(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】足首補助外骨格装置
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61H3/00 B
(21)【出願番号】P 2021576291
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 CN2020123356
(87)【国際公開番号】W WO2021088664
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】201911085735.8
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521556370
【氏名又は名称】ワイロボット
【氏名又は名称原語表記】YROBOT
(73)【特許権者】
【識別番号】521556392
【氏名又は名称】ワイロボット、(スーチョウ)、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YROBOT (SUZHOU) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】ティン、イェー
(72)【発明者】
【氏名】リー、シンホイ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン、プロテウス
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0282424(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0125738(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109730904(CN,A)
【文献】特開2015-066215(JP,A)
【文献】特開2007-089633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の腰部の後方に着用するように配置されたアクチュエータ(100)と、
下肢ブラケット(200)と、
アクチュエータ(100)の駆動で下肢ブラケット(200)に引張力を制御可能に付与するように配置された引っ張りワイヤー(300)と、を含み、
前記下肢ブラケット(200)は、
使用者の下脚を取り囲むように配置された下脚リング(210)と、
下脚リング(210)に取り付けられ下へ延びるリンクアセンブリ(220)と、
リンクアセンブリ(220)の下端にヒンジ接続され、引っ張りワイヤー(300)に接続された足部ブラケット(230)と、を含み、
足部ブラケット(230)は、使用者の足裏に付与された上向きの引張力によって、使用者の足部に足首関節を中心に回動させるように配置されており、
前記リンクアセンブリ(220)は、足部ブラケット(230)の左右両側に設けられた一対のリンク(221,222)と、前記一対のリンク(221,222)に接続されて独立して設けられた支持ブロック(223)と、を含み、前記支持ブロック(223)の高さ位置は可変であり、前記一対のリンク(221,222)は前記支持ブロック(223)に向かって曲げ
て前記支持ブロックに連結されるように、後方かつ互いに接近する方向に曲げる一対の弓形構造に形成されている
ことを特徴とする足首補助外骨格装置。
【請求項2】
前記足部ブラケット(230)の前方端部(232)は、鉛直方向に使用者の足部を挟持するように配置されており、足部ブラケット(230)の後方端部(231)は、使用者の踵の後にあると共に、引っ張りワイヤー(300)に接続されるように配置されており、
前記下肢ブラケット(200)は、
足部ブラケット(230)にその前方端部(232)を上へ持ち上げるトルクを付与するように配置され、リンクアセンブリ(220)の下端と足部ブラケット(230)の間に設けられたねじりばね(260)と、
使用者の足裏を引っ張るように配置され、
リンクアセンブリ(220)と足部ブラケット(230)とのヒンジ部よりも後方に足部ブラケット(230)にヒンジ接続された足裏引っ張りリング(250)と、をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項3】
足部ブラケット(230)は、後方端部(231)と前方端部(232)とを左右両側で接続する一対のブラケットアーム(233,234)を含み、前記一対のブラケットアーム(233,234)のそれぞれは、複数組のヒンジ孔を含み、前記足裏引っ張りリング(250)は前記複数組のヒンジ孔のうちの1組のヒンジ孔で一対のブラケットアーム(233,234)にヒンジ接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項4】
足部ブラケット(230)は、後方端部(231)と前方端部(232)とを左右両側で接続する一対のブラケットアーム(233,234)を含み、前方端部(232)は、前記一対のブラケットアーム(233,234)のブラケットアーム前方端部(2331,2341)と、それに取り付けられた足の甲テープ(235)とで構成されており、足の甲テープ(235)は、使用者の足の甲を部分的に覆うように配置されており、前記ブラケットアームの前方端部(2331,2341)の底部には、互いに向かって延びる突出部(2332,2342)が形成されており、前記突出部(2332,2342)及び前記足裏引っ張りリング(250)を除いて、使用者の足裏は地面に接触することができる
ことを特徴とする請求項
2に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項5】
前記一対のリンク(221,222)の各々の上端は、それぞれ、下脚リング(210)の左右両側に取り付けられ、前記一対のリンク(221,222)の各々の下端は、それぞれ、足部ブラケット(230)にヒンジ接続されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項6】
引っ張りワイヤー(300)の外部を囲んで設けるスリーブ(400)をさらに含み、引っ張りワイヤー(300)はスリーブ(400)中で摺動可能であり、スリーブ(400)の上端はアクチュエータ(100)に固定され、スリーブ(400)の下端は下肢ブラケット(200)に接続されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項7】
下肢ブラケット(200)は、支持ブロック(223)にヒンジ接続されたスリーブホルダ(270)をさらに含み、ここで、スリーブ(400)の下端がスリーブホルダ(270)に固定されている
ことを特徴とする請求項
6に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項8】
使用者の生体信号及び引っ張りワイヤー(300)により足部ブラケット(200)に付与する引張力をリアルタイムに検出するように配置された複数のセンサをさらに含み、
前記複数のセンサからの検出データを利用して引っ張りワイヤー(300)により足部ブラケット(200)に付与する引張力をリアルタイムに制御するように配置されたコントローラをさらに含み、
前記複数のセンサは、
使用者の下脚の生体信号を測定するためのものであって、下脚リング(210)の后部に設けられたEMGセンサ(610)と、
使用者の下脚の慣性信号を測定するためのものであって、支持ブロック(223)に設けられたIMUセンサ(620)と、
引っ張りワイヤー(300)の引張力を測定するためのものであり、スリーブホルダ(270)に設けられた力センサ(640)と、
使用者の足部の慣性信号を測定するためのものであって、足部ブラケット(230)に設けられたIMUセンサ(650)と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項9】
アクチュエータ(100)には、引っ張りワイヤー(300)が巻回されるローラと、ローラの回転を駆動するためのモータと、モータとローラとの間で動力を伝達する変速機とが設けられており、
使用者の腰部の前方に着用された電源をさらに含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の足首補助外骨格装置。
【請求項10】
1つのアクチュエータ(100)と、使用者の左右脚にそれぞれ着用されるように配置された、互いに個別な2つの下肢ブラケット(200)と、前記2つの下肢ブラケット(200)のそれぞれに対応する2本の引っ張りワイヤー(300)と、を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の足首補助外骨格装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用可能な装置の技術分野に関し、具体的に、使用者の足首に補助力を提供して日常的に使用される足首補助外骨格装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、異なる目的で下肢用の着用可能な装置を設計し、その中、人体の力を増強させる着用可能な装置、リハビリ用の着用可能な装置、移動効率を向上させ、人体のエネルギー消耗を減少させる着用可能な装置が含まれている。人体の力の向上およびリハビリテーションの目的で、着用可能な下肢装置または外骨格は、通常、全脚剛性金属構造に依存して外部身体支持を提供する。これらの下肢外骨格システムは、健康な人や体が不自由な人に自分の力ではできない任務を遂行させることを可能にする。しかし、従来の剛性着用可能な装置は、人体行動の合わせや、移動効率の向上において、(1)装置関節と人体関節とが動く間に位置ずれることにより、装置と生体関節との間の干渉が発生する、(2)装置の自由度が人体の下肢関節の自由度よりも低いため、生体関節の運動自由度が制限される、(3)装置自体によって完全に制御・補償されていない大きな重量及び慣性により、使用者が装置を着用する際に余分なエネルギーを消耗して、装置の一部を動かせる必要がある、というような欠陥がある。また、重くて大きな装置構造により、このような全脚剛性の外骨格装置が日常生活で使用しにくくなる。
【0003】
現在、いくつかの可撓性外骨格装置は、生体関節への制約を低減し、関節アシストを提供するように、軽量な可撓性材料を利用して製造される。このような装置は、関節をアシストする、より軽量化されたソリューションを提供する。しかし、これらの可撓性外骨格装置は、使用者の皮膚表面に依存して、関節を補助する反力として接線力を提供する。つまり、これらの装置は、一方側で使用者の体肢関節に補助力を提供し、他方側で使用者の皮膚表面に、皮膚表面に接する接線力を付与し、これらの接線力により、使用者の皮膚表面が揉まれ、圧迫されることで、使用者に不快感を与えてしまう。さらに、使用者の皮膚のたるみや筋肉の剛性が不十分で、補助力の反力として十分に大きな接線力を提供することが困難である場合、これらの装置は十分な補助力を提供することができなくなる。
【0004】
そこで、使用者の日常的な行動能力および行動効率を向上させるために、容易に着用でき、使用者の関節に制約を与えず、下肢の補助を提供するとともに使用者の皮膚表面による接線力に依存しない着用可能な補助装置が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
上述した従来技術に存在する欠点の少なくとも1つを解決するために、本発明は、
使用者の体の重心付近の部位(例えば、腰部の後方)に着用するように配置されたアクチュエータと、
下肢ブラケットと、
アクチュエータの駆動で下肢ブラケットに引張力を制御可能に付与するように配置された引っ張りワイヤーと、を含み、ここで、
前記下肢ブラケットは、
使用者の下脚を取り囲むように配置された下脚リングと、
下脚リングに取り付けられ下へ延びるリンクアセンブリと、
リンクアセンブリの下端にヒンジ接続され、前記引っ張りワイヤーの足部ブラケットに接続された足部ブラケットと、含み、足部ブラケットは、使用者の足裏に付与された上向きの引張力によって、使用者の足部に足首関節を中心に回動させるように配置されている足首補助外骨格装置を提出する。
【0006】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記足部ブラケットの前方端部は、鉛直方向に使用者の足部を挟持するように配置されており、足部ブラケットの後方端部は、使用者の踵の後にあり、引っ張りワイヤーに接続されるように配置されており、前記下肢ブラケットは、足部ブラケットにその前方端部を上へ持ち上げるトルクを付与するように配置された、リンクアセンブリの下端と足部ブラケットの間に設けられたねじりばねと、使用者の足裏を引っ張るように配置され、足部ブラケットの前方端部と後方端部の間に足部ブラケットにヒンジ接続された足裏引っ張りリングと、をさらに含む。
【0007】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、足部ブラケットは、後方端部と前方端部とを左右両側で接続する一対のブラケットアームを含み、前方端部は、前記一対のブラケットアームのブラケットアーム前方端部と、それに取り付けられた足の甲テープとで構成されており、足の甲テープは、使用者の足の甲を部分的に覆うように配置されている。
【0008】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、リンクアセンブリは、足部ブラケットの左右両側に設けられた一対のリンクを含み、前記一対のリンクの各々の上端は、それぞれ、下脚リングの左右両側に取り付けられ、前記一対のリンクの各々の下端は、それぞれ、足部ブラケットにヒンジ接続されている。
【0009】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、リンクアセンブリは、リンクアセンブリの一部の高さで前記一対のリンクを接続する支持ブロックを含む。
【0010】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記足首補助外骨格装置は、引っ張りワイヤーの外部を囲んで設けるスリーブをさらに含み、ここで、引っ張りワイヤーはスリーブ中で摺動可能であり、スリーブの上端はアクチュエータに固定され、スリーブの下端は下肢ブラケットに接続されている。
【0011】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、リンクアセンブリは、リンクアセンブリの一部の高さで前記一対のリンクを接続する支持ブロックを含み、下肢ブラケットは、支持ブロックにヒンジ接続されたスリーブホルダをさらに含み、ここで、スリーブの下端がスリーブホルダに固定されている。
【0012】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記足首補助外骨格装置は、使用者の生体信号、及び引っ張りワイヤーにより足部ブラケットに付与する引張力をリアルタイムに検出するように配置された1つ又は複数のセンサをさらに含み、前記足首補助外骨格装置は、センサからの検出データを利用して引っ張りワイヤーにより足部ブラケットに付与する引張力をリアルタイムに制御するように配置されたコントローラをさらに含む。
【0013】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、アクチュエータには、引っ張りワイヤーが巻回されるローラと、ローラの回転を駆動するためのモータと、モータとローラとの間で動力を伝達する変速機とが設けられているとともに、前記足首補助外骨格装置は、使用者の腰部の前方に着用されて各電力消耗デバイスへ給電するように配置された電源をさらに含む。
【0014】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記足首補助外骨格装置は、1つのアクチュエータと、使用者の左右脚にそれぞれ着用されるように配置され、互いに個別な2つの下肢ブラケットと、前記2つの下肢ブラケットのそれぞれに対応する2本の引っ張りワイヤーと、を含む。
【0015】
本発明は、図面における例示的な実施形態として具現化することができる。しかしながら、図面は単に模式的なものであり、本発明の教示の下で想定される任意の変更は、本発明の範囲内に含まれるものとみなされるべきであり、また、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲によってのみ限定されていることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面には、本発明の例示的な実施形態を示す。これらの図面は、本発明の範囲を必然的に限定するものとして解釈されるべきではない。同一の数字及び/又は類似の符号は、同一の要素及び/又は類似の要素を示すことが可能であり、ここでは、
【
図1】
図1は、本発明の1つの実行可能な実施形態に係る使用者の下肢に着用された足首補助外骨格装置の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される使用者の下肢に着用された足首補助外骨格装置の模式的な部分拡大図である。
【
図3】
図3は、
図1~
図2に示される足首補助外骨格装置の下肢ブラケットの模式的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1~
図3に示される足首補助外骨格装置の下肢ブラケットの力を受ける状況での模式図である。
【
図5】
図5は、
図1~
図3に示される足首補助外骨格装置の下肢ブラケットの足部ブラケットの模式的な分解斜視図;
【
図6】
図6は、
図1~
図3に示される足首補助外骨格装置におけるセンサ及びマイクロプロセッサの配置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態を示す添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実施することができ、本明細書に開示された例示的な実施形態に必然的に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの例示的な実施形態は、単に本発明を説明し、また、当業者に本発明の趣旨を伝えるためだけに提供される。
【0018】
図1は、本発明の1つの実行可能な実施形態に係る使用者の下肢に着用された足首補助外骨格装置の模式的な斜視図である。
図2は、
図1に示される使用者の下肢に着用された足首補助外骨格装置の模式的な部分拡大図である。
図3は、
図1~
図2に示される足首補助外骨格装置の下肢ブラケットの模式的な分解斜視図である。
図4は、
図1~
図3に示される足首補助外骨格装置の下肢ブラケットの力を受ける状況での示意図である。
図5は、
図1~
図3に示される足首補助外骨格装置の下肢ブラケットの足部ブラケットの模式的な分解斜視図である。
図6は、
図1~
図3に示される足首補助外骨格装置におけるセンサ及びマイクロプロセッサの配置を示している。本発明の実行可能な実施形態の以下の説明をより容易に理解できるために、各図において、鉛直方向を矢印ZZ’で示し、前後方向を矢印YY’で示し、横方向を矢印XX’で示している。前後方向YY’とは、本足首補助外骨格装置を着用する使用者の前後方向であると理解されてよく、使用者が向いている方向である前方Yと、使用者が背向している方向である後方Y’とを包含する。鉛直方向ZZ’とは、本足首補助外骨格装置を着用する使用者の身長方向であると理解されてよく、上方Zおよび下方Z’を包含する。横方向XX’とは、本足首補助外骨格装置を着用する使用者の左右方向であると理解されてよく、当該使用者の左手側である左側方向Xと、当該使用者の右手側である右方向X’とを包含する。また、鉛直方向ZZ’に垂直な任意の方向は水平方向であると理解されてよい。なお、上述した方位に関する定義は、本発明の技術案をよりよく説明するためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものと解釈されるべきではない。
【0019】
図1~
図3を参照すると、本発明に係る足首補助外骨格装置は、使用者の腰部の後方に着用されるように配置されたアクチュエータ100、下肢ブラケット200と、アクチュエータ100の駆動で下肢ブラケット200に引張力を制御可能に付与するように配置された引っ張りワイヤー300と、を含む。さらには、前記下肢ブラケット200は、使用者の下脚を取り囲むように配置された下脚リング(例えば、編地からなる)210と、その前方端部232が鉛直方向に使用者の足部を挟持するように配置され、その後方端部231が使用者の踵の後にあって、後方端部231が引っ張りワイヤー300に接続されるように配置された足部ブラケット230と、その上端が(例えば、取り外し可能なフック、マジックテープなどにより)下脚リング210に取り付けられ、その下端が足部ブラケット230の前方端部232と後方端部231との間で足部ブラケット230にヒンジ接続された(足部ブラケット230がリンクアセンブリ220に対して横軸周りに回転できるように)、下脚リング210と足部ブラケット230との間に設けられたリンクアセンブリ220と、足部ブラケット230にその前方端部232を上へ持ち上げるトルクを付与するように配置された、リンクアセンブリ220の下端と足部ブラケット230との間に設けられたねじりばね260と、使用者の足裏(例えば、踵)を引っ張る(又は、引っ掛ける)ように配置された、足部ブラケット230の前方端部232と後方端部231との間で足部ブラケット230にヒンジ接続された(足裏引っ張りリング250が足部ブラケット230に対して横軸周りに回転できるように)足裏引っ張りリング250と、を含む。
【0020】
上述した本発明の技術案によれば、使用者が本発明に係る足首補助外骨格装置を着用する際に、使用者の体肢(特に、関節)の小さい部分(体肢の表面積の25%以下)のみを覆うため、使用者の関節の動きに何ら制限を与えることもない。特に、下脚リング210は、膝関節ではなく、使用者の下脚を取り囲むように配置されているため、本足首補助外骨格装置は、単にそのアシストする足首関節を部分的に覆うだけであり、そのアシストしていない他の関節(例えば、膝関節)に対していかなる制限や障害を生じていない。さらに、
図4を参照すると、本足首補助外骨格装置の作動時、アクチュエータ100は、引っ張りワイヤー300を介して足部ブラケット230の後方端部231に引張力Fを付与し、引張力Fは、足部ブラケット230の後方端部231を上向きにし、足部ブラケット230の前方端部232を下向きにするような引っ張りワイヤートルクを足部ブラケット230に付与する。引っ張りワイヤートルクがねじりばね260により付与されたばねトルクよりも大きい場合、後方端部231は、足裏引っ張りリング250を介して足裏(特に、踵)に上向きの引張力F2(足裏の皮膚表面に垂直する法線力)を付与して、足首が底屈(plantar flexion)運動を行うことを補助する。特に、底屈運動を行う際に、使用者の前足裏が地面に当接するため、引張力F2による作用で、前方端部232は地面に付勢力F3を付与し、使用者の足の甲に大きな圧力を付与しないことで、使用者に不快感をもたらすことがない。引っ張りワイヤートルクがねじりばね260により付与されたばねトルクよりも小さい場合、足部ブラケット230の前方端部232は、足裏に上向きの足裏表面に垂直する法線力F3’を付与して、足首が背屈(dorsiflexion)運動を行うことを補助する。いずれにしても、リンクアセンブリ220は、それにブラケット230を中心に回転させるトルクのみを受けるので、リンクアセンブリ220は、下脚リング210を介して使用者の下脚に下脚の皮膚表面に垂直する法線力F1、F1’を付与するだけであり、これにより、下脚リング210は、下脚をしっかりと包む必要がなく、下脚と部分的に接触するだけでよいので、使用者の快適性が向上される。従って、本足首補助外骨格装置は、作動中に、接触している使用者の皮膚表面との間に皮膚表面に垂直する法線力(F1、F1’、F2、F3’)のみを発生させるが、接触している使用者の皮膚表面にそれと接する接線力を付与することはない。そのため、本足首補助外骨格装置は、皮膚の摩擦と接線方向の圧迫を引き起こして使用者に不快感を与えることがないとともに、使用者の皮膚のたるみや筋肉の強さからの影響を受けずに十分な補助力を提供することができる。また、法線力F1、F1’のモーメントアームS1が大きくて、補助力F3’のモーメントアームS3が小さいので、法線力F1、F1’が小さく、補助力F3’が大きい。従って、使用者の下脚が受けた反力が小さいが、足部が受けた補助力が大きく、これにより、使用者が本足首補助外骨格装置により足首補助を行う際の快適性と有効性がさらに向上される。
【0021】
図1~
図3及び
図5を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、足部ブラケット230と足裏引っ張りリング250とがヒンジ接続された位置は、足部ブラケット230とリンクアセンブリ220とがヒンジ接続された位置と後方端部231との間にある。
【0022】
図1~
図3及び
図5を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、足部ブラケット230は、後方端部231と前方端部232とを左右両側で接続する一対のブラケットアーム233、234(すなわち、左側ブラケットアーム233と右側ブラケットアーム234)を含み、前方端部232は、前記一対のブラケットアーム233、234のブラケットアーム前方端部2331、2341と、(例えば、取り外し可能なフック、マジックテープなどにより)それに取り付けられた足の甲テープ235とで構成され、足の甲テープ235は使用者の足の甲を部分的に覆うように配置されている。
【0023】
従って、
図4を参照すると、上述した実施形態によれば、引っ張りワイヤー300により付与された引っ張りワイヤートルクがねじりばね260により付与されたばねトルクよりも小さい場合、ブラケットアーム前方端部2331、2341は、足裏に対して足裏表面に垂直する上向きの法線力F3’を付与して、足首が背屈運動を行うことを補助する。
【0024】
図5を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記一対のブラケットアーム233、234のブラケットアーム前方端部2331、2341は、その底部に、互いに向かって延びる突出部2332、2342を含む。
【0025】
従って、
図4を参照すると、上述した実施形態によれば、引っ張りワイヤー300により付与された引っ張りワイヤートルクがねじりばね260により付与されたばねトルクよりも小さい場合、突出部2332、2342は、足裏に対して足裏表面に垂直する上向きの法線力F3’を付与して、足首が背屈(dorsiflexion)運動を行うことを補助し、また、突出部2332、2342と使用者の足裏とが面接続するので、力F3’が大きくなったときにも使用者の足裏の不快を引き起こすことはない。
【0026】
図1~
図3及び
図5を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記一対のブラケットアーム233、234は後方端部231と共にU形となり、かつ、水平方向に使用者の足部を(少なくとも部分的に)取り囲むように配置されている。
【0027】
図5を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記一対のブラケットアーム233、234は、複数組のヒンジ孔を含み、各組のヒンジ孔は、前記一対のブラケットアーム233、234上に横方向に対向して設けられた2つのヒンジ孔2333、2343を含み、足裏引っ張りリング250が前記複数のグループのヒンジ孔のうちの1グループのヒンジ孔で前記一対のブラケットアーム233、234にヒンジ接続されている。
【0028】
従って、上述した実施形態によれば、足裏引っ張りリング250が足部ブラケット230にヒンジ接続される位置は、使用者の足部をより良好に合わせて、本足首補助外骨格装置がより効率的に、より確実に、使用者に補助力を提供するように、多くの選択肢を有している。
【0029】
さらに
図5を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、前記一対のブラケットアーム233、234は少なくとも3組のヒンジ孔を含む。
【0030】
図1~
図3を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、リンクアセンブリ220は、足部ブラケット230の左右両側に設けられた一対のリンク221、222(すなわち、左側リンク221と右側リンク222)を含み、前記一対のリンク221、222の各々の上端は、それぞれ、下脚リング210の左右両側に取り付けられており、前記一対のリンク221、222の各々の下端は、それぞれ、足部ブラケット230にヒンジ接続されている。具体的に、左側リンク221が左側ブラケットアーム233にヒンジ接続され、右側リンク222が右側ブラケットアーム234にヒンジ接続されている。
【0031】
従って、上述した実施形態によれば、下脚リング210と足部ブラケット230とは、一対のリンク221、222だけで接続されており、下肢ブラケット200の重量が大幅に軽減され、使用者の体肢の被覆された面積がさらに低減されて、使用者が本足首補助外骨格装置を着用する際の体力消耗が最小限に抑えられ、快適性をさらに向上させるようになる。
【0032】
図1~
図3を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、リンクアセンブリ220は、リンクアセンブリ220の一部の高さで前記一対のリンク221、222を接続する支持ブロック223を含む。支持ブロック223がリンクアセンブリ220の鉛直方向における中央で前記一対のリンク221、222を接続することが図示されている。しかし、支持ブロック223の高さ位置は可変であり、例えば、リンクアセンブリ220の鉛直方向における中央の上方又は下方にあってもよく、そのため、支持ブロック223の任意の高さ位置は、本発明の範囲内に含まれるとみなされるべきであると理解されても良い。
【0033】
従って、上述した実施形態によれば、支持ブロック223の存在により、リンクアセンブリ220の構造がより安定するので、下肢ブラケット200をより確実に支持することができ、また、支持ブロック223はリンクアセンブリ220の一部の高さでのみ存在するので、支持ブロック223はリンクアセンブリ220の重量を著しく増加させていない。
【0034】
図2及び
図3を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、本足首補助外骨格装置は、さらに、引っ張りワイヤー300外部を囲んで設けるスリーブ400を含み、ここで、引っ張りワイヤー300はスリーブ400の中で摺動可能であり、スリーブ400の上端はアクチュエータ100に固定され、スリーブ400の下端は下肢ブラケット200に接続されている。特に、引っ張りワイヤー300とスリーブ400とは、ボーデンケーブル(Bowden cable)を構成する。
【0035】
従って、上述した実施形態によれば、スリーブ400を利用してアクチュエータ100と下肢ブラケット200との間で引っ張りワイヤー300をガイドすることができ、これにより、アクチュエータ100は、より効率的に、より確実に、引っ張りワイヤー300を介して下肢ブラケット200に引張力を付与することができ、これにより、本足首補助外骨格装置は、より効率的に、より確実に、使用者に補助力を提供することができる。
【0036】
図2及び
図3を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、下肢ブラケット200は、さらに、(スリーブホルダ270が支持ブロック223に対して横軸周りに回転できるように)支持ブロック223にヒンジ接続されたスリーブホルダ270を含み、ここで、スリーブ400の下端はスリーブホルダ270に固定されている。
【0037】
従って、上述した実施形態によれば、スリーブ400の下端は、スリーブホルダ270と共に支持ブロック223に対して回転することができ、これにより、スリーブ400の下端の角度位置は使用者足部の動きに応じて変化することができ、引っ張りワイヤー300がスリーブ400の下端から出る方向が常にそれによって引っ張られる足部ブラケット230の後方端部231に向かうようにする。言い換えると、スリーブ400の下端は、常に、足部ブラケット230の後方端部231に向かって引っ張りワイヤー300をガイドし、引っ張りワイヤー300の延在方向に対する横方向に障害を加えることがなく、アクチュエータ100は、より効率的に、より確実に、引っ張りワイヤー300を介して下肢ブラケット200に引張力を付与することができ、これにより、本足首補助外骨格装置は、より効率的に、より確実に、使用者に補助力を提供することができる。
【0038】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、本足首補助外骨格装置は、さらに、1つ又は複数のセンサ(例えば、IMU(慣性計測ユニット)センサ、EMG(筋電図)センサ、力センサなど)を含み、使用者の生体信号(例えば、足部の動き、足部の角度、足部の加速度、脚部の動き、脚部の角度、脚部の加速度、筋肉の動きなど)、及び引っ張りワイヤー300により足部ブラケット200に付与する引張力、をリアルタイムに検出するように配置されており、本足首補助外骨格装置は、さらに、センサからの検出データを用いて引っ張りワイヤー300により足部ブラケット200に付与する引張力をリアルタイムに制御するように配置されたコントローラ(例えば、マイクロプロセッサ)を含む。
【0039】
従って、上述した実施形態によれば、本足首補助外骨格装置は、センサを利用して使用者の生体信号(例えば、足部の動き、足部の角度、足部の加速度、脚部の動き、脚部の角度、脚部の加速度、筋肉の動きなど)をリアルタイムに検出し、その後、コントローラは、検出されたデータにより、使用者が行っている運動パターンと行おうとする運動パターン(例えば、使用者は、立ち止まろうか、歩行しようか、走ろうか)、及び使用者の足部が行っている運動と行おうとする運動(例えば、屈曲運動、底屈運動)を判断し、その後、コントローラは、さらに検出された引っ張りワイヤー300により足部ブラケット200に付与する引張力を利用し、この引張力を閉ループ制御して、リアルタイムに、高精度に、見込みのあるように使用者の足首を補助する。従って、使用者が行っている運動パターンと行おうとする運動パターン(例えば、使用者は、立ち止まろうか、歩行しようか、走ろうか)に関わらず、使用者の足部が行っている運動と行おうとする運動(例えば、屈曲運動、底屈運動)に関わらず、本足首補助外骨格装置は、リアルタイムに、高精度に、見込みのあるように使用者の足首を補助することができる。
【0040】
図6を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、本足首補助外骨格装置は、下脚リング210の后部に設けられたEMGセンサ610、支持ブロック223に設けられたIMUセンサ620とマイクロプロセッサ630、スリーブホルダ270に設けられた力センサ640、及び足部ブラケット230に設けられたIMUセンサ650を含む。また、本足首補助外骨格装置は、さらに、アクチュエータ100と各センサ及びマイクロプロセッサとの間でデータと電力を伝達するように配置された回路信号線500を含む。
【0041】
従って、上述した実施形態によれば、回路信号線500を介してアクチュエータ100から電力が得られた場合、まず、EMGセンサ610により、使用者の下脚の生体信号を測定し、IMUセンサ620により、使用者の下脚の慣性信号を測定し、IMUセンサ650により、使用者足部の慣性信号を測定し、力センサ640により、引っ張りワイヤー300の引張力を測定し、そして、マイクロプロセッサ630は、上述した各センサが出力したデータを利用して使用者の動作を予測して引っ張りワイヤー300の引張力をさらに閉ループ制御して、リアルタイムに、高精度に、見込みのあるように使用者の足首を補助することができる。しかしながら、上述した各センサ及びマイクロプロセッサの位置は、単に例示的なものだけであり、その機能に影響がなければ、その具体的な位置が可変であることに留意されたい。例えば、マイクロプロセッサ630はアクチュエータ100に設けられてもよく、EMGセンサ610はリンクアセンブリ220に設けられてもよい。
【0042】
本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、アクチュエータ100には、引っ張りワイヤー300が巻回されるローラと、ローラの回転を駆動してコントローラによって制御されるように配置されたモータと、モータとローラとの間で動力を伝達する変速機とが設けられており、また、本足首補助外骨格装置は、さらに、使用者の腰部の前方に着用されて各電力消耗デバイスへ給電するように配置された電源を含む。
【0043】
従って、上述した実施形態によれば、本足首補助外骨格装置の重い部材(例えば、モータ、電源、変速機など)は何れも使用者の腰部に設けられている。つまり、本足首補助外骨格装置の重量の大部分は、使用者の下肢ではなく、使用者の腰部に集中しており、これにより、使用者が本足首補助外骨格装置を着用する際の体力消耗がさらに低減されて、使用者の着用の快適性を向上させ、使用者が長時間にわたって本足首補助外骨格装置を着用して足首の運動を補助することができるようになる。また、電源が腰部の前方にあり、モータ、変速機などが腰部の後方にあるため、電源とモータ、変速機などは互いのカウンターウエイトとなり、使用者が本足首補助外骨格装置を着用する際の快適性がさらに改善される。
【0044】
図1及び
図2を参照すると、本発明の1つの実行可能な実施形態によれば、本足首補助外骨格装置は、1つのアクチュエータ100、使用者の左右脚上にそれぞれ着用されるように配置された、互いに独立した2つの下肢ブラケット200と、前記2つの下肢ブラケット200にそれぞれ対応する2本の引っ張りワイヤー300と、を含む。
【0045】
従って、上述した実施形態によれば、使用者の1つの足首が補助を必要とする場合、使用者は1つの下肢ブラケット200のみを着用して当該足首の運動を補助することができる。使用者の2つの足首が全て補助を必要とする場合、使用者は、互いに個別な2つの下肢ブラケット200を用いて2つの足首の運動を同時に補助することができ、これにより、本足首補助外骨格装置の使用の柔軟性が大幅に向上される。
【0046】
以上、図面を参照して、本発明に係る足首補助外骨格装置の好ましい実施形態について詳細に説明したが、これに限定されるものではない。当業者にとって、以下の請求項に記載された本開示の範囲および本質から逸脱することなく、技術および構造についての補正および補足がいずれも本発明の範囲内に含まれるとみなされるべきである。従って、本発明の教示の下で想定できるこれらの補正および補足は、本開示の一部とみなされるべきである。本開示の範囲は、以下に添付された請求項によって限定されているとともに、本開示の出願日に既知の等価技術および予見されていない等価技術を含む。