(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】光学式エンコーダの動作方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20240311BHJP
G01D 5/249 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
G01D5/347 110M
G01D5/249 Q
(21)【出願番号】P 2019017713
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-10-07
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518426837
【氏名又は名称】アイオロス ロボティクス コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AEOLUS ROBOTICS CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】スー, ユエ テン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, リン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-220460(JP,A)
【文献】特開2011-226965(JP,A)
【文献】独国特許発明第000010332413(DE,B3)
【文献】特開2015-45594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0051884(US,A1)
【文献】特表2004-529344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の位置を判定するための方法であって、
(a)前記物体に接続された、第1波形と関連付けられている第1コードセット、第2波形と関連付けられている第2コードセット、第3波形と関連付けられている第3コードセットおよび第4波形と関連付けられている第4コードセットを有するパターンをその上に有するコード板上の画像を取得することと、
(b)センサによって取得された前記画像を前記第1波形、前記第2波形、前記第3波形および前記第4波形へと変換することと、
(c)前記第1波形と前記第2波形との間の第1の位相差、前記第2波形と前記第3波形との間の第2の位相差、および前記第3波形と前記第4波形との間の第3の位相差を算出することと、
(d)前記第1の位相差、前記第2の位相差および前記第3の位相差を、第1の数字、第2の数字および第3の数字に変換することと、
(e)一連の前記第1の数字、前記第2の数字および前記第3の数字に基づいて、前記物体の前記位置を判定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1コードセットが複数の第1の白色部分を含み、
前記第2コードセットが複数の第2の白色部分を含み、
前記複数の第1の白色部分のそれぞれと前記複数の第2の白色部分のそれぞれとは物理的に隔てられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1コードセットが複数の第1の白色部分を含み、
前記複数の第1の白色部分は一方向に沿って配置されており、前記複数の第1の白色部分のそれぞれは前記
一方向に細長い、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本開示は、概略的には装置ならびにその位置及び移動をセンサ装置を使用して検出するための方法に関し、より詳細には、装置ならびにその位置および移動を光学式エンコーダセンサを使用して検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
光学式エンコーダは、様々な用途で有用である。例えば、アブソリュートエンコーダを、物理的な位置をそのような位置に対応する電気信号へと変換することにより、物体の位置、移動または角度を判定するために使用することが可能である。(ロボットアームなどの)比較回転機構においては、アブソリュートエンコーダが、コード板上に形成された(バーコードなどの)所定のパターンを読み取るかまたは検出するため、および回転機構の絶対位置を示す信号を生成するためのセンサを有する。しかし、アブソリュートエンコーダの老朽化または劣化のために、コード板とセンサとの間の距離が変化し、この結果、捕捉された画像に(焦点ずれやぶれなどの)ひずみまたは歪みが生じる場合がある。このことが、アブソリュートエンコーダによって検出される位置、移動または角度の精度を損なうおそれがある。
【発明の概要】
【0003】
1つ以上の実施形態においては、パターンをその上に有するコード板が提供される。前記パターンは、第1コードセットおよび第2コードセットを有する。前記第1コードセットは、第1波形と関連付けられている。前記第2コードセットは、第2波形と関連付けられている。
【0004】
1つ以上の実施形態においては、エンコーダが、板、センサ、メモリおよびプロセッサを有する。前記板は、その上にパターンを有する。前記センサは、前記パターンの一部分の画像を取得するように構成されている。前記プロセッサは、前記センサによって取得された画像を少なくとも2つの波形へと変換するように構成されている。
【0005】
1つ以上の実施形態においては、物体の位置を判定するための方法が、(a)前記物体に接続されたコード板の画像を取得することと、(b)前記センサによって取得された前記画像を少なくとも2つの波形へと変換することと、(c)前記複数の波形の位相情報を算出することと、(d)前記位相情報に基づいて前記物体の位置を判定することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の複数の局面が、添付の図面を参考としながら以下の詳細な説明を参照することで、最適に理解されよう。図面において、様々な特徴が正確な縮尺率で図示される必要はなく、これらの様々な特徴の寸法が、説明の明瞭化のために任意に拡大または縮小されていてもよいことに留意されたい。
【
図1】
図1は、本開示の幾つかの実施形態による回転可能な機構の斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の幾つかの実施形態によるディスク上のパターンの一部分の拡大図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、本開示の幾つかの実施形態による
図2Bのパターンの一部分に対応する波形を図示したものである。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、本開示の幾つかの実施形態によるシミュレーション結果を図示したものである。
【
図5】
図5は、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの動作方法を図示したものである。
【0007】
図面および発明の詳細な説明を通じ、同一のまたは同様の要素は共通の参照番号を用いて表される。本開示は、以下の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて参照することで、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本開示の複数の実施形態の構造、製造および使用を、以下に詳細に説明する。ただし、これらの実施形態が、様々な状況で具現化しうる数多くの利用可能な構想を示すものであることが理解されるべきである。以下の開示が、数多くの異なる実施形態または、様々な実施形態の異なる特徴を具現化した複数の例を述べたものであることが理解されるべきである。複数の部品及び装置の例を、以下に説明の目的のために記載する。これらは、当然のことながら、単に例示的なものであり、限定的であることは意図されていない。
【0009】
図面に図示される複数の実施形態または実施例を、以下に特定の言語を用いて開示するが、これらの実施形態または実施例が限定を意図しないことが理解されよう。開示された実施形態ならびに、この文書に開示する原理の任意の更なる適用のいかなる変更および修正も本開示の範囲に含まれることが、当業者に理解されよう。
【0010】
加えて、本開示が、様々な実施例において参照番号及び/または文字を繰り返してもよい。この繰り返しは、簡潔化および明瞭化の目的でなされ、記載される様々な実施例および/または構成間の関連性をそれ自体が規定するものではない。
【0011】
図1は、本開示の幾つかの実施形態による回転可能な機構100の斜視図である。幾つかの実施形態においては、回転可能な機構100が、ロボットアームまたはロボットアームの一部分である。回転可能な機構100は、第1端部100Aおよび、第1端部100Aと反対側の第2端部100Bを有する。回転可能な機構100は、複数のモータ110、減速歯車装置120、駆動プレート130、スクリューロッド140および関節150をさらに有する。
【0012】
減速歯車装置120は、複数のモータ110の回転数を変化させるために、回転可能な機構100の第1端部100Aに接続され、かつ複数のモータ110に取り付けられている。これらのモータ110および減速歯車装置120は、回転可能な機構100のための複数の異なる駆動体を構成する。駆動プレート130が、回転可能な機構100の第1端部100Aに回転可能に取り付けられている。スクリューロッド140が、回転可能な機構100の第1端部に接続され、回転可能な機構100の第2端部100Bが、複数のモータ110によって発生された動力を使用して関節150を駆動し、関節150を回転または移動させる。
【0013】
図2Aは、本開示の幾つかの実施形態における光学式エンコーダ200の斜視図である。幾つかの実施形態においては、光学式エンコーダ200がアブソリュートエンコーダであり、
図1の回転可能な機構の第2端部100Bに配置されていてもよい。例えば、光学式エンコーダ200が、
図1の回転可能な機構100の関節150に接続されているか、またはこれに隣接していてもよい。あるいは、光学式エンコーダ200が、任意のその他の物体、装置または機構に、その角度、移動および/または位置を検出するために接続されていてもよい。光学式エンコーダ200は、(「コード板」と称されてもよい)ディスク210、センサ220およびプロセッサ230を有する。
【0014】
ディスク210は、センサ220に隣接して配置されている。ディスク210は、その上に所定のパターンを有する。幾つかの実施形態においては、
図2Aのディスク210上のパターンのうちの点線の四角Aで囲まれた一部分の拡大図である
図2Bに示すように、前記パターンが、複数の黒色部分210aおよび複数の白色部分210bを有する。幾つかの実施形態においては、ディスク210を、プレート、フレーム、ロッドまたは任意のその他の、その上にパターンを有する好適な物体と置き換えることが可能である。
【0015】
センサ220が、ディスク210上のパターンの一部分を取得し、取得された画像をプロセッサ230に送信するように構成されている。例えば、ディスク210が、点線の四角Aで囲まれたパターンの一部分がセンサ220の捕捉領域内に配置されるように回転すると、点線の四角Aで囲まれたパターンの一部分の画像がセンサ220によって取得または捕捉される。従って、センサ220によって取得される前記パターンの画像は、ディスク210の回転に伴って変化する。幾つかの実施形態においては、センサ220が、ディスク210上のパターンの異なる複数の部分の画像を取得するためのカメラまたは光学マウスを有してもよい。
【0016】
幾つかの実施形態においては、
図2Bの画像は、センサ220によって捕捉されたパターンの一部分である。
図2Bの画像が、4つのコードセットP1、P2、P3およびP4を含む。別の複数の実施形態においては、センサ220によって捕捉された画像が、設計要件に応じて、いかなる数のコードセットを有してもよい。例えば、センサ220によって捕捉された画像が、Nが1よりも大きい整数であるN個のコードセットを有してもよい。
図2Bの4つのコードセットP1、P2、P3およびP4のそれぞれは、複数のブロック部分210aおよび複数の白色部分210bを有し、2つの隣接する白色部分210bが1つのブロック部分210aによって隔てられている。幾つかの実施形態においては、各ブロック部分210aの幅は、各白色部分210bの幅と実質的に同じである。幾つかの実施形態においては、ブロック部分210aが(「1」または「0」などの)論理値を表してもよい一方で、白色部分210bが逆の論理値を表してもよい。
【0017】
幾つかの実施形態においては、
図2Bに示すように、任意の2つの隣接するコードセットが位相差を有する。例えば、コードセットP1とコードセットP2との間の位相差φ12は、約45度であり、コードセットP2とコードセットP3との間の位相差φ23は、約135度であり、コードセットP3とコードセットP4との間の位相差φ34は、約315度である。任意の2つのコードセット間の位相差が、実施形態によって異なってもよい。
【0018】
図2Aを参照すると、プロセッサ230が、取得された画像をセンサ220から受信して、
図1の回転可能な機構100の角度および/または位置を判定するように構成されている。幾つかの実施形態においては、
図1の回転可能な機構100の角度および/または位置は、捕捉された画像の2つの隣接するコードセット間の位相差に基づいて判定される。
【0019】
幾つかの実施形態においては、
図2Bに示す画像を例に挙げると、プロセッサ230が、4つのコードセットP1、P2、P3およびP4を、
図3Aに示す(例えば正弦波または余弦波などの)対応する波形W1、W2、W3およびW4に変換するように構成されている。幾つかの実施形態においては、変換が、例えば高速フーリエ変換(FFT)または任意のその他の好適なアルゴリズムを使用して実行される。プロセッサ230が、4つのコードセットP1、P2、P3およびP4が対応する波形W1、W2、W3およびW4に変換された後に、(例えばP1とP2、P2とP3またはP3とP4などの)2つの隣接するコードセットに対応する(例えばW1とW2、W2とW3またはW3とW4などの)2つの波形間の位相差φ12、φ23またはφ34を算出するように構成されている。幾つかの実施形態においては、波形W1と波形W2との間の位相差φ12は約45度であり、波形W2と波形W3との間の位相差φ23は約135度であり、波形W3と波形W4との間の位相差φ34は約315度である。
【0020】
プロセッサ230は、次に、位相差φ12、φ23およびφ34を一連の数字または任意のその他の種類のコードへと変換するように構成されている。幾つかの実施形態においては、位相差が、Pが位相差であり、Nが対応する数字である以下の式:N=P/45に従って、対応する数字へと変換されてもよい。例えば、位相差45度が数字「1」へと変換されてもよく、位相差135度が数字「3」へと変換されてもよく、位相差315度が数字「7」へと変換されてもよい。従って、
図2Bに示すセンサ220によって捕捉された画像が、「1」、「3」および「7」を含む一連の数字(または数字「137」)へと変換されてもよい。別の複数の実施形態においては、位相差が、Pが位相差であり、Nが対応する数字であり、Mが設計要件に応じた0よりも大きい整数である以下の式:N=P/Mに基づいて、対応する数字へと変換されてもよい。
【0021】
プロセッサ230は、次に、
図1の回転可能な機構100の角度および/または位置を、数字「137」に基づき、変換テーブルを参照することによって判定するように構成されている。幾つかの実施形態においては、プロセッサ230が、一連の数字と回転可能な機構100の対応する角度および/または位置との関連性を示す変換テーブルを記憶するように構成された(RAM、フラッシュメモリおよび同等物などの)メモリを有してもよいか、またはこれに接続されている。
【0022】
別の複数の実施形態においては、プロセッサ230は、波形W1、W2、W3およびW4の(絶対位相などの)位相情報を、一連の数字または任意のその他の種類のコードへと直接に変換した後に、
図1の回転可能な機構の角度および/または位置を、これらの数字に基づき、変換テーブルを参照することによって判定するように構成されている。
【0023】
幾つかの既存のアブソリュートエンコーダにおいては、コード板がバーコードをその上に有し、アブソリュートエンコーダのカメラが、バーコードの一部分を示す画像を捕捉し、捕捉された画像をアブソリュートエンコーダのメモリ内に記憶されている画像と比較して、回転可能な機構の対応する位置または角度を判定するように構成されている。しかし、アブソリュートエンコーダの老朽化または劣化のために、コード板とセンサとの間の距離が変化し、この結果、捕捉された画像に(焦点ずれやぶれなどの)ひずみまたは歪みが生じる場合がありうる。このことが、アブソリュートエンコーダによって検出される位置、移動または角度の精度を損なうおそれがある。本開示の
図2Aおよび
図2Bの実施形態によれば、センサ220によって捕捉されたディスク210上のパターンの一部分を一連の波形へと変換し、これらの波形の位相差に基づいて、回転可能な機構の位置、移動および/または角度を判定することにより、捕捉された画像の(焦点ずれやぶれなどの)ひずみまたは歪みが、回転可能な機構の位置、移動および/または角度の判定に及ぼす影響が軽減される。例えば、焦点がずれているかまたはぶれている画像がセンサ220によって捕捉された場合に、捕捉された画像のパターンが、
図3Bに示す、各波形がノイズのために歪んだ一連の波形W1’、W2’、W3’およびW4’へと変換されてもよい。
図3Bの歪んだ波形W1’、W2’、W3’およびW4’を、各波形のノイズをキャンセルまたは除去することによって補正して
図3Aの波形とすることにより、光学式エンコーダ200によって検出された位置、移動または角度の精度を、コード板のピクセル数または解像度を増加させることなく向上させることが可能である。
【0024】
加えて、
図2Aの光学式エンコーダ200のメモリが、一連の数字と回転可能な機構100の対応する角度および/または位置との間の関連性を示す変換テーブルのみを記憶するように構成されていることから、光学式エンコーダ200のメモリに必要とされる記憶領域は、メモリが複数の画像を記憶するように構成されている既存の光学式エンコーダと比較すると、大幅に小さい。
【0025】
図4Aは、(捕捉された画像に直接に基づいて物体の位置または角度を判定する)既存のアブソリュートエンコーダおよび、(捕捉された画像から変換された波形間の位相差に基づいて物体の位置または角度を判定する)本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダ200のシミュレーション結果を図示している。
図4Aにおいて、曲線L1は光学式エンコーダ200のシミュレーション結果を示し、他方の曲線L2は既存のアブソリュートエンコーダのシミュレーション結果を示している。
図4Aに示すように、ガウスぼかしのシグマが2.6に増加すると、光学式エンコーダ200の精度は100%のままであるが、既存のアブソリュートエンコーダの精度は85.5%に低下する。
【0026】
図4Bは、(捕捉された画像に直接に基づいて物体の位置または角度を判定する)既存のアブソリュートエンコーダおよび、(捕捉された画像から変換された波形間の位相差に基づいて物体の位置または角度を判定する)本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダ200のシミュレーション結果を図示している。
図4Bにおいて、曲線L1’は光学式エンコーダ200のシミュレーション結果を示し、他方の曲線L2’は既存のアブソリュートエンコーダのシミュレーション結果を示している。
図4Bに示すように、(ノイズレベルなどの)ガウスノイズの分散が0から0.06に増加すると、光学式エンコーダ200の精度は100%のままであるが、既存のアブソリュートエンコーダの精度は99.54%に低下する。
図4Aおよび
図4Bによれば、
図2Aに示す光学式エンコーダ200を使用することで、光学式エンコーダ200によって検出される位置、移動または角度の精度が向上する。
【0027】
図5は、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの動作方法のフロー図である。幾つかの実施形態においては、
図5の方法が、
図2Aに図示する光学式エンコーダ200を動作させるために使用される。あるいは、
図5の方法が、物体の角度または位置を判定するための任意のその他の光学式エンコーダを動作させるために使用されてもよい。
【0028】
動作S50を参照すると、(
図2Aのディスク210などの)コード板上のパターンの一部分の画像が、例えば
図2Aのセンサ220によって取得される。幾つかの実施形態においては、(
図2Bに示す画像などの)取得された画像が、次の処理のためにプロセッサ230に送信されてもよい。
【0029】
動作S52を参照すると、取得された画像は、対応する波形へと変換される。例えば、
図2Bの4つのコードセットP1、P2、P3およびP4が、
図3Aの(正弦波または余弦波などの)対応する波形W1、W2、W3およびW4へと変換されてもよい。幾つかの実施形態においては、変換が、例えばFFTまたは任意のその他の好適なアルゴリズムを使用して実行される。
【0030】
幾つかの実施形態においては、焦点がずれているかまたはぶれている画像が捕捉された場合には、対応する変換された波形は、(
図3Bに示すように)ノイズのために歪められてしまう。そのような場合に、
図3Bの歪んだ波形W1’、W2’、W3’およびW4’を、各波形のノイズをキャンセルまたは除去することによって
図3Aの波形W1、W2、W3およびW4となるように補正する動作S53が実行されてもよい。
【0031】
動作S54を参照すると、2つの隣接する波形間の位相差が算出される。例えば、
図3Aに示すように、(「W1とW2」、「W2とW3」または「W3とW4」などの)2つの隣接する波形間の位相差φ12、φ23またはφ34が、例えばプロセッサ230によって算出される。
【0032】
動作S56を参照すると、これらの位相差が、一連の数字または任意のその他の種類のコードへと変換される。幾つかの実施形態においては、各位相差が、Pが位相差であり、Nが対応する数字である以下の式:N=P/45に従って、対応する数字へと変換されてもよい。例えば、
図3Aに示すように、(それぞれ45度、135度および315度である)位相差φ12、φ23およびφ34が、数字「1」、「3」および「7」(または数字「137」へと変換されてもよい。別の複数の実施形態においては、位相差が、Pが位相差であり、Nが対応する数字であり、Mが設計要件に応じた0よりも大きい整数である以下の式:N=P/Mに基づいて、対応する数字へと変換されてもよい。
【0033】
動作S58を参照すると、光学式エンコーダに接続された物体の角度および/または位置が、数字(またはコード)に基づき、例えば、一連の数字またはコードならびに、対応する前記物体の角度および/または位置に関する情報を記録している変換テーブルを参照することによって判定される。
【0034】
別の複数の実施形態においては、波形W1、W2、W3およびW4の(絶対位相などの)位相情報が、一連の数字または任意のその他の種類のコードへと変換されてもよく、次に、光学式エンコーダに接続された物体の角度および/または位置が、これらの数字(またはコード)に基づき、例えば変換テーブルを参照することによって判定される。
【0035】
図5の実施形態によれば、取得された画像を一連の波形へと変換し、これらの波形の位相差に基づいて、回転可能な機構の位置、移動および/または角度を判定することにより、捕捉された画像の(焦点ずれやぶれなどの)ひずみまたは歪みが、物体の位置、移動および/または角度の判定に及ぼす影響が軽減され、この結果、光学式エンコーダによって検出される位置、移動および/または角度の精度が、コード板の画素数または解像度を増加させることなく向上される。
【0036】
ここで使用される「約」、「実質的に」、「実質的な」および「概ね」という用語は、微小な差異を記載し、これを説明するために用いられる。これらの用語は、ある事象または状況と組み合わせて用いられる場合に、前記事象または状況が正確に発生する場合とともに、前記事象または状況がきわめて近似的に発生する場合も指しうる。例えば、これらの用語は、数値と組み合わせて用いられる場合に、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、その数値の±10%以内の差異の範囲を指してもよい。例えば、2つの数値の間の差が、これらの値の平均の、例えば±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、±10%以内である場合に、これらの値が「実質的に」または「概ね」同一であるかまたは等しいとみなされてもよい。例えば、「実質的に」平行であることが、0°に対する角度差の範囲が、例えば±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、±10%以内であることを指してもよい。例えば、「実質的に」垂直であることが、90°に対する角度差の範囲が、例えば±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、±10%以内であることを指してもよい。
【0037】
ここで使用される単数を表す用語「a」、「an」および「the」は、別段の明示がなされていない限り、複数の指示対象を含む。幾つかの実施形態の記載においては、別の部品「の上」または「上」に設けられている部品は、前者の部品が後者の部品に(物理的に接触しているなど)直接に接している場合とともに、前者の部品と後者の部品との間に1つ以上の介在する部品が配置されている場合をも包含しうる。
【0038】
本開示を、その具体的な実施形態を参照しながら説明および例示してきたが、これらの説明および例示は、本開示を限定するものではない。様々な変更を加えることが可能であり、同等の複数の部品を、実施形態において、添付の請求項に定める本開示の精神および範囲から逸脱することなく置き換えることが可能であることが当業者に明確に理解されよう。図面が正確な縮尺率である必要はない。本開示の描画と実際の装置との間に、製造工程における不確定要素などによる差があってもよい。具体的に例示されていない本開示のその他の実施形態が存在しうる。明細書及び図面は、限定的であるよりも例示的であることを意図されている。特定の状況、材料、物質の組成、方法またはプロセスを本開示の目的、精神および範囲に適合させるための修正を行うことが可能である。そのような修正はすべて、添付の請求項の範囲に含まれることを意図されている。ここに開示する複数の方法は、特定の順序で実施される特定の動作と関連させて記載されているが、これらの方法が、組み合わせられ、分割され、または並べ替えられて、本開示の教示から逸脱することなく同等な方法を構成することが可能である。従って、ここに特に指定しない限り、動作の順序および組み合わせは、本開示の限定事項ではない。