(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】表面麻酔剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20240311BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240311BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K47/10
A61P23/02
(21)【出願番号】P 2020032540
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕志
(72)【発明者】
【氏名】タランヌム フェルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】田原 義朗
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0112413(KR,A)
【文献】特開2012-140402(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164084(WO,A1)
【文献】特開平10-139687(JP,A)
【文献】特開昭57-081408(JP,A)
【文献】KOZIOL, Agata et al.,An Overview of the Pharmacological Properties and Potential Applications of Natural Monoterpenes,Mini-Reviews in Medicinal Chemistry,14,1156-1168,DOI: 10.2174/1389557514666141127145820
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/10
A61P 23/00-23/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リドカイン及びプロピトカインを含む麻酔成分と、
ゲラニオールとを含むことを特徴とする表面麻酔剤。
【請求項2】
さらに、イソプロピルアルコールを含むことを特徴とする請求項1記載の表面麻酔剤。
【請求項3】
ゲラニオールが、0.000001~2質量%含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の表面麻酔剤。
【請求項4】
皮膚又は粘膜に適用されることを特徴とする請求項1~
3のいずれか記載の表面麻酔剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面麻酔剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外科治療ではほぼ毎日麻酔注射が行われているが、これと同様に、採血等で皮膚へ注射を行う回数も非常に多く、個人差はあれ、注射の痛みは辛いものである。痛みに感受性の高い患者(注射恐怖症や幼児など)に対して行う注射は、困難を来すことが多いことから、注射前に、局所的な表面麻酔が行われることがある。
【0003】
例えば、エムラ(登録商標)クリーム等の外用局所麻酔剤や、ペンレステープ、リドカインテープ、エムラ(登録商標)パッチ等の貼付用局所表面麻酔剤が、透析時に頻用されている。しかしながら、これらの局所麻酔剤は、針の刺入時の痛みを軽減させるためには、1時間から2時間程度の時間を要するなど即効性に乏しく、また、その除痛効果も刺入時の痛みを感じさせないレベルではなく、満足できるものではない。さらに、頻回使用により皮膚がただれ、針の刺入時に血管が見えづらいという欠点もあるが、他の優れた選択肢がないために使用されているというのが実状である。
【0004】
一方、このような針の刺入時の痛みを軽減するための表面麻酔剤に関する各種研究が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】松下和孝,北本康則,赤嶺元子,井上武明,中山真人,三嶋基弘,加納龍彦.血液透析の穿刺針刺入痛防止のためのdermal patch anesthesia,透析会誌24(12):1563~1566,1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、除痛効果の高い表面麻酔剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、現場において求められる表面麻酔剤の高い除痛効果を得るべく鋭意研究した結果、リドカイン及びプロピトカインを含有する麻酔成分を、ゲラニオール等のテルペノイドと共に皮膚等に適用することにより、高い除痛効果を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、高い除痛効果に加えて、優れた即効性及び/又は優れた持続性を得ることができることを見いだした。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]リドカイン及びプロピトカインを含む麻酔成分と、テルペノイドとを含むことを特徴とする表面麻酔剤。
[2]さらに、イソプロピルアルコールを含むことを特徴とする[1]記載の表面麻酔剤。
[3]テルペノイドが、0.000001~2質量%含まれることを特徴とする[1]又は[2]記載の表面麻酔剤。
[4]テルペノイドが、ゲラニオールであることを特徴とする[1]~[3]のいずれか記載の表面麻酔剤。
[5]皮膚又は粘膜に適用されることを特徴とする[1]~[4]のいずれか記載の表面麻酔剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表面麻酔剤は、高い除痛効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm+20%IPA/GL)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。なお、EMLAはエムラ(登録商標)クリームを表し、IPAはイソプロピルアルコールを表し、GLはゲラニオールを表す。
【
図2】実施例2に係る表面麻酔剤((EMLA1.0gm+20%IPA/GL)-20%wt)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。
【
図3】比較例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。
【
図4】実施例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm+20%IPA/GL)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。
【
図5】比較例2に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。
【
図6】実施例4に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm+20%IPA/GL)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。
【
図7】実施例5に係る表面麻酔剤((EMLA1.875gm+20%IPA/GL)-20%wt)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。
【
図8】比較例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm)塗布後の時間経過に対する鈍針の痛みの程度を示す図である。
【
図9】実施例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm+20%IPA/GL)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【
図10】実施例2に係る表面麻酔剤((EMLA1.0gm+20%IPA/GL)-20%wt)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【
図11】比較例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【
図12】実施例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm+20%IPA/GL)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【
図13】比較例2に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【
図14】実施例4に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm+20%IPA/GL)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【
図15】実施例5に係る表面麻酔剤((EMLA1.875gm+20%IPA/GL)-20%wt)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【
図16】比較例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm)塗布後の時間経過に対する熱刺激の痛みに対する耐性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の表面麻酔剤としては、リドカイン及びプロピトカインを含む麻酔成分とテルペノイドとを含むことを特徴とする。
本発明の表面麻酔剤は、除痛効果が高く、例えば、針の刺入前に適用することにより、針刺入時の痛みを効果的に抑制することができる。したがって、痛みに感受性の高い患者に対して特に有効である。
【0012】
また、本発明の表面麻酔剤は、即効性に優れており、例えば、針刺入時の痛みを、表面麻酔剤の付与後10分程度で、ほぼ痛みを感じないペインレベル1まで抑えることができる(実施例参照)。したがって、外科手術等において、手術に素早く着手できる等、治療時間の短縮を図ることができる。さらに、その効果の持続時間も長く、ペインレベル1程度を長期にわたって維持することができる。したがって、外科手術等において、手術等の処置時間を十分に確保できる点で有効である。
【0013】
本発明の表面麻酔剤は、例えば、外科、内科、歯科、眼科、耳鼻科、泌尿器科、皮膚科、麻酔科、小児科、産婦人科、整形外科等における治療、検査時などの外科的処置に用いることができる。外科的処置とは、例えば、皮膚、口腔内組織、鼻腔内組織、歯牙硬組織等に対する、注射、切開、切除、切削、縫合、刺入、器具の導入などの処置をいう。
【0014】
好ましくは、注射前に、注射部位(皮膚、粘膜)に適用することができる。なお、注射とは、注射針(点滴針、留置針、透析用針等を含む)を用いた処理全般をいう。具体的には、手術等を行う場合の注射による浸潤麻酔や伝達麻酔に先立って針刺入時の痛みを軽減させる目的で用いることができる。その他、透析、採血、点滴、予防接種を行う場合の針刺入時の痛みを軽減する目的で用いることができる。
【0015】
また、内視鏡、大腸ファイバー、経鼻チューブ等の体内導入器具の使用前に、使用時の痛みを軽減する目的で、接触部位(皮膚、粘膜)に適用することができる。
【0016】
本発明の表面麻酔剤の適用方法(付与用法)としては、例えば、塗布、貼付、スプレー(噴霧)等を挙げることができる。
【0017】
本発明の麻酔成分は、リドカイン及びプロピトカインを含むものであれば特に制限されるものではなく、具体的に例えば、市販のエムラ(登録商標)クリームを挙げることができる。
【0018】
本発明の麻酔成分には、リドカイン及びプロピトカイン以外に、他の麻酔成分を組み合わせることもできる。他の麻酔成分としては、表面麻酔剤の麻酔成分として使用でき、本発明の効果を阻害するものでなければ特に制限されるものではなく、例えば、アミド型、エステル型などいずれの局所麻酔薬(表面麻酔薬)も組み合わせることができ、2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
アミド型の局所麻酔薬としては、例えば、メピバカイン,ジブカインを挙げることができる。エステル型の局所麻酔薬としては、例えば、テトラカイン、ベンゾカイン、アミノ安息香酸エチル、コカインを挙げることができる。麻酔成分は、塩酸塩等の塩であってもよく、本明細書において、例えばリドカインと称した場合は、リドカイン塩酸塩等を含む。これらの局所麻酔薬は市販されており、市販品を用いることができる。
【0020】
テルペノイドは、香料成分や清涼成分として知られているが、本発明においては、麻酔成分の除痛効果を高め、さらにその効果の即効性及び/又は持続性を向上させる成分である。
【0021】
テルペノイドとしては、常温で油状のものが好ましく、例えば、ゲラニオール、メントン、リモネン、アネトール、ネロール、ミルセノール、リナロール、ラバンジュロール、シネオール、ピネン、テルピノレンを挙げることができ、これらの中でも、ゲラニオールが好ましい。これらのテルペノイドは、2種以上用いてもよい。
【0022】
本発明の表面麻酔剤は、1種又は2種以上の溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを挙げることができ、イソプロピルアルコールが好ましい。イソプロピルアルコールを含むことにより、麻酔成分及びテルペノイドの相溶性がより高くなり、本発明の効果をより有効に発揮することができる。イソプロピルアルコールは、医薬品としては消毒剤として使用されている物質であり、市販品を用いてもよい。
【0023】
本発明の表面麻酔剤における麻酔成分の含有量としては、表面麻酔剤としての効果を発揮できる量であれば特に制限されるものではなく、例えば、表面麻酔剤中、0.1質量%以上であり、0.5~70質量%であることが好ましく、1~60質量%であることがより好ましく、3~50質量%であることがさらに好ましく、4~20質量%であることが特に好ましく、5~20質量%であることが最も好ましい。
【0024】
本発明の表面麻酔剤におけるテルペノイドの含有量としては、局所麻酔剤の除痛効果を高めることができる量であれば特に制限されるものではなく、例えば、表面麻酔剤中、0.000001~2質量%程度であり、0.000005~1質量%であることが好ましく、0.000008~0.5質量%であることがさらに好ましく、0.00001~0.2質量%であることがさらに好ましく、0.0001~0.1質量%であることが特に好ましい。
【0025】
本発明の表面麻酔剤は、従来公知の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、保存安定剤、増粘剤、香料等を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
[実施例1]
0.8gmのエムラ(登録商標)クリームと、160μlの0.001%イソプロピルアルコール/ゲラニオール(IPA/GL)溶液とを混合し、表面麻酔剤(EMLA0.8gm+20%IPA/GL)を得た。
なお、エムラ(登録商標)クリームには、1gm当たり、リドカインが0.025gm、プロピトカインが0.025gm含まれる。また、表面麻酔剤中の麻酔成分(リドカイン及びプロピトカイン)の含有量は、4.32質量%であり、表面麻酔剤中のゲラニオールの含有量は0.000136質量%である。
【0027】
[実施例2]
1.0gmのエムラ(登録商標)クリームと、200μlの0.001%IPA/GL溶液とを混合し、混合物の20重量%を除去し、表面麻酔剤((EMLA1.0gm+20%IPA/GL)-20%wt)を得た。
なお、表面麻酔剤中の麻酔成分(リドカイン及びプロピトカイン)の含有量は、4.3質量%であり、表面麻酔剤中のゲラニオールの含有量は0.000136質量%である。
【0028】
[比較例1]
0.8gmのエムラ(登録商標)クリームを比較例1とした。
【0029】
[実施例3]
1.2gmのエムラ(登録商標)クリームと307.5μlの0.001%IPA/GL溶液とを混合し、表面麻酔剤(EMLA1.2gm+20%IPA/GL)を得た。
なお、表面麻酔剤中の麻酔成分(リドカイン及びプロピトカイン)の含有量は、4.16質量%であり、表面麻酔剤中のゲラニオールの含有量は0.000166質量%である。
【0030】
[比較例2]
1.2gmのエムラ(登録商標)クリームを比較例2とした。
【0031】
[実施例4]
1.5gmのエムラ(登録商標)クリームと、300μlの0.001%IPA/GL溶液とを混合し、表面麻酔剤(EMLA1.5gm+20%IPA/GL)を得た。
なお、表面麻酔剤中の麻酔成分(リドカイン及びプロピトカイン)の含有量は、4.32質量%であり、表面麻酔剤中のゲラニオールの含有量は0.000136質量%である。
【0032】
[実施例5]
1.875gmのエムラ(登録商標)クリームと、375μlの0.001%IPA/GL溶液とを混合した後、混合物の20重量%を除去し、表面麻酔剤((EMLA1.875gm+20%IPA/GL)-20%wt)を得た。
なお、表面麻酔剤中の麻酔成分(リドカイン及びプロピトカイン)の含有量は、4.32質量%であり、表面麻酔剤中のゲラニオールの含有量は0.000136質量%である。
【0033】
[比較例3]
1.5gmのエムラ(登録商標)クリームを比較例3とした。
【0034】
[鈍針の痛みの程度の評価]
調製した各表面麻酔剤を前腕部皮膚の約2.5cm×2.5cmの範囲へ塗布し、所定時間経過後に、鈍針で皮膚を突くことによる痛みの程度について評価した。なお、表面麻酔剤は、試験開始20分間経過後に拭き取り、評価を続けた。
【0035】
その結果を
図1~8に示す。
図1は実施例1、
図2は実施例2、
図3は比較例1、
図4は実施例3、
図5は比較例2、
図6は実施例4、
図7は実施例5、
図8は比較例3の結果を表す。図の横軸は塗布後の経過時間(分)であり、縦軸は痛みのレベル(ペインレベル)を表す。なお、縦軸のペインレベル5は中等度の痛みを表し、ペインレベル0は痛みなしを表す。ペインレベル10が考えられる最大限の痛みである。
【0036】
図1に示すように、実施例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm+20%IPA/GL)では、ペインレベル1以下に塗布後11分で到達し、その後、ペインレベル1以下の除痛効果は、塗布後39分間継続した。また、塗布後16分でペインレベル0の無痛となり、ペインレベル0の時間は、合計で7分間であった。
【0037】
図2に示すように、実施例2に係る表面麻酔剤((EMLA1.0gm+20%IPA/GL)-20%wt)では、ペインレベル1以下に塗布後11分で到達し、その後、ペインレベル1以下の除痛効果は、塗布後37分間継続した。また、塗布後17分でペインレベル0の無痛となり、ペインレベル0の時間は、合計で7分間であった。
【0038】
他方、
図3に示すように、比較例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm)では、ペインレベル1以下に到達するのに塗布後23分を要し、ペインレベル1以下の除痛効果は、塗布後15分間しか持続しなかった。また、ペインレベル0の無痛に到達するのに塗布後31分を要し、ペインレベル0の時間は、合計で2分間のみであった。
【0039】
図4に示すように、実施例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm+20%IPA/GL)では、ペインレベル1以下に塗布後11分で到達し、その後、ペインレベル1以下の除痛効果は、塗布後38分間継続した。また、塗布後16分でペインレベル0の無痛となり、ペインレベル0の時間は、合計で8分間であった。
【0040】
他方、
図5に示すように、比較例2に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm)では、ペインレベル1以下に到達するのに塗布後16分を要し、ペインレベル1以下の除痛効果は、合計で塗布後19分間持続したが、途中1分間はペインレベル2となった。また、ペインレベル0の無痛に到達するのに塗布後31分を要し、ペインレベル0の時間は、合計で3分間のみであった。
【0041】
図6に示すように、実施例4に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm+20%IPA/GL)では、ペインレベル1以下に塗布後11分で到達し、その後、ペインレベル1以下の除痛効果は、塗布後39分間継続した。また、塗布後15分でペインレベル0の無痛となり、ペインレベル0の時間は、合計で9分間であった。
【0042】
図7に示すように、実施例5に係る表面麻酔剤((EMLA1.875gm+20%IPA/GL)-20%wt)では、ペインレベル1以下に塗布後11分で到達し、その後、ペインレベル1以下の除痛効果は、塗布後38分間継続した。また、塗布後16分でペインレベル0の無痛となり、ペインレベル0の時間は、合計で10分間であった。
【0043】
他方、
図8に示すように、比較例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm)では、ペインレベル1以下に到達するのに塗布後13分を要し、ペインレベル1以下の除痛効果は、合計で塗布後19分間持続したが、途中5分間はペインレベル2となった。また、ペインレベル0の無痛に到達するのに塗布後29分を要し、ペインレベル0の時間は、合計で3分間のみであった。
【0044】
[熱に対する痛みの評価]
調製した各表面麻酔剤を前腕部皮膚の約2.5cm×2.5cmの範囲へ塗布し、表面麻酔剤を塗布した皮膚へ痛覚計(株式会社ユニークメディカル製:UDH-105)を用いて熱刺激を与え、熱に対する痛みの評価を行った。痛覚計の設定温度は、38~60℃とした。表面麻酔剤は、試験開始20分間経過後に拭き取り、評価を続けた。
【0045】
その結果を
図9~16に示す。
図9は実施例1、
図10は実施例2、
図11は比較例1、
図12は実施例3、
図13は比較例2、
図14は実施例4、
図15は実施例5、
図16は比較例3の結果を表す。図の横軸は塗布後の経過時間(分)であり、縦軸は痛みを感じる温度(℃)を表す。なお、皮膚に麻酔を塗布しない場合、38℃では皮膚に痛みはなく、39℃では非常に小さな痛みを示し、39℃を超えると温度と共に痛みが増した。したがって、表面麻酔剤を塗布した後に、耐えられる温度が39℃を超える場合に、麻酔が正常に機能していることを示す。
【0046】
図9及び
図10に示すように、実施例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm+20%IPA/GL)及び実施例2に係る表面麻酔剤((EMLA1.0gm+20%IPA/GL)-20%wt)では、塗布後から急激に耐え得る温度(耐温度)の上昇がみられ、長期にわたって耐温度43℃以上を維持していた。
【0047】
他方、
図11に示すように、比較例1に係る表面麻酔剤(EMLA0.8gm)では、塗布後から緩やかに耐温度の上昇がみられ、耐温度が43℃以上となることはなかった。
【0048】
図12に示すように、実施例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm+20%IPA/GL)では、塗布後から急激に耐温度の上昇がみられ、長期にわたって耐温度43℃以上を維持していた。
【0049】
他方、
図13に示すように、比較例2に係る表面麻酔剤(EMLA1.2gm)では、塗布後から緩やかに耐温度の上昇がみられ、耐温度が43℃以上となる時間は短時間であった。
【0050】
図14及び
図15に示すように、実施例4に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm+20%IPA/GL)及び実施例5に係る表面麻酔剤((EMLA1.875gm+20%IPA/GL)-20%wt)では、塗布後から急激に耐温度の上昇がみられ、長期にわたって耐温度43℃以上を維持していた。特に実施例4では、長期にわたって耐温度44℃程度を維持していた。
【0051】
他方、
図16に示すように、比較例3に係る表面麻酔剤(EMLA1.5gm)では、塗布後から緩やかに耐温度の上昇がみられ、耐温度が43℃以上となる時間は短時間であった。
【0052】
以上のとおり、実施例に係る表面麻酔剤は、比較例に係る表面麻酔剤と比較して、除痛効果が高く、即効性、持続性の点でも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の表面麻酔剤は、除痛効果が高く、産業上有用である。