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特許7450939無線通信システム、無線通信装置、通信制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信装置、通信制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/18 20090101AFI20240311BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20240311BHJP
【FI】
H04W28/18 110
H04W24/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021141828
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023035185
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 雅央
【審査官】米倉 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-182162(JP,A)
【文献】特開2018-142896(JP,A)
【文献】特開2019-68136(JP,A)
【文献】特表2016-523019(JP,A)
【文献】特表2015-529428(JP,A)
【文献】特開2019-114899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0211900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線通信装置と、前記第1無線通信装置と無線通信する第2無線通信装置と、を備え、
前記第1無線通信装置は、
前記第2無線通信装置から送信される管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するビーコン生成部を有し、
前記第2無線通信装置は、
前記第1無線通信装置から前記ビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、
前記第1無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を有する、
無線通信システム。
【請求項2】
第1無線通信装置と、前記第1無線通信装置と無線通信する第2無線通信装置と、を備え、
前記第1無線通信装置は、
前記第2無線通信装置から送信される管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するビーコン生成部を有し、
前記第2無線通信装置は、
前記第1無線通信装置から前記ビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、
前記第1無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部と、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部と、
前記シンボル数算出部が算出したシンボル数と、前記受信強度情報が示す受信強度における前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出する期待値算出部と、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を有する、
無線通信システム。
【請求項3】
第1無線通信装置と、前記第1無線通信装置と無線通信する第2無線通信装置と、を備え、
前記第1無線通信装置は、
前記第2無線通信装置から送信されるデータフレームを受信した場合、前記第2無線通信装置に対して前記データフレームを受信したことを通知する確認応答フレームを生成する確認応答部を有し、
前記第2無線通信装置は、
前記第1無線通信装置から前記確認応答フレームを取得するフレーム取得部と、
前記フレーム取得部が前記確認応答フレームを取得する確率に基づいて、前記データフレームが前記第1無線通信装置に送達される確率である送信成功率を算出する送信成功率算出部と、
前記第1無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部と、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部と、
前記シンボル数算出部が算出したシンボル数と、前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応する前記送信成功率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出する期待値算出部と、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を有する、
無線通信システム。
【請求項4】
前記送信成功率算出部は、前記データフレームが前記第2無線通信装置に向けて送信される毎に、前記送信成功率を算出する、
請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記選定部は、選定した変調符号化方式が複数存在する場合、選定した複数の変調符号化方式の中から前記シンボル単位データサイズが最も小さい変調符号化方式を選定する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
他の無線通信装置から送信される、前記他の無線通信装置が管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、
前記他の無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を備える、
無線通信装置。
【請求項7】
他の無線通信装置から送信される、前記他の無線通信装置が管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、
前記他の無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部と、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部と、
前記シンボル数算出部が算出したシンボル数と、前記受信強度情報が示す受信強度における前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出する期待値算出部と、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を備える、
無線通信装置。
【請求項8】
他の無線通信装置がデータフレームを受信したことを通知する確認応答フレームを取得するフレーム取得部と、
前記フレーム取得部が前記確認応答フレームを取得する確率に基づいて、前記データフレームが前記他の無線通信装置に送達される確率である送信成功率を算出する送信成功率算出部と、
前記他の無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部と、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部と、
前記シンボル数算出部が算出したシンボル数と、前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応する前記送信成功率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出する期待値算出部と、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を備える、
無線通信装置。
【請求項9】
第1無線通信装置が、第2無線通信装置から送信される管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置から前記ビーコンフレームを取得するステップと、
前記第2無線通信装置が、取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定するステップと、を含む、
通信制御方法。
【請求項10】
第1無線通信装置が、第2無線通信装置から送信される管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置から前記ビーコンフレームを取得するステップと、
前記第2無線通信装置が、取得した前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するステップと、
前記第2無線通信装置が、予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するステップと、
前記第2無線通信装置が、算出したシンボル数と、前記受信強度情報が示す受信強度における前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定するステップと、を含む、
通信制御方法。
【請求項11】
第1無線通信装置が、第2無線通信装置から送信されるデータフレームを受信した場合、前記第2無線通信装置に対して前記データフレームを受信したことを通知する確認応答フレームを生成するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置から前記確認応答フレームを取得するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記確認応答フレームを取得する確率に基づいて、前記データフレームが前記第1無線通信装置に送達される確率である送信成功率を算出するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するステップと、
前記第2無線通信装置が、予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するステップと、
前記第2無線通信装置が、算出したシンボル数と、前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応する前記送信成功率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定するステップと、を含む、
通信制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、
他の無線通信装置から送信される、前記他の無線通信装置が管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを取得するフレーム取得部、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部、
前記他の無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定する選定部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、
他の無線通信装置から送信される、前記他の無線通信装置が管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを取得するフレーム取得部、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部、
前記他の無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部、
前記シンボル数算出部が算出したシンボル数と、前記受信強度情報が示す受信強度における前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出する期待値算出部、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定する選定部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
コンピュータを、
他の無線通信装置がデータフレームを受信したことを通知する確認応答フレームを取得するフレーム取得部、
前記フレーム取得部が前記確認応答フレームを取得する確率に基づいて、前記データフレームが前記他の無線通信装置に送達される確率である送信成功率を算出する送信成功率算出部、
前記他の無線通信装置へ向けて送信する前記データフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部、
前記シンボル数算出部が算出したシンボル数と、前記複数種類の変調符号化方式それぞれに対応する前記送信成功率と、に基づいて、前記複数種類の変調符号化方式それぞれにおけるシンボル数期待値を算出する期待値算出部、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数期待値が最小となる変調符号化方式を選定する選定部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線通信装置、通信制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の符号化方式、変調方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)の中から、複数のMCSそれぞれに対応するフレームの他の無線通信装置への送信成功率に基づいて選定されたMCSでの通信を行う無線通信装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-093296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているような無線通信装置では、フレームの他の無線通信装置への送信成功率を高い水準で維持しつつ、通信レートを高くして単位時間内に送信できるデータ量を増加させることが要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、単位時間内に送信できるデータ量を増加させつつ、フレームロスを低減することができる無線通信システム、無線通信装置、通信制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムは、
第1無線通信装置と、前記第1無線通信装置と無線通信する第2無線通信装置と、を備え、
前記第1無線通信装置は、
前記第2無線通信装置から送信される管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するビーコン生成部を有し、
前記第2無線通信装置は、
前記第1無線通信装置から前記ビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、
前記第1無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を有する。
【0007】
他の観点から見た本発明に係る無線通信装置は、
他の無線通信装置から送信される、前記他の無線通信装置が管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、
前記他の無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を備える。
【0008】
他の観点から見た本発明に係る通信制御方法は、
第1無線通信装置が、第2無線通信装置から送信される管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置から前記ビーコンフレームを取得するステップと、
前記第2無線通信装置が、取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第1無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定するステップと、を含む。
【0009】
他の観点から見た本発明に係るプログラムは、
コンピュータを、
他の無線通信装置から送信される、前記他の無線通信装置が管理フレームまたはデータフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを取得するフレーム取得部、
取得された前記ビーコンフレームに含まれる前記受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部、
前記他の無線通信装置へ向けて前記データフレームを送信する際、予め設定された複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された前記受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定する選定部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る無線通信装置によれば、受信強度情報抽出部が、フレーム取得部により取得されたビーコンフレームに含まれる受信強度情報を抽出する。そして、選定部が、複数種類の変調符号化方式の中から、抽出された受信強度情報が示す受信強度が受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となる変調符号化方式を選定する。これにより、フレーム送信に必要なシンボル数を低減しつつ、フレーム送信におけるシンボル単位データサイズを可能な限り小さくすることができる。従って、フレーム送信に必要なシンボル数を低減して単位時間内に送信できるデータ量を増加させながらも、フレーム送信におけるシンボル単位データサイズを可能な限り小さくすることでフレームロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る無線通信システムのハードウェア構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る無線通信システムの機能構成を示す図である。
図4】実施の形態1に係るDBPS記憶部が記憶する情報の内容を示す図である。
図5】実施の形態1に係る無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図6】実施の形態1に係るビーコンフレームの一例を示す図である。
図7】実施の形態1に係る無線通信装置が実行する通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態2に係る無線通信システムの機能構成を示す図である。
図9】実施の形態2に係る再送発生確率記憶部が記憶する情報の内容を示す図である。
図10】実施の形態2に係る無線通信装置が実行する通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施の形態3に係る無線通信システムの機能構成を示す図である。
図12】実施の形態3に係る無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図13】実施の形態3に係る無線通信装置が実行する通信制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態1に係る無線通信システムは、第1無線通信装置と、第1無線通信装置と無線通信する第2無線通信装置と、を備える。第1無線通信装置は、第2無線通信装置から送信されるフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するビーコン生成部を有する。第2無線通信装置は、ビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、取得されたビーコンフレームに含まれる受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、変調符号化方式(以下、「MCS(Modulation and Coding Scheme)」と称する。)を選定する選定部と、を有する。ここで、選定部は、予め設定された複数種類のMCSの中から、抽出された受信強度情報が示す受信強度が予め設定された受信強度閾値以上であり且つ1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最小となるMCSを選定する。
【0013】
本実施の形態1に係る無線通信システムは、例えば図1に示すように、無線通信装置1、2を備え、無線通信機能を有するPC(Personal Computer)3が接続される無線LAN(Local Area Network)を構築するために使用される。無線通信装置1は、例えばデータ回線終端装置(以下、「DCE」と称する。)4を介してインターネットのような広域ネットワークNW1に接続されたステーションとして機能する。また、無線通信装置2は、例えばPC3と無線通信装置1との間で送受信されるデータを中継するアクセスポイントとして機能する。ここで、PC3は、例えば、広域ネットワークに接続されたサーバ(図示せず)から、DCE4、無線通信装置1、2を介してデータを取得したり、無線通信装置2、1、DCE4および広域ネットワークNW1を介してサーバへデータを送信したりする。更に、無線通信装置2は、RADIUS(Remote Authentication Dial In User Service)サーバ5と通信可能となっている。RADIUSサーバ5は、無線通信装置2から認証要求フレームを取得すると、取得した認証要求フレームに含まれる認証対象となるクライアントのクライアント識別情報に基づいて認証処理を実行する。そして、RADIUSサーバ5は、認証が成功すると、認証対象となるクライアントを識別するクライアント識別情報を含む許可フレームを生成して無線通信装置2へ送信する。
【0014】
なお、本実施の形態1に係る無線通信システムでは、RADIUSサーバ5を備える構成で説明するが、必ずしも備えなくてもよい。RADIUSサーバ5を備えない場合は、クライアントを対象とした認証に関わる処理を備えないだけであり、無線通信システムにおけるその他の各機能は本実施の形態1に係る無線通信システムと同等である。
【0015】
無線通信装置1は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、無線モジュール105と、を備える。無線通信装置2も、CPU201と、主記憶部202と、補助記憶部203と、無線モジュール205と、各部を接続するバス109、209と、を備える。なお、無線通信装置1は、DCE4に有線接続されるインタフェース(図示せず)も備える。主記憶部102、202は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリから構成され、CPU101、201の作業領域として使用される。補助記憶部103、203は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ、または、SSD(Solid Stete Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等から構成されており、無線通信装置1、2を制御するためのプログラムを記憶する。
【0016】
無線モジュール105、205は、例えばIEEE802.11の無線LAN規格に適合する通信方式で通信する。無線モジュール105、205は、それぞれ、アンテナ(図示せず)と、受信回路(図示せず)と、信号処理部(図示せず)と、送信回路(図示せず)と、を有する。受信回路は、アンテナを介して無線信号を受信し、受信した無線信号に対応する信号を復調してベースバンド信号を生成して信号処理部へ出力する。送信回路は、信号処理部から入力されるベースバンド信号をキャリア信号を用いて変調することにより送信するフレームに対応する無線信号を生成し、生成した無線信号を、アンテナを介して送信する。ここで、無線モジュール105、205の送信回路は、CPU101、201から入力されるMCS情報に基づいて、当該MCS情報に対応する変調方式でキャリア信号を変調する。信号処理部は、例えばDSP(Digital Signal Processor)により実現され、受信回路から入力されるベースバンド信号に基づいて受信回路が受信した無線信号に対応するフレームを生成してバス109、209へ送出する。また、信号処理部は、主記憶部102、202からバス109、209を介して転送されてきたフレームに基づいてベースバンド信号を生成して送信回路へ出力する。
【0017】
無線通信装置1では、CPU101が、補助記憶部103が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行することにより、図3に示すように、接続要求部111、フレーム取得部112、RSSI(Received Signal Strength Indicator)抽出部113、選定部114およびフレーム転送部115として機能する。また、図2に示す補助記憶部103の一部は、RSSI記憶部131と、DBPS(Data Bit Per Symbol)記憶部132として機能する。RSSI記憶部131は、無線通信装置2から送信されるビーコンフレームに含まれるRSSI情報を記憶する。DBPS記憶部132は、例えば図4に示すように、1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズであるDBPSを、各MCSを識別するMCS識別番号とMCS毎に予め設定されたRSSI閾値を示す情報とに対応づけて記憶している。ここで、RSSI閾値は、例えばデータフレームを各MCSで無線通信装置2へ送信する場合の送信成功率を経験的に求め、その送信成功率が、予め設定された送信成功率閾値以上となるRSSIの下限値に設定される。送信成功率を求める具体例は実施の形態3で取り上げる。送信成功率閾値は、例えば80%乃至90%の範囲にある値に設定される。更に、図2に示す主記憶部102の一部は、図3に示すように、無線モジュール105或いは図1に示すDCE4から取得したフレームを一時的に記憶するフレームバッファ121として機能する。
【0018】
接続要求部111は、プローブ要求フレーム、認証要求フレーム、接続要求フレームを、無線モジュール105へ出力することにより無線通信装置1、2間での通信リンクを確立する。接続要求部111は、プローブ要求フレームを出力した後、フレーム取得部112からプローブ応答フレームの取得を通知されると、認証要求フレームを無線モジュール105へ転送する。そして、接続要求部111は、認証要求フレームを転送した後、フレーム取得部112から認証応答フレームの取得を通知されると、無線通信装置2に対して通信リンクの確立を要求する接続要求フレームを無線モジュール105へ転送する。ここで、プローブ要求フレーム、プローブ応答フレーム、認証要求フレーム、認証応答フレームおよび接続要求フレームは、いずれもIEEE802.11の無線LAN規格に適合する管理フレームに相当する。
【0019】
フレーム取得部112は、無線モジュール105、或いは、DCE4に接続されたインタフェースから、無線通信装置2に向けて送信されるデータフレームを受け取ると、取得したデータフレームをフレームバッファ121に記憶させる。また、フレーム取得部112は、プローブ応答フレーム、認証応答フレームを無線通信装置2から無線モジュール105を介して取得すると、取得したプローブ応答フレーム、認証応答フレームを取得したことを接続要求部111へ通知する。更に、フレーム取得部112は、接続応答フレームを取得した後、ビーコンフレームを無線通信装置2から無線モジュール105を介して取得すると、取得したビーコンフレームをRSSI抽出部113に通知する。ここで、接続応答フレームおよびビーコンフレームは、いずれもIEEE802.11の無線LAN規格に適合する管理フレームに相当する。
【0020】
RSSI抽出部113は、フレーム取得部112からビーコンフレームが通知されると、そのビーコンフレームに含まれるRSSI情報を抽出する受信強度情報抽出部である。RSSI抽出部113は、抽出したRSSI情報をRSSI記憶部131に記憶させる。
【0021】
選定部114は、DBPS記憶部132が記憶する予め設定された8つのMCSそれぞれのRSSI閾値を示す情報を参照して、8つのMCSの中から、RSSI記憶部131が記憶した、先の無線通信装置2からのビーコンにおけるRSSIが、予め設定されたRSSI閾値以上となるMCSを特定する。そして、選定部114は、特定したMCSの中からDBPSが最小となるMCSを選定する。そして、選定部114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する。また、選定部114は、生成したMCS情報を無線モジュール105へ転送するともに、MCS情報を無線モジュール105へ転送する旨を示したMCS転送通知情報をフレーム転送部115に通知する。
【0022】
フレーム転送部115は、選定部114からMCS転送通知情報が通知されると、フレームバッファ121が記憶するデータフレームを無線モジュール105へ転送する。
【0023】
無線通信装置2では、図2に示すCPU201が、補助記憶部203が記憶するプログラムを主記憶部202に読み込んで実行することにより、図3に示すように、フレーム取得部211、RSSI算出部212、認証処理部213、ビーコン生成部214およびフレーム転送部215として機能する。また、図2に示す補助記憶部203の一部は、RSSI記憶部231として機能する。RSSI記憶部231は、RSSI算出部212により算出されたRSSI値を示すRSSI情報を記憶する。更に、図2に示す主記憶部202の一部は、図3に示すように、無線モジュール205から取得したフレームを一時的に記憶するフレームバッファ221として機能する。
【0024】
フレーム取得部211は、無線モジュール205から、無線通信装置1またはPC3に向けて送信されるデータフレームを取得すると、取得したデータフレームをフレームバッファ221に記憶させる。また、フレーム取得部211は、プローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームを無線通信装置2から無線モジュール105を介して取得すると、取得したプローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームを認証処理部213へ通知する。更に、フレーム取得部211は、RADIUSサーバ5から許可フレームを取得すると、取得した許可フレームを認証処理部213に通知する。
【0025】
RSSI算出部212は、フレーム取得部211がプローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームに対応する無線信号を受信する際における受信信号強度に基づいて、RSSIを算出する。そして、RSSI算出部212は、算出したRSSI値を示すRSSI情報を生成してRSSI記憶部231に記憶させる。
【0026】
認証処理部213は、フレーム取得部211からプローブ要求フレームが通知されると、プローブ応答フレームを生成して無線モジュール205へ転送する。また、認証処理部213は、フレーム取得部211から認証要求フレームが通知されると、無線通信装置1を識別するクライアント識別情報を含む、RADIUSサーバ5宛ての認証要求フレームを生成して無線モジュール205へ転送する。その後、認証処理部213は、フレーム取得部211から無線通信装置1に対する許可フレームが通知されると、無線通信装置2の認証が成功したと判定し、認証応答フレームを生成して無線モジュール205へ転送する。更に、認証処理部213は、フレーム取得部211から接続要求フレームを取得すると、通信リンクを確立させることを通知する接続確立通知情報をビーコン生成部214およびフレーム転送部215に通知するとともに、接続応答フレームを生成して無線モジュール205へ転送する。
【0027】
ビーコン生成部214は、認証処理部213から接続確立通知情報が通知されると、RSSI記憶部231が記憶するRSSI情報を含むビーコンフレームを生成する。そして、ビーコン生成部214は、生成したビーコンフレームを無線モジュール205へ転送する。
【0028】
フレーム転送部215は、認証処理部213から接続確立通知情報が通知された後、フレームバッファ221が記憶するフレームを無線モジュール105へ転送する。
【0029】
次に、本実施の形態1に係る無線通信システムの動作について、図5および図6を参照しながら説明する。ここでは、無線通信装置2およびRADIUSサーバ5が既に起動しており、無線通信装置1を新たに起動する場合について説明する。無線通信装置1が起動すると、まず、プローブ要求フレームが、無線通信装置1から無線通信装置2へ送信される(ステップS1)。一方、無線通信装置2がプローブ要求フレームを取得すると、これに応じて、プローブ応答フレームが、無線通信装置2から無線通信装置1へ送信される(ステップS2)。一方、無線通信装置1がプローブ応答フレームを取得すると、無線通信装置1が生成した無線通信装置2宛ての認証要求フレームが、無線通信装置1から無線通信装置2へ送信される(ステップS3)。一方、無線通信装置2は、認証要求フレームを取得すると、RADIUSサーバ5宛ての認証要求フレームを生成してRADIUSサーバ5へ送信する認証処理を実行する(ステップS4)。ここで、無線通信装置2が、RADIUSサーバ5から許可フレームを取得し認証が成功したと判定したとする(ステップS5)。この場合、無線通信装置2が生成した認証が成功したことを通知する認証応答フレームが、無線通信装置2から無線通信装置1へ送信される(ステップS6)。
【0030】
一方、無線通信装置1が認証応答フレームを取得すると、前述の接続要求フレームが、無線通信装置1から無線通信装置2へ送信される(ステップS7)。一方、無線通信装置2は、接続要求フレームを取得すると、プローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームに対応する無線信号を受信する際の受信信号強度に基づいて、RSSI値を算出する。そして、無線通信装置2は、算出したRSSI値を示すRSSI情報を生成してRSSI記憶部231に記憶させる(ステップS8)。次に、無線通信装置2が生成した接続要求フレームに応じた接続応答フレームが、無線通信装置2から無線通信装置1へ送信される(ステップS9)。続いて、無線通信装置2は、RSSI記憶部231が記憶するRSSI情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS10)。ここで、RSSI情報は、例えば図6に示すビーコンフレームにおいて、IEEE802.11規格で利用者による自由な形式のデータの格納が許容される「Vendor-specific content」フィールドに格納される。図5に戻って、その後、生成されたビーコンフレームが、無線通信装置2から無線通信装置1へ送信される(ステップS11)。一方、無線通信装置1は、ビーコンフレームを取得すると、取得したビーコンフレームに含まれるRSSI情報を抽出してRSSI記憶部131に記憶させる(ステップS12)。
【0031】
次に、無線通信装置1が自装置内でデータフレームを受け取ったとする(ステップS13)。この場合、無線通信装置1は、取得したデータフレームをフレームバッファ121に記憶させる。続いて、無線通信装置1は、DBPS記憶部132が記憶する8つのMCSそれぞれのRSSI閾値を示す情報を参照して、8つのMCSの中から、RSSI記憶部131が記憶するRSSI情報が示すRSSIが予め設定されたRSSI閾値以上となるMCSを特定する。そして、無線通信装置1は、特定したMCSの中からDBPSが最小となるMCSを選定する(ステップS14)。このとき、無線通信装置1は、無線モジュール105が採用するMCSを、この選定したMCSに設定する。その後、フレームバッファ121が記憶するデータフレームが、このMCSを用いて無線通信装置1から無線通信装置2へ送信される(ステップS15)。
【0032】
一方、無線通信装置2は、無線通信装置1からデータフレームを取得すると、このデータフレームに対応する無線信号を受信する際の受信信号強度に基づいて、RSSI値を算出する。そして、無線通信装置2は、算出したRSSI値を示すRSSI情報を生成してRSSI記憶部231に記憶させる(ステップS16)。次に、無線通信装置2は、RSSI記憶部231が記憶するRSSI情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS17)。続いて、生成されたビーコンフレームが、無線通信装置2から無線通信装置1へ送信される(ステップS18)。一方、無線通信装置1は、ビーコンフレームを取得すると、取得したビーコンフレームに含まれるRSSI情報を抽出してRSSI記憶部131に記憶させる(ステップS19)。以後、無線通信装置1は、ビーコンフレームを取得する毎に、取得したビーコンフレームに含まれるRSSI情報を抽出し、抽出したRSSI情報でRSSI記憶部131が記憶するRSSI情報を更新していく。そして、無線通信装置1は、RSSI記憶部131が記憶するRSSI情報が示すRSSI値の変動に応じて選定するMCSを更新していく。
【0033】
次に、本実施の形態1に係る無線通信装置1が実行する通信制御処理について図7を参照しながら詳細に説明する。ここでは、無線通信装置1へ電源が投入された後、無線通信装置1、2の間で通信リンクが確立しており、プローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームに対応する無線信号を受信する際の受信信号強度から算出されたRSSI情報はRSSI記憶部131に記憶されているものとして説明する。まず、フレーム取得部112が、無線通信装置2からのビーコンフレームを取得したか否かを判定する(ステップS101)。ここで、フレーム取得部112が、ビーコンフレームを取得していないと判定すると(ステップS101:No)、後述のステップS103の処理が実行される。一方、フレーム取得部112が、ビーコンフレームを取得したと判定すると(ステップS101:Yes)、RSSI抽出部113が、ビーコンフレームに含まれるRSSI情報を抽出してRSSI記憶部131に記憶させる(ステップS102)。このとき、RSSI記憶部131が既にRSSI情報を記憶している場合、RSSI抽出部113は、抽出したRSSI情報でRSSI記憶部131が記憶するRSSI情報を更新する。
【0034】
続いて、フレーム取得部112は、無線通信装置2宛てのデータフレームを自装置で受け取ったか否かを判定する(ステップS103)。ここで、フレーム取得部112が、無線通信装置2宛てのデータフレームを受け取っていないと判定すると(ステップS103:No)、再びステップS101の処理が実行される。一方、フレーム取得部112は、無線通信装置2宛てのデータフレームを受け取ったと判定すると(ステップS103:Yes)、取得したデータフレームをフレームバッファ121に記憶させる。そして、選定部114は、DBPS記憶部132が記憶する8つのMCSそれぞれのRSSI閾値を示す情報を参照して、8つのMCSの中から、RSSI記憶部131が記憶するRSSI情報が示すRSSIが予め設定されたRSSI閾値以上となるMCSを特定する。そして、無線通信装置1は、特定したMCSの中からDBPSが最小となるMCSを選定する(ステップS104)。その後、選定部114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する(ステップS105)。このとき、無線モジュール105は、MCS情報が転送されると、送信回路が採用するMCSを、転送されたMCS情報が示すMCSに設定する。次に、フレーム転送部115は、フレームバッファ121が記憶するデータフレームを無線モジュール105へ転送する(ステップS106)。このとき、無線モジュール105は、設定されたMCSで、転送されてきたデータフレームに対応する無線信号を生成して無線通信装置2へ送信する。続いて、再びステップS101の処理が実行される。
【0035】
ところで、日本国内では、900MHz帯域におけるデューティ比10%規制のように、無線送信時間に厳しい制約が存在している。例えば、802.11ahの無線LAN規格に従って通信を行う場合など、このような制約が存在する環境下では、無線送信時間を如何に抑制するかが重要である。単位時間内に多くのデータフレームを送信したい場合、送信レートが高いMCSでの通信を行うことが一般的である。但し、送信レートが高くDBPSが大きいMCSで無線通信を行う場合、ノイズの影響を受け易くなりデータフレームが到達する確率は送信レートが低くDBPSの小さいMCSに比べて劣る。更に、データフレームが到達しない場合にはデータフレームの再送が発生してしまい、その結果、割り当てられた無線送信時間を余分に消費してしまう。また、IEEE802.11の無線LAN規格に適合した無線通信装置は、一般的にできるだけ送信レートの高いMCSを自動的に選択して送信を試みる。この場合、送信レートの高いMCSを採用することが適切でない環境下においても不必要に送信レートの高いMCSで送信を試みるため、データフレームの再送が頻発してしまい、その結果、割り当てられた無線送信時間を無駄に消費してしまう。
【0036】
これに対して、本実施の形態1に係る無線通信システムによれば、RSSI抽出部113が、フレーム取得部112により取得されたビーコンフレームに含まれるRSSI情報を抽出する。そして、選定部114が、複数種類のMCSの中から、抽出されたRSSI情報が示すRSSIがRSSI閾値以上であり且つDBPSが最小となるMCSを選定する。これにより、フレーム送信に必要なシンボル数を低減しつつ、フレーム送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることができる。従って、フレーム送信に必要なシンボル数を低減して単位時間内に送信できるデータ量を増加させながらも、フレーム送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることでフレームロスを低減することができる。それ故、データフレームの再送発生頻度が低減されるので、割り当てられた無線送信時間の無駄な消費が抑制できる。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る無線通信システムは、データフレームを送信するのに必要なシンボル数と複数種類のMCSそれぞれに対応するフレーム再送発生確率とに基づいて算出したシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する点で実施の形態1と相違する。本実施の形態2に係る無線通信システムは、実施の形態1と同様に、第1無線通信装置と、第1無線通信装置と無線通信可能な第2無線通信装置とを備える。ここで、第1無線通信装置は、実施の形態1と同様に、第2無線通信装置から送信されるフレームを受信する際の受信強度を示す受信強度情報を含むビーコンフレームを生成するビーコン生成部を有する。第2無線通信装置は、実施の形態1と同様に、ビーコンフレームを取得するフレーム取得部と、取得された前記ビーコンフレームに含まれる受信強度情報を抽出する受信強度情報抽出部と、を有する。但し、本実施の形態2に係る第2無線通信装置は、第1無線通信装置へ向けて送信するフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部と、シンボル数算出部と、期待値算出部と、MCSを選定する選定部と、を有する。ここで、シンボル数算出部は、複数種類のMCSそれぞれについて、送信データサイズと複数種類のMCSそれぞれでのDBPSとに基づいて、データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する。期待値算出部は、シンボル数算出部が算出したシンボル数と、RSSI情報が示すRSSIにおける複数種類のMCSそれぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する。そして、選定部は、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する。
【0038】
本実施の形態2に係る無線通信システムは、無線通信装置2001および実施の形態1と同じ無線通信装置2とを備え、無線通信装置2001は、例えばDCE4を介してインターネットのような広域ネットワークNW1に接続される。無線通信装置2001のハードウェア構成は、実施の形態1で説明した無線通信装置1のハードウェア構成と同様である。以下、実施の形態1と同様の構成については適宜図1図2と同一の符号を用いて説明する。
【0039】
無線通信装置2001では、CPU101が、補助記憶部103が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行することにより、図8に示すように、接続要求部111、フレーム取得部112、RSSI抽出部113、選定部2114、フレーム転送部115、サイズ特定部2116、シンボル数算出部2117および期待値算出部2118として機能する。なお、図8において、実施の形態1と同様の構成については図3と同一の符号を付している。また、補助記憶部103の一部は、RSSI記憶部131と、DBPS記憶部2132と、再送発生確率記憶部2133として機能する。DBPS記憶部2132は、1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズであるDBPSを、各MCSを識別するMCS識別番号に対応づけて記憶している。再送発生確率記憶部2133は、例えば図9に示すように、予め設定された複数種類のRSSIの範囲それぞれに対応する各MCSにおけるフレームの再送発生確率を、各MCSを識別するMCS識別番号に対応づけて記憶している。例えば図9に示すように、RSSI値が-85dBm以上-80dBm以下である場合、フレームの再送発生確率は、MCS識別番号が「0」乃至「2」のMCSでは0%、MCS識別番号が「3」乃至「7」のMCSではそれぞれ10%、30%、50%、70%、90%となることを表している。
【0040】
サイズ特定部2116は、フレームバッファ121が記憶する、無線通信装置2へ向けて送信するデータフレームに含まれるデータのサイズである送信データサイズを特定する。そして、サイズ特定部2116は、特定した送信データサイズを示す送信データサイズ情報をシンボル数算出部2117に通知する。
【0041】
シンボル数算出部2117は、DBPS記憶部2132が記憶する各MCSに対応するDBPS情報を参照して、複数種類のMCSそれぞれについて、サイズ特定部2116から通知される送信データサイズ情報が示す送信データサイズと、複数種類のMCSそれぞれのDBPSと、に基づいて、データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する。具体的には、シンボル数算出部2117は、複数種類のMCSそれぞれについて、データフレームを送信するのに必要なシンボル数SYMを、下記式(1)の関係式を用いて算出する。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、Ntは、データフレームに含まれる送信データサイズ(ビット数)を示し、Ndbpsは、1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズ(ビット数)を示す。Roundup(*)は、引数の小数点以下を切り上げて出力する関数を示す。また、シンボル数算出部2117は、算出した各MCSに対応するシンボル数SYMを示すシンボル数情報を期待値算出部2118に通知する。
【0044】
期待値算出部2118は、再送発生確率記憶部2133が記憶する再送発生確率情報の中から、RSSI記憶部131が記憶するRSSI情報が示すRSSIにおける複数種類のMCSそれぞれに対応するフレーム再送発生確率を示す再送発生確率情報を特定する。そして、期待値算出部2118は、シンボル数算出部2117が算出したシンボル数と、再送発生確率情報の中から特定した複数種類のMCSそれぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を、下記式(2)を用いて算出する。
【0045】
【数2】
【0046】
ここで、ExpSYMはシンボル期待値を示し、SYMは前記式(1)により算出されたSYM数を示す。また、RtRは再送発生確率を示す。Roundup(*)は、引数の小数点以下を切り上げて出力する関数を示す。
【0047】
期待値算出部2118では、再送が発生してしまうと、当該再送のための送信に必要なシンボル数分の送信時間が余分に費やされてしまうため、より実際の通信環境に適したMCSを選定すべく、これらを考慮した期待値を算出する。より具体的には、対象となるデータの通信において、RSSI値が-85dBである場合に、図9に示すフレーム再送発生確率に基づいて、DBPS記憶部2132を基に算出されるシンボル数SYMに加え、フレーム再送発生確率に先に算出された当該シンボル数SYMを乗算することで、シンボル数期待値を算出する。すなわち、シンボル数期待値とは、対象となるデータフレームのサイズから得られるシンボル数SYMに加えて、再送発生確率を加味し、送信に必要なシンボル数を予め算出した値である。期待値算出部2118は、算出したシンボル数期待値を示すシンボル数期待値情報を選定部2114に通知する。
【0048】
選定部2114は、複数種類のMCSの中から、シンボル数期待値情報が示すシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する。ここで、選定部2114は、選定したMCSが複数存在する場合、選定した複数のMCSの中から更にDBPSが最も小さいMCSを選定する。そして、選定部2114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する。また、選定部2114は、生成したMCS情報を無線モジュール105へ転送した後、MCS情報を無線モジュール105へ転送したことを通知するMCS転送通知情報をフレーム転送部115に通知する。
【0049】
次に、本実施の形態2に係る無線通信装置2001が実行する通信制御処理について図10を参照しながら詳細に説明する。ここでは、無線通信装置2001へ電源が投入された後、無線通信装置1、2の間で通信リンクが確立しており、プローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームに対応する無線信号を受信する際の受信信号強度から算出されたRSSI情報がRSSI記憶部131に記憶されているものとして説明する。まず、ステップS201乃至S203の一連の処理が実行される。ステップS201乃至S203の一連の処理は、実施の形態1で説明したステップS101乃至S103の一連の処理と同様である。そして、ステップS203において、フレーム取得部112は、無線通信装置2宛てのデータフレームを受け取ったと判定すると(ステップS203:Yes)、取得したデータフレームをフレームバッファ121に記憶させる。そして、サイズ特定部2116は、フレームバッファ121が記憶するフレームの送信データサイズを特定する(ステップS204)。ここで、サイズ特定部2116は、特定した送信データサイズを示す送信データサイズ情報をシンボル数算出部2117に通知する。
【0050】
次に、シンボル数算出部2117は、複数種類のMCSそれぞれについて、サイズ特定部2116から通知される送信データサイズ情報が示す送信データサイズと、複数種類のMCSそれぞれのDBPSと、に基づいて、式(1)によりデータフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する(ステップS205)。ここで、シンボル数算出部2117は、算出した各MCSに対応するシンボル数を示すシンボル数情報を期待値算出部2118に通知する。
【0051】
続いて、期待値算出部2118は、再送発生確率記憶部2133が記憶する再送発生確率情報の中から、RSSI記憶部131が記憶するRSSI情報が示すRSSIにおける複数種類のMCSそれぞれに対応するフレーム再送発生確率を示す再送発生確率情報を特定する。そして、期待値算出部2118は、シンボル数算出部2117が算出したシンボル数と、特定した複数種類のMCSそれぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、式(2)により複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する(ステップS206)。ここで、期待値算出部2118は、算出したシンボル数期待値を示すシンボル数期待値情報を選定部2114に通知する。
【0052】
その後、選定部2114は、複数種類のMCSの中から、シンボル数期待値情報が示すシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する(ステップS207)。ここで、選定部2114は、選定したMCSが複数存在する場合、選定した複数のMCSの中から更にDBPSが最も小さいMCSを選定する。次に、選定部2114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する(ステップS208)。このとき、選定部2114は、生成したMCS情報を無線モジュール105へ転送した後、MCS情報を無線モジュール105へ転送したことを通知するMCS転送通知情報をフレーム転送部115に通知する。続いて、フレーム転送部115は、MCS転送通知情報が通知されると、フレームバッファ121が記憶するデータフレームを無線モジュール105へ転送する(ステップS209)。このとき、無線モジュール105は、選定されたMCSで、転送されてきたデータフレームに対応する無線信号を生成して無線通信装置2へ送信する。その後、再びステップS201の処理が実行される。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態2に係る無線通信システムによれば、RSSI抽出部113が、フレーム取得部112により取得されたビーコンフレームに含まれるRSSI情報を抽出する。また、期待値算出部2118が、シンボル数算出部2117が算出したシンボル数と、RSSI情報が示すRSSIにおける複数種類のMCSそれぞれに対応するフレーム再送発生確率と、に基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する。そして、選定部2114が、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する。これにより、フレーム送信に必要なシンボル数を低減しつつ、フレーム送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることができる。従って、フレーム送信に必要なシンボル数を低減して単位時間内に送信できるデータ量を増加させながらも、フレーム送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることでフレームロスを低減することができる。
【0054】
(実施の形態3)
本実施の形態3に係る無線通信システムは、データフレーム送信後に確認応答フレーム(以下、ACK(ACKnowledgement)フレームと称する。)を取得する確率に基づいて、データフレームの送信成功率を算出し、データフレームを送信するのに必要なシンボル数と、複数種類のMCSそれぞれに対応する送信成功率と、に基づいて算出したシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する点で実施の形態1と相違する。なお、ここでいうデータフレームは、より具体的には送信成功率を算出するために用いられる検査用のフレーム(検査フレーム)などである。本実施の形態3に係る無線通信システムは、第1無線通信装置と、第1無線通信装置と無線通信可能な第2無線通信装置とを備える。ここで、第1無線通信装置は、第2無線通信装置から送信されるデータフレーム(検査フレーム)を受信した場合、第2無線通信装置に対してデータフレーム(検査フレーム)を受信したことを通知するACKフレームを生成する確認応答部を有する。第2無線通信装置は、ACKフレームを取得するフレーム取得部と、送信成功率算出部と、データサイズ特定部と、シンボル数算出部と、期待値算出部と、MCSを選定する選定部と、を有する。送信成功率算出部は、フレーム取得部がACKフレームを取得する確率に基づいて、第2無線通信装置から送信されるデータフレームが第1無線通信装置に送達される確率である送信成功率を算出する。期待値算出部は、シンボル数算出部が算出したシンボル数と、複数種類のMCSそれぞれに対応する送信成功率と、に基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する。そして、選定部は、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する。
【0055】
図11に示すように、本実施の形態3に係る無線通信システムは、無線通信装置3001、3002を備え、無線通信装置3001は、例えばDCE4を介してインターネットのような広域ネットワークNW1に接続される。無線通信装置3001、3002のハードウェア構成は、実施の形態1、2で説明した無線通信装置1、2および無線通信装置2001のハードウェア構成と同様である。以下、実施の形態1、2と同様の構成については適宜図1図2と同一の符号を用いて説明する。
【0056】
無線通信装置3001では、CPU101が、補助記憶部103が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行することにより、図11に示すように、接続要求部111、フレーム取得部112、選定部3114、フレーム転送部3115、サイズ特定部2116、シンボル数算出部2117、期待値算出部3118および送信成功率算出部3119として機能する。なお、図11において、実施の形態1、2と同様の構成については図3または図8と同一の符号を付している。また、補助記憶部103の一部は、送信成功率記憶部3131と、DBPS記憶部2132として機能する。送信成功率記憶部3131は、各MCSにおけるフレームの送信成功率を示す送信成功率情報を、各MCSを識別するMCS識別番号に対応づけて記憶している。
【0057】
フレーム取得部112は、無線通信装置2から送信されたACKフレームが無線モジュール105から転送されると、転送されたACKフレームを送信成功率算出部3119に通知する。
【0058】
送信成功率算出部3119は、無線通信装置2との通信リンクが確立された直後、無線通信装置2へ向けて送信成功率を算出するための検査フレームを予め設定された回数だけ送信した場合の各検査フレームに対応するACKフレームの取得回数から送信成功率を算出する。ここで、送信成功率算出部3119は、検査フレーム送信後、予め設定された基準時間内にフレーム取得部112からACKフレームが通知された場合、送信が成功したと判定する。ここで、基準時間は、例えば4msecに設定される。そして、送信成功率算出部3119は、無線通信装置2宛ての検査フレームを予め設定された回数だけ送信した場合の送信成功回数と送信失敗回数とを集計し、送信成功回数の比率を送信成功率として算出する。また、送信成功率算出部3119は、複数種類のMCSそれぞれについて、ACKフレーム取得回数から送信成功率を算出し、算出した送信成功率を示す送信成功率情報を、各MCSを識別するMCS識別番号に対応づけて送信成功率記憶部3131に記憶させる。また、送信成功率算出部3119は、データフレームが無線通信装置2へ送信される毎に、通信装置2から送信されるACKフレームの取得回数から、対応するMCSの送信成功率を算出し、算出した送信成功率を示す送信成功率情報で送信成功率記憶部3131が記憶する送信成功率情報を更新する。
【0059】
期待値算出部3118は、シンボル数算出部2117が算出したシンボル数と、送信成功率記憶部3131が記憶する複数種類のMCSそれぞれに対応する送信成功率と、に基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する。期待値算出部3118は、算出したシンボル数期待値を示すシンボル数期待値情報を選定部3114に通知する。
【0060】
選定部3114は、複数種類のMCSの中から、シンボル数期待値情報が示すシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する。ここで、選定部3114は、選定したMCSが複数存在する場合、選定した複数のMCSの中から更にDBPSが最も小さいMCSを選定する。そして、選定部3114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する。また、選定部3114は、生成したMCS情報を無線モジュール105へ転送した後、MCS情報を無線モジュール105へ転送したことを通知するMCS転送通知情報をフレーム転送部3115に通知する。
【0061】
フレーム転送部3115は、選定部3114からMCS転送通知情報が通知されると、フレームバッファ121が記憶するデータフレームを無線モジュール105へ転送する。ここで、フレーム転送部3115は、データフレームを無線モジュール105へ転送する毎に、データフレームを無線モジュール105へ転送したことを通知するデータフレーム転送通知情報を送信成功率算出部3119に通知する。
【0062】
無線通信装置3002では、CPU201が、補助記憶部203が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行することにより、図11に示すように、フレーム取得部3211、認証処理部213、フレーム転送部215および確認応答部3216として機能する。また、主記憶部202の一部は、無線モジュール205から取得したフレームを一時的に記憶するフレームバッファ221として機能する。
【0063】
フレーム取得部3211は、データフレームを取得すると、取得したデータフレームをフレームバッファ221に記憶させる。また、フレーム取得部3211は、プローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームを取得すると、取得したプローブ要求フレーム、認証要求フレームまたは接続要求フレームを認証処理部213へ通知する。更に、フレーム取得部3211は、RADIUSサーバ5から許可フレームを取得すると、取得した許可フレームを認証処理部213に通知する。また、フレーム取得部3211は、検査フレームまたはデータフレームを取得すると、検査フレームまたはデータフレームを取得したことを通知するフレーム取得通知情報を確認応答部3216に通知する。
【0064】
確認応答部3216は、フレーム取得部3211からフレーム取得通知情報が通知されるとACKフレームを生成して無線モジュール205へ転送する。
【0065】
次に、本実施の形態3に係る無線通信システムの動作について、図12を参照しながら説明する。無線通信装置3001が起動すると、まず、ステップS51乃至S57までの一連の処理が実行される。このステップS51乃至S57までの一連の処理は、実施の形態1で説明したステップS1乃至S7までの一連の処理と同様である。次に、無線通信装置2は、接続要求フレームを取得すると、これに応じた接続応答フレームを生成する。そして、生成された接続応答フレームが、無線通信装置3002から無線通信装置3001へ送信される(ステップS58)。続いて、無線通信装置3001が接続応答フレームを取得すると、前述の検査フレームが、無線通信装置3001から無線通信装置3002へ送信される(ステップS59)。ここで、検査フレームが無線通信装置3002に到達し、無線通信装置3002が検査フレームを取得すると、この検査フレームに応じたACKフレームが、無線通信装置3002から無線通信装置3001へ送信される(ステップS60)。その後、検査フレームが、全てのMCSについて予め設定された回数だけ無線通信装置3001から無線通信装置3002へ送信され、検査フレームが無線通信装置3002に到達するに応じてACKフレームが無線通信装置3001へ送信される。
【0066】
ここで、無線通信装置3001が、全てのMCSについて予め設定された回数(xmax回)だけ検査フレームの送信が完了したと判定したとする(ステップS61)。この場合、無線通信装置3001は、検査フレームの送信の成功回数と失敗回数とを集計する(ステップS62)。次に、無線通信装置3001は、集計結果に基づいて、各MCSにおける送信の成功回数の比率を送信成功率として算出し、算出した送信成功率を示す送信成功率情報を、各MCSを識別するMCS識別番号に対応づけて送信成功率記憶部3131に記憶させる(ステップS63)。
【0067】
続いて、無線通信装置3001が自装置でデータフレームを受け取ったとする(ステップS64)。この場合、無線通信装置3001は、取得したデータフレームをフレームバッファ121に記憶させる。その後、無線通信装置3001は、フレームバッファ121が記憶するフレームの送信データサイズを特定する(ステップS65)。次に、無線通信装置3001は、複数種類のMCSそれぞれについて、前述の送信データサイズと複数種類のMCSそれぞれのDBPSとに基づいて、データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する(ステップS66)。続いて、無線通信装置3001は、算出したシンボル数と、送信成功率記憶部3131が記憶する複数種類のMCSそれぞれに対応する送信成功率とに基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する(ステップS67)。その後、無線通信装置3001、複数種類のMCSの中から、シンボル数期待値情報が示すシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する(ステップS68)。このとき、無線通信装置3001は、無線モジュール105のMCSを、ステップS68で選定したMCSに設定する。次に、フレームバッファ121が記憶するデータフレームが、当該MCSを用いて、無線通信装置3001から無線通信装置3002へ送信される(ステップS69)。
【0068】
一方、無線通信装置3002がデータフレームを取得すると、データフレームに対応するACKフレームが、無線通信装置3002から無線通信装置3001へ送信される(ステップS70)。一方、無線通信装置3001は、データフレーム送信後、データフレームを送信した際のMCSに対応する送信成功率を算出しなおし、算出した送信成功率を示す送信成功率情報で送信成功率記憶部3131が記憶する送信成功率情報を更新する(ステップS71)。以後、無線通信装置1は、データフレームを送信する毎に、送信成功率を算出し、算出した送信成功率を示す送信成功率情報で送信成功率記憶部3131が記憶する送信成功率情報を更新していく。そして、無線通信装置3001は、送信成功率記憶部3131が記憶する送信成功率情報が示す送信成功率の変動に応じて選定するMCSを更新していく。
【0069】
次に、本実施の形態3に係る無線通信装置3001が実行する通信制御処理について図13を参照しながら詳細に説明する。ここでは、無線通信装置3001へ電源が投入された後、無線通信装置3001、3002の間で通信リンクが確立しており、検査フレームを予め設定された回数だけ無線通信装置3002へ送信することにより送信成功率情報が送信成功率記憶部3131に記憶されているものとして説明する。まず、ステップS301乃至S303の一連の処理が実行される。ステップS301乃至S303の一連の処理は、実施の形態2で説明したステップS203乃至S205の一連の処理と同様である。次に、期待値算出部3118は、シンボル数算出部2117が算出したシンボル数と、送信成功率記憶部3131が記憶する複数種類のMCSそれぞれに対応する送信成功率と、に基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する(ステップS304)。期待値算出部3118は、算出したシンボル数期待値を示すシンボル数期待値情報を選定部3114に通知する。
【0070】
続いて、選定部3114は、複数種類のMCSの中から、シンボル数期待値情報が示すシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する(ステップS305)。ここで、選定部3114は、選定したMCSが複数存在する場合、選定した複数のMCSの中から更にDBPSが最も小さいMCSを選定する。次に、選定部3114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する(ステップS306)。このとき、選定部3114は、生成したMCS情報を無線モジュール105へ転送した後、MCS情報を無線モジュール105へ転送したことを通知するMCS転送通知情報をフレーム転送部3115に通知する。続いて、フレーム転送部3115は、MCS転送通知情報が通知されると、フレームバッファ121が記憶するデータフレームを無線モジュール105へ転送する(ステップS307)。ここで、フレーム転送部3115は、データフレームを無線モジュール105へ転送する毎に、データフレームを無線モジュール105へ転送したことを通知するデータフレーム転送通知情報を送信成功率算出部3119に通知する。このとき、無線モジュール105は、設定されたMCSで、転送されてきたデータフレームに対応する無線信号を生成して無線通信装置2へ送信する。
【0071】
その後、フレーム取得部112は、無線通信装置2から送信されたACKフレームを取得したか否かを判定する(ステップS308)。ここで、フレーム取得部112が、無線通信装置2から送信されたACKフレームを取得していないと判定したとする(ステップS308:No)。この場合、フレーム転送部3115は、データフレームの再送回数Nrが予め設定された再送回数閾値Nrmaxを超えているか否かを判定する(ステップS309)。ここで、フレーム転送部3115は、データフレームの再送回数Nrが再送回数閾値Nrmax以下であると判定すると(ステップS309:No)、再びステップS307の処理を実行する。一方、フレーム転送部3115が、データフレームの再送回数Nrが再送回数閾値Nrmaxを超えていると判定したとする(ステップS309:Yes)。この場合、送信成功率算出部3119は、対応するMCSの送信成功率を算出し、算出した送信成功率を示す送信成功率情報で送信成功率記憶部3131が記憶する送信成功率情報を更新する(ステップS310)。次に、選定部3114は、既に選定しているMCSのMCS識別番号が「0」であるか否かを判定する(ステップS311)。ここで、選定部3114は、既に選定しているMCSのMCS識別番号が「0」ではないと判定すると(ステップS311:No)、MCSをMCS識別番号の1つ小さいMCSを再度選定する(ステップS312)。続いて、再びステップS306の処理が実行される。一方、選定部3114が、既に選定しているMCSのMCS識別番号が「0」であると判定すると(ステップS311:Yes)、そのままステップS306の処理が実行される。
【0072】
また、ステップS308において、フレーム取得部112が、無線通信装置2から送信されたACKフレームを取得したとする(ステップS308:Yes)。この場合、送信成功率算出部3119は、対応するMCSの送信成功率を算出し、算出した送信成功率を示す送信成功率情報で送信成功率記憶部3131が記憶する送信成功率情報を更新する(ステップS313)。その後、再びステップS301の処理が実行される。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態3に係る無線通信システムによれば、送信成功率算出部3119が、フレーム取得部112がACKフレームを取得する確率に基づいて送信成功率を算出する。また、期待値算出部3118が、シンボル数算出部2117が算出したシンボル数と、複数種類のMCSそれぞれに対応する送信成功率と、に基づいて、複数種類のMCSそれぞれにおけるシンボル数期待値を算出する。そして、選定部3114が、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数期待値が最小となるMCSを選定する。これにより、フレーム送信に必要なシンボル数を低減しつつ、フレーム送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることができる。従って、フレーム送信に必要なシンボル数を低減して単位時間内に送信できるデータ量を増加させながらも、フレーム送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることでフレームロスを低減することができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態1~3について詳細に説明したが、本発明は前述の各実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば実施の形態1、2において、無線通信装置2が、無線信号の受信信号強度に基づいて、SNRを算出するSNR算出部を有し、ビーコン生成部214が、算出されたSNRを示すSNR情報を含むビーコンフレームを生成するものであってもよい。この場合、DBPS記憶部は、例えばDBPSを、各MCSを識別するMCS識別番号とMCS毎に予め設定されたSNR閾値を示す情報とに対応づけて記憶すればよい。そして、選定部114が、DBPS記憶部が記憶する複数のMCSそれぞれのSNR閾値を示す情報を参照して、複数のMCSの中から、SNR記憶部が記憶するSNR情報が示すSNRがSNR閾値以上となるMCSを選定するようにすればよい。
【0075】
実施の形態3では、無線通信装置1が、無線通信装置2との通信リンクが確立された直後、無線通信装置2へ向けて検査フレームを予め設定された回数だけ送信した場合のACKフレームの取得回数から送信成功率を算出する例について説明した。但し、これに限らず、送信成功率記憶部3131が、予め複数種類のMCSそれぞれについて送信成功率の初期値を示す送信成功率情報を、各MCSを識別するMCS識別番号に対応づけて記憶しているものであってもよい。本構成によれば、無線通信装置1が、無線通信装置2との通信リンクが確立された直後の無線通信装置2への検査フレームの送信処理を省略することができるので、その分、無線通信装置1を早期に起動させることができる。
【0076】
本発明に係る無線通信装置1、2、2001、3001、3002の各種機能は、専用のシステムによらず、無線モジュールを備えるコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、ネットワークに接続されているコンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、コンピュータシステムが読み取り可能な非一時的な記録媒体(CD-ROM等)に格納して配布し、当該プログラムをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行する無線通信装置1を構成してもよい。
【0077】
また、コンピュータにプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムは、通信回線のサーバにアップロードされ、通信回線を介してコンピュータに配信されてもよい。そして、コンピュータは、このプログラムを起動して、OSの制御の下、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、コンピュータは、上述の処理を実行する無線通信装置1として機能する。
【0078】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の無線通信装置は、無線LANに使用されるステーション並びにアクセスポイントとして好適である。
【符号の説明】
【0080】
1,2,2001,3001,3002:無線通信装置、3:PC、4:DCE、5:RADIUSサーバ、101,201:CPU、102,202:主記憶部、103,203:補助記憶部、105,205:無線モジュール、111:接続要求部、112,211,2112,3211:フレーム取得部、113:RSSI抽出部、114,2114:選定部、115,215,3115:フレーム転送部、212:RSSI算出部、213:認証処理部、214:ビーコン生成部、121,221:フレームバッファ、131,231:RSSI記憶部、132,2132:DBPS報記憶部、2116:サイズ特定部、2117:シンボル数算出部、2118,3118:期待値算出部、2133:再送発生確率記憶部、3119:送信成功率算出部、3131:送信成功率記憶部、3216:確認応答部、NW1:ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13