IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 協同組合AQUESの特許一覧

特許7450908金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置
<>
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図1
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図2
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図3
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図4
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図5
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図6
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図7
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図8
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図9
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図10
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図11
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図12
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図13
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図14
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図15
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図16
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図17
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図18
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図19
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図20
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図21
  • 特許-金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240311BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20240311BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240311BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
A01G31/00 601A
C02F1/58 R
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019192531
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021065833
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】514157320
【氏名又は名称】協同組合AQUES
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】堤 博文
(72)【発明者】
【氏名】服部 勝
(72)【発明者】
【氏名】大石 和久
(72)【発明者】
【氏名】丸井 五雄
(72)【発明者】
【氏名】八木 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢一
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-316159(JP,A)
【文献】特開2003-038409(JP,A)
【文献】特開2007-203138(JP,A)
【文献】特開2000-015260(JP,A)
【文献】特開昭63-296629(JP,A)
【文献】特開2004-097951(JP,A)
【文献】特開2013-091025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 - 1/48
1/58 - 1/64
C25B 1/00 - 9/77
13/00 - 15/08
B01J 10/00 - 12/02
14/00 - 19/32
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中において、
上層域の水を食塩に接触させて濃塩水を作成し、
上記濃塩水を上記水との比重差によって沈降・流下させ、
上記水の一部を上記食塩を迂回して上記沈降・流下させた濃塩水まで希釈水として導き上記濃塩水を希釈して希釈塩水を作成し、
上記希釈塩水を電極存在域に沈降・流下させ、
電極を構成する金属から金属イオンを溶出させるようにしたことを特徴とする金属イオン溶出方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属イオン溶出方法において、
上記電極間に電位差を与えるようにしたことを特徴とする金属イオン溶出方法。
【請求項3】
請求項2記載の金属イオン溶出方法において、
上記電位差の供給の有無を切り替えるようにしたことを特徴とする金属イオン溶出方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載の金属イオン溶出方法において、
上記濃塩水の沈降・流下量を所定量に絞るようにしたことを特徴とする金属イオン溶出方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の金属イオン溶出方方法において、
上記希釈水の量を所定量に規制するようにしたことを特徴とする金属イオン溶出方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに記載の金属イオン溶出方法において、
上記金属は鉄(Fe)又はカリウム(K)又はカルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)又はマンガン(Mn)又は亜鉛(Zn)又は銅(Cu)であり上記金属イオンは鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)であることを特徴とする金属イオン溶出方法。
【請求項7】
請求項6記載の金属イオン溶出方法により溶出された鉄イオン(Fe2+)を下層域の水中に放出・拡散させて水中のリン酸イオンと反応させるようにしたことを特徴とする水処理方法。
【請求項8】
請求項6記載の金属イオン溶出方法により溶出された鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)を加えることにより植物の生育を促すようにしたことを特徴とする植物栽培方法。
【請求項9】
水中に浸漬され上層域の水を導入する水導入部と、
上記水導入部の下方に配置され食塩を貯留するとともに上記水導入部を介して導入された水によって濃塩水を作成する食塩貯留部と、
上記食塩貯留部の下方に配置され上記食塩貯留部で作成された濃塩水を上記水導入部から上記食塩貯留部を迂回して導入された水により希釈して希釈塩水を作成する塩濃度調整部と、
上記塩濃度調整部の下方に配置され上記希釈塩水下において金属イオンを溶出させる電極部と、
を具備したことを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項10】
請求項9記載の金属イオン溶出装置において、
上記電極部の電極間に電位差を与える電源部が設けられていることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項11】
請求項10記載の金属イオン溶出装置において、
上記電源部による電源の供給の有無を切替スイッチにより切り替えるようにしたことを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項12】
請求項9~請求項11の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、
上記食塩貯留部には上記塩濃度調整部への上記濃塩水の沈降・流下量を絞る狭窄部が設けられていることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項13】
請求項12記載の金属イオン溶出装置において、
上記狭窄部はノズルであることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項14】
請求項12記載の金属イオン溶出装置において、
上記狭窄部は多孔質部材であることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項15】
請求項14記載の金属イオン溶出装置において、
上記多孔質部材は寒天であることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項16】
請求項12~請求項15の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、
上記塩濃度調整部には上記水による希釈を促す濃塩水流下・沈降抑制部が設けられていて、この濃塩水流下・沈降抑制部は上記狭窄部の真下に設けられた底板とこの底板の周囲に設けられた貫通孔を備えていて、上記狭窄部から流出する濃塩水の上記電極部への直接的な流下・沈降を上記底板によって規制しこの底板を迂回して上記貫通孔より流下させることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項17】
請求項9~請求項16の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、
上記電極部の下方に設けられ上記溶出された金属イオンを下層域の水に放出する金属イオン放出部が設けられていることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項18】
請求項17記載の金属イオン溶出装置において、
上記金属イオン放出部にはメッシュ部材が設置されていることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項19】
請求項17又は請求項18記載の金属イオン溶出装置において、
上記電極部の一方は炭素粉末層とメッシュを交互に積層させて構成されており上記電極部の他方は陽極袋内に金属粉を充填させて構成されていることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項20】
請求項19記載の金属イオン溶出装置において、
上記金属は鉄(Fe)又はカリウム(K)又はカルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)又はマンガン(Mn)又は亜鉛(Zn)又は銅(Cu)であり上記金属イオンは鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)であることを特徴とする金属イオン溶出装置。
【請求項21】
請求項20記載の金属イオン溶出装置を水中に浸漬させた状態で設置し、溶出された鉄イオン(Fe2+)を上記金属イオン放出部から下層域の水中に放出・拡散させて水中のリン酸イオンと反応させるようにしたことを特徴とする水処理装置。
【請求項22】
請求項20記載の金属イオン溶出装置により溶出された鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)を加えることにより植物の生育を促すようにしたことを特徴とする植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄イオン(Fe2+)等の金属イオンを溶出させる金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置に係り、特に、鉄イオン(Fe2+)等の金属イオンを効率良く溶出させることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
金属イオン、例えば、鉄イオン(Fe2+)を利用した水処理方法と水処理装置を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。特許文献1に記載された藻類抑制剤とその収容ケース・敷設器具は、概略次のような構成となっている。まず、藻類抑制剤は酸化鉄を還元した還元鉄である。上記藻類抑制剤を透水性の容器に入れ、この透水性の容器を、例えば、メッシュ状の固定容器に収容する。そして、この固定容器を例えば池の水中に設置する。このとき、上記藻類抑制剤から鉄イオン(Fe2+)が溶出され、この鉄イオン(Fe2+)が水中のリン酸イオン(PO 3-)と反応し、上記水中からリン酸イオン(PO 3-)が除去され、例えば、アオコ等の藻類の発生が抑制される。
尚、特許文献1は本件特許出願人によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-2544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では次のような問題があった。
すなわち、従来の場合には、単に藻類抑制剤を水中に放置しておくだけであるので、鉄イオン(Fe2+)の溶出が不充分であり、その結果、水中のリン酸イオン(PO 3-)を効率良く除去することができないという問題があった。
尚、鉄イオン(Fe2+)以外の金属イオンを別の目的・用途で溶出させる場合についても同様の問題があった。
【0005】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、金属イオンを効率良く溶出させることが可能なイオン溶出方法とイオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による金属イオン溶出方法は、水中において、上層域の水を食塩に接触させて濃塩水を作成し、上記濃塩水を上記水との比重差によって沈降・流下させ、上記水の一部を上記食塩を迂回して上記沈降・流下させた濃塩水まで希釈水として導き上記濃塩水を希釈して希釈塩水を作成し、上記希釈塩水を電極存在域に沈降・流下させ、電極を構成する金属から金属イオンを溶出させるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2による金属イオン溶出方法は、請求項1記載の金属イオン溶出方法において、上記電極間に電位差を与えるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3による金属イオン溶出方法は、請求項2記載の金属イオン溶出方法において、上記電位差の供給の有無を切り替えるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項4による金属イオン溶出方法は、請求項1~請求項3の何れかに記載の金属イオン溶出方法において、上記濃塩水の沈降・流下量を所定量に絞るようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項5による金属イオン溶出方法は、請求項1~請求項4の何れかに記載の金属イオン溶出方方法において、上記希釈水の量を所定量に規制するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項6による金属イオン溶出方法は、請求項1~請求項5の何れかに記載の金属イオン溶出方法において、上記金属は鉄(Fe)又はカリウム(K)又はカルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)又はマンガン(Mn)又は亜鉛(Zn)又は銅(Cu)であり上記金属イオンは鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)であることを特徴とするものである。
又、請求項7による水処理方法は、請求項6記載の金属イオン溶出方法により溶出された鉄イオン(Fe2+)を下層域の水中に放出・拡散させて水中のリン酸イオンと反応させるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項8による植物栽培方法は、請求項6記載の金属イオン溶出方法により溶出された鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)を加えることにより植物の生育を促すようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項9による金属イオン溶出装置は、水中に浸漬され上層域の水を導入する水導入部と、上記水導入部の下方に配置され食塩を貯留するとともに上記水導入部を介して導入された水によって濃塩水を作成する食塩貯留部と、上記食塩貯留部の下方に配置され上記食塩貯留部で作成された濃塩水を上記水導入部から上記食塩貯留部を迂回して導入された水により希釈して希釈塩水を作成する塩濃度調整部と、上記塩濃度調整部の下方に配置され上記希釈塩水下において金属イオンを溶出させる電極部と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項10による金属イオン溶出装置は、請求項9記載の金属イオン溶出装置において、上記電極部の電極間に電位差を与える電源部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項11による金属イオン溶出装置は、請求項10記載の金属イオン溶出装置において、上記電源部による電源の供給の有無を切替スイッチにより切り替えるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項12による金属イオン溶出装置は、請求項9~請求項11の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記食塩貯留部には上記塩濃度調整部への上記濃塩水の沈降・流下量を絞る狭窄部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項13による金属イオン溶出装置は、請求項12記載の金属イオン溶出装置において、上記狭窄部はノズルであることを特徴とするものである。
又、請求項14による金属イオン溶出装置は、請求項12記載の金属イオン溶出装置において、上記狭窄部は多孔質部材であることを特徴とするものである。
又、請求項15による金属イオン溶出装置は、請求項14記載の金属イオン溶出装置において、上記多孔質部材は寒天であることを特徴とするものである。
又、請求項16による金属イオン溶出装置は、請求項12~請求項15の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記塩濃度調整部には上記水による希釈を促す濃塩水流下・沈降抑制部が設けられていて、この濃塩水流下・沈降抑制部は底板とこの底板の周囲に設けられた貫通孔から構成されていて、上記狭窄部から流出する濃塩水の上記電極部への直接的な流下・沈降を上記底板によって規制しこの底板を迂回して上記貫通孔より流下させることを特徴とするものである。
又、請求項17による金属イオン溶出装置は、請求項9~請求項16の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記電極部の下方に設けられ上記溶出された金属イオンを下層域の水に放出する金属イオン放出部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項18による金属イオン溶出装置は、請求項17記載の金属イオン溶出装置において、上記金属イオン放出部にはメッシュ部材が設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項19による金属イオン溶出装置は、請求項17又は請求項18記載の金属イオン溶出装置において、上記電極部の一方は炭素粉末層とメッシュを交互に積層させて構成されており上記電極部の他方は陽極袋内に金属粉を充填させて構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項20による金属イオン溶出装置は、請求項19記載の金属イオン溶出装置において、上記金属は鉄(Fe)又はカリウム(K)又はカルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)又はマンガン(Mn)又は亜鉛(Zn)又は銅(Cu)であり上記金属イオンは鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)であることを特徴とするものである。
又、請求項21による水処理装置は、請求項20記載の金属イオン溶出装置を水中に浸漬させた状態で設置し、溶出された鉄イオン(Fe2+)を上記金属イオン放出部から下層域の水中に放出・拡散させて水中のリン酸イオンと反応させるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項22による植物栽培装置は、請求項20記載の金属イオン溶出装置により溶出された鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)を加えることにより植物の生育を促すようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、本願発明の請求項1記載の金属イオン溶出方法によると、水中において、上層域の水を食塩に接触させて濃塩水を作成し、上記濃塩水を上記水との比重差によって沈降・流下させ、上記水の一部を上記食塩を迂回して上記沈降・流下させた濃塩水まで希釈水として導き上記濃塩水を希釈して希釈塩水を作成し、上記希釈塩水を電極存在域に沈降・流下させ、電極を構成する金属から金属イオンを溶出させるようにしたので、金属イオンを効率良く溶出させることができる。
又、請求項2による金属イオン溶出方法によると、請求項1記載の金属イオン溶出方法において、上記電極間に電位差を与えるようにしたので、金属イオンをさらに効率良く溶出させることができる。
又、請求項3による金属イオン溶出方法によると、請求項2記載の金属イオン溶出方法において、上記電位差の供給の有無を切り替えるようにしたので、金属イオンをさらに効率良く溶出させることができる。
又、請求項4による金属イオン溶出方法によると、請求項1~請求項3の何れかに記載の金属イオン溶出方法において、上記濃塩水の沈降・流下量を所定量に絞るようにしたので、所定濃度の希釈塩水を確実に作成することができ上記効果を確実なものとすることができる。
又、請求項5による金属イオン溶出方法によると、請求項1~請求項4の何れかに記載の金属イオン溶出方方法において、上記希釈水の量を所定量に規制するようにしたので、所定濃度の希釈塩水を確実に作成することができ上記効果を確実なものとすることができる。
又、請求項6による金属イオン溶出方法によると、請求項1~請求項5の何れかに記載の金属イオン溶出方法において、上記金属は鉄(Fe)又はカリウム(K)又はカルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)又はマンガン(Mn)又は亜鉛(Zn)又は銅(Cu)であり上記金属イオンは鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)であるので、様々な用途に応じて最適な金属イオンを効率良く溶出させることができる。
又、請求項7による水処理方法によると、請求項6記載の金属イオン溶出方法により溶出された鉄イオン(Fe2+)を下層域の水中に放出・拡散させて水中のリン酸イオンと反応させるようにしたので、水中のリン酸イオンを効率良く除去できる。
又、請求項8による植物栽培方法によると、請求項6記載の金属イオン溶出方法により溶出された鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)を加えることにより植物の栽培を促すようにしたので、植物を効率良く栽培することができる。
又、請求項9による金属イオン溶出装置によると、水中に浸漬され上層域の水を導入する水導入部と、上記水導入部の下方に配置され食塩を貯留するとともに上記水導入部を介して導入された水によって濃塩水を作成する食塩貯留部と、上記食塩貯留部の下方に配置され上記食塩貯留部で作成された濃塩水を上記水導入部から上記食塩貯留部を迂回して導入された水により希釈して希釈塩水を作成する塩濃度調整部と、上記塩濃度調整部の下方に配置され上記希釈塩水下において金属イオンを溶出させる電極部と、を具備した構成になっているので、金属イオンを効率良く溶出させることができる。
又、請求項10による金属イオン溶出装置によると、請求項9記載の金属イオン溶出装置において、上記電極部の電極間に電位差を与える電源部が設けられているので、金属イオンをさらに効率良く溶出させることができる。
又、請求項11による金属イオン溶出装置によると、請求項10記載の金属イオン溶出装置において、上記電源部による電源の供給の有無を切替スイッチにより切り替えるようにしたので、金属イオンをさらに効率良く溶出させることができる。
又、請求項12による金属イオン溶出装置によると、請求項9~請求項11の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記食塩貯留部には上記塩濃度調整部への上記濃塩水の沈降・流下量を絞る狭窄部が設けられているので、所定濃度の希釈塩水を確実に得ることができる。
又、請求項13による金属イオン溶出装置によると、請求項12記載の金属イオン溶出装置において、上記狭窄部はノズルであるので、所定濃度の希釈塩水を確実に得ることができる。
又、請求項14による金属イオン溶出装置によると、請求項12記載の金属イオン溶出装置において、上記狭窄部は多孔質部材であるので、所定濃度の希釈塩水を確実に得ることができる。
又、請求項15による金属イオン溶出装置によると、請求項14記載の金属イオン溶出装置において、上記多孔質部材は寒天であるので、所定濃度の希釈塩水を確実に得ることができる。
又、請求項16による金属イオン溶出装置によると、請求項9~請求項15の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記塩濃度調整部には上記狭窄部から流出する濃塩水の上記電極部への直接的な流下・沈降を規制して上記希釈水による希釈を促す濃塩水流下・沈降抑制部が設けられているので、所定濃度の希釈塩水を確実に得ることができる。
又、請求項17による金属イオン溶出装置によると、請求項9~請求項16の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記溶出された金属イオンを上記下層域の水に放出する金属イオン放出部が設けられているので、金属イオンを効率良く放出することができる。
又、請求項18による金属イオン溶出装置によると、請求項17記載の金属イオン溶出装置において、上記金属イオン放出部にはメッシュ部材が設置されているので、下層の水の不必要な流入・対流を防止することができる。
又、請求項19による金属イオン溶出装置によると、請求項9~請求項18の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記電極部の一方は炭素粉末から構成されており上記電極部の他方は金属粉から構成されているので、金属イオンを効率良く溶出させることができる。
又、請求項20による金属イオン溶出装置によると、請求項9~請求項19の何れかに記載の金属イオン溶出装置において、上記金属は鉄(Fe)又はカリウム(K)又はカルシウム(Ca)又はマグネシウム(Mg)又はマンガン(Mn)又は亜鉛(Zn)又は銅(Cu)であり上記金属イオンは鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)であるので、用途に応じて最適な金属イオンを溶出させることができる。
又、請求項21による水処理装置によると、請求項20記載の金属イオン溶出装置により溶出された鉄イオン(Fe2+)を上記金属イオン放出部から下層域の水中に放出・拡散させて水中のリン酸イオンと反応させるようにしたので、水中のリン酸イオンを効率よく除去できる。
又、請求項22による植物栽培装置によると、請求項20記載の金属イオン溶出装置により溶出された鉄イオン(Fe2+)又はカリウムイオン(K+)又はカルシウムイオン(Ca2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)又は亜鉛イオン(Zn2+)又は銅イオン(Cu2+)を加えることにより植物の栽培を促すようにしたので、植物を効率良く栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、水処理装置の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、水処理装置の平面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図2のIII-III断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、架台の水処理装置設置部を示す斜視図である。
図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、被処理水導入部を示す斜視図である。
図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、天板を外した状態の被処理水導入部を示す斜視図である。
図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、希釈塩水作成部を上側から視た斜視図である。
図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3のVIII部の拡大図である。
図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、希釈塩水作成部を下側から視た斜視図である。
図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、希釈塩水作成部の分解斜視図である。」
図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図7のXI-XI断面図である。
図12】本発明の第1の実施の形態を示す図で、電極部の陽極部を示す斜視図である。
図13】本発明の第1の実施の形態を示す図で、電極部の陽極部の分解斜視図である。
図14】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3のXIV部の拡大図である。
図15】本発明の第1の実施の形態を示す図で、電極部の陰極部を示す斜視図である。
図16】本発明の第1の実施の形態を示す図で、電極部の陰極部の分解斜視図である。
図17】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3のXVII部の拡大図である。
図18】本発明の第1の実施の形態を示す図で、鉄イオン放出部を示す斜視図である。
図19】本発明の第1の実施の形態を示す図で、鉄イオン放出部の分解斜視図である。
図20】本発明の第1の実施の形態を示す図で、電極部での化学反応を説明するための図である。
図21】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3のXXI部分の拡大図である。
図22】本発明の第2の実施の形態を示す図で、電極部での化学反応を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1乃至図21を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。この第1の実施の形態は本願発明を水処理装置に適用した例を示すものである。
この第1の実施の形態による水処理装置1は、図1乃至図3に示すように、架台3を介して、例えば、池或いはお堀の所定場所において被処理水中に浸漬された状態で設置される。上記架台3は、4本の支柱7、7、7、7と、水処理装置設置部9とから構成されている。上記水処理装置設置部9は逆器形状をなしていて、図3図4に示すように、下面側開口部11と上面側開口部13が形成されている。上記上面側開口部13の四隅であって外縁部には、上記水処理放置1を位置決めする為の4個の水処理装置位置決め部材15、15、15、15が設置されている。図1に示すように、上記水処理装置設置部9の下側であって上記支柱7、7、7、7間には梁部材17、17、17、17が設置されている。
【0010】
上記水処理装置1は、被処理水導入部21と、この被処理水導入部21の下側に設置された希釈塩水作成部23と、この希釈塩水作成部23の下側に設置された電極部25と、この電極部25の下側に設置された鉄イオン放出部27とから構成されている。上記希釈塩水作成部23は、食塩貯留部29と、塩濃度調整部31とから構成されている。
以下、各部の構成を順次詳細に説明する。
【0011】
まず、上記被処理水導入部21は、図5図6に示すように、被処理水導入部本体33と天板34とから構成されている。上記被処理水導入部本体33の四方の側面には第1フィルタ部35、35、35、35がそれぞれ設置されている。
尚、図6は天板34を外した状態の被処理水導入部21を示している。
【0012】
上記第1フィルタ部35は、図8に示すように、樹脂製の粗い網状のメッシュ部材37、37によって不織布からなるフィルタ部材39を挟んだ構成になっている。上記被処理水導入部本体33の底面には第2フィルタ部41が設置されている。この第2フィルタ部41も、樹脂製のメッシュ部材37、37によって不織布からなるフィルタ部材39を挟んだ構成になっている。被処理水は、上記第1フィルタ部35、35、35、35を介して、上記被処理水導入部本体33内に導入され、上記第2フィルタ部41を介して上記希釈塩水作成部23側に流下される。
【0013】
又、図6に示すように、上記被処理水導入部本体33の一側面の底面側には、希釈水導入溝43、43が形成されている。上記第1フィルタ部35、35、35、35を介して導入された被処理水の一部は、これら希釈水導入溝43、43を介して別ルートで流下し、上記食塩貯留部29を迂回して上記塩濃度調整部31に希釈水として導入される。
【0014】
上記希釈水作成部23は、図7乃至図9に示すように、外筐42を備えていて、図8に示すように、この外筐42の内側には中空の食塩貯留部29が設置されている。上記食塩貯留部29の図8中下側の空間が上記塩濃度調整部31であり、上記食塩貯留部29の図8中左側の隙間が希釈用水導入部47となっている。上記被処理水導入部21から導入された被処理水は、上記食塩貯留部29内に導入されるとともに、その一部は上記希釈水導入溝43、43を介して上記希釈水導入部47内にも導入される。
【0015】
上記食塩貯留部29内には、図8図10に示すように、食塩載置部材51が設置されていて、この食塩載置部材51の上に不織布53を介して食塩55が設置されている。上記食塩載置部材51の下側には第1分散用仕切り部材57が設置されていて、上記第1分散用仕切り部材57の下側には第2分散用仕切り部材59が設置されている。
【0016】
上記食塩載置部材51には、図10に示すように、例えば、196個(14×14個)の貫通孔61が形成されている。又、上記第1分散用仕切り部材57の四隅には上記貫通孔61より小さい貫通孔63、63、63、63が形成されている。又、上記第2分散用仕切り部材59の四辺の中央には上記貫通孔63と同程度の大きさの貫通孔65、65、65、65が形成されている。又、上記食塩載置部材51、第1分散用仕切り部材57、第2分散用仕切り部材59は何れも下側の全面が開口された逆器形状をなしている。
【0017】
又、上記食塩貯留部29の下側には、狭窄部としての4個の濃塩水ノズル67、67、67、67が設けられている。この濃塩水ノズル67の内部には、上記食塩貯留部29と上記塩濃度調整部31とを連絡するノズル孔69が形成されている。上記ノズル孔69は先端側が縮径されていて吐出口71の直径は、例えば、0.2mmとなっている。
【0018】
上記食塩貯留部29に被処理水が導入されると、上記食塩55が上記被処理水によって溶解され、例えば、飽和状態の(例えば、37重量%程度の)濃塩水73が作成される。この濃塩水73は、上記不織布53、上記食塩載置部材51の貫通孔61、上記第1分散用仕切り部材57の貫通孔63、上記第2分散用仕切り部材59の貫通孔65を介して、上記濃塩水ノズル67内に流下していき、上記濃塩水ノズル67の吐出口71を介して、上記塩濃度調整部31内に流下される。すなわち、上記第1分散用仕切り部材57、上記第2分散用仕切り部材59、及び、上記濃塩水ノズル67によって沈降・流下量抑制部70が構成されていて、上記濃塩水73が上記塩濃度調整部31内に沈降・流下される量が抑制される。
【0019】
又、上記食塩55の上側には食塩押圧板74が設置されていて、この食塩押圧板74の重量により上記食塩55が適度に押圧されて溶解される。上記食塩押圧板74には、図10に示すように、複数の貫通孔74aが形成されていて被処理水の流下は許容される。
【0020】
尚、上記第1分散用仕切り部材57の貫通孔63と上記第2分散用仕切り部材59の貫通孔65はオフセットされているため、上記濃塩水73が上記第1分散用仕切り部材57と第2分散用仕切り部材59との間に拡散され濃度が均一になる。
【0021】
上記濃塩水ノズル67、67、67、67の下方には、図3図14に示すように、濃塩水流下・沈降抑制部77が設置されている。この濃塩水流下・沈降抑制部77は、図12乃至図14に示すように、逆器形状をなしていて下面側の全面が開口され上面側には複数の貫通孔79が形成された中空形状の部材である。又、濃塩水流下・沈降抑制部77の上面であって、上記4個の濃塩水ノズル67、67、67、67の下方には、上記濃塩水ノズル67と略同径の4個の貫通孔81、81、81、81がそれぞれ形成されている。上記貫通孔81、81、81、81のそれぞれには筒状部材83、83、83、83がそれぞれ挿入されている。これら筒状部材83、83、83、83の下端側の開口部は底板85、85、85、85によってそれぞれ閉塞されている。上記濃塩水ノズル67、67、67、67から流下した濃塩水は、上記底板85、85、85、85上に流下し、上記筒状部材83、83、83、83の縁を越流して上記濃塩水流下・沈降抑制部77上に流入する。上記濃塩水流下・沈降抑制部77上に流入した濃塩水は上記濃塩水流下・沈降抑制部77の複数個の貫通孔79を介して流下する。
尚、上記貫通孔79は、図中では上記濃塩水流下・沈降抑制部77の上面の一部に表示されているが、実際は、上記濃塩水流下・沈降抑制部77の上面の全体に形成されている。
【0022】
又、図8に示すように、上記食塩貯留部29を通過する流路とは別に、上記希釈水導入部47を介して、被処理水の一部が上記塩濃度調整部31内に導入される。上記塩濃度調整部31内では、上記被処理水によって上記濃塩水73が希釈され、例えば、1重量%の希釈塩水75が作成される。
【0023】
図8図10図11に示すように、上記希釈用水導入部47の上側には、希釈水導入部縮小部材87が設置されている。この希釈水導入部縮小部材87は、上端板状部材89と三角形板状部材91、93、95とから構成されている。上記上端板状部材89には希釈水導入孔97、97が形成されていて、この希釈水導入孔97、97の径は、例えば、3mmに設定されている。上記希釈水導入孔97、97は上記三角形板状部材91と三角形板状部材93との間、三角形板状部材93と三角形板状部材95との間にそれぞれ形成されている。そして、既に説明した被処理水導入部本体33の側面の底面側の希釈水導入溝43、43を介して導入された被処理水の一部が、上記希釈水導入孔97、97、上記三角形板状部材91と三角形板状部材93との間、三角形板状部材93と三角形板状部材95との間を介して上記塩濃度調整部31内に導入される。
【0024】
尚、上記三角形板状部材91と三角形板状部材93との間、三角形板状部材93と三角形板状部材95との間は下に向かって徐々に広くなるように構成されているので、上記希釈水導入孔97、97を介して流入した被処理水は下方に向かって効果的に拡散される。一方、上記希釈水導入部47の図11中下側から入り込んだ気体は上記希釈水導入孔97、97に向かって集まり希釈水導入孔97、97を介して排出される。
【0025】
上記電極部25は、図3図17に示すように、陰極部101と陽極部103とから構成されている。まず、上記陰極部101の構成から説明する。図12図13に示すように、外筐115があり、この外筐115の内側であって底部には支持板117が設置されている。この支持板117には、略四角形の貫通孔119が複数個(この実施の形態の場合には3×3の9個)形成されている。上記外筐115内であって上記支持板117の上にはメッシュ部材137と不織布139を介して内枠121が設置されている。上記メッシュ部材137は前記メッシュ部材37と同様の樹脂製の粗めの網状部材である。この内枠121内には、陰極123が収容されている。この陰極123は炭素粉末層129、131、133、135と3枚のニッケル製メッシュ124、125、127を交互に積層して図示しないボルトにより固定した構成になっている。
【0026】
又、上記ボルトには図示しない導線が連結されていてこの導線は上記外筐115に設置された端子138に連結されている。上記端子138は上記外筐115を内外に貫通するように設置されている。又、上記陰極123と上記濃塩水流下・沈降抑制部77との間には、上記支持板117と同様の構成の支持板140が設置されている。
【0027】
上記陰極部101の下側に上記陽極部103が設置されている。図15図16に示すように、まず、外筐141がある。この外筐141内には陽極支持部143が設置されている。この陽極支持部143には、図16図17に示すように、複数個(この第1の実施の形態の場合は9個)の陽極収容部材支持フレーム145がある。上記陽極収容部材支持フレーム145には、前後方向(図16中左下から右上側に向かう方向)の両端に端部支持板147、147が設置されている。又、上記端部支持板147、147の間には複数枚(この第1の実施の形態の場合は8枚)の支持板149が設置されている。これら端部支持板147、147と支持板149は上下に配置された長軸ボルト154、155によって連結されている。その際、端部支持板147と支持板149の間、支持板149、149の間にはスペーサ151、153が介挿されている。又、上記長軸ボルト154の両端にはナット158、158が螺合されていて、上記長軸ボルト155の両端にはナット160、160が螺合されている。
【0028】
又、上記陽極収容部材支持フレーム145の上側には係合用板状部材157、157aがある。上記係合用板状部材157は、図示しないネジを上記係合用板状部材157の貫通孔を通して上記端部支持板147、147に螺合することにより固定されている。上記係合用板状部材157の幅方向両端には前後方向に延長された陽極収容部材係合溝159、159が形成されていて、隣り合う上記係合用板状部材157、157の陽極収容部材係合溝159、159にU字型に屈曲された陽極収容部材161の両端が挿入されている。上記陽極収容部材161は、上記被処理水導入部21の第1フィルタ部35と同様の構成をなしていて、例えば、樹脂製の目の粗いメッシュ163、163の間に不織布からなるフィルタ部材165が挟み込まれている。
【0029】
例えば、図17に示すように、上記係合用板状部材157aは幅方向(図17中左右方向)両端にそれぞれ設置されており、上記係合用板状部材157を幅方向(図17中左右方向)中央で分割したような形状を成している。
【0030】
図16に示すように、上記外筐141の内側の下端側には段部167、167が設けられている。又、上記外筐141の内側の上記段部167、167より上側には長U字形状をなす陽極係合部材169が設置されている。
【0031】
図16図17に示すように、上記陽極収容部材161内には陽極171が設置されている。陽極171は、例えば、不織布性の陽極袋173内に鉄粉175を充填した構成となっている。又、上記陽極171内には、図示しない陽極用導線の一端側が挿入されている。この図示しない陽極用導線の他端側は一つにまとめられ、上記外筐141に外部に突出された状態で設置された端子177に接続されている。上記端子177は上記外筐141を内外に貫通した状態で設置されている。
【0032】
図17に示すように、隣接する陽極収容部材支持フレーム145、145相互間に陽極収容部材161が挟み込まれ、その陽極収容部材161のU字の間に陽極171が挟み込まれ、上記陽極収容部材支持フレーム145の上に係合用板状部材157、157aが固定される。その状態で全体が外局141内に内装される。その際、上記陽極収容部材161の左右両下端が上記左右の段部167、167上に載置され、上記陽極171の左右両端が左右の陽極係合部材169、169に係合する。
【0033】
図18図19に示すように、上記鉄イオン放出部27には外筐181がある。この外筐181の内側には段部183が設けられていて、この段部183の上には、4枚のスペーサ185と3枚のメッシュ187が交互に積層されている。上記スペーサ185には、略四角形状で上記スペーサ185の1/4程度の大きさの開口部189が4箇所に形成されている。上記メッシュ187は、例えば、前記メッシュ部材37と同様の樹脂製の粗めの網状の部材である。このような構成を採用することにより、希釈塩水の流出を許容するとともに外部の処理水が鉄イオン放出部27を介して流入することを抑制している。
【0034】
図1に示すように、上記水処理装置1は、上記架台3の水処理装置設置部9に、固定部材191と2本の水処理装置固定用支柱193、193とによって固定されている。すなわち、上記固定用部材191の貫通孔に上記水処理装置固定用支柱193、193を通して上記水処理装置1上に載置する。上記水処理装置固定用支柱193、193に螺合・配置されたナット195、195を締め付けることにより、上記水処理装置1を上記架台3の水処理装置設置部9に固定する。
【0035】
図1に示すように、一方の(図1中右側の)上記水処理装置固定用支柱193の先端側(図1中上側)には、電源部としての太陽電池ユニット201が設置されている。この太陽電池ユニット201には、太陽光が透過するケース203があり、このケース203の中には、図3に示すように、太陽電池パネル205が設置されている。この太陽電池パネル205からは導線207、209が引き出されていて、上記導線207は上記端子177を介して上記陽極171に接続され、上記導線209は上記端子138を介して上記陰極123に接続されている。すなわち、上記太陽電池パネル205によって、上記陰極123と上記陽極171との間に電位差が与えられている。これにより、上記希釈塩水中の水が電気分解され、その際に上記陽極171の鉄粉175から鉄イオン(Fe2+)が溶出される。
【0036】
すなわち、図20に示すように、上記陽極171の鉄粉175では次の式(I)に示す化学反応が起きる。
Fe→Fe2+ + 2e ―(I)
上記式(I)で生じた電子(e)が上記陰極123側に移動され、次の式(II)に示す化学反応が起きる。
2HO+2e→H+2OH―(II)
上記太陽電池パネル205と、上記式(I)の反応及び上記式(II)の反応により、上記陽極171の鉄粉175に電子が供給され続け、鉄イオン(Fe2+)が継続して溶出される。
又、図20に示すように、切替スイッチ207が設置されていて、鉄イオン放出の際に鉄材に溜った自由電子(e)を放出する場合には太陽電池パネル205側に切り替え、鉄材から鉄イオン(Fe2+)を放出する場合には反太陽電池パネル205側に切り替える。
尚、上記電子は上記被処理水から上記希釈塩水75が作成されて、電解質が含まれるようになったことにより、上記希釈塩水75中を移動し易くなっている。
【0037】
又、ここで生じた水素(H)は、上記希釈用水導入部47から上記希釈用水導入孔97、97を介して外部に放出される。又、上記陰極123にはニッケル製メッシュ124、125、127が用いられているが、ニッケルは鉄よりイオン化傾向が低く、上記ニッケル製メッシュ124、125、127は溶解されず、上記鉄粉175から鉄イオン(Fe2+)が溶出される。
【0038】
上記水処理装置1内では、上記濃塩水や上記希釈塩水の比重により、上から下への水流が生じており、上記鉄イオン(Fe2+)は上記水処理装置1内の水流によって上記鉄イオン放出部27の下側から外部へ放出される。
上記水処理装置1から放出された鉄イオン(Fe2+)は、池などの環境中のリン酸イオン(PO 3-)と結合する。これにより、池の水からリン酸が除去される。これにより、上記池での富栄養化が抑制され、例えばアオコ等の藻類の発生が抑制される。
【0039】
ここで、食塩55を入れる意義、電気分解することの意義について説明する。
まず、食塩55を入れることにより鉄材(粒状)表面の酸化被膜を壊して鉄イオン(Fe2+)が発生し易い状態にする。鉄材の表面が酸化被膜によって覆われていると鉄イオン(Fe2+)の発生が大きく損なわれるからである。
又、食塩55を入れることにより非処理水が電解液となり電池の条件を満たす。すなわち、電池は、異なる二種類の物質から成る正極と負極、そして上記電解液とから構成されている。イオン性物質は極性溶液に溶解させることにより陽イオンと陰イオンとに解離し、これ等正・負のイオンが電荷の運び手となって移動することにより電気が発生する。この電気の発生により鉄イオン(Fe2+)の発生を促進させることができる。
【0040】
次に、電気分解であるが、水を電気分解することにより水素イオン(H)が発生する。この水素イオン(H)同士が結合して水素となる。その結合の際、鉄イオン(Fe2+)の発生で取り残された鉄材中の自由電子(e)が取り込まれ、上記鉄材は再び鉄イオン(Fe2+)を発生できる状態になる。このような反応を繰り返すことにより鉄材から鉄イオン(Fe2+)を継続的に発生させることができる。
【0041】
尚、電気分解においても鉄イオン(Fe2+)が発生する。電池化では電極間のイオン化傾向の違いによって電極表面で化学反応を起こして電子(e)を発生させていたが、電気分解では電圧を掛けて電子を強制的に移動させることにより化学反応を起こさせる。このように電池化、電気分解の何れにおいても鉄イオン(Fe2+)を発生させることができるが、一方のみでは鉄イオン(Fe2+)の発生が抑制されてしまうことを実験により確認している。その理由は、電池化の場合には溶液中の酸素がなくなることにより反応が停止するからであり、電気分解では過剰な電子(e)が炭素電極付近に集まることにより反応が停止するからであると考えられる。本実施の形態の場合には切替スイッチ205によって電池化から電気分解に切り替えることにより溶存酸素の溶け込みまでの時間を確保し、逆に、電気分解から電池化に切り替えることにより過剰な電子(e)を一旦消滅させるようにしている(炭素側から札側に戻す。)。それによって再度鉄イオン(Fe2+)を発生させることができる状態にする。
因みに、自由電子(e)の処理方法としては水野電機分解による方法と液中の溶存酸濃度を高くする方法がある。
【0042】
次に、図20及び図21を参照しながらこの第1の実施の形態による作用について説明する。
まず、水処理装置1を、例えば、池の水中に設置する。
被処理水導入部21内には、第1フィルタ部35、35、35、35を介して、上記池の水、すなわち、被処理水が導入される。
上記導入された被処理水の一部は図21の矢印Aに示すように第2フィルタ部41を介して食塩貯留部29に導入され、残りは図21の矢印Bに示すように第2フィルタ部41、希釈水導入溝43、43、及び、希釈用水導入孔97、97を介して希釈水導入部47に導入される。
【0043】
上記食塩貯留部29に導入された被処理水によって、食塩55が溶解され、飽和状態の(例えば、37重量%程度の)濃塩水73が作成される。この濃塩水73は、不織布53、食塩載置部材51の貫通孔61、第1分散用仕切り部材57の貫通孔63、第2分散用仕切り部材59の貫通孔65を介して、上記濃塩水ノズル67内に流下していき、図21中矢印Cで示すように、上記濃塩水ノズル67の吐出口71を介して、塩濃度調整部31内に流下される。その際、周囲から希釈水を吸い込みながら流下することにより希釈が促進される。
【0044】
上記第1分散用仕切り部材57の貫通孔63、上記第2分散用仕切り部材59の貫通孔65を介して上記濃塩水73が流下される際、上記第1分散用仕切り部材57の貫通孔63と上記第2分散用仕切り部材59の貫通孔65がオフセットされて設置されているので、上記濃塩水73が上記第1分散用仕切り部材57と第2分散用仕切り部材59との間に拡散され、濃度が均一になる。又、上記第1分散用仕切り部材57、上記第2分散用仕切り部材59、及び、上記濃塩水ノズル67による沈降・流下量抑制部70によって、上記濃塩水73が上記塩濃度調整部31内に沈降・流下される量が抑制される。
【0045】
一方、上記濃塩水73とは別の経路、すなわち、上記希釈用水導入部47を介して、図21中矢印Dで示すように、食塩が溶解されていない被処理水がそのまま上記塩濃度調整部31内に導入される。上記塩濃度調整部31内では、上記被処理水によって上記濃塩水73が希釈され、例えば、1重量%の希釈塩水75が作成される。
尚、本実施の形態において、希釈塩水75の濃度を1重量%にしているのは次のような実験に基づく。濃度が3%、1%、0.5%の3種類の希釈塩水を作成し、それらを使用して鉄イオン(Fe2+)の溶出量を測定した。その結果、濃度が1%の時の鉄イオン溶出量を1とすると、濃度が3%の時には濃度が1%の場合の1.6倍、濃度が0.5%の時には濃度が1%の場合の0.5倍以下になった。つまり、濃度を3倍にしても鉄イオン(Fe2+)の溶出量は3倍にはならず、逆に、0.5%にした場合には半分以下に落ちてしまった。そこでコスト等も考慮して1%を採用している。
【0046】
尚、電極部25の上側には濃塩水流下・沈降抑制部77があり、上記濃塩水ノズル67から流下された濃塩水は、上記濃塩水流下・沈降抑制部77の底板85によって、上記電極部25内に直接流下されないようになっていて、図21中矢印Eに示すように、上記底板85を迂回し貫通孔79を介して上記電極部25内に流下される間に確実に希釈される。
【0047】
上記希釈塩水75は上記電極部25内に流下される。
太陽電池パネル205によって、上記電極部25の陰極123と陽極171との間に電位差が与えられている。これにより、上記希釈塩水75中の水が電気分解され、その際、上記陽極171の鉄粉175から鉄イオン(Fe2+)が溶出される。
すなわち、図20に示すように、上記陽極171の鉄粉175では次の式(I)に示す化学反応が起きる。
Fe→Fe2+ + 2e ―(I)
上記式(I)で生じた電子(e)が上記陰極123側に移動され、次の式(II)に示す化学反応が起きる。
2HO+2e→H+2OH―(II)
上記太陽電池パネル205と、上記式(I)の反応及び上記式(II)の反応により、上記陽極171の鉄粉175に電子が供給され続け、鉄イオン(Fe2+)が継続して溶出される。
尚、ここで生じた水素(H)は、上記希釈用水導入部47から上記希釈用水導入孔97、97を介して外部に放出される。又、上記陰極123にはニッケル製メッシュ124、125、127が用いられているが、ニッケルは鉄よりイオン化傾向が低く、上記ニッケル製メッシュ124、125、127は溶解されず、上記鉄粉175から鉄イオン(Fe2+)が溶出される。
又、上記陰極123側の式(II)の反応により(OH)が生じ、この(OH)により錆となる水酸化鉄(Fe(OH))の発生が懸念されるが、例えば、図21に示すように、陰極123と陽極171との間に空間が設けられているので、上記陰極123側で発生したOHと上記陽極171側で発生した鉄イオン(Fe2+)との反応が起きにくくなっている。
【0048】
上記水処理装置1内では、上記濃塩水や上記希釈塩水の比重により、上から下への水流が生じており、上記鉄イオン(Fe2+)は鉄イオン放出部27の下側の開口部から外部へ放出される。
尚、上記鉄イオン放出部27には、メッシュ187、187、187が設置されていて、流下された上記希釈塩水75は上記鉄イオン放出部27の下側には移動しにくく、上記水処理装置1内の対流により上記電極部25内に再び拡散される。
上記水処理装置1から放出された鉄イオン(Fe2+)は、池などの環境中のリン酸イオン(PO 3-)と結合する。これにより、池の水からリン酸イオン(PO 3-)が除去される。これにより、上記池での富栄養化が抑制され、例えば、アオコなどの藻類の発生が抑制される。
【0049】
次に、この第1の実施の形態による効果について説明する。
まず、1%の希釈塩水を安定供給することにより、陽極171の鉄粉175から鉄イオン(Fe2+)を効率良く溶出させることができ、それによって、被処理水中のリン酸イオン(PO 3-)を効率よく除去して、池での富栄養化を効果的に抑制して、例えば、アオコ等の藻類の発生を抑制することができる。
その際、上記1%の希釈塩水を容易に生成することができる。これは食塩貯留部29における食塩の量に関係なく飽和状態の(例えば、37重量%程度の)濃塩水73が作成され、後は希釈水として食塩貯留部29を迂回して希釈水として導入される被処理水の流量を所定量に規定するだけで良いからであり、又、一連の作用が食塩水と被処理水との比重差に基づいて食塩水が自然に流下・沈降するだけでなされるからである。
【0050】
又、食塩貯留部29には、上記第1分散用仕切り部材57、上記第2分散用仕切り部材59、及び、上記濃塩水ノズル67による沈降・流下量抑制部70が設けられていて、これにより、上記濃塩水73が希釈塩水作成部23へ流下される量を抑制し、所定の濃度(例えば、1重量%濃度)の上記希釈塩水75を作成することができる。所定の濃度の上記希釈塩水75により、効果的に電子を移動させることができ、水の電気分解や上記鉄イオン(Fe2+)の溶出を効果的に行わせることができる。又、上記濃塩水73が希釈塩水作成部23へ流下される量を抑制することで、食塩55の溶解を遅くし、長期にわたって上記濃塩水73、ひいては、希釈塩水75を供給することができる。
【0051】
又、上記濃塩水73は上記第1分散用仕切り部材57と第2分散用仕切り部材59との間に拡散され、濃度が均一になってから希釈塩水作成部23に流下されるので、確実に所定の濃度(例えば、1重量%濃度)の上記希釈塩水75を作成することができる。
又、上記濃塩水73とは別の経路、すなわち、上記希釈用水導入部47を介して、食塩が溶解されていない被処理水がそのまま上記塩濃度調整部31内に流下されるので、確実に所定の濃度(例えば、1重量%濃度)の上記希釈塩水75を作成することができる。
【0052】
又、上記電極部25の上側には濃塩水流下・沈降抑制部77があり、上記濃塩水ノズル67から流下された濃塩水は、上記濃塩水流下・沈降抑制部77の底板85によって、上記電極部25内に直接流下されないようになっていて、上記底板85を迂回し貫通孔79を介して上記電極部25内に流下されるので、上記濃塩水73を確実に希釈して確実に所定の濃度(例えば、1重量%濃度)の上記希釈塩水75を作成することができる。
又、太陽電池パネル205によって、上記電極部25の陰極123と陽極171との間に電位差が与えられているので、更に効率よく上記鉄イオン(Fe2+)を溶出させることができる。
【0053】
又、切替スイッチ207が設置されていて、鉄イオン放出の際に鉄材に溜った自由電子(e)を放出する場合には太陽電池パネル205側に切り替え、鉄材から鉄イオン(Fe2+)を放出する場合には反太陽電池パネル205側に切り替えるように構成されているので、更に効率よく上記鉄イオン(Fe2+)を溶出させることができる。
又、上記鉄イオン放出部27には、メッシュ187、187、187が設置されているので、希釈塩水の外部への放出を許容するものの、外部からの処理水の流入を抑制しているので、水処理装置1内における処理を安定させることができる。
又、上記陽極171に鉄粉175を用いており、陰極部101に炭素粉末が用いられているため、水の電気分解ひいては鉄イオン(Fe2+)の溶出を効果的に行わせることができる。
又、図21に示すように、陰極123と陽極171との間に空間が設けられているので、上記陰極123側で発生した(OH)と上記陽極171側で発生した鉄イオン(Fe2+)との反応による錆の原因となる水酸化鉄(Fe(OH)))の生成が起きにくくなっている。
【0054】
次に、図22を参照しながら、本発明の第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態も本願発明を水処理装置に適用した例を示すものである。
この第2の実施の形態による水処理装置は前記第一の実施の形態による水処理装置1と略同様の構成であるが、太陽電池ユニット201が設けられていない。この場合は、図22に示すように、正極201と負極203と希釈塩水75によって電池形成されている。上記正極201は前記第1の実施の形態における陰極123と同様の構成であり、上記負極203は前記第1の実施の形態における陽極171と同様の構成であり、次の化学式(III)(IV)に示す化学反応が生じ、鉄イオン(Fe2+)が溶出される。
すなわち、上記負極203の鉄粉175では次の式(I)に示す化学反応が起きる。
Fe→Fe2+ + 2e ―(III)
上記式(I)で生じた電子(e)が上記正極201側に移動され、次の式(IV)に示す化学反応が起きる。
+2HO+4e→4OH―(IV)
尚、式(IV)の反応において、希釈塩水75中に溶存している酸素(O)が関与しているため、上記酸素が不足する環境下では上記式(III)及び式(IV)の化学反応が起きにくくなるため、前記第1の実施の形態に比べて、池の富栄養化を防止する効率は下がってしまう。
前記第1の実施の形態とこの第2の実施の形態で共通する構成要素については同じ符号を付し、説明を省略している。
【0055】
次に、第3の実施の形態を説明する。前記第1、第2の実施の形態の場合には本願発明を水処理装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、それ以外にも、例えば、植物の栽培に適用させることもできる。以下、説明する。
【0056】
植物の成長の栄養素としては、窒素、リン、カリウムの三大栄養素の他に、比較的要求量が多いカルシウムやマグネシウムなど、要求量が少ない微量要素、鉄、マンガン、亜鉛、銅などがある。
例えば、鉄欠乏症は、植物における障害の一つであり、鉄はクロロフィルの合成に必要とされ、鉄欠乏症は白化の原因となる。症状として、葉脈は緑のまま葉縁部は黄色または褐色へ変色する。また、若い葉の場合、全体が白くなることがある。加えて、果実の品質と収量は低減する。
他に、カルシウムには、多糖類であるペクチンと結合し、細胞膜を丈夫にして病害虫に対する抵抗力をつける働きがあり、根の生育を促進する働きもあるので、カルシウム不足は生育に深刻な障害を引き起こす。
【0057】
一方、マグネシウムは葉緑素の「主要構成要素」であり、マグネシウムが不足してくると葉緑素が減少して黄色くなり、光合成が衰えて糖類やデンプンが少なくなる。なお、亜鉛不足は発育不全がおこり、茎の伸長も阻害されて植物体が小さくなる。葉の矮小化、ときにクロロシス、壊死班、あるいは褐変も伴う。葉の奇形(葉が細長くなる若しくは葉縁が波形となる。)。
本実施の形態の場合には、前記第1、第2の実施の形態において説明した金属イオン溶出方法/金属イオン溶出装置より溶出させた金属イオン、すなわち、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、鉄イオン(Fe2+)、マンガンイオン(Mn2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅イオン(Cu2+)を、植物栽培装置において水溶液として供給し、植物の健全な生育を促す。
【0058】
尚、本発明は前記第1の実施の形態や第2の実施の形態に限定されない。
希釈用水導入部の大きさ、濃塩水ノズルの吐出口の径等には様々な場合が考えられる。
作成される希釈塩水の濃度も様々な場合が考えられる。
狭窄部として、ノズルの他に多孔質材を設置することも考えられる。又、多孔質材として寒天を用いることも考えられる。
又、前記第1、第2の実施の形態の場合には水処理装置を例に挙げて説明したがそれに限定されるものではなく様々なものに適用することが考えられる。
又、金属イオンとしても鉄イオン(Fe2+)カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、マンガンイオン(Mn2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅イオン(Cu2+)に限定されるものではなく様々な種類の金属イオンの溶出に適用可能である。
その他、図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば、鉄イオン(Fe2+)等の金属イオンを溶出させる金属イオン溶出方法と金属イオン溶出装置と水処理方法と水処理装置と植物栽培方法と植物栽培装置に係り、特に、金属イオンを効率良く溶出させることができるように工夫したものに関し、例えば、鉄イオン(Fe2+)によりアオコの繁殖を抑制する水処理方法と水処理装置に好適である。
【符号の説明】
【0060】
1 水処理装置(金属素オン溶出装置)
21 被処理水導入部
23 希釈塩水作成部
25 電極部
27 鉄イオン放出部
29 食塩貯留部
31 塩濃度調整部
55 食塩
67 濃塩水ノズル(狭窄部)
70 沈降・流下量抑制部
73 濃塩水
75 希釈塩水
77 濃塩水流下・沈降抑制部
123 陰極(電極部の電極)
171 陽極(電極部の電極)
201 太陽電池ユニット(電源部)
207 切替スイッチ
301 正極(電極部の電極)
303 負極(電極部の電極)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22