナル配列に由来するノナマーペプチドを有するHLA-Eのロードによって、HLA-E表面発現レベルを安定化する[41,43,44]。結果として、HCMV感染細胞に直面したとき、CD94/NKG2A陽性NK細胞の細胞傷害性が鈍化するのに対し、CD94/NKG2C陽性NK細胞は、HCMV感染細胞と反応することができる。
【0010】
WO2014037422号に開示されている最近の取り組みでは、NKG2A及びCのリガンドとしての役割を果たす人工HLA-A2-シグナル-ペプチド-HLA-E(AEH)で遺伝子修飾された722.221由来フィーダー細胞を用いる、比較的低分化のKIR陽性NKG2C+/CD57- NK細胞から生じるNKG2C+/CD57+陽性NK細胞の拡大に重点が置かれた。722.221-AEHフィーダー細胞株におけるHLA C1、C2、及びBw4の単一発現を実施することにより、末梢血由来のNKG2C+ NK細胞から癌療法のためのアロ反応性の単一のKIR陽性NK細胞産物へのスキューイングが示された。より具体的に、WO2014037422号では、NKG2C+/CD57+の同時発現を伴う、NK細胞集団から分化した単一の抑制性KIR陽性NK細胞へのスキューイングは、同族自己KIRリガンドを欠く標的細胞に対するアロ反応性の増強を示すことが開示されている。これまで、この方法は、NKG2C+ NK細胞を産生するための最先端技術である。このNKG2C+ NK細胞の選択的拡大方法の主な未解決の問題は、WO2014037422号の添付の刊行物に開示されており、平均2.4倍の低い拡大率に関する。それゆえ、該方法は、養子細胞療法のための臨床的に意義のある細胞数の産生を可能にするのに十分ではない[45]。さらに、該NKG2C+NK細胞の選択的拡大方法は、外因的に与えられる組換えヒトサイトカインに依然として頼っている。極めて純粋なNKG2C+ NK細胞産物を産生するための自律的かつ効率的な選択的拡大を可能にし、かつNKG2A発現を欠くフィーダー細胞株は、前臨床研究及び臨床使用に有利であるが、これまで記載されていない。
【0011】
養子細胞療法用のNKG2C+ NK細胞を検討するときの別の障害は、ドナーのNKG2C+ NK細胞の頻度がしばしば低く、それに伴い、これらの細胞を意味のある数及び純度まで拡大することができないことに関する[46]。それゆえ、事前の拡大を欠く、より具体的には、15%未満のNKG2C+ NK細胞頻度を有するドナー由来のNKG2C+ NK細胞の選択的かつ効率的な拡大を可能にする方法が必要とされる。この目的を達成することにより、自己の状況及び同種異系の状況において、NKG2C+ NK細胞による養子細胞療法が改善されることになる。
【0012】
概念上、臨床的に意義のある数のNKG2C NK細胞の産生のために、高い増殖能を有する細胞サブセット、すなわち、末梢血NK細胞の5~10%に相当するCD56bright NK細胞を、分化したKIR+/NKG2C+/CD57+又はより低い増殖能を有するあまり分化していないKIR+/NKG2C+/CD57- NK細胞の代わりに使用することが不可欠である。CD56bright NK細胞の拡大を促進し、同時に、CD56bright NK細胞がNKG2C+ NK細胞サブセットに分化するのを可能にする方法は、これまで記載されておらず、非常に望ましい。
【0013】
NK細胞を利用する別の有望な免疫療法アプローチは、キメラ抗原受容体(CAR)に基づいている。CARは、免疫エフェクター細胞を表面に露出した腫瘍関連抗原(TAA)に向け直す[47]。これは、通常、抗体のTAA特異的可変ドメインを免疫受容体及び共刺激分子(すなわち、CD3ζ、CD28、4-1BB)の細胞内シグナル伝達ドメインに融合することにより設計される[47]。CARによるT細胞の遺伝子改変(CAR-T細胞)は、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI非依存的な様式でTAAの高親和性特異的認識を付与することが示されており、癌患者における効率的な腫瘍細胞死及び腫瘍退縮をもたらすことができる[47,48]。
【0014】
CAR-T細胞と比較したとき、CAR修飾NK細胞(CAR-NK細胞)は、いくつかの利点を有し得る。これは、CAR-T細胞とは対照的に、持続する「オンターゲット・オフティシュー」効果を防ぐために「自殺遺伝子」を必要としない、寿命の短いエフェクター細胞である[4,49]。T細胞と比較して、NK細胞のサイトカイン産生プロファイルは、主に、IFN-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)からなり、IL-2を欠いている[50~52]。特に、IL-2は、サイトカイン放出症候群[53~55]及び脳浮腫[56,57]などの有害なオフターゲット副作用を増幅し、これは、健康な組織上で多数のTAA陽性標的又は予期しない標的遺伝子発現に直面するCAR-T細胞で生じた。これに関して、適度なTAAレベルを示す正常組織は、CAR-NK細胞の細胞傷害活性を制限する十分な量の防御的HLAクラスI分子を有し得る。
【0015】
これまで、レトロウイルス及びレンチウイルス形質導入は、NK細胞を遺伝子修飾するために現在最も利用されている方法であり、導入遺伝子の安定発現を有するCAR-NK細胞を製造するための最先端の技術である。NK細胞を遺伝子修飾するさらなるプロトコルとしては、mRNAのトロゴサイトーシス及びエレクトロポレーションが挙げられる[58,59]。しかしながら、どちらの方法も、インビボでの有効性を限定するCARの一過性発現しか提供しない[58,59]。これまで、NK細胞の内因性の耐性のために、レンチウイルス及びレンチウイルスベクターによるその形質導入は、大きな課題であった[60]。さらに、CAR-NK細胞は、そのエフェクター機能を維持するが、臨床的に適用可能な数へのその拡大は、大きな障害であり続け、これまで解決されていない。それゆえ、遺伝子操作後のCAR-NK細胞の選択的拡大方法が極めて必要とされており、CAR-NK細胞の臨床使用に向けた大きなステップである。
【発明の概要】
【0016】
(発明の概要)
従来技術の障害を克服するために、本発明は、第一の態様において、人工フィーダー細胞を用いてヒトNK細胞の増殖及び拡大を特異的に誘導する方法であって、該NK細胞を人工フィーダー細胞と接触させることを含み、ここで、該人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、少なくとも1つのサイトカイン及びさらに、共刺激リガンド又は活性化表面分子を発現する発現ベクターを含む、方法を提供する。
【0017】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、対象となるNK亜集団を含有するNKバルク細胞集団を、遺伝子改変され、活性化NK細胞受容体の同族NK細胞リガンドを発現する発現ベクターを含む人工フィーダー細胞と接触させることを含む、ナチュラル細胞傷害性受容体(NCR)、スモールテールKIR、又はNKG-受容体から選択される活性化NK細胞受容体を発現するNK細胞サブセットの増殖及び拡大の特異的誘導を含む。本発明のこの態様の代わりの実施態様において、人工フィーダー細胞株は、対象となるNK亜集団の活性化NKG2細胞受容体に特異的なHLA-E分子上に活性化ペプチドがロードされる。本発明のこの態様のさらなる代替物において、人工フィーダー細胞株は改変され、対象となるNK亜集団の活性化NK細胞受容体に特異的な膜結合型抗体を発現する。
【0018】
さらに好ましい実施態様において、本発明の方法は、CAR-NK細胞を含有するNK細胞集団を、CARの同族表面抗原を内在性に発現するか、又は遺伝子改変され、該CARの同族表面抗原を発現する発現ベクターを含む、人工フィーダー細胞と接触させることを含む、人工キメラ抗原受容体(CAR)を提示する遺伝子改変NK細胞の増殖及び拡大の特異的誘導を含み、ここで、該同族抗原は、ウイルス及び腫瘍関連抗原(TAA)によって表される。本発明のこの態様の代替物において、人工フィーダー細胞株は、改変され、CARに組み入れられたエピトープ-タグに特異的な膜結合型抗体を発現する。
【0019】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法に従って拡大されたNK細胞、NK-サブセット、又はCAR-NK細胞の医薬(すなわち、先端療法医薬品(ATMP))としての使用に関する。
【0020】
さらに、本発明は、少なくとも1つの医薬として許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、本明細書に記載される方法に従って拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+ NK細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
さらなる態様において、本発明は、免疫療法において使用するための、本方法に従って拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、もしくはNKG2C+ NK細胞、又は本明細書に記載される医薬組成物;該NK細胞、NKG2C+ NK細胞、もしくはCAR-NK細胞、又は該医薬組成物の癌免疫療法及びウイルス感染の免疫療法用の医薬の調製のための使用;並びに医薬として有効な量の該NK細胞、NKG2C+ NK細胞、もしくはCAR-NK細胞又は該医薬組成物のそれを必要としている対象への投与を含む治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
(図面の簡単な説明)
以下の図面は、本発明の様々な態様を説明するために提供される。その目的のために、いくつかの図面は模式図を含み、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【
図1】
図1は、PC3
PSCAフィーダー細胞株の作製を示している。(A)ベクターコンストラクトのIL-2、4-1BBL、及び膜結合型IL-15(mIL-15d)レンチウイルス比率の略図。4-1BBLを検出用のVSV-Gエピトープタグに融合させた(配列番号11)。mIL-15dコード配列は、そのITAMにT91S及びT102S突然変異を有する非機能的シグナルアダプタータンパク質DAP12(mutDAP12)に融合した、IL-15、c-mycエピトープタグからなる(配列番号10)。(B)PC3
PSCA細胞のHLA-アレル並びにPC3
PSCA細胞のHLA-ABC及びHLA-Eの表面発現レベルを示すフローサイトメトリー解析。(C)レンチウイルス形質導入による様々なPSCA
PSCA由来フィーダー細胞株の段階的作製の概略。
【
図2】
図2は、(A)サンドイッチELISAによるPC3
PSCA-IL-2フィーダー細胞のIL-2分泌の解析を示している。細胞を1.0、2.5、又は5.0×10
4細胞の密度で播種し、細胞培養上清を表示された時点で解析した。(B)VSV-G特異的抗体及びHRP標識抗マウス二次抗体を用いた異所性4-1BBL発現を示す野生型(対照)及び4-1BBL改変フィーダー細胞の全タンパク質ライセートの免疫ブロット解析。(C)膜結合型mIL-15dの表面発現レベルをAPC結合抗c-myc抗体を用いるフローサイトメトリー解析により決定した(黒塗りの領域)。APC結合IgGアイソタイプ抗体で染色された細胞(白抜きの領域)は、対照としての役割を果たした。
【
図3】
図3は、
図1~9に示された実験のための選択されたドナーのHLA-B及び-Cハプロタイプ、予測されたリガンド、並びにGvH方向でのフィーダー細胞との潜在的不一致の解析を示している。
【
図4】
図4は、遺伝子修飾された様々なPC3
PSCA-細胞株と共培養された5人の健康なドナー由来の初代NK細胞の拡大を示している。抗CD2/NKp46-活性化ビーズを用いるNK細胞の拡大を実験に含めた。(A)それぞれ、7つの異なるフィーダー細胞株を用いた及び拡大用のPC3野生型細胞を用いた6日間連続での1人のドナー由来の初代NK細胞の代表的なCFSE増殖解析、並びに活性化ビーズで処理され、IL-2(プロロイキンS)/IL-21が補充されたNK MACS培地中で培養された初代NK細胞の代表的なCFSE増殖解析。各々のグラフにおいて、下のヒストグラムは、NK細胞単離後1日目の最初のCFSEシグナルを示している。左の列は、未修飾のPC3
PSCA細胞(wt)及びトランスジェニックIL-2を欠くPC3
PSCA由来フィーダー細胞株と共培養されたNK細胞を示している。(B)8つの異なるフィーダー細胞株又は対照としての活性化ビーズとともに培養された初代NK細胞の平均及び拡大係数の概要。拡大係数は、1日目の細胞カウントと比べた9日目の細胞カウントを用いて計算される。(C)IL-2分泌フィーダー細胞の存在下で27日間培養された初代NK細胞の平均及び最大拡大係数の概要。
【
図5】
図5は、フローサイトメトリーによるNK細胞亜集団の検討を示している。5人の健康なドナー由来の拡大から10日後の新たに単離されたNK細胞、IL-2-4-1BBL及びIL-2-4-1BBL-mIL15d修飾フィーダー細胞で拡大されたNK細胞、並びに活性化ビーズで拡大されたNK細胞を解析した。(A)1人のドナー由来のNK細胞の代表的なCD56/CD16染色が示されている。IgGアイソタイプ抗体で染色されたNK細胞(下)は、対照としての役割を果たした。(B)拡大前及び拡大から10日後のCD56bright/CD16+、CD56bright/CD16-、CD56dim/CD16+、及びCD56dim/CD16- NK細胞亜集団の概要。5人のドナーを用いた2回の独立した実験の平均値及び標準偏差が示されている。
【
図6】
図6は、IL-2を分泌するPC3
PSCA由来フィーダー細胞株を用いたPBMC試料由来のNK細胞画分の拡大を示している。(A)白血球(生細胞に対するゲート)の総数に対するNK細胞(CD56+/CD3-)、T細胞(CD56-/CD3+)、及びNKT細胞(CD56+/CD3+)のパーセンテージを、抗CD56及び抗CD3抗体を用いる18日間の拡大にわたるフローサイトメトリーにより明らかにした。結果は、5人の異なるドナー由来のPBMCの平均+/-SDとして示されている。(B)初代NK細胞の最大拡大係数及び平均を示すグラフ。最大拡大係数は、実験開始時(0日目)の細胞カウントと比べた、18日間の培養における最大細胞カウントによって計算される。それぞれ、IL-2+4-1BBLで遺伝子修飾されたフィーダー細胞株及びIL-2、4-1BBL+mIL-15dで修飾されたフィーダー細胞株のみが同時に起こるT細胞の拡大を伴わずに強力かつ選択的なNK細胞の拡大を刺激することに留意されたい((C)を参照)。
【
図7】
図7は、IL-2-4-1BBL-及びIL-2-4-1BBL-mIL-15dフィーダー細胞を用いて拡大された単離されたNK細胞のNK細胞表面マーカー発現を示している。抗CD2/NKp46-活性化ビーズで拡大されたNK細胞が実験に含まれた。結果は、拡大の開始から10日後に、5人の健康なドナーから得られた。活性化及び共活性化受容体(A)、抑制性及び共抑制性受容体(B)、並びに免疫チェックポイント及び活性化マーカー(C)の発現レベルが示されている。各々のドナーについての3回の独立した実験の平均値が示されている。
【
図8】
図8は、NK細胞が自己に寛容であり、過剰活性化されていないが、外因性IL-2で処理されたときに過剰活性化されることができ、自己性喪失認識時に及びADCCの誘導後に細胞傷害性応答を生じることができることを示している。(A)単離から3週間及び4週間後の4人の健康なドナー由来のPC3
PSCA-IL-2-4-1BBL、PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15dフィーダー細胞又は活性化ビーズで拡大されたNK細胞を、様々なエフェクター対標的(E/T)比で、
51クロムがロードされたK562細胞と4時間共培養した。ある代表的なクロム放出アッセイの3連の比細胞溶解の平均が示されている。フィーダー細胞を用いて拡大されたNK細胞とは対照的に、連続的な外因性サイトカイン支援を含む活性化ビーズの使用により拡大されたNK細胞の生存は、4週間後に減少した。それゆえ、1人のドナー由来の拡大されたNK細胞しかK562標的に対する細胞傷害性の試験に含めることができなかった。(B)は、CD107a脱顆粒アッセイによって解析された自己細胞に対する拡大されたNK細胞の細胞傷害性を示している。PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15dフィーダー細胞によって拡大された5人の健康なドナー由来のNK細胞を、表示されたエフェクター対標的(E/T)比で、自己B細胞又はK562細胞(陽性対照)と4時間共培養した。培地のみのNK細胞は、内部対照としての役割を果たした。培地のみのCD107a陽性NK細胞のパーセンテージをB細胞又はK562と共培養されたCD107a陽性NK細胞のパーセンテージから差し引いた(
*p<0.05、
**p<0.01)。(C)は、患者HT18223又は患者HT18199由来の同種異系の初代GBM細胞に直面したときの4人の異なるドナー由来の拡大されたNK細胞の細胞傷害性を示している。NK細胞の細胞傷害性を、5:1のエフェクター対標的比で、クロム放出アッセイを用いて解析した。ドナーは全て、C1に対するライセンスされたNK細胞及び灰色の四角によって表示されたBw4に対するライセンスされていないNK細胞を含有していた。さらに、ドナー2及び5は、そのC2リガンドが黒色の四角によって表示されたHT18199細胞で消失しているC2に対するライセンスされたNK細胞を含有していた。ドナー3は、そのC2リガンドが灰色の四角によって表示されたHT18199細胞で消失しているライセンスされていないKIR2DL1-NK細胞を含有していた。活性化ビーズによって拡大されたNK細胞の溶解性細胞傷害性の増加に対し、PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15dによって拡大されたNK細胞は無応答のままであったことに留意されたい(
*p<0.05)。(D)HT18223及びHT18199 GBM細胞に対する細胞傷害性を拡大されたNK細胞の50IU/ml rhIL-2による過剰活性化によって誘導した(
*p<0.05)。(E)は、フローサイトメトリーによって測定されたGBM標的細胞上でのHLA-ABC及びEGFRの発現を示している(黒塗りの領域)。EGFR表面発現を、セツキシマブ及び二次APCコンジュゲート抗体を用いて評価した。アイソタイプ抗体で染色された細胞(白抜きの領域)は、対照としての役割を果たした。(F)は、セツキシマブでマーキングされた初代GBM細胞に対するNK細胞のADCCの誘導を示している。細胞傷害性を5:1のエフェクター対標的比でクロム放出アッセイを用いて評価した。ADCCの強度が標的細胞上でのEGFR表面発現の量と直接相関していることに留意されたい(平均±SD;
*p<0.05、ns;有意でない)。
【
図9】
図9は、フィーダー細胞上でのPSCA-マーカー発現のFACS支援解析を用いた共培養されたNK細胞の3日間の拡大期間におけるPSCA陽性PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL及びPC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15dフィーダー細胞の消失を示している。
【
図10】
図10は、PC3
PSCA-IL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞のHLA-E分子にロードされたHCMV UL40に由来する活性化ペプチドを用いるか、又はそれぞれ、活性化VMAPRTLIL及びVMAPRTLFLペプチドに融合した人工β2ミクログロブリン-HLA-E-タンパク質(HLA-E-UL40sp)を発現するように遺伝子改変されたこれらのフィーダー細胞を用いるバルク細胞NK集団からのNKG2C
+細胞集団の活性化及び拡大のためのスキームを示している。まず、NKG2A及び/又は抑制性KIRを発現し、NKG2Cを欠くNK細胞は、HLA-E及びKIR-リガンドを介して強い抑制性シグナルを受容し、それにより、該細胞が休止状態に保持されると考えられる。しかし、NKG2Cを介するシグナル伝達は、CD25発現を誘導し、高親和性IL-2受容体の会合をもたらすと考えられる。最後に、フィーダー細胞由来の分泌されたIL-2は、NKG2C+ NK細胞の選択的拡大を可能にする。
【化1】
がロードされたPC3
PSCA-IL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞との14日間の共培養後に測定された3人のドナーのバルクCD56+ NK細胞集団からのNKG2C+細胞の選択的増殖を示している。VMAPRTLFLは、HCMV株BE/1/2010由来のUL40シグナルペプチドに存在するが[61]、非古典的HLA-G分子のシグナルペプチドにも見られる。VMAPRTLLLは、様々なhCMV株由来のUL40シグナルペプチド[44]、並びにヒトHLAクラスI分子A
*01、A
*03、A
*11、A
*29、A
*30、A
*31、A
*32、A
*33、A
*36、A
*74、並びにHLA CアレルCw
*02及びCw
*15のシグナルペプチド[44]に存在する。どちらのペプチドもNKG2C+ NK細胞の増殖を可能にした。Aは、NKG2C+ NK細胞の選択的拡大の代表的な例を示している。予想外にも、二重陽性NKG2C+/NKG2A+ NK細胞が検出され、NKG2C+ NK細胞産物が初期NKG2C-/NKG2A+状態及びNKG2C+/NKG2A+中間状態から生じることが示された。Bは、それぞれ、ペプチドがロードされたPC3
PSCA-IL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞を用いたNKG2C+ NK細胞の拡大係数を示している。活性化ペプチドなしの対応するフィーダー細胞を用いたNKG2C+ NK細胞の拡大率が含まれている。拡大率は、14日目のNKG2C+ NK細胞及びNKG2C- NK細胞の数を、それぞれ、実験の開始時(0日目)の測定された初期のNKG2C+及びNKG2C-細胞数に対して除することにより計算した。
【
図12】
図12(A)は、HLA-E-UL40spコンストラクトの模式図を示している。
【化2】
は、様々なHLA-Cアレル(HLA-Cw
*01、-Cw
*03、-Cw
*04、-Cw
*05、-Cw
*06、-Cw
*0801-03、-Cw
*12、-Cw
*14、-Cw
*16、及び-Cw
*1702)由来のシグナルペプチドに由来するノナマーペプチドと同一であるHCMV株AD169由来の
【化3】
ペプチドを含有し、
【化4】
は、ヒトHLA-Gのシグナルペプチドに由来するノナマーペプチドと同一であるHCMV分離株BE/1/2010(GenBank: KP745677.1)由来の
【化5】
ペプチドを含有する。(B)は、FACS支援解析を用いた過剰発現されたHLA-E-UL40-VMPARTLILの代表的な解析を示している。過剰発現されたHLA-E-UL40-VMPARTLILは、非形質導入対照と比較したときのHLA-E染色の平均蛍光強度の増加によって示される。黒い点線のヒストグラムは、アイソタイプ染色を表し、黒い線のヒストグラムは、HLA-E染色を表す。(C)は、IL-2の発現又はIL-2とmIL-15dの組合せ発現を有する様々なHLA-E-UL40spコンストラクトを有するフィーダー細胞株を用いた14日目のNKG2C+ NK細胞の選択的拡大の代表的な例を示している。図(D)及び(E)は、表示されたフィーダー細胞株との共培養から14日後のNKG2C+/NKG2A- NK細胞の拡大率を示している。PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLFL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLFLは、NKG2C+ NK細胞の拡大において優れており、それぞれ、平均100倍及び115倍のNKG2C+ NK細胞の拡大を可能にする。(F)は、PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLFL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLFLフィーダー細胞との共培養によって拡大された純化されたNK細胞のCD56及びNKG2Cによる代表的な同時染色を示している。新たに単離されたNK細胞(0日目)は、ほとんどCD56dimであり、また、NKG2C+サブセットは、ほとんどCD56dim NK細胞集団に属する。予想外にも、フィーダー細胞によって拡大されたNKG2C+ 細胞は、ほとんどCD56brightであり、これらの細胞が末梢血由来のより未分化なCD56bright NK細胞サブセットから生じることを示している。(G)は、14日間の拡大期間におけるPC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLFL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLFLフィーダー細胞を用いたNKG2C-/NKG2A+初期状態及びNKG2C+/NKG2A+中間状態からのNKG2C+/NKG2A- NK細胞の予想外の増殖を示している。(H)、(I)、(J)、及び(K)は、表示されたフィーダー細胞株を用いた14日間の拡大期間におけるNKG2C+ NK細胞の事前拡大を欠く4人のHCMV血清反応陽性由来のNKG2C+/NKG2A- NK細胞の選択的拡大を示している。PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLFL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLFLだけがほぼ純粋な(純度>90%の)NKG2C+ NK細胞産物の産生を可能にした。(L)は、NKG2C+細胞の表面マーカーの代表的な解析を示している。NK細胞の純度は、表示されたフィーダー細胞による14日間の拡大の後、常に95%超であり(生細胞に対してゲートをかけたCD56+、データは示さない)、T細胞及びNKT細胞の混入(CD3)の欠如を示したが、自己認識能(NKG2D)及びADCC(CD16)の誘導と関連するNK表現型を示した。驚くべきことに、拡大されたNK細胞の大部分は、消耗の兆候(TIGIT、PD-1)を欠いている。(M)は、同じ拡大されたNK細胞からのFACSデータを示し、これは、NKG2C+ NK細胞の最終分化への転換(KIR、CD57)を示しており、かつ拡大されたNK細胞のかなりの割合が高親和性IL-2受容体(CD25)を予想外に強く発現することを示している。(N)は、表示されたフィーダー細胞株を用いた5人のドナー由来の拡大されたNK細胞のCD25、PD-1、及びTIGITの平均発現レベルを示している。(O)は、膠芽腫患者の末梢血(生細胞に対するゲート)由来の純化された(0日目)及び拡大されたNK細胞(14日目)のFACS解析を示している。細胞を、それぞれ、CD25及びPD-1とともにNKG2Cについて染色した。(P)は、患者由来NKG2C+ NK細胞が、KIR:KIR-リガンド状況に関係なく、同種異系HLA-E+/HLA-G+膠芽腫細胞を予想外に溶解させたことを示している。NKG2C+ NK細胞は、HLA-E及びHLA-Gの発現を欠く自己腫瘍細胞を死滅させることができず、NKG2C+ NK細胞の細胞傷害性が、おそらくはHLA-Gに由来する活性化ペプチド又は腫瘍細胞に由来する他の活性化ペプチドがロードされた、その同族リガンドHLA-Eの表面発現によって誘導され得ることを示した。
【
図13】
図13は、エピトープ-タグ化CAR-NK細胞の選択的拡大のスキームを示している。非形質導入CAR陰性細胞は、NKG2A及びKIRを介して強い抑制シグナルを受容し、それにより、該細胞が休止状態に保持されると考えられる。CARへの抗エピトープ抗体の結合によるNK細胞の活性化は、CD25発現を誘導し、高親和性IL-2受容体の会合をもたらすと考えられる。その後、フィーダー細胞の分泌されたIL-2は、CAR+ NK細胞の選択的拡大を可能にする。
【
図14】
図14(A)は、NK細胞で発現されたエピトープ-タグ化la-タグ-c-myc-タグ-DAP12コンストラクト(配列番号18)及びフィーダー細胞で発現された膜結合型抗c-myc-タグscFv(scFv(9E10)-tm)(配列番号12)の模式図を示している。(B)は、scFv(9E10)-tmに関して遺伝子改変されたフィーダー細胞のウェスタンブロット解析を示している。膜画分のライセートをSDS-PAGE電気泳動に供した。ブロットされたタンパク質を抗VSV-G抗体及び二次HRP結合抗体を用いて検出した。(C)は、3人のドナー由来のDAP12-La-タグ-myc-タグが形質導入されたNK細胞の経時的な拡大係数を示している。拡大率は、c-myc陽性細胞の数を形質導入から2日後(0日目)の測定された初期のmyc+細胞数に対して除することにより計算した。(D)は、NK細胞集団におけるDAP12-La-タグ-myc-タグCARコンストラクトが形質導入されたNK細胞の経時的な選択的濃縮を示している。c-myc-タグ化NK細胞を、表示された時点でフローサイトメトリーを用いて、APC結合抗c-myc抗体を用いて検出した。アイソタイプ対照を実験に含めた。拡大率は、c-myc陽性細胞の数を形質導入から2日後(2日目)の測定された初期のc-myc+細胞数に対して除することにより計算した。
【
図15】
図15は、同族リガンドTAAのトランスジェニック発現を有するフィーダー細胞を用いたCAR-NK細胞の選択的拡大のスキームを示している。非形質導入CAR陰性細胞は、NKG2A及びKIRを介して強い抑制性シグナルを受容し、それにより、該細胞が休止状態に保持されると考えられる。フィーダー細胞上のその同族抗原へのCARの結合を介するNK細胞の活性化は、CD25発現を誘導し、高親和性IL-2受容体の会合をもたらすと考えられる。その後、フィーダー細胞の分泌されたIL-2は、CAR+ NK細胞の選択的拡大を可能にする。
【
図16】
図16(A)は、レンチウイルス抗PSCA-CARコンストラクト(配列番号16)のスキームを示している。(B)は、抗PSCA-CAR-EGFP-NK細胞上の高親和性(CD25)IL-2受容体の選択的上方調節、及び(C)それぞれ、分泌型IL-2及びIL-2+膜結合型mIL-15dで改変されたPC3
PSCA人工フィーダー細胞株を用いた2人のドナー由来の抗PSCA-CAR-EGFP形質導入NK細胞の増殖を示している。(D)は、CD2/NKp46-ビーズによって拡大された抗PSCA-CAR-EGFP-NK細胞と比較してフィーダー細胞株を用いたときの3人のドナー由来の抗PSCA-CAR-EGFP-NK細胞の代表的な拡大率を示している。拡大率は、EGFP陽性細胞の数を形質導入から1日後(1日目)の測定された初期のEGFP+細胞数に対して除することにより計算した。
【
図17】
図17(A)は、NK細胞の遺伝子修飾のための抗EGFRvIII-CAR((配列番号17)及びフィーダー細胞の遺伝子修飾のためのレンチウイルスEGFRvIIIコンストラクト(配列番号8)のスキームを示している。(B)は、ビオチン化scFv(MR1.1)-BAP並びに二次及びビオチン-APC染色を用いたフィーダー細胞上でのEGFRvIII表面発現のFACS支援解析を示している(黒塗りのヒストグラム)。二次抗ビオチン-APCによる染色は、対照としての役割を果たした(点線)。(C)及び(D)は、同族EGFRvIII抗原に関して遺伝子改変され、かつそれぞれ、分泌型IL-2の発現並びに分泌型IL-2及びmIL-15dの同時発現を有するPC3
PSCA人工フィーダー細胞株を用いた5人のドナー由来の抗EGFRvIII-CAR形質導入NK細胞の増殖を示している。(E)は、表示されたフィーダー細胞株とともに9日間培養したときの抗EGFRvIII-CAR-NK細胞の拡大係数を示している。CAR+ NK細胞は、同時に形質導入されたEGFPの発現により同定した。拡大率は、2日目(形質導入から2日後)の測定された初期のEGFP+細胞数に対して11日目のEGFP陽性細胞の数を除することにより計算した。
【化6】
のアミノ酸配列を示している。
下線:シグナル配列
太字の二重下線: VMAPRTLILノナマーペプチド
破下線:β2ミクログロブリン配列
イタリック体:リンカー
太字: HLA-E配列
【化7】
のアミノ酸配列を示している。
下線:シグナル配列
太字の二重下線: VMAPRTLFLノナマーペプチド
破下線:β2ミクログロブリン配列
イタリック体:リンカー
太字: HLA-E配列
【
図20】
図20は、PSCAプレ-プロタンパク質のアミノ酸配列(配列番号7)を示している。 下線:シグナル配列 太字: PSCAプロタンパク質
【
図21】
図21は、アミノ酸配列EGFRvIII(配列番号8)を示している。 下線:シグナル配列 太字: EGFRvIII 太字の二重下線: EGFRvIIIネオ-エピトープ
【
図22】
図22は、ヒトIL-2のアミノ酸配列(配列番号9)を示しており、これは、以下の構成要素を含有する: 下線:シグナルペプチド 太字:成熟IL-2タンパク質
【
図23】
図23は、mIL-15dのアミノ酸配列(配列番号10)を示しており、これは、以下の構成要素からなる: 下線:シグナル配列 破下線: IL-15配列 二重下線: mutDAP12配列 二重下線、太字: YからSへの部位指向性突然変異 イタリック体:リンカー イタリック体、太字の下線: c-myc-タグ
【
図24】
図24は、4-1BBL(CD137L)のアミノ酸配列(配列番号11)を示しており、これは、以下の構成要素を含有する: 下線:膜貫通ドメイン 太字: TNFドメイン 太字の二重下線: VSV-Gタグ
【
図25】
図25は、scFv(9E10)-tmのアミノ酸配列(配列番号12)を示しており、これは、以下の構成要素を含有する: 下線:インフルエンザヘマグルチニンシグナルペプチド 太字: scF(9E10) VH及びVLドメイン イタリック体:リンカー イタリック体の太字の下線: VSV-Gタグ及びHis6タグ 二重下線:膜貫通ドメイン及び短い細胞質領域
【
図26】
図26は、ヒト(ホモサピエンス(Homo sapiens)) DAP12のアミノ酸配列(配列番号13)を示しており、これは、以下の構成要素を含有する: 下線:シグナルペプチド 太字:成熟DAP12 太字のイタリック体の下線:膜貫通ドメイン 太字の二重下線: ITAM
【
図27】
図27は、抗EGFRvIII単鎖可変断片scFv(MR1.1)のアミノ酸配列(配列番号14)を示しており、これは、以下の構成要素からなる: 下線:シグナルペプチド 太字: MR1.1可変Igドメイン 太字のイタリック体:リンカー
【
図28】
図28は、抗PSCA単鎖可変断片scFv(AM1)のアミノ酸配列(配列番号15)を示しており、これは、以下の構成要素からなる: 下線:シグナルペプチド 太字: AM1可変Igドメイン 太字のイタリック体:リンカー
【
図29】
図29は、抗PSCA-CAR(scFv(AM1)-DAP12)のアミノ酸配列(配列番号16)を示しており、これは、以下の構成要素からなる: 下線:Igκシグナルペプチド 太字: scFv(AM1)の可変Igドメイン 太字のイタリック体: scFvのグリシン/セリンリンカー 太字の二重下線: c-myc-タグ 太字の下線:成熟DAP12配列 イタリック体:リンカー配列
【
図30】
図30は、抗EGFRvIII-CAR(scFv(MR1.1)-DAP12)のアミノ酸配列(配列番号17)を示しており、これは、以下の構成要素からなる: 下線:Igκシグナルペプチド 太字: scFv(MR1.1)の可変Igドメイン 太字のイタリック体: scFvのグリシン/セリンリンカー 太字の二重下線: c-myc-タグ 太字の下線:成熟DAP12配列 イタリック体:リンカー配列
【
図31】
図31は、その細胞外ドメインにLa-及びc-myc-エピトープを含有するDAP12-コンストラクトのアミノ酸配列(配列番号18)を示しており、これは、以下の構成要素からなる: 一重下線: DAP12シグナルペプチド 太字の点線下線: la-エピトープ 太字の二重下線: c-myc-エピトープ イタリック体:リンカー 太字: DAP12 配列
【発明を実施するための形態】
【0023】
(定義)
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「バイオテクノロジー用語の多言語小辞典:(IUPAC推奨)(A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations))」、H. G. W. Leuenberger、B. Nagel、及びH. Kolbl編(1995) Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerlandに記載されている通りに定義される。
【0024】
本発明の実施は、別途示されない限り、その分野の文献において説明される生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技法の従来の方法を利用する(例えば、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、J. Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)。
【0025】
本明細書及び以下の特許請求の範囲の全体を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」というその変化形は、明記されたメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群の包含を意味し、任意の他のメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群の除外を意味しないと理解されるが、いくつかの実施態様において、そのような他のメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群は、除外され得る、すなわち、主題は、明記されたメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群の包含で構成される。「a」及び「an」及び「the」という用語、並びに本発明の記載に関連して(特に、特許請求の範囲に関連して)使用される類似の言及は、本明細書において別途示されない限り又は文脈上明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を含むものと解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、その範囲内に収まる各々別々の値に個別に言及する簡単な方法としての役割を果たすことが意図されるにすぎない。本明細書において別途示されない限り、各々の個々の値は、あたかも本明細書に個別に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は、互換的に使用されており、そのような表記は全て、子孫を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という単語は、継代数にかかわらず、初代対象細胞及び該初代対象細胞に由来する培養物を含む。意図的な又は偶発的な突然変異のために、全ての子孫がDNA含有量に関して厳密に同一でない場合があることも理解される。最初に形質転換された細胞でスクリーニングされたものと同じ機能又は生物活性を有する突然変異体子孫が含まれる。明確な指定が意図される場合、これは、文脈から明らかとなるであろう。
【0027】
本明細書で使用される「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、互換的に使用されており、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸から構成された生体分子を意味すると定義される。
【0028】
ペプチド又はアミノ酸配列が本明細書で言及される場合、各々のアミノ酸残基は、以下の慣習的リストに従って、アミノ酸の慣用名に対応する、一文字又は三文字表記によって表される:
【表1】
【0029】
本明細書で使用される「a」、「an」、及び「the」という用語は、「1以上」を意味すると定義され、文脈上不適切でない限り、複数を含む。
【0030】
本明細書で使用される「対象」という用語は、治療、観察、又は実験の対象となっている、動物、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトを指す。
【0031】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、治療されている疾患又は障害の症状の改善を含む、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医によって探求されている組織系、動物、又はヒトで生物学的応答又は薬物応答を誘発する活性化合物又は医薬品の量を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「医薬として許容し得る」という用語は、ヒト使用と獣医学的使用の両方を包含し:例えば、「医薬として許容し得る」という用語は、獣医学的に許容し得る化合物又はヒトの医薬及びヘルスケアで許容し得る化合物を包含する。
【0033】
概念上、3つの異なるタイプの腫瘍関連抗原(TAA)が存在し:第一の群は、形質転換性ウイルスが起源であるか、又は腫瘍細胞における突然変異もしくは染色体異常によるものである「新抗原」である。次に、「自己抗原」であり、これは、主に、腫瘍で過剰発現される増殖及び分化マーカー又は腫瘍細胞のエピジェネティック変化及び細胞脱分化の過程で異常に発現される正常胎児性抗原である。最後に、第三の群は、代謝障害が原因で様々な腫瘍特異的翻訳後修飾を有する自己抗原に相当する「修飾自己抗原」を含む。固形腫瘍の大部分のTAAは、自己抗原及び修飾自己抗原に対応し、これらは、腫瘍で再発現又は過剰発現され、正常組織では滅多に検出されない。
【0034】
本発明に関連して、「腫瘍抗原」又は「腫瘍関連抗原」(「TAA」)という用語は、(i)腫瘍における突然変異事象の後に、EGFR変異体III(EGFRvIII[62])などの新エピトープ(新抗原)を含有するタンパク質;(ii)主に、腫瘍で過剰発現される増殖及び分化マーカー又は腫瘍細胞のエピジェネティック変化及び細胞脱分化の過程で異常に発現される正常胎児性抗原である「自己抗原」、並びに(iii)代謝障害が原因で様々な腫瘍特異的翻訳後修飾を有するタンパク質又は糖脂質に相当する「修飾自己抗原」に関する。非突然変異、非修飾TAAは、正常条件下では、限られた数の組織及び/もしくは器官内で又は特定の発生段階で特異的に発現され、例えば、腫瘍抗原は、正常条件下では、胃組織内、好ましくは、胃粘膜内、生殖器官内、例えば、精巣内、栄養膜組織内、例えば、胎盤内、又は生殖系列細胞内で特異的に発現されることができ、かつ1以上の腫瘍又は癌組織で再発現又は異常発現される。これに関連して、「限られた数」は、好ましくは、3以下、より好ましくは、2以下を意味する。本発明に関連する腫瘍抗原には、例えば、分化抗原、好ましくは、細胞型特異的分化抗原、すなわち、正常条件下では、特定の発生段階の特定の細胞型で特異的に発現されるタンパク質、癌/精巣抗原、すなわち、正常条件下では、精巣内及び時として胎盤内で特異的に発現されるタンパク質、並びに生殖系列特異的抗原が含まれる。本発明に関連して、腫瘍抗原は、好ましくは、癌細胞の細胞表面と関連し、かつ好ましくは、正常組織で発現されない又はごく稀にしか発現されない。好ましくは、腫瘍抗原又は腫瘍抗原の異常発現によって、癌細胞が同定される。本発明に関連して、対象、例えば、癌疾患に罹患している患者の癌細胞によって発現される腫瘍抗原は、好ましくは、該対象における自己タンパク質である。好ましい実施態様において、本発明に関連する腫瘍抗原は、正常条件下では、不可欠ではない組織もしくは器官、すなわち、免疫系による傷害を受けないときに対象の死をもたらさない組織もしくは器官内で、又は免疫系によって接近されないもしくはほとんど接近されない身体の器官もしくは構造体内で特異的に発現される。
【0035】
本発明に関連して、ウイルス抗原という用語は、感染した宿主細胞で産生され、かつ表面タンパク質として発現されるか、又はHLA-E及びβ2-ミクログロブリンと複合体を形成して、感染細胞によって提示されるウイルスペプチドであるウイルスタンパク質に関する。いくつかの状況において、ウイルス抗原は、形質転換させる発癌性ウイルスによってコードされた新抗原(すなわち、子宮頸癌及び頭頸部癌を引き起こすヒトパピローマウイルス;肝臓癌を引き起こすB型肝炎及びC型肝炎ウイルスにおいて、神経膠腫の生成に関与する、HCMVに由来するもの)などの、TAAを表す。
【0036】
本発明において有用であり得る腫瘍関連抗原及びウイルス抗原の例は、限定されないが、ART-4、CD4、CD19、CD20、CD30、CD33、CD44、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質、例えば、CLAUDIN-6、CLAUDIN-18.2、及びCLAUDIN-12、胎児性抗原、例えば、CEA、血管内皮成長因子ファミリーのメンバー、上皮細胞接着分子EpCAM、卵胞刺激ホルモン(hormon)受容体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原、葉酸結合タンパク質FBP、葉酸受容体α、上皮糖タンパク質ファミリーのメンバー、ジアシアロガングリオシド、カルボニックアンンヒドラーゼファミリーのメンバー、炭水化物抗原ファミリーのメンバー、EGFR、EGFRvIII、G250、GnT-V、HER-2/neu、ムチンタンパク質ファミリーのメンバー、例えば、MUC1、PSA、PSCA、PSMA、IL13Rα2、EphA2、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のgp120又はgp41を含む、細胞表面局在化タンパク質である。本発明において有用であり得る又は本発明によって同定され得る腫瘍抗原及びウイルス抗原のさらなる例は、HCMV株BE/1/2010及びHLA-Gに由来する
【化8】
ペプチド、様々なHCMV株[44]並びにHLAクラスI分子A
*01、A
*03、A
*11、A
*29、A
*30、A
*31、A
*32、A
*33、A
*36、A
*74、及びCw
*15に由来する
【化9】
、HCMV株AD169並びにHLAクラスI分子HLA-Cw
*01、-Cw
*03、-Cw
*04、-Cw
*05、-Cw
*06、-Cw
*0801-03、-Cw
*12、-Cw
*14、-Cw
*16、及び-Cw
*1702由来の
【化10】
、並びに全て非古典的HLA-E分子によって提示されることができるその他のもの、例えば、HSP60
【化11】
である。特に好ましい腫瘍抗原及びウイルスペプチドには、PSCA(配列番号7)、EGFRvIII(配列番号8)、並びにHLA-E提示ペプチド
【化12】
を介するものが含まれる。
【0037】
「クローン性拡大」又は「拡大」という用語は、特定の実体が増加するプロセスを指す。本発明に関連して、この用語は、好ましくは、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖し、該抗原を認識する特定のリンパ球が増幅される免疫学的応答に関連して使用される。好ましくは、クローン性拡大は、腫瘍細胞又はウイルス感染細胞に対する高い細胞傷害性を有する多数のリンパ球の産生をもたらす。具体的に、本発明によれば、「クローン性拡大」又は「拡大」という用語は、NK細胞、より好ましくは、NK細胞の特定のサブセットが増加するプロセスを指す。
【0038】
単鎖可変断片(scFv)は、実際には抗体の断片ではなく、その代わりに、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで接続された、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常、可撓性のためにグリシンに富むだけでなく、溶解性のためにセリン又はトレオニンにも富み、VHのN-末端をVLのC-末端と接続することができ、又はその逆も可能である。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、もとの免疫グロブリンの特異性を保持する。二価(Divalent)(又は二価(bivalent))単鎖可変断片(ジ-scFv、バイ-scFv)は、2つのscFvを連結させることにより人為的に作製することができる。これは、2つのVH及び2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を産生して、タンデムscFvを生じさせることにより行うことができる。scFvの総説については、Pluckthunの文献、モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)所収、第113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer-Verlag, New York, pp. 269-315(1994)を参照されたい。
【0039】
技術革新に関連して、キメラ抗原受容体(CAR)という用語は、特定のヒト細胞表面タンパク質、糖構造体、又はタンパク質複合体の結合部分(例えば、単鎖可変断片(scFv)、又は標的細胞上のそれぞれの受容体のリガンド)と、膜貫通ドメインと、それに続く、シグナル伝達アダプタードメインとから構成される従来のCARに使用される。CARという用語は、技術革新に関連する代わりの概念に、特に、最近記載されたUniCAR-システム[63,64]に、又はそれぞれ、腫瘍細胞及びウイルス感染細胞へのNK細胞の向け直し(リバースCARアプローチ、revCAR)ための標的化モジュールと併せたNK細胞のエピトープ-タグ化シグナル伝達アダプター、例えば、二重特異性抗体分子に使用される。本明細書で使用されるCAR、UniCAR、及びリバースCARという用語は、互換的に使用されており、リンパ球を標的細胞に向け直すために使用される人工生体分子を意味すると定義される。
【0040】
本発明による共刺激分子は、NK細胞拡大を促進すると既に記載されている; IL-15、IL-18、IL-21などのサイトカインから選択される。
【0041】
本発明による活性表面分子は、NK細胞拡大を活性化及び促進すると既に記載されている、4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質(すなわち、LLT1、AICL、及びKACL);シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、例えば、CD150、CD244、及びCD48)、並びにウイルスヘマグルチニンなどのウイルス由来分子などの既知の共刺激NK細胞リガンドから選択される。
【0042】
本発明によれば、別の活性化表面分子群は、それぞれ、NK細胞上のNKG2C及びCARなどの活性化NK細胞受容体に結合するリガンド/腫瘍関連抗原又は抗体である。
【0043】
「癌疾患」又は「癌」という用語は、典型的には無調節な細胞増殖を特徴とする個体の生理的状態を指す又は記述する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。より特に、そのような癌の例としては、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器及び生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、及び下垂体腺腫が挙げられる。本発明による「癌」という用語は、癌転移も含む。好ましくは、「癌疾患」は、腫瘍抗原を発現する細胞によって特徴付けられ、癌細胞は、腫瘍抗原を発現する。
【0044】
一実施態様において、癌疾患は、退形成、侵襲性、及び転移という特性によって特徴付けられる悪性疾患である。悪性腫瘍は、その増殖に関して自己限定的ではなく、隣接組織に侵入することができ、遠隔組織に広がることができる(転移する)が、良性腫瘍は、これらの特性を有さないという点で、悪性腫瘍は、非癌性良性腫瘍と対比され得る。
【0045】
(本発明の詳細な説明)
ドナー由来同種異系NK細胞及び自己NK細胞は、ウイルス感染及び原発性腫瘍又は転移性癌のような今のところ治癒不可能な疾患を治療する大きな可能性を有する。今日、いくつかの遺伝子修飾された人工フィーダー細胞株が、過剰活性化NK細胞産物を潜在的にもたらす健康なドナー及び患者由来のNK細胞の強いエクスビボ拡大を可能にしている。過剰活性化NK細胞の適用は、望ましくないGvHD効果のリスクを有する。さらに、現在の拡大プロトコルは、効果的な拡大のための、ヒトインターロイキン、特に、rhIL-2の構成的添加を含む。生理的な量のIL-2を放出し、自己KIR/KIR-リガンド(HLA)状況を模倣することができ、それゆえ、非過剰活性化NK細胞の完全に自律的な増殖を可能にするフィーダー細胞株が有利であり、費用及び作業時間を節約する。
【0046】
したがって、本発明は、末梢血中のNKG2C細胞の事前拡大を欠くHCMV血清反応陽性ドナー由来のNK細胞及びNK細胞サブセット、例えば、NKG2C+ NK細胞の選択的拡大のための、並びにCAR修飾NK細胞の選択的拡大のための人工フィーダー細胞株を提供する。しかしながら、NKG2C+及びCAR-NK細胞を前臨床及び臨床使用のために多くの細胞数まで選択的に拡大するためのプロトコルが従来技術に欠けている。
【0047】
従来技術におけるこの欠落を克服するために、本発明は、ヒトNK細胞の増殖及び拡大を人工フィーダー細胞で特異的に誘導する方法であって、該NK細胞を人工フィーダー細胞と接触させることを含み、ここで、該人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、少なくとも1つのサイトカイン及びさらに、共刺激分子又は活性化表面分子を発現する発現ベクターを含む、方法を提供する。
【0048】
好ましい実施態様において、本発明は、ヒトNK細胞の増殖及び拡大を人工フィーダー細胞で特異的に誘導する方法であって、
(a)該NK細胞を人工フィーダー細胞と接触させること(ここで、該人工フィーダー細胞は、
・キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のHLA C1、C2、及びBw4タイプから選択される少なくとも1つの抑制性NK細胞リガンド、非KIR結合性Bw6リガンド、及び抑制性NKG2A受容体の内在性HLA-Eリガンド、並びに
・少なくとも1つのサイトカイン、例えば、インターロイキン-2を発現し;かつ
・任意に、遺伝子改変され、IL-15、IL-18、IL-21などのサイトカインから選択される少なくとも1つの共刺激分子;並びに/又は4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質(すなわち、LLT1、AICL、及びKACL);シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、例えば、CD150、CD244、及びCD48)、並びにウイルスヘマグルチニンなどのウイルス由来分子から選択される少なくとも1つの活性化表面分子をさらに発現する少なくとも1つの発現ベクターを含む);
(b)該NK細胞及び人工フィーダー細胞を該NK細胞の拡大を可能にする条件下で培養すること
を含む、方法を提供する。
【0049】
本発明のさらなる実施態様において、人工フィーダー細胞は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のHLA C1、C2、及びBw4タイプ、非KIR結合性Bw6リガンド、並びに抑制性NKG2A受容体のHLA-Eリガンドから選択される、複数の、例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの抑制性NK細胞リガンドを発現し、それゆえ、同族KIRを発現する選択されたドナーNK細胞と一致する。
【0050】
好ましい実施態様において、人工フィーダー細胞は、NK細胞のBw4-、C1-、及びC2-リガンド並びに非KIR結合性Bw6リガンド及びHLA-Eからなる群の抑制性NK細胞リガンドの全てを発現し、それゆえ、様々なドナー由来の任意のNK細胞と一致する。
【0051】
一実施態様において、人工フィーダー細胞は、単離された細胞であり、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のHLA C1、C2、及びBw4タイプ、非KIR結合性Bw6リガンド、並びに抑制性NKG2A受容体の内在性HLA-Eリガンドから選択される抑制性NK細胞リガンドの少なくとも1つ、好ましくは、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くを天然に発現する。
【0052】
本発明の別の実施態様において、人工フィーダー細胞は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のHLA C1、C2、及びBw4タイプ、非KIR結合性Bw6リガンド、並びに抑制性NKG2A受容体の内在性HLA-Eリガンドから選択される抑制性NK細胞リガンドの少なくとも1つ、好ましくは、2つ、3つ、4つ、又はそれより多く、最も好ましくは、全てを組換え発現する少なくとも1つの発現ベクターを含む遺伝子改変細胞である。
【0053】
本発明の別の実施態様において、人工フィーダー細胞は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のHLA C1、C2、及びBw4タイプ、非KIR結合性Bw6リガンド、並びに抑制性NKG2A受容体の内在性HLA-Eリガンドから選択される抑制性NK細胞リガンドの1つ又は複数、例えば、2つ、3つ、又は4つを組換え発現する少なくとも1つの発現ベクターを含む遺伝子改変細胞であり、ここで、組換え発現されない該抑制性NK細胞リガンドの1つ又は複数、例えば、2つ、3つ、又は4つは、該人工フィーダー細胞によって天然に発現される。
【0054】
最も好ましくは、人工フィーダー細胞は、NK細胞の抑制性NKG2A受容体のHLA-Eリガンドを発現し、同時に、C1又はC2リガンドから選択されるキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の少なくとも1つの抑制性リガンド及びNK細胞のBw4又はBw6から選択される少なくとも1つのリガンドを発現して、拡大用に選択される個々のドナーNK細胞とのKIR-リガンド:KIR一致をもたらす。
【0055】
本発明の一実施態様において、インターロイキン-2などの少なくとも1つのサイトカインは、人工フィーダー細胞によって天然に発現される。
【0056】
別の実施態様において、人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、インターロイキン-2などの少なくとも1つのサイトカインを組換え発現する発現ベクターを含む。
【0057】
本発明の好ましい実施態様において、人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、IL-15、IL-18、IL-21などのサイトカインから選択される1つの共刺激分子;並びに/又は4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質(すなわち、LLT1、AICL、及びKACL);シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、例えば、CD150、CD244、及びCD48)、並びにウイルスヘマグルチニンなどのウイルス由来分子から選択される1つの活性化表面分子をさらに発現する。
【0058】
本発明のさらなる実施態様において、人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、IL-15、IL-18、IL-21などのサイトカインから選択される2つ、3つ、もしくはそれより多くの共刺激分子;並びに/又は4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質(すなわち、LLT1、AICL、及びKACL);シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、例えば、CD150、CD244、及びCD48)、並びにウイルスヘマグルチニンなどのウイルス由来分子から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはそれより多くの活性化表面分子をさらに発現する。
【0059】
前述の分子を発現させるために、人工フィーダー細胞は、前述の分子の発現のための核酸分子を含有する、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多くの発現ベクター、好ましくは、1つ、2つ、又は3つ、最も好ましくは、1つ又は2つの発現ベクターを含むことができる。
【0060】
本発明の人工フィーダー細胞株及び方法は有利である。該方法及び特に、少なくとも1つのサイトカインを分泌するようにさらに遺伝子改変されている、本発明の該人工フィーダー細胞は、任意の外因的に添加されるサイトカインを必要とすることなく、ヒト初代NK細胞の選択的活性化及び拡大を可能にするという利点を有する。
【0061】
一実施態様において、レンチウイルス遺伝子移入を、それぞれの遺伝子又は遺伝子エレメントのコード配列をコードするレンチウイルスベクターを最初に構築することにより、フィーダー細胞におけるサイトカイン及び共刺激分子並びに活性化表面分子の安定発現、並びにNK細胞におけるCARの安定発現のために適用することができる。例示的なレンチウイルスベクターとしては、ベクターのレンチウイルス部分がヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来するベクターpHATtrick及びその派生物[65]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
レンチウイルス粒子は、典型的には、送達されるべき遺伝子又は核酸をコードするレンチウイルスベクターによるヒト胎児腎臓(HEK)293T(ACC 635)細胞の一過性トランスフェクション、並びに構造ウイルスタンパク質及び他のウイルスタンパク質、例えば、逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼをコードするヘルパープラスミド(例えば、pCD/NL-BH[65]、psPAX2、addgeneプラスミド12260)+エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミド(例えば、pcz-VSV-G[65]、pMD2.G、addgeneプラスミド#12259)の共トランスフェクションによって産生される。異なるウイルス種由来の様々なエンベロープをこの目的で利用することができる。レンチウイルスベクターは、限定されないが、両種性マウス白血病ウイルス(MLV)のエンベロープ糖タンパク質(Env)もしくは水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)のGタンパク質で、内在性ネコウイルス由来のRD114糖タンパク質で、プロトタイプフォーミーウイルス(PFV)の修飾エンベロープで、又はテナガザル白血病ウイルス(GaLV)及びMLV由来のキメラエンベロープ糖タンパク質変異体で、良好にシュードタイピングすることができる。トランスフェクトされたHEK293T細胞由来の上清をトランスフェクションから24時間~96時間後に回収することができ、ウイルス粒子を、超遠心分離又は他の方法によって、上清から濃縮することができるが、必ずしもそうしなければならないわけではない。
【0063】
本発明に関連して、本発明の方法において使用されるNK細胞は、自己であっても、同系であっても、同種異系であってもよく、その選択は、治療されることになる疾患及びそれをするのに利用可能な手段によって決まる。NK細胞は、治療を受けている対象の腫瘍外植片由来のものを含め、末梢血、臍帯血、及び任意の他の源から単離することができる。
【0064】
本発明の方法におけるCAR-NK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を細胞表面に発現するように遺伝子改変されている初代自己、同系、又は同種異系NK細胞を障害する。本発明のために、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DAP10、CD3ζ、CD3εRI、及びDAP12の細胞質領域由来の様々なシグナル伝達アダプタードメインを使用することができる。記載されている方法のために、DNAX活性化タンパク質12(DAP12)の膜貫通及び細胞質ドメイン[65,66]に融合したc-myc-タグを含有する細胞外部分を含むCAR(配列番号13、16、17、及び18)が使用される。
【0065】
本発明の方法の好ましい実施態様において、人工フィーダー細胞は、抑制性NKG2Aリガンド(すなわち、内在性HLAクラスIリーダーペプチドがロードされたHLA-E)、並びにキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のヒト白血球抗原(HLA) C1、C2、及びBw4リガンド、並びに非KIR結合性Bw6リガンドを発現する。C1、C2、及びBw4エピトープは、ナチュラルキラー細胞KIRのリガンドとして作用する。HLA-Bw6変異体は、既知のKIRリガンドを有さない。最も好ましい実施態様において、該人工フィーダー細胞は、NGK2Aリガンド、NK細胞のBw4-、C1-、及びC2-KIRリガンド、並びに非KIR結合性Bw6リガンドを同時に発現する。該フィーダー細胞は、NK細胞ドナーのC1、C2、Bw4ハプロタイプと一致し、それゆえ、自己KIR/KIR-リガンド状況を模倣する、すなわち、該フィーダー細胞は、異なるドナー由来の任意のNK細胞とKIR-リガンド/抑制性KIRが一致する。
【0066】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様において、本発明の人工フィーダー細胞によって発現される少なくとも1つのサイトカインは、ヒトインターロイキン2(IL-2)、より好ましくは、分泌されるヒトIL-2である。IL-2は、免疫系のサイトカインシグナル伝達分子である。免疫を担当している白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte)、多くの場合、リンパ球)の活性を調節するのは、サイトカインである。IL-2は、リンパ球によって発現されるIL-2受容体に結合することにより、その作用を媒介する。本発明の方法において、人工フィーダー細胞によって分泌されるヒトIL-2は、本発明によるNK細胞、好ましくは、CAR-NK細胞又はNKG2C+ NK細胞画分の拡大を促進する。
【0067】
本発明のより好ましい実施態様において、該IL-2は、天然のシグナルペプチドを含有するヒトIL-2である。本発明の最も好ましい実施態様において、該IL-2は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0068】
好ましくは、該人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌し、4-1BBLを同時に発現する。
【0069】
さらに好ましくは、該人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、IL-2を分泌し、4-1BBL(配列番号11)及び膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)(配列番号10)を同時に発現する。
【0070】
さらに好ましくは、該人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、IL-2を分泌するか、又はIL-2を分泌し、かつmIL-15dを同時に発現する。
【0071】
本発明の方法の最も好ましい実施態様において、人工フィーダー細胞は、表面マーカーとしてのTAA「前立腺幹細胞抗原」(PSCA)(配列番号7)を安定に発現するように遺伝子改変され、かつ分泌型のIL-2と4-1BBLを同時に、又は分泌型のIL-2と4-1BBL及び膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)(配列番号10)を同時に発現するように遺伝子改変される。
【0072】
本発明の方法の別の最も好ましい実施態様において、そのような遺伝子改変された人工フィーダー細胞株は、ドナーNK細胞の拡大を誘導し、自己の正常細胞に対する拡大されたNK細胞の寛容性を維持する。該NK細胞は、KIR/KIR-リガンドが一致した標的細胞に対するADCCを誘発する能力がある。
【0073】
PSCAは、例えば、正常な前立腺特異的組織で検出され、高悪性度前立腺上皮内腫瘍とアンドロゲン依存性/非依存性腫瘍の両方を含む前立腺癌検体で過剰発現されているGPIアンカー型の細胞表面腫瘍抗原である。本発明の方法のさらなる態様において、表面マーカーPSCAは、拡大されたNK細胞におけるフィーダー細胞の混入を識別するために又は腫瘍抗原として使用することができる(下記参照)。
【0074】
4-1BBLは、TNFスーパーファミリーに属する2回膜貫通型糖タンパク質受容体である4-1BBに結合するリガンドであり、当初、活性化Tリンパ球で検出された。4-1BBは、誘導型の共刺激受容体であり、癌療法においてT細胞及びNK細胞の抗腫瘍活性及び持続性を高めるための有望な受容体である。IL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)は、ヒトIL-15とヒトDAP12の間のグリシン-セリンリンカー及び突然変異(不活化)したITAMを含む。最も好ましくは、該IL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)は、配列番号10の核酸によってコードされる。
【0075】
本発明のより好ましい実施態様において、該4-1BBLは、ヒト4-1BBLである。本発明の最も好ましい実施態様において、該4-1BBLは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。
【0076】
4-α-ヘリックスバンドルファミリーのサイトカインのメンバーであるインターロイキン-15(IL-15)は、癌の治療のための免疫調節因子の候補として浮上している。IL-15は、抗原を提示する樹状細胞、単球、及びマクロファージ上で発現されるその特異的受容体IL-15Rαを介して作用する。IL-15は、幅広い作用を示し、IL-2Rのβ鎖及びγ鎖を含有する低親和性のIL-2/IL15受容体との接触分泌型結合によって、T細胞、B細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞の分化及び増殖を誘導する。これはまた、CD8+ T細胞の細胞溶解活性を増強し、長時間持続する抗原経験CD8+CD44hiメモリーT細胞を誘導する。
【0077】
DAP12は、近年、ナチュラルキラー(NK)細胞における重要なシグナル伝達の受容体エレメントとして認識されている12kDaの膜貫通型タンパク質である。これは、NK細胞上に発現したいくつかの活性化受容体と非共有結合的に会合しているジスルフィド結合したホモ二量体である。DAP12を介して開始される活性化シグナルは、特定の腫瘍細胞及びウイルス感染細胞に対するNK細胞の細胞傷害応答を誘発する戦略的な役割を果たすと予測される。DAP12の細胞質ドメインは、免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)を含有する。ITAMのチロシンのリン酸化により、T細胞及びB細胞のRAG組換え免疫受容体並びにNK細胞受容体におけるこのモチーフを介したシグナル伝達の共鳴特徴であるタンパク質チロシンキナーゼとの会合が媒介される。さらに、樹状細胞及び単球を含む他の組織におけるその発現は、DAP12が、これらの細胞でも同様に、広範囲にわたる多くの受容体に対するITAM媒介性活性化シグナルを伝達することを示唆している。好ましい実施態様において、人工フィーダー細胞によって発現されるIL-15-DAP12mut-ITAMは、突然変異した(不活性化された)ITAM(mIL-15d)(配列番号10)を含有する。DAP12のT91S及びT102Sの部位指向性突然変異により、フィーダー細胞上での架橋後の半減期時間の増加及び内在化の減少を伴うシグナル伝達欠損mIL-15d二量体が得られ、それにより、NK細胞上で発現される同族の低親和性IL-2/IL-15受容体の接触分泌刺激が増強される。
【0078】
より好ましい実施態様において、本発明は、ナチュラル細胞傷害性受容体(NCR)、スモールテールKIR、又はNKG受容体から選択される活性化NK細胞受容体を発現するNK細胞サブセットの増殖及び拡大の特異的及び/又は選択的誘導を含む方法であって、対象となるNK亜集団を含有するNKバルク細胞集団を、遺伝子改変され、活性化NK細胞受容体の同族NK細胞リガンドを発現する発現ベクターを含む人工フィーダー細胞と接触させることを含む、方法を提供する。或いは、人工フィーダー細胞株は、対象となるNK亜集団の活性化NKG細胞受容体に、例えば、対象となるNK亜集団のCD94/NKG2ファミリーの活性化受容体に特異的なHLA-E分子上の活性化ペプチドがロードされるか;又は人工フィーダー細胞株は、改変され、対象となるNK亜集団の活性化NK細胞受容体に特異的な膜結合型抗体を発現する。この方法の利点は、NK細胞サブセットを、例えば、オーダーメイド医療における使用に好適である、標的及び目的特異的な様式で拡大することができることである。
【0079】
特に、活性化NKG2C+細胞受容体の発現を有するNK細胞サブセットは、分泌型のIL-2又は分泌型のIL-2+mIL-15dのいずれかを発現するように遺伝子改変され、さらに該活性化NK細胞受容体の人工リガンドで遺伝子修飾された又は該活性化NKG2C受容体のHLA-E上に活性化ペプチドがロードされた人工フィーダー細胞を用いて選択的に拡大することができる。それゆえ、該フィーダー細胞は、NK細胞には準最適な活性化しかもたらさないが、NKG2C受容体を含有するNK細胞サブセットを活性化及び拡大することができる。記載されている方法の例となるのは、同族NKG2C-受容体(NKG2C+ NK細胞)の発現を有するNK細胞の選択的活性化及び拡大のための、分泌型のIL-2もしくは分泌型のIL-2+mIL-15dのいずれかを発現するように遺伝子改変され、その後、HLA-EへのHCMV株BE/1/2010由来の活性化
【化13】
-HLA-Gリーダーペプチド/UL40シグナルペプチド及びHCMV由来の活性化
【化14】
HLAクラスIリーダーペプチド/UL40シグナルペプチドの外因性のロードによって修飾されているか、又はそれぞれ、
【化15】
に融合した人工β2-ミクログロブリン-HLA-E-タンパク質(HLA-E-UL40spと表記される)を発現するように遺伝子改変されているフィーダー細胞を用いたNKG2C+NK細胞サブセットの選択的拡大を示す実施例6である。
【0080】
NKG2C+ NK細胞は、腫瘍細胞及びHCMV感染などのウイルス感染に対して非常に強力であり、標的細胞に対する記憶力を高める能力があると考えられている。さらに、NKG2A NK細胞とは対照的に、NKG2C+ NK細胞は、ウイルスペプチドを認識することができる。それゆえ、NKG2C+ NK細胞は、特に、HCMV及び他のウイルス感染の場合、潜伏ウイルスが罹患対象に存在するので、癌療法及び抗ウイルス療法のための望ましいNK細胞集団である。しかしながら、NKG2C+ NK細胞がインビボの全NK細胞集団の中で過小評価されているのに対し、NKG2A NK細胞は過大評価されている。本発明の方法を用いて、NKG2A NK細胞が抑制され、所望のNKG2C+ NK細胞が濃縮される。このように、本発明の方法は、癌及びウイルス感染症の治療のためのNKG2C+ NK細胞を選択的に拡大及び提供するという、これまで満たされていなかったニーズを満たすものである。
【0081】
最も好ましい実施態様において、本発明は、人工キメラ抗原受容体(CAR)を提示する遺伝子改変NK細胞の増殖、すなわち、特異的拡大を特異的に誘導する方法であって、CAR-NK細胞を含有するNK細胞集団を、CARの同族表面抗原(すなわち、TAA)を内因的に発現するか、又は遺伝子改変され、CARの同族表面抗原を発現する発現ベクターを含むか、又は遺伝子改変され、組み入れられたエピトープタグに特異的な膜結合型抗体を発現する発現ベクターを含む人工フィーダー細胞と接触させることを含む、方法を提供する。CARの好適なエピトープタグとしては、ビオチン化したビオチンアクセプターペプチド(BAP)、FLAG-エピトープ、VSG-G-エピトープ、La-エピトープ、インフルエンザヘマグルチン(HA)-エピトープ、及び好ましくはc-myc-エピトープが挙げられる。該人工フィーダー細胞は、分泌型のIL-2又は分泌型のIL-2+mIL-15dのいずれかを発現するように遺伝子改変される。該フィーダー細胞は、NK細胞に準最適な活性化しかもたらさないが、それぞれ、CAR及びエピトープタグ化CARを含有するNK細胞サブセットを活性化し、その拡大をもたらす。記載されている方法の例となるのは、c-mycエピトープを含有するDAP12ベースのrevCARコンストラクトで遺伝子改変されたNK細胞の選択的拡大を示す実施例8である。本方法のための例示的な従来のCARとしては、その細胞外ドメインにc-myc-タグを含有する実施例9に記載されているCARが挙げられる。実施例9に記載されている本発明のさらなる実施態様において、CARのエピトープタグは、特異的モノクローナル抗体を使用し、その後、蛍光団コンジュゲート抗種二次抗体で染色することにより検出することができる。エピトープタグは、例えば、FACS支援細胞選別又は磁気活性化細胞選別のような方法を用いて、CAR-NK細胞を純化するためにさらに使用することができる。さらに、CARに提供されるエピトープタグは、治療用の二重特異性抗体に使用することができ、その場合、該二重特異性抗体は、腫瘍細胞又はウイルス感染細胞の表面上でCARと標的分子を架橋する。
【0082】
本発明はまた、改変NK細胞に関する。本発明の好ましい実施態様において、NK細胞は、改変され、CAR又はリバースCARをコードする核酸を含み、ここで、該核酸は、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DAP10、CD3ζ、CD3εRI、及びDAP12シグナル伝達アダプターの細胞質領域から、好ましくは、配列番号13のDAP12シグナル伝達アダプターから選択されるシグナル伝達ドメインを含む、NK細胞上の活性化トランスジェニック表面受容体のポリペプチドをコードする。
【0083】
本発明の好ましい実施態様において、本発明のNK細胞は、従来のキメラ抗原受容体(CAR)を含む。CARは、好適には、標的細胞上の表面構造に結合するためのリガンド又は抗体由来認識ドメインを含む。したがって、本発明の好ましい実施態様において、NK細胞は、該CARに組み入れられた単鎖可変断片(scFv)を含むCARをコードする核酸を含む。より好ましくは、該scFvは、EGFRvIIIを特異的に認識する配列番号14のscFv、及び/又はPSCAを特異的に認識する配列番号15のscFvである。さらに好ましい実施態様において、NK細胞は、CAR又はリバースCARなどの、NK細胞上の人工活性化トランスジェニック表面受容体をコードする核酸を含み、該人工活性化トランスジェニック表面受容体は、FLAG-エピトープ、VSG-エピトープ、La-エピトープ、インフルエンザヘマグルチン(HA)-エピトープ)、及び/又はc-myc-エピトープなどのエピトープタグ、最も好ましくは、配列番号18によるDAP12に融合した周知のc-mycエピトープである、ペプチド
【化16】
を含む。
【0084】
通常、CARに組み入れられた単鎖可変断片(scFv)を含む遺伝子改変NK細胞は、対象を抗原についてスクリーニングし、該抗原を単離し、該抗原に対するモノクローナル抗体を産生し、該モノクローナル抗体をシークエンシングし、該抗原に対するscFvを作製し、該scFvをコードする核酸配列を決定し、該scFvをコードする該核酸をクローニングして、NK細胞株に入れ、該scFvを発現させることにより産生することができる。
【0085】
本発明の方法において使用される人工フィーダー細胞は、好ましくは、真核細胞であり、より好ましくは、HLAクラスI分子及びHLA-Eを発現するヒト細胞株であり、最も好ましくは、前立腺癌細胞株PC3又はその派生物である。PC3は、HLAクラスI分子及びHLA-Eの強い発現を伴って、接着性単層として増殖するヒト前立腺癌細胞株である。PC3細胞株は、主要なKIR2DL1及びKIR2DL2/3のC1及びC2リガンド、並びにKIR3DL1の弱いBw4リガンドを含有する。養子NK細胞療法におけるPC3由来フィーダー細胞の望ましくない移入の場合、宿主対移植片の方向での既存のHLA不一致並びにフィーダー細胞の免疫刺激サイトカイン及び共刺激分子/リガンドの同時発現により、宿主の免疫系によるフィーダー細胞の拒絶反応が強まる。
【0086】
本発明はさらに、少なくとも1つのサイトカイン及び追加の共刺激リガンド又は活性化表面分子を発現する発現ベクターを含み、かつ本発明の方法において使用される人工フィーダー細胞に関する。本発明の方法に関して上に記載された利点及び有利な実施態様は、上記のものに対して言及されているように、本発明の人工フィーダー細胞にも同様に適用される。
【0087】
さらに好ましくは、NKG2C+ NKサブセットを活性化及び拡大するための人工フィーダー細胞株であって、それぞれ、HCMV株AD169のノナマーUL40リーダーペプチド配列(配列番号3)及びHCMV分離株BE/1/2010のノナマーUL40リーダーペプチド配列(配列番号2)に融合されている人工β2-ミクログロブリン-HLA-Eコンストラクト(HLA-E-UL40spと表記される;配列番号5及び配列番号6)を発現する発現ベクターを含むか、又は該人工フィーダー細胞株が、HCMV分離株BE/1/2010由来のHLA-G-リーダーペプチド/UL40シグナルペプチド(配列番号2)及びいくつかの他のHCMV株由来のUL40シグナルペプチド(配列番号1)に由来するノナマーペプチドをロードしており、ここで、該人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌するか、又は該人工フィーダー細胞株が遺伝子改変され、IL-2を分泌し、同時に、膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)を発現する、人工フィーダー細胞株が提供される。
【0088】
さらに好ましくは、人工フィーダー細胞株が提供され、ここで、該人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌するか、又は該人工フィーダー細胞株は、遺伝子改変され、IL-2を分泌し、同時に膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)を発現し、ここで、該フィーダー細胞株は、CARの同族表面抗原を発現する発現ベクターを含み、ここで、該同族抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)のEGFRvIII及びPSCAによって表される。
【0089】
さらに好ましくは、人工フィーダー細胞株が提供され、ここで、該人工フィーダー細胞は、遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌するか、又は該人工フィーダー細胞株は、遺伝子改変され、IL-2を分泌し、同時に膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)を発現し、ここで、該フィーダー細胞株は改変され、CARに組み入れられたエピトープ-タグに特異的なモノクローナル抗体、好ましくは、scFv、より好ましくは、膜結合型c-myc-単鎖抗体、最も好ましくは、配列番号12のscFv(9E10)-tmの少なくとも1つのVH及び/又はVLドメインを含むフィーダー細胞の表面上のエピトープ結合ドメインを発現する。フィーダー細胞における活性化NK細胞受容体のための適切な膜結合型抗体を含めることにより、本実施態様は、NK細胞サブセットを標的特異的に拡大することができるという利点も有する。
【0090】
好ましい実施態様において、人工フィーダー細胞株は、KIRの抑制性C1、C2、Bw4リガンドを発現し、表面マーカーとしての「前立腺幹細胞抗原」(PSCA)を安定的に発現し、4-1BBLと同時に分泌型のIL-2を発現するか、又は4-1BBL及び膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)と同時に分泌型のIL-2を発現するように遺伝子改変されている。人工フィーダー細胞株は、NK細胞の過剰活性化を回避し、NK細胞の自己性喪失の活性化を回避するが、機能的NK細胞の強力な拡大を誘導し、防御的HLA発現によって自己又は同種異系の標的細胞に対する寛容性を維持し、抗体でオプソニン化されたKIR/KIRリガンドが一致した標的細胞に対するADCCを誘発することができる。
【0091】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞サブセットの選択的拡大のために、人工フィーダー細胞を活性化NK細胞受容体のリガンドで修飾する。人工フィーダー細胞株のHLA-EへのHCMV UL40分離株BE/1/2010/HLA-G-リーダーペプチド
【化17】
HCMV UL40/HLA-C-リーダーペプチド
【化18】
のロード、又は
【化19】
をもたらすHCMV-リーダーペプチドVMAPRTLIL、もしくは
【化20】
をもたらすVMAPRTLFLに融合した人工β2-ミクログロブリン-HLA-E-タンパク質を有し、かつ分泌型のIL-2又は分泌型のIL-2+mIL-15dのいずれかを発現するように改変されたフィーダー細胞株の遺伝子改変は、驚くことに、CD56bright NK細胞サブセットからのNKG2C+-NK細胞の選択的増殖を誘導した。
【0092】
さらに好ましい実施態様において、CAR修飾NK細胞画分の選択的拡大だけでなく、NKサブセットの選択的拡大のために、対象となる活性化NK細胞受容体に又は形質導入されたCARの細胞外ドメインに組み入られた同族エピトープタグに結合する膜結合型抗体誘導体をフィーダー細胞に遺伝的に組み入れる。IL-2に関して遺伝子改変された、c-mycエピトープに対する膜結合型抗体を含有するフィーダー細胞は、NK細胞の拡大のための準最適な活性化シグナルしか提供しなかったが、驚くことに、c-mycタグ化DAP12ベースのCARを含有するNK細胞の選択的増殖を誘導した。
【0093】
さらに好ましい実施態様において、CAR-NK細胞の選択的拡大のために、CARの同族リガンド(すなわち、TAA)を内因的に発現しているか、又はそれを発現するように遺伝子修飾されているかのいずれかの人工フィーダー細胞が使用される。それぞれ、TAAの前立腺幹細胞抗原(PSCA)で遺伝子改変されたか、又は新抗原のEGFRvIII+トランスジェニックIL-2もしくはトランスジェニックmIL-15dとの組合せで遺伝子改変されたかのいずれかの人工フィーダー細胞は、非修飾NK細胞の拡大のための準最適な活性化シグナルしかもたらさなかったが、それぞれ、PSCA及びEGFRvIIIに特異的なDAP12ベースのCARで修飾されたNK細胞の選択的増殖を予想外に誘導した。
【0094】
最も好ましい実施態様において、本発明は、遺伝子改変され、4-1BBLと同時に分泌型のIL-2を発現するか、又は4-1BBL及びmIL-15dと同時に分泌型のIL-2を発現する発現ベクターを含む、人工PC3PSCA由来フィーダー細胞を提供する。抑制性NKG2Aリガンド及びKIRリガンドを含有するにもかかわらず、該フィーダー細胞は、PBMCからのNK細胞の増殖を予想外に誘導し、それぞれ、PBMC及び純化NK細胞調製物からNK細胞を強く拡大した。さらに、拡大されたNK細胞は、自己細胞に遭遇したときに寛容なままであったが、HLA欠損K562腫瘍細胞を死滅させる機能が依然としてあった。拡大されたフィーダー細胞は、活性化マーカーのTIM-3を強く上方調節し、高親和性IL-2受容体(すなわち、IL-2Rのα鎖、CD25によって示される)を予想外に強く上方調節したが、他方、免疫チェックポイント分子のPD1及びTIGITの上方調節はしなかった。
【0095】
さらに最も好ましい実施態様において、本発明は、遺伝子改変され、CARの同族表面抗原(ここで、該同族抗原は、腫瘍関連抗原PSCA及びEGFRvIIIによって表される)及び分泌型のIL-2又は4-BBLの発現を伴わずに膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)とともに同時発現される分泌型IL-2を発現する発現ベクターを含む、人工PC3PSCA由来フィーダー細胞を提供する。そのような人工フィーダー細胞株は、非修飾NK細胞の拡大のための準最適な活性化シグナルをもたらしたが、驚くことに、それぞれ、PSCA及びEGFRvIIIに特異的なDAP12ベースのCARで修飾されたNK細胞の選択的増殖を誘導した。
【0096】
該EGFRvIII及び該PSCAは、好ましくは、ヒト起源のものである。最も好ましくは、本発明の人工フィーダー細胞株によって発現される該EGFRvIII及び該PSCAは、それぞれ、配列番号8及び配列番号NO:7のアミノ酸配列を有する。
【0097】
さらなる態様において、本発明は、遺伝子改変され、人工膜貫通ドメインに融合した抗c-myc-タグ単鎖抗体断片(scFv(9E10)-tm)及び分泌型のIL-2又は4-BBLの発現を伴わずに膜固定型ヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)とともに同時発現される分泌型IL-2を発現する発現ベクターを含む、人工PC3PSCA由来フィーダー細胞を提供する。そのような人工フィーダー細胞株は、非修飾NK細胞の拡大のための準最適な活性化シグナルをもたらしたが、驚くことに、c-myc-タグ化CARを含有するNK細胞の選択的増殖を誘導した。
【0098】
さらなる実施態様において、本発明は、非修飾NK細胞の拡大のための準最適な活性化シグナルしかもたらさなかったが、該フィーダー細胞の内在性HLA-Eに様々なHCMV株由来のUL40に由来する活性化ペプチド
【化21】
をロードしたときにNKG2C+ NK細胞サブセットを予想外に活性化及び拡大する、IL-2及びIL-2/mIL-15dで修飾された人工PC3
PSCA由来フィーダー細胞を含む。配列番号1は、HLAクラスIアレルA
*01、A
*03、A
*11、A
*29、A
*30、A
*31、A
*32、A
*33、A
*36、A
*74由来のリーダーペプチド、並びにHLA CアレルCw
*02及びCw
*15のリーダーペプチドと同一である。配列番号2は、HLA-Gのシグナルペプチドに由来するノナマーペプチド(配列番号2))と同一である。該HLA-Eへのペプチドのロードにより、NK細胞のNKG2C-受容体の同族リガンドが提供される。同様に、本発明は、NKG2C+細胞サブセットの選択的活性化及び拡大のためのHCMV UL40-リーダーペプチド
【化22】
に融合した人工β2-ミクログロブリン-HLA-E-タンパク質を発現するように遺伝子改変されたフィーダー細胞を含む。
【0099】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法に従って拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞に関する。該NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、該拡大されたNK細胞が過剰活性化されておらず、防御的レベルの抑制性自己リガンドを発現する細胞に対して寛容であり、防御的抑制性自己リガンドを喪失した腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、活性化HLA-E-ペプチド複合体を提示する腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有することを特徴とする。該NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、特に、NK細胞の少なくとも30%におけるCD25の上方調節を特徴とする。さらに、該NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、疲弊しておらず、NK細胞の5%未満でTIGITの発現を示し、NK細胞の25%未満でPD-1の発現を示す。
【0100】
人工フィーダー細胞並びに本明細書に記載される方法で拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、NKG2C+-NK細胞はどちらも、商業的な関心が高いものである。人工フィーダー細胞は、個別の癌療法のためのNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞を提供するのに最も好適である。該NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、癌治療及びウイルス感染治療の方法において、特に、オーダーメイド医療として使用するのに最も好適である。
【0101】
本明細書に記載される方法に従って拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、当業者に公知の技法を用いて、対象への投与用に製剤化することができる。該NK細胞の集団を含む製剤は、医薬として許容し得る賦形剤を含むことができる。一般的に使用される賦形剤の例としては、限定されるものではないが:生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、感染水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組合せ、安定化剤、可溶化剤、及び界面活性剤、緩衝剤及び防腐剤、張度調整剤、充填剤、並びに潤滑剤が挙げられる。該NK細胞の集団を含む製剤は、典型的には、動物血清(例えば、ウシ血清アルブミン)などの任意の非ヒト成分の非存在下で調製及び培養されたものである。
【0102】
NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞を投与するための製剤、すなわち、医薬組成物の種類の選択は、種々の因子によって決まる。これらのうち最大のものは、対象の種、治療されている障害、機能障害、又は疾患の性質並びに対象におけるその状態及び分布、投与されている他の療法及び薬剤の性質、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の最適な投与経路、その経路を介したNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の生存性、投与レジメン、並びに当業者に明らかになるであろう他の因子である。特に、例えば、好適な担体及び他の添加剤の選択は、正確な投与経路及び特定の剤形、例えば、液体剤形の性質(例えば、組成物が、溶液、懸濁液、ゲル、又は持続放出形態もしくは液体充填形態などの別の液体形態に製剤化されることになるかどうか)によって決まるであろう。
【0103】
NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞を含む組成物の例としては、筋肉内又は静脈内投与(例えば、注射による投与)のための懸濁液及び調製物を含む液体調製物、例えば、滅菌懸濁液又はエマルジョンが挙げられる。そのような組成物は、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞と滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの好適な担体、希釈剤、又は賦形剤との混合物を含むことができる。組成物は、投与経路及び所望の調製物に応じて、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化又は粘性増強添加剤、防腐剤、着香剤、着色剤などの36種の補助物質を含有することができる。標準的なテキスト、例えば、引用により本明細書中に組み込まれる、「レミントンの医薬品化学(REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE)」、第17版、1985年を参考にして、過度の実験をせずに、好適な調製物を調製することができる。
【0104】
組成物の安定性、滅菌性、及び等張性を高めるために、とりわけ、抗菌性防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、緩衝剤などの、様々な添加剤が含まれることが多い。微生物の作用の防止は、当業者に知られている様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって確実に行うことができる。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい。注射用医薬形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0105】
しかしながら、本発明によれば、使用されるビヒクル、希釈剤、又は添加剤は、細胞に適合しなければならない。
【0106】
典型的には、組成物は等張性である、すなわち、組成物は、投与のために適切に調製された場合、血液及び涙液と同じ浸透圧を有する。
【0107】
本発明の組成物の望ましい等張性は、塩化ナトリウム、又はブドウ糖、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールなどの他の医薬として許容し得る薬剤、又は他の無機もしくは有機の溶質を用いて達成することができる。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含有する緩衝剤に特に好ましい。
【0108】
組成物の粘度は、必要に応じて、医薬として許容し得る増粘剤を用いて、選択されたレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易かつ経済的に入手可能であり、取り扱いが容易であるので好ましい。他の好適な増粘剤としては、例えば、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の好ましい濃度は、選択された薬剤によって決まる。重要な点は、選択された粘度を達成する量を使用することである。粘性のある組成物は、通常、そのような増粘剤の添加によって溶液から調製される。
【0109】
医薬として許容し得る防腐剤又は細胞安定化剤を利用して、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の組成物の寿命を延長することができる。そのような防腐剤が含まれる場合、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の生存率又は有効性に影響を及ぼさない組成物を選択することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0110】
当業者は、組成物の成分が化学的に不活性であるべきであることを認識しているであろう。このことは、化学及び製薬の原理に精通した人にとっては何の問題もないだろう。問題は、標準的なテキストの参照によるか、本開示、本明細書中で引用された文書、及び当技術分野で一般的に入手可能な情報を用いた単純な実験(過度な実験を伴わない)によって容易に回避することができる。
【0111】
本発明を実施する際に利用される細胞を、望ましい場合、様々な量の他の成分とともに、必要量の適切な溶媒に組み込むことにより、滅菌注射溶液を調製することができる。
【0112】
いくつかの実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、溶液、懸濁液、又はエマルジョンなどの単位投薬量の注射可能な形態で製剤化される。NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の注射に好適な医薬製剤は、典型的には、滅菌水溶液及び分散液である。注射用製剤の担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であることができる。
【0113】
当業者は、本発明の方法において投与される組成物中の細胞及び任意の添加物、ビヒクル、並びに/又は担体の量を容易に決定することができる。典型的には、(細胞の他に)任意の添加物は、リン酸緩衝生理食塩水などの溶液中に0.001~50wt%の量で存在する。活性成分は、マイクログラムからミリグラムのオーダーで存在し、例えば、約0.0001~約5wt%、好ましくは、約0.0001~約1wt%、最も好ましくは、約0.0001~約0.05wt%、又は約0.001~約20wt%、好ましくは、約0.01~約10wt%、最も好ましくは、約0.05~約5wt%である。
【0114】
NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、移植前に、膜及びカプセルによってカプセル化することができる。利用可能な多くの細胞カプセル化方法のいずれかを利用し得ることが企図される。いくつかの実施態様において、細胞は、個別にカプセル化される。いくつかの実施態様において、多くの細胞は、同じ膜内にカプセル化される。移植後に細胞を除去することになる実施態様において、単一の膜内などに多くの細胞をカプセル化する比較的大きなサイズの構造体が回収のための好都合な手段を提供することができる。多種多様な材料を、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞のマイクロカプセル化のための様々な実施態様において使用することができる。そのような材料としては、例えば、ポリマーカプセル、アルギン酸-ポリ-L-リジン-アルギン酸マイクロカプセル、ポリ-L-リジンアルギン酸バリウムカプセル、アルギン酸バリウムカプセル、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル(PAN/PVC)中空糸、及びポリエーテルスルホン(PES)中空糸が挙げられる。NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の投与に使用し得る細胞のマイクロカプセル化のための技法は、当業者に公知であり、Chang, P.らの文献、1999; Matthew, H.W.らの文献、1991; Yanagi, K.らの文献、1989; Cai Z.H.らの文献、1988; Chang, T.M.の文献、1992、及び米国特許第5,639,275号(これには、例えば、生体活性分子を安定的に発現する細胞の長期維持のための生体適合性カプセルが記載されている)に記載されている。さらなるカプセル化方法は、欧州特許公開第301,777号及び米国特許第4,353,888号;第 4,744,933;4,749,620号;第 4,814,274号;第 5,084,350号;第 5,089,272号;第 5,578,442号;第 5,639,275号;及び第5,676,943号に記載されている。前述のものは全て、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞のカプセル化に関連する部分に関して、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0115】
特定の実施態様は、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞をバイオポリマー又は合成ポリマーなどのポリマーに組み込む。バイオポリマーの例としては、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノゲン、トロンビン、コラーゲン、及びプロテオグリカンが挙げられるが、これらに限定されない。上で論じたサイトカインなどの他の因子もポリマーに組み込むことができる。本発明の他の実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、三次元ゲルの間隙に組み込むことができる。大きなポリマー又はゲルは、典型的には、外科的に移植される。十分に小さい粒子又は繊維に配合することができるポリマー又はゲルは、他の一般的な、より好都合な、非外科的な経路によって投与することができる。
【0116】
NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、他の医薬活性剤とともに投与することができる。いくつかの実施態様において、そのような薬剤の1つ又は複数は、投与のためにNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞とともに製剤化される。いくつかの実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞及び1以上の薬剤は、別々の製剤中にある。いくつかの実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞及び/又は1以上の薬剤を含む組成物は、互いに補助的な使用に関して製剤化される。
【0117】
NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、コルチコステロイド、シクロスポリンA、シクロスポリン様免疫抑制剤、シクロホスファミド、抗胸腺細胞グロブリン、アザチオプリン、ラパマイシン、FK-506、並びにFK-506及びラパマイシン以外のマクロライド様免疫抑制剤などの免疫抑制剤による前処理の後に投与することができる。ある実施態様において、そのような免疫抑制剤には、コルチコステロイド、シクロスポリンA、アザチオプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、及び/又はFK506が含まれる。前述のものによる免疫抑制剤は、唯一のそのような追加の薬剤であってもよいし、又は本明細書に記載される他の薬剤などの他の薬剤と組み合わせてもよい。他の免疫抑制剤には、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、及びシロリムスが含まれる。
【0118】
そのような他の薬剤には、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤なども含まれ、ほんのいくつか例を挙げると、本発明の実施態様に従って使用し得る他の薬理活性物質及び組成物がある。
【0119】
NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の投与順序、製剤、用量、投与頻度、投与経路は、特に、治療されている障害又は疾患、その重症度、対象、投与されている他の療法、障害又は疾患のステージ、及び予後判定因子によって通常異なる。他の治療について確立されている一般的なレジメンは、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞によって媒介される直接療法又は補助療法における適切な投与量を決定するための枠組みを提供する。これらは、本明細書で提供される追加情報とともに、当業者が、過度な実験をすることなく、本発明の実施態様による適切な投与手順を決定することを可能にする。
【0120】
治療的応用のために、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、細胞を対象に投与するために使用し得る当業者に公知の種々の経路のいずれかによって対象に投与することができる。本発明の実施態様において、これに関して使用し得る方法の中には、非経口経路によって、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞を投与する方法がある。本発明の様々な実施態様において有用な非経口投与経路としては、特に、静脈内、動脈内、心臓内、関節内(関節)、脊髄内、髄腔内(髄液)、骨内、関節内、滑液嚢内(関節液領域)、皮内、皮下(s.c.、s.q.、sub-Q、Hypo)、及び/又は筋肉内注射による投与が挙げられる。製剤の非経口注射又は注入に有用な任意の既知の装置を用いて、そのような投与を達成することができる。注射は、バルク注射又は連続フロー注射として行うことができる。いくつかの実施態様において、静脈内、動脈内、皮内(intracutaneous)、皮内(intradermal)、皮下、及び/又は筋肉内注射が使用される。いくつかの実施態様において、静脈内、動脈内、皮内(intracutaneous)、皮下、及び/又は筋肉内注射が使用される。本発明の様々な実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、全身注射によって投与される。静脈内注射などの全身注射は、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞を投与するための最も簡単でかつ侵襲性の低い経路の1つを提供する。種々の実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、NKG2C+-NK細胞は、標的部位での最適な効果を確保するために、標的化及び/又は局所的注射によって投与することができる。
【0121】
NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、本発明のいくつかの実施態様において、シリンジによって皮下注射針を通して、対象に投与することができる。様々な実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、カテーテルを通して、対象に投与される。種々の実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、外科移植によって投与される。さらにこれに関して、本発明の様々な実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、関節鏡下手術を用いる移植によって、対象に投与される。いくつかの実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、ポリマー又はゲルなどの固体支持体の中又は上で対象に投与される。様々な実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、カプセル化された形態で対象に投与される。
【0122】
本発明のさらなる実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、経口、直腸、経皮、眼内、鼻腔、及び/又は肺、最も好ましくは眼内、及び/又は肺への送達のために好適に製剤化され、それに応じて投与される。
【0123】
組成物は、特定の患者の年齢、性別、体重、及び状態、並びに投与される製剤(例えば、固体と液体)などの因子を考慮して、医療及び獣医学の専門家に周知の投薬量及び技法で投与することができる。ヒト又は他の哺乳動物への用量は、本開示、本明細書中で引用された文書、及び当技術分野における知識から、当業者が過度の実験を行うことなく決定することができる。いくつかの実施態様のためのNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞の最適な用量は、癌免疫療法に使用される用量の範囲内となる。NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞のかなり純粋な調製物について、様々な実施態様における最適用量は、投与当たり少なくとも104個のNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞/レシピエントのkg質量を含む。いくつかの実施態様において、投与当たりの最適用量は、105~107個のNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞/kgとなる。多くの実施態様において、投与当たりの最適用量は、5×105~5×106個のNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞/kgとなる。
【0124】
単一用量は、一度に全て、分割して、又は一定期間にわたって継続的に投与されてもよいことが理解されるべきである。また、全用量は、単一の場所に送達されてもよいし、又はいくつかの場所に分割して拡散されてもよい。様々な実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、初期用量で投与され、その後、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞のさらなる投与によって維持されてもよい。NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、最初に1つの方法で投与され、その後、同じ方法又は1以上の異なる方法によって投与されてもよい。対象のNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞のレベルは、該細胞の継続的な投与によって維持されてもよい。様々な実施態様は、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、最初にもしくは対象におけるそのレベルを維持するために投与されるか、又はその両方が静脈内注射によって投与される。種々の実施態様において、本明細書の別の場所で議論される患者の状態及び他の因子に応じて、他の投与形態が使用される。いくつかの実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、1回の用量で対象に投与される。他では、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、2回以上の一連の投与で、連続して対象に投与される。NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞が、1回の用量で、2回の用量で、及び/又は2回以上の用量で投与されるいくつかの他の実施態様において、用量は、同じあっても異なっていてもよく、その間を等間隔にして、又は不等間隔にして投与される。いくつかの実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、1日未満の期間にわたって投与される。他の実施態様において、該細胞は、2日、3日、4日、5日、又は6日にわたって投与される。いくつかの実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞は、週に1回以上、数週間の期間にわたって投与される。他の実施態様において、該細胞は、1週間の期間にわたって、1~数カ月間投与される。様々な実施態様において、該細胞は、数カ月の期間にわたって投与されてもよい。他では、該細胞は、1年以上の期間にわたって投与されてもよい。
【0125】
本発明によるNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞及び医薬組成物は、特定のタイプの癌又はウイルス感染の治療において特に有用である。したがって、本発明は、癌及びウイルス感染の免疫療法において使用するための本明細書に記載されるNK細胞、CAR-NK細胞、もしくはNKG2C+-NK細胞及び/又は医薬組成物を提供する。
【0126】
本発明によるNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞及び医薬組成物は、特定のタイプの癌又はウイルス感染の自己及び同種異系療法において使用することができる。好ましい実施態様において、本発明によるNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞、及び医薬組成物は、自己療法において使用される。さらに好ましい実施態様において、本発明によるNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞、及び医薬組成物は、同種異系療法に使用される。最も好ましいのは、自己療法における本発明によるNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞、及び医薬組成物の使用である。しかしながら、本発明によるNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞、及び医薬組成物は、同種異系療法においても大きな可能性を有する。
【0127】
さらなる実施態様において、本発明は、それを必要としている対象への本明細書に記載されるNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞及び/又は医薬組成物の治療有効用量の投与を含む、癌及び/又はウイルス感染の治療方法に関する。
【0128】
またさらなる実施態様において、本発明は、癌又はウイルス感染の治療のための医薬品の調製のためのNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+-NK細胞、及び/又は医薬組成物の使用に関する。
【0129】
該癌は、例えば、上皮細胞又は間葉系細胞の悪性(及び好ましくは、固形)腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、副腎癌、黒色腫、肺癌、結腸癌、白血病(液体又は非固形腫瘍)、軟部組織肉腫及び骨肉腫、膵島細胞癌又は甲状腺髄様癌などの神経内分泌腫瘍、扁平上皮癌(特に、頭頸部のもの)、腺癌、並びに多形性膠芽腫などの膠肉腫から選択される。
【0130】
より好ましい実施態様において、該癌は、小細胞肺癌、小細胞腎臓癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、及び悪性神経膠腫から選択される。
【0131】
ウイルス感染は、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)による感染、又は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)などのヘルペスウイルスによる感染である。
【0132】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、もしくはNKG2C+-NK細胞及び/又は医薬組成物は、他の抗腫瘍薬との組合せ療法において使用される。好ましい他の抗腫瘍薬は、細胞の成長を遅延又は停止させるチロシンキナーゼ阻害剤である。本発明による組合せ療法において使用するための好適なチロシンキナーゼ阻害剤は、例えば、肺癌の治療のためのゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びオシメルチニブから選択される。
【0133】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、もしくはNKG2C+-NK細胞、及び/又は医薬組成物は、リツキシマブ(B細胞特異的系統表面抗原CD20に対するmAb)、トラスツズマブ(ヒト上皮成長因子受容体2(EGFR2、ErbB2/HER2)に対するmAb)、又はセツキシマブ(EGFR(ErbB1/HER1)に対するmAb)などの腫瘍標的化モノクローナル抗体、及びADCCによって標的細胞に対する細胞傷害性を促進するIgGのFc部分に融合した標的化部分に相当する二重特異性又は三重特異性キラー細胞エンゲージャーとの組合せ療法において使用される。
【0134】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞、CAR-NK細胞、もしくはNKG2C+-NK細胞、及び/又は医薬組成物は、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブ、リツキシマブなどの免疫チェックポイント分子(PD-1、TIGIT、PD-1L、PD-2L)を標的とするモノクローナル抗体との組合せ療法において使用され、これにより、NK細胞の持続性及び抗腫瘍細胞傷害性を改善することができる。
【0135】
例えば、NK細胞の拡大は、例えば、実施例2に記載されている方法論に従って実施することができる。
【0136】
ヒトNK細胞などのNK細胞の一般的な拡大方法は、以下の工程:
i)健康なドナー又は患者の末梢血からのPBMCの単離;
ii)その後のNK細胞の細胞選別;
iii)HLA解析及びその後のKIR/KIR-リガンド状況の解析;
iv)純度検査;
v)IL-2などの少なくとも1つのサイトカイン及びさらなる共刺激リガンド又は活性化表面分子を発現するように異なる方法で改変された人工フィーダー細胞株の提供;
vi)単離されたNK細胞との共培養によるNK細胞増殖の刺激;
vii)CFSEでの染色によるNK細胞増殖の調査;並びに任意に
viii)拡大されたNK細胞の総細胞数のカウント;並びに任意に
ix)好適な抗体による細胞の染色
を含む。
【0137】
好ましい実施態様において、NK細胞拡大方法の工程i)は、Biocoll勾配遠心分離(Biochrom, Germany)などの勾配遠心によって行われる。
【0138】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞拡大方法の工程ii)は、例えば、陰性NK細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)を使用することにより行われる。
【0139】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞拡大方法の工程iv)は、例えば、抗CD3-FITC抗体及び抗CD56-APC抗体(Miltenyi Biotec, Germany)で染色して、CD56+ NK細胞の精製及びCD3+ Tリンパ球の枯渇を確認することにより行われる。
【0140】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞拡大方法の工程vi)による単離されたNK細胞との共培養によるNK細胞増殖の刺激は、
・例えば、フィーダー細胞を、24ウェルプレート中の好適な培養培地、例えば、完全RPMI-1640培地中で、5%CO2及び37℃の加湿インキュベーターで24時間培養すること;
・翌日、該培地を、好適なNK細胞培地、例えば、2%のNK MACSサプリメント及び5%のヒトAB血清が補充されたNK MACS培地に置き換えること;
・4~8時間後にNK細胞をフィーダー細胞に添加すること;
・3~4日毎に、該NK細胞を、新たに播種したフィーダー細胞上で、新しい馴化培地に再懸濁すること
により行われる。
【0141】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞拡大方法の工程vii)は、例えば、27日間毎日行われる(
図4C)。
【0142】
さらに好ましい実施態様において、NK細胞拡大方法の任意の工程ix)は、IgGアイソタイプ染色と所望のNKサブセット(すなわち、NKG2C+ NK細胞のための抗NKG2C(
図11、12)、抗c-mycの染色を含め;細胞を、例えば、抗CD56-APC(Miltenyi Biotec, Germany)で染色することによるか、又はCAR形質導入細胞のEGFPレポーター遺伝子発現の解析(
図14、17)、その後のMACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Germany)及びFlowJoバージョンX.0.7ソフトウェア(Tree Star, USA)を用いるフローサイトメトリーによって行われる。
【実施例】
【0143】
(本発明の実施例)
以下の実施例は、本発明の様々な実施態様を説明するという唯一の目的のために提供されており、いかなる方法においても、本発明を限定することを意図するものではない。
【0144】
(実施例1: NK-フィーダー細胞株の作製)
前立腺幹細胞抗原(PSCA)を発現するように遺伝子改変されたヒト前立腺癌細胞株PC3
PSCAは、以前に記載されている[65]。PC3
PSCA細胞は、
図1bに示されたHLA-ABCアレル及びHLA-E並びに配列番号7によるトランスジェニックヒトPSCAを内在的に発現する。所望のフィーダー細胞の作製のために、ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)を欠失し、かつ内部脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)U3プロモーターと、それに続く、多重クローニング部位、ピューロマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、又はハイグロマイシンB耐性遺伝子にインフレームで融合したT2Aトセア・アシグナ(Thosea assigna)ウイルスエレメントを含有する、自己不活性化レンチウイルスpHATtrickベクター骨格[65、66]を使用した。付加された5'-Kozak配列及び制限部位とともにPBMCから逆転写されたcDNAから増幅されたIL-2をpHATtrick-T2A-zeoRのT2A-部位にインフレームで連結して、pHATtrick-IL-2-T2A-ZeoRを得た。5'-Kozak配列を含有し、VSV-Gエピトープタグと融合した膜結合型4-1BBLの全長cDNAを化学合成し、pHATtrick-hygroRのT2A-部位にインフレームで連結して、pHATtrick-4-1BBL-HygroRを得た。ヒトIL-15の全長cDNAを、Kozak配列、短いC-末端リンカー(Gly2Ser1)を含めて化学合成し、MR1.1-DAP12mut-PuroR[3]にMR1.1断片を置き換えて連結して、膜結合型IL-15-DAP12mut融合タンパク質(mIL-15d)をコードするレンチウイルスベクターpHATtrick-m-IL15-DAP12mut-T2A-puroRを作製した。全てのコンストラクトの模式図が
図1aに示されている。PC3
PSCA細胞の形質導入のためのレンチウイルス粒子は、以前に記載されている一過性の3ベクターパッケージングプロトコルによって産生した[65]。IL-2、mIL-15d、及び4-1BBLをそれぞれのレンチウイルスベクターで連続的に形質導入し、
図1Cに示される細胞株を得た。形質導入は、24-ウェル中の5×10
4個のPC3
PSCA細胞を2mlのレンチウイルス上清とともにインキュベートして行い、その後2日間繰り返した。全てのPC3
PSCAフィーダー細胞をそれぞれの抗生物質で選択した。分泌されたIL-2及び膜に固定されたmIL-15d並びに4-1BBLの発現は、
図2に示されるように、IL-2 ELISAには上清、4-1BBLにはウェスタンブロット解析、及びmIL-15dには蛍光フローサイトメトリー解析を用いて評価した。
【0145】
(実施例2: PC3
PSCA由来フィーダー細胞株を用いるNK細胞の拡大)
ヒトNK細胞は、Biocoll勾配遠心分離(Biochrom, Germany)及びその後の陰性NK細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)を用いる磁気活性化細胞選別によって、5人の健康なドナーの新鮮な血液から分離した。HLAジェノタイピング及びその後のEMBL/EBI KIR Ligand Calculatorを用いるKIR/KIRリガンド状況の解析により、PC3
PSCA由来フィーダー細胞と全てのドナーNK細胞とのKIR-リガンド一致が確認された(
図3)。抗CD3-FITC抗体及び抗CD56-APC抗体(Miltenyi Biotec, Germany)による染色により、CD56+の>90%の純度及びCD3+細胞の枯渇が定期的に確認された。IL-2、mIL-15-d、4-1BB-L、IL-2-mIL-15d、IL-2-4-1BBL、4-1BBL-mIL-15d、及びIL-2-4-1BBL-mIL-15dを発現するように異なる方法で改変されたPC3
PSCAフィーダー細胞株のNK細胞増殖を刺激する能力を、単離されたNK細胞との共培養によって試験した。このために、1mlの完全RPMI-1640培地中の2.5×10
4個のフィーダー細胞を5%CO
2及び37℃の加湿インキュベーター中の24ウェルプレートで24時間培養した。翌日、この培地を、2%のNK MACSサプリメント(Miltenyi Biotec, Germany)及び5%のヒトAB血清(c.c. pro, Germany)が補充された1~2mlのNK MACS培地(Miltenyi Biotec, Germany)で置き換えた。4~8時間後、5×10
5個のNK細胞をNKフィーダー細胞に添加した。3~4日毎に、NK細胞を、新たに播種したフィーダー細胞上で、新しい馴化培地に再懸濁することにより、プレートを交換した。NK細胞の拡大にフィーダー細胞の代わりに活性化ビーズを使用する場合、さらに1000U/mlのプロロイキンS(Novartis, Germany)及び20ng/mlのIL-21(Miltenyi Biotec, Germany)を培地に添加した。NK細胞の増殖を調べるために、1×10
7個の単離された新鮮なNK細胞を製造元のプロトコールに従ってCFSE(BioLegend, USA)で染色した。1×10
5個のNK細胞のCFSE強度をフローサイトメトリーにより6日間毎日測定した(
図4A)。拡大されたNK細胞の総細胞数は、抗CD56-APC(Miltenyi Biotec, Germany)で細胞を染色することによりカウントした。IgGアイソタイプ対照を全ての測定に含めた。染色された細胞をMACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Germany)によって測定し、FlowJoバージョンX.0.7ソフトウェア(Tree Star, USA)により解析した。
図4A及びBに示されているように、予想外にも、IL-2を分泌するように遺伝子改変されたフィーダー細胞株だけがNK細胞を拡大することができた。特に、このことは、フィーダー細胞におけるmIL-15dの発現だけでは拡大を誘導することができないが、その代わりに、生存シグナルを提供し得ることを示している。活性化ビーズ及び同時の外因性サイトカイン処理で活性化されたNK細胞の拡大率よりも有意に大きいNK細胞の強い拡大率は、IL-2-4-1BBL修飾フィーダー細胞を使用したときに観察され、これは、IL-2-4-1BBL-mIL-15d修飾フィーダー細胞を使用したときにより一層増加した(
図4B、C)。注目すべきは、PSCAによるIL-2-4-1BBL修飾フィーダー細胞及びIL-2-4-1BBL-mIL-15d修飾フィーダー細胞の染色、並びにCD56による共培養されたNK細胞の染色により、
図9に示されているような、NK拡大から3日後のフィーダー細胞の完全な根絶が示された。PSCAの染色は、ビオチン化抗PSCA scFv(scFv(AM1)-P-BAP、[67])及び二次抗ビオチン-VioBlueを用いて達成した。NK細胞上のCD56は、モノクローナル抗CD56-APCを用いて検出した。
【0146】
(実施例3:拡大されたNK細胞の表面マーカー)
表現型解析のために、2×10
5個の単離された新鮮なNK細胞、並びにIL-2-4-1BBL修飾フィーダー細胞及びIL-2-4-1BBL-mIL-15d修飾フィーダー細胞を用いて10日間拡大したNK細胞を、抗CD56-APC(Miltenyi Biotec, Germany)及び抗CD16-PE(eBioscience, Germany)で染色し、フローサイトメトリーにより解析した。
図5に示されているように、IL-2-4-1BBL修飾フィーダー細胞及びIL-2-4-1BBL-mIL-15d修飾フィーダー細胞を用いた5人の異なるドナー由来のNK細胞の拡大は、予想外にも、3つの主要なNK亜集団、すなわち、CD56bright/CD16high、CD56dim/CD16high、及びCD56bright/CD16-細胞の増殖をもたらし、これらは、どちらの状況においても、NK細胞の約97%を含む。CD56dim/CD16high NK細胞が高い細胞傷害能を有するのに対し、CD56bright/CD16-NK細胞は免疫調節性NK細胞と言われている[35]。対照的に、抗CD2/NKp46標識活性化ビーズを用いたNK細胞の拡大は、CD56bright/CD16high NK細胞及びCD56bright/CD16-細胞のみの拡大をもたらすのに対し、CD56dim/CD16high NK細胞画分は、ほとんど見られなかった(
図5A、B)。
【0147】
それぞれ、拡大されたNK細胞及び末梢血由来の新たに単離されたNK細胞のさらなる染色には、IL-2Rα/β/γの高親和性α鎖に対する抗CD337(NKp30)-PE、抗CD336(NKp44)-PE、抗NKp46-PE、抗NKp80-PE、抗CD226(DNAM-1)-PE(Miltenyi Biotec, Germany)、抗CD314(NKG2D)、抗CD158a-PE(BD Pharmingen, USA)、抗CD158b(KIR2DL2/DL3)-PE、抗CD158e(KIR3DL1)-PE、抗CD159a(NKG2A)-APC、抗CD85j(ILT2)-APC (Miltenyi Biotec, Germany)、抗TIM-3-PE、抗CD279(PD1)-PE、抗TIGIT-ビオチン+抗ビオチン-PE(Miltenyi Biotec, Germany)、及び抗CD25-APC(Miltenyi Biotec, Germany)が含まれた。染色手順は全て、提供者の指示に従って実施した。アイソタイプ対照を全ての測定に含めた。染色された細胞は、MACSQuant 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Germany)により調べ、FlowJoソフトウェアバージョンX.0.7(Tree Star, USA)により解析した。拡大方法にかかわらず、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、NKG2C、及びDNAM-1を含む活性化及び共活性化受容体は、拡大されたNK細胞で上方調節された(
図7A)。しかしながら、活性化ビーズによる拡大後にわずかにより広く発現されたNKp44を除いて、異なる方法で拡大されたNK細胞間の相違点は検出されなかった。全ての拡大群由来のNK細胞は、>90%のNKG2D NK細胞の割合を含有しており、これは、単離された新鮮なNK細胞で観察されるものと有意に異なるものではなかった(
図7A)。KIR2DL2/L3/S2を発現しているNK細胞の割合は、全ての拡大群で減少した(
図7B)。KIRジェノタイピングによれば、KIR3DL1のシグナルは、ドナー4由来のNK細胞について観察されなかった。他の全てのドナー由来のKIR3DL1陽性NK細胞の頻度は、全ての拡大群でわずかに低下した。異なる方法で拡大されたNK細胞の全ての群におけるKIR2DL1/S1/S4陽性NK細胞の頻度は、平均で25%未満にとどまった。しかし、フィーダー細胞を用いる拡大によって、ドナー依存的KIR2DL1/S1/S4陽性NK細胞の相対量のわずかな増加が明らかになり、これは、KIR2DL1/S1/S4アレルの組成の違いに関連する可能性があった。特に、抑制性KIR2DL1アレルを欠き、その代わりにKIR2DS1を含有するドナー1由来のKIR2DL1/S1/S4陽性NK細胞のパーセンテージは、フィーダー細胞を用いる拡大の間に緩やかに増加した。しかし、CD94/NKG2A陽性細胞及び共抑制性ILT2受容体を発現しているNK細胞の割合は、対応する新たに単離されたNK細胞と比較したとき、拡大されたNK細胞の全ての群で強く増加した(
図7B)。活性化ビーズによって拡大されたNK細胞は、フィーダー細胞によって拡大されたNK細胞と比較したとき、CD94/NKG2A陽性細胞及び一部のILT2陽性細胞の頻度が有意に高かった(
図7B)。リンパ球の消耗と関連するTIGIT及びPD-1を発現している細胞の割合のさらなる解析により、拡大されたNK細胞の全ての群でPD-1陽性細胞及びTIGIT陽性細胞の頻度が予想外に低いことが明らかになった(
図7C)。対照的に、サイトカイン誘導性のNK細胞の活性化及び成熟と関連するTIM-3陽性細胞の相対的な数は、フィーダー細胞又は活性化ビーズを用いるNK細胞の拡大後に強く増幅された。驚くべきことに、異なるドナー由来のフィーダー細胞によって拡大されたNK細胞では、35%~64%のNK細胞が高親和性IL-2受容体(CD25)のα鎖(CD25)を発現していることが分かった。注目すべきことに、活性化ビーズの使用によって拡大されたNK細胞では、CD25陽性細胞のそのような強い増加は観察されなかった(
図7C)。
【0148】
まとめると、PC3PSCA-IL2-4-1BBL及びPC3PSCA-IL2-4-1BBL-mIL15で拡大されたNK細胞は、CD25の有望な上方調節を示し、高親和性IL-2受容体への転換、並びに免疫チェックポイント分子PD1及びTIGITのレベルが影響を受けないことを示した。
【0149】
(実施例4: IL-2を分泌するフィーダー細胞株を用いる末梢血単核細胞(PBMC)からのNK細胞の選択的拡大)
ヒトPBMCを、Biocoll勾配遠心分離(Biochrom, Germany)により、5人の健康なドナーの新鮮な血液から分離した。PBMCからのNK細胞の選択的拡大を調べるために、PBMCをPC
PSCA由来人工NKフィーダー細胞株と共培養した。このために、1mlの完全RPMI-1640培地中の2.5×10
4個のフィーダー細胞を5%CO
2及び37℃の加湿インキュベーター中の24ウェルプレートで24時間培養した。翌日、この培地を、2%のNK MACSサプリメント(Miltenyi Biotec, Germany)及び5%のヒトAB血清(c.c. pro, Germany)が補充された1~2mlのNK MACS培地(Miltenyi Biotec, Germany)と置き換えた。4~8時間後、5×10
6個のPBMCをNKフィーダー細胞に添加した。3~4日毎に、PBMCを、新たに播種したフィーダー細胞上で、新しい馴化培地に再懸濁することにより、プレートを交換した。NK細胞の拡大にフィーダー細胞の代わりに活性化ビーズを使用する場合、さらに1000U/mlのプロロイキンS(Novartis, Germany)及び20ng/mlのIL-21(Miltenyi Biotec, Germany)を培地に添加した。PBMC拡大時のNK細胞、T細胞、及びNKT細胞画分の細胞数及びパーセンテージを、抗CD56-APC及び抗CD3-PE(Miltenyi Biotec, Germany)による2×10
5個のPBMCの染色、並びにMACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター及びFlowJoバージョンX.0.7ソフトウェアを用いるその後の解析により解析した。
図6Aに示されているように、選択的NK細胞拡大は、PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL及びPC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15d細胞を使用したときに達成された。NK細胞の最大拡大率は、PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15dフィーダー細胞を使用したときに見られた(
図6B)。
図6Cに示されているように、全てのフィーダー細胞株がT細胞の拡大を促進するわけではなかった。
【0150】
(実施例5:拡大されたNK細胞の自己に対する細胞傷害性及び寛容性)
K562細胞(防御的HLA-ABC及びHLA-E発現を欠く)に対する4人の異なるドナー由来のそれぞれ3週間及び4週間拡大された細胞傷害性NK細胞をクロム放出アッセイにより試験した。簡潔に述べると、2×10
6個の標的細胞を1.5MBqの
51クロム酸ナトリウム(HARTMANN ANALYTIC, Germany)で標識し、37℃及び5%CO2でインキュベートした。1時間後、細胞をPBSで洗浄し、丸底96-ウェルプレート中に3連のものとして播種した(ウェル当たり2×10
3細胞)。拡大されたNK細胞を標識された標的細胞に7.5:1及び15:1のエフェクター対標的比で添加した。4時間の共培養の後、25μlの細胞上清を室温で3×5分間振盪させることにより、96ウェルプレート中で150μlのシンチレーション溶液Ultima Gold(PerkinElmer, USA)と混合した。クロム放出を、Wallace 1450 Microbeta Trilux液体シンチレーション及び発光カウンター(PerkinElmer, USA)を用いて測定した。最大放出は、標的細胞を5%Triton X-100(Serva, Germany)で処理することにより測定し、最小放出は、標的細胞を培地のみとともに培養することにより測定した。比溶解のパーセンテージは、標準的な式: 100×(cpm放出標的細胞-cpm最小放出)/(cpm最大放出-cpm最小放出)を用いて計算した。
図8Aに示されているように、フィーダー細胞によって拡大されたNK細胞又は活性化ビーズ及び外因性IL-2/IL-21によって拡大されたNK細胞はいずれも、K562標的細胞を死滅させることができた。
【0151】
それぞれ、PC3
PSCA-IL2-4-1BBL-mIL15フィーダー細胞及び活性化ビーズ+外因性IL-2/IL-21を用いて24日間拡大された5人の健康なドナー由来のNK細胞の自己寛容性をCD107a脱顆粒アッセイにより解析した。それゆえ、NK細胞を、新たに単離された自己B細胞と、V底96-ウェルプレート中の200μlの完全NK MACS培地中で、1:1及び1:5のエフェクター対標的比で共培養した。培地のみのNK細胞は、陰性対照としての役割を果たした。NK感受性のK562細胞を陽性対照として使用した。1時間の共培養の後、2mMモネンシン(希釈1:40、Sigma-Aldrich, Germany)及び抗CD107a(LAMP-1)-VioBlue(Miltenyi Biotec, Germany)をウェルに添加し、さらに3時間インキュベートした。その後、細胞表面染色を、前節で言及されている抗体を用いて、CD56に対して行った。IgGアイソタイプ対照も含めた。
図8Bに示されているように、PC3
PSCA-IL2-4-1BBL-mIL15フィーダー細胞によって拡大されたCD56陽性NK細胞は、自己B細胞に対して無応答のままであったが、K562赤白血病細胞に直面したとき、強い脱顆粒(CD107a染色)を示した。
【0152】
フィーダー細胞によって拡大されたNK細胞の同種異系HT18223及びHT18199初代膠芽腫細胞に対する細胞傷害性を、クロム放出アッセイを用いて評価した(
図8C)。HLA/KIRジェノタイピングされたNK細胞とHLAジェノタイピングされたHT18223及びHT18199 GBM細胞との計算上のKIR:KIRリガンド不一致並びにライセンシング状況が
図8Cにインレットとして示されている。標的細胞は全て、全てのドナーによって発現されるKIR2DL2/3のC1リガンドを発現していた。HLAアレルの解析に基づくKIR:KIRリガンド一致を有し、さらに、標的細胞上のBw4を欠いているライセンスされていないNK細胞を有する4人のドナー由来の拡大されたNK細胞をHT18223 GBM細胞に直面させたとき、実質的な細胞傷害応答は観察されなかった。対照的に、活性化ビーズによって拡大され、さらに、フィーダー細胞によって拡大されたNK細胞と同様の活性化及び抑制性NK細胞受容体の発現を示すNK細胞(
図7参照)は、HT18233細胞を強力に死滅させ、過剰活性化状態を示した。同様の結果は、HT18199標的細胞を使用した場合にも得られた(
図8C)。この実験において、標的細胞上の同族リガンドを欠くライセンスされていないKIR3DL1を有する、フィーダー細胞によって拡大されたドナー1由来のNK細胞は無応答のままであった。どちらも標的細胞上のその同族リガンドを欠いているライセンスされていないKIR3DL1を含有し、かつライセンスされていないKIR2DL1を含有するドナー3由来のNK細胞も無応答のままであった。予想外に、どちらも標的細胞でその同族リガンドを欠いているライセンスされていないBw4を含有し、さらに、標的細胞の方向にC2-不一致を示す、フィーダー細胞によって拡大されたドナー2及び4由来のNK細胞も、HT18199 GBM細胞に対して非応答性のままであった。抑制性受容体NKG2A及びILT2は、それぞれ、ポリクローナルフィーダー細胞によって拡大されたNK細胞の82.5%(77.8~86.2%)及び61.2%(55.4~66.6%)で発現されていたので(
図7参照)、ドナー2及び4由来の拡大されたNK細胞産物が潜在的にアロ反応性のCD94/NKG2A陰性及びILT2陰性の単一KIR2DL1陽性NK細胞を欠いていると予想することができる。驚くべきことに、HT18223及びHT18199 GBM細胞に対する細胞傷害性は、50IU/mlのrhIL-2によるフィーダー細胞によって拡大されたNK細胞の前処理によって引き起こされた(
図8D)。
【0153】
ドナー1及び3由来の拡大されたNK細胞の抗体依存性細胞傷害性を、HLA-ABC陽性の初代膠芽腫細胞株HT16360-1、HT18199、及びHT18223を用いて試験した。これらの細胞のHLA-ジェノタイピングにより、GvH方向のライセンスされていないBw4を除いて、KIR-リガンド/KIR一致が明らかになった。上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的である治療抗体セツキシマブ及び二次抗ヒトIgG-APCによるこれらの癌細胞の染色により、EGFRの異なる発現レベルが示された(高発現、低発現、及び検出不可能)(
図8E)。異なる方法で拡大されたNK細胞をセツキシマブ(75μg/ml)とともに又はそれなしで共培養し、20時間の標準的なクロム放出アッセイを用いてADCCの誘導を調べた。
図8Fに示されているように、IL-2-4-1BBL-及びIL-2-4-1BBL-mIL-15dを発現するフィーダー細胞によって拡大されたNK細胞は、標的細胞に結合したセツキシマブのレベルの違いに直接相関して応答した。
【0154】
まとめると、これらの例は、このように養子細胞移入用に作製された教育されたNK細胞の可能性を示している。該NK細胞は、ストレスを受けた正常組織の損傷を誘導する危険性が少ないはずであり、適切に活性化されたとき、自己又は同種異系の状況の両方で有効であることが証明され得る。
【0155】
(実施例6:ペプチドロード又はHLA-E-UL40sp修飾PC3PSCA-IL-2及びPC3PSCA-IL-2-4-mIL-15dフィーダー細胞を用いるNKG2C+ NK亜集団の選択的拡大)
概念上、臨床的に意義のある数のNKG2C+ NK細胞の産生のために、末梢血NK細胞の5~10%に相当し、かつNKG2A+ NK細胞サブセット及びNKG2C+ NK細胞サブセットに成長する能力を有し得る、増殖能を有する細胞サブセット、すなわち、CD56bright NK細胞を使用することが不可欠である。本発明者らは、少量のIL-2を分泌し、任意に膜結合型IL-15を発現するように遺伝子改変されたEBV陰性PC3由来フィーダー細胞を使用したとき、準最適でしかないNK細胞の増殖を示した。これらのフィーダー細胞を用いて、本発明者らは、KIR及びNKG2Aに対する複合的な阻害シグナルにより、KIR+及びNKG2A+状態の表面マーカーを特徴とするNK細胞の増殖が選択的に制限されるはずであるという仮説を立てた。逆もまた同じであり、未分化のCD56bright/NKG2A-/NKG2C-サブセットから発生するNK細胞の分化の間に確率的に発現されるNKG2Cを関与させると、複合的な抑制シグナルの優位性を克服する活性化シグナルが生じるはずであり、かつ低用量のIL-2と一緒に、NKG2C+ NK細胞サブセットの選択的増殖が生じるはずである。NK細胞サブセット上で発現される活性化KIRの場合、本発明者らは、CD25発現の欠如が、同族HLA-リガンドに対する活性化KIRの結合親和性の低さ及び同時に発現される抑制性KIRの同時発現とともに、そのようなNKサブセット細胞を静止状態に保持するという仮説を立てた。
【0156】
NKG2C+ NK細胞サブセットの活性化と選択的拡大のために、PC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞のHLA-E分子に、化学合成された活性化ペプチド(50μM、JPT Peptide Technologies GmbH, Berlin, Germany)のVMAPRTLLL及びVMAPRTLFLを外因的に4時間ロードした。対照として、未処理のフィーダー細胞を含めた。新たに単離された手付かずのNK細胞をペプチドがロードされたフィーダー細胞とともに直ちに共培養した。3~4日毎に、NK細胞を、新たにペプチドがロードされたフィーダー細胞を用いて継代し、細胞試料をCD56、NKG2C、及びNKG2A(全て、Miltenyi Biotec, Germany製の抗体)について染色し、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Germany)を用いて解析した。生存しているCD56+細胞にゲートをかけた後、染色されたNKG2C NK細胞及びNKG2A NK細胞の相対的な比率を、FlowJoバージョンX.0.7ソフトウェアを用いて決定した。予想外にも、ペプチドがロードされたPC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞は、5~12%のNKG2C+ NK細胞頻度を有する異なるHCMV血清反応陽性ドナー由来のバルクNK細胞調製物からのNKG2C+ NK細胞の増殖を段階的に誘導した。驚くべきことに、NKG2C細胞は、二重陽性NGK2A+/NKG2C+細胞から発生した。拡大から14日後、NKG2A+/NKG2C-及びNKG2A+/NKG2C+のNK細胞サブセットは、NKG2A及びNKG2Cの特異的抗体を用いて、まだ検出された(
図11A)。VMAPRTLFL又はVMAPRTLLLのいずれかがロードされたPC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞は全て、NKG2Cを発現するNK細胞の増殖に有利に働き、平均拡大係数は、0日目の相対的なNKG2C+細胞数と比較したとき、130倍~190倍であった(
図11B)。ペプチドがロードされていないPC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞は、NKG2C+ NK細胞の選択的増殖を促進しなかった(
図11B)。この結果は、PC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞が腫瘍及び病原体などの様々な源に由来するHLA-E関連活性化ペプチドを同定するための有用なツールとなり得ることをさらに示している。
【0157】
さらなるアプローチにおいて、PC3
PSCA-IL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞を、NKG2Cの人工リガンドとしての役割を果たすVMAPRTLFL及びVMAPRTLILをそれぞれ含有する人工HLA-E-UL40spコンストラクトをコードするレンチウイルスベクターを用いて遺伝子修飾することに成功した(
図12A、B)。人工HLA-E融合タンパク質コンストラクトを化学合成し、pHATtrick-HygroRレンチウイルスベクターのT2A-HygroRカセットにインフレームで連結した。PC3
PSCA-IL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞の形質導入のためのレンチウイルス粒子は、以前に記載されている一過性の3ベクターパッケージングプロトコルによって産生した[65]。形質導入された細胞をハイグロマイシン処理で4週間選択し、実施例2に記載されているように3~4日毎に継代することにより、NKG2C+ NK細胞の選択的拡大に使用した。驚くべきことに、全てのフィーダー細胞株は、14日間のフィーダー細胞株との共培養において、NKG2C+/NKG2A- NK細胞の選択的増殖を促進した(
図12C)。予想外にも、PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLFL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLFLのフィーダー細胞は、90%よりも高い純度でNKG2C+/NKG2A-NK細胞を産生した(
図12Cを参照)。HLA-E-UL40-VMPARTLILを発現するフィーダー細胞もNKG2C+/NKG2A-NK細胞の増殖を促進したが、驚くべきことに、かなりの割合の望まないNKG2C-/NKG2A+及び二重陽性NKG2A+/NKG2C+ NK細胞を含有しており、この場合も、NKG2C+/NKG2A- NK細胞がNKG2C-/NKG2A+及び二重陽性NKG2C+/NKG2C+の中間状態から発生することを示している(
図12Cを参照)。PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMAPRTLFL及びPC3
PSCA-IL-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMAPRTLFLフィーダー細胞は、それぞれ、47倍及び37倍の拡大率をもたらす(
図12D)、PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMAPRTLIL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMAPRTLILフィーダー細胞と比較したとき、100倍~115倍の拡大率のNKG2C+/NKG2A- NK細胞の優れた産生を可能にした(
図12E)。さらなるFACS解析により、拡大されたNKG2C+細胞がほとんどCD56brightであり、それゆえ、末梢血のCD56bright集団から育ったことが明らかになった(
図12F)。NKG2C+/A- NK細胞がNKG2A+/NKG2C-及び二重陽性NKG2A+/NKG2C+の中間段階から時間依存的に発達することは、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Germany)によって支援される特異的な抗NKG2A-FITC抗体及び抗NKG2C-APC抗体(どちらもMiltenyi Biotec製, Germany)で染色されたCD56陽性NK細胞の解析を用いて確認された(
図12G)。PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLFL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLFLフィーダー細胞が14日間の拡大期間中にほぼ純粋なNKG2C+/NKG2A- NK細胞の産生を可能にすることは、4人のドナーのバフィーコート由来の純化されたNK細胞を用いて確認された(
図12I、K)。この場合も、PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLIL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLILフィーダー細胞は、純粋なNKG2C+/NKG2A- NK細胞産物の産生にあまり好適でなかった(
図12H、J)。
【0158】
(実施例7:拡大されたNKG2C+ NK細胞の表現型及び細胞傷害性)
拡大されたNKG2C+/NKG2A- NK細胞の純度及び機能状態及び分化並びに細胞傷害性を、FACSによって支援される表面マーカーの解析及びクロム放出アッセイにより評価した。表現型解析のために、2×10
5個の拡大されたNK細胞を、CD56、NKG2C、CD3、CD16、NKG2D、PD-1、TIGIT、KIR、CD57、及びCD25(全てMiltenyi Biotec, Germanyにより提供される)に対する蛍光団結合抗体で染色し、解析した。IgGアイソタイプ対照を全ての測定に含めた。染色された細胞は、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Germany)により測定し、FlowJoバージョンX.0.7ソフトウェア(Tree Star, USA)により解析した。拡大された細胞産物のNK細胞の純度は、CD56/CD3解析によって決定したとき、通常、>95%であった(データは示さない)。
図12Lに示されているように、NK細胞(生細胞及びCD56に対するゲート)をNKG2C及びマーカーで同時に染色した。抗CD3による染色により、T細胞及びNKT細胞の混入がないことが示された。NKG2D及びCD16の染色により、自己認識能力及びADCCの誘導と関連するNK表現型が明らかになった。驚くべきことに、拡大されたNK細胞の大部分は、疲弊の兆候(TIGIT、PD-1)を欠いている。(
図12M)は、KIR及びCD57を発現する最終分化したNKG2C+ NK細胞の出現を示す同じ拡大されたNK細胞のFACSデータを示しており、予想外にも、拡大されたNK細胞のかなりの部分が高親和性IL-2受容体(CD25)を強く発現することを示している。PC3
PSCA-IL-2-HLA-E-UL40-VMPARTLFL及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-HLA-E-UL40-VMPARTLFLフィーダー細胞が、高頻度の親和性IL-2受容体(CD25+ NK細胞)を特徴とし、かつ免疫チェックポイントマーカーPD-1及びTIGITの誘導を伴わないNK細胞の拡大をもたらすことは、5つのバフィーコートからの純化されたNK細胞を用いて確認された(
図12N)。膠芽腫患者から調製された拡大されたNKG2C+ NK細胞の細胞傷害性を、脳腫瘍解離キットにより調製され、DMEM培地中で培養された自己及び同種異系GBM標的細胞の初代細胞培養物を用いて調べた。拡大されたNKG2C細胞の純度は約90%であり、CD25の頻度は80%であることが分かり、PD-1の頻度は20%未満であった。同種異系GBM標的細胞がHLA-E及びHLA-Gを内因的に発現していたのに対し、自己GBM細胞はHLA-E及びHLA-Gを欠いていた(
図12Oを参照)。患者由来のNKG2C+ NK細胞は、予想外にも、KIR:KIRリガンド状況にかかわらず、同種異系HLA-E+/HLA-G+膠芽腫細胞を溶解させた。より具体的には、NKG2C+ NK細胞は、KIRの防御的C1及びC2リガンドを発現している同種異系GBM細胞を溶解させた。他方、NKG2C+ NK細胞は、HLA-E及びHLA-Gの発現を欠く自己腫瘍細胞を死滅させることができなかった。この予想外の結果は、NKG2C+ NK細胞の細胞傷害性が、おそらくは、腫瘍細胞関連HLA-Gに由来する活性化ペプチド又は腫瘍細胞に由来する他の活性化ペプチドがロードされた、その同族リガンドHLA-Eの表面発現によって誘導され得ることを示している。
【0159】
(実施例8: scFv(9E10)-tm修飾フィーダー細胞を用いるCAR細胞外ドメインにmyc-タグを含有するCAR-NK細胞の選択的拡大)
DAP12-la-タグ-myc-タグのコード配列を化学合成し,pHATtrick-T2A-EGFPレンチウイルスベクターのT2A-EGFPカセットにインフレームで連結した[65]。膜結合型の抗c-myc scFv(scFv(9E10)-tm)を化学合成し、pHATtrick-HygroRのT2A-HygroRカセットにインフレームで連結した。新しいベクター挿入物は全て、DNAシークエンシングによって検証した。それぞれ、NK細胞及びNKフィーダー細胞の形質導入のためのレンチウイルス粒子を、以前に記載されている一過性の3ベクターパッケージングプロトコルによって産生した[65]。形質導入されたフィーダー細胞をハイグロマイシン処理で4週間選択し、形質導入されたNK細胞の選択的拡大に使用した。3~4日毎に、PBMCを、新たに播種したscFv(9E10)-tm修飾フィーダー細胞上で、新しい馴化培地に再懸濁することにより、プレートを交換した。レポーター遺伝子EGFPを発現するc-mycタグ化NK細胞を、抗c-myc-APC(Miltenyi Biotec, Germany)で染色し、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec, Germany)及びFlowJoバージョンX.0.7ソフトウェア(Tree Star, USA)を使用することにより、表示された時点で解析した。トランスジェニックscFv(9E10)-tmの発現をウェスタンブロット解析(
図14B)で検証した。
図14C及び
図14Dに示されているように、PC3
PSCA-IL-2-scFv(9E10)-tmフィーダー細胞は、抑制性HLAクラスI分子を提示することが知られているが、驚くべきことに、EGFP陽性DAP12-la-タグ-myc-タグ形質導入NK細胞の選択的な増殖及び拡大を促進した。
【0160】
(実施例9:同族TAAを発現するように遺伝子修飾されたPC3
PSCA-IL-2 及び PC3
PSCA-IL-2-4-mIL-15d フィーダー細胞を用いるCAR-NK細胞の選択的拡大)
PC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞を、抗PSCA-CARが形質導入されたNK細胞の拡大に直接使用した。それゆえ、2.5×10
4個のフィーダー細胞をNK細胞との共培養の24時間前にプレーティングした。3日後に、NK細胞を新しいフィーダー細胞に連続して移した。DAP12ベースの抗PSCA-CAR用のレンチウイルスコンストラクトが
図16Aに示されている。予想外にも、抗PSCA-CARが形質導入されたNK細胞とPC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞との共培養は、フローサイトメトリーにより解析したとき、CAR陽性NK細胞でのCD25の発現の増加をもたらし(
図16B)、高親和性IL-2受容体への転換を示した。さらに、活性化ビーズ+外因性IL-2/IL-21によって拡大されたか又はIL-2-4-1BBL及びIL-2-4-1BBL-mIL-15dを発現するPC3
PSCAフィーダー細胞によって拡大された抗PSCA-CAR形質導入NK細胞と比較したとき、CAR-NK細胞だけが選択的に拡大した(
図16C)。驚くべきことに、CAR陽性NK細胞の相対的な量及び数は、活性化ビーズ拡大法を用いても、PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL及びPC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15dフィーダー細胞株を用いても、改善されず、減少すらした。
図16Dに示されているように、PC3
PSCA-IL-2-4-1BBL及びPC3
PSCA-IL-2-4-1BBL-mIL-15dフィーダー細胞は、14日間の共培養において、抗PSCA-CAR NK細胞の最大23~35倍の拡大率を促進した。
【0161】
さらなるアプローチにおいて、PC3
PSCAIL-2及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15dフィーダー細胞を、EGFRのEGFRvIII突然変異体形態をコードするレンチウイルスベクターを用いて遺伝子修飾することに成功した[66]。フィーダー細胞におけるEGFRvIIIの発現及びc-mycタグ化抗EGFRvIII-CARの発現のためのレンチウイルスコンストラクトは、
図17Aに示されている。フィーダー細胞上のEGFRvIII発現レベルを、ビオチン化scFv(MR1.1)-BAP及び二次及びビオチン-APC染色を用いるフローサイトメトリーにより解析した。二次抗体のみでの染色を対照として含めた(
図17B)。上述の結果と同様に、PC3
PSCAIL-2-EGFRvIII及びPC3
PSCA-IL-2-mIL-15d-EGFRvIIIフィーダー細胞は、CD56+/EGFP+細胞のFACS支援解析によって決定したとき、同族CARを発現するNK細胞の増殖を選択的に促進した(
図17C、D、E)。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
外因的に投与されるサイトカインを必要とすることなく、人工フィーダー細胞を用いて、自己に寛容である非過剰活性化ヒトNK細胞の増殖及び拡大を特異的に誘導する方法であって、
(a)該NK細胞を人工フィーダー細胞と接触させること(ここで、該人工フィーダー細胞は、
・NK細胞の抑制性NKG2A受容体のHLA-Eリガンドを発現し、NK細胞のC1又はC2リガンドから選択されるキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の少なくとも1つの抑制性リガンド及びBw4又はBw6から選択される少なくとも1つのリガンドを同時に発現して、拡大用に選択される個々のドナーNK細胞とのKIR-リガンド:KIR一致をもたらし;
・少なくとも1つのサイトカイン、例えば、インターロイキン-2を発現及び分泌し;かつ
・任意に、IL-15、IL-18、IL-21などのサイトカインから選択される少なくとも1つの共刺激分子;並びに/又は4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質(すなわち、LLT1、AICL、及びKACL);シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、例えば、CD150、CD244、及びCD48)、並びにウイルスヘマグルチニンなどのウイルス由来分子から選択される少なくとも1つの活性化表面分子をさらに発現するか、又はこれらをさらに発現するように遺伝子改変されている);
(b)該NK細胞及び人工フィーダー細胞を該NK細胞の拡大を可能にする条件下で培養すること
を含む、前記方法。
(態様2)
対象となるNK亜集団を含有するNKバルク細胞集団を人工フィーダー細胞と接触させることを含む、ナチュラル細胞傷害性受容体(NCR)、スモールテールKIR、又はNKG-受容体から選択される活性化NK細胞受容体を発現するNK細胞サブセットの増殖及び拡大の特異的誘導を含み、ここで、該人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、かつ該活性化NK細胞受容体の同族NK細胞リガンドを発現する発現ベクターを含むか;
又は
該人工フィーダー細胞が改変され、該対象となるNK亜集団の該活性化NK細胞受容体に特異的な膜結合型抗体を発現するか
又は
該人工フィーダー細胞が、該対象となるNK亜集団のCD94/NKG2ファミリーの活性化受容体に特異的なHLA-E分子上に活性化ペプチドをロードしている、
態様1記載の方法。
(態様3)
CAR-NK細胞を、CARの同族表面抗原を内在的に発現するか、又は遺伝子改変され、該CARの同族表面リガンドを発現する発現ベクターを含む、人工フィーダー細胞と接触させることを含む、人工キメラ抗原受容体(CAR)を提示する遺伝子改変NK細胞の増殖及び拡大の特異的誘導を含み、ここで、該同族リガンドがウイルス及び腫瘍関連抗原(TAA)によって表されるか、
又は
該人工フィーダー細胞が改変され、該CARに組み入れられたエピトープ-タグに特異的な膜結合型抗体を発現する、
態様1記載の方法。
(態様4)
前記人工フィーダー細胞が真核細胞、好ましくは、前立腺癌細胞株PC3又はその派生物である、態様1~3のいずれか一項記載の方法。
(態様5)
前記該人工フィーダー細胞が、NK細胞のHLA-E、Bw4-、C1-、及びC2-KIRリガンドと非KIR結合性Bw6リガンドとを同時に発現し、それゆえ、様々なドナー由来の任意のNK細胞と一致する、態様1~4のいずれか一項記載の方法。
(態様6)
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌し、かつ4-1BBLとヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)の少なくとも1つ又は両方を同時に発現する、態様1~5のいずれか一項記載の方法。
(態様7)
NK細胞のCARをコードする核酸を含むNK細胞を含み、ここで、該核酸が、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DAP10、CD3ζ、CD3εRI、及びDAP12シグナル伝達アダプターの細胞質領域から選択されるシグナル伝達ドメインを含む、NK細胞上の活性化トランスジェニック表面受容体ポリペプチドをコードするか;
又は
該核酸が、EGFRvIIIもしくはPSCAを特異的に認識するscFvなどの、該CARに組み入れられた少なくとも1つの単鎖可変断片(scFv)を含むCARをコードするか;
又は
該核酸が、FLAG-エピトープ、VSG-G-エピトープ、La-エピトープ、インフルエンザヘマグルチン(HA)-エピトープ)、及び/もしくはc-myc-エピトープなどのエピトープ-タグを含む、CARなどの、NK細胞上の人工活性化トランスジェニック表面受容体をコードする、
態様1~6のいずれか一項記載の方法。
(態様8)
前記人工フィーダー細胞が、配列番号3のHCMV株AD169のUL40リーダー配列に融合した人工β2-ミクログロブリン-HLA-Eを発現する発現ベクターを含むか、又は該人工フィーダー細胞が、HCMV株BE/1/2010由来のHLA-Gリーダー配列及びUL40リーダー配列に由来する配列番号2のノナマーペプチドをロードしており、ここで、該人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、少なくともヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌する、態様1~7のいずれか一項記載の方法。
(態様9)
前記人工フィーダー細胞が前記CARの同族表面抗原を発現する発現ベクターを含み、ここで、該同族抗原が少なくとも1つの腫瘍関連抗原によって表されるか;又は該人工フィーダー細胞が改変され、該CARに組み入れられたエピトープ-タグに特異的な膜結合型c-myc-単鎖抗体を発現する、態様1~7のいずれか一項記載の方法。
(態様10)
発現ベクターを含む人工フィーダー細胞であって、該人工フィーダー細胞が、
・NK細胞の抑制性NKG2A受容体のHLA-Eリガンドを発現し、NK細胞のC1又はC2リガンドから選択されるキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の少なくとも1つの抑制性リガンド及びBw4又はBw6から選択される少なくとも1つのリガンドを同時に発現して、拡大用に選択される個々のドナーNK細胞とのKIR-リガンド:KIR一致をもたらし;かつ
・少なくとも1つのサイトカイン、例えば、インターロイキン-2を発現及び分泌し;かつ
・任意に、IL-15、IL-18、IL-21などのサイトカインから選択される少なくとも1つの共刺激分子;並びに/又は4-1BBL、OX40L、B7-H6、CD58、CD112/ネクチン-1、CD155/Necl-5、MIC-A/B、ULBP1-6、CLEC2サブファミリーに属するC-タイプレクチン様糖タンパク質(すなわち、LLT1、AICL、及びKACL);シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、例えば、CD150、CD244、及びCD48)、並びにウイルスヘマグルチニンなどのウイルス由来分子から選択される少なくとも1つの活性化表面分子をさらに発現するか、又はこれらをさらに発現するように遺伝子改変されている、前記人工フィーダー細胞。
(態様11)
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、ヒトインターロイキン2(IL-2)を分泌し、4-1BBLとヒトIL-15-DAP12mut-ITAM(mIL-15d)の少なくとも1つ又は両方を同時に発現する、態様10記載の人工フィーダー細胞。
(態様12)
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、配列番号5又は配列番号6のHLA-E-UL40sp人工リガンドを細胞表面に発現し、ここで、該HLA-E-UL40spが活性化NKG2C NK細胞受容体に特異的に結合して、NKG2C+サブセットの拡大の誘導をもたらす、態様1~11のいずれか一項記載の方法又は人工フィーダー細胞。
(態様13)
前記人工フィーダー細胞が遺伝子改変され、細胞表面上の膜結合型抗体誘導体又はCARもしくは活性化NK細胞受容体の同族リガンドを発現し、ここで、該膜結合型抗体誘導体又は同族リガンドが活性化NK細胞受容体又はCARに特異的に結合して、対象となるNKサブセット及びCAR-NK細胞の拡大の誘導をもたらす、態様1~12のいずれか一項記載の方法又は人工フィーダー細胞。
(態様14)
NK細胞、NKG2C+ NKサブセット、及びCAR-NK細胞を活性化及び拡大するための、態様10~13のいずれか一項記載の人工フィーダー細胞の使用。
(態様15)
少なくとも1つの医薬として許容し得る担体又は希釈剤と一緒に、かつ任意に、
・抗腫瘍薬(ここで、該抗腫瘍薬は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びオシメルチニブ、並びにADCCによって標的細胞に対する細胞傷害性を促進するIgGのFc部分に融合した標的化部分に相当する、腫瘍標的化モノクローナル抗体、例えば、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、及び二重特異性又は三重特異性キラー細胞エンゲージャーからなる群から選択される);並びに
・免疫チェックポイント分子を標的とするモノクローナル抗体、例えば、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブ、リツキシマブ
から選択される少なくとも1つの薬剤と組み合わせて、態様1~9、12、及び13のいずれか一項記載の方法に従って拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、又はNKG2C+ NK細胞を含む医薬組成物であって;
前記拡大されたNK細胞が過剰活性化されておらず、防御レベルの抑制性自己リガンドを発現する細胞に寛容であり、防御的な抑制性自己リガンドを喪失した腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、活性化HLA-E-ペプチド複合体を提示する腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、ここで、
該拡大されたNK細胞がNK細胞の少なくとも30%でCD25の上方調節を示し;かつ
該拡大されたNK細胞が消耗されておらず、かつNK細胞の5%未満でTIGITの発現を示し、かつ25%未満でPD-1の発現を示すことを特徴とする、前記医薬組成物。
(態様16)
前記拡大されたNK細胞が過剰活性化されておらず、防御レベルの抑制性自己リガンドを発現する細胞に寛容であり、防御的な抑制性自己リガンドを喪失した腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、活性化HLA-E-ペプチド複合体を提示する腫瘍細胞又は病原体感染細胞に対する増大した細胞傷害性を有し、ここで、
該拡大されたNK細胞がNK細胞の少なくとも30%でCD25の上方調節を示し;かつ
該拡大されたNK細胞が消耗されておらず、かつNK細胞の5%未満でTIGITの発現を示し、かつ25%未満でPD-1の発現を示すことを特徴とする;
癌療法及び/又はウイルス感染の治療において使用するための、態様1~9、12、及び13のいずれか一項記載の方法で拡大されたNK細胞、CAR-NK細胞、もしくはNKG2C+-NK細胞、又は態様15記載の医薬組成物。
【0162】
【配列表】