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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】マスキング音発生方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/175 20060101AFI20240311BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20240311BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20240311BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240311BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20240311BHJP
   E04H 1/14 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G10K11/175
E04H1/12 302C
E04B1/86 Z
G10K11/16 150
G10K11/168
E04H1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019193561
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021067101
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】596177559
【氏名又は名称】インターマン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田平重樹
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229839(JP,A)
【文献】特開2012-073411(JP,A)
【文献】特表2016-534835(JP,A)
【文献】特開2014-154483(JP,A)
【文献】特開平08-296335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12-1/14
E04B 1/86
G10K 11/16-11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接して設置された複数の携帯端末用ブースの夫々からマスキング音を発生させる方法であって、前記マスキング音は、明確な時間的な流れを持った意味のある音であり、前記複数の携帯端末用ブースから発生するマスキング音は、互いに同期しており、
前記複数の携帯端末用ブースの夫々では、ユーザーが当該携帯端末用ブースに入った際に、マスキング音の発生が開始され、ユーザーが当該携帯端末用ブースを退出した場合には、マスキング音の発生を停止し、
マスキング音を発生させている一つの携帯端末用ブースがマスターブースとして設定され、別の携帯端末用ブースでマスキング音の発生を開始する際には、前記マスターブースから前記別の携帯端末用ブースへ、マスキング音の同期に必要な再生位置が送信され、
前記別の携帯端末用ブースは、前記マスターブースから送信された再生位置から、マスキング音の発生を開始し、
前記複数の携帯端末用ブースに設けられたデータ処理制御回路によって、前記マスキング音を発生させる方法における、各携帯端末用ブースでの前記マスキング音の発生の開始および停止、前記マスターブースの設定ならびに前記再生位置の送信が行われることを特徴とするマスキング音発生方法。
【請求項2】
前記マスキング音は、音楽、人の声、鳥のさえずり、寄せては返す波の音の何れかであることを特徴とする請求項1に記載のマスキング音発生方法。
【請求項3】
前記携帯端末用ブースは、平面視で空間を区画することによって、内部に携帯端末の利用空間を形成する吸音パネルと、前記利用空間の外側に向かって設けられたスピーカーと、前記スピーカーから、前記マスキング音を発生させるマスキング音発生装置とからなることを特徴とする請求項に記載のマスキング音発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共スペースなどで、携帯端末を利用する為の場所を提供する携帯端末用ブースが複数隣接して設置されている状況において、それらの携帯端末用ブースからマスキング音を発生させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本でのスマートフォンや携帯電話の普及率は100%を超え、ほぼ全ての人が常時通信手段を保持しているという状況となった。こういった携帯端末は、移動中などすき間時間に情報を収集・発信したり、通常の会話を行ったりでき利便性が高い。事実、往来や建物の中、公園などの公共スペースにいる人々のかなりの割合が、何らかの目的で携帯端末を操作している。
【0003】
しかしながら、外出中に携帯端末で会話を行う際には、これまでの電話ボックスなどに置かれた公衆電話とは違って、他の人々が普通に歩行している場所で行うという場合が多い。従って、雑踏などでは、周りの雑音で相手の声が良く聞こえないということも少なくない。
【0004】
駅や建物の中であっても、周囲の反響音が響いて、ゆっくりと会話を行うということはできない。普通は壁の近くなどへ寄って、いくらかでも静かな場所で話そうとする。しかし、実際には壁で反射する雑音が加わって、壁の近くは決して静かな場所ではない。通話相手にとっても、この反射雑音によって音声が聞き取りづらくなってしまうということもある。
【0005】
このような状況に鑑みて、本件出願人は、特許文献1において、携帯端末の利用者の利便性を高めることができる携帯端末用ブースの提案を行った。この携帯端末用ブースによれば、例えば、ホテルのロビーなどに設置することで、マナーよく快適に携帯端末を使うことができ、それと共に利用者のマナーを向上させ、ホテル自体の雰囲気を良くする、といったことが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-43765号公報
【文献】特開2006-267174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
携帯電話で会話を行う場合、話の内容が周囲の人に聞こえる可能性があり、プライベートな内容は話しにくいということがある。携帯端末用ブースを利用すれば、周囲への会話の内容の漏洩は若干抑えられるとはいえ、比較的静かな環境においては、周りに聞こえているのではないかという危惧が残る。特に、建物内やオフィスにおいては、その心配がより大きくなる。
【0008】
一方で、聴覚のマスキング現象を利用し、広帯域雑音(マスキング音)を発生させて、不用な音情報を聴覚的に聞こえ難くするノイズマスキングシステムが知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなノイズマスキングシステムでは、音量を上げるほどノイズマスキング効果は高まる。しかし、携帯端末用ブースの利用者や周囲の人々にとっては、マスキング音は単なる騒音に過ぎない。
【0009】
特に、携帯端末用ブースが複数隣接して設置されている状況においては、あちこちから雑音が鳴り響き、周囲の音環境を悪化させる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、携帯端末用ブースが複数隣接して設置されている状況において、それらの携帯端末用ブースからマスキング音を発生させる方法を提供することであり、特にマスキング音による不快感が低減された携帯端末用ブースからのマスキング音発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のマスキング音発生方法は、近接して設置された複数の携帯端末用ブースの夫々からマスキング音を発生させる方法であって、前記マスキング音は、明確な時間的な流れを持った意味のある音であり、前記複数の携帯端末用ブースから発生するマスキング音は、互いに同期しており、前記複数の携帯端末用ブースの夫々では、ユーザーが当該携帯端末用ブースに入った際に、マスキング音の発生が開始され、ユーザーが当該携帯端末用ブースを退出した場合には、マスキング音の発生を停止し、マスキング音を発生させている一つの携帯端末用ブースがマスターブースとして設定され、別の携帯端末用ブースでマスキング音の発生を開始する際には、前記マスターブースから前記別の携帯端末用ブースへ、マスキング音の同期に必要な再生位置が送信され、前記別の携帯端末用ブースは、前記マスターブースから送信された再生位置から、マスキング音の発生を開始し、前記複数の携帯端末用ブースに設けられたデータ処理制御回路によって、前記マスキング音を発生させる方法における、各携帯端末用ブースでの前記マスキング音の発生の開始および停止、前記マスターブースの設定ならびに前記再生位置の送信が行われることを特徴とする。
【0012】
ここで、明確な時間的な流れを持った意味のある音とは、従来のマスキング音であるランダムな雑音と対比されるものであり、別々の携帯端末用ブースから時間的なズレを伴ってこの音を発生させた場合には、聞き手がその時間的なズレを明確に感じるようなものである。音楽、人の声、鳥のさえずり、寄せては返す波の音が、そのような音の具体例である。
【0013】
好ましい実施例では、前記マスキング音に、更に無意味な広帯域雑音を重畳させることを特徴とする。
【0014】
更に、好ましい実施例では、前記携帯端末用ブースは、平面視で空間を区画することによって、内部に携帯端末の利用空間を形成する吸音パネルと、前記利用空間の外側に向かって設けられたスピーカーと、前記スピーカーから、前記マスキング音を発生させるマスキング音発生装置とからなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係わる携帯端末用ブースはマスキング音発生装置を備えており、ブース内で通話を行った場合、その通話内容は外部の人間には聞き取りにくくなっている。従って、通話のプライバシーを保護することができる。また、マスキング音発生装置が発するマスキング音は、音楽、人の声、鳥のさえずり、寄せては返す波の音といった意味のある音を利用するので、マスキング音による音環境の悪化を少なく出来る。また、複数の携帯端末用ブースを近接して設置した際に、それらから発生するマスキング音が互いに干渉して、聞き手を混乱させることがない。
【0016】
また、上記意味のあるマスキング音に、更にホワイトノイズやブラウニアンノイズといった意味のないノイズ(広帯域雑音)を重畳させることにより、心理面と聴覚面の双方からマスキング効果を高めることが出来る。すなわち、意味のあるマスキング音により、傍聴者の意識を携帯端末用ブース内での会話から遠ざけると共に、広帯域雑音により携帯端末用ブース内の会話の音声の輪郭を不明瞭とし、耳による聞き分けを困難としている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施例に関わる携帯端末用ブースを示す斜視図である。
図2図2は、図1の携帯端末用ブースの板状吸音パネルの構造を示す断面図である。
図3図3は、図1の携帯端末用ブースの吸音材を構成するビニールシートの構造を示す図である。
図4図4は、図1の携帯端末用ブースに設けられているマスキング音発生装置のブロック図である。
図5図5は、本発明の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る方法を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る際に、再生位置の補正を行う方法を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る際に、音楽の再生を行っている携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた再生位置要求信号を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る際に、音楽の再生を行っている携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた退出通知と序列を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の別の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る方法を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の別の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る際に、携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた再生位置要求信号を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。
図11図11は、本発明の別の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る際に、携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた退出通知と序列を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。
図12図12は、本発明の実施例に関わる携帯端末用ブースであって、透明なアクリル製の扉を備えた例を示す図である。
図13図13は、本発明の実施例に関わる携帯端末用ブースであって、別の透明なアクリル製の扉を備えた例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施例に関わる携帯端末用ブースであって、更に別の透明なアクリル製の扉を備えた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施例に関わるマスキング機能を備えた携帯端末用ブースを説明する。この携帯端末用ブースは、ホテルやオフィスビルなどの建物の内部などに設置しておく。携帯電話を利用したい人は、このブースに入って電話をかけることで周りの反響音などを避け、また話の内容を近くにいる人には聞き取りにくい状態で会話を行うことができる。さらに、周囲の人の視線に気兼ねなく携帯電話を利用できる。
【0019】
図1に、本発明の実施例に関わる携帯端末用ブースを示す。この携帯端末用ブース100は、前面に開いた円筒形状の吸音ユニット110と、この吸音ユニット110を支える支持フレーム120とからなっている。それぞれ分解状態で搬入し、現地で組み立てることができる。
【0020】
吸音ユニット110は、幅20cm、長さ120cm、厚み3cmの板状の板状吸音パネル111を、平面視でアーチ状に連結して構成されている。また、支持フレーム120は、吸音ユニット110に垂直に接続した4本のパイプ(支柱)121と、パイプ121の下面に貼り付けられているスチール製のアジャスタフット123からなる。
【0021】
アジャスタフット123は、円盤状のプレートであるが、吸音ユニット110の前面の入り口に沿って切断されている。この切断部分123cは、車椅子で内部へ入る際に、車輪とアジャスタフット123との干渉を避けるために設けられている。
【0022】
パイプ121の長さを210cmとすると、アーチ状の吸音ユニット110の下端は床から90cmの高さとなる。また、吸音ユニット110は耳の位置よりも少し上まであればよい。概ね、この携帯端末用ブース100を設置する国の平均身長よりも、板状吸音パネル101の上端が10~15cm程度上にあるようにする。また、吸音ユニット110の直径は1m~1.5m、例えば1.2m程度とし、基本的に一人での利用を想定しているが、二人での利用も可能な大きさとする。
【0023】
板状吸音パネル111は、アルミパネルに吸音材115を装着したものである。また、吸音材115を装着したアルミパネル113の上端および下端には、パネルキャップ141が嵌合されている。また、図示の通り、板状吸音パネル111を組み合わせた状態で、前方が開口した円筒形となる。この開口部の上方には、左右の板状吸音パネル111を連結する看板140が設けられている。この場合で、開口部は、円筒形の中心からの見込み角で90~120度、つまり円周の1/4から1/3程度の大きさとなっている。
【0024】
吸音材115は、図2に示したような吸音構造を持っている。これは、ニードルフェルト、ベストレイ、ソフトレイ、グラスウール、サーモウールといった材質の吸音シート115aを2枚積層させ、間に音波拡散フィルムとして機能する薄いビニールシート(樹脂シート)115bを挟んで接着させたものである。吸音シート115aの他の材質としては、フェノール樹脂、ポリウレタンなどがある。一枚の吸音シート115aの厚みは1~2cmであり、ビニールシート115bの厚みは0.1mm~0.5mm程度である。更に、保護および支持用の軟質塩化ビニル樹脂板105cを裏面に設ける。また、内側の面は布115dが貼ってある。全体として、2~4cm程度となる。
【0025】
ビニールシート115bは、図3の平面図に示したように、多数の円形開口部115hが設けられている。例えば、開口部115hの直径は2cmで、互いの間隔は7cmである。このような開口部115hを設けることで、入力する音波を横方向に散乱させ、吸音シート115aによる吸音効果を高めることが出来る。また、開口部115hは、入力する音波の一部を通過させることにより、反射と透過のバランスを取るという調音機能も持っている。
【0026】
ビニールシート115bと吸音シート115aとは粘性接着剤によって接着されている。また、円形開口部115h越しに、吸音シート115a同士が粘性接着剤によって接着されている。この粘性接着剤は、ビニールシート115bと吸音シート115aとの間に、一定の粘性を保って介在する。また、この粘性接着剤は、開口部115hを介して、吸音シート115a間にも、一定の粘性を保って介在する。すなわち、使用時においても完全に硬化せず、ネバネバした状態を保っているという点が重要である。このような吸音構造の特徴としては、低周波から高周波まで広い帯域において優れた吸音性能を持っていることにある。
【0027】
本件発明においては、携帯端末用ブースには、マスキング音発生装置が設けられている。この実施例では、看板140にマスキング音発生装置200が実装されている。このマスキング音発生装置200は、携帯端末用ブース内の音情報を外部には聞こえ難くする為のマスキング音をスピーカー200sから発生させる装置である。また、このマスキング音発生装置200には、ブース内の音声を集音するマイク(図不示)が設けられている。更に、このマスキング音発生装置200には、ユーザーが入ったことを検出する人感センサー(図不示)も設けられている。
【0028】
図4は、本実施例によるマスキング音発生装置200のブロック図である。マスキング音発生装置200は、記憶装置210と、マイク220と、人感センサー230と、データ処理制御回路240、通信インターフェース250およびタイマー260を備えている。
【0029】
記憶装置210は、例えばマイクロSDからなり、マスキング音を発生させるための音源データを格納している。マイク220は、この携帯端末用ブースの内側に向かって設けられおり、例えば、この携帯端末用ブース内で通話をしているユーザーの音声を集音する。人感センサー230は、例えば、この携帯端末用ブースの天井部分の中央に設けられており、赤外線を検出することで、ユーザーが入ったことを検知する。データ処理制御回路240は、記憶装置210、マイク220および人感センサー230からの信号に基づいて、DAC201およびアンプ202経由でスピーカー200sからマスキング音を発生させる。
【0030】
通信インターフェース250は、データ処理制御回路240によって制御され、Ethernetなどの有線LANやWifi(登録商標)などの無線LANを実装し、携帯端末用ブースを相互に接続して、データの送受信を行うことを可能とするモジュールである。また、この通信インターフェース250は、インターネットへの接続に利用することもできる。
【0031】
マイク220からの信号はアンプ221で増幅され、バンドパスフィルタ222を介して、検出回路223で検出結果を、データ処理制御回路240へ出力する。バンドパスフィルタ222は、高周波領域のみを通過させるもので、例えば、女性の音声のように入力の高周波成分が多い場合に大きな出力を検出回路223へ出力する。検出回路223は、バンドパスフィルタ222から一定レベル以上の入力があった場合に、データ処理制御回路240に検出信号を出力する。また、アンプ221の出力は、検出回路224へも入力される。男性の音声のように入力の高周波成分が少ないと、検出回路223の検出信号がなくなる。それでも、検出回路224の検出信号が存在するので、検出回路224は有音検出用の回路として機能する。
【0032】
人感センサー230は、この携帯端末用ブース内部の赤外線を検出し、その検出信号を出力する。この検出信号は、アンプ231で増幅され、検出回路233へ出力する。検出回路233は、一定レベル以上の入力があった場合に、データ処理制御回路240に検出信号を出力する。
【0033】
本件発明においては、マスキング音として音楽や朗読といった意味のある音源(音楽ファイルなど)が、記憶装置210に格納されている。従来、プライベートな内容などを聴覚的に聞こえ難くするためのマスキング音としては、ホワイトノイズやブラウニアンノイズといった意味のないノイズ(広帯域雑音)からなる音源を利用していた。しかし、本件発明者の調査実験により、音楽や朗読といった意味のある音源を用いても、一定のマスキング効果が得られることが分かった。
【0034】
すなわち、携帯端末用ブースの側にいる人は、まず、外部に向かって流される明瞭な音楽や朗読の内容に気が取られて、携帯端末用ブース内の会話には意識が向かないという傾向があった。すなわち、音楽や朗読といった意味のある音でも、十分にマスキング音として機能することが分かった。この場合、音楽のようは意味のある音は、音環境を悪化させことはないという利点がある。
【0035】
ただし、マスキング音として音楽や朗読といった意味のある音源のみを用いると、音の隙間から内容の一部を聞き取られてしまう虞がある。そのため、ホワイトノイズやブラウニアンノイズといった無意味なノイズ(広帯域雑音)からなる音源も併用する。その場合でも、音楽や朗読といった意味のある音源の存在により、この無意味なノイズの音量は、比較的に小さく押さえることが出来るので、音環境の悪化を小さく押さえることが出来る。
【0036】
従って、本件発明の一つの実施例によるマスキング音発生方法では、音楽や朗読といった明確な時間的な流れを持った意味のあるマスキング音を用いると共に、更にこのマスキング音に無意味な広帯域雑音を重畳させることを特徴とする。無意味なノイズである広帯域雑音では、携帯端末用ブース内の会話の音声の輪郭を不明瞭とし、耳による聞き分けを困難としている。一方、音楽や朗読といった意味のあるマスキング音では、傍聴者の意識を音楽や朗読といったマスキング音の内容に向かわせ、会話の音声の聞き取りを行おうという意欲を起こさせないという効果がある。
【0037】
一方で、音楽や朗読といった意味のある音源をマスキング音として用いた場合、複数の携帯端末用ブースを近接して設置すると、無意味なノイズを主体とする音源を利用していた場合にはない問題が生じる。すなわち、隣接する携帯端末用ブースから聞こえてくる音楽や朗読が、互いに無関係に進行する為、聞き苦しくなってしまうということである。
【0038】
そこで、本件発明では、複数の携帯端末用ブースを近接して設置した場合には、携帯端末用ブース同士が通信を行い、音楽などの同期を取るようにしている。このようにすることで、音楽などが明瞭に聞こえるので、期待するマスキング効果を十分に発揮することができるようになる。
【0039】
以下、各携帯端末用ブースから発生させる音楽の同期を取る具体的な方法を説明する。同期は、通信インターフェース250を用いたネットワーク通信を介して行う。ここでは、マスキング音として音楽を具体例として説明するが、その他の意味のある音源、つまり、ランダムな雑音ではなく、明確な時間的な流れを持ち、それを聞く人が音の流れを聞き入るような意味ある音源であれば同様の方法が実施できる。そのような音源としては、音楽の他に、例えば朗読といった人の声、鳥のさえずり、寄せては返す波の音といったものが含まれる。
【0040】
図5は、本発明の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る方法を示すフローチャートである。これらの複数の携帯端末用ブース間は、通信インターフェース250により、相互にネットワーク接続されている。
【0041】
ここで、ユーザーが1つの携帯端末用ブースに入ると、人感センサー230は当該ユーザーを検知し、検出信号をデータ処理制御回路240に出力する。この検出信号を受けて、データ処理制御回路240は、通信インターフェース250を制御し、再生位置要求信号をブロードキャストする(ステップ101)。
【0042】
ブロードキャストされた再生位置要求信号に対して応答が無ければ(ステップ102でNO)、他に音楽の再生を行っている携帯端末用ブースは存在しないと判断し、予め設定されている音楽ファイルの先頭から再生を開始する(ステップ103)。また、音楽の再生を行っている携帯端末用ブース間の序列Lを示す変数を1に設定する。序列Lが1である携帯端末用ブースは、マスターブースとして他の携帯端末用ブースからの再生位置要求信号に応答して、音楽の再生位置を通知するものである。再生位置は、音楽の先頭からミリ秒単位で指定する。また、再生されている音楽を特定する識別番号も同時に通知する。
【0043】
再生位置要求信号をブロードキャストした当該携帯端末用ブースの他に、携帯端末用ブース(マスターブース)が存在すれば、すなわち、ブロードキャストされた再生位置要求信号に対して応答があれば(ステップ102でYES)、マスターブースから再生されている音楽を特定する識別番号と、現在の再生位置を受信する(ステップ104)。その際、現在、音楽の再生を行っている携帯端末用ブースの数に1を加算した最後尾序列Lfも受信する。つまり、この携帯端末用ブースは、現在、音楽の再生を行っている携帯端末用ブースの中のLf番目の携帯端末用ブースということになる。また、この携帯端末用ブースの序列Lを、受信した最後尾序列Lfに設定する。そして、受信した再生位置から再生を開始する(ステップ105)。なお、序列Lと最後尾序列Lfは、別々に保持され、後述の通り別々に更新される。
【0044】
実際には、受信した再生位置をそのまま再生開始位置とすると、通信遅延などにより若干のズレが生じることがある。このズレは補正することが望ましい。図6は、受信した再生位置の補正を行う方法を示す図である。
【0045】
携帯端末用ブースAが、再生位置要求信号をブロードキャストする際に、タイマーを起動する。この再生位置要求信号を受信した携帯端末用ブースM(マスターブース)は、現在の再生位置Tを取得し、携帯端末用ブースAへ送信する。携帯端末用ブースAは、再生位置Tを受信したらタイマーを停止して、再生位置要求信号を送信してから再生位置Tを受信するまでに要する時間dを計測する。実際の再生開始位置は、この再生位置Tに補正値d/2を加算して求める。ここでは、再生位置要求信号の送信から、再生位置Tの取得までの時間と、再生位置Tの取得から再生位置Tの受信までの時間をほぼ同じと仮定している。
【0046】
ステップ103またはステップ105で、音楽の再生を開始した後、人感センサー230がユーザーの退出を検知するまで、音楽の再生は継続される(ステップ106でNO)。人感センサー230がユーザーの退出を検知すると(ステップ106でYES)、携帯端末用ブースは退出通知とこの携帯端末用ブースの現在の序列Lをブロードキャストする。そして、音楽の再生を停止する。
【0047】
以上が、ユーザーが1つの携帯端末用ブースに入って音楽の再生を開始してから、退出後に音楽の再生を停止するまでのプロセスである。この図5に示したプロセスと並行して、図7図8に示したプロセスも同時に実行される。
【0048】
図7は、音楽の再生を行っている携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた再生位置要求信号を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。携帯端末用ブースが再生位置要求信号を受信すると、当該携帯端末用ブースが保持する最後尾序列Lfに1を加算する(ステップ201)。つまり、再生中の携帯端末用ブースが一つ増えた為、最後尾序列Lfが1増えることになるのである。
【0049】
次に、当該携帯端末用ブースが保持する序列Lが1であるか否かを判断する(ステップ202)。当該携帯端末用ブースが保持する序列Lが1でなければ(ステップ202でNO)、当該携帯端末用ブースはマスターブースではないので、そのまま処理を終了する。当該携帯端末用ブースが保持する序列Lが1であれば(ステップ202でYES)、当該携帯端末用ブースはマスターブースであり、再生位置要求信号に対する応答として、最後尾序列Lfと共に、現在の再生位置を送信して処理を終了する。
【0050】
図8は、音楽の再生を行っている携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた退出通知と序列を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。携帯端末用ブースが退出通知を受信すると、当該携帯端末用ブースが保持する最後尾序列Lfから1を減算する(ステップ301)。つまり、再生中の携帯端末用ブースが一つ減る為、最後尾序列Lfが1減ることになるのである。
【0051】
次に、当該携帯端末用ブースが保持する序列Lが、受信した序列よりも大きいか否かを判断する(ステップ302)。当該携帯端末用ブースが保持する序列Lが受信した序列よりも大きくなければ(ステップ302でNO)、当該携帯端末用ブースの序列に変化はないので、そのまま処理を終了する。当該携帯端末用ブースが保持する序列Lが受信した序列よりも大きければ(ステップ302でYES)、序列は一つ下がるので、序列Lから1を減算してから処理を終了する(ステップ303)。
【0052】
以上説明したように、図5に示したプロセスと並行して、図7図8に示したプロセスを同時に実行することで、常に何れかの携帯端末用ブースがマスターブースとなり、新たに再生を開始する携帯端末用ブースへ再生位置を通知し、再生のタイミングを合わせて同期を取ることが可能となる。したがって、複数の携帯端末用ブースで音楽が再生されても、互いに干渉されずに全体として一つのマスキング音として機能し、周囲の人はその音楽に気が取られて携帯端末用ブース内の会話には注意が向かなくなる。
【0053】
なお、本実施例によるマスキング音発生装置200では、無意味なノイズ(広帯域雑音)を主体とするマスキング音も記憶装置210に格納されており、上記の音楽や朗読といった意味のある音源をマスキング音として用いるだけではなく、よりマスキング効果を高めるために、この無意味なノイズを主体とするマスキング音をも併用して用いる。
【0054】
具体的には、検出回路224で検出信号が検出されたタイミング、すなわち携帯端末用ブースに入ったユーザーが会話を開始したタイミングで、ホワイトノイズやブラウニアンノイズといった無意味なノイズを音楽に重畳して再生させる。
【0055】
つまり、ユーザーが携帯端末用ブースに入ったタイミングで上述のように音楽の再生が開始され、次に、そのユーザーが会話を開始したタイミングで、無意味なノイズを主体とするマスキング音が再生される。この無意味なノイズを主体とするマスキング音の再生は、音楽の再生と同様に、ユーザーが携帯端末用ブースから退出したタイミングで停止される。言うまでもなく、無意味なノイズでは同期は不要である。
【0056】
無意味なノイズを主体とするマスキング音の音源としては、自然音、例えば人の声を多く含んだ雑踏のざわめきなどにブラウニアンノイズなどを加えたソース音源を用いて生成される。特に、本実施例においては、このような自然音を含んだソース音源の高音域を減衰させた音源が、記憶装置210に格納されている。
【0057】
このように自然音を含んだソース音源の高音域を減衰させた音源を用いて、マスキング音を発生させることには、次のような利点が存在する。すなわち、マスキング音というのは、通話などをマスクすることで内容をわからなくするものであるが、他者には単なるうるさい雑音に過ぎない。中でもこの雑音の高周波成分は、特に耳障りとなるものである。本実施例では、この高周波成分を減衰させているので、無意味なノイズを主体とするマスキング音による周囲の音環境の悪化を緩和することができる。
【0058】
また、無意味なノイズを主体とするマスキング音の音源を用いる際には、検出回路223および検出回路224の検出信号から、音声の高周波成分が多いか否かが判断される。そして、女性の音声のように、音声の高周波成分が多い場合には、マスキング音の高周波成分を若干増幅させてからスピーカー200sから発生させる。すなわち、女性の音声では、マスキング音の高音域の減衰量を小さくする。
【0059】
以上のように、携帯端末用ブースの外にいる人は、意味のあるマスキング音としての音楽の方に気が取られて、無意味なノイズを主体とするマスキング音によって聞き取りにくくなっている携帯端末用ブース内の会話には注意が向かなくなる。従って、意味のあるマスキング音と無意味なノイズを主体とするマスキング音を組み合わせにより、全体としてのマスキング効果が高まる。なお、無意味なノイズを主体とするマスキング音の音量は、従来の音量よりも小さく押さえられている。
【0060】
図5乃至図8に示した例では、マスターブースからユーザーが退出するまでは当該ブースはマスターで有り続け、ユーザーが退出した後は、別の携帯端末用ブースが交代してマスターブースとなる。しかし、何れかの携帯端末用ブースで音楽の再生が連続して行われている間は、たとえマスターブースからユーザーが退出しても、当該ブースはマスターで有り続けるようにしても良い。その場合を、本発明の別の実施例として、図9乃至図11を参照して説明する。
【0061】
図9は、本発明の別の実施例による複数の携帯端末用ブース間で再生される音楽の同期を取る方法を示すフローチャートである。ここで、ユーザーが1つの携帯端末用ブースに入ると、人感センサー230は当該ユーザーを検知し、検出信号をデータ処理制御回路240に出力する。そして、データ処理制御回路240は、内部変数であるフラグMを参照する。このフラグMは整数値を保持し、1以上の時に当該携帯端末用ブースがマスターブースであることを示している。マスターブースの保持しているフラグMの数値が、現在音楽の再生を行っている携帯端末用ブースの数を示している。
【0062】
フラグMが0であれば(ステップ401でYES)、当該携帯端末用ブースはマスターブースではないので、再生位置要求信号をブロードキャストする(ステップ402)。フラグMが0でなければ(ステップ401でNO)、当該携帯端末用ブースはマスターブースであるので再生位置要求信号のブロードキャストを行うことなく、直ちに現在の再生位置から音楽の再生を行う(ステップ406)。
【0063】
ブロードキャストされた再生位置要求信号に対して応答が無ければ(ステップ403でNO)、他に再生位置を管理する携帯端末用ブース、すなわちマスターブースは存在しないと判断し、予め設定されている音楽ファイルの先頭から再生を開始すると共に、フラグMを1に設定し、マスターブースとなる(ステップ404)。フラグMが1以上である携帯端末用ブースは、マスターブースとして他の携帯端末用ブースからの再生位置要求信号に応答して、音楽の再生位置を通知するものである。再生位置は、音楽の先頭からミリ秒単位で指定する。また、再生位置と共に、再生されている音楽を特定する識別番号も同時に通知する。
【0064】
ブロードキャストされた再生位置要求信号に対して応答があれば(ステップ403でYES)、すなわち、マスターブースが存在すれば、マスターブースから再生されている音楽を特定する識別番号と、現在の再生位置を受信する(ステップ405)。そして、受信した再生位置から音楽の再生を行う(ステップ406)。
【0065】
すでに述べたとおり、実際には、受信した再生位置をそのまま再生開始位置とすると、通信遅延などにより若干のズレが生じることがある。このズレは補正することが望ましい。そこで、音楽の再生を開始するにあたっては、図6を参照して説明した再生位置の補正を行う方法を行う。
【0066】
ステップ406で、音楽の再生を開始した後、人感センサー230がユーザーの退出を検知するまで、音楽の再生は継続される(ステップ407でNO)。人感センサー230がユーザーの退出を検知すると(ステップ407でYES)、ステップ408で、フラグMが0よりも大きいか否か、すなわち当該携帯端末用ブースがマスターブースであるか否かを確認する。
【0067】
フラグMが0よりも大きくなければ(ステップ408でNO)、すなわち当該携帯端末用ブースがマスターブースでなければ、退出通知をブロードキャストし(ステップ409)、音楽の再生を停止する(ステップ411)。フラグMが0よりも大きければ(ステップ408でYES)、すなわち当該携帯端末用ブースがマスターブースであれば、フラグMから1を減算し(ステップ410)、音楽の再生を停止する(ステップ411)。
【0068】
ただし、ステップ411で音楽の再生を停止した携帯端末用ブースがマスターブースの場合、1を減算した後でもフラグMが0よりも大きければ、すなわち、他にユーザーが入室しており音楽の再生を継続している携帯端末用ブースが存在するのであれば、その音楽再生時間のカウントを継続する。これは、新たにユーザーがどこかの携帯端末用ブースに入室した際に、マスターブースとして、その携帯端末用ブースに音楽の再生位置を通知する必要があるからである(後述の図10のステップ502)。
【0069】
以上が、本発明の別の実施例において、ユーザーが1つの携帯端末用ブースに入って音楽の再生を開始してから、退出後に音楽の再生を停止するまでのプロセスである。この図9に示したプロセスと並行して、図10図11に示したプロセスも同時に実行される。
【0070】
図10は、携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた再生位置要求信号を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。携帯端末用ブースが再生位置要求信号を受信すると、当該携帯端末用ブースがマスターブースであるか否かを確認する。すなわち、ステップ501で、フラグMが0よりも大きいか否かを確認する。
【0071】
フラグMが0よりも大きくなければ(ステップ501でNO)、すなわち当該携帯端末用ブースがマスターブースでなければ、そのまま処理を終了する。フラグMが0よりも大きければ(ステップ501でYES)、すなわち当該携帯端末用ブースがマスターブースであれば、現在の再生位置を送信して処理を終了する(ステップ502)。
【0072】
図11は、携帯端末用ブースが、他の携帯端末用ブースからブロードキャストされた退出通知を受信した際に行うプロセスを示すフローチャートである。携帯端末用ブースが退出通知を受信すると、当該携帯端末用ブースがマスターブースであるか否かを確認する。すなわち、ステップ601で、フラグMが0よりも大きいか否かを確認する。
【0073】
フラグMが0よりも大きくなければ(ステップ601でNO)、すなわち当該携帯端末用ブースがマスターブースでなければ、そのまま処理を終了する。フラグMが0よりも大きければ(ステップ601でYES)、すなわち当該携帯端末用ブースがマスターブースであれば、フラグMから1を減算して処理を終了する(ステップ602)。
【0074】
以上説明したように、図9に示したプロセスと並行して、図10図11に示したプロセスを同時に実行することで、常に何れかの携帯端末用ブースがマスターブースとなり、新たに再生を開始する携帯端末用ブースへ再生位置を通知し、再生のタイミングを合わせて同期を取ることが可能となる。したがって、複数の携帯端末用ブースで音楽が再生されても、互いに干渉されずに全体として一つのマスキング音として機能し、周囲の人はその音楽に気が取られて携帯端末用ブース内の会話には注意が向かなくなる。
【0075】
なお、この実施例においても、よりマスキング効果を高めるために、ノイズを主体とするマスキング音をも併用して用いる。携帯端末用ブースの外にいる人は、意味のあるマスキング音としての音楽の方に気が取られて、無意味なノイズにより聞き取りにくくなっている携帯端末用ブース内の会話には注意が向かなくなる。
【0076】
上記実施例では、ユーザーが退出後に音楽の再生を停止するようにしている。しかし、音楽のような意味のあるマスキング音は、周囲の音環境を悪化させるものではないので、ユーザーが退出しても、そのまま音楽の再生を継続するようにしても良い。ただし、無意味なノイズは耳障りなので、ユーザーが退出したら再生を停止するようにする。
【0077】
この場合、携帯端末用ブースで音楽の再生を開始する際には、再生位置要求信号をブロードキャストする。他に音楽再生中の別の携帯端末用ブースがあれば、この再生位置要求信号に応答して再生位置を返す。再生位置要求信号をブロードキャストした携帯端末用ブースは、この再生位置を受け取り、当該再生位置から音楽の再生を開始する。
【0078】
また、無意味なノイズを主体とするマスキング音は、検出回路224で検出信号が検出されたタイミング、すなわち携帯端末用ブースに入ったユーザーが会話を開始したタイミングで、再生を開始し、人感センサー230がユーザーの退出を検知したら再生を停止する。言うまでもなく、無意味なノイズでは同期は不要である。
【0079】
以上のように、上記実施例によるマスキング音発生装置は、平面視で空間を区画することによって、内部に携帯端末の利用空間を形成する吸音パネルと、利用空間の外側に向かって設けられたスピーカーと、スピーカーから、マスキング音を発生させるマスキング音発生装置であって、このマスキング音として、音楽や朗読といった明確な時間的な流れを持った意味のあるマスキング音を用いると共に、更にこのマスキング音に無意味な広帯域雑音を重畳させており、心理面と聴覚面の双方からマスキング効果を高めることが出来る。
【0080】
なお、上記例では、携帯端末用ブースは、前方が開口した円筒形となっているが、図12に示したように、この開口部に透明アクリル製の扉150を設けることもできる。このアクリル製の扉150は、携帯端末用ブースの内側に設けられているレールに沿って、円周方向にスライドさせることで開閉を行うことができる。
【0081】
この場合、扉150の存在によって内部の閉塞感を感じやすくなるが、扉を透明にすることでそのような閉塞感は緩和される。この扉によって、外部へ漏れる音声はより小さくなる。特に、外部へ漏れる音声の高周波成分がより減衰される。したがって、その分、マスキング音の高周波成分をより小さくすることができる。
【0082】
また、図12のアクリル製扉150は、板状吸音パネル111と同様に、下端は床から90cmの高さとなっている。従って、板状吸音パネル111と共に、ユーザーの腰から上を囲むような形態となっている。この場合、ユーザーの腰から下方、すなわち床から90cmの高さまでは、開放されている。しかし、下方も囲むような形態として、全体として密閉性を高めた構造としても良い。すなわち、図12のアクリル製扉150を下方向に延長させ、図13のアクリル製扉151に示したように、下方も含めて前面を完全に覆うようにしても良い。この場合、板状吸音パネル111の下端から床までを覆う、透明なアクリル製パネル152を設ける。これにより、携帯端末用ブースの内部空間は完全に密閉され、外部へ漏れる音声はより小さくなり、外部へ漏れる音声の高周波成分が更に減衰される。したがって、その分、マスキング音の高周波成分をより小さくすることができる。
【0083】
なお、アクリル製扉150は、携帯端末用ブースの内側に設けられているレールに沿って、円周方向にスライドさせることで開閉を行うようになっている。これは扉がじゃまにならずバリアフリーに向いている。しかし、図14に示したように、蝶番Pを支点として回動することで開閉を行うような、一般的な開き戸である透明アクリル製扉153とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係わる携帯端末用ブースはマスキング音発生装置を備えており、ブース内で通話を行った場合、その通話内容は外部の人間には聞き取りにくくなっている。このマスキング音は、音楽、人の声、鳥のさえずり、寄せては返す波の音といった意味のある音を利用するので、マスキング音による音環境の悪化を少なく出来る。また、複数の携帯端末用ブースを近接して設置した際に、それらから発生するマスキング音が互いに干渉して、聞き手を混乱させることがない。従って、携帯端末用ブースの利用を促進することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 携帯端末用ブース
101 板状吸音パネル
105c 軟質塩化ビニル樹脂板
110 吸音
111 板状吸音パネル
113 アルミパネル
115 吸音材
115a 吸音シート
115b ビニールシート
115d 布
115h 円形開口部
115h 開口部
120 支持フレーム
121 パイプ
123 アジャスタフット
123c 切断部分
140 看板
141 パネルキャップ
150 扉
200 マスキング音発生装置
200s スピーカー
202 アンプ
210 記憶装置
220 マイク
221 アンプ
222 ハイパスフィルター
223 検出回路
224 検出回路
230 人感センサー
231 アンプ
233 検出回路
240 データ処理制御回路
250 通信インターフェース
260 タイマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14