(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】尿ポンプデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20240311BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61M1/00 130
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2021543267
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2020052115
(87)【国際公開番号】W WO2020157105
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】510239897
【氏名又は名称】ウニベルジテート ベルン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク オブリスト
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ クラヴィカ
(72)【発明者】
【氏名】フィオナ ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】マルク シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス べローター
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-506145(JP,A)
【文献】特開2009-247691(JP,A)
【文献】登録実用新案第3198730(JP,U)
【文献】特開平08-052133(JP,A)
【文献】特表2002-512841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014217(US,A1)
【文献】特表平10-502547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61N 1/04
A61F 2/48
A61F 5/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患
者の尿
道を通る流体の流れを発生させるための尿ポンプデバイ
スであって、該尿ポンプデバイスは、
尿道に隣接する組織を物理的に押圧することによって、前記尿
道の断続的な圧縮および解放を誘発するように構成された起動装
置と、位置決めユニッ
トと、を含み、
前記起動装
置が、前記位置決めユニッ
トに取り付けられ、かつ、
前記起動装
置を用いて前記尿
道を断続的に圧縮および解放するため前記起動装
置が前記患
者の前記尿
道にアクセス可能であるよう、前記位置決めユニッ
トが、前記起動装
置に対して前記患
者の身体を位置付けるように配置され
、前記尿ポンプデバイスはさらに、前記尿道の周期的な圧縮および解放が、前記起動装置により、所定の周波数で、および任意に、所定の振幅、所定の圧力、所定の力および/または所定のデューティサイクルで発生可能であるよう、該起動装置を制御するように構成された制御ユニットを含む、尿ポンプデバイス。
【請求項2】
前記位置決めユニッ
トが、トイレまたは便座を含む、請求項1に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項3】
前記起動装
置が、前記患
者の前記尿
道を圧縮するのに適切な位置で前記患
者の身体を押圧するように構成された押し部
材を含む、請求項1または2に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項4】
前記押し部
材に結合され、かつ、前記押し部
材を動かして前記患
者の前記尿
道を圧縮するように構成された駆動
部を含む、請求項3に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項5】
前記所定の周波数が、約1Hz~約50Hzの範囲内であり、好ましくは約5Hz~約20Hzの範囲内である、請求項
1に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項6】
前記起動装
置に電力を供給するように構成された電源ユニットを含む、請求項1~
5のいずれかに記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項7】
患
者の尿
道を通る流体の流れを発生させるための尿ポンプデバイ
スであって、該尿ポンプデバイスは、
尿道に隣接する組織を物理的に押圧することによって、前記尿
道の断続的な圧縮および解放を誘発するように構成された起動装
置と、
前記起動装
置を前記患
者の身体に対して取り付けるおよび取り外すための取り付け構
造と、を含み、
前記取り付け構
造が、前記患
者の前記尿
道が前記起動装
置を用いて断続的に圧縮および解放できるよう、前記患
者の身体に前記起動装
置を位置決めするように構成され
、前記尿ポンプデバイスはさらに、前記尿道の周期的な圧縮および解放が、前記起動装置により、所定の周波数で、および任意に、所定の振幅、所定の圧力、所定の力および/または所定のデューティサイクルで発生可能であるよう、該起動装置を制御するように構成された制御ユニットを含む、尿ポンプデバイス。
【請求項8】
前記起動装
置が、前記患
者の陰
茎の周りに配置されるように寸法が定められた周囲部
分を含む、請求項
7に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項9】
前記起動装
置が、前記患
者の前記陰
茎の周りに配置されたときに、前記周囲部
分の直径を減少させるように構成された直径アジャスタ
ーを含む、請求項
8に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項10】
前記起動装
置の前記周囲部
分が、前記周囲部
分の周囲を遮断する凹
部を有し、かつ、該起動装
置の前記直径アジャスタ
ーが、前記凹
部の円周方向の拡張を変化させるように構成された、請求項
8に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項11】
前記起動装
置の前記直径アジャスタ
ーが、前記凹
部の一方の側で前記周囲部
分に枢動可能に取り付けられかつ前記凹
部の他方の側に接続されるレバ
ーを含む、請求項
10に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項12】
前記起動装
置の前記直径アジャスタ
ーが、前記レバ
ーに結合され、かつ前記レバ
ーを枢動させるように構成された駆動
部を含む、請求項
11に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項13】
前記周囲部
分がリング部
分を含む、請求項
8~
12のいずれかに記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項14】
前記起動装
置の前記周囲部
分が、刺激されたときに該周囲部
分の直径の変化を示す寸法可変材料を含む、請求項
8~
13のいずれかに記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項15】
前記起動装
置の前記周囲部
分の前記寸法可変材料が、ポリマー材料である、請求項
14に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項16】
前記起動装
置が、前記周囲部
分に取り付けられた押し部
材を含み、該押し部
材が、前記患
者の前記陰
茎を押圧するように構成された、請求項
8~
15のいずれかに記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項17】
前記押し部
材に結合され、かつ前記押し部
材を傾斜させるように構成された駆動
部を含む、請求項
16に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項18】
前記起動装
置が、前記患
者の膣内に配置されるように寸法が定められたプラグ部
分を含む、請求項
7に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項19】
起動部分が、前記患
者の前記膣内に配置されたときに前記プラグ部
分の直径を変えるように構成されたプラグアジャスタ
ーを含む、請求項
18に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項20】
前記起動装
置の前記プラグ部
分が、刺激されたときに前記プラグ部
分の直径の変化を示す寸法可変材料を含む、請求項
18または
19に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項21】
前記起動装
置の前記プラグ部
分の前記寸法可変材料が、ポリマー材料である、請求項
20に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項22】
前記プラグ部
分が、前記患
者の前記膣を前記尿
道に向かって押圧するように構成された押しセクショ
ンを含む、請求項
18に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項23】
前記プラグ部
分の前記押しセクショ
ンに結合され、かつ、前記押しセクショ
ンを傾斜させるように構成された駆動
部を含む、請求項
22に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項24】
前記取り付け構
造が、前記患
者の陰茎を収容するように構成された陰茎収容セクショ
ンであって、前記患
者の前記陰
茎が該陰茎収容セクショ
ンに収容されたときに前記起動装
置を用いて前記患
者の前記尿
道が断続的に圧縮および解放できるような、該陰茎収容セクショ
ンを含む、請求項
7に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項25】
前記取り付け構
造が、前記患
者のある指が該患
者の前記陰
茎を前記陰茎収容セクショ
ンに押し付けたときに該患
者の別の少なくとも1本の指を収容するように構成された指収容セクショ
ンを含む、請求項
24に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項26】
前記起動装
置が、前記患
者の前記陰
茎が前記陰茎収容セクションに収容されたときに該患
者の該陰
茎を押圧するように構成された押し部
材を含む、請求項
24または
25に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項27】
前記所定の周波数が、約1Hz~約50Hzの範囲内であり、好ましくは約5Hz~約20Hzの範囲内である、請求項
7に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項28】
前記起動装
置に電力を供給するように構成された電源ユニッ
トを含む、請求項
7~
27のいずれかに記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項29】
前記電源ユニッ
トが、前記起動装
置および前記取り付け構
造から遠隔して位置決め可能であるように、前記起動装
置および前記取り付け構
造から離隔している、請求項
28に記載の尿ポンプデバイ
ス。
【請求項30】
前記起動装
置を調整するように構成された制御ユニッ
トを含む、請求項
7~
29のいずれかに記載の尿ポンプデバイ
ス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前文に係る尿ポンプデバイスに関する。このようなデバイスは、患者の尿道を通る液体の流れを発生させるために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
今日、ますます多くの人が泌尿器の欠陥に苦しんでいる。特に、先進国での平均寿命の高まりにより、泌尿器機能障害がより一般的になっている。このような泌尿器機能障害の1つは、低活動膀胱に関連している。低活動膀胱に直面している患者は、典型的には、膀胱を自然に空にした後でさえ尿の残分が膀胱内に留まってしまうように、膀胱を完全に空にすることができない。
【0003】
膀胱内におけるかかる残尿により、膀胱を空にしたいという衝動が存在し続けるため、患者に不快感を引き起こす可能性がある。また、炎症やその他の二次的な病気を引き起こす可能性もある。
【0004】
低活動膀胱を有する患者を治療するため、膀胱から残尿を除去する目的で、尿道を通して膀胱にパイプまたはカテーテルを導入することが知られている。しかしながら、そのようなプロセスは、膀胱を十分に空にすることが可能であるものの、比較的繊細で適用するのが複雑である。特に、パイプの導入は、望ましくないことが多く、また、患者に影響を与えないようにオペレーターまたは患者への訓練を要する。さらに、膀胱をそのように空にするには、相当にかさばるおよび/または重い可能性のある適切な機器を利用できることが必要となる。加えて、カテーテルを使用すると、尿路感染症を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、患者の膀胱を空にすることを可能にする、改善され容易に適用可能なシステムまたはデバイスの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この必要性は、独立請求項1の特徴によって定義されるような尿ポンプデバイスによって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
第1の態様において、本発明は、患者の尿道を通る流体の流れを発生させるための尿ポンプデバイスであって、該尿ポンプデバイスは、(i)前記尿道の断続的な圧縮および解放を誘発するように構成された起動装置(activation arrangement)と、(ii)前記起動装置を前記患者の身体に対して取り付けるおよび取り外すための取り付け構造と、を含む。前記取り付け構造は、前記患者の前記尿道が前記起動装置を用いて断続的に圧縮および解放されるよう、前記患者の身体に前記起動装置を位置決めするように構成される。
【0008】
尿道を圧縮および解放できることにより、デバイスは、ぜん動ポンプまたはインピーダンスポンプとして動作することができる。それにより、ぜん動ポンプとして操作される場合、起動装置は、尿道の隣接するセクションを次々に圧縮および/または拡張するように構成することができる。このように、尿は膀胱から尿道に前進し、波のような動きで外部に押し出される。インピーダンスポンプとして操作される場合、起動装置は、特定の周波数および位置で、尿道を圧縮および/または拡張するように構成することができる。逆に、インピーダンスポンプを反対方向に操作することにより、液体または流体を膀胱に送り出すことができる。かかる膀胱の充満は、治療目的のために提供され得る。また、治療目的のために、膀胱の交互の充満および排尿が誘発されてもよい。
【0009】
デバイスによって送り出される流体は、特には液体とすることができる。より具体的には、膀胱から送り出される尿、膀胱へと送り出される液体薬剤または生理食塩水などの別の治療液、などとすることができる。
【0010】
起動装置の取り付け(mounting)および取り外し(unmounting)、または取り出し(demounting)は、非外科的または非侵襲的な操作である。特に、上記操作は、患者の身体外から行われる操作である。それにより、ある実施形態では、上記操作は、例えば膣などの外側からアクセス可能な体腔内に、何かを位置決めすることを包含し得る。しかしながら、いずれの外科的または他の侵襲的なステップも、本発明による取り付けおよび取り外しからは除外される。したがって、起動装置の身体への取り付けおよび取り外しは、該起動装置を身体にまたは身体内に取り付け、また、それを身体からまたは身体内から取り外すことであり得る。典型的には、起動装置の取り付けおよび取り外しは、それぞれ自己取り付けまたは自己取り外しと称され得るように、患者自身によって行うことができる。
【0011】
患者または別の人間が、起動装置を手動で取り付けおよび取り外しすることが可能である。例えば、起動装置を、尿道にアクセス可能な患者の身体の適切なスポットに、手動で押し付けるまたは位置決めすることができる。そのようなアプリケーションにおいては、起動装置を身体の該スポットに押し付けるまたは位置決めする際、患者または別の人の手または別の身体部分を受け入れるために、取り付け構造を起動装置においてまたは起動装置内で具体化することができる。さらにまたはあるいは、そのような実施形態においては、該取り付け構造が、身体部分のスポットを受け入れるように構成された起動装置での構造または形状を含んでもよい。例えば、この構造は、患者の陰茎を受け入れるように形作られてもよい。
【0012】
特に、本発明に係る尿ポンプデバイスのそのような手動で適用可能な実施形態において、前記取り付け構造は、好ましくは、患者の陰茎を収容するように構成された陰茎収容セクションであって、患者の陰茎が該陰茎収容セクションに収容されたときに前記起動装置を用いて前記患者の尿道が断続的に圧縮および解放され得るような、該陰茎収容セクションを含む。
【0013】
例えば、尿ポンプデバイスのそのような手動で適用可能な実施形態は、患者に手動で適用される手持ち型のデバイスとして実現され得る。それにより、前記取り付け構造は、好ましくは、患者のある指が該患者の陰茎を上記陰茎収容セクションに押し付けたときに該患者の別の少なくとも1本の指を収容するように構成された、指収容セクションを含む。例えば、前記指収容セクションおよび前記陰茎収容セクションは、前記手持ち型のデバイスの半ば反対側に位置している。これにより、陰茎を陰茎収容セクションに都合よくかつ効率的に押し付けることができる。
【0014】
それに関して、前記起動装置は、好ましくは、患者の陰茎が上記陰茎収容セクションに収容されたときに患者の該陰茎を押圧するように構成された押し部材を含む。
【0015】
本発明の文脈における「断続的な尿道の圧縮および解放を誘発する」という用語は、直接的な改変、すなわち尿道の圧縮および解放、ならびに間接的な改変に関する。直接的な改変は、例えば、尿道またはその隣接組織を物理的に押圧することによって具体化することができる。間接的な改変は、例えば、順次尿道を圧縮および解放する尿道括約筋などの筋肉を活性化することによって具体化することができる。
【0016】
本発明に係る尿ポンプデバイスは、膀胱からまたは膀胱内に流体を供給することを可能にする。該デバイスは、自己操作可能であるため、便利なアプリケーションを可能にする。このように、治療の受け入れを増やしていくことにより、治療の質を向上させることができるようになる。
【0017】
例えば、一つの実施形態において、前記尿ポンプデバイスは、容易に携帯可能であるように比較的小さい。また、患者は、排尿前に前記起動装置を取り付け、膀胱が多かれ少なかれ完全に空になるよう排尿中に該尿ポンプデバイスを操作し、次いで、排尿が終わった後に該起動装置を取り外す。また、患者は、前記デバイスまたはそれの起動装置を、常に身に着けることができる。このようなアプリケーションでは、リモートコントロールが特に有益である。
【0018】
好ましい実施形態において、前記起動装置は、患者の陰茎の周りに配置されるように寸法が定められた周囲部分を含む。そのような周囲部分は、例えば、陰茎に引っ張られるように、または陰茎の周りに巻き付けられるように設計することができる。該周囲部分は、取り付けられるとき、陰茎の全周またはその一部の周りに延在することができる。そのような周囲部分は、陰茎尿道に効率的に作用し、それにより、例えばぜん動ポンプまたはインピーダンスポンプとして、ポンピングを誘発することを可能にする。このように、前記尿ポンプデバイスは、男性患者用に効率的に設計することができる。
【0019】
それに関して、前記起動装置は、好ましくは、患者の陰茎の周りに配置されたときに、前記周囲部分の直径を減少させるように構成された直径アジャスターを含む。そのような直径アジャスターは、陰茎尿道を効率的に加圧し、それによって膀胱からのまたは膀胱に向かうポンピングを誘発することを可能にする。
【0020】
それに関して、前記起動装置の周囲部分は、好ましくは、該周囲部分の周囲を遮断する凹部またはギャップを有し、かつ、該起動装置の直径アジャスターが、前記凹部またはギャップの円周方向の拡張を変化させるように構成される。前記凹部もしくはギャップの拡張または寸法を変化させることにより、前記周囲部分の直径を変更することができる。例えば、前記凹部の円周方向の拡張を縮小したとき、前記周囲部分の直径はそれに応じて減少される。このように、陰茎尿道を効率的に加圧することができる。
【0021】
好ましくは、前記起動装置の直径アジャスターは、前記凹部の一方の側で前記周囲部分に枢動可能に取り付けられかつ前記凹部の他方の側に接続されるレバーを含む。この文脈における「枢動可能」という用語は、特定の角度についての回転、または完全な回転、すなわち360°の回転に関連し得る。前記レバーは、バンド、ケーブル、ロッドまたはその他の適切な構造を用いて、前記凹部の他方の側に接続可能である。このような枢動可能なレバーにより、前記周囲部分の直径を効率的に変えることができる。特に、前記陰茎尿道の断続的な圧縮および解放が効率的に実施され得るように、該直径を反復サイクルで変えることができる。
【0022】
それに関して、前記起動装置の前記直径アジャスターは、好ましくは、前記レバーに結合され、かつ前記レバーを枢動させるように構成された駆動部を含む。そのような駆動部は、例えば、電気モーター、リニアモーターなどを有することができる。また、該駆動部は、前記周囲部分の直径を正確かつ効率的に調整することができる。
【0023】
前記周囲部分は、前記陰茎の周りに巻き付けられるように構成されたカフまたはカフのような構造であり得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、前記周囲部分は、リング部分として具体化されるか、またはリング部分を含む。この文脈において、「リング部分」という用語は、完全なリングまたは閉じたリングだけでなく、リングのセクションもカバーする。通常、前記リング部分は、前記陰茎の円周の大部分に延在するように設計されている。そのようなリング部分またはリングは、便利なアプリケーションが可能であるように、前記陰茎の上部または上面に効率的に引っ張るまたは配置することができる。
【0024】
特に、前記流体がぜん動的に送り出される実施形態では、前記起動装置は、複数のリングまたは一連のリングなどの複数の周囲部分を含むことができ、または、該周囲部分は、直径が個々に可変である複数のセクションを備えることができる。
【0025】
1つのバリエーションにおいては、前記起動装置の前記周囲部分は、好ましくは、刺激されたときに該周囲部分の直径の変化を示す寸法可変材料(dimension variable material)を含む。刺激は、温度変化、放射、圧力誘導などによる適切で実行可能な任意の手段によって、誘発することができる。そのような寸法可変材料は、前記周囲部分の直径を効率的に縮小することを可能にし、ひいては、前記陰茎尿道を加圧することを可能にする。それに関して、前記起動装置の前記周囲部分の前記寸法可変材料は、好ましくはポリマー材料である。
【0026】
別のバリエーションにおいては、前記起動装置は、好ましくは、前記周囲部分に取り付けられた押し部材を含み、該押し部材が、前記患者の前記陰茎を押圧するように構成される。前記押し部材は、ロッド、球、シリンダー、ハンマーなどの適切な任意の構造とすることができる。このような押し部材は、前記尿道に到達可能な位置で、前記陰茎を選択的に加圧することを可能にする。それに関して、前記尿ポンプデバイスは、好ましくは、前記押し部材に結合され、かつ前記押し部材を傾斜させるように構成された駆動部を含む。このような駆動部は、前記陰茎尿道を効率的に加圧することを可能にする。あるいは、前記尿ポンプデバイスは、前記押し部材を前後に直線的に動かすように構成された、前記押し部材に結合された駆動部を含むことができる。例えば、該駆動部は、前記押し部材への並進運動を誘発するリニアモーターを有することができる。
【0027】
別の好ましい実施形態では、前記起動装置は、前記患者の前記膣内に配置されるように寸法が定められたプラグ部分を含む。かかるプラグ部分は、取り付けられると、前記膣に隣接する尿道に効率的に作用し、ひいては、例えば、ぜん動ポンプまたはインピーダンスポンプとしてのポンピングを誘発することを可能にする。このように、前記尿ポンプデバイスは、女性患者用に効率的に設計することができる。
【0028】
一つのバリエーションにおいては、前記起動部分は、好ましくは、前記患者の前記膣内に配置されたときに前記プラグ部分の直径を変えるように構成されたプラグアジャスターを含む。前記プラグ部分の直径は、通常、前記プラグ部分の厚さに相関しているかまたはそれを表しているので、該直径を変えることによって、前記膣の壁を介して圧力を前記尿道に加え、および前記尿道から圧力を解放することができる。
【0029】
好ましくは、前記起動装置の前記プラグ部分は、刺激されたときに前記プラグ部分の直径の変化を示す寸法可変材料を含む。それに関して、前記起動装置の前記プラグ部分の前記寸法可変材料は、好ましくはポリマー材料である。前記プラグ部分のそのような実施形態は、効率的な起動または動作を可能にする。
【0030】
別のバリエーションにおいては、前記プラグ部分は、好ましくは、前記患者の前記膣を前記尿道に向かって押圧するように構成された押しセクションを含む。該押しセクションは、ロッド、球、シリンダー、ハンマーなどの適切な任意の構造とすることができる。それに関して、前記尿ポンプデバイスは、好ましくは、前記プラグ部分の前記押しセクションに結合され、かつ、前記押しセクションを傾斜させるように構成された駆動部を含む。このように、ポンプを誘発するように、前記尿道を効率的に押し出すまたは加圧することができる。
【0031】
さらに別の好ましい実施形態では、前記起動装置は、好ましくは、前記患者の身体に配置されるように構成された電極要素であって、前記患者の尿道括約筋が該起動装置の電極要素により発生する電界によって刺激可能となるような、該電極要素を含む。前記尿道括約筋の刺激は、特に前記尿道括約筋の収縮を引き起こすことができる。前記電極要素は、コイルまたは同様の構造を含むことができる。前記電極要素は、前記尿道括約筋を直接刺激するために、または神経などを介して前記尿道括約筋を間接的に刺激するために、具体化または適用することができる。
【0032】
女性患者の場合、好ましくは、前記起動装置の前記プラグ部分は、該起動装置の前記電極要素の少なくとも1つを具体化する。これにより、前記尿道または尿道括約筋にアクセス可能となる適切な位置に都合よく位置決めすることのできる、前記電極要素の効率的な具体化が可能となる。
【0033】
好ましくは、前記尿ポンプデバイスは、前記尿道の周期的な圧縮および解放が、前記起動装置により、所定の周波数で、および任意に、所定の振幅、所定の圧力、所定の力および/または所定のデューティサイクルで発生するよう、前記起動装置を制御するように構成された制御ユニットを含む。そのような制御ユニットは、所与の状態および/または患者のニーズに調整され得るように該デバイスの効率的な操作を可能にする。さらに、周波数を事前に定義することにより、インピーダンスポンピングを誘発することができる。
【0034】
それに関して、好ましい前記所定の周波数は、約1Hz~約50Hzの範囲内であり、好ましくは約5Hz~約20Hzの範囲内である。このような周波数は、インピーダンスポンピングを用いて前記膀胱から体外への尿の流れを誘発するのに適切であり得る。このように、尿が膀胱内に半ば存在しないように、膀胱のほぼ全量を体外に送達することができる。有利なことに、周波数は、時間に対して一定ではなく、前記流れまたは前記膀胱の容積の関数として適応される。かかる適応は、前記制御ユニットによって手動または自動で提供されることが可能である。
【0035】
好ましくは、前記尿ポンプデバイスは、前記起動装置に電力を供給するように構成された電源ユニットを含む。前記電源ユニットは、前記デバイスの他のコンポーネントと統合可能である。例えば、前記起動装置、取り付け構造および電源ユニットは、一体で配置することができ、また、例えば、ハウジング内に配置される。好ましくは、前記電源ユニットは、前記起動装置および前記取り付け構造から遠隔して位置決め可能であるように、前記起動装置および前記取り付け構造から離隔している。したがって、前記電源は、前記取り付け構造を比較的コンパクトに具体化できるように、前記取り付け構造から離れて配置されることができる。このように、前記陰茎などの前記尿道にアクセス可能な身体の位置に位置決めされる要素は、よりかさばらず、より重くないものとすることができる。このように、前記尿ポンプデバイスを使用するときの患者の快適さを高めることができることから、該デバイスの受け入れも増やすことができるのである。
【0036】
好ましくは、前記尿ポンプデバイスは、前記起動装置を調整するように構成された制御ユニットを含む。該制御ユニットは、前記デバイスの他の構成要素と統合し、または離隔した物理的実体に組み込むことができる。離隔した実体の場合には、前記制御ユニットを、前記デバイスの前記起動装置または他の構成要素に有線または無線で接続することができる。無線通信の場合、前記デバイスは、前記制御ユニットの実体に、無線通信アダプタを装備することができ、また、前記起動装置を含む前記実体に、対応する無線通信アダプタを装備することができる。特に、無線接続された制御ユニットは、前記デバイスの操作に有益であり得る。
【0037】
第2の態様において、本発明は、尿道を通る流体の流れを発生させるための電極要素の使用に関する。該使用は、前記患者の尿道括約筋が該電極要素により発生可能な電界内におかれるよう、該電極要素を該患者の身体に取り付けることと、該電界が断続的に発生し、前記尿道括約筋が断続的に刺激されるよう、該電極要素を断続的に活性化することと、を含む。このように、都合よく効率的な流体のポンピングを実現できる。
【0038】
本発明および上述したその好ましい実施形態に係る尿ポンプデバイスの効果および利点の少なくともいくつかを達成するために、本発明に係る尿ポンプデバイスの代替として、以下の尿ポンプデバイスを提供することができる。
【0039】
第3の態様において、本発明は、患者の尿道を通る流体の流れを発生させるための尿ポンプデバイスであって、該尿ポンプデバイスは、前記尿道の断続的な圧縮および解放を誘発するように構成された起動装置と、位置決めユニットと、を含み、前記起動装置が、前記位置決めユニットに取り付けられ、かつ、前記患者の尿道が前記起動装置を用いて断続的に圧縮および解放できるように前記起動装置が該尿道にアクセス可能であるよう、前記患者が自ら身体を前記起動装置に対して位置付けられるように、前記位置決めユニットが配置される。
【0040】
本発明の第3の態様における前記尿ポンプデバイスの前記位置決めユニットは、患者の日常使用の装置に適した状態で実装され得る。好ましくは、前記位置決めユニットは、前記起動装置を備えたトイレまたは便座を含む。それに関して、該トイレまたは便座は、前記起動装置が取り付けられるかまたは固定される、任意の標準的なトイレまたは便座であり得る。前記トイレまたは便座に前記起動装置を備え付けるために、バンドもしくはストラップなどの補助機構、前記トイレに差し込まれる剛性部分などの固定取り付け具、または同様の構造物を使用することができる。あるいは、前記位置決めユニットは、一対のパンツなどの衣服、病院用ベッドなどのベッド、浴槽などとすることができ、またはそれらを含むことができる。
【0041】
特に、前記位置決めデバイスが、トイレまたは便座を含むが他の構成で具体化される場合、本発明の第3の態様における前記尿ポンプデバイスは、本発明の第1の態様における前記尿ポンプデバイスと同様の方法で動作することができる。それにより、患者の身体にいかなる構造や部品も取り付ける必要がないため、特に快適に使用できる。むしろ、前記起動装置は、前記位置決めユニット上にまたは前記位置決めユニットに位置している場合にのみ、前記患者の前記尿道にアクセスするために適切に位置決めすることができる。例えば、前記位置決めユニットがトイレまたは便座である場合、前記患者の位置および向きは、トイレまたは便座に座っているときに多かれ少なかれ予め規定される。したがって、前記起動装置は、患者がトイレを使用する際に前記尿道にアクセスできるよう十分正確に取り付けることができる。
【0042】
本発明の第3の態様における尿ポンプデバイスの以下の実施形態は、本発明の第1の態様における尿ポンプデバイスの各々の好ましい実施形態に関連して上述した効果および利益を、達成可能とする。
【0043】
好ましくは、本発明の第3の態様における前記起動装置は、前記患者の前記尿道を圧縮するのに適切な位置で前記患者の身体を押圧するように取り付けられ、かつ構成された押し部材を含む。
【0044】
好ましくは、本発明の第3の態様における前記尿ポンプデバイスは、前記押し部材に結合され、かつ、前記押し部材を動かして前記患者の前記尿道を圧縮するように構成された駆動部を含む。
【0045】
好ましくは、本発明の第3の態様における前記起動装置は電極要素を含み、該電極要素は、前記患者の前記尿道の括約筋が該起動装置の該電極要素により発生する電界によって刺激可能となるように、前記患者の身体に配置されるように取り付けられ、かつ構成される。
【0046】
好ましくは、本発明の第3の態様における前記尿ポンプデバイスは、前記尿道の周期的な圧縮および解放が、前記起動装置により、所定の周波数で、および任意に、所定の振幅、所定の圧力、所定の力および/または所定のデューティサイクルで発生するよう、該起動装置を制御するように構成された、制御ユニットを含む。
【0047】
好ましくは、この所定の周波数は、約1Hz~約50Hzの範囲内であり、好ましくは約5Hz~約20Hzの範囲内である。
【0048】
好ましくは、本発明の第3の態様における前記尿ポンプデバイスは、前記起動装置に電力を供給するように構成された電源ユニットを含む。
【0049】
好ましくは、本発明の第3の態様における前記尿ポンプデバイスは、前記起動装置を調整するように構成された制御ユニットを含む。
【0050】
さらに、本発明および上記に記載のその好ましい実施形態に係る、前記尿ポンプデバイスの効果および利点の少なくともいくつかは、手動操作によっても達成することができる。したがって、患者の尿道を通る流体の流れを発生させる方法は:前記尿道にアクセス可能な前記患者の身体上のスポットを特定するステップと;指または別の身体部分を、その特定したスポットに位置決めするステップと;前記指または体の部分が、断続的に前記特定したスポットを押したり放したりするステップと、を含む。前記指または身体の部分は、前記患者自身のものでも、別の人間のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明に係る尿ポンプデバイスは、本明細書において、例示的な実施形態として添付の概略図を参照して以下により詳細に説明される:
【
図1】男性患者用の、本発明に係る尿ポンプデバイスの第1の実施形態の概略図を示す。
【
図2】男性患者用の、本発明に係る尿ポンプデバイスの第2の実施形態の概略図を示す。
【
図3】女性患者用の、本発明に係る尿ポンプデバイスの第3の実施形態の概略図を示す。
【
図4】
図3の尿ポンプデバイスの概略詳細図を示す。
【
図5】本発明に係る尿ポンプデバイスの第4の実施形態の概略図を示す。
【
図6】本発明に係る尿ポンプデバイスの第5の実施形態の概略斜視図を示す。
【
図7】動作中の
図6の尿ポンプデバイスの概略側面図を示す。
【
図8】本発明に係る尿ポンプデバイスの第6の実施形態の断面図を示す。
【
図9】本発明に係る尿ポンプデバイスの第7の実施形態の概略側面図を示す。
【
図10】本発明に係る尿ポンプデバイスの第8の実施形態の概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下の説明においては、特定の用語が便宜上の理由で使用され、これらは本発明を限定することを意図するものではない。「右(right)」、「左(left)」、「上(up)」、「下(down)」、「下(under)」、および「上(above)」という用語は、図の方向を指す。専門用語は、明示的に言及された用語と、それらの派生語および同様の意味を持つ用語を含む。また、「下(beneath)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(above)」、「上(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」などのような空間的に相対的な用語は、図に示されるような、ある要素または機能と、別の要素または機能との関係を説明するために用いられ得る。これらの空間的に相対的な用語は、図に示された位置および向きに加えて、使用中または動作中のデバイスのさまざまな位置および向きを包含することを意図している。たとえば、図のデバイスが裏返される場合、他の要素または機能の「下(below)」または「下(beneath)」として記述されている要素は、他の要素または機能の「上(above)」または「上(over)」になるだろう。したがって、「下(below)」という例示的な用語は、上および下の位置および向きの両方を包含し得る。デバイスは、それ以外の方向を向き得(90度または他の向きに回転され得)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈され得る。同様に、さまざまな軸沿いのおよび該軸回りの動きの記載は、様々な特別なデバイスの位置および向きを含む。
【0053】
様々な態様および例示的な実施形態における図および説明の繰り返しを回避するために、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通であることを理解されたい。説明または図からの態様の省略は、その態様が該態様を組み込んだ実施形態から欠落していることを意味するものではない。むしろ、明確にするため、および冗長な説明を避けるために、その態様が省略されている場合がある。この文脈では、本明細書の残りの部分に以下が適用される:図面を明確にするために、説明の直接関連部分で説明されていない参照記号が図に含まれている場合は、前または後の説明セクションを参照されたい。さらに、分かり易さのため、図面内ですべてのパーツの特徴に参照記号が付されていない場合は、同じパーツを示す他の図面を参照されたい。2以上の図における同様の数字は、同じまたは類似の要素を表す。
【0054】
図1は、男性患者(2)に適用される、尿ポンプデバイス(1)の第1の実施形態を示す。該男性患者(2)の身体内のいくつかの部分が見えるように、概略的に描かれている。特に、患者(2)の直腸(25)、膀胱(23)、陰茎(21)、該膀胱(23)から該陰茎(21)の出口まで延在する尿道(22)、および前立腺(24)が見える。
【0055】
尿ポンプデバイス(1)は、取り付け構造としておよび起動装置の周囲部分としての、患者(2)の陰茎(21)の周りに巻き付けられたカフ(11)、ならびにワイヤーを介してカフ(11)に接続された制御ユニット(12)を含む。あるいは、制御ユニット(12)およびカフ(11)は、無線通信用のアダプタを装備することも可能である。すなわち、制御ユニット(12)が送信機を装備し、カフ(11)が対応する受信機を装備することが可能である。カフ(11)は、患者自身により都合よく、陰茎(21)に巻き付け、および陰茎から巻き付けを解くことができる。制御ユニット(12)は、電源ユニットとしてのバッテリー(13)を備えている。カフ(11)は、刺激され得る寸法可変材料でできている。このように、制御ユニット(12)は、刺激によってカフ(11)の直径の変化を示すことができる。
【0056】
制御ユニット(12)は、カフ(11)により尿道(22)の周期的な圧縮および解放が発生するよう、該カフ(11)を制御するように構成される。より具体的に、制御ユニット(12)は、約5Hz~約20Hzの範囲の周波数、所定の振幅、所定のデューティサイクル、所定の力および所定の圧力で、尿道の周期的な圧縮および解放を誘発する。これらのパラメーターは、制御ユニット(12)を介して患者(2)により調整可能である。このようにして、膀胱(23)から患者(2)の身体の外側への尿の流れが誘発されるように、インピーダンスポンプが尿道(22)に実装される。このようにして、尿が膀胱内に半ば存在しないように、膀胱(23)をほぼ完全に空にすることができる。
【0057】
図2には、尿ポンプデバイス(17)の第2の実施形態が示されている。該尿ポンプデバイスは、電源ユニットとしてのバッテリー(137)を備えた制御ユニット(127)、ならびに取り付け構造としておよび起動装置の周囲部分としてのリング部分(117)を含む。リング部分(117)は、ワイヤーを介して制御ユニット(127)に接続されている。該リング部分は、都合よく、患者の陰茎に位置決めし、および該陰茎から取り除くことができる。凹部(127)は、該リングが閉じたリングではなく開いたリングを形成するように、リング部分(117)をその円周内で遮断する。凹部(127)の片側では、リング部分は、レバー(147)に結合された駆動部を収納する。特に、レバー(147)は、駆動部に結合され、該駆動部によって枢動可能または傾斜可能となるように、駆動装置に結合され、その長手方向端部の1つでリング部分(117)に取り付けられている。レバー(147)の他方の長手方向端部は、ケーブル(157)により、凹部(127)の反対側でリング部分(117)に接続されている。ケーブル(157)、レバー(147)、および駆動部は、起動装置の直径アジャスター(167)に含まれる。
【0058】
直径アジャスター(167)は、凹部(127)の円周方向の拡張を変化させるように構成される。より具体的には、レバー(147)を水平位置から垂直位置まで約90°傾けることにより、ケーブル(157)は、リング部分(117)の反対側を引っ張る。リング部分(117)は、弾性変形する弾性材料でできている。最終的には、垂直レバー(147')が、凹部(127)の円周方向の拡張、ひいてはリング部分(117’)の直径が減少するように、ケーブル(157')を介して凹部(127)の反対側のリング部分(117')を引っ張る。したがって、レバー(147)を前後に枢動または傾斜させることにより、リング部分(117)の直径を周期的に減少および拡大することができる。
【0059】
使用中、リング部分(117)は、男性患者の陰茎の周りに配置され、尿ポンプデバイス(17)は、
図1に関連して上述した尿ポンプデバイス(1)と同様に操作される。特に、陰茎の周りに配置されたときにリング部分(117)の直径を周期的に変化させることによって、患者の尿道の周期的な圧縮および解放が発生する。このように、インピーダンスポンピングにより、尿を患者の膀胱から送り出すことができる。
【0060】
図3は、女性患者(28)に適用される、尿ポンプデバイス(18)の第3の実施形態を示す。上記同様、女性患者(28)の身体内のいくつかの部分が見えるように、概略的に描かれている。特に、患者(28)の直腸(258)、膀胱(238)、膣(218)、膀胱(238)から出口まで延在する尿道(228)、および恥骨(248)が見える。
【0061】
尿ポンプデバイス(18)は、患者(28)の膣(218)に導入される取り付け構造としてのプラグ部分(118)を含む。患者は、都合よく、プラグ部分(118)を膣(218)に導入し、および該膣から取り除くことができる。
図4に見られるように、尿ポンプデバイス(18)は、患者(28)の膣(218)に配置されたプラグ部分(118)の直径または厚みを変えるように構成された、プラグアジャスター(128)を備えた起動部分を有する。特に、プラグアジャスター(128)は、プラグ部分(118)に枢動可能または回転可能に取り付けられた卵形のレバー(138)を有する。レバー(138)は、回転中に水平向きであるときには、患者(28)の膣(218)を尿道(228)に向かって押圧する押しセクションを形成する。それにより、尿道(228)は、レバー(138)と恥骨(248)との間で圧縮される。
【0062】
尿ポンプデバイスは、レバー(138)に結合された駆動部をさらに含む。レバー(138)は、尿道(228)の周期的な圧縮および解放が発生するような速度で回転する。このように、膀胱(238)から患者(28)の身体の外側への尿の流れが誘発されるように、インピーダンスポンプが尿道(228)に実装される。
【0063】
図5には、本発明に係る尿ポンプデバイス(19)の第4の実施形態が示されている。該尿ポンプデバイス(19)は、電極要素(119)を備えた起動装置を有する。電極要素(119)は、男性患者(29)の身体に該電極要素を保持および配置するための、接着部材などの取り付け構造を備えている。該取り付け構造により、患者(29)は、都合よく、電極要素を患者(29)の身体に配置し、および該身体から取り除くことができる。
図5には、身体内のいくつかの部分が見えるように、男性患者(29)が概略的に描かれている。特に、患者(29)の直腸(259)、膀胱(239)、陰茎(219)、該膀胱(239)から陰茎(219)の出口まで延在する尿道(229)、および前立腺(249)が見える。
【0064】
電極要素(119)は、電源ユニットとしてのバッテリー(139)を備えた制御ユニット(129)に、ワイヤーを介して接続されている。制御ユニット(129)は、電極要素(119)を操作して電界を発生させるように構成される。それにより、電極要素(119)は、患者(29)の尿道括約筋が電極要素(119)により発生する電界によって刺激可能であるように、身体に位置決めされる。より具体的に、尿道括約筋の刺激は、尿道(229)が圧縮されるように尿道括約筋の収縮を引き起こす。このように、制御ユニット(129)は、尿道括約筋を介して、尿道(229)の周期的な圧縮および解放を間接的に誘発することができる。これにより、膀胱(239)から患者(29)の身体外への尿の流れが誘発される。
【0065】
図6は、トイレ(36)を含む、本発明に係る尿ポンプデバイス(16)の第5の実施形態を示す。尿ポンプデバイス(16)は、起動装置(116)と、ストラップ(136)および便座(126)を有する位置決めユニットとを含む。起動装置(116)は、便座(126)に固定されているストラップ(136)によってトイレ(36)に取り付けられている。それに関して、便座(126)は、慣例的には、トイレ(36)の便器に取り付けられている。
【0066】
図7に見られるように、便座(126)およびストラップ(136)は、トイレ(36)に座ったときに患者(26)の身体が起動装置(116)に対して適切なポジションに位置するように配置される。
図7には、患者(26)の肛門(256)、陰茎(216)および尿道(226)が、例示的に描かれている。上記の適切なポジションにおいては、起動装置(116)の押し部材(146)が動作時に尿道(226)を断続的に圧縮および解放するように、起動装置(116)が患者(26)の尿道(226)にアクセス可能である。
【0067】
かかる圧縮を達成するために、起動装置(116)は、ピンチャー(146)を備えている。起動装置(116)の動作の際、ピンチャー(146)は、患者(26)の身体が押されおよび解放されるように、上下に動く。
【0068】
図8は、本発明に係る尿ポンプデバイス(10)の第6の実施形態を示している。尿ポンプデバイス(10)は、取り付け構造としておよび起動装置の周囲部分としての、直径アジャスターおよびリング部分(1170)を含む。リング部分(1170)は、直径アジャスターのラチェット(120)の内側に押し込まれる歯付きベルトとして構成される。リング部分(1170)は、都合よく、患者の陰茎上に位置決めし、および該陰茎から取り除くことができる。尿ポンプデバイス(10)は、シャフト(140)と、尿ポンプデバイス(10)の内部にその駆動部として取り付けられたリニアモーターなどの電気モーター(130)とをさらに含む。電気モーター(130)は、シャフト(140)の動きを制御する。直径アジャスターのチップ(150)は、シャフト(140)が起動したときに陰茎/尿道を圧縮または解放するように、シャフト(140)の末端部分に取り付けられている。さらに、カウンターチップ(160)は、リング部分(1170)にチップ(150)の反対のポジションに取り付けられ、シャフト(140)が動いたときに陰茎の2点で最大の圧縮力に達する。電気モーター(130)は、患者により、尿ポンプデバイス(10)の近位端に設けられたボタン(170)を用いて起動される。ボタン(170)は、シャフト(140)の周波数、速度および力を調整するために用いることもできる。
【0069】
図9には、本発明に係る尿ポンプデバイス(101)の第7の実施形態が示されている。尿ポンプデバイス(101)は、起動装置(1101)と、一対のパンツ(1201)を含む位置決めユニットとを含む。起動装置(1101)は、パンツ(201)を着用しているときに患者(201)の身体が起動装置(1101)に対して適切なポジションに位置するように、パンツ(1201)に取り付けられる。パンツ(201)は、排尿のため必要なときに患者(201)の陰茎(2101)が位置決めされ得る、閉鎖可能な開口部を備えている。上記の適切なポジションにおいては、起動装置(116)の押し部材(1401)が動作時に尿道(226)を断続的に圧縮および解放するように、起動装置(116)が患者(201)の尿道にアクセス可能である。
【0070】
図10は、手持ち型器具(102)として実現された、本発明に係る尿ポンプデバイスの第8の実施形態を示している。手持ち型器具(102)は、細長い本体と、起動装置(1102)と、位置決めユニットとを含む。位置決めユニットは、上記細長い本体の上側にある陰茎収容セクション(1202)と、上記細長い本体の下側にある指収容セクション(1302)とによって形成されている。起動装置(1102)は、駆動部(1502)および半球形の押し部材(1402)を含む。駆動部(1502)は、上記本体の内側に配置され、押し部材(1402)は、上記本体の外側で陰茎収容セクション(1202)に延在する。押し部材(1402)は、駆動部(1402)が当該押し部材(1402)を垂直に上下に動かすことができるように、ポールを介して駆動部(1502)に結合している。
【0071】
手持ち型器具(102)の使用において、患者(202)は、尿道(2202)の陰茎部分が押し部材(1402)に隣接して位置するように、自身の陰茎(2102)を陰茎収容セクション(1202)上に配置する。手持ち型器具(102)の本体は、患者(202)の片方の手の親指(2302)が陰茎(2102)上に位置決めされ、同じ手の指(2402)が手持ち型器具(102)本体の指収容セクション(1302)に位置決めされるように、患者(202)の手に保持される。このように、手持ち型器具(102)が保持され、それと同時に、陰茎が手持ち型器具(102)の適切な位置にしっかりと取り付けられる。起動装置(1102)は、起動したときに、押し部材(1402)を動かす駆動部(1502)によって尿道(2202)を断続的に圧縮および解放する。
【0072】
本発明の態様および実施形態を説明する本明細書および添付の図面は、保護される発明を定義する特許請求の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。言い換えれば、本発明は、図面および前述の説明において詳細に例示および説明されてきたが、かかる例示および説明は、例証的または例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本明細書および特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、様々な機械的、組成的、構造的、電気的、および操作的な変更を行うことができる。場合によっては、本発明を曖昧にしないために、周知の回路(circuits)、構造および技術は詳細に示されていない。したがって、以下の特許請求の範囲および精神の範囲内で、変更および修正が当業者によって行われ得ることが理解されるであろう。特に、本発明は、上記および下記のさまざまな実施形態からの特徴の任意の組み合わせを有する、さらなる実施形態を網羅する。
【0073】
本開示は、図に個別に示されるすべてのさらなる特徴をも網羅するが、それら特徴は、前にまたは以下の記述では説明されていない場合がある。また、図および明細書に記載された実施形態の単一の代替物、ならびに図および明細書の特徴の単一の代替物を、本発明の主題または開示された主題から排除することもできる。本開示は、特許請求の範囲または例示的な実施形態で定義された特徴からなる主題だけでなく、該特徴を含む主題をも含む。
【0074】
さらに、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は、他の要素またはステップを除外せず、また、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。単一のユニットまたはステップが、特許請求の範囲に記載されたいくつかの特徴の機能を果たしてもよい。特定の手段が異なる従属請求項に相互に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを指し示すものではない。属性または値に関連する「本質的に(essentially)」、「約(about)」、「ほぼ(approximately)」などの用語もまた、特に、それぞれ正確にその属性またはその値を定義する。所与の数値または範囲の文脈における「約(about)」という用語は、例えば、当該所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内もしくは2%以内の値または範囲を指す。結合または接続されていると記載されている構成要素は、電気的または機械的に直接結合されていてもよいし、または1つ以上の中間の構成要素を介して間接的に結合されていてもよい。特許請求の範囲内の参照記号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。