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特許7450951新型FXR小分子作動剤の製造およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】新型FXR小分子作動剤の製造およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 451/06 20060101AFI20240311BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C07D451/06 CSP
A61K31/46
A61P1/16
A61P3/06
A61P3/10
A61P29/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022023294
(22)【出願日】2022-02-17
(65)【公開番号】P2023120086
(43)【公開日】2023-08-29
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】522064683
【氏名又は名称】カスケード ファーマシューティカルズ、インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】CASCADE PHARMACEUTICALS,INC.
【住所又は居所原語表記】Building 10,No.860,Xinyang Road,Lingang New Area,China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai 201419,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,イシュアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ゼンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ギュオフイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シェンシェン
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/057672(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第114195776(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114195777(CN,A)
【文献】国際公開第2020/211872(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/147448(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/068815(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iで表される化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物、あるいはこれらの薬学的に許容される塩
【化1】
(ただし、
Arは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環(単環または縮合環を含み、1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
Aは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環(単環または縮合環を含み、1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
R1は、置換または無置換のC1-C6アルキル基、置換または無置換のC3-C6シクロアルキル基、置換または無置換の5-9員複素環(1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
Xは、水素および重水素からなる群から選ばれる。
ここで、前記の置換とは、基における1個または複数の水素原子がそれぞれ独立にハロゲン、C1-C6ハロアルキル基、C1-C6ハロアルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C3-C6シクロアルキル基、C3-C6シクロアルキルオキシ基、シアノ基およびニトロ基からなる群から選ばれる置換基で置換されることである。)。
【請求項2】
前記のR1は、置換または無置換のC1-C6アルキル基、置換または無置換のC3-C6シクロアルキル基からなる群から選ばれ、ここで、前記の置換とは、基における1個または複数の水素原子がそれぞれ独立にハロゲン、C1-C6ハロアルキル基、C1-C6ハロアルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C3-C6シクロアルキル基、C3-C6シクロアルキルオキシ基、シアノ基およびニトロ基からなる群から選ばれる置換基で置換されることであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記のArは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環からなる群から選ばれ、かつ前記の置換基は、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロメトキシ基からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記のAは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環からなる群から選ばれ、ここで、前記のアリール基またはヘテロアリール基の置換基は、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロメトキシ基からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記のR1は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル、シクロプロピル基、シクロブチル基およびシクロペンチル基からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記の化合物は以下の群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項7】
請求項1に記載の化合物の製造方法であって、以下のスキーム1またはスキーム2に記載の方法によって式I化合物を製造する工程を含むことを特徴とする方法:
【化3】
(a) 一般式IIで表される化合物を開始原料として塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させて中間体を得た後、N-クロロスクシンイミド(NCS)で塩化させて一般式IIIで表される化合物になる;
(b) その後、一般式IIIで表される化合物を塩基の作用下で相応する3-オキソプロピオン酸エステルと反応させて一般式IVで表される化合物を得る;
(c) 一般式IVで表されるエステル化合物を重水素化還元剤の作用下で相応するアルコール、すなわち、一般式Vで表される化合物に還元させる;
(d) 一般式Vで表される化合物を臭素試薬で臭化し、一般式VIで表される化合物を生成させる;
(e) 一般式VIで表される化合物と一般式VIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIIで表される化合物になる;
(f) 一般式VIIIで表される化合物を塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、一般式IXで表される化合物を生成させる;
(g) 一般式IXで表される化合物をホスゲン、トリホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールの作用下で反応させ、一般式Iで表される化合物を生成させる;
(ただし、Xは重水素で、R1、Ar、Aの定義は請求項1に記載の通りである。)
【化4】
(a) 一般式IVで表されるエステル化合物を還元剤の作用下で相応するアルコール、すなわち、一般式Xで表される化合物に還元させる;
(b) 一般式Xで表される化合物を酸化剤の作用下で相応するアルデヒド、すなわち、一般式XIで表される化合物に酸化させる;
(c) 一般式XIで表されるエステル化合物を重水素化還元剤の作用下で一般式Vで表される化合物に還元させる;
(d) 一般式Vで表される化合物を臭素試薬で臭化し、一般式VIで表される化合物を生成させる;
(e) 一般式VIで表される化合物と一般式VIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIIで表される化合物になる;
(f) 一般式VIIIで表される化合物を塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、一般式IXで表される化合物を生成させる;
(g) 一般式IXで表される化合物をホスゲン、トリホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールの作用下で反応させ、一般式Iで表される化合物を生成させる
(各式において、Xは水素で、R1、Ar、Aの定義は請求項1に記載の通りである。)。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式Iで表される化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物、または薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の一般式Iで表される化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物あるいはこれらの薬学的に許容される塩の使用であって、FXRの活性または発現量に関連する疾患または病症を治療する医薬組成物の製造に用いられることを特徴とする使用。
【請求項10】
前記のFXR関連疾患は、胆汁酸代謝、糖質代謝、脂質代謝、炎症、および/または肝臓線維化の過程に関連する疾患からなる群から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、医薬の分野に属し、FXR作動剤としての非ステロイド化合物の製造および使用に関する。具体的に、FXR作動剤として有用な有機小分子化合物およびそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物、プロドラッグまたはこれらの薬学的に許容される塩の製造方法ならびにFXR関連疾患を治療する医薬の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ファルネソイドX受容体(Farnesoid X receptor)は、核内受容体スーパーファミリーの一員で、リガンド依存性核転写因子に属し、主に肝臓、腸管、腎臓、胆管などのシステムに発現される。FXRは、内因性リガンドである胆汁酸によって活性化され、胆汁酸代謝やコレステロール代謝などの重要な一環であるため、胆汁酸受容体とも呼ばれる。FXRは、直接脂質代謝、糖質代謝、炎症、線維化、肝臓再生、細胞の分化と増殖などの生理過程を含む300超の遺伝子の発現に関与する。自然環境において、そのリガンドは一次胆汁酸のケノデオキシコール酸、二次胆汁酸のリトコール酸、デオキシコール酸などを含む。たとえば、内因性リガンドである胆汁酸によって活性化されたFXRはトリグリセリド(triglyceride、TG)代謝の過程において重要な作用を果たし、 FXRはTG代謝に関連する主要酵素、リポタンパク質および相応する受容体を調節することにより、肝臓および循環血液におけるTG含有量が安定平衡になるようにすることができる。そのため、今まで、肝臓などの代謝性疾患の応用分野には、既に多くのFXR合成型リガンド分子がある。
【0003】
FXR作動剤分子は、肝臓疾患、たとえば原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis、PBC)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis、PSC)や非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic steatohepatitis、NASH)などの治療において、既に優れた臨床効果を示している。今まで、最初に市販を許可されようとするFXR作動剤分子であるオベチコール酸(obeticholic acid、OCA)は、多くの代謝性症状の顕著な改善、たとえば肝臓脂肪含有量の降下、炎症反応の減少や肝線維化などが実証される。しかし、OCAも日々多くの臨床上の不都合、たとえば痒みの誘発、高密度リポタンパク質(high-density lipoprotein cholesterol、HDLc)の低下、低密度リポタンパク質(low-density lipoprotein cholesterol、LDLc)の上昇などが現れてきた等。そのため、臨床の需要の面では、臨床効果が良く、毒性・副作用が低い、新たなFXR作動剤分子の出現が切望されている。
また、ある研究では、FXRは腫瘍の発生・発展に密接に関連することが実証された。多くの腫瘍において、FXRは癌抑制遺伝子の役割を担う。たとえば、肝細胞癌および直腸癌において、FXRは低発現の状態で、FXRが活性化すると、β-カテニンの活性が抑制され、肝臓癌または直腸癌の進展が顕著に抑制される。最近の研究では、胆管癌において、FXRの作動剤であるOCAは顕著に肝臓内の胆管細胞の増殖、移動およびクローン形成などを抑制することが示された。
【0004】
さらに、FXR作動剤は新たな抗ウイルス薬の候補として有用で、ある研究では、FXRリガンドは新たなB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus、HBV)の複製を抑制する治療策になることが可能である。FXR作動剤はHBV表面抗原の合成を抑制し、HBVのDNAとRNAの複製を抑制し、最も重要に、HBVのcccDNAの生成を抑制することができる。C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus、HCV)において、FXR作動剤であるGW4064は間接的な手段を通してHCVの肝臓組織細胞への侵入を抑制することができる。そのため、FXRの作動剤分子は抗ウイルス薬の開発としても将来性が大いにある。
上記のように、本分野では、製造方法が簡単で、抑制効果が良い、新規なFXR作動剤分子が欠けている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、製造方法が簡単で、抑制効果が良い、新規なFXR作動剤分子を提供することである。
本発明の第一の側面では、一般式Iで表される化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、あるいはこれらの薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
(ただし、
Arは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環(単環または縮合環を含み、1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
Aは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環(単環または縮合環を含み、1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
R1は、置換または無置換のC1-C6アルキル基、置換または無置換のC3-C6シクロアルキル基、置換または無置換の5-9員複素環(1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
Xは、水素または重水素からなる群から選ばれる。
ここで、前記の置換とは、基における1個または複数の水素原子がそれぞれ独立にハロゲン、C1-C6ハロアルキル基、C1-C6ハロアルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C3-C6シクロアルキル基、C3-C6シクロアルキルオキシ基、シアノ基またはニトロ基からなる群から選ばれる置換基で置換されることである。)
【0006】
もう一つの好適な例において、前記のR1は、置換または無置換のC1-C6アルキル基、置換または無置換のC3-C6シクロアルキル基からなる群から選ばれ、ここで、前記の置換とは、基における1個または複数の水素原子がそれぞれ独立にハロゲン、C1-C6ハロアルキル基、C1-C6ハロアルコキシ基、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C3-C6シクロアルキル基、C3-C6シクロアルキルオキシ基、シアノ基またはニトロ基からなる群から選ばれる置換基で置換されることである。
【0007】
もう一つの好適な例において、前記のArは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環からなる群から選ばれ、かつ前記の置換基は、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基からなる群から選ばれる。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記のAは、置換または無置換のC6-C10アリール基、置換または無置換の5-9員ヘテロ芳香環からなる群から選ばれ、ここで、前記のアリール基またはヘテロアリール基の置換基は、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、Arは、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換の5-7員ヘテロ芳香環(単環または縮合環を含み、1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
【0009】
もう一つの好適な例において、Aは、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換の5-7員ヘテロ芳香環(単環または縮合環を含み、1-3個の酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を含有する)からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、Aは置換または無置換のベンゾチアゾールである。
もう一つの好適な例において、前記のArまたはAは、それぞれ独立に、置換または無置換の、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環、またはイミダゾール環からなる群から選ばれる基から選ばれる。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記のR1は、置換または無置換のC1-4アルキル基、置換または無置換のシクロプロピル基からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記のArは置換または無置換のベンゼン環である。
もう一つの好適な例において、前記のArは、2,5-ジクロロフェニル基、2-メチルフェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、2-トリフルオロメトキシフェニル基からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記のR1は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル、シクロプロピル基、シクロブチル基またはシクロペンチル基からなる群から選ばれる。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記の式(I)化合物は、下記式で表される構造を有する。
【化2】
もう一つの好適な例において、前記の式(I)化合物は、下記式で表される構造を有する。
【化3】
【0012】
もう一つの好適な例において、前記の化合物は以下の群から選ばれる。
【化4】
本発明の第二の側面では、本発明の第一の側面に記載の化合物の製造方法であって、以下のスキーム1またはスキーム2に記載の方法によって式I化合物を製造する工程を含む方法を提供する:
【化5】
【0013】
(a) 置換ベンズアルデヒドである一般式IIで表される化合物を開始原料として塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させて中間体を得た後、N-クロロスクシンイミド(NCS)で塩化させて一般式IIIで表される化合物になる;
(b) その後、一般式IIIで表される化合物を塩基の作用下で相応する3-オキソプロピオン酸エステルと反応させて一般式IVで表される化合物を得る;
(c) 一般式IVで表される化合物におけるエステルを重水素化還元剤の作用下で相応するアルコール、すなわち、一般式Vで表される化合物に還元させる;
(d) 一般式Vで表される化合物を臭素試薬で臭化し、VIで表される化合物を生成させる;
(e) 一般式VIで表される化合物とVIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIIで表される化合物になる;
(f) 一般式VIIIで表される化合物を塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、一般式IXで表される化合物を生成させる;
(g) 一般式IXで表される化合物をホスゲン、トリホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールの作用下で反応させ、一般式Iで表される化合物を生成させる;
(ただし、Xは重水素で、R1、Ar、Aの定義は本発明の第一の側面に記載の通りである。)
【0014】
【化6】
【0015】
(a) 一般式IVで表される化合物におけるエステルを還元剤の作用下で相応するアルコール、すなわち、一般式Xで表される化合物に還元させる;
(b) 一般式Xで表される化合物を酸化剤の作用下で相応するアルデヒド、すなわち、一般式XIで表される化合物に酸化させる;
(c) 一般式XIで表される化合物におけるエステルを重水素化還元剤の作用下で一般式Vで表される化合物に還元させる;
(d) 一般式Vで表される化合物を臭素試薬で臭化し、VIで表される化合物を生成させる;
(e) 一般式VIで表される化合物とVIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIIで表される化合物になる;
(f) 一般式VIIIで表される化合物を塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、一般式IXで表される化合物を生成させる;
(g) 一般式IXで表される化合物をホスゲン、トリホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールの作用下で反応させ、一般式Iで表される化合物を生成させる。
(各式において、Xは水素で、R1、Ar、Aの定義は本発明の第一の側面に記載の通りである。)
【0016】
もう一つの好適な例において、一般式VIIで表される化合物は以下の工程で製造される:
【化7】
(k) 一般式XIIで表される化合物と一般式XIIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIで表される化合物を生成させる。
(各式において、Aの定義は本発明の第一の側面に記載の通りである。)
【0017】
もう一つの好適な例において、産物に光学異性体が存在する場合、相応する光学配置の原料で製造される。
本発明の第三の側面では、本発明の第一の側面に記載の一般式Iで表される化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明の第四の側面では、本発明の第一の側面に記載の一般式Iで表される化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物、プロドラッグあるいはこれらの薬学的に許容される塩の使用であって、FXRの活性または発現量に関連する疾患または病症を治療する医薬組成物の製造に用いられる使用を提供する。
もう一つの好適な例において、前記のFXR関連疾患は、胆汁酸代謝、糖質代謝、脂質代謝、炎症、および/または肝臓線維化の過程に関連する疾患からなる群から選ばれる。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記FXR関連疾患は非アルコール性脂肪肝(NASH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性胆汁性肝硬変(PSC)、胆石、非アルコール性肝硬変、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、肝線維化、胆汁鬱滞性肝疾患、高脂血症、高コレステロール血症または糖尿病である。
もう一つの好適な例において、前記の医薬組成物はFXR作動剤として使用される。
もう一つの好適な例において、前記の医薬組成物は血清におけるALP、ALT、AST、TBAのレベルの降下に使用される。
もう一つの好適な例において、前記の医薬組成物は肝臓組織におけるヒドロキシプロリンの含有量の降下に使用される。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記の医薬組成物は肝臓組織におけるα-SMAおよびCol1α1 mRNAの発現の下方調節に使用される。
もう一つの好適な例において、前記の医薬組成物はHBV表面抗原の合成の抑制、HBVのDNAとRNAの複製の抑制、HBVのcccDNAの生成の抑制に使用される。
もう一つの好適な例において、前記の医薬組成物は肝臓におけるコラーゲンの含有量の減少に使用される。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記の医薬組成物は、式I化合物を薬用可能な補助剤(たとえば、賦形剤、希釈剤など)と混合し、経口投与の錠剤、カプセル剤、顆粒剤またはシロップ剤などに調製する方法によって製造される。
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
具体的な実施形態
本願の発明者は、幅広く深く研究したところ、FXR作動剤として有用な非ステロイド化合物であって、分子レベルと細胞レベルのいずれにおいてもFXRに作動能力があるものを研究・開発したが、研究では、本願の化合物は、血清におけるALP、ALT、AST、TBAのレベルを降下させ、肝臓組織におけるヒドロキシプロリンの含有量を降下させ、肝臓組織におけるα-SMAおよびCol1α1 mRNAの発現を下方調節し、に肝臓におけるコラーゲンの含有量を減少させ、HBV表面抗原の合成を抑制し、HBVのDNAとRNAの複製を抑制し、HBVのcccDNAの生成を抑制することができることが示された。本発明の化合物は、FXR作動活性が高い、合成が簡単、原料が得られやすいといった利点があるため、FXR関連疾患を治療するための薬物の製造に使用することができる。これに基づき、本発明を完成させた。
【0023】
用語
本発明において、特別に説明しない限り、用いられる用語は、当業者に公知の一般的な意味を持つ。
本発明において、前記ハロゲンは、F、Cl、Br又はIである。
本発明において、用語「C1-C6」とは、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有することで、「C3-C6」とは3、4、5または6個の炭素原子を有することで、このように類推する。
本発明において、用語「アルキル基」は飽和の線形または分岐鎖の炭化水素部分を表し、たとえば用語「C1-C6アルキル基」とは、炭素原子を1~6個有する直鎖または分岐鎖のアルキル基で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基やヘキシル基などを、好ましくはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基やt-ブチル基を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明において、用語「アルコキシ基」は-O-(C1-C6アルキル)基を表す。たとえば、用語「C1-C6アルコキシ基」とは、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルコキシ基のことで、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基やブトキシ基などを含むが、これらに限定されない。
本発明において、用語「シクロアルキル基」は飽和の環状炭化水素基の部分を表し、たとえば用語「C3-C6シクロアルキル基」とは、環に3~6個の炭素原子を有する環状アルキル基のことで、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基などを含むが、これらに限定されない。
【0025】
本発明において、用語「シクロアルキルオキシ基」はシクロアルキル-O-基を表し、シクロアルキル基は上記の通りである。
本発明において、用語の「アリール基」は一つまたは複数の芳香環を含む炭化水素基の部分を表す。アリール基の例は、フェニル基(Ph)、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アントリル基やフェナントリル基を含むが、これらに限定されない。
本発明において、用語「ヘテロアリール基」は一つまたは複数の少なくとも1個のヘテロ原子(たとえばN、OまたはS)を含む芳香環を有する部分を表す。ヘテロアリール基の例は、フリル基、ピロリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キナゾリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基やインドリル基などを含む。
【0026】
別途に説明しない限り、本明細書に記載のアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基およびヘテロアリール基は置換および無置換の基である。アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基およびヘテロアリール基における可能な置換基は、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、ニトリル基、ハロゲン、C1-C6アルキル基、C2-C10アルケニル基、C2-C10アルキニル基、C3-C20シクロアルキル基、C3-C20シクロアルケニル基、C1-C20ヘテロシクロアルキル基、C1-C20ヘテロシクロアルケニル基、C1-C6アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアロキシル基、C1-C10アルキルアミノ基、C1-C20ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、C1-C10アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、C1-C10アルキルイミノ基、C1-C10アルキルスルホニルイミノ基、アリールスルホニルイミノ基、メルカプト基、C1-C10アルキルチオ基、C1-C10アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルアミノ基、アミノアシル基、アミノチオアシル基、グアニジル基、ウレア基、シアノ基、アシル基、チオアシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基およびカルボン酸エステル基を含むが、これらに限定されない。一方、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基およびヘテロアリール基も互いに縮合してもよい。
【0027】
本発明において、前記置換は単置換または多置換で、前記多置換は二置換、三置換、四置換、または五置換である。前記二置換とは、二つの置換基を有することで、このように類推する。
本発明に記載の薬学的に許容される塩は、アニオンと式I化合物における正電荷を持つ基からなる塩でもよい。適切なアニオンは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、酢酸イオン、リンゴ酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酒石酸イオン、フマル酸イオン、グルタミン酸イオン、グルクロン酸イオン、乳酸イオン、グルタル酸イオンまたはマレイン酸イオンである。同様に、カチオンと式I化合物における負電荷を持つ基からなる塩でもよい。適切なカチオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンおよびアンモニウムイオン、たとえばテトラメチルアンモニウムイオンを含む。
【0028】
もう一つの好適な例において、「薬学的に許容される塩」とは、式I化合物とフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、アミノスルホン酸、サリチル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、マレイン酸、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、ピルビン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、マロン酸、フマル酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、ステアリン酸、パモ酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、安息香酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、2-アセチルオキシ安息香酸およびヒドロキシエタンスルホン酸からなる群から選ばれる酸からなる塩類、あるいは式I化合物と無機塩基からなるナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩またはアンモニウム塩、あるいは一般式I化合物と有機塩基からなるメチルアミン塩、エチルアミン塩またはエタノールアミン塩のことである。
もう一つの好適な例において、前記の化合物では、A環、Ar、XおよびR1のうちの任意の一つはそれぞれ実施例に記載の具体的な化合物における相応する基である。
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸およびキラル面を有し、且つラセミ体、R-異性体またはS-異性体の形態で存在してもよい。本分野の技術者は、通常の技術手段によってラセミ体から分割してR-異性体及び/又はS-異性体を得ることができる。
【0029】
製造方法
本発明の一般式Iで表される化合物の製造方法は、合成スキーム以下の通りである。
【化8】
(a) 置換ベンズアルデヒドである一般式IIで表される化合物を開始原料として塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させて中間体を得た後、N-クロロスクシンイミド(NCS)で塩化させて一般式IIIで表される化合物になる;
(b) その後、一般式IIIで表される化合物を塩基の作用下で相応する3-オキソプロピオン酸エステルと反応させて一般式IVで表される化合物を得る;
(c) 一般式IVで表される化合物におけるエステルを重水素化還元剤の作用下で相応するアルコール、すなわち、一般式Vで表される化合物に還元させる;
(d) 一般式Vで表される化合物を臭素試薬で臭化し、VIで表される化合物を生成させる;
(e) 一般式VIで表される化合物とVIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIIで表される化合物になる;
(f) 一般式VIIIで表される化合物を塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、一般式IXで表される化合物を生成させる;
(g) 一般式IXで表される化合物をホスゲン、トリホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールの作用下で反応させ、一般式Iで表される化合物を生成させる。
(ただし、Xは重水素で、R1、Ar、Aの定義は請求項1に記載の通りである。)
【0030】
【化9】
(h) 一般式IVで表される化合物におけるエステルを還元剤の作用下で相応するアルコール、すなわち、一般式Xで表される化合物に還元させる;
(i) 一般式Xで表される化合物を酸化剤の作用下で相応するアルデヒド、すなわち、一般式XIで表される化合物に酸化させる;
(j) 一般式XIで表される化合物におけるエステルを重水素化還元剤の作用下で一般式Vで表される化合物に還元させる;
(d) 一般式Vで表される化合物を臭素試薬で臭化し、VIで表される化合物を生成させる;
(e) 一般式VIで表される化合物とVIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIIで表される化合物になる;
(f) 一般式VIIIで表される化合物を塩基の作用下で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、一般式IXで表される化合物を生成させる;
(g) 一般式IXで表される化合物をホスゲン、トリホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールの作用下で反応させ、一般式Iで表される化合物を生成させる。
(各式において、Xは水素で、R1、Ar、Aの定義は本発明の第一の側面に記載の通りである。)
【0031】
もう一つの好適な例において、一般式VIIで表される化合物は以下の工程で製造される:
【化10】
(k) 一般式XIIで表される化合物と一般式XIIIで表される化合物を塩基の作用下で反応させ、一般式VIIで表される化合物を生成させる。
(各式において、Aの定義は本発明の第一の側面に記載の通りである。)
【0032】
医薬組成物及びその治療用途
本発明によって提供される化合物は、単独で使用してもよく、あるいはそれを薬用可能な補助剤(例えば、賦形剤、希釈剤など)と混合し、経口投与の錠剤、カプセル剤、顆粒剤またはシロップ剤などに調製してもよい。当該医薬組成物は製薬学における通常の方法によって製造することができる。本発明の医薬組成物は、安全有効量の範囲内の活性成分と、薬学的に許容される担体とを含む。
本発明に記載の「活性成分」とは、本発明に記載の式I化合物のことである。
本発明に記載の「活性成分」および医薬組成物はFXR関連疾患を治療する薬物の製造に使用される。本発明に記載の「活性成分」および医薬組成物はFXR作動剤として有用である。もう一つの好適な例において、前記の活性成分はFXR作動剤によって調節される疾患を予防および/または治療する薬物の製造に使用することができる。
【0033】
「安全有効量」とは、活性成分の量が病状の顕著な改善に充分で、重度な副作用が生じないことをいう。通常、医薬組成物は、1単位製剤あたりに、1~2000mg、好ましくは10~200mgの活性成分を含む。好ましくは、前記の「1単位製剤」は、一つの錠である。
「薬学的に許容される担体」とは、ヒトに適用でき、かつ十分な純度および充分に低い毒性を持たなければならない、1つまたは複数の相溶性固体または液体フィラーまたはゲル物質をいう。「相溶性」とは、組成物における各成分が本発明の活性成分と、またその同士の間で配合することができ、活性成分の効果を顕著に低下させないことをいう。薬学的に許容される担体の例の一部として、セルロースおよびその誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(たとえばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(たとえば大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブオイルなど)、多価アルコール(たとえばプロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(たとえばツイン(登録商標))、湿潤剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水などがある。
【0034】
本発明の活性成分または医薬組成物の施用様態は、特に限定されないが、代表的な施用様態は、経口投与、腫瘍内、直腸、胃腸外(静脈内、筋肉内、または皮下)などを含むが、これらに限定されない。
経口投与に用いられる固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。
経口投与に用いられる液体剤形は、薬学的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップまたはチンキ剤を含む。活性成分の他、液体剤型は、本分野で通常使用される不活性希釈剤、たとえば、水または他の溶媒、相溶剤および乳化剤、たとえば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミドおよび油、特に、綿実油、落花生油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油やゴマ油またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。これらの不活性希釈剤の他、組成物は助剤、たとえば、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、矯味剤や香料を含んでもよい。
【0035】
活性成分の他、懸濁液は、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトールやソルビタンエステル、微晶質セルロース、メトキシアルミニウムや寒天またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
胃腸外注射用組成物は、生理的に許容される無菌の水含有または無水溶液、分散液、懸濁液や乳液、および再溶解して無菌の注射可能な溶液または分散液にするための無菌粉末を含む。適切な水含有または非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤は、水、エタノール、多価アルコールおよびその適切な混合物を含む。
本発明化合物は、単独で投与してもよいし、あるいはほかの治療薬(たとえば脂質降下薬)と併用して投与してもよい。
【0036】
医薬組成物を使用する場合、安全な有効量の本発明の化合物を治療の必要のある哺乳動物(たとえばヒト)に使用し、使用の際の用量は薬学上で効果があるとされる投与量で、体重60 kgのヒトの場合、毎日の投与量は、通常1~2000 mg、好ましくは20~500 mgである。勿論、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内である。
【0037】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
別途に定義しない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、当業者に熟知される意味と同様である。また、記載の内容と類似あるいは同等の方法および材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
【0038】
使用される装置および主な実験材料は以下の通りである。
使用される試薬および無水溶媒は中国商業公司から購入され、特別に説明しない限り、いずれもそのまま使用される。1Hおよび13C NMRはBrukerAM-400型およびVarian Mercury plus-400型核磁気共鳴装置が使用され、質量分析はAgilent 6230型質量分析装置が使用され、そして200-300メッシュカラムクロマトグラフィーシリカゲル(青島海洋化工工場)、HSGF254 TLCプレート(煙台市化工研究院)である。
本発明の化合物は以下のスキーム1、スキーム2のいずれかの方法により、適切な開始原料を使用して製造した。
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
実施例中間体VII-1の合成:
【化13】
エンド-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-オールXII(10g, 78.7mmol)およびp-フルオロベンゾニトリルXIII-1(78.7mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(150 mL)に溶解させ、室温の条件において炭酸カリウム(197mmol)を分けて入れ、80℃で一晩反応させた。酢酸エチル(500 mL)を入れて反応液を希釈し、水で洗浄し、そして酢酸エチル(300 mLずつ、計3回)で水相を抽出した。有機相を混合し、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した。カラムクロマトグラフィーによって中間体VII-1(11 g、収率61%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.51 - 7.48 (m, 2H), 6.82 - 6.79 (m, 2H), 4.62 (s, 1H), 4.27 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 3.78 (s, 1H), 2.28 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 1.91 - 1.85 (m, 4H), 1.57 (d, J = 14.0 Hz, 2H). MS(ESI, m/z):229[M+H]+
【0042】
実施例化合物1の合成:
【化14】
【0043】
0℃で炭酸カリウム水溶液(3N,182 mmol)を1滴ずつ撹拌中の塩酸ヒドロキシアミン(182 mmol)のエタノール(100 mL)溶液に入れ、2,6-ジクロロベンズアルデヒドII-1(20 g,114 mmol)を100 mLのエタノールに溶解させた後、上記反応溶液に入れ、温度を90℃に昇温させ、2時間反応させた。反応液が室温に冷却したら、固体になるように濃縮した。水/エタノール(1000 mL/100 mL)溶液を入れて撹拌し、固体を破砕させ、ろ過し、50℃で一晩真空乾燥し、化合物中間体(18.4 g)を得た。当該中間体をN,N-ジメチルホルムアミド(50 mL)に溶解させ、0℃でN-クロロスクシンイミド(97 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(100 mL)溶液に1滴ずつ入れ、一晩撹拌した。反応液を0℃の氷水に注いだ後、メチル-t-ブチルエーテル(200 mLずつ、計3回)で抽出し、飽和食塩水で有機相を洗浄し、濃縮して粗製品を得た。粗製品が入ったフラスコにn-ヘキサン(600 mL)を入れ、磁気撹拌し、ろ過し、固体を真空(30oC)で乾燥して中間体III-1(18.3 g、収率73%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 - 7.39 (m, 2H), 7.39 - 7.33 (m, 1H)。
【0044】
トリエチルアミン(8.2 g)を3-シクロプロピル-3-オキソプロピオン酸メチル(82 mmol)に入れ、30分間撹拌した。その後、10℃に冷却し、さらに中間体III-1(18.3 g,82 mmol)の無水エタノール(80 mL)溶液を1滴ずつそれに入れ(内温が30℃以下になるように)、室温で一晩反応させた。酢酸エチル(100 mL)を入れて反応液を希釈し、水で洗浄し、そして酢酸エチル(100 mLずつ、計3回)で水相を抽出した。有機相を混合し、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した。濃縮物に100 mLのエチルエーテルを入れて撹拌し、真空で溶媒を除去して固体産物の化合物IV-1(21.6 g、収率84%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 - 7.39 (m, 2H), 7.39 - 7.33 (m, 1H), 3.72 (s, 3H), 2.21 - 2.09 (m, 1H), 1.35 - 1.28 (m, 2H), 1.25 - 1.18 (m, 2H);MS(ESI, m/z):312[M+H]+
【0045】
重水素化リチウムアルミニウム(7.3 g)をテトラヒドロフラン(200 mL)に入れ、0℃に冷却し、さらに化合物IV-1(21.6 g,69.2 mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を1滴ずつそれに入れ(内温が5℃以下になるように)、反応液を室温で2 h撹拌した。0℃で氷水(9mL)を入れて反応をクエンチングした後、それぞれ15%水酸化ナトリウム水溶液(9 mL)および氷水(27 mL)を1滴ずつ入れた後、さらに無水硫酸マグネシウム(100 g)を入れ、上記混合物を室温で0.5 h撹拌し、ろ過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって中間体V-1(19 g、収率96%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.72 - 7.59 (m, 2H), 7.58 - 7.50 (m, 1H), 4.90 (s, 1H), 2.38 - 2.26 (m, 1H), 1.16 - 1.03 (m, 4H). MS(ESI, m/z):286[M+H]+
【0046】
化合物V-1(19 g,66.4 mmol)をジクロロメタン(200 mL)に溶解させ、0℃に冷却し、溶液にゆっくり三臭化リン(66.4 mmol)を滴下し、反応液を室温で2 h撹拌した。反応液から溶媒を除去して油状物を得、酢酸エチル(100 mL)を入れ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応溶液のpH値が中性になるように調整し、水で洗浄し、そして酢酸エチル(100 mLずつ、計3回)で水相を抽出した。有機相を混合し、飽和食塩水で洗浄した後、濃縮した。カラムクロマトグラフィーによって中間体VI-1(20.2 g、収率87%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.72 - 7.65 (m, 2H), 7.64 - 7.56 (m, 1H), 2.48 - 2.39 (m, 1H), 1.26 - 1.10 (m, 4H). MS(ESI, m/z):348[M+H]+
【0047】
0℃で、化合物VII-1(1.96g,8.6mmol)の無水テトラヒドロフラン(150 mL)溶液にカリウムt-ブトキシド(21.4mmol)を入れ、15分間撹拌した後、1滴ずつ化合物VI-1(8.6mmol)の無水テトラヒドロフラン(50 mL)溶液を入れ、反応液を室温で4 h撹拌した。反応液に水(200 mL)を入れ、酢酸エチル(200 mLずつ、計3回)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって中間体VIII-1(2.1 g、収率49%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.73-7.63 (m, 2H), 7.64 - 7.55 (m, 3H), 6.83 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.16 (s, 2H), 3.37 (s, 1H), 2.38 - 2.31 (m, 1H), 1.83 - 1.74 (m, 6H), 1.56 - 1.49 (m, 2H), 1.16 - 1.06 (m, 4H). MS(ESI, m/z):496[M+H]+
【0048】
中間体VIII-1(2.1 g,4.2 mmol)、塩酸ヒドロキシアミン(8.4 mmol)、無水エタノール(80 mL)を丸底フラスコに入れて撹拌し、ゆっくりトリエチルアミン(8.4 mmol)を滴下し、80℃に加熱して一晩反応させた。室温に冷却し、溶媒を除去し、ジクロロメタン(150 mL)で溶解させ、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、有機相を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって中間体IX-1(1.1 g、収率50%)を得た。1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.73 - 7.63 (m, 2H), 7.64 - 7.55 (m, 3H), 6.83 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.67 (s, 2H), 3.43 - 3.35 (m, 1H), 2.39 - 2.32 (m, 1H), 1.89 - 1.78 (m, 6H), 1.57 - 1.48 (m, 2H), 1.16 - 1.06 (m, 4H). MS(ESI, m/z):529[M+H]+
【0049】
中間体IX-1(1.1 g,2.1 mmol)、N,N'-カルボニルジイミダゾール(3.1 mmol)、1,4-ジオキサン(100 mL)を丸底フラスコに入れた後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(3.1 mmol)を入れ、100℃に加熱して8時間反応させた。反応駅を室温に冷却し、水(100 mL)を入れて希釈し、1M塩酸水溶液でpHが約3になるように調整した後、酢酸エチル(100 mLずつ、計3回)で抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、濃縮して得られた粗製品をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって最終産物の化合物1(158 mg、収率13%)を得た。1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.65 - 7.63 (m, 2H), 7.59 - 7.55 (m, 3H), 6.83 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.17 (s, 2H), 3.38 (s, 1H), 2.37 - 2.30 (m, 1H), 1.80 - 1.72 (m, 6H), 1.51 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 1.16 - 1.06 (m, 4H). MS(ESI, m/z):555[M+H]+
【0050】
実施例2:
【化15】
実施例2の製造は、中間体VII-2からスキーム1によって製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化16】
【0051】
原料XIII-2から中間体VII-1を合成する合成方法によって化合物VII-2を合成した後、スキーム1によって化合物2を得たが、ここで、
白色固体の化合物VIII-2:収率77%,1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.21 (s, 1H), 7.70 - 7.62 (m, 3H), 7.60 - 7.54 (m, 1H), 7.16 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.29 (s, 2H), 3.43 - 3.35 (m, 1H), 2.37 - 2.29 (m, 1H), 1.85-1.65 (m, 6H), 1.63 - 1.54 (m, 2H), 1.17 - 1.05 (m, 4H). MS(ESI, m/z):497[M+H]+
白色固体の化合物2:収率64%,1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.20 - 8.16 (m, 1H), 7.70 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.67 - 7.62 (m, 2H), 7.60 - 7.53 (m, 1H), 7.28 - 7.21 (m, 1H), 4.28 (s,br, 2H), 3.42 - 3.40 (m, 1H), 2.38 - 2.29 (m, 1H), 1.81 - 1.69 (m, 6H), 1.60 - 1.52 (m, 2H), 1.16 - 1.05 (m, 2H). MS(ESI, m/z):556[M+H]+
【0052】
実施例3:
【化17】
実施例3の製造は、中間体VII-3からスキーム1によって製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化18】
【0053】
原料XIII-3から中間体VII-1を合成する合成方法によって化合物VII-3を合成した後、スキーム1によって化合物3を得たが、ここで、
白色固体の化合物VIII-3:収率67%,HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.68 - 7.45 (m, 4H), 6.69 (t, J = 12.0 Hz, 2H), 4.18 (s, 2H), 3.46 - 3.36 (m, 1H), 2.38 - 2.27 (m, 1H), 1.80 - 1.66 (m, 6H), 1.60 - 1.51 (m, 2H), 1.20 - 1.03 (m, 4H). MS(ESI, m/z):497[M+H]+
白色固体の化合物3:収率38%,1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.69 - 7.42 (m, 4H), 6.74 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 6.63 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.21 (s, 2H), 3.47 - 3.43 (m, 1H), 2.35 - 2.30 (m, 1H), 1.76 - 1.70 (m, 6H), 1.58 - 1.50 (m, 2H), 1.20 - 1.06 (m, 4H). MS(ESI, m/z):573[M+H]+
【0054】
実施例4:
【化19】
実施例4の製造は、実施例3の操作を参照し、中間体IV-1からスキーム2によってを化合物4を製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化20】
【0055】
水素化リチウムアルミニウム(420 mg,10 mmol)をテトラヒドロフラン(8 mL)に入れ、0℃に冷却し、さらに化合物IV-1(2 mmol)のテトラヒドロフラン(2 mL)溶液を1滴ずつそれに入れ(内温が5℃以下になるように)、反応液を室温で2 h撹拌した。0℃で氷水(0.4 mL)を入れて反応をクエンチングした後、それぞれ15%水酸化ナトリウム水溶液(0.4 mL)および氷水(1.2 mL)を1滴ずつ入れた後、さらに無水硫酸マグネシウム(8 g)を入れ、上記混合物を室温で0.5 h撹拌し、ろ過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって中間体X-1(1 g、収率84%)を得た。MS(ESI, m/z):284[M+H]+
【0056】
中間体X-1(1 g,3.53 mmol)をジクロロメタン(20mL)に入れ、室温でクロロクロム酸ピリジニウム(14.14 mmol)を入れ、反応液を室温で1 h撹拌した。ろ過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって中間体XI-1(870 mg、収率88%)を得た。MS(ESI, m/z):282[M+H]+
水素化リチウムアルミニウム(260 mg,6.2 mmol)をテトラヒドロフラン(4 mL)に入れ、0℃に冷却し、さらに化合物XI-1(3.1 mmol)のテトラヒドロフラン(1 mL)溶液を1滴ずつそれに入れ(内温が5℃以下になるように)、反応液を室温で2 h撹拌した。0℃で氷水(0.2 mL)を入れて反応をクエンチングした後、それぞれ15%水酸化ナトリウム水溶液(0.2 mL)および氷水(0.6 mL)を1滴ずつ入れた後、さらに無水硫酸マグネシウム(10 g)を入れ、上記混合物を室温で0.5 h撹拌し、ろ過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって中間体V-2(730 mg、収率83%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.62-7.60 (m, 2H), 7.56-7.52 (m, 1H), 4.92 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 4.18 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 2.35 - 2.28 (m, 1H), 1.14 - 1.04 (m, 4H). MS(ESI, m/z):285[M+H]+
【0057】
中間体V-2(730 mg,2.57 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解させ、0℃に冷却し、溶液にゆっくり三臭化リン(3.08 mmol)を滴下し、反応液を室温で2 h撹拌した。反応液から溶媒を除去して油状物を得、酢酸エチル(20 mL)を入れ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応溶液のpH値が中性になるように調整し、水で洗浄し、そして酢酸エチル(100 mLずつ、計3回)で水相を抽出した。有機相を混合し、飽和食塩水で洗浄した後、濃縮した。カラムクロマトグラフィーによって中間体VI-2(720 mg、収率81%)を得た。MS(ESI, m/z):347[M+H]+
【0058】
0℃で、化合物VII-2(512mg,2.08mmol)の無水テトラヒドロフラン(10 mL)溶液にカリウムt-ブトキシド(4.16mmol)を入れ、15分間撹拌した後、1滴ずつ化合物VI-2(2.08mmol)の無水テトラヒドロフラン(5 mL)溶液を入れ、反応液を室温で4 h撹拌した。反応液に水(20 mL)を入れ、酢酸エチル(20 mLずつ、計3回)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって中間体VIII-4(420 mg、収率39%)を得た。MS(ESI, m/z):513[M+H]+
中間体VIII-4(420 mg,0.82 mmol)、塩酸ヒドロキシアミン(1.64 mmol)、無水エタノール(5 mL)を丸底フラスコに入れて撹拌し、ゆっくりトリエチルアミン(1.64 mmol)を滴下し、80℃に加熱して一晩反応させた。室温に冷却し、溶媒を除去し、ジクロロメタン(20 mL)で溶解させ、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、有機相を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって中間体IX-4(360 mg、収率81%)を得た。MS(ESI, m/z):546[M+H]+
【0059】
中間体IX-4(360 mg,0.66 mmol)、N,N'-カルボニルジイミダゾール(0.99 mmol)、1,4-ジオキサン(5 mL)を丸底フラスコに入れた後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(0.99 mmol)を入れ、100℃に加熱して8時間反応させた。反応駅を室温に冷却し、水(10 mL)を入れて希釈し、1M塩酸水溶液でpHが約3になるように調整した後、酢酸エチル(10 mLずつ、計3回)で抽出した。有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、濃縮して得られた粗製品をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって最終産物の化合物4(76.7 mg、収率20%)を得た。1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.65-7.62 (m, 2H), 7.58 - 7.55 (m, 1H), 7.47 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 6.72 - 6.65 (m, 2H), 4.22 (s, 1H), 4.17 (s, 2H), 3.39 (s, 1H), 2.36 - 2.30 (m, 1H), 1.76-1.73 (m, 6H), 1.52 (d, J = 14.8 Hz, 2H), 1.14 - 1.08 (m, 4H). MS(ESI, m/z):572[M+H]+
【0060】
実施例5:
【化21】
実施例5の製造は、中間体VII-4からスキーム1によって製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化22】
【0061】
原料XIII-4から中間体VII-1を合成する合成方法によって化合物VII-4を合成した後、スキーム1によって化合物5を得たが、ここで、
白色固体の化合物VIII-5:収率47%,1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.68 - 7.61 (m, 2H), 7.60 - 7.55 (m, 1H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.71 (s, br, 1H), 6.62 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.17 (s, 2H), 3.41 - 3.36 (m, 1H), 2.39 - 2.26 (m, 4H), 1.84 - 1.66 (m, 6H), 1.58 - 1.46 (m, 2H), 1.19 - 1.02 (m, 4H). MS(ESI, m/z):510[M+H]+
白色固体の化合物3:収率11%,1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.69 - 7.62 (m, 2H), 7.60 - 7.35 (m, 2H), 6.75 - 6.545 (m, 2H), 4.19 (s, 2H), 3.43 - 3.33 (m, 1H), 2.41 - 2.29 (m, 4H), 1.88 - 1.66 (m, 6H), 1.60 - 1.46 (m, 2H), 1.21 - 1.03 (m, 4H). MS(ESI, m/z):569[M+H]+
【0062】
実施例6:
【化23】
実施例6の製造は、中間体VII-5からスキーム1によって製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化24】
【0063】
原料XIII-5から中間体VII-1を合成する合成方法によって化合物VII-5を合成した後、スキーム1によって化合物6を得たが、ここで、
白色固体の化合物VIII-6:収率32%,1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.66 - 7.61 (m, 2H), 7.60 - 7.52 (m, 1H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.39 - 6.29 (m, 2H), 4.22 (s, 2H), 3.83 (s, 3H), 3.41 - 3.32 (m, 1H), 2.36 - 2.28 (m, 1H), 1.84 - 1.66 (m, 6H), 1.60 - 1.49 (m, 2H), 1.20 - 1.02 (m, 4H). MS(ESI, m/z):526[M+H]+
白色固体の化合物3:収率9%,1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.69 - 7.52 (m, 3H), 7.37 - 7.29 (m, 1H), 6.45 - 6.36 (m, 2H), 4.28 (s, 2H), 3.87 (s, 3H), 3.43 - 3.32 (m, 1H), 2.42 - 2.27 (m, 1H), 1.87 - 1.64 (m, 6H), 1.61 - 1.47 (m, 2H), 1.21 - 1.02 (m, 4H). MS(ESI, m/z):585[M+H]+
【0064】
実施例7:
【化25】
実施例7の製造は、中間体VII-6からスキーム1によって製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化26】
【0065】
原料XIII-6から中間体VII-1を合成する合成方法によって化合物VII-6を合成した後、スキーム1によって化合物7を得たが、ここで、
白色固体の化合物VIII-7:収率56%,1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.75 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.67 - 7.52 (m, 3H), 7.08 (s, 1H), 7.02 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.32 (s, 2H), 3.43 - 3.32 (m, 1H), 2.36 - 2.28 (m, 1H), 1.78 - 1.69 (m, 3H), 1.61 - 1.50 (m, 2H), 1.16 - 1.06 (m, 4H). MS(ESI, m/z):564[M+H]+
白色固体の化合物7:収率49%, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.67 - 7.47 (m, 4H), 7.11 - 7.04 (m, 2H), 4.27 (s, 2H), 3.48 - 3.44 (m, 1H), 2.35 - 2.31 (m, 1H), 1.85 - 1.69 (m, 6H), 1.62 - 1.48 (m, 2H), 1.20 - 1.01 (m, 4H). MS(ESI, m/z):623[M+H]+
【0066】
実施例8:
【化27】
実施例8の製造は、原料II-2からスキーム1によって製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化28】
【0067】
ここで、
コロイドの化合物V-3:収率98%, 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.88 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.81 - 7.71 (m, 2H), 7.59 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.90 (s, 1H), 2.33-2.26 (m, 1H), 1.12-1.05 (m, 4H). MS(ESI, m/z):286[M+H]+
白色固体の化合物VIII-8:収率31%, 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.90 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.81-7.72 (m, 2H), 7.58 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.50 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 6.74 (dd, J = 13.8, 2.2 Hz, 1H), 6.63 (dd, J = 8.6, 2.2 Hz, 1H), 4.20 (s, 1H), 3.61 - 3.57 (m, 1H), 3.40 - 3.32 (m, 1H), 2.33 - 2.29 (m, 1H), 1.76-1.69 (m, 6H), 1.54 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 1.18 - 1.05 (m, 4H). MS(ESI, m/z):514[M+H]+
白色固体の化合物8:収率29%, 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.90 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.81 - 7.72 (m, 2H), 7.58 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.47 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 6.72 - 6.66 (m, 2H), 4.17 (s, 2H), 3.38 (s, 1H), 2.34 - 2.28 (m, 1H), 1.77 - 1.73 (m, 6H), 1.52 (d, J = 14.8 Hz, 2H), 1.13 - 1.05 (m, 4H). MS(ESI, m/z):573[M+H]+
【0068】
実施例9:
【化29】
実施例9の製造は、原料II-3からスキーム1によって製造したが、合成スキームは以下の通りである。
【化30】
【0069】
ここで、
コロイドの化合物V-4:収率76%, 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.67-7.63 (m, 2H), 7.53 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 4.96 (s, 1H), 2.32-2.27 (m, 1H), 1.13-1.04 (m, 4H). MS(ESI, m/z):302[M+H]+
コロイドの化合物VIII-9:収率47%, 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.69 - 7.61 (m, 2H), 7.56 - 7.49 (m, 3H), 6.75 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 6.64 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.21 (s, 2H), 3.45 - 3.43 (m, 1H), 2.36 - 2.29 (m, 1H), 1.77 - 1.69 (m, 6H), 1.56 (d, J = 14.8 Hz, 2H), 1.23 - 1.06 (m, 4H). MS(ESI, m/z):530[M+H]+
白色固体の化合物8:収率21%, 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.69 - 7.62 (m, 2H), 7.56 - 7.46 (m, 3H), 6.72 - 6.66 (m, 2H), 4.18 (s, 2H), 3.43 (s, 1H), 2.35 - 2.31 (m, 1H), 1.80 - 1.75 (m, 6H), 1.54 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 1.13 - 1.06 (m, 4H). MS(ESI, m/z):589[M+H]+
【0070】
薬理実験実施例:
レポーター遺伝子活性検出に基づいた方法によって化合物のFXR作動活性を検出する方法:
1.1 プラスミドpGAL4-FXR-LBDおよびpG5-Lucの構築および製造
レポーター遺伝子検出システムに使用されるpGAL4-FXR-LBDおよびpG5-Lucプラスミドは通常の分子クローニング方法によって構築された。主な工程は、PCR技術によってFXR-LBD(212-476AA)のアミノ酸配列に相応するFXR(NM_001206979.2)のcDNA配列を、pGAL4ベクターのBamHIおよびNotIの酵素切断部位に挿入し、pGAL4-FXR-LBDを得た。pG5-LucおよびphRL-TKプラスミドは中国科学院上海薬物研究所によって贈与された。CaCl2法によってプラスミドでDH5α大腸菌を形質転換させ、さらに培養して増幅させた後、プラスミド抽出キット(TIANGEN、#D107)によって精製して相応するプラスミドDNAを得た。
【0071】
プラスミドのHEK293T細胞への共形質移入および化合物による処理
プラスミドの形質移入の前日にHEK293T細胞を1×104/ウェルの密度で96ウェルプレートに接種した。形質移入試薬FuGENE(登録商標) HD(Promega,# E2311)の説明書に従って細胞の形質移入を行った。主な工程は、一つのウェルを例とすると、プラスミドpGAL4-FXR-LBD、pG5-LucおよびphRL-TKを20 ng、50 ngおよび5 ngの比率で10 μLのOpti-MEM(商標) I培地(Gibco、#11058021)に入れて均一に混合した。さらに0.25 μLのFuGENE(登録商標) HDを入れ、均一に混合した後、室温で5 min静置した。さらにこの10 μLの混合物を100 μLの培養液を含有する細胞ウェルに入れた。細胞の共形質移入から6 hで、化合物を1 μMを最高濃度に、3倍の勾配で希釈し、計10の濃度で細胞培養液に入れて24 h処理し、計2つの重複ウェルを設け、LJN452化合物を陽性対照とした。
【0072】
1.3 Dual-Gloルシフェラーゼによる検出
細胞を化合物で24 h処理した後、Dual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、# E2940)の説明書に従って検出した。主な工程は、各ウェルから50 μLの培養液を吸って捨て、さらに50 μLのDual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼ試薬を入れ、室温で10 min振とうした。80 μLの分解反応液を白色の不透明のoptiPlate-96ウェルプレートに取り、MD i3xマルチラベルプレートリーダーによってホタルルシフェラーゼ(Firefly luciferase)の発光信号の値(Firefly-Luc)を検出した。さらに40 μLのDual-Glo(登録商標) Stop & Glo(登録商標) 試薬を入れ、室温で10 min振とうした。さらにMD i3xマルチラベルプレートリーダーによってウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla luciferase)の発光信号の値(Renilla-Luc)を検出した。Firefly-Luc/Renilla-Luc比の値を化合物のFXRに対する作動活性とし、そして溶媒DMSO群の比の値で正規化処理を行い、GraphPad Prism6.0ソフトによって4パラメーターで投与量-反応曲線をフィッティングし、EC50値を計算した。
【0073】
2. 結果
実験のデータから、化合物のいずれもある程度のFXR作動活性を有し、中でも、実施例1、2、3、4のEC50がいずれも5 nM未満で、非常強いFXR作動活性を有することがわかる。ほかの実施例のFXR作動活性のデータを表1に示す。
【表1】
****: EC50(nM) < 5;***: 5 < EC50(nM) < 10; **: 10 < EC50(nM) < 50; *: 50 < EC50(nM)。
【化31】
【0074】
結果から、本発明の化合物が既存のFXR作動剤の化合物LJN452および無重水素化の対照品1よりも優れた細胞レベルの活性を示すことがわかる。特に、本願の実施例3の化合物は無重水素化の対照品1の構造に基づいて重水素化したもので、活性が顕著に向上したことから、当該部位がこのような化合物の主要な重水素化部位であることが示唆された。
【0075】
薬物動態学の評価
マウスモデルにおいて、重水素化の実施例8と非重水素化の対照品2の生物利用能および薬物動態学の挙動を比較した。各群の実施例では、体重が近い雄ICRマウスを6匹選び、中では、3匹のマウスに単回の経口投与で3 mg/kg投与し、3匹のマウスに1 mg/kgの単回の投与量で静脈内投与した。投与後15分間、30分間、1時間、2時間、4時間および7時間の時点で血液サンプルを採取し、LC-MS/MSによって血漿サンプルの濃度を分析し、そしてPKSolverのフリーツールおよび非コンパートメントモデル(NCA)ソフトによって化合物の薬物動態学のパラメーターを分析した。
【0076】
実験プラン:
実験化合物:対照品2および実施例8
【化32】
【0077】
実験動物:
12匹の健康の雄ICRマウスで、Charles Riverから購入され、動物生産許可証番号:20211231Abzz0619000376で、3匹ずつ、4群に分けた。
剤形の調製:所定の量の化合物を秤量し、2% DMSO+15% Solutol+83%生理食塩水に入れ、清澄な溶液を調製した。
投与量:ICRマウスを一晩断食させ、そして3 mg/kgの経口投与量または1 mg/kgの静脈内投与の投与量で各化合物を投与した。経口投与および静脈内投与の投与体積はそれぞれ10 mL/kgおよび5 mL/kgであった。投与後2時間まで断食させた。
【0078】
サンプルの採取:投与後15分間、30分間、1時間、2時間、4時間および7時間で大伏在静脈から約30μLの血液を採取した。血液をK2-EDTAを含有する市販の試験管に入れた後、約4℃、4600 rpmで血液サンプルを5分間遠心して血漿サンプルを得た後、すべての血漿サンプルをドライアイスの上に置いて快速に凍結し、LC-MS/MS分析まで-70℃に維持した。
【0079】
サンプルの調製:50 nmol/Lのドライアイスナフトフラボンを含有するメタノールを内部標準とし、10μLの血漿サンプルを沈殿させ、混合物を十分に混合して4℃、14000 rpmで5分間遠心した後、75 μLの上清液を取って75 μLのメタノールと混合し、LC-MS/MS分析に用いた。
薬物動態学のパラメーターの結果を表1に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
結論:実施例8の化合物は対照品2の化合物よりも優れた吸収性および高い生物利用能を有し、さらなる研究に提供することができる。
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。