(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
B25J15/08 S
(21)【出願番号】P 2022536271
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025353
(87)【国際公開番号】W WO2022014393
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2020121998
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520264520
【氏名又は名称】清水 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山村 亮太朗
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-113685(JP,A)
【文献】特開2013-220492(JP,A)
【文献】特開2013-086185(JP,A)
【文献】特開2002-370188(JP,A)
【文献】特開2011-189414(JP,A)
【文献】特開2012-032325(JP,A)
【文献】特表2013-523478(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006613(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00-19/02
G01B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を
ジャミング転移により袋体に吸着させて握持可能なロボットハンドであって、
ベース板と、
開口部がこのベース板の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体と、
導電性を有し、この袋体の内部に充填される粉体と、
上記粉体の偏在を電気的又は磁気的に検出することで、上記対象物の握持状態を把握する検出部と、
上記袋体の内部を減圧する吸引装置と
を備え
、
上記袋体への上記粉体の充填率が70体積%以上85体積%未満であるロボットハンド。
【請求項2】
上記検出部が、上記袋体の内部に離間して設けられる複数の電極を有し、上記粉体の偏在の検出に、上記複数の電極から選択される複数対の電極間の抵抗値を用いる請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
上記検出部が、上記袋体の内部に設けられる複数の袋状の誘電膜と、上記複数の誘電膜それぞれの内部に設けられる第1電極と、上記第1電極が設けられた誘電膜の外部で、かつ上記袋体の内部に設けられる第2電極とを有し、上記粉体の偏在の検出に、上記第1電極と上記第2電極との間の静電容量値を用いる請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
上記検出部が、上記ベース板に離間して固定される複数の電磁誘導式近接センサを有し、上記粉体の偏在の検出に、上記複数の電磁誘導式近接センサが有する検出コイルのインピーダンス変化を用いる請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項5】
上記ベース板の他方の面を覆い、内部に上記粉体を収納可能なチャンバを備え、
上記袋体が、その内部を上記粉体が移動不可能な複数の小部屋に分割する隔壁を有し、
上記小部屋が、上記ベース板と接しており、
上記ベース板が、各小部屋と上記チャンバ内部とを連通し、上記粉体が通過可能な貫通孔を有し、
上記粉体が、上記チャンバを介して上記小部屋間を自由に行き来できる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロボットハンド。
【請求項6】
上記袋体の内部に充填される絶縁性粉体をさらに備え、
導電性を有する上記粉体と上記絶縁性粉体との合計に対する上記粉体の含有量が、20質量%以上45質量%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロボットハンド。
【請求項7】
上記袋体が、その内部に複数の小袋体を有し、
それぞれの小袋体の内部に上記粉体が充填されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドで対象物を握持する機構として、内部に粉体を充填させた可撓性かつ気密性のある中空バッグを有する把持部と、中空バッグ内部空間の圧力を所定負圧に減圧しかつ大気圧に戻すことができる減圧装置とを備えた吸着グリッパが知られている(特開2012-176476号公報参照)。
【0003】
この吸着グリッパでは、その内部空間を大気圧とした状態で中空バッグを対象物に押し付けると、その接触部分が対象物の形状に倣うように変形する。この状態で中空バッグの内部空間を負圧に減圧すると、粒子同士に押し付ける力が発生し、固形化する(ジャミング転位)。このジャミング転位により中空バッグを対象物に吸着させ、対象物を持ち上げることができる。そして、対象物を所望の位置に移動させた後に、中空バッグの内部空間を再び大気圧に戻すことで、吸着は解かれ、吸着グリッパを対象物から分離できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この吸着グリッパでは、対象物の形状や大きさによらず対象物を握持できる反面、多様な対象物の握持状態を認識することが難しい。例えば中空バッグの表面にセンサ等を埋め込むと、中空バッグの可撓性が不足し、対象物の握持力が低下するおそれがある。また、対象物を握持する際、対象物は中空バッグの死角に位置する場合が多く、映像等による確認も困難である。
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、ジャミング転位を用いつつ、対象物の握持状態を容易に認識できるロボットハンドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象物を握持可能なロボットハンドであって、ベース板と、開口部がこのベース板の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体と、導電性を有し、この袋体の内部に充填される粉体と、上記粉体の偏在を電気的又は磁気的に検出することで、上記対象物の握持状態を把握する検出部と、上記袋体の内部を減圧する吸引装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のロボットハンドは、ジャミング転位を用いつつ、対象物の握持状態を容易に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットハンドの構成を示す模式的分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のロボットハンドが対象物と接した状態を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のロボットハンドが対象物を握持した状態を示す模式的断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のロボットハンドが対象物を持ち上げた状態を示す模式的断面図である。
【
図6】
図6は、
図2とは異なる実施形態に係るロボットハンドの模式的断面図である。
【
図7】
図7は、
図2及び
図6とは異なる実施形態に係るロボットハンドの模式的断面図である。
【
図10】
図10は、
図9のロボットハンドが対象物を持ち上げた状態を示す模式的断面図である。
【
図14】
図14は、実施例で用いた試験片の形状を示す模式的断面図である。
【
図15】
図15は、抵抗値を用いて握持状態を認識するロボットハンドの実施例における押し付け力とセンサ値との関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、静電容量値を用いて握持状態を認識するロボットハンドの実施例における押し付け力とセンサ値との関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、抵抗値を用いて握持状態を認識するロボットハンドの実施例における絶縁性粉体の効果を示すグラフである。
【
図18】
図18は、抵抗値を用いて握持状態を認識するロボットハンドの実施例における小袋体の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本発明は、対象物を握持可能なロボットハンドであって、ベース板と、開口部がこのベース板の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体と、導電性を有し、この袋体の内部に充填される粉体と、上記粉体の偏在を電気的又は磁気的に検出することで、上記対象物の握持状態を把握する検出部と、上記袋体の内部を減圧する吸引装置とを備える。
【0012】
当該ロボットハンドは、変形自在な袋体の内部に充填される粉体のジャミング転位を用いて対象物を上記袋体に吸着あるいは離脱させることができる。また、当該ロボットハンドでは、上記粉体が導電性を有するので、対象物を握持した際に生じる粉体の偏在により上記粉体全体の電気的及び磁気的性質が変化する。当該ロボットハンドでは、上記検出部でこの粉体の偏在を電気的又は磁気的に検出することで、対象物の握持状態を容易に認識できる。
【0013】
上記検出部が、上記袋体の内部に離間して設けられる複数の電極を有し、上記粉体の偏在の検出に、上記複数の電極から選択される複数対の電極間の抵抗値を用いるとよい。対象物を握持することで、対象物に倣って上記袋体の表面に凹みが生じる。この凹んだ部分の形状に応じて粉体が偏在し、その嵩密度が変化する。その結果、上記複数対の電極間の抵抗値に変化が生じる。従って、上記複数対の電極間の抵抗値を用いることで、上記嵩密度の変化を捉え、粉体の偏在を検出することができる。また、抵抗値は上記袋体内に複数の電極を挿入することで実現できるので、検出部を容易に構成することができる。
【0014】
上記検出部が、上記袋体の内部に設けられる複数の袋状の誘電膜と、上記複数の誘電膜それぞれの内部に設けられる第1電極と、上記第1電極が設けられた誘電膜の外部で、かつ上記袋体の内部に設けられる第2電極とを有し、上記粉体の偏在の検出に、上記第1電極と上記第2電極との間の静電容量値を用いるとよい。上記粉体が偏在したことによる嵩密度の変化は、静電容量値の変化として検出することもできる。ジャミング転位を用いたロボットハンドでは、上記ベース板が傾斜した際に上記粉体が上記ベース板の低い側に偏ることを抑止するため、袋体の内部が仕切られ小部屋に分けられ、上記粉体が分配されている場合がある。静電容量値の変化で上記粉体の偏在を検出する場合は、第1電極と第2電極との間の短絡を防ぐため、第1電極を誘電膜で覆う必要があるが、このように小部屋に分けられている袋体では、その仕切りを誘電膜とし、各小部屋に電極を挿入することで実現できるので、検出部を容易に構成することができる。
【0015】
上記検出部が、上記ベース板に離間して固定される複数の電磁誘導式近接センサを有し、上記粉体の偏在の検出に、上記複数の電磁誘導式近接センサが有する検出コイルのインピーダンス変化を用いるとよい。対象物を握持するため上記袋体を対象物に押し付けると、その接触部分が対象物の形状に倣うように変形する際、導電性の粉体が移動する。電磁誘導式近接センサは、この導電性の粉体の移動により生じる磁気的な変化を検出コイルのインピーダンス変化により捉えることができる。そして、上記検出部は、上記粉体の移動から上記粉体の偏在を検出することができる。電磁誘導式近接センサは、上記袋体の外から上記粉体の移動を捉えることができるから、上記袋体の内側に測定用の部材を挿入する必要がない。このため、上記検出部が上記粉体の移動に影響を及ぼし難く、対象物の握持力が低下し難い。
【0016】
上記ベース板の他方の面を覆い、内部に上記粉体を収納可能なチャンバを備え、上記袋体が、その内部を上記粉体が移動不可能な複数の小部屋に分割する隔壁を有し、上記小部屋が、上記ベース板と接しており、上記ベース板が、各小部屋と上記チャンバ内部とを連通し、上記粉体が通過可能な貫通孔を有し、上記粉体が、上記チャンバを介して上記小部屋間を自由に行き来できるとよい。このように上記袋体を小部屋に分割することで、上記ベース板が傾斜した際に上記粉体が上記ベース板の低い側に偏ることを抑止することができる。また、上記粉体が上記チャンバを介して上記小部屋間を自由に行き来できるので、対象物を握持することで上記袋体が変形し、空間が狭くなった小部屋からは上記チャンバへ粉体が移動し、逆に空間が広くなった小部屋が生じれば上記チャンバからその小部屋へ粉体が移動する。このように粉体がチャンバを介して上記小部屋間を自由に行き来することで、粉体の嵩密度を一定としつつ対象物を握持できるので、握持力を高められる。また、対象物を握持した部分では粉体の量が少なくなるので、粉体の偏在による電気的又は磁気的変化が大きくなり易く、より確実に粉体の偏在を検出することができる。
【0017】
上記袋体の内部に充填される絶縁性粉体をさらに備え、導電性を有する上記粉体と上記絶縁性粉体との合計に対する上記粉体の含有量が、20質量%以上45質量%以下であるとよい。このように粉体の含有量が上記範囲内となるように粉体及び絶縁性粉体を袋体内に混合することで、上記袋体内の上記粉体の偏在を段階的に捉えることが容易となる。
【0018】
上記袋体が、その内部に複数の小袋体を有し、それぞれの小袋体の内部に上記粉体が充填されているとよい。このように上記袋体の内部を小袋体に分けて、その内部に上記粉体を充填することで、当該ロボットハンドの傾きにより上記粉体が極端に偏在することを抑止できる。従って、対象物の握持状態をさらに容易に認識することができる。
【0019】
なお、「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975)に準拠して測定される体積抵抗値が107Ω・cm以下であることを意味する。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の各実施形態に係るロボットハンドについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0021】
〔第1実施形態〕
図1及び
図2に示すロボットハンド1は、対象物Xを握持可能なロボットハンドである。当該ロボットハンド1は、ベース板10と、開口部がこのベース板10の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体20と、導電性を有し、この袋体20の内部に充填される粉体30と、粉体30の偏在を電気的に検出することで、対象物Xの握持状態を把握する検出部40とを備える。また、当該ロボットハンド1は、袋体20の内部及び袋体20の中央部の空洞を減圧する吸引装置(不図示)を備える。
【0022】
当該ロボットハンド1は、例えば可動式のアームの先端に取り付けられ、対象物Xを握持して移動させることができる。
【0023】
<ベース板>
ベース板10は、袋体20を固定する固定部材である。ベース板10は、可撓性を有してもよいが、可撓性を有さないものが好ましい。
【0024】
ベース板10の材質としては、アルミニウム等の金属、プラスチック等の樹脂、木材などを用いることができる。
【0025】
ベース板10の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば
図1に示すように円形状とするとよい。ベース板10を円形状とすることでロボットハンド1に異方性がなくなるため、対象物Xへの握持方向を考慮する必要がなくなり、取扱性が向上する。なお、ベース板10の大きさは、握持する対象物Xの大きさ等により適宜決定されるが、ベース板10が円形状である場合、その直径としては、例えば1cm以上500cm以下とできる。
【0026】
また、ベース板10は、袋体20の中央の空洞とつながる真空吸引口11と、袋体20の内部をつながる袋体内部吸引口12とを有する。これらの吸引口は貫通孔であり、ベース板10の裏面側で配管等を通じて吸引装置と連結されている。
【0027】
<袋体>
袋体20は、
図1に示すように、袋体本体21と、抑え板22とを有する。
【0028】
袋体本体21は、可撓性を有する膜で構成される。これにより袋体20は、変形自在となる。上記膜としては、シリコーン膜、天然ゴムやラテックスゴムなどを原料とするエラストマー膜等を用いることができる。
【0029】
上記膜は、絶縁性を有することが好ましい。上記膜、つまり袋体本体21が絶縁性を有することで、粉体30の偏在による抵抗値の変化を捉え易くすることができる。
【0030】
袋体本体21の形状(ベース板10から垂下された状態での形状)は、特に限定されない。例えば
図1に示す袋体本体21では、中央部に空洞を有し、水平断面が円形である、いわゆるドーナツ状とされている。袋体本体21の大きさは、握持する対象物Xの大きさ等により適宜決定されるが、例えば
図1に示す袋体本体21の場合であれば、水平断面の最大直径がベース板10の直径と同程度とされ、高さが10cm以上30cm以下、空洞部の直径が5cm以上10cm以下とできる。このように袋体本体21の形状をドーナツ状とすると、中央部の空洞を減圧(真空吸引)する構成とすることができる。上記空洞を減圧することで、対象物Xの吸着力を向上させることができる。一方、袋体本体21の形状としては、単純な袋状とすることもできる。このように袋体本体21の形状を単純な袋状とすることで、ジャミング転位による握持力を高めることができる。
【0031】
抑え板22は、袋体本体21の開口側の端部をベース板10との間に挟み込んで固定するための固定部材である。なお、
図1のロボットハンド1では抑え板22を用いて袋体本体21を固定しているが、袋体本体21の固定方法はこれに限定されず、例えば抑え板22に代えてバネや紐等で締結する方法を用いてもよい。
【0032】
抑え板22の材質としては、ベース板10と同様とできる。また、抑え板22の形状としては、例えば
図1に示すように、外径がベース板10と同等で、平均幅1cm以上5cm以下のリング状とすることができる。
【0033】
<粉体>
粉体30は、粒子の集合体である。
【0034】
粉体30の材質としては、導電性を有し、袋体20の内部を減圧した際、粒子同士の接触により破損しない強度を有する限り、特に限定されないが、例えば金属とすることができる。上記金属としては、アルミニウム、亜鉛、金、銀、銅、鉄、マンガン等を挙げることができる。
【0035】
また、粉体30として、ピエゾ粉体を用いることもできる。ピエゾ粉体は圧力が加わることで、導電性が変化する。後述するように対象物Xにより袋体20が押し上げられる部分に位置している粉体30に加わる圧力は、他の位置よりも大きい。粉体30としてピエゾ粉体を用いることで、圧力が高い、すなわち対象物Xが存在する位置と、圧力が低い、すなわち対象物Xが存在していない位置とで、粉体30の抵抗値を変えることができるので、対象物Xの握持状態をさらに認識し易くすることができる。
【0036】
上記粒子の平均粒子径の下限としては、1μmが好ましく、10μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。一方、上記粒子の平均粒子径の上限としては、1500μmが好ましく、1000μmがより好ましい。上記粒子の平均粒子径が上記下限未満であると、上記粉体の嵩密度が大きくなり過ぎ、袋体20が対象物Xの形状に追従して変化し難くなるおそれがある。逆に、上記粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、袋体20の内部を減圧した際に、粒子間の隙間が十分に詰まらず、握持力が低下するおそれがある。ここで、「平均粒子径」とは、JIS-Z-8801(2006)に規定されるふるいを用いた乾式ふるい分け試験により求めた粒子径分布において、質量積算値が50%となる篩の目開きを意味する。
【0037】
袋体20への粉体30の充填率の下限としては、70体積%が好ましく、75体積%がより好ましい。一方、上記充填率の上限としては、85体積%が好ましく、80体積%がより好ましい。上記充填率が上記下限未満であると、空気量が多くなるため、減圧に時間を要し、当該ロボットハンド1の作業効率が低下するおそれがある。逆に、上記充填率が上記上限を超えると、粉体30を構成する粒子が移動できる空間が狭くなり過ぎ、袋体20が対象物Xの形状に追従して変化し難くなるおそれがある。ここで、「袋体への粉体の充填率」とは、ベース板10から垂下された状態での袋体20の体積に対し、粉体30の体積が占める割合を指す。
【0038】
<検出部>
検出部40は、袋体20の内部に離間して設けられる複数の電極41を有する。当該ロボットハンド1では、粉体30の偏在の検出に、複数の電極41から選択される複数対の電極41間の抵抗値を用いる。つまり、検出部40は、電極41間の抵抗を測定する測定器(不図示)を有する。
【0039】
電極41は、導電性を有し、少なくともその一部が粉体30と接するように構成される。電極41の材質としては、導電性を有する限り特に限定されないが、例えば粉体30と同じ材質のものとすることができる。
【0040】
電極41は、袋体20の変形を阻害しないようにバネ形状とすることが好ましい。このとき、電極41の長さ(自然長)は、その先端が袋体20に接する長さとすることが好ましい。このように電極41の長さをとることで、袋体20の先端付近の変形による粉体30の偏在をも検出し易くすることができる。
【0041】
電極41の配設本数の下限としては、3本が好ましく、5本がより好ましい。一方、電極41の配設本数の上限としては、20本が好ましく、15本がより好ましい。電極41の配設本数が上記下限未満であると、抵抗値の測定点数が少なくなるため、粉体30の偏在を検出し難くなるおそれがある。なお、抵抗値の測定点数が少なくなることを回避するため、マルチプレクサを用いて任意の2つの電極41を選択しながら計測する方法を採用することもできる。このような構成とすることで、最大で複数の電極41のうちの2つを選ぶ組み合わせの数の測定径路を確保できるので、電極41の配設本数を削減できるとともに、電極41が障害となって袋体20の変形が阻害されることも抑止できる。一方、電極41の配設本数が上記上限を超えると、袋体20の変形の阻害が顕著となるおそれがある。ただし、電極41の配設本数は、対象物Xと当該ロボットハンド1が行うタスクに応じて適宜決定されるものであり、上述の上限を超えることを妨げるものではない。
【0042】
複数の電極41は、ベース板10から垂下された状態での袋体20の水平断面に対して、おおむね等密度で配置すること、つまり電極41を偏在させないことが好ましい。このように複数の電極41を配置することで、粉体30の偏在を網羅的に検出することができる。
【0043】
当該ロボットハンド1では、検出部40が複数の電極41から選択される複数対の電極41間の抵抗値を測定する。この複数対の電極41の組み合わせとしては、複数の電極41の全組み合わせであってもよいし、その一部であってもよい。全組み合わせとする場合、粉体30の偏在を網羅的に検出することができる。一方、一部の組み合わせとする場合、測定効率を高めることができる。なお、一部の組み合わせとする場合は、測定結果から粉体30の偏在を捉えられる領域の網羅性が高まるように組み合わせを決定することが好ましい。
【0044】
<吸引装置>
当該ロボットハンド1の吸引装置(不図示)は、例えば可動式のアームの基端等に配設される。
【0045】
上記吸引装置としては、袋体20の内部及び袋体20の中央部の空洞を減圧できる限り特に限定されず、公知の真空ポンプ等を用いることができる。上記吸引装置とベース板10の真空吸引口11及び袋体内部吸引口12とは配管等で接続されており、それぞれ独立して吸引が可能な構成とされる。
【0046】
上記吸引装置は、袋体20の先端に対象物Xが接触し、対象物Xにより袋体20の中央部の空洞の端部が塞がれている際に、真空吸引口11を介して袋体20の中央部の空洞を減圧できるように構成されている。袋体20の中央部の空洞が減圧されると、対象物Xの袋体20側と、袋体20の反対側との間に圧力差が生じ、対象物Xが袋体20に吸着される。
【0047】
また、上記吸引装置は、袋体内部吸引口12を介して袋体20の内部を減圧できるように構成されている。袋体20の内部が減圧されると、ジャミング転位が生じ対象物Xを当該ロボットハンド1が握持することができる。
【0048】
<動作原理>
図2から
図5を用いて、当該ロボットハンド1が対象物Xを持ち上げる動作と共に、粉体30の偏在を検出部40が捉えることができる原理を説明する。
【0049】
当該ロボットハンド1は、
図2に示すように、握持する対象物Xに上方から接するように制御される。このとき、袋体20はベース板10から垂下された状態となり、対象物Xに接するまでは、粉体30はおよそ均質に分配されるから、複数対の電極41間の抵抗値は、その位置によらず略一定となる。
【0050】
当該ロボットハンド1の袋体20の下面が、
図3に示すように、対象物Xにより押し上げられる。袋体20は、変形自在であるので対象物Xの形状に倣うように変形し、対象物Xの外側を回り込むようにして、対象物Xを包み込む。このとき粉体30は袋体20の内部で上方に押し上げられ、かつ袋体20の変形により、袋体20内における対象物X上方の空間は狭くなるから、粉体30の嵩密度が上昇する。つまり、粉体30は対象物Xの上方に偏在することとなる。粉体30は導電性を有するため、嵩密度が上昇すると抵抗値が下がる。従って、この対象物Xの上方を電流径路に含む電極41間は、対象物Xにより袋体20が持ち上げられた平均高さに応じて抵抗値が下がることとなる。従って、複数対の電極41間の抵抗値の変化量から、その電極41間それぞれでの対象物Xにより袋体20が持ち上げられた平均高さが分かることになる。そして、複数対の電極41間での上記平均高さを合成することで、対象物Xの握持状態を把握することができる。
【0051】
このように袋体20が対象物Xを包み込んだ状態で、吸引装置によって袋体20の内部を減圧する。そうすると、
図4に示すように、粒子同士に押し付ける力が発生し、固形化(ジャミング転位)する。この状態においても、粉体30の偏在は維持されるから、複数対の電極41間の抵抗値の違いから、ジャミング転位前と同様に対象物Xの握持状態を把握することが可能である。なお、ジャミング転位後の方が粉体30の剛性が高まるため、接触検知までの応答時間が早まるとともに空間解像度が高められ、対象物Xの握持状態を把握し易い傾向となる。
【0052】
ジャミング転位が生じると、袋体20が対象物Xに吸着した状態となり、
図5に示すように、対象物Xを持ち上げることができる。
【0053】
逆に、袋体20に吸着した対象物Xを離脱させる場合には、上述とは逆の手順をたどる。つまり、
図5の状態を起点として、
図4に示すように、吸着した対象物Xを載置場所に移動させ、吸引装置の吸引を解除することで、袋体20の内部を大気圧に戻す(
図3)。そうすると、袋体20の吸着が解かれ、袋体20を上方に持ち上げても対象物Xはその場に留まる(
図2)。
【0054】
<利点>
当該ロボットハンド1は、変形自在な袋体20の内部に充填される粉体30のジャミング転位を用いて対象物Xを袋体20に吸着あるいは離脱させることができる。また、当該ロボットハンド1では、粉体30が導電性を有するので、対象物Xを握持した際に生じる粉体30の偏在により粉体30全体の電気的及び磁気的性質が変化する。当該ロボットハンド1では、検出部40でこの粉体30の偏在を電気的又は磁気的に検出することで、対象物Xの握持状態を容易に認識できる。
【0055】
より具体的には、当該ロボットハンド1では、対象物Xを握持することで、対象物Xに倣って袋体20の表面に凹みが生じる。この凹んだ部分の形状に応じて粉体30が偏在し、その嵩密度が変化する。その結果、複数対の電極41間の抵抗値に変化が生じる。従って、複数対の電極41間の抵抗値を用いることで、上記嵩密度の変化を捉え、粉体30の偏在を検出することができる。また、抵抗値は袋体20内に複数の電極41を挿入することで実現できるので、当該ロボットハンド1では、検出部40を容易に構成することができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
図6に示すロボットハンド2は、対象物を握持可能なロボットハンドである。当該ロボットハンド2は、ベース板10と、開口部がこのベース板10の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体20と、導電性を有し、この袋体20の内部に充填される粉体30と、粉体30の偏在を電気的に検出することで、対象物の握持状態を把握する検出部50とを備える。また、当該ロボットハンド1は、袋体20の内部を減圧する吸引装置(不図示)を備える。
【0057】
当該ロボットハンド2は、例えば可動式のアームの先端に取り付けられ、対象物を握持して移動させることができる。当該ロボットハンド2は、検出部50以外の構成は、第1実施形態のロボットハンド1と同様に構成できる。このため、検出部50以外の構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
<検出部>
検出部50は、袋体20の内部に設けられる複数の袋状の誘電膜51と、複数の誘電膜51それぞれの内部に設けられる第1電極52と、第1電極52が設けられた誘電膜51の外部で、かつ袋体20の内部に設けられる第2電極53とを有する。当該ロボットハンド2では、粉体30の偏在の検出に、第1電極52と第2電極53との間の静電容量値を用いる。つまり、検出部50は、第1電極52と第2電極53との間の静電容量値を測定する測定器(不図示)を有する。
【0059】
誘電膜51は、第1電極52と第2電極53とが粉体30を介して短絡することを抑止する。誘電膜51としては、絶縁性を有する限り特に限定されないが、可撓性を有し袋体20と共に変形自在であることが好ましい。従って、誘電膜51は、袋体本体21と同じ材質とすることが好ましい。
【0060】
袋状の誘電膜51の内部には、粉体30が充填されていることが好ましい。このように粉体30を充填することで、ベース板10が傾斜しても、粉体30の一部が誘電膜51の内部に留まる。従って、ベース板10が傾斜した状態であっても対象物を握持できるようになる。
【0061】
誘電膜51の配設数は、第1電極52及び第2電極53の構成にもよるが、誘電膜51の配設数の下限としては、3個が好ましく、5個がより好ましい。一方、誘電膜51の配設数の上限としては、20個が好ましく、15個がより好ましい。誘電膜51の配設数が上記下限未満であると、静電容量値の測定点数が少なくなるため、粉体30の偏在を検出し難くなるおそれがある。逆に、誘電膜51の配設数が上記上限を超えると、袋体20の変形の阻害が顕著となるおそれがある。
【0062】
第1電極52及び第2電極53は、第1実施形態の電極41と同様に構成することができる。
【0063】
静電容量値の測定においては、第1電極52と第2電極53との間が、少なくとも1枚の誘電膜51で仕切られていればよい。従って、1つの袋状の誘電膜51の内部に複数の第1電極52が設けられてもよい。また、第1電極52が設けられた複数の誘電膜51に対して共通にその外部に1本の第2電極53が設けられてもよい。あるいは、第2電極53として、他の誘電膜51の内部に設けられている第1電極52を用いることもできる。
【0064】
<動作原理>
当該ロボットハンド2が対象物を持ち上げる動作の原理は、第1実施形態のロボットハンド1と同様である。
【0065】
当該ロボットハンド2の検出部50では、第1電極52と第2電極53との間に誘電膜51が存在するため、第1電極52と第2電極53との間は電気的に絶縁している。この状態で、第1電極52と第2電極53との間に存在する導電性の粉体30の嵩密度が、粉体30の対象物の上方への偏在により変化すると、第1電極52と第2電極53との間の静電容量値が変化する。従って、当該ロボットハンド2では、第1電極52と第2電極53との間の静電容量値の変化量から、第1電極52と第2電極53との間それぞれでの対象物により袋体20が持ち上げられた平均高さが分かることになる。そして、各位置での上記平均高さを合成することで、対象物の握持状態を把握することができる。
【0066】
<利点>
当該ロボットハンド2では、粉体30が偏在したことによる嵩密度の変化は、静電容量値の変化として検出することができる。また、袋体20の内部が仕切られ小部屋に分けられ、粉体30が分配されているロボットハンドにあっては、その仕切りを誘電膜51として用い、各小部屋に電極を挿入することで実現できるので、検出部50を容易に構成することができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
図7に示すロボットハンド3は、対象物を握持可能なロボットハンドである。当該ロボットハンド3は、ベース板10と、開口部がこのベース板10の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体20と、導電性を有し、この袋体20の内部に充填される粉体30と、粉体30の偏在を電気的に検出することで、対象物の握持状態を把握する検出部60とを備える。また、当該ロボットハンド3は、袋体20の内部を減圧する吸引装置(不図示)を備える。
【0068】
当該ロボットハンド3は、例えば可動式のアームの先端に取り付けられ、対象物を握持して移動させることができる。当該ロボットハンド3は、検出部60以外の構成は、第1実施形態のロボットハンド1と同様に構成できる。このため、検出部60以外の構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0069】
<検出部>
検出部60は、ベース板10に離間して固定される複数の電磁誘導式近接センサ61を有する。当該ロボットハンド3では、粉体30の偏在の検出に、複数の電磁誘導式近接センサ61が有する検出コイルのインピーダンス変化を用いる。
【0070】
電磁誘導式近接センサ61は、導電性を有する粉体30の粒子個々の移動を捉えることができる。具体的には以下の原理で動作する。電磁誘導式近接センサ61では、検出コイル(一次コイル)より高周波磁界を発生させる。この磁界に導体が近づいた場合に生じる電磁誘導により、上記導体には誘導電流(渦電流)が発生する。この電流により電磁誘導式近接センサ61の検出コイル(二次コイル)のインピーダンスが変化する。このインピーダンス変化から、粉体30の粒子個々の移動が分かる。
【0071】
電磁誘導式近接センサ61は、非接触で導体の移動を測定可能であるので、袋体20の外部から粉体30の移動を捉えることができる。このように袋体20の外部から測定することで検出部60が袋体20の変形を阻害することを、より確実に防止することができる。一方、測定対象である粉体30に近いほど精度よく測定可能となるので、電磁誘導式近接センサ61は、その先端(高周波磁界を発生する検出コイル側)がベース板10の内面と面一となるように配設することが好ましい。
【0072】
電磁誘導式近接センサ61の配設本数の下限としては、3本が好ましく、5本がより好ましい。一方、電磁誘導式近接センサ61の配設本数の上限としては、20本が好ましく、15本がより好ましい。電磁誘導式近接センサ61の配設本数が上記下限未満であると、インピーダンス変化の測定点数が少なくなるため、粉体30の偏在を検出し難くなるおそれがある。逆に、電磁誘導式近接センサ61の配設本数が上記上限を超えると、当該ロボットハンド3の製造コストが高くなり過ぎるおそれがある。
【0073】
<動作原理>
当該ロボットハンド3が対象物を持ち上げる動作の原理は、第1実施形態のロボットハンド1と同様である。
【0074】
当該ロボットハンド3では、粉体30の偏在は、当該ロボットハンド3の袋体20の下面が、対象物により押し上げられた際に生じる粉体30の移動を捉えることで検出する。つまり、粉体30が電磁誘導式近接センサ61に近接した部分には、対象物が存在しており、袋体20の下方から粉体30を押し上げたはずである。そして、この粉体30が移動した距離から袋体20と対象物とが当接している面の移動量が分かる。従って、上記当接面の形状を特定できるので、対象物の握持状態を把握することができる。
【0075】
<利点>
当該ロボットハンド3では、電磁誘導式近接センサ61が、導電性の粉体30の移動により生じる磁気的な変化を検出コイルのインピーダンス変化により捉えることができる。そして、検出部60は、粉体30の移動から粉体30の偏在を検出することができる。電磁誘導式近接センサ61は、袋体20の外から粉体30の移動を捉えることができるから、袋体20の内側に測定用の部材を挿入する必要がない。このため、検出部60が粉体30の移動に影響を及ぼし難く、対象物の握持力が低下し難い。
【0076】
〔第4実施形態〕
図8及び
図9に示すロボットハンド4は、対象物Yを握持可能なロボットハンドである。当該ロボットハンド4は、ベース板70と、開口部がこのベース板70の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体80と、導電性を有し、この袋体80の内部に充填される粉体30と、粉体30の偏在を電気的に検出することで、対象物Yの握持状態を把握する検出部40と、ベース板70の他方の面を覆い、内部に粉体30を収納可能なチャンバ90とを備える。また、当該ロボットハンド4は、袋体80の内部を減圧する吸引装置(不図示)を備える。
【0077】
当該ロボットハンド4は、例えば可動式のアームの先端に取り付けられ、対象物Yを握持して移動させることができる。当該ロボットハンド4は、粉体30及び検出部40は、第1実施形態のロボットハンド1と同様に構成できるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
<ベース板>
ベース板70は、袋体80を固定する固定部材である。ベース板70は、後述する袋体80の各小部屋とチャンバ90内部とを連通し、粉体30が通過可能な貫通孔71を有する。ベース板70は、貫通孔71を有する点以外は、第1実施形態のベース板10と同様に構成することができるので、詳細説明を省略する。
【0079】
<袋体>
袋体80は、
図9に示すように、袋体本体81と、抑え板82と、隔壁83とを備える。このうち袋体本体81及び抑え板82は、第1実施形態の袋体20の袋体本体21及び抑え板22と同様に構成できるので、詳細説明を省略する。
【0080】
隔壁83は、袋体本体81の内部を粉体30が移動不可能な複数の小部屋に分割する。上記小部屋は、ベース板70と接しており、粉体30が、チャンバ90を介して上記小部屋間を自由に行き来できる。また、上記小部屋は、それぞれに複数の電極41が配設されるように仕切られている。
【0081】
<動作原理>
図9及び
図10を用いて、当該ロボットハンド4が対象物Yを持ち上げる動作と共に、粉体30の偏在を検出部40が捉えることができる原理を説明する。
【0082】
当該ロボットハンド4は、第1実施形態のロボットハンド1と同様に、握持する対象物Yに上方から接するように制御される。これにより袋体80の下面が対象物Yに当接し、対象物Yにより押し上げられる。このとき押し上げられた小部屋に充填されている粉体30は、チャンバ90と貫通孔71を通じて連通しているので、チャンバ90側へ押し出される。また、粉体30の嵩密度が均一化されるように、粉体30は対象物Yにより押し上げられていない小部屋にチャンバ90から移動し、袋体80は、対象物Yを包み込むような形状に変形する。この状態で吸引装置によって袋体80の内部を減圧する。そうすると、粉体30は、ジャミング転位する。ジャミング転位が生じると、袋体80が対象物Yに吸着した状態となり、
図10に示すように、対象物Yを持ち上げることができる。
【0083】
この場合、袋体80の内部で粉体30の嵩密度が均一化されるので、対象物Yの上方での抵抗値が高くなり、対象物Yの周囲(対象物Yの上方ではない位置)では抵抗値が低くなるから、複数対の電極41間での抵抗値により、対象物Yの握持状態を把握することができる。なお、当該ロボットハンド4では、袋体80の内部が小部屋に分割されているため、電極41の対は同一の小部屋内で選択される。
【0084】
<利点>
当該ロボットハンド4では、このように袋体80を小部屋に分割することで、ベース板70が傾斜した際に粉体30がベース板70の低い側に偏ることを抑止することができる。また、粉体30がチャンバ90を介して上記小部屋間を自由に行き来できるので、対象物Yを握持することで袋体80が変形し、空間が狭くなった小部屋からはチャンバ90へ粉体30が移動し、逆に空間が広くなった小部屋が生じればチャンバ90からその小部屋へ粉体30が移動する。このように粉体30がチャンバ90を介して上記小部屋間を自由に行き来することで、粉体30の嵩密度を一定としつつ対象物Yを握持できるので、握持力を高められる。また、対象物Yを握持した部分では粉体30の量が少なくなるので、粉体30の偏在による電気的又は磁気的変化が大きくなり易く、より確実に粉体30の偏在を検出することができる。
【0085】
〔第5実施形態〕
図11に示すロボットハンド5は、対象物を握持可能なロボットハンドである。当該ロボットハンド5は、ベース板10と、開口部がこのベース板10の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体20と、導電性を有し、この袋体20の内部に充填される粉体30と、粉体30の偏在を電気的に検出することで、対象物の握持状態を把握する検出部40と、袋体20の内部に充填される絶縁性粉体31とを備える。また、当該ロボットハンド5は、袋体20の内部を減圧する吸引装置(不図示)を備える。なお、導電性を有する粉体30を絶縁性粉体31と区別するため、以下粉体30を「導電性粉体30」ともいう。
【0086】
当該ロボットハンド5は、例えば可動式のアームの先端に取り付けられ、対象物を握持して移動させることができる。当該ロボットハンド5は、絶縁性粉体31を備えること以外の構成は、第1実施形態のロボットハンド1と同様に構成できる。このため、絶縁性粉体31以外の構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
<絶縁性粉体>
絶縁性粉体31は、ジャミング転位が生じ対象物を当該ロボットハンド5が握持した際に、電極41間の導通を適度に阻害し、握持状態の違いにより電極41間の抵抗値を段階的に変化させる役割を果たす。このため、検出部40が、より精度良く導電性粉体30の偏在を捉えることができる。
【0088】
絶縁性粉体31の材質としては、絶縁性を有し、袋体20の内部を減圧した際、粒子同士の接触により破損しない強度を有する限り、特に限定されないが、例えば樹脂を用いることができる。
【0089】
絶縁性粉体31の平均粒子径は、導電性粉体30の平均粒子径と同程度であることが好ましく、具体的には、導電性粉体30の平均粒子径に対する絶縁性粉体31の平均粒子径の比の下限としては、0.8が好ましく、0.9がより好ましい。一方、上記平均粒子径の比の上限としては、1.2が好ましく、1.1がより好ましい。上記平均粒子径の比が上記下限未満であると、粒径が小さい絶縁性粉体31が下方に溜まり易くなる。逆に、上記平均粒子径の比が上記上限を超えると、粒径が小さい導電性粉体30が下方に溜まり易くなる。いずれの場合であっても、導電性粉体30と絶縁性粉体31とを混在させることが困難となるおそれがある。
【0090】
絶縁性粉体31を構成する粒子の質量は、導電性粉体30を構成する粒子の質量と同程度であることが好ましく、具体的には、導電性粉体30の粒子質量に対する絶縁性粉体31の粒子質量の比の下限としては、0.8が好ましく、0.9がより好ましい。一方、上記粒子質量の比の上限としては、1.2が好ましく、1.1がより好ましい。上記粒子質量の比が上記下限未満であると、重たい導電性粉体30が下方に溜まり易くなる。逆に、上記粒子質量の比が上記上限を超えると、重たい絶縁性粉体31が下方に溜まり易くなる。いずれの場合であっても、導電性粉体30と絶縁性粉体31とを混在させることが困難となるおそれがある。
【0091】
導電性粉体30と絶縁性粉体31との充填率の和(合計充填率)の下限としては、70体積%が好ましく、75体積%がより好ましい。一方、上記合計充填率の上限としては、85体積%が好ましく、80体積%がより好ましい。上記合計充填率が上記下限未満であると、空気量が多くなるため、減圧に時間を要し、当該ロボットハンド5の作業効率が低下するおそれがある。逆に、上記合計充填率が上記上限を超えると、導電性粉体30及び絶縁性粉体31を構成する粒子が移動できる空間が狭くなり過ぎ、袋体20が対象物の形状に追従して変化し難くなるおそれがある。
【0092】
導電性粉体30と絶縁性粉体31との合計に対する導電性粉体30の含有量の下限としては、20質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。一方、上記導電性粉体30の含有量の上限としては、45質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。上記導電性粉体30の含有量が上記下限未満であると、ジャミング転位が生じた際にも電極41間が導通せず、導電性粉体30の偏在を検出できないおそれがある。逆に、上記導電性粉体30の含有量が上記上限を超えると、絶縁性粒子31による導電性粉体30の偏在を捉える効果が不十分となるおそれがある。
【0093】
<利点>
当該ロボットハンド5では、導電性粉体30の含有量が20質量%以上45質量%以下となるように導電性粉体30及び絶縁性粉体31を袋体内に混合することで、袋体20内の導電性粉体30の偏在を段階的に捉えることが容易となる。
【0094】
〔第6実施形態〕
図12に示すロボットハンド6は、対象物を握持可能なロボットハンドである。当該ロボットハンド6は、ベース板10と、開口部がこのベース板10の一方の面に取り付けられた変形自在な袋体20と、導電性を有し、この袋体20の内部に充填される粉体30と、粉体30の偏在を電気的に検出することで、対象物の握持状態を把握する検出部40とを備える。また、当該ロボットハンド6は、袋体20の内部を減圧する吸引装置(不図示)を備える。当該ロボットハンド6では、袋体20が、その内部に複数の小袋体23を有し、それぞれの小袋体23の内部に粉体30が充填されている。
【0095】
当該ロボットハンド6は、例えば可動式のアームの先端に取り付けられ、対象物を握持して移動させることができる。当該ロボットハンド6は、袋体20が複数の小袋体23を有すること以外の構成は、第1実施形態のロボットハンド1と同様に構成できる。このため、小袋体23以外の構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0096】
<小袋体>
小袋体23は、導電性又は絶縁性の膜で構成することができる。小袋体23を導電性の膜で構成する場合、検出部40を構成する複数の電極41は、第1実施形態のロボットハンド1と同様に任意の2点間の抵抗値を測定可能であり、検出部40の構成を簡単化できる。一方、小袋体23を絶縁性の膜で構成する場合、検出部40は同一の小袋体23内にある電極41間の抵抗値のみが測定可能である。逆に言うと、対象物の握持状態を把握し易いように小袋体23の大きさ、数、配置を決定する必要がある。しかし、この構成にあっては、小袋体23の膜の表面を伝わる導電パスが存在しないため、得られた抵抗値から対象物の握持状態を把握し易い。
【0097】
複数の小袋体23は、互いに密着し、かつ袋体20に接するように構成してもよいが、
図12に示すように、複数の小袋体23及び袋体20が互いに離間するように構成されていてもよい。複数の小袋体23及び袋体20が互いに離間するように構成されている場合は、袋体20の内部で、複数の小袋体23の外側の領域にも粉体30が充填されていることが好ましい。
【0098】
また、複数の小袋体23と、袋体20の内部で複数の小袋体23の外側の領域とは、上記吸引装置で吸引できるように構成されている。
【0099】
小袋体23への粉体30の充填率の下限としては、70体積%が好ましく、75体積%がより好ましい。一方、上記充填率の上限としては、85体積%が好ましく、80体積%がより好ましい。上記充填率が上記下限未満であると、空気量が多くなるため、減圧に時間を要し、当該ロボットハンド1の作業効率が低下するおそれがある。逆に、上記充填率が上記上限を超えると、粉体30を構成する粒子が移動できる空間が狭くなり過ぎ、小袋体23が対象物Xの形状に追従して変化し難くなるおそれがある。
【0100】
<利点>
当該ロボットハンド6では、袋体20の内部を小袋体23に分けて、その内部に粉体30を充填する。粉体30が小袋体23を超えて移動することがないので、当該ロボットハンド6が傾いても、粉体30が袋体20の中で極端に偏在することを抑止できる。従って、当該ロボットハンド6は、対象物の握持状態をさらに容易に認識することができる。
【0101】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0102】
上記実施形態では、対象物の握持状態を電気的に検出する方法として、抵抗値を用いる場合と、静電容量値を用いる場合とを説明したが、電気的検出方法はこれに限定されるものではない。例えば粉体に圧電気材料を用い、圧力が加わった際の起電力の変化から対象物の握持状態を認識することもできる。あるいは、光電効果により起電力を有する導電性粒子を用いることもできる。このような導電性粒子を用いる場合、粉体の粗密による光の透過率の差を起電力に変換することで、対象物の握持状態を把握することが可能である。さらに、抵抗値の温度依存性を利用することも可能である。対象物を握持した際、その対象物と粉体との間には通常温度差があり、対象物との接触により粉体の温度が局所的に変化する。抵抗値の温度依存性により、この温度の局所的変化を捉えることで、対象物の握持状態を把握することが可能である。
【0103】
また、上記実施形態では、対象物の握持状態を磁気的に検出する方法として、電磁誘導式近接センサを用いる場合を説明したが、磁気的検出方法はこれに限定されるものではない。例えば粉体に圧力が加わった際の磁気歪みをホール素子等で検出する方法を用いることもできる。
【0104】
上記第1実施形態では、電極の先端が袋体に接する構成を示しているが、
図13に示すロボットハンド7のように、複数の電極42が、その先端がベース板10の表面又は表面から突出した位置にあり、袋体20に接していなくともよい。このような構成にあっては、
図5に示すように、検出部40は、複数の電極42に加え、絶縁膜43を有する。絶縁膜43は、複数の電極42の一部がその外側、残りの電極42がその内側となるようにベース板10を仕切る。また、絶縁膜43は、その一部、例えば先端に貫通孔43aを有する。粉体30は、この貫通孔43aを通して絶縁膜43の内側及び外側の間を移動可能である。
【0105】
このロボットハンド7では、絶縁膜43で仕切られた一対の電極42間の抵抗値が測定される。上記一対の電極42間の電流径路は貫通孔43aを介することとなるため、一対の電極42の先端が袋体20に接するような位置になくとも、その抵抗値が袋体20の形状に応じて変化する。従って、当該ロボットハンド7は、対象物の握持状態を把握することができる。また、当該ロボットハンド7は、電極42の長さを長くとる必要がないため、袋体20が電極42により変形し難くなることを抑止できる。
【0106】
なお、
図13では、検出部が1つの絶縁膜43を有する場合を示しているが、複数の絶縁膜43を設ける構成としてもよい。複数の電極42の仕切り方を工夫することで、例えば1の電極42から多地点の電極42に対して異なる電流径路で抵抗値を測定することができるようになる。つまり、この1の電極42を共有して、抵抗値の変化を検出できるので、電極42の数を減らすことができる。
【0107】
上記第5実施形態及び第6実施形態では、検出部が複数の電極を有し、粉体の偏在の検出に電極間の抵抗値を用いる場合で説明したが、検出部はこの構成に限定されるものではない。例えば、検出部を、第2実施形態のような静電容量値を用いる構成や、第3実施形態のような電磁誘導式近接センサが有する検出コイルのインピーダンス変化を用いる構成等としても、それぞれ同様の効果を奏する。
【実施例】
【0108】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
[抵抗値による握持状態の認識]
対象物の握持力の低下を抑止しつつ、抵抗値の変化により握持状態が認識できることを確認する実験を行った。
【0110】
<実施例1>
実施例1として、
図1及び
図2に示すロボットハンドを準備した。袋体本体にはシリコーン膜を用いた。粉体には、目開き710μmの篩にかけたアルミニウムの切子を用いた。また、電極として、6本のバネ状電極を設けた。
【0111】
<比較例1>
比較例1として、電極を有さない点、及び粉体をコーヒー豆とした点以外は、上記実施例1と同様の構成としたロボットアームを準備した。
【0112】
<握時力評価>
実施例1及び比較例1の握時力を比較するため、以下の手順で実験を行った。
【0113】
(試験片)
図14に示すように、試験片Zとして、ベース板Z1に、上面の両端が半径R(不図示)で面取りされた角柱Z2(幅W、高さH;
図14参照)を付設したものを準備した。なお、角柱Z2としては、幅W、高さH及び半径Rがそれぞれ(W、H、R)=(0mm、0mm、0mm)、(30mm、1mm、0.1mm)、(40mm、2mm、0.5mm)及び(50mm、3mm、1mm)の4種類を準備した。なお、(W、H、R)=(0mm、0mm、0mm)は角柱Z2が存在しない、すなわちベース板Z1のみで構成されることを意味しており、この場合ロボットアームは、ベース板Z1のみを吸着により持ち上げることとなる。
【0114】
(測定)
上記各試験片に対して、低速シリンダ(KOGANEI社製の「PBDAS16X75-A」)を用いて、実施例1又は比較例1のロボットハンドを20Nの押付力で押し付けた。その後、袋体の内部を減圧することで吸着を開始し、上記試験片を持ち上げた。この持ち上げ時に発生する負圧(吸着力)を計測した。なお、測定は5回行い、その平均値を測定結果とした。結果を表1に示す。
【0115】
【0116】
表1の結果から、実施例1と比較例1との吸着力は同等であることが分かる。つまり、抵抗値の変化により握持状態が認識できる機能を搭載しても、ジャミング転移を有効に用いることができると言える。
【0117】
<握持状態の認識>
次に、実施例1について、(W、H、R)=(50mm、3mm、1mm)の試験片Zを用いて、握持状態の認識力を調べた。具体的には、
図14に示すように、試験片Zの段差に実施例1のロボットハンドを押し付け、その押し付け力と、3か所の電極でのセンサ値(抵抗が低いほど大きい数値を示す)との関係を調べた。結果を
図15に示す。
【0118】
図15で、センサ1及びセンサ3が試験片Zの凸部上に電極があり、センサ2が凸部から離れた位置に電極がある。
図15のグラフから、センサ2に対してセンサ1及びセンサ3で押し付けとともに抵抗値が下がって(センサ値は上昇して)いる。このことから、センサ1及びセンサ3の電極位置に対象物が握持されていることが分かる。従って、実施例1のロボットハンドでは、対象物の握持状態が認識できると言える。
【0119】
[静電容量値による握持状態の認識]
静電容量値を用いても握持状態が認識できることを確認する実験を行った。
【0120】
<実施例2>
実施例2として、
図6に示すロボットハンドを準備した。袋体本体及び誘電膜にはシリコーン膜を用いた。粉体には、目開き710μmの篩にかけたアルミニウムの切子を用いた。また、第1電極及び第2電極として、6本のバネ状電極を設けた。なお、バネ状電極は1本ずつ誘電膜の内部に設けた。
【0121】
<握持状態の認識>
この実施例2について、(W、H、R)=(50mm、3mm、1mm)の試験片Zを用いて、握持状態の認識力を調べた。具体的には試験片Zの段差に実施例2のロボットハンドを押し付け、その押し付け力と、試験片Zの凸部上にある一対の電極を第1電極及び第2電極とした場合の静電容量との関係を求めた。
【0122】
静電容量の測定には、1MΩの抵抗素子と、第1電極及び第2電極間に構成される容量素子でRC回路を構成し、このRC回路にパルスを入力した際の時定数から静電容量の大小(センサ値)を評価した。結果を
図16に示す。なお、センサ値が大きいほど静電容量は大きい。
【0123】
図16のグラフから、押し付け力と静電容量との間には相関があることが分かる。このことから、静電容量値を用いても握持状態が認識できると言える。
【0124】
[絶縁性粉体の効果]
絶縁性粉体の効果を確認する実験を行った。
【0125】
図11に示すロボットハンドを準備した。袋体本体にはシリコーン膜を用いた。粉体には、目開き710μmの篩にかけたアルミニウムの切子を用い、絶縁性粉体には、絶縁性を有する樹脂を用いた。また、電極として、6本のバネ状電極を設けた。
【0126】
粉体及び絶縁性粉体の合計量を1gに固定し、粉体であるアルミニウムの占める割合を100質量%、83質量%、50質量%、35質量%及び16質量%として、押し付け力を0Paから0.15Paに変化させた場合の電極でのセンサ値を調べた。結果を
図17に示す。
【0127】
図17の結果から、粉体の割合を35質量%とすると、押し付け力に応じたセンサ値が得られることが分かる。一方、粉体の割合が20質量%より小さい16質量%では、ジャミング転位が生じた際にも電極間が導通せず、粉体の偏在を検出できていない。逆に、粉体の割合が45質量%を超える場合は、押し付け力を加えると即座にセンサ値が0(低抵抗の導通状態)となり、粉体の偏在を段階的に捕えることができていない。
【0128】
以上から、粉体の含有量が20質量%以上45質量%以下となるように粉体及び絶縁性粉体を袋体内に混合することで、袋体内の粉体の偏在を段階的に捉えることが容易となると言える。
【0129】
[複数の小袋体の効果]
複数の小袋体の効果を確認する実験を行った。
【0130】
図12に示すロボットハンドを準備した。具体的は、上記ロボットハンドは、6つの小袋体を有し、その内部にそれぞれ一対の電極が離間して設けられている。各小袋体に内包される一対の電極は、上記ロボットハンドの平面視で
図18に#1~#6で示す位置に配置されている。袋体本体及び小袋体にはシリコーン膜を用いた。また、粉体には、目開き710μmの篩にかけたアルミニウムの切子を用いた。
【0131】
また、
図12に示すロボットハンド(以下、「小袋体付ロボットハンド」ともいう)と同じ位置に電極を有し、小袋体を有さないロボットハンド(以下、「小袋体無ロボットハンド」ともいう)を準備した。
【0132】
上記小袋体付ロボットハンド及び上記小袋体無ロボットハンドを用いて、ロボットハンドを15度傾けた状態、すなわち各ロボットハンドのベース板が水平面から15度傾いた状態で、試験片(平板)に、圧力20Nで押し付け、各電極で測定されるセンサ値を取得した。結果を
図18に示す。
【0133】
図18の結果から、小袋体無ロボットハンドを用いた場合、ロボットハンドの傾きにより粉体の偏在を検出できないセンサが存在するのに対し、小袋体付ロボットハンドでは全てのセンサで粉体の偏在を検出できている。以上から、小袋体付ロボットハンドを用いることで、ロボットハンドの傾きにより粉体が極端に偏在することを抑止できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上のように、本発明のロボットハンドは、ジャミング転位を用いつつ、対象物の握持状態を容易に認識できる。
【符号の説明】
【0135】
1、2、3、4、5、6、7 ロボットハンド
10 ベース板
11 真空吸引口
12 袋体内部吸引口
20 袋体
21 袋体本体
22 抑え板
23 小袋体
30 粉体
31 絶縁性粉体
40 検出部
41、42 電極
43 絶縁膜
43a 貫通孔
50 検出部
51 誘電膜
52 第1電極
53 第2電極
60 検出部
61 電磁誘導式近接センサ
70 ベース板
71 貫通孔
80 袋体
81 袋体本体
82 抑え板
83 隔壁
90 チャンバ
X、Y 対象物
Z 試験片
Z1 ベース板
Z2 角柱