(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】廃水処理装置及び廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/78 20230101AFI20240311BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20240311BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20240311BHJP
C02F 3/08 20230101ALI20240311BHJP
【FI】
C02F1/78
B01F23/2373
C02F1/50 510A
C02F1/50 520P
C02F1/50 531R
C02F1/50 560H
C02F3/08 B
(21)【出願番号】P 2022555007
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2020037893
(87)【国際公開番号】W WO2022074740
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】506181195
【氏名又は名称】エンバイロ・ビジョン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520455302
【氏名又は名称】ABBiT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 正志
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雅史
(72)【発明者】
【氏名】小海 孝雄
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3167226(JP,U)
【文献】特開昭59-029084(JP,A)
【文献】特開2019-135043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0306573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/30-1/38
C02F1/46-1/50
C02F1/70-1/78
C02F3/00-3/34
B01F21/00-25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となる被処理水を収容する収容槽と、該収容槽内にオゾン、酸素及びα粒子を含むマイクロナノバブルを供給する供給手段と、から少なくとも構成されていることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記供給手段は、空気を導入する開口を備えた導入管と、該導入管に連通したオゾン発生部と、前記空気にα粒子を与えるα線源部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記α線源部は、前記導入管の内部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記α線源部は、多数の網目が形成された網状部材と、該網状部材の外面を被覆したα粒子放出剤とからなることを特徴とする請求項3に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記供給手段は、キャビテーションを利用して前記マイクロナノバブルを生成するノズルを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の廃水処理装置。
【請求項6】
前記収容
槽内に、少なくとも好気性微生物を備え、成分として炭素を含みマイクロナノレベルのポーラスを有する多孔質材が収容されていることを特徴とする請求項1ないし5に記載の廃水処理装置。
【請求項7】
処理対象となる被処理水を収容する収容槽にて、オゾン、酸素及びα粒子を含むマイクロナノバブルを供給するバブル供給工程を少なくとも有することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項8】
前記バブル供給工程において、前記オゾンと、前記α粒子を与えた空気とを混合した混合気のマイクロナノバブルを生成することを特徴とする請求項7に記載の廃水処理方法。
【請求項9】
前記バブル供給工程と、少なくとも好気性微生物を備え、成分として炭素を含みマイクロナノレベルのポーラスを有する多孔質材によって生物処理を行う生物処理工程と、を有することを特徴とする請求項7または8に記載の廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、協同事業系の複合建物、食品・化学・製紙・自動車工場等から排出される有機系廃水を含む廃水を処理する廃水処理装置及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の廃水処理装置には、処理対象となる汚水を収容する処理槽内にオゾンを供給することで、その強力な酸化作用によって、汚水に含まれる細菌類の殺菌、脱臭及び有機物や油脂分を分解し除去する等の効果を得るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなオゾンは、バブル発生器等により微小径に泡沫化することで、汚水と効果的に混合し汚水内の有機物分解を促進したのち、多数のオゾン泡沫の大部分が時間経過とともに圧壊、消滅することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-131827号公報(第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、処理槽にオゾンを供給することで汚水に含まれる有機物を殺菌するオゾン処理を行っているが、このオゾン処理は、一定の殺菌効果を得ることができる一方、被処理水に含まれる富栄養化の原因となる窒素成分を減少させる脱窒効果に乏しく、被処理水の十分な浄化を達成することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、オゾンによる被処理水中の有機物の分解処理又はこれを殺菌する殺菌効果に加え、被処理水の十分な脱窒効果を得ることができる廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の廃水処理装置は、
処理対象となる被処理水を収容する収容槽と、該収容槽内にオゾン、酸素及びα粒子を少なくとも含むマイクロナノバブルを供給する供給手段と、から少なくとも構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽にてオゾンのマイクロナノバブルによって被処理水中に溶解する、または浮遊する有機物を分解処理あるいは殺菌処理し、更に被処理水中を漂う残オゾンのバブルを、酸素分子に化学変化させて、水酸基ラジカルを豊富に生成させることで、残オゾンを低減できると同時に、マイクロナノバブルに含まれる酸素とともに有機物の分解を促進することができる。また、α粒子を含むマイクロナノバブルが被処理水中を漂うことで、α粒子が減衰することなく広範囲に作用し、脱窒効果を高めることができる。
【0008】
前記供給手段は、空気を導入する開口を備えた導入管と、該導入管に連通したオゾン発生部と、前記空気にα粒子を与えるα線源部と、を有することを特徴としている。
この特徴によれば、導入管に導入された酸素を含む空気にα線源部によりα粒子を与えるとともに、オゾンを混合させることで、容易に混合気を生成することができる。
【0009】
前記α線源部は、前記導入管の内部に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、導入管内に空気を流通させるだけで、α粒子を安定的に供給することができる。
【0010】
前記α線源部は、多数の網目が形成された網状部材と、該網状部材の外面を被覆したα粒子放出剤とからなることを特徴としている。
この特徴によれば、導入管内の空気が網状部材の網目を通過することで、当該空気にα粒子が確実に付与される。
【0011】
前記供給手段は、キャビテーションを利用して前記マイクロナノバブルを生成するノズルを有することを特徴としている。
この特徴によれば、ノズルによってマイクロナノバブルを容易に生成することができる。
【0012】
前記収容層内に、少なくとも好気性微生物を備え、成分として炭素を含みマイクロナノレベルのポーラスを有する多孔質材が収容されていることを特徴としている。
この特徴によれば、酸素分子及び多孔質材に吸着した酸素バブルにより生物処理を活性化させることができる。したがって、単一の収容槽のみを使用して、オゾンによる殺菌処理と、α粒子による脱窒処理に併せ、好気性微生物を用いた生物処理を行うことができる。
【0013】
前記多孔質材のポーラスは、前記マイクロナノバブルよりも小径に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、オゾンのバブルが多孔質材の空孔のポーラスまで進入することなく、多孔質材の空孔周辺の外表面に付着することで、オゾン分子が酸素分子に化学変化する。よって、空孔内の好気性微生物は、オゾン分子に接することなく酸素分子に接し、すなわち死滅することなく豊富な酸素を得て活発に機能することになる。
【0014】
前記多孔質材は活性炭からなることを特徴としている。
この特徴によれば、活性炭により、残オゾンを積極的に生物処理に有効な酸素に分解できる。また、活性炭の遠赤外線効果により、例えば水温10℃以下という悪条件下でも微生物の活性化が維持できる。
【0015】
前記多孔質材は担体に担持されていることを特徴としている。
この特徴によれば、担体をオゾン分解及び生物処理の反応の場として利用できる。
【0016】
前記担体に通性嫌気性微生物が担持されていることを特徴としている。
この特徴によれば、微小径の気泡からなるマイクロナノバブルによって水の抵抗が減って浸透性が高まり、担体の内部まで水が浸入し易くなるため、内部に存在する通性嫌気性微生物が刺激されて活性化する。この結果、好気性微生物及び通性嫌気性微生物の両方が活性化し、食物連鎖(微生物同士の共食いを含む)が促進されるため、余剰な汚泥を発生させることなく、早期且つ高度な生物処理を達成することができる。
【0017】
前記担体は酵素を担持可能に構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、好気性微生物の活動を活発化させる酵素を担持することで、酵素の働きにより好気性微生物の繁殖が促進される。
【0018】
前記収容槽の上部に、被処理水を導入する導入部を備えるとともに、前記収容槽の下部に、該収容槽内で処理された被処理水を排出する排出部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽内の被処理水を、該収容槽の上部に位置する導入部から下部に位置する排出部に至るまでの流動の過程で確実にオゾン処理並びに生物処理できる。
【0019】
前記収容槽の下部に、該収容槽の周方向に沿って前記マイクロナノバブルを吐出するバブル吐出口が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽の下部にて吐出されたオゾン及び酸素のマイクロナノバブルが、その浮力によって収容槽の被処理水及び多孔質材を伴い内周壁に沿って回転しながら上昇する回転上昇流を生成できるため、収容槽内の流動性が高まると同時に、マイクロナノバブルの圧壊作用による水酸基ラジカル効果により、浮遊物質(SS)の分解が促進されるため、余剰汚泥がほとんど発生しない装置を提供することができる。
【0020】
前記収容槽の前記バブル吐出口よりも上部に、該収容槽内の被処理水を吸水する吸水口が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、吸水口よりマイクロナノバブルを吸い込み易くすることで、マイクロナノバブルの圧壊効率を高めることができる。
【0021】
前記導入部が、前記収容槽の内周壁近傍に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽の内周壁近傍に導入される被処理水と、この内周壁に沿う回転上昇流が生成されたオゾン及び酸素(空気)のマイクロナノバブルとを効率よく混合させることができる。
【0022】
前記マイクロナノバブルを供給する前記供給手段は、キャビテーションを利用したものであることを特徴としている。
この特徴によれば、被処理水中の浮遊物質(SS)の分解に寄与することができる。
【0023】
本発明の廃水処理方法は、
処理対象となる被処理水を収容する収容槽にて、オゾン、酸素及びα粒子を含むマイクロナノバブルを供給するバブル供給工程を少なくとも有することを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽にてオゾンのマイクロナノバブルによって被処理水中に溶解する、または浮遊する有機物を分解処理あるいは殺菌処理し、更に被処理水中を漂う残オゾンのバブルを、酸素分子に化学変化させて、水酸基ラジカルを豊富に生成させることで、残オゾンを低減できると同時に、マイクロナノバブルに含まれる酸素とともに有機物の分解を促進することができる。また、α粒子を含むマイクロナノバブルが被処理水中を漂うことで、α粒子が減衰することなく広範囲に作用し、脱窒効果を高めることができる。
【0024】
前記バブル供給工程において、前記オゾンと、前記α粒子を与えた空気とを混合した混合気のマイクロナノバブルを生成することを特徴としている。
この特徴によれば、酸素を含む空気にα粒子を与えるとともに、オゾンを混合させることで、容易に混合気を生成することができる。
【0025】
前記バブル供給工程と、少なくとも好気性微生物を備え、成分として炭素を含みマイクロナノレベルのポーラスを有する多孔質材によって生物処理を行う生物処理工程と、を有することを特徴としている。
この特徴によれば、酸素分子及び多孔質材に吸着した酸素バブルにより生物処理を活性化させることができる。したがって、オゾンによる殺菌処理と、α粒子による脱窒処理に併せ、好気性微生物を用いた生物処理を行うことができる。
【0026】
前記多孔質材のポーラスは、前記マイクロナノバブルよりも小径に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、オゾンのバブルが多孔質材のポーラスの内部まで進入することなく、多孔質材の空孔周辺の外表面に接触することで、オゾン分子が酸素分子に化学変化する。よって、空孔内の好気性微生物は、オゾン分子に接することなく酸素分子に接し、すなわち死滅することなく豊富な酸素を得て活発に機能することになる。
【0027】
前記多孔質材は活性炭からなることを特徴としている。
この特徴によれば、活性炭により、残オゾンを積極的に生物処理に有効な酸素に分解できる。また、活性炭の遠赤外線効果により、例えば水温10℃以下という悪条件下でも微生物の活性化が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例1における廃水処理装置を示す平面図である。
【
図3】オゾン、α粒子及び酸素のマイクロバブル発生ノズルを示す縦断面図である。
【
図4】(a)は網状部材を示す正面図であり、(b)は網状部材を巻回する状況を示す図であり、(c)は
図3のA-A断面図である。
【
図5】(a)は
図3のB部分の拡大図であり、(b)は
図3のC部分の拡大図である。
【
図7】実施例2における廃水処理装置を示す平面図である。
【
図9】導入管内の通気量に関する実験結果を示す表である。
【
図10】導入管内に装填する網状部材の装填数に関する実験結果を示す表である。
【
図11】(a)はα粒子による被処理水の水質改善に関する実験結果を示す表であり、(b)は同じく実験後の被処理水を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る廃水処理装置及び廃水処理方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0030】
実施例1に係る廃水処理装置につき、
図1から
図6を参照して説明する。先ず
図1の符号1は、本発明の適用された廃水処理装置である。この廃水処理装置1は、本実施例では食品工場に設置され、当該工場から廃棄される油脂分等の有機分を含む汚水を被処理水として、河川等に放流する前に浄化処理する装置であり、沈殿槽や膜処理手段を設けずして、河川、水路、海域等へ直接に放流ができる当該廃水処理装置1は、他に類を見ないものである。
【0031】
図1に示されるように、廃水処理装置1は、その上流側に工場2内から場外に排出される汚水を集水する原水槽4に接続されている。なお、本発明に係る廃水処理装置は、本実施例の食品工場に限らず、マンション等の集合住宅の生活排水等の一般排水、及び事業系の複合建物、化学工場等、有機系廃水を含む病院、ホテル、飲食店等に広く適用可能であり、若しくは下水処理場での運用も可能である。
【0032】
また廃水処理装置1は、その下流側に処理後の汚水を排出する排水管39が接続されており、浄化された廃水は排水管39を介して図示しない河川等に放流される。
【0033】
本実施例1の廃水処理装置1は、被処理水が導入される収容槽としてマイクロナノバブルによる処理及び生物処理を行うための処理槽30と、後述するオゾン、酸素(空気)及びα粒子を含むマイクロナノバブルを供給する供給手段としてのバブル発生装置40とを主に備えている。以下、廃水処理装置1の各構成について詳述する。
【0034】
図1に示されるように、原水槽4は、工場2から集められた廃水が廃水溝3を介し導入される平面視略矩形の水槽であり、原水槽4内には次の処理槽30に移送するための原水ポンプ5と、水位センサとしてのフロート6が設置される(
図7参照)。なお本実施例では原水槽4の内部容量は略2トンであるが、実施上は1トン未満の貯留量にてフロート制御により次の処理槽30に移送される。
【0035】
次に
図1及び
図2に示されるように、処理槽30について説明する。処理槽30は、原水槽4からの被処理水が移送ポンプ5に接続された移送管7を介し導入される略円筒状の水槽であり、処理槽30内には、オゾン、酸素(空気)及びα粒子を含むマイクロナノバブル(以下、マイクロナノバブル若しくは単にバブルと称する場合もある)を吐出するバブル吐出口30cと、開閉バルブ38を介し排水管39に開閉可能に連通する排出口30dと、水位センサとしてのフロート36が設置される。この排出方法は開閉バルブ38をつけずして下部から上部への配管を介したオーバーフローでもよい。
【0036】
なお本実施例では処理槽30の内部容量は略54トンの容量であり、平面方向の内径に比して上下方向の高さが長寸に形成されている。このように、より大きい内部容量を有する処理槽30にて、オゾン、酸素(空気)及びα粒子を含むマイクロナノバブルを広範囲に流動させることで、オゾンによる殺菌処理(以下、オゾン処理と称する場合もある)と、α粒子による脱窒処理と、好気性微生物による生物処理と、オゾン処理後の残オゾンを低減する化学変化とを促進することができる。またバブル吐出口30cは、処理槽30に連通してその外部に設置されたバブル発生装置40に接続されている。
【0037】
また、
図2に示されるように、処理槽30の内部には、多数の菌床50,50,…が投入されており、これら菌床50,50,…は、好気性微生物及び通性嫌気性微生物の菌床として使用されるようになっている。菌床50,50,…は、長辺と短辺とを備えた略直方体の担体51,51,…を成して処理槽30の内部を自由に移動できる。このように担体51,51,…が略直方体に形成されていることで、被処理水内にて漂う担体51,51,…の流動性を高めることができるばかりか、流動に伴う担体51,51,…の欠けの発生を抑制できる。菌床50は複数の空孔を有する鉱物質を原料とする合成樹脂から形成されている。また、この菌床50,50,…には、好気性微生物及び通性嫌気性微生物のみならず、後述するように粉末状に生成された活性炭58が添加されているが(
図6参照)、これのみに限らず、中和剤、臭気抑制剤等を添加させることもできる。
【0038】
処理槽30は、前述した移送管17の先端に開口した導入口17aが処理槽30の上部に設けられるとともに、開閉バルブ38を介して排水管39に連通する排出口30dが処理槽30の下部の底面近傍に設けられているため、移送管17の導入口17aから処理槽30に導入された被処理水が生物処理されながら下降するようになる。これによれば、処理槽30の上部から導入された被処理水が処理槽30の下部に至るまで流動することになるため、処理槽30内における生物処理の時間を長く採ることができる。排水管39はいったん処理槽30の水面レベルまで立ち上げられ、導入口17aから流入した水量と同量の水量が自然流下でそのまま放流されるようになっている。
【0039】
更にバブル吐出口30cは、処理槽30の内周壁30aの周方向に開口しているため、バブル吐出口30cからマイクロナノバブルが吐出されると、円筒状の処理槽30内に循環流が生じ、菌床50,50,…にマイクロナノバブルが付着することで浮力を高めつつ循環流によって上方に移動され、マイクロナノバブルが経時的に圧壊又は離脱するのに伴い再び下方に投下されるため、生物処理を効果的に行うことができる。
【0040】
なお、処理槽30の内周面には、菌床50,50,…を攪拌するための攪拌板等を設けてもよく、このようにすることで、処理槽30の内部が回転駆動されると、菌床50,50,…が前記した攪拌板によって上方に移動され、再び下方に投下されるため、生物処理を効果的に行うことができる。
【0041】
次に、
図1~
図3に示されるように、バブル発生装置40について説明する。
【0042】
バブル発生装置40は、処理槽30の下部の底面近傍に開口した吸水口30bに連通した接続管48に接続され、液体を吸水する吸水ポンプ47と、マイクロナノバブル発生ノズル45(ノズル)と、このマイクロナノバブル発生ノズル45に接続されたオゾン発生装置49と、により主に構成されている。この吸水ポンプ47は、処理槽30の吸水口30bを介し処理槽30内部の液体を吸水するようになっている。
【0043】
マイクロナノバブル発生ノズル45は、吸水ポンプ47から延びる接続管48の下流側に取付けられており、吸水ポンプ47にて吸水された液体は、マイクロナノバブル発生ノズル45に供給されて吹き出されるようになっている。
【0044】
マイクロナノバブル発生ノズル45は、オゾン及び空気を自吸するせん断式に属するものとし、またキャビテーションを利用している点に特徴を有する。なお、本実施例のようにバブル発生装置40を外部に設置し、循環ライン設ける場合は、加圧溶解方式でも適用可能である。マイクロナノバブル発生ノズル45の機種は何であっても良いが、固形物の流入があっても目詰まりを起こさないものであることが必要である。その一例として、
図3に示すように、マイクロナノバブル発生ノズル45は、吸水ポンプ47の接続管48に接続されて液体が供給される供給部21と、この供給部21から供給される液体を圧縮しながら通過させる圧縮部22(通過部)と、この圧縮部22を通過した液体が吹き出される吹出部23と、を有する略円筒形状(ストレートパイプ形状)をなすノズル部材となっている。
【0045】
液体の入口である供給部21の内径は、圧縮部22に対しほぼ平行になっており、吹出部23の内径は、圧縮部22から拡径されるようになっている。即ち圧縮部22の内径が最小となっており、供給部21から供給された液体は、圧縮部22を通過する際に流速が上がることで、ベンチュリー効果により汚水の流速が高速になって吹出部23から吹き出される。
【0046】
処理槽30の外部に設置されたオゾン発生装置49によって発生し、このオゾン発生装置49に接続された給気管41及び略T字状に形成された給気管46の分岐部46b、本管部46aを介し吸気されたオゾンは、マイクロナノバブル発生ノズル45内にて、複数分岐した枝管24を通って圧縮部22内に噴出されるようになっている。また、大気中から筒状の導入管61及び給気管46の本管部46aを介しマイクロナノバブル発生ノズル45内に吸気された酸素を含む空気は、前述したオゾンと合流し、複数分岐した枝管24を通って圧縮部22内に噴出されるようになっている。なお、導入管61と給気管46の本管部46aとの間には開閉弁62が介設されており、本実施例では手動式の操作部62aによって内部の弁体62bが任意に開度調整され、空気の通気流量を制御できるようになっている。このように、枝管24から圧縮部22内に噴出されたオゾンの気泡及び酸素(空気)の気泡は、超微細な気泡となって圧縮部22内の液体と混合される。この際、キャビテーションも同時に発生し、浮遊物質(SS)の分解にも寄与している。そして、この超微細な気泡がオゾン及び酸素(空気)のマイクロナノバブル、すなわちナノレベルの直径の気泡として、吹出部23からバブル吐出口30cを介し処理槽30内部に噴出される。
【0047】
すなわち、マイクロナノバブル発生ノズル45は、処理槽30内に連通する接続管48に配設され、バブル吐出口30cを介し水中にマイクロナノバブルを含む液体を吹き出すようになっている。
【0048】
図3に示されるように、給気管46の上流側に接続された導入管61は、両端が連通した筒状に形成されている。導入管61の呼び径dは、本実施例では略3cmであるが、これに限らず、略1cm~5cmの範囲で設計されると好ましい。また導入管61の延長Lは、本実施例では略15cmであるが、これに限らず、略10cm~20cmの範囲で設計されると好ましい。
【0049】
この導入管61の内部には後述するように巻回したα線源部としての網状部材65が軸方向に所定数(本実施例では2個)内装されている。
図4(a)に示されるように、この網状部材65の略全面には、α線を外部に放出する放射性物質を含有する塗布剤66が塗布されている。この網状部材65は、比較的軟質な弾性を有する金網からなり、細目状(1cm以下)に多数に開孔した網目65aを有する部材であって、その自然状態では横長略長方形の平坦面状である。
図4(b)に示されるように、網状部材65は、その短辺の一辺に設けられた芯材64を軸として軸回りに巻回し、
図3に示されるように導入管61の内部に挿入したものである。なお、網状部材65は、特に芯材64を設けずともよい。
【0050】
このように、バブル発生装置40は、空気を導入する開口を備えた導入管61と、導入管61に連通したオゾン発生部と、α線源部としての塗布剤66が塗布された網状部材65と、を有することで、導入管61に導入された酸素を含む空気にα粒子を与えるとともに、オゾンを混合させることで、容易に混合気を生成することができる。
【0051】
また、網状部材65が導入管61の内部に設けられていることで、導入管61内に空気を流通させるだけで、α粒子を安定的に供給することができる。
【0052】
図4(c)に示されるように、網状部材65は、導入管61の内部で元の平坦面状に弾性復元しようと外径方向に向かう力が働くことで、導入管61の内周面61aの略全周にわたり密接している。すなわち網状部材65は導入管61の管軸方向視で芯材64を中心に略渦巻き状に形成されており、導入管61の内部に流入する空気(外気)は、網状部材65の表面と接し、多数の網目65aを幾度も通過しながら管軸方向の下流側に流出するようになっている。
【0053】
上述した通り、網状部材65の略全面には、α線源としての塗布剤66が塗布されていることから、この網状部材65の全表面から外方にα線が全方向に放出されている。よって、導入管61の内部に流入する空気(外気)は、網状部材65の表面に接触又は近接しながら、若しくは網目65aを通過するに際し、網状部材65の全表面から放出されるα線(α粒子66a)を十分に受け、α粒子66aを伴いながら導入管61から流出することとなる。
【0054】
このように、本発明のα線源部は、多数の網目65aが形成された網状部材65と、その外面を被覆したα粒子放出剤としての塗布剤66とからなることで、導入管61内の空気が網状部材65の網目65aを通過することで、当該空気にα粒子66aが確実に付与される。
【0055】
ここで、α線は、本実施例では網状部材65の各網目65aを構成する部分の略全面を起点として法線方向にα線が直線状に放出され、すなわち導入管61の内部では、管軸方向、管径方向、及びこれらに対し傾斜するあらゆる直線方向にα線が放出されることになる。
【0056】
また、α線は紙一枚で遮蔽されるほど透過力は弱く、α線の空気中の飛程距離は、一般的に数cm(3cm~8cm程度)であるところ、本実施例のように内径dが略3cmの筒状である導入管61内を通過する空気(以下、通過空気と称する)に対し放出されるα線は、その飛程距離の範囲内であるため、減衰することなく通過空気に到達することができる。
【0057】
更にα粒子66aは、当該α粒子66a自体が空気中を移動するものではなく、管内を移動する当該通過空気に追従して移動するものであることから、α粒子66a自体の飛程距離が数cmであっても、当該通過空気に伴いバブル吐出口30cまでの数mの距離、更にマイクロナノバブルに含まれて被処理水中を移動することが可能となる。
【0058】
本実施例の塗布剤66は、微弱なα線を放出する放射性元素であるトリウム(Th232)の化合物として、二酸化トリウム(ThO2)を不活性溶剤で希釈した液剤であって、網状部材65に対し重量パーセントで5%以下の分量で他の法的規制なく塗布したものである。ここで、トリウム(Th232)は自然界に存在する金属であって、140億年と極めて長い半減期を有する放射性元素として知られ、すなわち半永久的にα線を放出するものである。なお、これに限らず、α線を放出可能な材料であって、適法の分量で使用されるものであればよい。
【0059】
このように、導入管61内を通過した空気(外気)は、α粒子66aを伴いながら下流側の給気管46を経て、給気管41を通じて給気されたオゾンと混合された後に、後述するように被処理水中にマイクロナノバブルとして吹き出されるようになっている。
【0060】
また、α線の水中の飛程距離は、一般的に空気中の飛程距離の略1000分の1であって数十μmと非常に短いが、マイクロナノバブルを構成するオゾンと空気(外気)との混合気中に含まれるα粒子66aは、当該混合気に含まれた状態で被処理水中を自在に且つ長距離を減衰することなく移動できるため、被処理水である廃水中に分散して含まれるパーティクルに高い効率で到達することができ、α粒子66aが被処理水に含まれる窒素成分に効率よく作用して脱窒効果を促進させる結果、廃水の浄化作用に寄与することができる。
【0061】
α粒子による脱窒効果に関しては、後述の実験により示されるように、被処理水中の総窒素(T-N)の有意な減少が確認されたものである。α粒子が及ぼす作用としては、被処理水に含まれる窒素原子を含む窒素化合物にα粒子を与えることで、いわゆるラザフォードの実験により確認された窒素原子核から陽子を放出させる作用に加え、富栄養化の原因となる一部の窒素化合物を化学変化させ、窒素分子として外気中に放出させる作用等が考えられる。
【0062】
なお、本実施例では、オゾンと酸素(空気)、及びα粒子を混合してマイクロナノバブルを発生するバブル発生装置40が設けられているが、これに限らず例えば、後述する実施例2のように、オゾンのマイクロナノバブルを発生するバブル発生装置と、酸素(空気)及びα粒子のマイクロナノバブルを発生するバブル発生装置とが別個に設けられてもよい。また、従来型の散気装置(散気管、ディフューザー等)との併用であっても構わない。
【0063】
次に、上記実施形態の処理装置1による汚水の処理手順を
図1から
図3を用いて説明する。まず、工場2内から排出される汚水(被処理水)が原水槽4内にて一定量以上貯水されると、フロート6が所定水位を検知することで、原水ポンプ5が作動して原水槽4内の被処理水が処理槽30に移送される。すなわち、原水槽4内の被処理水は間欠的に処理槽30に移送される。
【0064】
処理槽30では、バブル供給工程によって、マイクロナノバブル化されたオゾンによるオゾン処理、及びバブルに含まれるα粒子による脱窒処理が行われる。詳述すると、強力な酸化力を有するオゾン(O3)がマイクロナノレベルの微小径に気泡化することにより、大量のOH基(OH-)が発生するとともに、被処理水に含まれる有機物を物理的に分解する。このように、オゾン(O3)によって有機物が物理的に分解されるため、後述の微生物による捕食がし易くなる。
【0065】
なお、処理槽30内のオゾン(O3)は、上記したように酸化作用を生じることで、その大部分が酸素(O2)に化学変化するが、残りは依然としてオゾンのマイクロナノバブルとして残留している(以下、残オゾンと称する)。
【0066】
また上述したオゾン処理に加え、被処理水中を移動するマイクロナノバブルに含まれるα粒子が、被処理水中の窒素化合物の窒素原子核に作用することで、被処理水の高い脱窒効果を奏するようになっている。
【0067】
図2に示されるように、処理槽30内の被処理水は、生物処理工程すなわち処理槽30内で好気性微生物を担持する菌床50,50,…と撹拌されて混合されることで、生物処理される。より詳しくは、オゾン・酸素(空気)バブル発生装置40により生成されたオゾン・酸素(空気)のマイクロナノバブルが含まれた液体が、処理槽30の下部の底面近傍に設けられたバブル吐出口30cより処理槽30内に吐出されるようになっている。
【0068】
このバブル吐出口30cは、略円筒状の処理槽30の内周壁30aの周方向に沿う方向に開口しており、吸水口30bから吸水ポンプ47によって吸水された被処理水とともに、バブル吐出口30cから吐出されたオゾン・酸素(空気)のマイクロナノバブルが、その浮力によって処理槽30の被処理水及び担体51を伴い、内周壁30aに沿って回転しながら上昇する回転上昇流を生成できるため、処理槽30内の流動性が高まると同時に、マイクロナノバブルの圧壊作用による水酸基ラジカル効果により、浮遊物質(SS)の分解が促進されるため、余剰汚泥がほとんど発生しない装置を提供することができる。なお回転上昇流は、水面近傍に達した後、続いて処理槽30の略中心部において下降する下降流を生成し、更に処理槽30の底面近傍に達した下降流は、再び回転上昇流に合流することで、処理槽30内を循環する循環流を生成する。また、吸水口30bは、バブル吐出口30cよりも高い位置に開口していることで、バブル吐出口30cから吐出したマイクロナノバブルを吸い込みやすくし、マイクロナノバブルの圧壊効率を高めることができる。
【0069】
また、このようにマイクロナノバブルが圧壊する際に、当該バブルに含まれるα粒子が被処理水中の窒素原子を含む窒素化合物に作用して脱窒効果を得るようになっている。
【0070】
ここで被処理水を原水槽4から処理槽30に移送する移送管17の導入口17aが、処理槽30の上部に設けられ、また生物処理された被処理水を排出する排出口30dが、処理槽30の下部に設けられているため、処理槽30内の被処理水を、該処理槽30の上部に位置する導入口17aから下部に位置する排出口30dに至るまでの流動の過程で確実にオゾン処理、脱窒処理及び生物処理できる。
【0071】
また導入口17aは、処理槽30上部の内周壁30a近傍に開口しているため、この導入口17aから吐出され処理槽30に移送したばかりの被処理水が、直ぐに前記した下降流に沿って下降してしまう虞を回避し、同じく内周壁30aの近傍にて回転上昇流が生成されたオゾン及び酸素のマイクロナノバブルと対向することで効率よく混合させることができる。
【0072】
次に、バブル発生装置40が発生させた気泡のそれぞれには、オゾン・酸素(空気)とともに、α粒子が含まれている。上述したようにα粒子自体の飛程距離は数十cmと短距離であるが、気泡自体が水中の長距離を移動するため、α粒子は、気中(気泡の中)を移動することなく、すなわち減衰することなく当該気泡に伴って水中を長距離にわたり移動することができる。更にα粒子は、長距離の移動を経た後に気泡の圧壊とともに被処理水に接することになる。よって、α粒子は、被処理水に含まれる窒素成分に効率良く接することができ、この結果、高い脱窒効果を奏することができる。
【0073】
次に、バブル発生装置40が発生させた直径50μm以下の気泡は最も長時間水中に滞留する気泡径となっているため、処理槽30にて滞留していた液体は、マイクロバブルを含むと同時に、酸素が多く溶け込んでおり、処理槽30内の被処理水及び菌床50,50,…に十分な酸素が供給され続けることになる。
【0074】
詳しくは、バブル発生装置40は、直径50μm以下の気泡を発生させる事が可能であることから、通常のバブリングに比べて液体に多くの酸素を溶解でき、処理槽30内の被処理水及び菌床50,50,…に十分な酸素が供給され続けることになる。前記液体は気泡が滞留された状態で被処理水及び菌床50,50,…に浸透するため、循環流による撹拌により空気と接触させるのみでは届きづらい被処理水及び菌床50,50,…の塊の内部に存在する好気性微生物に対して効果的に空気を供給することができ、好気性微生物を活性化して高い好気性分解能力を発揮させることができる。
【0075】
また、外気(空気)がバブル発生装置40により超微細な気泡として液体中に混合されるため、この空気を汚水中に長時間滞留させることができるようになり、バブル発生装置40にて混合された空気(溶存酸素)を汚水中に留まらせて、河川、水路、海域又は下水処理施設等に通じる排水管39内を好気性とすることができ、排水管39内の洗浄頻度を少なくする効果が期待できる。
【0076】
このように、処理槽30にて、バブル供給工程でオゾンによって殺菌処理された被処理水と残オゾンに対し、好気性微生物を担持した担体51を収容した処理槽30にて、生物処理工程で酸素のマイクロナノバブルを供給することで、この酸素で活性化した好気性微生物による被処理水の生物処理を効果的に行うとともに、残オゾンに付加された酸素により水酸基ラジカル及び酸素に積極的に化学変化させることで、この残オゾンを早期に低減させることができる。またこの大量に発生する水酸基ラジカル及びマイクロナノバブル発生ノズル45によるキャビテーション効果により、浮遊物質(SS)が分解されるため、余剰汚泥の発生が極端に少なくなる。また、α粒子を含むマイクロナノバブルが被処理水中を漂うことで、α粒子自体の移動がないため、α粒子が減衰することなく広範囲に作用し、脱窒効果を高めることができる。
【0077】
ここで、
図9を参照して、網状部材65を装填した導入管61の内部を通過する通気量に関する実験結果を以下に示す。この実験は、導入管61の内部に網状部材65を所定数装填して、導入管61内を通過する空気の流量(2.5L/分~10L/分)をパラメータとして、それぞれの通気量における被処理水の浄化効果を比較したものである。
【0078】
被処理水として一定濃度の脱脂粉乳の水溶液を人工的な汚水(原水)を用い、各通気量(2.5L/分、5L/分、7.5L/分及び10L/分)にて網状部材65を装填した導入管61内を通気させた空気と、一定流量(5L/分)のオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出し、各被処理水の水質を分析して比較した。分析項目は、生物化学的酸素要求量BOD、化学的酸素要求量COD、pH、総窒素T-N及び総リンT-Pである。
【0079】
図9に示されるように、通気量が2.5L/分の場合が、他の通気量(5L/分、7.5L/分及び10L/分)の場合と比較して、生物化学的酸素要求量BOD及び総窒素T-Nの顕著な減少が確認された。特に総窒素T-Nは、原水の50(mg/L)と比較して42(mg/L)と20%減少した。他の分析項目では通気量の違いによる有意な差は確認されなかった。
【0080】
したがって、導入管61内の通気量が2.5L/分の場合が、生物化学的酸素要求量BOD及び総窒素T-Nの減少が最も大きく、すなわち水質向上の最良の効果が得られた。これは導入管61内の空気の通過速度を低く抑えることで、当該空気がより多くのα粒子に接するためと考察される。
【0081】
次に、
図10を参照して、導入管61の内部に装填する網状部材65(図では触媒と称する)の装填数に関する実験結果を以下に示す。この実験は、上述した導入管61内の通気量に関する実験にて最適な通気量と評価された2.5L/分を固定の条件とし、導入管61内の網状部材65の装填数(1個~4個)をパラメータとして、それぞれの装填数における被処理水の浄化効果を比較したものである。導入管61内の網状部材65の装填態様に関し詳しくは、網状部材65を1個装填する場合は、導入管61内の略中央に配置し、網状部材65を2個装填する場合は、導入管61内の管軸方向の両端に配置し、網状部材65を3個装填する場合は、導入管61内にて一定間隔離間して等配に配置し、また網状部材65を4個装填する場合は、導入管61内に隙間なく配置した。
【0082】
被処理水として一定濃度の脱脂粉乳の水溶液を人工的な汚水(原水)を用い、各装填数(1個~4個)の網状部材65を装填した導入管61内を通気させた空気と、一定流量(5L/分)のオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出し、各被処理水の水質を分析して比較した。分析項目は、生物化学的酸素要求量BOD、化学的酸素要求量COD、pH、総窒素T-N及び総リンT-Pである。
【0083】
図10に示されるように、導入管61内に網状部材65を2個装填した場合が、他の装填数(1個、3個及び4個)の場合と比較して、総窒素T-Nの顕著な減少が確認された。他の分析項目では網状部材65の各装填数(1個~4個)の全てにおいて、生物化学的酸素要求量BODの減少が確認されたが、網状部材65の装填数の違いによる有意な差は確認されなかった。
【0084】
したがって、導入管61内に網状部材65を2個装填した場合が、総窒素T-Nの減少が最も大きく、すなわち水質向上の最良の効果が得られた。これは複数の網状部材65を導入管61内にて一定以上離間して配置したため導入管内の通気性を阻害することなくα粒子を供給できたものと考察される。
【0085】
次に、
図11を参照して、α粒子による被処理水の水質改善に関する実験結果を以下に示す。この実験は、上述した導入管61内の通気量に関する実験にて最適な通気量と評価された2.5L/分、及び導入管61内の網状部材65の装填数に関する実験にて最適な装填数と評価された2個を固定の条件とし、被処理水の浄化効果を確認したものである。
【0086】
被処理水として、産業廃水を7倍希釈した汚水(原水)を用い、網状部材65(図では触媒と称する)を2個装填した導入管61内を2.5L/分の流量で通気させたα粒子を含む空気と、一定流量(5L/分)のオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出し、各被処理水の水質を分析した。比較対象として、α粒子を含まずオゾンと空気との混合気のみからなるマイクロナノバブルを同じ被処理水中に吹き出すとともに、紫外線UVを照射した被処理水の浄化効果を確認した。分析項目は、生物化学的酸素要求量BOD、化学的酸素要求量COD、pH、浮遊物質量SS、ノルマルヘキサン抽出量n-Hex及び総窒素T-Nである。
【0087】
図11(a)に示されるように、α粒子を含む空気とオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出した場合が、α粒子を含まない空気とオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出して紫外線UVを照射した場合と比較して、生物化学的酸素要求量BOD、化学的酸素要求量COD及び総窒素T-Nにおいて顕著な減少が確認された。特に総窒素T-Nは、未処理の原水(7倍希釈)の78(mg/L)と比較して、α粒子を含む空気とオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出した場合、47(mg/L)と40%減少しており、特段の効果が得られた。
【0088】
また
図11(b)に示されるように、未処理の原水(図示左側)が茶色であったのに対し、α粒子を含む空気とオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出した場合、当該被処理水(図示右側)は無色透明となり、目視でも明らかに最良の水質改善が見られた。なお、比較対象としてα粒子を含まない空気とオゾンとの混合気のマイクロバブルを被処理水中に吹き出して紫外線UVを照射した場合、当該被処理水(図示中央)は薄黄色であった。 よって、α粒子を含むマイクロナノバブルは、α粒子を含まないマイクロナノバブルと比較して、少なくとも脱窒効果に有意に優れているという結果を得た。特にマイクロナノバブルに含まれるα粒子は、当該α粒子自体が気中を動くことなくマイクロナノバブルに追従して被処理水中を長距離移動することができ、すなわち減衰することなく長距離移動できるため、被処理水中の窒素化合物に接する機会を多く得て、高い脱窒効果を奏するものである。
【0089】
また、α粒子を含むバブルは、マイクロレベル未満の粒径の多数のマイクロナノバブルであるため、これらのバブルがより多くの表面積で被処理水の含有物に接することができ、酸素の供給効果や脱窒効果による水質浄化を高度に達成することができる。
【0090】
以下、菌床50について、
図6を参照して説明する。ここで、菌床50とは、担体51に好気性微生物及び通性嫌気性微生物を植菌したものであり、担体51とは、微生物を植菌していない状態のものを意味する。また、担体51を構成する鉱物質を原料とする合成樹脂とは、植物樹脂等の天然樹脂を除くもので、好気性微生物によって分解されないものを意味する。
【0091】
なお、担体51への植菌については、本発明に係る廃水処理装置1を稼働させることにより、自然界由来の地場の土壌菌が自然に植菌され菌床50が生成される。
【0092】
菌床50は複数の空孔52を有する鉱物質を原料とする合成樹脂からなる担体51と、担体51内に形成された複数の空孔内の少なくとも一部に、好気性微生物及び通性嫌気性微生物と、好気性微生物の活動を活発化させる所定量の酵素とを担持させることができ、微小径の粉末状に生成された活性炭58を含有して構成している。
図6は、菌床50及び担体51の構造を示す図である。鉱物質を原料とする合成樹脂からなる担体51には空孔52が形成されている。空孔52は、その少なくとも一部が他の空孔と連通したものと、他の空孔と連通していないものを含んでいる。空孔52の大きさは約50μmから約800μm程度の大きさを有し、いろいろな大きさの空孔52が担体51の中にほぼ均一に分散している。また、空孔52には酵素53が担持できるとともに粉末状の活性炭58を含有し、空孔52は好気性微生物及び通性嫌気性微生物(図示せず。)の巣となる。大きな空孔52は展着可能な酵素で満たされることはなく、後述のように撹拌作用により空孔52には汚水と空気が出入りして、好気性微生物が繁殖するのに適した環境となる。また、小さな空孔52はその空孔が酵素で満たされた状態となるため、汚水と空気が出入りはほとんどないが、少しずつ酵素が滲み出し、長期間にわたり酵素の供給源として機能する。
【0093】
空孔52は、好気性微生物の活動を活発化させる展着可能な酵素を担持できるので、酵素の働きにより好気性微生物の繁殖が促進される。担体に担持させる酵素は、汚水処理装置の設置環境、運転状況が変化しても、好気性微生物の繁殖が影響を受けないようにするために、複数の酵素を使用して、好気性微生物が繁殖できるようにしている。なお本実施例では、空孔52に上記した酵素が担持されているが、必ずしも担体51に酵素を担持させる必要はない。
【0094】
また担体51の内部、特に中心部の空孔52には、上記した好気性微生物のほか、一定量の通性嫌気性微生物が存在している。この通性嫌気性微生物は、通常の曝気水では被処理水が担体51内部まで浸透できないためほとんど活性化されることはないが、微小径の気泡からなるマイクロナノバブルの場合は水の抵抗が減って浸透性が高まり、担体51の内部まで水が浸入し易くなり、表層の好気性微生物により酸素が吸着された後、内部に存在する通性嫌気性微生物がマイクロナノバブル水に刺激されて活性化する。この結果、好気性微生物及び通性嫌気性微生物の両方が活性化し、食物連鎖(微生物同士の共食いを含む)が促進されるため、余剰な汚泥を発生させることなく、早期且つ高度な生物処理を達成することができる。また好気性微生物により硝化、嫌気性微生物による脱窒というサイクルを実現し、硝化脱窒装置の効果も併せ持つ。一例として、本発明に係る廃水処理装置を、青果物の加工工場で排出される廃水処理に適用したところ、所要動力を従来の約1/10と大幅に削減し画期的な省エネを達成するとともに、従来の問題点であった臭気を数日で解消し、且つ放流水の劇的な浄化に成功した。
【0095】
以上のように、菌床50は、鉱物質を原料とする合成樹脂により構成されているため微生物による分解がなく、担体51、延いては微生物が担持されている複数の空孔を安定して確保できることになる。また、担体の空孔内に担持した活性炭及び/又は酵素の働きによって、好気性微生物の繁殖速度を高めることができるばかりか、好気性微生物及び通性嫌気性微生物を十分繁殖させることができ、悪臭を抑えることもできる。また、好気性微生物及び通性嫌気性微生物が空孔内に担持されるため、循環流による衝撃または散水によっても流れ出ることもない。
【0096】
また上記したように、処理槽30にオゾンのマイクロナノバブルを供給することで、当該オゾンが処理槽30内の被処理水に含まれる浮遊性の有機物を効果的に分解処理することができる。特に、ナノレベルの直径を有する微小なオゾンのバブルが、処理槽30内の底部近傍に供給され周辺の有機物を分解処理し、更に被処理水中を浮上しながら漸次有機物を分解処理した後、水面に到達し、その近傍を漂う有機物を分解処理することで、水底から水面にかけて全水量に含まれる有機物に接触しながら分解処理することができる。
【0097】
また処理槽30内の被処理水に含まれる残オゾンのバブルは、処理槽30内の被処理水及び酸素バブルとともに処理槽30内の循環流の中を漂流する。ここで同じく被処理水とともに漂流する担体51が残オゾンのバブル及び酸素(空気)のバブルを集める場となり、すなわち残オゾンのバブルが担体51の空孔52に吸着されることで、オゾン分子同士が酸素分子となる化学変化が促進される。特に、
図6の詳細拡大図に示されるように、担体51の空孔52内やその周辺には活性炭58が含有されていることから、当該活性炭58のポーラス58a(空孔)内に積極的にオゾン分子O
3を集め、これらを容易に分解すなわち酸素分子O
2に化学変化させることができる。
【0098】
より詳しくは、活性炭58のポーラス58aは、概ね2nm~50nm程度のナノレベルの空孔に形成されており、このポーラス58aの内部を多くの好気性微生物が棲家として存在している。一方で、オゾンのバブルは概ね50nm~200nmであり、すなわち活性炭58のポーラス58aは、オゾンのバブルよりも小径であることから、オゾンのバブルはポーラス58aの内部まで進入することなく、活性炭58のポーラス58a周辺の外表面58bに付着することで、オゾン分子O3が酸素分子O2に化学変化する。よって、ポーラス58a内の好気性微生物は、オゾン分子O3に接することなく酸素分子O2に接し、すなわち死滅することなく豊富な酸素を得て活発に機能することになる。
【0099】
このように、処理槽30内の担体51がその空孔52内に残オゾン及び酸素のバブルを集める場となることで、残オゾンの低減・消滅を達成すると同時に、酸素バブルに残オゾンが変化した酸素分子を加えた生物処理に有効な豊富な酸素により、担体51が担持した好気性微生物の活発化を達成できる。
【0100】
以下、担体51を構成する鉱物質を原料とする合成樹脂について説明する。担体51は、少なくとも表皮部分を形状復元力に富んだ弾性体より構成している。担体の少なくとも外皮部分を形状復元力に富んだ弾性体より構成することにより、被処理水と菌床とが処理槽内における撹拌過程で、少なくとも菌床の表皮部分が菌床相互の衝突、接触により圧縮と復元とを繰り返し、菌床の空孔から水分や空気の吸排が促進され、好気性微生物の繁殖に必要な空気や水分とを菌床の空孔内に十分に供給できる。
【0101】
また、汚水処理機内では、菌床50は水にさらされると同時に、微生物の活動によって60℃近い温度となることがあり得る。さらに、好気性微生物は、通常、中性ないし弱酸性の環境で活発に活動するようになる。しかし、条件によって、有機物を分解する過程でPHが低下し、好気性微生物の活動が阻害されてしまうことがある。このような状態を防ぐために、苛性ソーダ、石灰、炭酸カルシウム等を適量、処理槽30の中に投入して、PH調整を行うことがあり、汚水処理機内はPHが大きく変化することがある。
【0102】
そこで、担体51を構成する材料としてウレタンスポンジを使用している。ウレタンスポンジは、吸水性、排水性及び耐水性に優れ、酸性環境、アルカリ性環境、高温環境でも劣化することがないため、定期的に担体を補充する必要がなくなる。
【0103】
また、担体を構成するウレタンスポンジは、その密度をある程度自由に製作することができるという特徴がある。したがって、ウレタンスポンジが、汚水を含んだ状態で浮遊物質(SS)とほぼ比重が等しくなるように製作すれば、撹拌中に菌床が浮遊物質(SS)と遊離した状態にならずに、十分接触し、浮遊物質(SS)の分解が促進されることになる。なお、ウレタンスポンジは、一例であり、ウレタンスポンジと同等の特性を有する材料であれば、使用することができる。
以下、
図2の処理槽30内での撹拌作用について説明する。
【0104】
処理槽30内にて上記した被処理水の回転上昇流が生成されると、菌床50,50,…が回転上昇流によって上方に移動され、それまで汚水に没していた菌床50は、菌床相互の衝突、接触により圧縮と復元とを受けるようになる。このような撹拌作用を繰り返し受けることで、菌床の空孔から水分や空気の吸排が促進され、好気性微生物及び通性嫌気性微生物の繁殖に必要な酸素や水分を菌床の空孔内に十分に供給できるようになる。
【0105】
このように、撹拌作用と気孔に担持した活性炭、及び酵素の働きとが相まって、菌床50に担持された好気性微生物、通性嫌気性微生物が活性化し、処理槽30の内部の被処理水に含まれる有機分が分解され、汚水が浄化されるようになっている。
【0106】
担体の形状は、
図6の略直方体だけでなく、特に図示しないが、略立方体、略球体、略円柱、管状体、略正8面体にすることもできる。また、形状の異なる担体51を混合して使用することにより、担体同志の隙間を大きく保つことができ、汚水処理槽内の通水性及び通気性をさらに改善することもできる。担体51の1辺の長さは約5mmから約10cmとして構成しているが、廃水処理装置1の各槽の容量、処理する汚水の水質(BOD,COD,SS,n-Hex)を考慮して、その大きさを決定できる。
【0107】
また、
図6においては、担体を単一、同一の鉱物質を原料とする合成樹脂から構成しているが、担体の少なくとも表皮部分を形状復元力に富んだ弾性体とし、他の部分を異なる材料から構成することもできる。たとえば、特に図示しないが、立方体の表皮部分を形状復元力に富んだ弾性体とし、コア部分を表皮部分と比重の異なる鉱物質を原料とする合成樹脂によって構成し、担体の平均比重を汚水または固形分の比重に合うように調整することもできる。また、酵素を豊富に含んだ担体でコア部分を構成し、表皮部分を形状復元力に富んだ弾性体によって被覆することで、長期にわたって好気性微生物に酵素を供給することもできる。さらに、コア部分の一部が露出させるように構成することもできる。
【0108】
以上説明した本発明によれば、処理槽30(収容槽)にてオゾンのマイクロナノバブルによって被処理水中を浮遊する有機物を殺菌処理して、更に被処理水中を漂う残オゾンのバブルを、酸素分子O2に化学変化させて残オゾンを低減できると同時に、水酸基ラジカルを豊富に生成させることで、浮遊物質(SS)や溶解性有機物の分解を促進し、当該酸素分子及び同じく担体51の活性炭58に吸着した酸素バブルにより生物処理を活性化させることができる。すなわち担体51をオゾン分解及び生物処理の反応の場として利用できる。また、α粒子を含むマイクロナノバブルが被処理水中を漂うことで、α粒子が減衰することなく広範囲に被処理水に作用し、脱窒効果を高めることができる。したがって、単一の処理槽30を使用して、オゾンによる殺菌処理と、α粒子による脱窒処理と、好気性微生物を用いた生物処理とを同時に達成することができる。またマイクロナノバブル効果により、汚水の抵抗が減って、好気性微生物のみならず担体51の内部に存在する通性嫌気性微生物をも、好気性微生物により貧酸素化されたマイクロナノバブル水の浸透により活性化し、有機物の分解を促進する。また好気性微生物が、酸素(O2)を利用して硝化し、更に微小なマイクロナノバブルにより抵抗が減ることで、担体51内の深部まで浸入した液体を通性嫌気性微生物が脱窒する。すなわちこの作用は、硝化脱窒においても有効に作用する。このことにより、担体51内での食物連鎖(微生物同士の共食いを含む)が促進され、余剰な汚泥を発生させることなく、早期且つ高度な生物処理を達成することができる。なお担体51内部の通性嫌気性微生物はマイクロナノバブルによる水の浸透性の向上により、酸素を含むマイクロナノバブルの供給量が少なくとも水との接触頻度が高まり、表層の好気性微生物により酸素が吸着された後、貧酸素な液体が浸入し、その結果、通性嫌気性微生物の活動が活発化するため、合理的な硝化脱窒を可能とし、バブル発生装置の小型化、省エネルギー化が可能となる。
【実施例2】
【0109】
次に、実施例2に係る廃水処理装置につき、
図7,8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0110】
図7に示されるように、本実施例2の廃水処理装置11は、前処理槽としてオゾン処理を行うための反応槽10と、オゾンバブル発生装置20と、収容槽としてオゾン処理、脱窒処理及び生物処理を行うための処理槽30と、オゾン・酸素(空気)及びα線のバブル発生装置40とを主に備えている。すなわち本実施例2の廃水処理装置11は、反応槽10及びオゾンバブル発生装置20が付加されている点で実施例1の廃水処理装置1と異なり、その他の構成は廃水処理装置1と同様である。
【0111】
反応槽10は、原水槽4からの被処理水が原水ポンプ5に接続された移送管7を介し導入される略円筒状の水槽であり、反応槽10内には、オゾンバブル発生装置20を構成する吸水ポンプ27と、次の処理槽30に移送するための移送ポンプ15と、水位センサとしてのフロート16が設置される。なお本実施例では反応槽10の内部容量は略2.7トンであり、すなわち上述した処理槽30は反応槽10の略20倍の内部容量を有している。また反応槽10の外部には、オゾンバブル発生装置20を構成するオゾン発生装置29が設置され、接続管26を介しマイクロナノバブル発生ノズル25に接続されている。
【0112】
次に、
図7に示されるように、オゾンバブル発生装置20について説明する。オゾンバブル発生装置20は、反応槽10の底面に配置され、液体を吸水する吸水ポンプ27と、マイクロナノバブル発生ノズル25と、反応槽10の外部に設けられたオゾン発生装置29とにより主に構成されている。この吸水ポンプ27は、その下部の吸水部27aから反応槽10内部の液体を吸水するようになっている。
【0113】
図8に示されるように、マイクロナノバブル発生ノズル25は、吸水ポンプ27から延びる接続パイプ28の先端に取付けられており、吸水ポンプ27にて吸水された液体は、マイクロナノバブル発生ノズル25に供給されて吹き出されるようになっている。
【0114】
反応槽10の外部に設置されたオゾン発生装置29によって発生し、このオゾン発生装置29に接続された吸気管26を介し吸気されたオゾンは、複数分岐した枝管24を通って圧縮部22内に噴出されるようになっている。枝管24から圧縮部22内に噴出された気泡は、超微細な気泡となって圧縮部22内の液体と混合される。そして、この超微細な気泡がオゾンのマイクロナノバブルとして、吹出部23から反応槽10内部に噴出される。
【0115】
すなわち、マイクロナノバブル発生ノズル25は、反応槽10内の液体の水面下に水没され、水中にオゾンのマイクロナノバブルを含む液体を吹き出すようになっている。
【0116】
次に、本実施例2の処理装置11による汚水の処理手順を
図7,8を用いて説明する。まず、工場2内から排出される汚水(被処理水)が原水槽4内にて一定量以上貯水されると、フロート6が所定水位を検知することで、原水ポンプ5が作動して原水槽4内の被処理水が反応槽10に移送される。すなわち、原水槽4内の被処理水は間欠的に反応槽10に移送される。
【0117】
反応槽10では、オゾン供給工程すなわちマイクロナノバブル化されたオゾンによるオゾン処理が行われる。詳述すると、強力な酸化力を有するオゾン(O3)がマイクロナノレベルの微小径に気泡化することにより、大量のOH基(OH-)が発生するとともに、被処理水に含まれる有機物を物理的に分解する。このように、オゾン(O3)によって有機物が物理的に分解されるため、処理槽30において微生物による捕食がし易くなる。
【0118】
次に、反応槽10内が一定量以上貯水されると、反応槽10に設けられたフロート16が所定水位を検知することで、移送ポンプ15が作動して、上記したように反応槽10でオゾン処理された被処理水が移送管17を介し処理槽30に移送される。すなわち、反応槽10内の被処理水は間欠的に処理槽30に移送される。なお、反応槽10内のオゾン(O3)は、上記したように酸化作用を生じることで、その大部分が酸素(O2)に化学変化するが、残りは依然としてオゾンのマイクロナノバブルとして残留しており、この残オゾンは被処理水と共に処理槽30に移送される。処理槽30では、上記した実施例1と同様に、大気中から導入管61を介しマイクロナノバブル発生ノズル45内に吸気された酸素及びα粒子を含む空気は、複数分岐した枝管24を通って圧縮部22内に噴出されるようになっている。
【0119】
なお、本実施例では、前処理槽としての反応槽10においてオゾン処理が行われているが、これに限らず、例えば凝集剤等の適宜の薬剤を添加して、被処理水中の有機物を凝集・沈殿させる等の前処理を行ってもよい。
【0120】
また、反応槽10から処理槽30に移送される被処理水に含まれる残オゾンのバブルは、処理槽30内の被処理水、酸素及びα粒子を含むバブルとともに処理槽30内の循環流の中を漂流する。ここで同じく被処理水とともに漂流する担体51が残オゾンのバブル及び酸素(空気)のバブルを集める場となり、すなわち残オゾンのバブルが担体51の空孔52に接触することで、オゾン分子同士が酸素分子となる化学変化が促進される。
【0121】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0122】
例えば、前記実施例2では、原水槽4、反応槽10、及び処理槽30の順に被処理水を移送して処理しているが、例えば原水槽4と反応槽10との間、または反応槽10と処理槽30との間に固液分離装置を介在させる等、別段の装置を付加しても構わない。
【符号の説明】
【0123】
1 廃水処理装置
2 工場
4 原水槽
5 原水ポンプ
7 移送管
10 反応槽
15 移送ポンプ
17 移送管
17a 導入口
20 オゾンバブル発生装置(オゾン発生部)
25 マイクロナノバブル発生ノズル
27 吸水ポンプ
29 オゾン発生装置
30 処理槽(収容槽)
30c バブル吐出口
30d 排出口
39 排水管
40 バブル発生装置(供給手段)
45 マイクロナノバブル発生ノズル
47 吸水ポンプ
49 オゾン発生装置
50 菌床
51 担体
52 空孔
58 活性炭(多孔質材)
58a ポーラス
61 導入管
62 開閉弁
65 網状部材(α線源部)
65a 網目
66 塗布剤(α線源部、α粒子放出剤)
66a α粒子