(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】乳酸菌組成物及び薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20240313BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20240313BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20240313BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20240313BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240313BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240313BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240313BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A23L33/135
A23L33/125
A61K31/7016
A61K31/702
A61K35/747
A61P31/04
A61P43/00 121
C12N1/20 A ZNA
(21)【出願番号】P 2022169386
(22)【出願日】2022-10-21
【審査請求日】2022-10-27
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【微生物の受託番号】BCRC BCRC 911088
【微生物の受託番号】BCRC BCRC 911089
【微生物の受託番号】BCRC BCRC 911090
(73)【特許権者】
【識別番号】522308613
【氏名又は名称】チア チエ バイオメディカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯宏仁
(72)【発明者】
【氏名】陳志忠
(72)【発明者】
【氏名】呂英震
(72)【発明者】
【氏名】謝▲ブン▼芳
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】Frontiers in Microbiology,2019年,Vol.10,Article 789,pp.1-10
【文献】Frontiers in Cellular and Infection Microbiology,2021年,Vol.11,Article 804253,pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRIGOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、ラクトバチルスラムノサス(Lacticaseibacillus
rhamnosus)JJ101、ラクトバチルスパラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)JJ102、ラクチプランチバチルスプランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)JJ103及び上記の任意の組み合わせからなるグループから選ばれる乳酸菌を含み、前記ラクトバチルスラムノサスJJ101は2021年12月22日に財団法人食品産業発展研究所生物資源センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号がBCRC 911088であり、前記ラクトバチルスパラカゼイJJ102は2021年12月22日にBCRCに寄託され、受託番号がBCRC 911089であり、前記ラクチプランチバチルスプランタルムJJ103は2021年12月22日にBCRCに寄託され、受託番号がBCRC 911090であり、且つ薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する乳酸菌組成物。
【請求項2】
ラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖を含むプレバイオティクスを更に備える請求項1に記載の乳酸菌組成物。
【請求項3】
前記プレバイオティクスの含有量は1重量%~5重量%である請求項
2に記載の乳酸菌組成物。
【請求項4】
前記乳酸菌組成物は経口組成物である請求項1に記載の乳酸菌組成物。
【請求項5】
前記薬剤耐性腸内細菌はクレブシエラニューモニエのカルバペネマーゼ(Klebsiella pneumoniae carbapenemase;KPC)-2を有する請求項1に記載の乳酸菌組成物。
【請求項6】
被験対象は、有効投与量を有する前記乳酸菌
組成物が少なくとも7日間投与される請求項1に記載の乳酸菌組成物。
【請求項7】
前記被験対象がマウスである場合、前記有効投与量は5.0×10
10CFU/kg体重/日~1.5×10
11CFU/kg体重/日である請求項6に記載の乳酸菌組成物。
【請求項8】
有効成分として、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102、ラクチプランチバチルスプランタルムJJ103及び上記の任意の組み合わせからなるグループから選ばれる乳酸菌を含み、前記ラクトバチルスラムノサスJJ101の受託番号がBCRC 911088であり、前記ラクトバチルスパラカゼイJJ102の受託番号がBCRC 911089であり、且つ前記ラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の受託番号がBCRC 911090である、薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物。
【請求項9】
前記薬剤耐性腸内細菌はKPC-2を有する請求項8に記載の薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物。
【請求項10】
前記乳酸菌組成物はラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖を更に含む請求項8に記載の薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌組成物に関し、特に薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腸内細菌(Enterobacteriaceae)は、γ-プロテオバクテリア綱の腸内細菌科に属するグラム陰性菌である。腸内細菌は、環境(土壌や水等)及び生物(動物や植物等)に遍在しており、人間の腸内細菌の1つである。腸内細菌には、有益な共生細菌と、日和見的に感染する病原性細菌が含まれている。これらの病原菌は、腸間膜炎、腸熱、尿路感染症、創傷感染症、肝膿瘍、敗血症、髄膜炎、肺炎などの疾患を引き起こす可能性があり、院内感染症及び地域感染症の主な病原菌の1つである。
【0003】
抗生物質は、腸内細菌感染を治療する主な薬物であり、カルバペネム(carbapenem)系抗生物質の抗菌範囲が広く、且つ薬剤耐性菌種が少なく、多剤耐性腸内細菌科に対する現在の最後の防衛線である。しかしながら、近年、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)等の腸内細菌は、カルバペネム系抗生物質に対する感受性を低下させる方法を進化させてきて、例えば、カルバペネマーゼ産生腸内細菌(carbapenemase-producing Enterobacteriaceae;CPE)がカルバペネマーゼを発現し、カルバペネム系抗生物質を分解でき、更に感染した患者の罹患率及び死亡率が増加することとなり、世界の公衆衛生に対する主要な脅威の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗生物質等の薬物による細菌感染に対する制御に制限があることに鑑みて、薬剤耐性腸内細菌を抑制し、上記の課題を解決するための非薬物組成物を提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の一態様は、有効成分として乳酸菌を含む乳酸菌組成物を提供する。乳酸菌は、ラクトバチルスラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)JJ101、ラクトバチルスパラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)JJ102、ラクチプランチバチルスプランタルム(Lactiplantibacillus plantarum、ラクトバチルスプランタルムとも呼ばれる)JJ103及び上記の任意の組み合わせからなるグループから選ばれ、この乳酸菌組成物は、薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する。
【0006】
本発明の別の態様は、有効成分として上記の乳酸菌を含む、薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物を提供する。
【0007】
本発明の上記の態様によれば、有効成分として、例えば、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102、ラクチプランチバチルスプランタルムJJ103及び上記の任意の組み合わせからなるグループから選ばれてよい乳酸菌を含む乳酸菌組成物を提出する。上記のラクトバチルスラムノサスJJ101は2021年12月22日に台湾食品工業発展研究所生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号がBCRC 911088であり、ラクトバチルスパラカゼイJJ102は2021年12月22日にBCRCに寄託され、受託番号がBCRC 911089であり、且つラクチプランチバチルスプランタルムJJ103は2021年12月22日にBCRCに寄託され、受託番号がBCRC 911090である。この乳酸菌組成物は、薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する。
【0008】
本発明の実施例において、乳酸菌組成物は、プレバイオティクスを選択的に含んでよく、プレバイオティクスがラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖を含むがこれらに限定されない。本発明の実施例において、プレバイオティクスの含有量は1重量%~5重量%である。本発明の実施例において、乳酸菌組成物は経口組成物である。本発明の実施例において、薬剤耐性腸内細菌はクレブシエラニューモニエのカルバペネマーゼ(Klebsiella pneumoniae carbapenemase;KPC)-2を有する。本発明の実施例において、被験対象は、有効投与量を有する乳酸菌が少なくとも7日間投与される。本発明の実施例において、被験対象がマウスである場合、有効投与量は、例えば、5.0×1010CFU/kg体重/日~1.5×1011CFU/kg体重/日であってよい。
【0009】
本発明の別の態様によれば、有効成分として、例えば、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102、ラクチプランチバチルスプランタルムJJ103及び上記の任意の組み合わせからなるグループから選ばれてよい乳酸菌を含み、ラクトバチルスラムノサスJJ101の受託番号がBCRC 911088であり、ラクトバチルスパラカゼイJJ102の受託番号がBCRC 911089であり、且つラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の受託番号がBCRC 911090である、薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物を提出する。
【0010】
本発明の一実施例において、薬剤耐性腸内細菌はKPC-2を有する。本発明の実施例において、乳酸菌組成物は、ラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖を選択的に含んでよい。
(発明の効果)
【0011】
本発明の乳酸菌組成物及び薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物を適用すると、インビトロ及び/又はインビボでKPC-2を有する薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制できるため、本発明の乳酸菌組成物は、薬剤耐性腸内細菌感染の予防、改善及び/又は治療に応用する可能性がある。
【0012】
本発明の上記の及び他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするために、添付図面の説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例による異なるラクトバチルスラムノサスを3日間連続してマウスに経口投与して経管栄養を停止した後の、マウス糞便におけるラクトバチルスラムノサス含有量を示す折線図である。
【
図2】本発明の実施例による異なるラクトバチルスパラカゼイを3日間連続してマウスに経口投与して経管栄養を停止した後の、マウス糞便におけるラクトバチルスパラカゼイ含有量を示す折線図である。
【
図3】本発明の実施例による異なるラクチプランチバチルスプランタルムを3日間連続してマウスに経口投与して経管栄養を停止した後の、マウス糞便におけるラクチプランチバチルスプランタルム含有量を示す折線図である。
【
図4】本発明の実施例による感染したマウスの糞便のCPE含有量を示す折線図である。
【
図5】本発明の実施例による異なるグループ別の感染したマウスの糞便のCPE含有量を示す折線図である。
【
図6A】それぞれ本発明の実施例による菌株JJ101及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量及びpH値を示す折線図である。
【
図6B】それぞれ本発明の実施例による菌株JJ101及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量及びpH値を示す折線図である。
【
図7A】それぞれ本発明の実施例による菌株JJ102及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量及びpH値を示す折線図である。
【
図7B】それぞれ本発明の実施例による菌株JJ102及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量及びpH値を示す折線図である。
【
図8A】それぞれ本発明の実施例による菌株JJ103及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量及びpH値を示す折線図である。
【
図8B】それぞれ本発明の実施例による菌株JJ103及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量及びpH値を示す折線図である。
【
図9】本発明の実施例による異なるグループ別の感染したマウスの糞便のCPE含有量を示す折線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記のように、本発明は、有効成分として乳酸菌を含む乳酸菌組成物及び薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物を提供する。インビトロ共培養実験及び動物実験によって、乳酸菌組成物は、薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制できることが実証された。
【0015】
本文に記載の「乳酸菌」(lactic acid bacteria)とは、糖類(例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、及び/又は果糖等)を分解した後、乳酸及び/又は酢酸を生成する細菌を意味し、例えば、乳酸桿菌、ペディオコッカス、バチルス及びビフィズス菌である。注意すべきなのは、乳酸菌の異なる菌株は互いに干渉して効果に影響を与える可能性があるが、所定の菌株の組み合わせも相乗効果を生み出して、動物の体(即ち、腸)における菌株の滞留能力及び/又は効果を改善する。したがって、乳酸菌を適用する場合、菌株、被験対象及び/又は効果に応じて、単一菌株の乳酸菌又は複数菌株の乳酸菌(複合乳酸菌と呼ばれる)を選択する必要がある。
【0016】
補充して説明すべきなのは、動物の体(即ち、腸)における乳酸菌の滞留能力が優れたこととは、動物の体(即ち、腸)における乳酸菌の滞留時間が長くかつ/又は滞留の生菌数が多いことを意味し、動物の体(即ち、腸)における乳酸菌の生菌数は例えば単位重量あたりの糞便の生菌数を計算することにより評価される。一実施例において、乳酸菌は、耐酸性及び胆汁酸塩耐性を有するので、その腸内滞留能力が優れた。
【0017】
一実施例において、乳酸菌は、例えば、ラクトバチルスラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)、ラクトバチルスパラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)、ラクチプランチバチルスプランタルム(Lactiplantibacillus plantarum、ラクチプランチバチルスプランタルムとも呼ばれる)及び上記の任意の組み合わせからなるグループから選ばれてよい。一実施例において、ラクトバチルスラムノサスは、例えば、受託番号がBCRC 911088のラクトバチルスラムノサスJJ101(菌株JJ101とも呼ばれる)であってよく、ラクトバチルスパラカゼイは、例えば、受託番号がBCRC 911089のラクトバチルスパラカゼイJJ102(菌株JJ102とも呼ばれる)であってよく、且つラクチプランチバチルスプランタルムは、例えば、受託番号がBCRC 911090のラクチプランチバチルスプランタルムJJ103(菌株JJ103とも呼ばれる)であってよい。
【0018】
補充して説明すべきなのは、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103は、何れも2021年12月22日に財団法人食品産業発展研究所生物資源センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC;アドレス:30062台湾新竹市食品路331号)に寄託され、2022年1月7日に生存テストを完了した。ラクトバチルスラムノサスJJ101も2022年01月12日にドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ(アドレス:Inhoffenstr. 7B、38124 ブラウンシュヴァイク、ドイツ)に寄託され、受託番号がDSM 34122である。ラクトバチルスパラカゼイJJ102も2022年01月12日にDSMZに寄託され、受託番号がDSM 34123である。ラクチプランチバチルスプランタルムJJ103も2022年01月12日にDSMZに寄託され、受託番号がDSM 34124である。
【0019】
一実施例において、乳酸菌は、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103からなり、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の菌数比は、例えば、1~5:1~5:1~10であってよく、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103に動物の体内で相乗効果を維持させて、より効果的に薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する。一具体例において、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の菌数比は、例えば、1:1:1であってよい。
【0020】
動物実験によって確認されたように、同属の他の菌株に比べて、動物にラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の何れか1つを3日間連続して経口投与した後、腸内に滞留する生菌数が多く、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の腸内滞留能力が優れたことを示す。
【0021】
本文に記載の「薬剤耐性腸内細菌」とは、抗生物質に対する薬剤耐性を有する腸内細菌科(Enterobacteriaceae)菌株を意味する。本文に記載の「乳酸菌による薬剤耐性腸内細菌の抑制」とは、乳酸菌と薬剤耐性腸内細菌のインビトロ共培養後、薬剤耐性腸内細菌の成長(例えば、薬剤耐性腸内細菌の含有量が少なくとも2桁低下し、99%の抑制率に相当する)を効果的に抑制でき、又は経口投与後、動物の体における薬剤耐性腸内細菌の含有量が著しく低下する。補充して説明すべきなのは、抑制率は初期細菌数と処理後細菌数との差値の初期細菌数に対する百分率であり、初期細菌数は乳酸菌と共培養されていない薬剤耐性腸内細菌の生菌数であり、且つ処理後細菌数は乳酸菌と共培養された後の薬剤耐性腸内細菌の生菌数であり、或いは、初期細菌数は乳酸菌が経口投与されていない感染した動物の糞便における薬剤耐性腸内細菌の含有量であり、且つ処理後細菌数は乳酸菌が経口投与された後の感染した動物の糞便における薬剤耐性腸内細菌の含有量である。
【0022】
一実施例において、上記の抗生物質は、例えば、β-ラクタム系(β-lactam)抗生物質であってよく、細胞壁の合成を妨げることにより細菌の成長を抑制することができる。β-ラクタム系抗生物質は、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム(carbapenem)及びモノアミド環を含むがこれらに限定されない。一実施例において、薬剤耐性腸内細菌は、例えば、β-ラクタム系薬剤耐性腸内細菌であってよい。一実施例において、薬剤耐性腸内細菌は、例えば、カルバペネム薬剤耐性腸内細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae;CRE)であってよい。いくつかの具体例において、薬剤耐性腸内細菌は、例えば、カルバペネマーゼ産生腸内細菌(carbapenemase-producing Enterobacteriaceae;CPE)であってよい。
【0023】
補充して説明すべきなのは、カルバペネマーゼは、β-ラクタマーゼ(β-lactamases)の1つであり、β-ラクタム系抗生物質(例えば、カルバペネム)を水解して、CPEのβ-ラクタム系抗生物質に対する感受性を低下させることができる。クレブシエラニューモニエカルバペネマーゼ(Klebsiella pneumoniae carbapenemase;KPC)は、カルバペネマーゼの1つであり、1996年にクレブシエラニューモニエで最初に発見されたので、その名前が付けられた。KPCの遺伝子は、色素体に位置するため、異種間で伝播することができ、今まで、他の腸内細菌(例えば、サイトロバクター・フレウンディイ(Citrobacter freundii)、大腸菌、エンテロバクタージェルゴビエ(Enterobacter gergovia)、エンテロバクターアエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクタークロアカ(Enterobacter cloacae)、クレブシエラオキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、セラチア菌(Serratia marcescens))及び他の非腸内細菌のグラム陰性菌(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、アシネトバクター(Acinetobacter sp.))のいずれにも、KPCを生じた菌株が発見されたことがある。遺伝子配列によって、KPCは、KPC-1、KPC-2、KPC-3等に分類されてよい。例えば、シーケンスタイプ(sequence type;ST)11のクレブシエラニューモニエのような、KPC-2を有する薬剤耐性腸内細菌は、臨床的によく見られる。
【0024】
動物実験によって確認されたように、CPEで感染した動物にラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の何れか1つを連続して少なくとも4日間経口投与した後、感染した動物の糞便における薬剤耐性腸内細菌の含有量を効果的に低下させることができ、且つ上記の菌株を少なくとも7日間経口投与した後、薬剤耐性腸内細菌の含有量が少なくとも2桁低下し、99%の抑制率に相当し、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103は、何れも薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する有効性を有することは実証された。次に、同時にラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103を連続して7日間投与した後、感染した動物の腸内に滞留する薬剤耐性腸内細菌が少なくとも3桁低下し、99.9%の抑制率に相当し、上記の3つの菌を共に使用すると、薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する有効性がより優れたことを示す。
【0025】
一実施例において、乳酸菌組成物は、プレバイオティクスを選択的に含んでよく、プレバイオティクスを含む乳酸菌組成物はシンバイオティクスと呼ばれてよい。本文に記載の「プレバイオティクス」とは、宿主によって消化され得ないが、宿主の消化管における所定の菌株の成長及び/又は代謝活性に寄与して、宿主の健康を改善する物質を指す。
【0026】
一般的なプレバイオティクスは、二糖、オリゴ糖炭水化物(oligosaccharide carbohydrates;OSCs)、耐性デンプン及び他の非糖物質を含み、具体的にフルクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide)、ガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide)、ポリデキストロース(polydextrose)、キシロオリゴ糖(xylo-oligosaccharide)、ラクツロース(lactulose)、イソマルトオリゴ糖(isomalto-oligosaccharides)及びイヌリン(inulin)等であってよい。一実施例において、プレバイオティクスは、ラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖を含むがこれらに限定されない。一実施例において、ラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖は、乳酸菌による酸性物質(例えば、有機酸)の産生を促進し、それにより、乳酸菌の薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する有効性を高めることができる。
【0027】
一実施例において、プレバイオティクスの含有量に制限がなく、安全な投与量を超えない程度で十分であり、腹部膨満や下痢等の不快感を避けるために、成人のプレバイオティクスの安全な1日投与量は、例えば、10g未満にすることができる。一実施例において、プレバイオティクスの含有量は、上記の乳酸菌の成長及び/又は代謝活性を十分に刺激するように、例えば1重量%~5重量%、1.5重量%~2.5重量%、又は2重量%であってよいが、上記の安全な1日投与量を超えない。
【0028】
インビトロ共培養実験によって確認されたように、ラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖は、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103の何れか1つによる酸性物質の生産を促進でき、共培養液のpH値を5未満にして、薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する。次に、動物実験によって確認されたように、乳酸菌(プレバイオティクスを含まない)を投与することに比べて、同時に乳酸菌及びプレバイオティクスを投与すると、感染した動物の腸内の薬剤耐性腸内細菌の含有量は速く低下する(例えば、7日間投与後、感染した動物の腸内の薬剤耐性腸内細菌の含有量は少なくとも5桁低下し、少なくとも99.999%の抑制率に相当する)。
【0029】
上記の乳酸菌を適用する場合、その投与経路は特に限定されなく、例えば経口投与であってよいが、実際の必要に応じて調整する。上記の乳酸菌の投与量及び投与回数も、必要に応じて柔軟に調整することができる。一実施例において、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103は、インビトロ培養液における有効投与量が105CFU/mL~107CFU/mLである。一実施例において、被験対象がマウスである場合、乳酸菌の有効投与量は、例えば、5.0×1010CFU/kg体重/日~1.5×1011CFU/kg体重/日であってよい。例として、上記の動物実験において、乳酸菌のマウスに対する有効投与量が1.0×1011CFU/kg体重/日であり、即ち2.0×109CFU/マウス(20g体重)/日である。
【0030】
補充して説明すべきなのは、動物実験において、マウスに直接薬剤耐性腸内細菌が経口投与されたので、マウス腸内における薬剤耐性腸内細菌の含有量は臨床患者よりもはるかに高い。次に、マウスは糞便を食べる習慣があり、糞便における薬剤耐性腸内細菌を繰り返して摂食する。したがって、薬剤耐性腸内細菌を効果的に低下させために、マウスに高投与量の乳酸菌を経口投与する必要がある。言い換えれば、臨床応用における成人に対する乳酸菌の有効投与量が動物実験におけるマウスに対する有効投与量よりも低い場合、効果的に薬剤耐性腸内細菌を抑制することができる。一具体例において、乳酸菌の成人に対する有効投与量は、例えば、1.0×108CFU/60kg体重/日~1.0×1010CFU/60kg体重/日であってよい。一実施例において、被験対象には上記の有効投与量の乳酸菌を連続して数日間投与した。一実施例において、被験対象には乳酸菌を連続して少なくとも7日間投与し、例えば、7日間~1年、又は14日間~6カ月投与した。
【0031】
上記の乳酸菌は、薬剤耐性腸内細菌の成長を抑制する有効性を有するので、乳酸菌組成物の有効成分とされてよい。一実施例において、乳酸菌組成物は、例えば、経口組成物であってよい。一実施例において、乳酸菌組成物は、例えば、食品組成物又は医薬組成物であってよい。一実施例において、乳酸菌組成物は、食品又は薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤及び/又は添加剤を選択的に含んでよく、例えば、溶剤、乳化剤、懸濁剤、崩壊剤、接着剤、安定剤、キレート剤、希釈剤、ゲル化剤、防腐剤、潤滑剤及び/又は吸収遅延剤等であってよい。乳酸菌組成物の剤型は、特に限定されなく、例えば、水溶液、懸濁液、分散液、乳液(単相又は多相分散系、単層又は多層リポソーム)、ヒドロゲル、ゲル、固体脂質ナノ粒子、トローチ、顆粒、粉末又はカプセル等であってよい。
【0032】
以下、複数の実施例で本発明の適用を説明するが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。
実施例一、乳酸菌の分離、培養及び微生物学的特性
【0033】
菌株LYC1504、菌株JJ101、菌株LYC1119、菌株JJ102、菌株LYC1129、菌株LYC1031、菌株LYC1112、菌株LYC1117、菌株LYC1146、菌株LYC1159及び菌株JJ103等の11株の乳酸菌(lactic acid bacteria;LAB)は、果実発酵物から分離されたものである。LABを4分割法でde Man、Rogosa and Sharpe(MRS)寒天培地に接種し、37℃で16時間~18時間培養して、単一のコロニーが得られた。次に、単一のコロニーをMRS培養液に接種し、37℃で16時間~24時間培養して、LAB培養液が得られた。LAB培養液を遠心分離して、菌体沈殿物(pellet)が得られた。
【0034】
LABの菌体沈殿物に対するRNA精製及び逆転写を行ってから、配列識別番号(SEQ ID NOs.):1及び2のようなヌクレオチド配列に示すような上流プライマー及び下流プライマーによりポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction;PCR)を行って、16S rDNAヌクレオチドフラグメントが得られ、ヌクレオチド配列決定を行って、LABの16S rDNAヌクレオチド配列が得られた。基礎局所的アライメント検索ツール(Basic LOCAL Alignment Search Tool;BLAST)により比較して、11株のLABに2株のラクトバチルスラムノサス(菌株LYC1504及び菌株JJ101)、3株のラクトバチルスパラカゼイ(菌株LYC1119、菌株JJ102及び菌株LYC1129)及び6株のラクチプランチバチルスプランタルム(菌株LYC1031、菌株LYC1112、菌株LYC1117、菌株LYC1146、菌株LYC1159及び菌株JJ103)があると鑑定した。
【0035】
上記の菌株JJ101の16S rDNAヌクレオチド配列は、SEQ ID NOS:3に示すようなものである。菌株JJ102の16S rDNAヌクレオチド配列は、SEQ ID NOS:4に示すようなものである。菌株JJ103の16S rDNAヌクレオチド配列は、SEQ ID NOS:5に示すようなものである。菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103は、2021年12月22日にBCRCに寄託され、2022年1月7日に生存テストを完了し、菌株菌株JJ101の受託番号がBCRC 911088であり、菌株JJ102の受託番号がBCRC 911089であり、且つ菌株JJ103の受託番号がBCRC 911090であった。菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103も2022年01月12日にDSMZに寄託され、菌株菌株JJ101の受託番号がDSM 34122であり、菌株JJ102の受託番号がDSM 34123であり、且つ菌株JJ103の受託番号がDSM 34124であった。
【0036】
補充して説明すべきなのは、菌株JJ101(ラクトバチルスラムノサス)のコロニーは、乳白色で、不透明で、円形で、表面が滑らかに突起し、きちんとしたエッジがあり、その菌体が短い棒状で、両端が丸く鈍く、シングル、ペア、短鎖、又は鎖状の形で存在し、べん毛なし、運動性なし、胞子の形成がなく、且つグラム染色が陽性である。菌株JJ102(ラクトバチルスパラカゼイ)のコロニーは、乳白色で、不透明で、円形又は略円形であり、表面が滑らかに突起し、きちんとしたエッジがあり、その菌体が短い棒状で、両端が丸く鈍く、シングル、ペア、又は短鎖の形で存在し、べん毛なし、運動性なし、胞子の形成がなく、且つグラム染色が陽性である。菌株JJ103(ラクチプランチバチルスプランタルム)のコロニーは、乳白色で、不透明で、円形又はやや不規則形状であり、表面が滑らかに突起し、きちんとしたエッジがあり、その菌体が棒状の線形で、両端が弧状となり、シングル、ペア、又は短鎖の形で存在し、べん毛なしであるが運動でき、胞子の形成がなく、且つグラム染色が陽性である。
実施例二、乳酸菌及び薬剤耐性腸内細菌の動物の体における滞留能力に対する評価
1.乳酸菌の動物の体における滞留能力
【0037】
BALB/cマウス(以下、マウスと略す)を実験動物とした。5週齢の雌マウスを動物室の個別に換気された飼育ケージに飼養して、マウスを環境に順応させた。順応期間中、マウスは標準的なペレット状の固形飼料と滅菌蒸留水を自由に摂取できた。動物室の温度は23±3℃であり、相対湿度は60±10%であり、且つ毎日12時間の明期及び12時間の暗期があった。マウスが6週齢に成長した後、追跡評価を行った。
【0038】
まず、毎日マウスに抗生物質を投与し、マウス糞便における細菌の含有量を検出して、糞便が無菌であるかを確認した。検出方法に関する説明として、マウスの新鮮な糞便を秤量した後、1mLの生理学的実験水(normal saline;NS)を加えて検出液に粉砕し、次に検出液をそれぞれ腸内細菌培地、ミューラーヒントン(Mueller Hinton Broth;MHB)寒天及びLAB培地に塗り付け、37℃で24時間培養した後コロニー数を算出した。上記の腸内細菌培地は、16μg/mLのバンコマイシン(vancomycin)、64μg/mLのアンピシリン(ampicillin)及び16μg/mLのセフォタキシム(cefotaxime)のエオシンメチレンブルー(eosin methylene blue;EMB)寒天を含み、腸内細菌の検出に用いられることができる。LAB培地は、32μg/mLのバンコマイシンを含むMRS寒天であり、且つpH値が5.0であり、LABの検出に用いられることができる。
【0039】
マウスの糞便が無菌であることを確認した後、それぞれマウスに異なるLAB液の経管栄養を行い、LAB液は上記の11株LABの沈殿物をそれぞれリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline;PBS)に再溶解した後で得られ、LAB含有量を調整して、マウスに2.0×109CFU/日のLABを連続して3日間経口投与した。そして、経管栄養を停止し、経管栄養を停止してから1日後、3日後及び7日後、上記のLAB培地を使用してマウス糞便におけるLAB含有量を検出し、LAB含有量がマウス糞便重量に対するLAB生菌数の比率(単位:CFU/g)であった。
【0040】
図1を参照されたく、
図1は、本発明の実施例による異なるラクトバチルスラムノサスを3日間連続してマウスに経口投与して経管栄養を停止した後の、マウス糞便におけるラクトバチルスラムノサス含有量を示す折線図であり、横軸は時間(単位:日)を示し、縦軸はラクトバチルスラムノサス含有量(単位:CFU/g)を示し、折線101及び折線103はそれぞれ菌株LYC1504及び菌株JJ101である。
図1に示すように、経管栄養を停止してから1日後及び3日後、マウス糞便における菌株JJ101(折線103)の含有量は菌株LYC1504(折線101)よりも高く、経管栄養を停止してから3日後、菌株JJ101の含有量は10
7CFU/gよりも高く、菌株JJ101の腸内滞留能力が優れたことは確認された。
【0041】
図2を参照されたく、
図2は、本発明の実施例による異なるラクトバチルスパラカゼイを3日間連続してマウスに経口投与して経管栄養を停止した後の、マウス糞便におけるラクトバチルスパラカゼイ含有量を示す折線図であり、横軸は時間(単位:日)を示し、縦軸はラクトバチルスパラカゼイ含有量(単位:CFU/g)を示し、折線201、折線203及び折線205はそれぞれ菌株LYC1119、菌株JJ102及び菌株LYC1229である。
図2に示すように、経管栄養を停止してから1日後、マウス糞便における菌株JJ102の含有量(折線203)は菌株LYC1119及び菌株LYC1229(折線201及び折線205)よりも高く、菌株JJ102の含有量は10
7CFU/gよりも高く、菌株JJ102の腸内滞留能力が優れたことは確認された。
【0042】
図3を参照されたく、
図3は、本発明の実施例による異なるラクチプランチバチルスプランタルムを3日間連続してマウスに経口投与して経管栄養を停止した後の、マウス糞便におけるラクチプランチバチルスプランタルム含有量を示す折線図であり、横軸は時間(単位:日)を示し、縦軸はラクチプランチバチルスプランタルム含有量(単位:CFU/g)を示し、折線301、折線303、折線305、折線307、折線309及び折線311は、それぞれ菌株LYC1031、菌株LYC1112、菌株LYC1117、菌株LYC1146、菌株LYC1159及び菌株JJ103である。
【0043】
図3に示すように、経管栄養を停止してから1日間、3日間及び7日後、マウス糞便における菌株JJ103の含有量(折線311)は何れも他の菌株(折線301~折線309)よりも高く、経管栄養を停止してから3日後、菌株JJ103の含有量は10
6CFU/g~10
7CFU/gであり、且つ経管栄養を停止してから7日後、菌株JJ103の含有量は依然として10
5CFU/gよりも多く、他のラクチプランチバチルスプランタルムに比べて、菌株JJ103の腸内滞留能力が優れたことは確認された。
2.薬剤耐性腸内細菌の動物の体における滞留能力
【0044】
菌株KPC001、菌株KPC011、菌株KPC021及び菌株KPC035は、チーメイ(奇美)病院医学研究センター臨床研究所で分離されたKPC-2を発現する薬剤耐性腸内細菌(以下、CPEと称される)である。CPEを4分割法で腸内細菌培地に接種し、37℃で16時間~18時間培養して、単一のコロニーが得られた。次に、単一のコロニーをMHBに接種し、37℃で16時間~24時間培養して、CPE培養液が得られた。CPE培養液を遠心分離させて、CPEの菌体沈殿物(pellet)が得られた。
【0045】
マウス糞便が無菌となるまで、毎日マウスに抗生物質を投与した。そして、マウスにCPE液の経管栄養を行い、CPE液は、CPEの菌体沈殿物を20重量%脱脂粉乳を含む水溶液に再溶解し、CPE液のCPE含有量を調整して、マウスに3.0×108CFU/日のCPEを連続して3日間経口投与して、感染したマウスが得られた。そして、経管栄養を停止し、経管栄養を停止してから1日後、2日後、7日後、10日後、14日後、17日後、21日後、24日後、28日後、31日後及び35日後、再度感染したマウスの糞便を採取し、MHB寒天を使用して糞便のCPE含有量を検出し、CPE含有量は糞便重量に対するCPE生菌数の比率(単位:CFU/g)であった。
【0046】
図4を参照されたく、
図4は、本発明の実施例による感染したマウスの糞便のCPE含有量を示す折線図であり、横軸は時間(単位:日)を示し、縦軸はCPE含有量(単位:CFU/g)を示し、折線401、折線403、折線405及び折線407はそれぞれ菌株KPC001、菌株KPC011、菌株KPC021及び菌株KPC035を示した。
図4に示すように、経管栄養を停止してから1日後、マウス糞便における異なる菌株のCPE含有量は何れも約10
10CFU/gであり、且つ経管栄養を停止してから4日後~35日後、マウス糞便における異なる菌株のCPE含有量は依然として10
4CFU/g~10
6CFU/gに維持された。上記の結果から示されるように、異なる菌株のCPEの腸内滞留能力には差異がない。後の評価は菌株KPC001で行われた。
実施例三、乳酸菌の薬剤耐性腸内細菌を抑制する有効性に対する評価
【0047】
マウス糞便が無菌となるまで、毎日マウスに抗生物質を投与した。そして、マウスに3.0×108CFU/日のCPEを連続して3日間経口投与して、感染したマウスが得られた。そして、感染したマウスの糞便のCPE含有量を検出して、感染したマウスにLABが経口投与されていないCPE含有量とした。そして、感染したマウスを5群(ブランク群、実験群1、実験群2、実験群3及び実験群4)に分けた。ブランク群の感染したマウスはPBSが連続して21日間経口投与され、実験群1の感染したマウスは2.0×109CFU/日の菌株JJ101が連続して21日間経口投与され、実験群2の感染したマウスは2.0×109CFU/日の菌株JJ102が連続して21日間経口投与され、実験群3の感染したマウスは2.0×109CFU/日の菌株JJ103が連続して21日間経口投与され、且つ実験群4の感染したマウスは2.0×109CFU/日の複合LABが連続して21日間経口投与され、複合LABは1:1:1の菌数比で菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103からなる。マウスにLABを連続して4日間、7日間、11日間、14日間、18日間及び21日間経口投与した後、感染したマウスの糞便のCPE含有量を検出した。
【0048】
図5を参照されたく、
図5は、本発明の実施例による異なるグループ別の感染したマウスの糞便のCPE含有量を示す折線図であり、横軸は感染したマウスにLABを連続して経口投与する日数(単位:日)を示し、縦軸は感染したマウスの糞便のCPE含有量(単位:CFU/g)を示し、折線501、折線503、折線505、折線507及び折線509は、それぞれブランク群、実験群1、実験群2、実験群3及び実験群4を示し、且つ異なるアルファベットA、B、C及びDが統計的に有意差(p<0.05)を有することを示した。
【0049】
図5に示すように、実験群1~実験群4(折線503~折線509)の感染したマウスの糞便のCPE含有量がブランク群(折線501)よりも低く、菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103の個別又は組み合わせは、何れもCPE成長を抑制する有効性を有することが確認された。感染したマウスにLABを経口投与していないCPE含有量に比べて、感染したマウスに異なるLAB菌株を連続して21日間経口投与した後、実験群1~実験群3(折線503~折線507)の感染したマウスの糞便のCPE含有量は2桁~3桁低下し、且つ感染したマウスに同時に3株のLAB菌株を連続して21日間経口投与した後、実験群4の感染したマウスの糞便のCPE含有量が少なくとも5桁低下し、少なくとも99.999%の抑制率に相当し、菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103をそれぞれ経口投与したことに比べて、菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103を同時に経口投与したことは、CPE成長を抑制する有効性が優れたことが確認された。
実施例四、シンバイオティクスによる薬剤耐性腸内細菌を抑制する有効性に対する評価
1.異なるプレバイオティクスによる乳酸菌の酸性物質の生産を促進する有効性
【0050】
LABは、糖類を分解して酸性物質(例えば、乳酸及び/又は酢酸)を生産し、環境(例えば、腸道)pH値を低下させ、更にCPEを抑制した。したがって、LABがプレバイオティクスを効果的に利用すればするほど、このプレバイオティクス及びLABからなるシンバイオティクスは、CPE成長を抑制する有効性がよくなる。
【0051】
上記の11株のLABをそれぞれ異なる配方でありブドウ糖を含まないMRS培養液に接種し、37℃で24時間培養して、培養物が得られた。そして、培養物のpH値を測定して、結果(3回繰り返した平均±標準偏差)を表1に記録して、NON組はMRS培養液に糖類が加えられないことを示し、SUC組はMRS培養液に2重量%のショ糖が加えられたことを示し、FOS組はMRS培養液に2重量%のフルクトオリゴ糖が加えられたことを示し、IN組はMRS培養液に2重量%のイヌリンが加えられたことを示し、IMO組はMRS培養液に2重量%のイソマルトオリゴ糖が加えられたことを示し、LU組はMRS培養液に2重量%のラクツロースが加えられたことを示し、且つXOS組はMRS培養液に2重量%のキシロオリゴ糖が加えられたことを示した。
【0052】
【0053】
表1に示すように、SUC組、FOS組、IN組、XOS組、IMO組及びLU組の培養物のpH値がNON組よりも低く、糖類がLABの酸性物質の生産を促進できることを示した。次に、菌株JJ101はLU組及びIMO組で培養物のpH値が5.0よりも低く、ラクツロース及びイソマルトオリゴ糖が菌株JJ101の酸性物質の生産を促進する有効性を有することを示した。菌株JJ102はXOS組だけで培養物のpH値が5.0より高く、上記の糖類のうち、キシロオリゴ糖だけが菌株JJ102の酸性物質の生産を促進できないことを示した。菌株JJ103はSUC組、LU組及びIMO組で培養物のpH値が5.0よりも低く、ショ糖、ラクツロース及びイソマルトオリゴ糖は菌株JJ103の酸性物質の生産を促進する有効性を有することを示した。補充して説明すべきなのは、ショ糖は動物によって消化され、プレバイオティクスとして使用できない。したがって、複合LABは菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103からなる場合、ラクツロース及び/又はイソマルトオリゴ糖を選択してプレバイオティクスとするべきである。
2.菌株JJ101及び異なるプレバイオティクスからなるシンバイオティクスのpH値及びCPE成長を抑制する有効性
【0054】
上記の各LAB菌種(ラクトバチルスラムノサス、ラクトバチルスパラカゼイ及びラクチプランチバチルスプランタルム)のうち、腸内滞留能力が好ましい単株LAB(即ち、菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103)をそれぞれCPE(菌株KPC001)とpH 6.5の共培養液に加えて、共培養試験を行って、共培養液の初期LAB含有量が107CFU/mLであり、且つ初期CPE含有量が106CFU/mLであった。そして、共培養液に対してLAB含有量の検出、CPE含有量の検出及びpH値の検出を行って、初期LAB含有量、CPE含有量及びpH値(0時間の培養に相当する)が得られた。LAB含有量の検出は、共培養液をpH 5.5のMRS寒天培地に塗り付け、37℃で培養して、LABの単一のコロニーが得られた。LABの単一のコロニー数により、共培養液のLAB含有量(単位:CFU/mL)を推算できる。CPE細菌数の検出は、共培養液を16μg/mLのアンピシリンを含むEMB寒天培地に塗り付け、37℃で培養して、CPEの単一のコロニーが得られた。CPEの単一のコロニー数により、共培養液のCPE含有量(単位:CFU/mL)を推算できる。
【0055】
共培養液は、ブドウ糖を含まないMRS培養液及びMHBを1:1の体積割合で調製されてなり、グループ別によっては糖類を加え又は加えなく、NON組の共培養液は糖類を含まなく、SUC組の共培養液は2重量%のショ糖を含み、FOS組の共培養液は2重量%のフルクトオリゴ糖を含み、IN組の共培養液は2重量%のイヌリンを含み、XOS組の共培養液は2重量%のキシロオリゴ糖を含み、LU組の共培養液は2重量%のラクツロースを含み、且つIMO組の共培養液は2重量%のイソマルトオリゴ糖を含んだ。
【0056】
共培養液を37℃で培養を行い、3時間、6時間、24時間及び48時間培養した後、LAB含有量の検出、CPE含有量の検出及びpH値の検出を行った。
【0057】
上記の菌株JJ101とCPEが異なる共培養液の共培養実験において、LAB含有量の検出結果に関する説明は以下の通りであり、48時間培養した後、SUC組、FOS組、IN組、XOS組、LU組及びIMO組の共培養液の菌株JJ101の含有量がNON組よりも高く、1.0×108CFU/mLよりも大きく且つ1.0×109CFU/mL(未図示)よりも小さくて、プレバイオティクスがインビトロで菌株JJ101の成長に寄与することが確認された。
【0058】
図6A及び
図6Bを参照されたく、
図6A及び
図6Bはそれぞれ本発明の実施例による菌株JJ101及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量(
図6A)及びpH値(
図6B)を示す折線図である。
図6Aの横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸はCPE含有量(単位:CFU/mL)を示した。
図6Bの横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸はpH値を示した。
図6A及び
図6Bの折線601、折線603、折線605、折線607、折線609、折線611及び折線613は、それぞれNON組、SUC組、FOS組、IN組、XOS組、LU組及びIMO組を示した。
【0059】
図6Aに示すように、24時間培養した後、SUC組(折線603)、FOS組(折線605)、IN組(折線607)及びLU組(折線611)の共培養液のCPE含有量が検出限界よりも低い。48時間培養した後、IMO組(折線613)の共培養液のCPE含有量は初期CPE含有量(0時間)よりも2桁(即ち、99%の抑制率)低下した。しかしながら、NON組(折線601)及びXOS組(折線609)の共培養液のCPE含有量は、48時間培養した後で初期CPE含有量(0時間)よりも高い。
図6Bに示すように、24時間~48時間培養した後、SUC組(折線603)、FOS組(折線605)、IN組(折線607)、LU組(折線611)及びIMO組(折線613)の共培養液のpH値は5よりも小さいが、XOS組(折線609)及びNON組(折線601)の共培養液のpH値は5よりも大きい。上記の結果から確認されたように、ショ糖、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ラクツロース及びイソマルトオリゴ糖は、菌株JJ101の酸性物質の生産を促進でき、これにより共培養液のpH値を5よりも小さくして、CPE成長を抑制した。
3.菌株JJ102及び異なるプレバイオティクスからなるシンバイオティクスのpH値及びCPE成長を抑制する有効性
【0060】
上記の菌株JJ102とCPEが異なる共培養液の共培養実験において、LAB含有量の検出結果からわかるように、48時間培養した後、SUC組~XOS組及びLU組~IMO組の共培養液の菌株JJ102の含有量は1.0×108CFU/mLよりも高いが1.0×109CFU/mL(未図示)よりも小さく、且つNON組よりも高くて、プレバイオティクスがインビトロで菌株JJ102の成長に寄与することが確認された。
【0061】
図7A及び
図7Bを参照されたく、
図7A及び
図7Bは、それぞれ本発明の実施例による菌株JJ102及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量(
図7A)及びpH値(
図7B)を示す折線図である。
図7Aの横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸はCPE含有量(単位:CFU/mL)を示した。
図7Bの横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸はpH値を示した。
図7A及び
図7Bの折線701、折線703、折線705、折線707、折線709、折線711及び折線713は、それぞれNON組、SUC組、FOS組、IN組、XOS組、LU組及びIMO組を示した。
【0062】
図7Aに示すように、24時間培養した後、FOS組(折線705)の共培養液のCPE含有量が検出限界よりも低い。48時間培養した後、SUC組(折線703)、IN組(折線707)及びLU組(折線711)の共培養液のCPE含有量が検出限界よりも低い。IMO組(折線713)の共培養液のCPE含有量は初期CPE含有量(0時間)よりも3桁(即ち、99.9%の抑制率)低下した。NON組(折線701)及びXOS組(折線709)の共培養液は、48時間培養した後のCPE含有量が初期CPE含有量よりも高い。
図7Bに示すように、48時間培養した後、XOS組(折線709)及びNON組(折線701)の共培養液のpH値は5よりも大きいが、SUC組、FOS組、IN組、LU組及びIMO組のpH値は何れも5よりも小さい。上記の結果から確認されたように、ショ糖、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ラクツロース及びイソマルトオリゴ糖は菌株JJ102の酸性物質の生産を促進でき、これにより共培養液のPHを5よりも小さくして、CPE成長を抑制した。
4.菌株JJ103及び異なるプレバイオティクスからなるシンバイオティクスのpH値及びCPE成長を抑制する有効性
【0063】
LAB含有量の検出結果からわかるように、48時間培養した後、NON組の共培養液の菌株JJ103の含有量は一番少なく(9.0×108CFU/mL)、SUC組~XOS組及びLU組~IMO組の共培養液の菌株JJ103の含有量は9.0×108CFU/mL(未図示)よりも高くて、プレバイオティクスがインビトロで菌株JJ103の成長に寄与することが確認された。
【0064】
図8A及び
図8Bを参照されたく、
図8A及び
図8Bは、それぞれ本発明の実施例による菌株JJ103及びCPEが異なるプレバイオティクスを含む共培養液の中で共培養された後の、共培養液のCPE含有量(
図8A)及びpH値(
図8B)を示す折線図である。
図8Aの横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸はCPE含有量(単位:CFU/mL)を示した。
図8Bの横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸はpH値を示した。
図8A及び
図8Bの折線801、折線803、折線805、折線807、折線809、折線811及び折線813は、それぞれNON組、SUC組、FOS組、IN組、XOS組、LU組及びIMO組を示した。
【0065】
図8Aに示すように、24時間培養した後、SUC組(折線803)、LU組(折線811)、IMO組(折線813)の共培養液のCPE含有量は検出極限よりも低いが、NON組、FOS組、IN組及びXOS組のCPE含有量は初期CPE含有量よりも高い。
図8Bに示すように、SUC組(折線803)、LU組(折線811)及びIMO組(折線813)の共培養液のpH値は5よりも小さいが、NON組、FOS組、IN組及びXOS組の共培養液のpH値は5よりも大きい。上記の結果から確認されたように、共培養液のpH値が5よりも小さい場合CPE成長を抑制できる。そして、ショ糖、ラクツロース及びイソマルトオリゴ糖は、菌株JJ103の酸性物質の生産を促進でき、これにより共培養液のPHを5よりも小さくして、CPE成長を抑制した。
【0066】
図6A、
図6B、
図7A、
図7B、
図8A及び
図8Bの結果からわかるように、ショ糖、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ラクツロース及びイソマルトオリゴ糖は菌株JJ101及び菌株JJ102の酸性物質の生産を効果的に促進できるが、ショ糖、ラクツロース及びイソマルトオリゴ糖だけは菌株JJ103の酸性物質の生産を効果的に促進でき、ショ糖は動物によって消化され、プレバイオティクスとして使用できないので、後の実験においてラクツロース及びイソマルトオリゴ糖をプレバイオティクスとした。
5.複合乳酸菌及び異なるプレバイオティクスからなるシンバイオティクスのCPE成長を抑制する有効性
【0067】
PBSで菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103の菌体沈殿物を再溶解して、菌株JJ101、菌株JJ102及び菌株JJ103の1:1:1の菌数比で複合LAB液が得られた。次に、2重量%のラクツロースを複合LAB液に調製して、ラクツロースシンバイオティクスが得られ、2重量%のイソマルトオリゴ糖を複合LAB液に調製して、イソマルトオリゴ糖シンバイオティクスが得られた。
【0068】
マウスを4組(ブランク群、対照群、実験群1及び実験群2)に分け、マウス糞便が無菌となるまで、毎日マウスに抗生物質を投与した。そして、マウスに3.0×108CFU/日のCPEを連続して3日間経口投与して、感染したマウスが得られた。そして、感染したマウスの糞便のCPE含有量を検出して、感染したマウスにLABが経口投与されていないCPE含有量とした。そして、ブランク群の感染したマウスはPBSが連続して21日間経口投与され、対照群の感染したマウスは複合LAB液が連続して21日間経口投与され、実験群1の感染したマウスはラクツロースシンバイオティクスが連続して21日間経口投与され、且つ実験群2の感染したマウスはイソマルトオリゴ糖シンバイオティクスが連続して21日間経口投与された。マウスにLABを連続して4日間、7日間、11日間、14日間、18日間及び21日間経口投与した後、マウス糞便におけるCPE含有量を検出した。補充して説明すべきなのは、対照群、実験群1及び実験群2の感染したマウスに経口投与された複合LABの細菌数は2.0×109CFU/日であった。
【0069】
図9を参照されたく、
図9は、本発明の実施例による異なるグループ別の感染したマウスの糞便のCPE含有量を示す折線図であり、横軸はマウスにLABが経口投与された連続日数(単位:日)を示し、縦軸は感染したマウスの糞便のCPE含有量(単位:CFU/g)を示し、折線901、折線903、折線905及び折線907は、それぞれブランク群、対照群、実験群1及び実験群2を示し、且つ異なるアルファベットa及びbはグループ同士に統計的に有意差(P<0.05)があることを示した。
【0070】
図9に示すように、PBS、複合乳酸菌又はシンバイオティクスを連続して21日間経口投与した後、対照群、実験群1及び実験群2の感染したマウスの糞便のCPE含有量が著しくブランク群よりも低くて、複合乳酸菌、ラクツロースシンバイオティクス、イソマルトオリゴ糖シンバイオティクスはCPEの成長活性を抑制できることが確認された。しかしながら、PBS、複合乳酸菌又はシンバイオティクスを連続して7日間経口投与した後、実験群1及び実験群2の感染したマウスの糞便のCPE含有量が著しく対照群よりも小さくて、複合乳酸菌(プレバイオティクスを含まない)に比べて、ラクツロースシンバイオティクス及び/又はイソマルトオリゴ糖シンバイオティクスはCPE含有量を速く低下できることが確認された。
【0071】
要するに、ラクトバチルスラムノサスJJ101、ラクトバチルスパラカゼイJJ102及びラクチプランチバチルスプランタルムJJ103等の乳酸菌は、薬剤耐性腸内細菌の成長活性を抑制でき、これらの乳酸菌は薬剤耐性腸内細菌感染の予防、改善及び/又は治療に応用する可能性があることを示した。
【0072】
まとめると、本発明は、所定の乳酸菌株、所定のプロセス、所定の有効投与量、所定の投与方式、所定の実験モデル及び所定の評価方法を例として、本発明の乳酸菌組成物及び薬剤耐性腸内細菌を抑制するための乳酸菌組成物を説明したが、当業者であれば、本発明はこれらに限定されなく、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、他の乳酸菌株、他のプロセス、他の有効投与量、他の投与方式、他の実験モデル及び他の評価方法を使って実行することもできることは、理解すべきである。
【0073】
本発明は複数の所定の実施例を前記の通りに開示したが、前記開示内容に対して多様の修飾、変更や変換を加えることができ、且つ理解すべきなのは、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、本発明の実施例のある特徴を採用するが、対応してその他の特徴を使用しない場合もあるので、本発明の精神及び特許請求の範囲は上記の実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0074】
101、103、201、203、205、301、303、305、307、309、311、401、403、405、407、501、503、505、507、509、601、603、605、607、609、611、613、701、703、705、707、709、711、713、801、803、805、807、809、811、813、901、903、905、907:折線
【受託番号】
【0075】
ラクトバチルスラムノサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)JJ101は2021年12月22日に財団法人食品産業発展研究所生物資源センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC、アドレス:30062台湾新竹市食品路331号)に寄託され、受託番号がBCRC 911088である。
【0076】
ラクトバチルスパラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)JJ102は2021年12月22日にBCRCに寄託され、受託番号がBCRC 911089である。
ラクチプランチバチルスプランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)JJ103は2021年12月22日にBCRCに寄託され、受託番号がBCRC 911090である。
【配列表】