(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】同軸伝動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/06 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
F16H25/06 Z
(21)【出願番号】P 2021577945
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2020070901
(87)【国際公開番号】W WO2021018752
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521567815
【氏名又は名称】クラーケン・イノベーションズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KRAKEN INNOVATIONS GMBH
【住所又は居所原語表記】Stremayrgasse 16/IV,8010 Graz,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】アイゼーレ、フィリップ・ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェリッチュ、ミヒャエル
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520426(JP,A)
【文献】特表2010-523906(JP,A)
【文献】米国特許第01543791(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの連接棒受け(4)を備えた、回転軸(2)を中心に回転可能なクランク軸(3)を含む同軸伝動装置(1)であって、
前記少なくとも1つの連接棒受け(4)が、少なくとも1つのクランクピンとして形成され、前記同軸伝動装置(1)がさらに、複数のピストン(5a、5b、5c)を含み、前記ピストン(5a、5b、5c)が、それぞれ1つの連接棒(6a、6b、6c)を用いて前記少なくとも1つの連接棒受け(4)と結合されており、それぞれのピストン(5a、5b、5c)が
、各々の連接棒(6a、6b、6c)に連結され、ピストンピン(25a、25b、25c)を介して各々の連接棒(6a、6b、6c)に連接棒端部(26a、26b、26c)に回転可能に連結され、それぞれの連接棒(6a、6b、6c)が、前記少なくとも1つの連接棒受け(4)
に据え置かれ、それぞれのピストン(5a、5b、5c)が、前記回転軸(3)から離れる方を向く第1の正面(10a、10b、10c)に、少なくとも1つの歯を備えた歯形(11a、11b、11c)を有し、前記同軸伝動装置(1)がさらに、内歯形(8)を備えた中空軸(7)を含み、前記回転軸(2)に対して垂直にある平面内で見れば、前記ピストン(5a、5b、5c)が前記中空軸(7)内に配置されており、前記同軸伝動装置(1)がさらに、誘導ユニット(9)を含み、前記ピストン(5a、5b、5c)がそれぞれ前記誘導ユニット(9)内で直線状に誘導され、前記回転軸(2)に対して垂直にある半径方向(12a、12b、12c)に対して平行に往復移動可能であり、それにより前記ピストン(5a、5b、5c)の前記第1の正面(10a、10b、10c)の前記歯形(11a、11b、11c)が相次いで前記内歯形(8)と噛合し、前記内歯形(8)から外された状態になり得るものであり、前記各々の噛合中に前記各々の歯形(11a、11b、11c)と前記内歯形(8)との間の面接触で前記中空軸(7)又は前記誘導ユニット(9)を、前記回転軸(2)を中心にさらに回転させる、同軸伝動装置(1)。
【請求項2】
前記第1の正面(10a、10b、10c)の前記歯形(11a、11b、11c)がそれぞれ、複数の歯を有することを特徴とする、請求項1に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項3】
前記回転軸(2)に沿って見れば、前記連接棒(6a、6b、6c)が互いに前記回転軸(2)に沿って並んで配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項4】
前記連接棒(6a、6b、6c)が少なくとも部分的に、前記回転軸(2)に対して垂直にある共通平面内にあることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項5】
前記連接棒(6a、6b、6c)のうちの少なくとも1つが、前記回転軸(2)に対して平行に通る及び/又は前記回転軸(2)を含む平面内に、ほぼU形状又はJ形状の断面を有することを特徴とする、請求項4に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項6】
前記ピストン(5a、5b、5c)のうちの少なくとも2つが異なる直径(13)を有し、前記直径(13)がそれぞれ横手方向において測定されており、各々の横手方向が各々の半径方向(12a、12b、12c)に対して垂直にあることを特徴とする、請求項1~請求項5のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項7】
各々の半径方向(12a、12b、12c)に対して平行に測定される各々のピストン(5a、5b、5c)の長さ(15)を変化させるために、前記ピストン(5a、5b、5c)のうちの少なくとも1つに少なくとも1つのピエゾ素子(14a、14b、14c)が設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項6のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項8】
前記ピストン(5a、5b、5c)がそれぞれ、前記第1の正面(10a、10b、10c)とは反対の第2の正面(16a、16b、16c)上に、少なくとも1つの歯を備えた歯形(17a、17b、17c)を有することと、前記回転軸(2)を中心に回転可能に据え置かれた、外歯形(19)を備えた内環(18)が設けられており、前記誘導ユニット(9)が少なくとも部分的に前記内環(18)と前記中空軸(7)との間に配置されており、前記ピストン(5a、5b、5c)の前記第2の正面(16a、16b、16c)の前記歯形(17a、17b、17c)が相次いで前記外歯形(19)と噛合し、前記外歯形(19)から外された状態にされ得るものであり、各々の噛合中に各々の歯形(17a、17b、17c)と前記外歯形(19)との間の面接触で前記内環(18)又は前記誘導ユニット(9)を、前記回転軸(2)を中心にさらに回転させることを特徴とする、請求項1~請求項7のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項9】
前記中空軸(7)の前記内歯形(8)及び前記内環(18)の前記外歯形(19)が、同数の歯を有することを特徴とする、請求項8に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項10】
前記ピストン(5a、5b、5c)のうちの少なくとも2つにおいて、各々の半径方向(12a、12b、12c)が、前記回転軸(2)を中心に測定される零ではない角度(20)を成すことを特徴とする、請求項1~請求項9のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項11】
前記クランク軸(3)が中空に作製されていることを特徴とする、請求項1~請求項10のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項12】
前記誘導ユニット(9)が、前記回転軸(2)に対して移動しないように配置されていることを特徴とする、請求項1~請求項11のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項13】
前記誘導ユニット(9)が前記回転軸(2)を中心に回転可能に据え置かれていることを特徴とする、請求項1~請求項11のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【請求項14】
前記回転軸(2)を中心とした前記誘導ユニット(9)の回転を制動するための手段が設けられていることを特徴とする、請求項13に記載の同軸伝動装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの連接棒受けを備えた、回転軸を中心に回転可能なクランク軸を含む同軸伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許第312164号明細書から、自己阻止型の変速装置が知られている。駆動軸を中心として星形状に配置される若干数のアームは、その内端が駆動軸から外れて据え置かれており、その中央部が誘導路内にあり、その外端が歯輪に噛み合う。その際、アームは2つのアームがあるレバーとして形成されており、その回転中心点はクロスヘッド状に誘導されており、その内端は互いに対して無関係に、駆動する偏心器上に静止しているので、外端は振り子運動を実行し、その際、順次、歯輪に噛合し、この歯輪を駆動軸の回転とは反対の方向に駆動させる。従ってサイクロイド運動が生じ、それから結果として、歯輪の歯と外端の線接触が得られる。
【0003】
同様に米国特許第5351568号明細書、米国特許公開第2005/268872号明細書、国際公開第01/66974号から、サイクロイド運動、従って線接触に至る、伝動装置が知られている。
【0004】
線接触は、この線接触が伝達可能な回転モーメントを限定する限り不利に働く。
【0005】
以下の文書から、連接棒のない伝動装置が知られている。欧州特許公開第0201730号明細書は、半径方向で往復運動する歯状要素を備えた減速装置に関する。それらの歯状要素は、ずらして配置された回転可能なディスクを用いて駆動される。同様に独国特許公開第102015105523号明細書、国際公開第2008/028540号及び独国特許公開第102015105520号明細書は全て、伝動装置の回転軸を中心として配置された歯を収容するための歯受け部品を備えた伝動装置に関する。歯は、歯受け部品内で移動可能であり、半径方向に誘導されるように配置されており、歯を駆動させるために、回転軸を中心に回転可能な駆動要素が、輪郭付けされたスラストワッシャの形態で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許第312164号明細書
【文献】米国特許第5351568号明細書
【文献】米国特許公開第2005/268872号明細書
【文献】国際公開第01/66974号
【文献】欧州特許公開第0201730号明細書
【文献】独国特許公開第102015105523号明細書
【文献】国際公開第2008/028540号
【文献】独国特許公開第102015105520号明細書
【発明の概要】
【0007】
従って本発明の課題は、上述の欠点を回避する伝動装置を提供することである。特に高い回転モーメントが、好ましくは小さな組立寸法で伝達され得る。特に好ましくは、高い動力伝達率及び高い精度若しくはゼロバックラッシュが得られる。
【0008】
上述の課題を解決するために本発明によれば、少なくとも1つの連接棒受けを備えた、回転軸を中心に回転可能なクランク軸を含む同軸伝動装置が設けられている。その同軸伝動装置はさらに、複数の、好ましくは少なくとも3つのピストンを含み、それらのピストンは、それぞれ1つの連接棒を用いて少なくとも1つの連接棒受けと結合されており、それぞれ回転軸から離れる方を向く第1の正面に、少なくとも1つの歯を備えた歯形を有する。その同軸伝動装置はさらに内歯形を備えた中空軸を含み、回転軸に対して垂直にある平面内で見れば、ピストンが中空軸内に配置されている。その同軸伝動装置はさらに誘導ユニットを含み、ピストンはそれぞれ誘導ユニット内で直線状に誘導され、回転軸に対して垂直にある半径方向に対して平行に往復移動され得る。それにより、ピストンの第1の正面の歯形は相次いで内歯形と噛合し、内歯形から外された状態になり、各々の噛合中に各々の歯形と内歯形との間の面接触で中空軸又は誘導ユニットを、回転軸を中心にさらに回転させることができる。
【0009】
本発明による同軸伝動装置は、クランク軸伝動装置ともみなされ得る。
【0010】
その際、クランク軸は駆動要素であるか、又は駆動要素とみなされ得る。
【0011】
好ましくは、回転軸に対して垂直にある平面内で見れば、クランク軸が少なくとも部分的に中空軸内に配置されている。
【0012】
連接棒受けを持ち上げピン又はクランクピンともみなすことができ、その際、連接棒は少なくとも1つの連接棒受けの上に据え置かれている。基本的には複数の、好ましくは全ての連接棒が連接棒受けの上に据え置かれてもよく、単一の連接棒受けが設けられていることしか必要としない。しかし複数の連接棒受け又は複数の持ち上げピン若しくはクランクピンが設けられてもよく、特に連接棒が回転軸に沿って前後に並んで配置されている場合であり、その際、好ましくは連接棒当たり1つのクランクピンが設けられ得る。
【0013】
複数の連接棒受け又はクランクピンを前後に並べて接続して、これらの間の回転角のずれを調整することにより、伝動装置の分解能及び/又は動力伝達率に影響を与えることができることに留意するべきである。
【0014】
中空軸は好ましくは回転軸を中心に回転可能に据え置かれており、被駆動要素として機能し得る。
【0015】
代わりに中空軸が固定される場合、誘導ユニットは被駆動要素として機能し得る。そのために誘導ユニットは回転可能に据え置かれていなければならない。
【0016】
中空軸又は場合により誘導ユニットを所定の方向にさらに回転させることができるように、好ましくは3つのピストンが設けられている。そのさらなる回転は、ピストンのうちの1つのピストンの第1の正面の歯形を中空軸の内歯形に面状に押すことによりもたらされるのに対し、他のピストンは、その内歯形に圧力をほとんど加えない又は全く加えない。
【0017】
通常、3つのピストンが設けられる場合は1つのピストンが内歯形と噛合し、その内歯形を押す。残りの2つのピストンはその間、内歯形上に全く圧力を加えない又は僅かな圧力のみを加える。好ましくは、ゼロバックラッシュを生成するために、残りの2つのピストンのうちの少なくとも1つが内歯形と部分的に噛み合う。好ましくは、残りの2つのピストンのうちの少なくとも1つは内歯形に決して接触しない。
【0018】
概して、複数のピストンの場合は少なくとも2つのピストンを内歯形と同時に、少なくとも部分的に噛合させることにより、ゼロバックラッシュを確保することができる。
【0019】
この動作様式により、極めて大きな動力伝達率が得られる。さらに各々の第1の正面の歯形と中空軸の内歯形との間の面圧又は面接触により、線接触又は線形状の噛合を用いた従来技術で周知の解決策とは異なり、極めて高い回転モーメントをクランク軸から中空軸へ又は場合により誘導ユニットへ伝達することができる。
【0020】
ピストンの数は対応して少なく保たれ得る、又は本発明による同軸伝動装置は対応して嵩張らないように寸法取りされ得る。極めて多くのピストンを設ける際、特に高い回転モーメントを伝達することができるように、複数のピストンはそれらの第1の正面の歯形が内歯形を同時に及びほぼ同じ作用で押し付け、それは本発明による同軸伝動装置でも可能であるが、実際にはほとんど必要ない。
【0021】
面接触のためにはピストンの直線移動が重要である。さらに歯形及び内歯形は対応して、押圧又は面接触、従って高い回転モーメントの伝達をさらに高めるように幾何学的に設計され得る、又は最適化され得る。
【0022】
少なくとも3つのシリンダを用いて、その第1の正面の歯形で内歯形を面状に押す最も近いピストンが、中空軸又は場合により誘導ユニットを反対方向に逆転させずに、回転軸を中心として中空軸又は場合により誘導ユニットがただ往復揺動するだけであることが確保され得る。2つのピストンの場合、それとは異なり基本的に上記の事例を除外することができないが、2つのピストンの場合、追加要素、例えばある種の阻止機構、又は惰性回転機構が設けられてもよい。その追加要素又は惰性回転機構は、中空軸又は場合により誘導ユニットの所定の方向のみの回転を許容し、それにより、中空軸又は場合により誘導ユニットのさらなる回転が、2つのピストンのみを用いて可能になる。
【0023】
第1の正面の歯形は、第1の正面上に刻み込まれた歯形ともみなされ得る。
【0024】
誘導ユニットは、一体的に又は複数の要素から組み立てて構成されてもよい。
【0025】
ピストンは誘導ユニット内で直線状に誘導されるので、対応してピストンは、各々の半径方向に対して平行に直線状にのみ移動し、その際、各々のピストンに割り当てられた半径方向は誘導ユニットにより定められる。
【0026】
直線状の誘導は、特に誘導ユニット内の中空シリンダにより成されてもよく、それらの内部にはピストンが配置されている。この場合、各々のピストンに割り当てられる半径方向は、各々のシリンダ軸により定められる。
【0027】
ここで再び、さらに以下に説明されるように、誘導ユニットが固定されずに回転し得る場合があり得ることに留意するべきである。対応して誘導ユニットの回転により、ピストンに割り当てられる半径方向が変化する、又は数学的に厳密に言えば、誘導ユニットが回転する時間間隔にわたって見れば、無限数の半径方向が存在する。
【0028】
さらに本発明による同軸伝動装置は、ピストンのうちの1つを上死点に滞留させることにより、つまりそのピストンを各々の半径方向において回転軸から離れるように最大に移動させることで阻止され、それにより制動の機能性が実現され得る。
【0029】
本発明による同軸伝動装置の別の利点は、高い動作性が可能になることにある。なぜならクランク軸の少なくとも1つの持ち上げピンが回転軸を中心とする円形運動を描き、好ましくはそれ自体で回転軸に対して垂直な円形断面を有するので、質量平衡が極めて容易に、例えば周知の方法でクランク軸上に平衡錘を用いて実現され得るからである。
【0030】
さらに連接棒及びピストンを使用することにより、モジュール式の組み立てを実現することができる。ピストンを数、回転軸を中心とする角度のずれの点で変化させ、異なる持ち上げピンに分配することにより、ギア段を可変的に調節することができる。これから、伝動装置の寸法の保持を同時に可能にしつつ、様々な動力伝達率が得られる。伝動装置のモジュール式の組み立てにより、製品の柔軟性を失うことなく個別の部品を量産することができ、従って迅速な入手を確保することができる。
【0031】
伝達可能な回転モーメントの大きさをさらに増すために、本発明の同軸伝動装置の好ましい実施形態では第1の正面の歯形がそれぞれ、複数の、好ましくは3つの歯を有することを設定している。第1の正面の歯形の歯の数で、内歯形を押し得る各々のピストンの面が大きくなり、それにより、とりわけ大きな回転モーメントをクランク軸と中空軸又は場合により誘導ユニットとの間で伝達することができる。
【0032】
本発明による同軸伝動装置の好ましい実施形態では、回転軸に沿って見れば連接棒が前後に並んで配置されていることを設定している。上記の同軸伝動装置は製造技術的に有利である。
【0033】
特に場所を節約する組立様式を可能にするために、本発明による同軸伝動装置の好ましい実施形態では、連接棒が少なくとも部分的に、回転軸に対して垂直にある共通平面内にあることを設定している。連接棒はこのために部分的に交錯して配置されてもよい。対応して少なくとも1つの連接棒受け又はクランク軸が回転軸に沿って寸法取りされ得る。
【0034】
上記の装置に対する構造的に簡易な解決策を可能にするために、本発明による同軸伝動装置の特に好ましい実施形態では、連接棒のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、回転軸に対して平行に通る及び/又は回転軸を含む平面内に、ほぼU形状又はJ形状の断面を有することを設定している。
【0035】
本発明による同軸伝動装置の好ましい実施形態では、ピストンのうちの少なくとも2つが異なる直径を有し、それらの直径がそれぞれ横手方向において測定されており、その各々の横手方向が各々の半径方向に対して垂直にあることを設定している。ここでは単純に横手方向の延びが直径とみなされる、即ちピストンは基本的に、関連する半径方向に対して垂直にある平面において円形断面を有する必要はない。
【0036】
原理上、半径方向又はピストン当たり無限数の横手方向がある。その際、相互に対応する横手方向を常に引用しなければならず、例えば対応する横手方向が同一平面内に又は平行な平面内にあることにより、直径の有意な比較が可能になる。特に全ての横手方向は、回転軸に対して平行に通ることができ、それにより、比較がどのような場合でも有意に可能である。
【0037】
ピストン又はピストン直径を様々に寸法取りすることにより質量平衡を得ることができ、それは、とりわけ回転数が高い場合に有利である。当然、ピストン直径を様々に寸法取りすることは、「上下に並べて」配置される連接棒の場合も考えられ得る。
【0038】
本発明による同軸伝動装置の好ましい実施形態では、各々の半径方向に対して平行に測定される各々のピストンの長さを変化させるために、ピストンのうちの少なくとも1つに、好ましくは全てのピストンに少なくとも1つのピエゾ素子が設けられていることを設定している。このようにして線形膨張を熱又は摩滅により補償することができる。
【0039】
さらに、ピエゾ素子を用いたその延長により、特に内歯形への第1の正面の歯形の接触圧を上昇させることができる。これは例えば、ピストンのうちの1つが上死点にある場合、制動作用を高めるのに用いられ得る。
【0040】
本発明による同軸伝動装置の好ましい実施形態では、ピストンがそれぞれ、第1の正面とは反対の第2の正面上に、少なくとも1つの歯を備えた歯形を有することと、回転軸を中心に回転可能に据え置かれた、外歯形を備えた内環が設けられており、誘導ユニットが少なくとも部分的に内環と中空軸との間に配置されており、ピストンの第2の正面の歯形が相次いで外歯形と噛合し、その外歯形から外された状態にされ、各々の噛合中に各々の歯形と外歯形との間の面接触で内環又は誘導ユニットを、回転軸を中心にさらに回転させることができることを設定している。
【0041】
第2の正面の歯形は、第2の正面上に刻み込まれた歯形ともみなされ得る。
【0042】
好ましくは内環は、回転軸に回転可能に据え置かれており、その内環が阻止されていない限り、原理上、軸の機能を有し、従って内軸ともみなされ得る。その外歯形は中空軸の内歯形の方を向いている。
【0043】
中空軸の内歯形への第1の正面の歯形の噛合について述べられたことは原則として、内環の外歯形への第2の正面の噛合に対しても同様に当てはまり、従って基本的に上述のことを参照すること。即ち、各々のピストンの第2の正面の歯形と内環の外歯形との間の面接触又は面圧のために、線接触を用いた解決策とは異なり、クランク軸と内環又は場合により誘導ユニットとの間で高い回転モーメントを伝達することができる。
【0044】
さらに、クランク軸と内環又は場合により誘導ユニットとの間でとりわけ大きな回転モーメントを伝達するために、第2の正面の歯形にそれぞれ複数の、特に3つの歯が設けられてもよい。
【0045】
誘導ユニットが制動又は固定されている場合、1つの又は各々のピストンは中空軸と内環とを交互に駆動させる。内環と中空軸の両方が被駆動機として機能し得る。また中空軸又は内環のみが被駆動機として機能することができ、その際、それぞれ別の要素が制動又は阻止される。
【0046】
内環は中空軸よりも小さい直径を有するので、この内環では同じ角速度でより少ない接線速度を取得又は使用することができる。即ち内環及び中空軸により、異なる速度に対して2つの被駆動機を同時に提供することができる。これにより、用途事例に応じて場合によっては第2の伝動装置を削減することができる。
【0047】
内環は、その必要はないが、中空軸と相対回転不能に結合されてもよく、結合の際、一方では同軸伝動装置のより高い分解能が、他方ではより大きな回転モーメントの伝達が得られる。
【0048】
さらに、2つのみのピストンを用いた異なる実施形態が考えられ得る。それらの実施形態では、内環を用いて総じて4つの(ピストンの)噛合のゆえに、中空軸又は場合により誘導ユニットが所定の方向にのみさらに移動することが確保される。
【0049】
最後に、内環が中空軸の回転方向と比べて反対方向に回転することもあり得る。
【0050】
本発明による同軸伝動装置の特に有利な実施形態では、中空軸の内歯形及び内環の外歯形が同数の歯を有することを設定している。つまり中空軸及び内環の同じ角速度が保証され得る。対応して内歯形及び外歯形の幾何学形態又は輪郭は異なるように、即ち中空軸の内歯形の歯又は歯間隔が比較的大きく設計されている。
【0051】
本発明の同軸伝動装置の好ましい実施形態では、ピストンのうちの少なくとも2つにおいて、各々の半径方向が、回転軸を中心に測定される零ではない角度を成すことを設定している。即ち、ピストンは少なくとも部分的に互いに対する角度のずれを有する。これは同軸伝動装置の挙動に影響を及ぼす。調和的な回転と並んで、不調和的な運動も可能であり、そのような同軸伝動装置の使用範囲は、例えば振動機であり得る。その角度のずれにより、内歯形の歯がピストンの角度に応じて互いに対して飛び越される及び/又は中空軸若しくは場合により誘導ユニットの回転方向が変化することになる。
【0052】
本発明の同軸伝動装置の好ましい実施形態では、クランク軸が中空に作製されており、ケーブルを捻れることなくクランク軸に通して、好ましくは回転軸に沿って誘導することができることを設定している。
【0053】
本発明の同軸伝動装置の好ましい実施形態では、誘導ユニットが、回転軸に対して移動しないように配置されていることを設定している。この場合、中空軸がさらに移動し、被駆動要素として機能する。場合により上記の実施形態では、内環も(存在する場合)さらに移動することができ、その内環は、ここで再び制動されてもよく、被駆動要素として機能してもよい。
【0054】
本発明の同軸伝動装置の好ましい実施形態では、誘導ユニットが回転軸を中心に回転可能に据え置かれており、好ましくは、回転軸を中心とした誘導ユニットの回転を制動するための手段が設けられていることを設定している。さらには誘導ユニットが制動される場合、中空軸が回転し、被駆動要素として使用され得る。誘導ユニットを制動するための手段は、それ自体は周知のものであり、例えば摩擦を用いて又は渦電流を用いて制動され得る。
【0055】
それとは異なり中空軸が固定される、又は上で誘導ユニットに対して例示として述べられたようなそれ自体は周知の手段を用いて(即ち、例えば摩擦又は渦電流を用いて)中空軸が制動される限り、誘導ユニットは被駆動要素として機能する。
【0056】
本発明は、実施例に基づいてより詳しく説明される。図面は例示であり、本発明の考えを説明するが、いずれの場合もその考えを狭めるものではない、又はその考えを最終的に再現するものではない。
【0057】
その際、図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明による同軸伝動装置の概略断面図であり、回転軸に沿って見れば、連接棒が前後に並んで配置されている。
【
図2】
図1の切断線A-Aに沿った断面図であり、矢印は視方向を示す。
【
図3】本発明による同軸伝動装置の別の実施形態の概略断面図であり、連接棒は少なくとも部分的に、回転軸に対して垂直にある共通面内にある。
【
図4】
図3の切断線B-Bに沿った断面図であり、矢印は視方向を示す。
【
図5】
図3の実施形態に類似した、本発明による同軸伝動装置の別の実施形態の概略断面図であり、ピストンの第1の正面の歯形は複数の歯を有する。
【
図6】
図1の実施形態に類似した、本発明による同軸伝動装置の別の実施形態の概略断面図であり、ピストンはピエゾ素子を有する。
【
図7】
図1の実施形態に類似した、本発明による同軸伝動装置の別の実施形態の概略断面図であり、外歯形を備えた内環が設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1では、回転軸2に対して垂直な断面の概略図において、本発明による同軸伝動装置1又はクランク軸伝動装置が示されている。同軸伝動装置1は、少なくとも1つの連接棒受け4を備えた、回転軸2を中心に回転可能なクランク軸3を含む。図示される実施例では、ちょうど1つの連接棒受け4又はちょうど1つの持ち上げピン若しくはクランクピンが設けられている。
【0060】
複数のピストンは、それ自体は周知の方法で連接棒受け4と結合されている、又はピストンは、連接棒受け4内に移動可能に据え置かれている。例えばそれぞれ、連接棒6a、6b、6cの分割された連接棒端部は、ねじ21を用いて(
図1を参照)連接棒受け4に固着されており、ピストン5a、5b、5cは、ピストン
ピン(25a、25b、25c)を介して、連接棒6a、6b、6cの他の連接棒端部
(26a、26b、26c)と結合されている。
図1の実施例では、総じて5つのピストンが設けられている。
図1では3つのピストン5a、5b、5cのみが見える。ピストン5aは、連接棒6aを介してクランク軸3又は連接棒受け4と結合されており、ピストン5bは連接棒6bを介して、ピストン5cは連接棒6cを介してクランク軸又は連接棒受けと結合されている。
【0061】
全てのピストン5a、5b、5cはそれぞれ、刻み込まれた歯形11a、11b、11cを備えた、回転軸2から離れる方を向く第1の正面10a、10b、10cを有する。その際、各々の歯形11a、11b、11cは、図示される実施例においてちょうど1つの歯を有する。
【0062】
図示される実施例では、
図1からわかるように、クランク軸3は回転軸2に沿って中空に形成されており、それにより例えば、ケーブル(図示されず)を捻れることなく通すことができる。
【0063】
さらに同軸伝動装置1には、内歯形8を有する中空軸7が設けられている。回転軸2に対して垂直にある
図1の画面では、ピストン5a、5b、5c及び少なくとも部分的にクランク軸3が、中空軸7の内部に配置されている。これは、ピストン5a、5b、5cがそれぞれその内部で直線状に誘導されるとともに回転軸2に対して垂直にある半径方向12a、12b、12cに対して平行に往復移動され得る、誘導ユニット9にも当てはまる。これに関して、誘導ユニット9は、図示される実施例において、ピストン5a、5b、5cに対して直線誘導器として機能する中空シリンダを有する。
【0064】
ピストン5a、5b、5cの往復移動により、ピストン5a、5b、5cの第1の正面10a、10b、10cの歯形11a、11b、11cは相次いで内歯形8と噛合し、内歯形8から外された状態になる。その際、ピストン5a、5b、5cが直線移動するために各々の噛合中に、各々の歯形11a、11b、11cと内歯形8との間の面接触を確保することができ、各々の歯形11a、11b、11cは内歯形8を面状に押す。それにより、誘導ユニット9が回転軸2に対して移動しないように配置されている場合、又は誘導ユニット9が回転軸2を中心に回転可能に配置されているが、制動されている場合、中空軸は回転軸2を中心にさらに少し回転する。それとは異なり中空軸7が固定されている若しくは回転軸2に対して移動しない又は制動されている場合、(回転軸2を中心に回転可能に据え置かれた)誘導ユニット9はさらに少し回転する。面状の噛合又は押圧のために、極めて高い回転モーメントをクランク軸3から中空軸7又は場合により誘導ユニット9へ伝達することができる。
【0065】
図1の実施例では、連接棒6a、6b、6cはクランク軸3又は連接棒4上に、回転軸2に沿って見れば前後に並んで配置されている。これは、
図2の断面図(
図1の切断線A-Aに沿った断面図、矢印は視方向を示す)に示されており、その断面図では、さらに第4のピストン5c’及び関連する連接棒6c’並びに第5のピストン(図示されていない。このピストンは、
図1の図面に向かう視方向に見れば
図1に示された要素の後にある、又は回転軸2に沿って見れば最後のピストンであり、その際、ピストン5aは最初のピストンである)の連接棒6a’も認識され得る。
【0066】
特に比較的高い回転数に対して、有効であり同時に場所を節約する質量平衡を確保するために、
図1に示される実施例では、様々なピストン直径13が設けられている。その際、ピストン直径13はそれぞれ横手方向に測定されており、各々の横手方向は、各々の半径方向12a、12b、12cに対して垂直にある。具体的に、ピストン5bは、ピストン5a及び5bよりも大きなピストン直径13を有し、ピストン5bを除く全てのピストンは、同じピストン直径13を有する(従って
図1では明確さのために、ピストン5aのピストン直径13は特に描き込まれていない)。
【0067】
図示される実施例ではピストン5a、5b、5cが、誘導ユニット9の中空シリンダ内に配置されている部分において円形断面を有し、各々の断面が、各々の半径方向12a、12b、12cに対して垂直な平面内にあることに留意するべきである。
【0068】
同様に
図1及び
図2からわかるように、幾つものピストン5a、5b、5cは、中心軸2を中心に測定される互いに対する角度のずれ20を有する。即ち、各々のピストン5a、5b、5cに関連する半径方向12a、12b、12cは互いに対してそれぞれ、回転軸2を中心に測定される零ではない角度を成す。具体的には、図示される実施例では、ピストン5aとピストン5bとの間の角度のずれ20、又は半径方向12aと半径方向12bとの間の角度は120°になる。同じことが、ピストン5b若しくは5cとピストン5c若しくは5aとの間の角度のずれ20、又は半径方向12b若しくは12cと半径方向12c若しくは12aとの間の角度に当てはまる。
【0069】
ピストン5c’は、回転軸2を中心にしてピストン5cと同じ角度位置に配置されている(
図2を参照)。第5のピストン(図示されていない)は、回転軸2を中心にしてピストン5aと同じ角度位置に配置されている。
【0070】
角度のずれ20により、内歯形8の歯がピストン5a、5b、5cの角度に応じて互いに対して飛び越される及び/又は中空軸7若しくは場合により誘導ユニット9の回転方向が変化することになり得る。即ち同軸伝動装置1の挙動は、角度のずれ20により影響され得る。
【0071】
図3は、まさに3つのピストン5a、5b、5cと関連する3つの連接棒6a、6b、6cとを備えた本発明による同軸伝動装置1の別の実施形態の概略断面図を示す。その際、連結棒6a、6b、6cは、回転軸2に沿って見れば前後に並んではおらず、少なくとも部分的に、回転軸2に対して垂直にある共通平面内にある。この実施形態は、回転軸2に平行な寸法取りを対応して短く保つことができるので、対応して極めて小型に製作されている。
【0072】
図3の実施例におけるピストン5a、5b、5cは、同じピストン直径13を有する。質量平衡は、例えばそれ自体は周知の方法で平衡錘を用いてクランク軸3上で行われ得る。
【0073】
図4の切断図(
図3の切断線B-Bに沿った切断図であり、矢印が視方向を示す)からわかるように、連接棒6a、6b、6cのこの「上下に重ねた」配置が可能であり、連接棒6a及び6cは、回転軸2に対して平行に通っている及び/又は回転軸2を含む平面内で、ほぼU形状の断面を有する。連接棒6bは、ほぼI形状の断面を有し、その断面は回転軸2に沿って見れば、連接棒6cの断面のU形の2つの平行な辺を形成する連接棒6cの部分の間に配置されている。連接棒6cの上記の部分は、回転軸2に沿って見ればここで再び、連接棒6aの断面のU形の2つの平行な辺を形成する連接棒6aの部分の間に配置されている。
【0074】
その他では、
図1の実施形態について述べられたことが、
図3の実施形態にも同様に当てはまる。特に
図3の実施形態のピストン5a、5b、5cも、120°の相互の角度のずれ20を有する。
【0075】
伝達可能な回転モーメントの大きさをさらに高めるために、歯形11a、11b、11cはそれぞれ複数の歯を有し得る。そのような実施例は
図5に示されており、その実施例はその他の点では
図3の実施例に対応している。具体的には
図5の実施例では、歯形11a、11b、11cはそれぞれ3つの歯を有し、それにより、
図3の実施例と比べて伝達可能な回転モーメントの大きさを明らかに増すことができる。
【0076】
図6は、
図1の実施形態に類似した本発明による同軸伝動装置1の別の実施形態の概略断面図を示す。ピストン5a、5b、5cはピエゾ素子14a、14b、14cを有する。ピエゾ素子14a、14b、14cを用いて、各々の半径方向12a、12b、12cに対して平行に測定された各々のピストン5a、5b、5cのピストンの長さ15(
図6では明確さのために、ピストン5bに対してのみ描き込まれている)を変化させることができる。このようにして、ピストン5a、5b、5cの線形膨張を熱又は摩滅により補償することができる。さらに、ピエゾ素子14a、14b、14cを用いてピストンの長さ15を拡大することにより、特に内歯形8への第1の正面10a、10b、10cの歯形11a、11b、11cの接触圧を上昇させることができる。
【0077】
ピストン5a、5b、5cがそれぞれ、第1の正面10a、10b、10cとは反対の第2の正面16a、16b、16cに、刻み込まれた歯形17a、17b、17cを有するならば、そこでも場合によってはピエゾ素子14a、14b、14cを用いて接触圧を高めることができる。
【0078】
図7には、ピストン5a、5b、5cが、歯形17a、17b、17cを備えた第2の正面16a、16b、16cを有するような実施形態が示されている。この実施形態はさらに内環18を有し、それ以外は
図1の実施形態に類似して組み立てられている。対応して基本的には、上で
図1の実施形態について述べられたことを参照すること。
【0079】
図示される実施例では、歯形17a、17b、17cがそれぞれ1つの歯を有するが、歯形17a、17b、17c毎に複数の歯が可能である。
【0080】
内環18は、内歯形8の方を向く外歯形19を有し、回転軸2を中心に回転可能に据え置かれている。誘導ユニット9は少なくとも部分的に内環18と中空軸7との間に配置されている。その際、ピストン5a、5b、5cの第2の正面16a、16b、16cの歯形17a、17b、17cは相次いで外歯形19と噛合し、外歯形19から外された状態にされ得る。
【0081】
各々の噛合の間、ピストン5a、5b、5cの直線移動のゆえに、各々の歯形17a、17b、17cと内環18の外歯形19との間の面接触を確保することができ、各々の歯形17a、17b、17cは外歯形19を面状に押し得る。
【0082】
それにより、誘導ユニット9が回転軸2に対して移動しないように配置されている場合、又は誘導ユニット9が回転軸2を中心に回転可能に配置されているが、制動されている場合、内環18は回転軸2を中心にさらに少し回転する。より正確には誘導ユニット9が制動又は固定されている場合、1つの又は各々のピストン5a、5b、5cは中空軸7と内環18とを交互に駆動させる。従って内環18と中空軸7の両方が被駆動機として機能し得る。
【0083】
また中空軸7又は内環18のみが被駆動機として機能することができ、その際、それぞれ別の要素が制動又は阻止される。
【0084】
当然、中空軸7と内環18の両方が固定されており、そのため誘導ユニット9のみが移動し、被駆動機として機能し得ることも考えられ得る。特に線接触を用いた解決策とは異なり、クランク軸3と内環18又は場合により誘導ユニット9との間で極めて高い回転モーメントを伝達することができる。
【0085】
図7の実施例では、外歯形19は、内歯形8とまさに同数の歯を有する。対応して内歯形8及び外歯形19の幾何学形態又は輪郭は異なるように、即ち中空軸7の内歯形8の歯又は歯間隔が比較的大きく設計されている。対応して中空軸7及び内環18は同じ角速度で回転する。後者のことは、中空軸7を内環18と相対回転不能に結合することによっても達成され得る。
【0086】
内環18は直径が中空軸7よりも小さいので、この内環では同じ角速度でより少ない接線速度を取得又は使用することができる。即ち内環18及び中空軸7により、異なる速度に対して2つの被駆動機を同時に提供することができる。これにより、用途事例に応じて場合によっては第2の伝動装置を削減することができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 少なくとも1つの連接棒受け(4)を備えた、回転軸(2)を中心に回転可能なクランク軸(3)を含む同軸伝動装置(1)であって、
前記同軸伝動装置(1)がさらに、複数の、好ましくは少なくとも3つのピストン(5a、5b、5c)を含み、前記ピストンが、それぞれ1つの連接棒(6a、6b、6c)を用いて前記少なくとも1つの連接棒受け(4)と結合されており、それぞれ前記回転軸(3)から離れる方を向く第1の正面(10a、10b、10c)に、少なくとも1つの歯を備えた歯形(11a、11b、11c)を有し、前記同軸伝動装置(1)がさらに、内歯形(8)を備えた中空軸(7)を含み、前記回転軸(2)に対して垂直にある平面内で見れば、前記ピストン(5a、5b、5c)が前記中空軸(7)内に配置されており、前記同軸伝動装置(1)がさらに、誘導ユニット(9)を含み、前記ピストン(5a、5b、5c)がそれぞれ前記誘導ユニット(9)内で直線状に誘導され、前記回転軸(2)に対して垂直にある半径方向(12a、12b、12c)に対して平行に往復移動可能であり、それにより前記ピストン(5a、5b、5c)の前記第1の正面(10a、10b、10c)の前記歯形(11a、11b、11c)が相次いで前記内歯形(8)と噛合し、前記内歯形(8)から外された状態になり得るものであり、前記各々の噛合中に前記各々の歯形(11a、11b、11c)と前記内歯形(8)との間の面接触で前記中空軸(7)又は前記誘導ユニット(9)を、前記回転軸(2)を中心にさらに回転させる、同軸伝動装置(1)。
[2] 前記第1の正面(10a、10b、10c)の前記歯形(11a、11b、11c)がそれぞれ、複数の、好ましくは3つの歯を有することを特徴とする、[1]に記載の同軸伝動装置(1)。
[3] 前記回転軸(2)に沿って見れば、前記連接棒(6a、6b、6c)が前後に並んで配置されていることを特徴とする、[1]~[2]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[4] 前記連接棒(6a、6b、6c)が少なくとも部分的に、前記回転軸(2)に対して垂直にある共通平面内にあることを特徴とする、[1]~[2]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[5] 前記連接棒(6a、6b、6c)のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、前記回転軸(2)に対して平行に通る及び/又は前記回転軸(2)を含む平面内に、ほぼU形状又はJ形状の断面を有することを特徴とする、[4]に記載の同軸伝動装置(1)。
[6] 前記ピストン(5a、5b、5c)のうちの少なくとも2つが異なる直径(13)を有し、前記直径(13)がそれぞれ横手方向において測定されており、各々の横手方向が各々の半径方向(12a、12b、12c)に対して垂直にあることを特徴とする、[1]~[5]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[7] 各々の半径方向(12a、12b、12c)に対して平行に測定される各々のピストン(5a、5b、5c)の長さ(15)を変化させるために、前記ピストン(5a、5b、5c)のうちの少なくとも1つに、好ましくは全てのピストン(5a、5b、5c)に少なくとも1つのピエゾ素子(14a、14b、14c)が設けられていることを特徴とする、[1]~[6]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[8] 前記ピストン(5a、5b、5c)がそれぞれ、前記第1の正面(10a、10b、10c)とは反対の第2の正面(16a、16b、16c)上に、少なくとも1つの歯を備えた歯形(17a、17b、17c)を有することと、前記回転軸(2)を中心に回転可能に据え置かれた、外歯形(19)を備えた内環(18)が設けられており、前記誘導ユニット(9)が少なくとも部分的に前記内環(18)と前記中空軸(7)との間に配置されており、前記ピストン(5a、5b、5c)の前記第2の正面(16a、16b、16c)の前記歯形(17a、17b、17c)が相次いで前記外歯形(19)と噛合し、前記外歯形(19)から外された状態にされ得るものであり、各々の噛合中に各々の歯形(17a、17b、17c)と前記外歯形(19)との間の面接触で前記内環(18)又は前記誘導ユニット(9)を、前記回転軸(2)を中心にさらに回転させることを特徴とする、[1]~[7]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[9] 前記中空軸(7)の前記内歯形(8)及び前記内環(18)の前記外歯形(19)が、同数の歯を有することを特徴とする、[8]に記載の同軸伝動装置(1)。
[10] 前記ピストン(5a、5b、5c)のうちの少なくとも2つにおいて、各々の半径方向(12a、12b、12c)が、前記回転軸(2)を中心に測定される零ではない角度(20)を成すことを特徴とする、[1]~[9]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[11] 前記クランク軸(3)が中空に作製されていることを特徴とする、[1]~[10]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[12] 前記誘導ユニット(9)が、前記回転軸(2)に対して移動しないように配置されていることを特徴とする、[1]~[11]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
[13] 前記誘導ユニット(9)が前記回転軸(2)を中心に回転可能に据え置かれており、好ましくは、前記回転軸(2)を中心とした前記誘導ユニット(9)の回転を制動するための手段が設けられていることを特徴とする、[1]~[11]のうちの1項に記載の同軸伝動装置(1)。
【符号の説明】
【0087】
1 同軸伝動装置
2 回転軸
3 クランク軸
4 連接棒受け
5a、5b、5c、5c’ ピストン
6a、6a’、6b、6c、6c’ 連接棒
7 中空軸
8 中空軸の内歯形
9 誘導ユニット
10a、10b、10c ピストンの第1の正面
11a、11b、11c 第1の正面上の歯形
12a、12b、12c 半径方向
13 ピストン直径
14a、14b、14c ピエゾ素子
15 ピストン長さ
16a、16b、16c ピストンの第2の正面
17a、17b、17c 第2の正面上の歯形
18 内環
19 内環の外歯形
20 角度のずれ
21 ねじ