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  • 特許-浸水遮断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】浸水遮断装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20240311BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20240311BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
E04B1/64 A
E04B1/70 C
E04H9/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020088548
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183760
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】川口 隆尚
(72)【発明者】
【氏名】山本 卓生
(72)【発明者】
【氏名】千崎 純一
(72)【発明者】
【氏名】上甲 信
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008654(JP,A)
【文献】特開2016-132869(JP,A)
【文献】特開2017-095999(JP,A)
【文献】特開2016-075133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62- 1/99
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製基礎の上に通気性のある基礎パッキンを介して土台が取付けられる木造住宅の基礎構造において、前記基礎パッキンの屋外側に設けられ、屋外側の水が基礎パッキンを通し床下へ浸水するのを防止する浸水防止構造であって、前記基礎の屋外側に突設される支持金具と、前記基礎パッキンの屋外側に基礎パッキンに沿わせて前記支持金具に取付けられ、下側部に通水口を備えると共に、該通水口よりも高い位置に1ないし複数個所形成される通気口を備えたパイプと、該パイプの下側部に通水口に接し、かつ前記通気口を塞がないように装着される吸水性体積膨張材を有し、常時においてはパイプの通気口及び基礎パッキンを通して屋外と床下との間の通気が行われる一方、屋外の水嵩が増し、パイプ内の吸水性体積膨張材が接水して膨脹し、通気口を塞ぐと、基礎パッキンへの通水が防止されることを特徴とする浸水防止構造。
【請求項2】
吸水性体積膨張材は粉粒状の吸水ポリマ―で、少なくとも通水口に接する部分のみ或いは該部付近が透水性の素材で形成され、それ以外の箇所は非透水性の素材で形成された袋に入れられること特徴とする請求項1記載の浸水防止構造。
【請求項3】
前記パイプは角パイプで、通気口は角パイプ上側面には形成されないことを特徴とする請求項1又は2記載の浸水防止構造。
【請求項4】
パイプは断面円形又は楕円形であり、土台にはパイプ上側部の周方向に適宜の間隔を存して形成される複数の通気口のうち、屋外側の少なくとも1つの通気口を除く他の通気口に被さる水切りが取付けられることを特徴とする請求項1又は2記載の浸水防止構造。
【請求項5】
前記パイプは継手により長手方向に取外し可能に連結されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの請求項に記載の浸水防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅の基礎構造に取付けられ、豪雨時等において基礎構造脇を流れ、或いは基礎構造脇に溜まる雨水等の水嵩が増してコンクリート製の基礎と土台との間に介在する基礎パッキンと通って床下に入り込むのを防止する浸水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の浸水防止装置として、下記特許文献1には建物躯体と基礎との間に基礎パッキンを介在させた木造住宅の基礎構造において、建物躯体の外壁下側部に水切り部材を基礎パッキンと適宜の間隔を存して取付け、水切り部材の下端にヒンジを介して取付けられる閉塞板と前記水切り部材との間に吸水ポリマーを装填した袋を装着し、豪雨時に増水した雨水が基礎パッキンに達し、吸水ポリマーが雨水を吸水して膨脹すると、閉塞板が基礎より突出する立上がり材に押し当てられて基礎パッキンへの雨水侵入経路を遮断する住宅の基礎構造が開示されている。
【0003】
また下記特許文献2には、建物外壁の胴縁に下側部を二又にした水切り本体と、該本体の二又部の一方の側にヒンジにより取付けた止水弁を土台と基礎との間の基礎パッキンの外側に設け、止水弁が豪雨時に増水した雨水の水圧により回動して前記二又部の一方に押し当てられ、基礎パッキンへの流路を塞ぐ構造の水切りが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-8654号
【文献】特開2016-132869号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される閉塞板及び特許文献2に開示される止水弁はいずれもヒンジにより回動可能に軸支されているが、ヒンジにごみや土砂等が付着することにより閉塞板や止水弁が作動しないか、正常に作動し難くなるおそれがあるうえ、新築の木造住宅の基礎工事においては問題なく施工できるとしても、既設の木造住宅に施工する場合、基礎に大規模な改修工事が必要となる。
【0006】
本発明は、豪雨等により水嵩が増して雨水等が床下に侵入するのを防止する浸水防止装置において、作動不良を起こすおそれのある可動部分をなくし、しかも既設の木造住宅に対しても基礎部分に大幅な変更を加えることなく取付けできるようにした浸水防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、コンクリート製基礎の上に通気性のある基礎パッキンを介して土台が取付けられる木造住宅の基礎構造において、前記基礎パッキンの屋外側に設けられ、屋外側の水が基礎パッキンを通し床下へ浸水するのを防止する浸水防止構造であって、前記基礎の屋外側に突設される支持金具と、前記基礎パッキンの屋外側に基礎パッキンに沿わせて前記支持金具に取付けられ、下側部に通水口を備えると共に、該通水口よりも高い位置に1ないし複数個所形成される通気口を備えたパイプと、該パイプの下側部に通水口に接し、かつ前記通気口を塞がないように装着される吸水性体積膨張材を有し、常時においてはパイプの通気口及び基礎パッキンを通して屋外と床下との間の通気が行われる一方、屋外の水嵩が増し、パイプ内の吸水性体積膨張材が接水して膨脹し、通気口を塞ぐと、基礎パッキンへの通水が防止されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、吸水性体積膨張材は粉粒状の吸水ポリマ―で、少なくとも通水口に接する部分のみ或いは該部付近が透水性の素材で形成され、それ以外の箇所は非透水性の素材で形成された袋に入れられること特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記パイプは角パイプで、通気口は角パイプ上側面には形成されないことを特徴とし、
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、パイプは断面円形又は楕円形であり、土台にはパイプ上側部の周方向に適宜の間隔を存して形成される複数の通気口のうち、屋外側の少なくとも1つの通気口を除く他の通気口に被さる水切りが取付けられることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかの請求項に係る発明において、パイプは継手により長手方向に取外し可能に連結されることを特徴とする。
請求項1に係る発明によると、既設の木造住宅の基礎部分に施工するときには土台の屋外側に支持金具を取付けるだけで、コンクリート製基礎や土台への加工は必要がないから、既設の木造住宅にも基礎部分に大幅な加工を施すことなく取付けることができる。また基礎パッキンへの通水の防止は、通水性体積膨張材が吸水してパイプ内で膨脹することにより行われ、前記通水の防止のための特別な装置や作動機構を有しないから、構造を比較的簡単にし、かつ作動機構の作動不良による基礎パッキンへの通水防止に支障を生じない。
【0011】
吸水性体積膨張材としては、ゴム製の保形性のある膨張材を使用することもできるが、この膨張材は膨脹或いは収縮に時間が掛かるのに対し、請求項2に係る発明のように吸水性ポリマーは膨脹或いは収縮が短時間で行える。また吸水性ポリマーは粉粒状をなしているため袋に入れられるが、袋は通水口に接する部分或いは該部付近以外の箇所が非透水性であるため、通気口を通して雨水がパイプ内に入り込むようなことがあっても、袋内部への浸水が袋の非透水性部分で遮断され、袋内部の吸水ポリマーが吸水するのを防ぐことができる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、角パイプの上面には通気口が設けられないため、降雨時に雨水が角パイプ内に入り込み難い。
【0013】
請求項4に係る発明によると、水切りがパイプ上側部に形成される通気口の一部ないし大部分を塞いで雨水の降込みを防ぎ、パイプ内への雨水の侵入を少なくすることができる。
【0014】
請求項5に係る発明によると、パイプが継手を介して連結されることにより、継手よりパイプを取り外して使用済の吸水性体積膨張材を取り替えたり、使用済の吸水性体積膨張材をパイプより取り外して乾燥するのが手早く、かつ容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】基礎上に取付けられる浸水防止装置の一部の正面図。
図2図1の右側部の拡大図。
図3図2のA-A線における拡大断面図
図4】角パイプ内を吸水ポリマーが水して充満した状態を示す拡大断面図。
図5】吸水ポリマーが入れられる袋の正面図。
図6図3とは別の態様の拡大断面図。
図7図7に示すパイプ内の吸水ポリマーが吸水して膨張した状態を示す拡大断面図。
図8】パイプを連結する継手の変形態様を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態の床下への浸水防止装置について図面により説明する。
図1は、鉄筋コンクリート製基礎1の屋外側に取付けた浸水防止装置2を示すものであり、図2は、図1に示す浸水防止装置2の右側部分の詳細を示す拡大図、図3図2のA-A線における拡大断面図で、図3に示すように、基礎1上には通気構造のゴムないし樹脂製の基礎パッキン3を介して土台4が取付けられ、基礎1の屋外側側面には水平方向に定間隔で断面アングル状をなす支持金具6の下側部が基礎1にアンカーボルト7又は接着剤等により取付けられている。
【0017】
浸水防止装置2は支持金具6上に取付けられる鋼製、アルミニウム製等の金属製又はポリエチレン等の硬質樹脂製の角パイプ8と、該角パイプ内にパイプ端から挿入される吸水性体積膨張材9が入れられる一定長さの袋11よりなり、角パイプ8はパイプ長手方向に定間隔で底面を横断する通水口12を備えると共に、左右の両側面にそれぞれ1ないし複数(図3においては一対)の通気口13を備え、常時においては床下空間14と屋外との通気が角パイプの通気口13、基礎パッキン3を通して行えるようにしてある。
【0018】
前記水性体積膨張材としては、ゴム製の断面矩形をなす膨張材を使用することもできる。この膨張材は保形性を有するため、袋で包み込まなくてもよいが、吸水ポリマーを使用するのが望ましい。吸水ポリマーは粉粒状で保形性を有しないことから、袋に入れて使用する必要があるが、吸水及び乾燥が短時間で行われることにより望ましいことから、以下には吸水性体積膨張材9として吸水ポリマーを使用した例について説明する。
【0019】
豪雨時等において基礎1外を流れ、或いは溜まる雨水等の水嵩が増し、水位が角パイプ8に達すると、雨水が角パイプ下側の通水口12を通して袋11内の吸水ポリマー9に接触し、該吸水ポリマー9を吸水膨張させる。そして図4に示すように角パイプ内を充満するまで膨脹し、通気口13を塞いで、それ以上の雨水等の吸入が生じなくなった段階で、基礎パッキン3への雨水等の浸水が遮断される。
【0020】
吸水ポリマー9が入れられる図5に示す前記袋11は柔軟で可撓性を有し、かつ下側部11aが例えば不織布で通液性を有するが、上側部11bは例えばビニールやナイロン製で水を通さず、図3に示すように袋11を角パイプ内に装着した状態において(この状態において通水口12は吸水ポリマー入りの袋11により塞がれ、雨水等が通水口12を通してパイプ内に入り込み、基礎パッキン3を通して床下に浸水することがないようにするのが望まれる)、降雨時に屋外側の前記通気口13を通して雨水が降り込むようなことがあっても、袋上側部11aに接して溜まるだけで吸水ポリマー9に接触しないようにしてある。袋11への水ポリマーの挿入は、例えば袋11の開閉可能な一端を開口して行われ、挿入後閉じられる。
【0021】
吸水ポリマー9としては、例えば前記特許文献1に開示されるようなポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系などを用いることができる。
【0022】
図3に示す前記角パイプ8は、支持金具6に下側より支持され、上側面が基礎パッキン3より屋外側に張り出す土台4に当てがわれ、支持金具6と土台4に上下より挟み込まれて支持されるが、上面は開放され、支持金具6のみに支持されるようにしてもよいし、後述の実施形態と同様、土台4の屋外側側面に取付けた水切りが角パイプ上側面に被さるようにしてもよい。
【0023】
基礎1及び基礎パッキン3の屋外側側面に取付けられる角パイプ8は、図1及び図2に示すように基礎1及び基礎パッキン3のコーナにおいてエルボ継手15aにより連結され、また一定長さ確保するのに角パイプ8を繋ぐ際には、ソケット継手15bにより連結される。
【0024】
図6に示す浸水防止装置21は、基礎22上の基礎パッキン23と土台24が同一の厚みをなす基礎構造の屋外側に取付けられ、基礎22にアンカーボルト25により固定される支持金具26が全周の1/3程度の周方向長さを有する円弧部26aを有している。パイプ27は円形断面で、前記円弧部26aと同一の曲率半径を有して円弧部26aに当てがわれ、下側部には通水口28を、屋外側側面より屋内側に向かって周方向に定間隔で通気口29を有している。
【0025】
図中、31は土台24に取付けられる水切りで、パイプ27の上側部と屋内側の通気口29に被さってパイプ27に当たり、両通気口29を塞いで、この通気口29より降雨時の雨水がパイプ内に振り込まないようにしている。パイプ内への雨水の降り込みを防止するために、水切り31に被さらないで屋外側に開口する通気口29は極力少なくするのが望ましい。
【0026】
前記実施形態と同様、パイプ内には吸水ポリマ-9を入れた袋11が挿入される。
豪雨時に水嵩が増し、水位が吸水ポリマー9に達して吸水ポリマー9が吸水すると、膨張しパイプ27を充満する(図7)。そして前記実施形態と同様、基礎パッキン23への雨水の流入を遮断する。
【0027】
本実施形態においても、パイプ27は前記ソケット継手15b及びエルボ継手15aにより連結されるが、これら各継手15a及び15bは、図8に示すように半周以上の周方向長さを有し、パイプ27に径方向(図8においては上方)より嵌着してパイプ27を連結するようにしてもよい。
【0028】
継手15a及び15bにより連結されるパイプ27は、端部には通水口28や通気口29が形成されないが、形成されていても差し障りはない。
前記実施形8のパイプ27は円形断面をなしているが、他の断面形状、例えば断面楕円形をなしていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1、22・・ベタ基礎
2、21・・浸水防止装置
3、23・・基礎パッキン
4、24・・土台
6、26・・支持金具
7、25・・アンカーボルト
8・・角パイプ
9・・吸水ポリマー
11・・袋
12、28・・通水口
13、29・・通気口
15a・・エルボ継手
15b・・ソケット継手
27・・パイプ
31・・水切り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8