(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】衝撃吸収構造体およびバンパー芯材
(51)【国際特許分類】
F16F 7/00 20060101AFI20240311BHJP
B60R 19/18 20060101ALI20240311BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F16F7/00 K
B60R19/18 P
F16F7/12
(21)【出願番号】P 2023149596
(22)【出願日】2023-09-14
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2023109534
(32)【優先日】2023-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 人とくるまのテクノロジー展2023 NAGOYA 開催日 令和5年7月5日~7日 発行者名 NatureArchitects株式会社 刊行物名 「人とくるまのテクノロジー展」NAGOYA展示概要 発行日 令和5年7月5日 公開者名 NatureArchitects株式会社 ウェブサイトのアドレス https://nature-architects.com/blog/1365/ ウェブサイトの掲載日 令和5年7月20日 公開者名 NatureArchitects株式会社 ウェブサイトのアドレス https://nature-architects.com/service/deformation/ ウェブサイトの掲載日 令和5年7月5日 公開者名 NatureArchitects株式会社 ウェブサイトのアドレス https://twitter.com/NatureArchitec1/status/1677141358858092544 ウェブサイトの掲載日 令和5年7月7日 公開者名 NatureArchitects株式会社 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=PwfCiR1jhqk ウェブサイトの掲載日 令和5年7月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519366237
【氏名又は名称】NatureArchitects株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 要平
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0222416(US,A1)
【文献】特開2004-090910(JP,A)
【文献】特開2006-062635(JP,A)
【文献】特表2019-524546(JP,A)
【文献】特開平06-026543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
B60R 19/18
F16F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいて配置される第1、第2の支持部と、
それぞれ、対応する第1、第2の接続部である第1、第2の対応接続部を介して前記第1、第2の支持部に接続される複数の変形部と、
を備える衝撃吸収構造体であって、
前記複数の変形部は、それぞれ、
前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて、前記第1の対応接続部と前記第2の対応接続部とを通る対応直線に対して互いに同一側に傾斜しながら直線状に延びる第1、第2の梁部と、
前記第1、第2の梁部の前記第1、第2の対応接続部とは反対側の端部に接続され、前記対応直線に接近する側に凸の曲線状に延びる第3の梁部とを有
し、
前記複数の変形部の少なくとも一部は、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して一方側に傾斜しながら延びる第1の変形部と、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して他方側に傾斜しながら延びる第2の変形部と、が任意の数ずつ交互に並ぶように配置されている、
衝撃吸収構造体。
【請求項2】
請求項1記載の衝撃吸収構造体であって、
前記複数の変形部は、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して一方側に傾斜しながら延びる第1の変形部と、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して他方側に傾斜しながら延びる第2の変形部と、を互いに同数有する、
衝撃吸収構造体。
【請求項3】
互いに間隔をおいて配置される第1、第2の支持部と、
それぞれ、対応する第1、第2の接続部である第1、第2の対応接続部を介して前記第1、第2の支持部に接続される複数の変形部と、
を備える衝撃吸収構造体であって、
前記複数の変形部は、それぞれ、
前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて、前記第1の対応接続部と前記第2の対応接続部とを通る対応直線に対して互いに同一側に傾斜しながら直線状に延びる第1、第2の梁部と、
前記第1、第2の梁部の前記第1、第2の対応接続部とは反対側の端部に接続され、前記対応直線に接近する側に凸の曲線状に延びる第3の梁部とを有
し、
前記複数の変形部は、それぞれ、
前記第1、第2の支持部の少なくとも一方に前記対応直線に沿った方向の荷重が加えられたときに、前記第1、第2の支持部間の距離の変位量の増加に伴って、
前記第1、第2の梁部のそれぞれの一部が前記第1、第2の支持部に当接するまで、前記第1、第2の梁部の前記対応直線に対する傾斜角が増加しながら前記第3の梁部の曲率が小さくなる第1段階、
前記第1、第2の梁部のそれぞれの一部が前記第1、第2の支持部に当接した状態で前記第3の梁部の曲率が大きくなる第2段階、
の順に変形するように構成されている、
衝撃吸収構造体。
【請求項4】
互いに間隔をおいて配置される第1、第2の支持部と、
それぞれ、対応する第1、第2の接続部である第1、第2の対応接続部を介して前記第1、第2の支持部に接続される複数の変形部と、
を備える衝撃吸収構造体であって、
前記複数の変形部は、それぞれ、
前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて、前記第1の対応接続部と前記第2の対応接続部とを通る対応直線に対して互いに同一側に傾斜しながら直線状に延びる第1、第2の梁部と、
前記第1、第2の梁部の前記第1、第2の対応接続部とは反対側の端部に接続され、前記対応直線に接近する側に凸の曲線状に延びる第3の梁部とを有
し、
前記衝撃吸収構造体は、前記第1、第2の支持部の少なくとも一方に前記対応直線に沿った方向の荷重が加えられたときに、第1反力帯域を維持しながら変位量が増加する第1変位領域と、前記第1反力帯域よりも大きい第2反力帯域を維持しながら前記変位量が増加する第2変位領域と、を呈するように構成されている、
衝撃吸収構造体。
【請求項5】
請求項
1,3,4のうちの何れか1つの請求項に記載の衝撃吸収構造体であって、
前記衝撃吸収構造体は、一体成形されている、
衝撃吸収構造体。
【請求項6】
請求項
1,3,4のうちの何れか1つの請求項に記載の衝撃吸収構造体を備えるバンパー芯材。
【請求項7】
第1方向に互いに間隔を置いて配置された第1及び第2の支持部と、
前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に設けられた一対の変形部と、
を含み、
前記一対の変形部は、
前記第1の支持部から前記第1方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第1の直線状梁部と、
前記第2の支持部から前記第1方向とは反対方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第2の直線状梁部と、
前記一対の第1の直線状梁部と前記一対の第2の直線状梁部との間に設けられ、各々の円弧の凸が互いに向かい合うように配置された一対の円弧状梁部と、
有
し、
前記衝撃吸収構造体は、前記第1の支持部又は前記第2の支持部に前記第1方向に沿って荷重を加えた時に、第1の反力帯域を維持しながら変位する第1の変位領域と、前記第1の反力帯よりも大きい第2の反力帯域を維持しながら変位する第2の変位領域とをもたらすように構成されている、衝撃吸収構造体。
【請求項8】
前記衝撃吸収構造体は一体成形されている、請求項
7に記載の衝撃吸収構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は衝撃吸収構造体およびバンパー芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂発泡体からなるバンパー芯材が開示されている。このようなバンパー芯材は、例えば自動車車両のフロントバンパー内側に備えられ、車両が前方のオブジェクトに衝突したときに自ら圧壊するように変形することで衝突エネルギーを吸収し、車両本体や車両内の乗員を保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているバンパー芯材はポリプロピレン系樹脂発泡体からなるため、歩行者と衝突した場合に歩行者に大きな衝撃力が生じることを防ぐことができる一方、自身の変形により吸収できるエネルギー量が少ないために車両がオブジェクトに衝突したときに車両の損壊を防ぐことができないおそれがある。そのため、車両が人に衝突した場合の衝突安全性を高めることと、衝突エネルギーを吸収して車両損壊をより防ぐこととの両立を図るためには、バンパー芯材などに用いられる衝撃吸収構造体として、衝突初期に生じる反力を抑えつつ、吸収可能な衝突エネルギー量をより多く確保することを可能とする衝撃吸収構造体の考案が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様によれば、互いに間隔をおいて配置される第1、第2の支持部と、それぞれ、対応する第1、第2の接続部である第1、第2の対応接続部を介して前記第1、第2の支持部に接続される複数の変形部と、を備える衝撃吸収構造体であって、前記複数の変形部は、それぞれ、前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて、前記第1の対応接続部と前記第2の対応接続部とを通る対応直線に対して互いに同一側に傾斜しながら直線状に延びる第1、第2の梁部と、前記第1、第2の梁部の前記第1、第2の対応接続部とは反対側の端部に接続され、前記対応直線に接近する側に凸の曲線状に延びる第3の梁部とを有する。
【0006】
本開示の第2の態様によれば、第1方向に互いに間隔を置いて配置された第1及び第2の支持部と、第1の支持部と第2の支持部との間に設けられた一対の変形部とを含む衝撃吸収構造体が提供される。一対の変形部は、第1の支持部から第1方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第1の直線状梁部と、第2の支持部から第1方向とは反対方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第2の直線状梁部と、一対の第1の直線状梁部と一対の第2の直線状梁部との間に設けられ、各々の円弧の凸が互いに向かい合うように配置された一対の円弧状梁部と有する。
【0007】
本開示の他の特徴事項および利点は、例示的且つ非網羅的に与えられている以下の説明及び添付図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る衝撃吸収構造体を示す正面図である。
【
図2】
図1に示した衝撃吸収構造体に図示上方向から加えられた荷重と衝撃吸収構造体の変位量との関係を表す荷重変位曲線を示す図である。
【
図3】
図2に示した荷重変位曲線の特徴的な段階における衝撃吸収構造体の変形状態を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る衝撃吸収構造体を含むバンパー芯材の一例を示す斜視図である。
【
図5】本開示の他の実施形態に係る衝撃吸収構造体を示す正面図である。
【
図6】本開示の他の実施形態に係る衝撃吸収構造体を示す正面図である。
【
図7】
図6に示した衝撃吸収構造体に図示上方向から加えられた荷重と衝撃吸収構造体の変位量との関係を表す荷重変位曲線を示す図である。
【
図8】
図7に示した荷重変位曲線の特徴的な段階における衝撃吸収構造体の変形状態を示す図である。
【
図9】本開示の他の実施形態に係る衝撃吸収構造体を示す正面図である。
【
図10】本開示の他の実施形態に係る衝撃吸収構造体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
最初に、本開示の一実施形態に係る衝撃吸収構造体100の構成について説明する。
図1は本開示の一実施形態に係る衝撃吸収構造体を示す正面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の衝撃吸収構造体100は、互いに間隔をおいて配置される第1及び第2の支持部110,120と、それらの第1及び第2の支持部110,120の間に設けられた第1及び第2の変形部130,140とを有している。衝撃吸収構造体100は、これらの部材110~140によって1つのユニットを成している。なお、
図1には衝撃吸収構造体100の正面に現われる各部材110~140の断面形状が模式的に示されており、これらの部材110~140は、厚みを有していると共に、
図1の紙面方向奥側に奥行を有している。
【0012】
第1及び第2の変形部130,140は、それぞれ、第1の直線状梁部(第1の梁部)132,142と、第2の直線状梁部(第2の梁部)134,144と、第1の直線状梁部132,142と第2の直線状梁部134,144との間にそれぞれ設けられた第1及び第2の円弧状梁部(第3の梁部)136,146とを有している。第1の直線状梁部132,142は、それぞれの一方の端部が第1の固定部(第1の対応接続部)133,143を介して第1の支持部110に固定され、第1の支持部110から離れるに連れて互いの間隔が拡がるように延びている。第2の直線状梁部134,144も同様に、それぞれの一方の端部が第2の固定部(第2の対応接続部)135,145を介して第2の支持部120に固定され、第2の支持部120から離れるに連れて互いの間隔が拡がるように延びている。第1及び第2の円弧状梁部136,146は、円弧の凸側が互いに対向するように配置されている。このように、第1及び第2の変形部130,140は互いに鏡像となるように配置されている。
【0013】
第1及び第2の変形部130,140は、より詳細には、以下の通りである。第1及び第2の変形部130,140は、
図1の左右方向に並んで配置されている。第1の変形部130において、第1及び第2の直線状梁部132,134は、第1及び第2の固定部133,135から離れるに連れて、第1及び第2の固定部133,135を通る対応直線L1(
図1の一点鎖線参照)に対して同一側(
図1の左側)に傾斜しながら延びており、第1の円弧状梁部136は、第1及び第2の直線状梁部132,134の第1及び第2の固定部133,135とは反対側の端部に接続され且つ対応直線L1に接近する側(
図1の右側)に凸の円弧状に延びている。第2の変形部140において、第1及び第2の直線状梁部142,144は、第1及び第2の固定部143,145から離れるに連れて、第1及び第2の固定部143,145を通る対応直線L2(
図1の二点鎖線参照)に対して同一側(
図1の右側)に傾斜しながら延びており、第2の円弧状梁部146は、第1及び第2の直線状梁部142,144の第1及び第2の固定部143,145とは反対側の端部に接続され且つ対応直線L2に接近する側(
図1の左側)に凸の円弧状に延びている。対応直線L1,L2は、互いに平行である。第1の変形部130の第1及び第2の直線状梁部132,134と第2の変形部140の第1及び第2の直線状梁部142,144とは、何れも、長さが同一で且つ対応直線L1,L2に対する傾きが同一の直線状に延びている。第1及び第2の円弧状梁部136,146は、曲率が同一の円弧状に延びている。なお、第1及び第2の円弧状梁部136,146は、曲線状であれば、円弧状に限定されるものではなく、例えば、楕円弧状やサイン波状などあってもよい。
【0014】
各々の変形部130,140において、第1の直線状梁部132,142と、第2の直線状梁部134,144と、第1の直線状梁部132,142と第2の直線状梁部134,144との間の第1及び第2の円弧状梁部136,146とは一体に成形されていることが好ましく、さらには、各々の変形部130,140は、第1及び第2の支持部110,120とも一体に成形されていることが好ましい。本実施形態の衝撃吸収構造体100は、例えば、樹脂材料の射出成形、ブロー成形、押出し成形、3D印刷や、金属材料の鋳造、鍛造、プレス、切削、押出し成形、3D印刷などにより一体成形された一体成形部材として構成されうる。あるいは、本実施形態の衝撃吸収構造体100は、各々の変形部130,140における各梁部同士が接着剤、溶接、ボルト留めやリベット留め等の任意の締結手段によって接合又は締結されていてもよく、さらには、各々の変形部130,140と第1及び第2の支持部110,120とが同様の手段によって接合又は締結されていてもよい。
【0015】
図2は、
図1に示した衝撃吸収構造体100に図示上方向から加えられた荷重(衝撃吸収構造体100の反力)と衝撃吸収構造体100の変位量(第1、第2の支持部110,120間の距離の変位量)との関係を表す荷重変位曲線を示す図である。
図3は、
図2に示した荷重変位曲線の特徴的な段階における衝撃吸収構造体100の変形状態を示す図である。
【0016】
ここで、本実施形態の衝撃吸収構造体100の具体的な実施例について説明する。本実施例では、一例として、衝撃吸収構造体100の各構成を以下の要件に従って構成した。
(材料)
・ポリカーボネート
(寸法)
・構造体100全体の寸法:横(図示左右方向)33.4mm、奥行き(図示紙面方向)150mm、高さ(図示上下方向)80mm
・各部材110~140の厚み:2.5mm
・直線状梁部132,134;142,144の長さ:29.1mm
・円弧状梁136,146の半径・円弧長:半径13.8mm、円弧長30.8mm
・第1の支持部110との連接部における第1の直線状梁部132,142同士の間隔(各々の梁部の中心の間の距離):6mm
・第2の支持部120との連接部における第2の直線状梁部134,144同士の間隔(各々の梁部の中心の間の距離):6mm
【0017】
図2及び
図3は、上記要件に従って構成された衝撃吸収構造体100に対して図示上方向から荷重を加えたときの衝撃吸収構造体100の荷重(反力)と図示上下方向における変位量とをシミュレーションした結果である。シミュレーションの結果、発明者らは、衝撃吸収構造体100が以下の第1段階、第2段階の順に変形することを確認した。
【0018】
衝撃吸収構造体100の第1段階の変形では、
図3(A)~
図3(c)に示すように、第1の直線状梁部132,142、第2の直線状梁部134,144、第1及び第2の円弧状梁部136,146の変形により、第1の直線状梁部132,142および第2の直線状梁部134,144の対応直線L1,L2に対する傾斜角が徐々に増加しながら第1及び第2の円弧状梁部136,146の曲率が徐々に小さくなり、第1の直線状梁部132,142のそれぞれの一部が第1の支持部110に当接すると共に第2の直線状梁部134,144のそれぞれの一部が第2の支持部120に当接する。この第1段階の変形において、
図2に示すように、変位量が0mm~略10mmの領域では、変位量の増加に伴って荷重(反力)と変位量とが略線形性を持って徐々に増加し、変位量が略10mm~42mmの領域では、変位量が増加しても荷重が1800N~2500N程度で推移する。
【0019】
衝撃吸収構造体100の第2段階の変形では、
図3(C)~
図3(E)に示すように、第1の直線状梁部132,142のそれぞれの一部が第1の支持部110に当接すると共に第2の直線状梁部134,144のそれぞれの一部が第2の支持部120に当接した状態で、第1及び第2の円弧状梁部136,146の変形により、第1及び第2の円弧状梁部136,146の曲率が徐々に大きくなる。この第2段階の変形において、
図2に示すように、変位量が略42mm~略50mmの領域では、変位量の増加に伴って荷重(反力)と変位量とが略線形性を持って徐々に増加し、変位量が略50mm~略60mmの領域では、変位量が増加しても荷重が略5500N~6000N程度で推移する。
【0020】
なお、衝撃吸収構造体100の変形がさらに進行してそれ以上変形しなくなるいわゆる底付き状態になると、変位量は増大せずに荷重のみが増大する。
【0021】
このように、本実施形態の衝撃吸収構造体100によれば、荷重に対する反力が比較的低い第1の反力帯域に略維持された状態で変位する第1の変位領域(
図2では、略10mm~略42mmの領域)と、荷重に対する反力が比較的高い第2の反力帯域に略維持された状態で変位する第2の変位領域(
図2では、略50mm~略60mmの領域)との2段階の変形領域を有する荷重変位特性がもたらされる。このため、第1の変位領域では、反力を抑えつつ、第2の変位領域では、衝突エネルギーをより多く吸収することができる。即ち、衝突初期に生じる反力を抑えつつ、吸収可能な衝突エネルギー量をより多く確保することができる。したがって、衝撃吸収構造体100が車両のバンパー芯材に用いられる場合、第1の変位領域では、反力が比較的小さいため歩行者へ与える衝撃を抑えることができ、第2の変位領域では、車両の衝突エネルギーをより多く吸収することができる。この結果、車両が人に衝突した場合の人の衝突安全性をより高めることと、衝突エネルギーを吸収して車両や車両内の乗員をより保護することとの両立を図ることが可能となる。
【0022】
図4は、本実施形態の衝撃吸収構造体100を含むバンパー芯材200の一例を示す斜視図である。
【0023】
図4に示すように、バンパー芯材200は、本実施形態の衝撃吸収構造体100を一列に並列に配列した構成を有している。バンパー芯材200は第1の側面部210と第2の側面部220とを有しており、これらは衝撃吸収構造体100の第1及び第2の支持部110,120を兼ねている。このように構成されたバンパー芯材200を車両のバンパー裏側に配置しておくことにより、上述したように、車両が人に衝突した場合の人の衝突安全性を高めるとともに、衝突エネルギーを吸収して車両や車両内の乗員を保護することができる。
【0024】
上述した実施形態では、
図1に示した衝撃吸収構造体100のように、図示左側から第1、第2の変形部130,140の順に並んで配置されるものとしたが、これに限定されない。例えば、
図5や
図6に示す衝撃吸収構造体100B,100Cのように構成してもよい。
【0025】
図5に示す衝撃球種構造体100Bは、
図1に示した衝撃吸収構造体100に対して、第1及び第2の変形部130,140の図示左右方向における配置が入れ替えられた点で、衝撃吸収構造体100とは異なる。即ち、衝撃吸収構造体100Bでは、図示左側から第2、第1の変形部140,130の順に並んで配置される。衝撃吸収構造体100と衝撃吸収構造体100Bとは、図示左右方向における配置が入れ替えられた点を除いて互いに同一であるため、衝撃吸収構造体100Bは、衝撃吸収構造体100と同様の効果を奏することができる。
【0026】
図6に示す衝撃吸収構造体100Cは、
図1に示した衝撃吸収構造体100に対して、第1の変形部130が第2の変形部140に置き換えられた点で、衝撃吸収構造体100とは異なる。即ち、衝撃吸収構造体100Cでは、2つの第2の変形部140が図示左右方向に並んで配置されている。なお、衝撃吸収構造体100Cを裏面から見ると、2つの第1の変形部130が図示左右方向に並んで配置されていると言える。
【0027】
図7は、
図6に示した衝撃吸収構造体100Cに図示上方向から加えられた荷重と衝撃吸収構造体100Cの変位量との関係を表す荷重変位曲線を示す図である。
図8は、
図7に示した荷重変位曲線の特徴的な段階における衝撃吸収構造体100Cの変形状態を示す図である。実施形態では、一例として、衝撃吸収構造体200Bを、上述の衝撃吸収構造体100と同一の要件に従って構成した。
【0028】
図7及び
図8は、衝撃吸収構造体100と同一の要件に従って構成された衝撃吸収構造体100Cに対して図示上方向から荷重を加えたときの衝撃吸収構造体100Cの荷重(反力)と図示上下方向における変位量とをシミュレーションした結果である。
図2と
図7とを比較すると共に
図3と
図8とを比較すると、衝撃吸収構造体100に対するシミュレーション結果における第1、第2段階と、衝撃吸収構造体100Cに対するシミュレーション結果における第1~第4、第2段階と、が互いに対応しており、
図3(A)~
図3(E)と
図8(A)~
図8(E)とが互いに対応していることが分かる。したがって、
図6に示した衝撃吸収構造体100Cでも、
図1に示した衝撃吸収構造体100と同様の効果を奏することができる。
【0029】
衝撃吸収構造体100Cでは、第2の変形部140(裏面から見ると第1の変形部130)を2つ備えるものとしたが、3つ以上備えてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、
図1や
図5に示した衝撃吸収構造体100,100Bのように、1つの第1の変形部130と1つの第2の変形部140とが互いに鏡像となるように配置されるものとしたが、これに限定されない。例えば、
図9に示す衝撃吸収構造体100Dのように、複数(
図9では3つ)の第1の変形部130とそれと同数の第2の変形部140とが互いに鏡像となるように配置されてもよい。また、第1の変形部130の数と第2の変形部140の数とが異なってもよい。
【0031】
上述した実施形態では、
図1や
図5に示した衝撃吸収構造体100,100Bのように、第1及び第2の変形部130,140を1組備えるものとしたが、これに限定されない。例えば、衝撃吸収構造体100の第1及び第2の変形部130,140の複数組が並んで配置されてもよい(
図4参照)。また、衝撃吸収構造体100Bの第1及び第2の変形部130,140の複数組が並んで配置されてもよい。さらに、衝撃吸収構造体100の第1及び第2の変形部130,140のn1(n1≧1)組と、衝撃吸収構造体100Bの第1及び第2の変形部130,140のn2(n2≧1)組と、が任意の順序で並んで配置されてもよい。これらに、n3(n3≧1)個の第1の変形部130と、n4(n4≧1)個の第2の変形部140と、のうちの少なくとも一方が加えられてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、
図1や
図5、
図6、
図9に示した衝撃吸収構造体100,100B,100C,100Dなどのように、第1の変形部130および/または第2の変形部140が図示左右方向に並んで配置されるものとしたが、これに加えてまたは代えて、第1の変形部130および/または第2の変形部140が紙面を貫通する方向などに並んで配置されてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、
図1や
図5、
図6に示した衝撃吸収構造体100,100B,100Cなどのように、第1及び第2の支持部110,120は、それぞれ直線状(平板状)で互いの距離が一定であるものとしたが、これに限定されない。例えば、第1及び第2の支持部110,120は、曲線状であってもよい(
図4参照)。これに加えてまたは代えて、第1及び第2の支持部110,120の距離が一定でなくてもよい。例えば、
図10に示す衝撃吸収構造体100Eのように、第2の支持部120が段差を有することにより、第1及び第2の支持部110,120の距離が一定でないものとしてもよい。
【0034】
以上、開示の実施形態及び実施例を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態及び実施例は、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本開示の実施形態及び実施例の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得る。
【0035】
[付記]
[1]本開示の第1の衝撃吸収構造体は、互いに間隔をおいて配置される第1、第2の支持部と、それぞれ、対応する第1、第2の接続部である第1、第2の対応接続部を介して前記第1、第2の支持部に接続される複数の変形部と、を備える衝撃吸収構造体であって、前記複数の変形部は、それぞれ、前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて、前記第1の対応接続部と前記第2の対応接続部とを通る対応直線に対して互いに同一側に傾斜しながら直線状に延びる第1、第2の梁部と、前記第1、第2の梁部の前記第1、第2の対応接続部とは反対側の端部に接続され、前記対応直線に接近する側に凸の曲線状に延びる第3の梁部とを有することを要旨とする。
【0036】
本開示の第1の衝撃吸収構造体では、複数の変形部は、それぞれ、第1、第2の対応接続部から離間するにつれて、第1の対応接続部と第2の対応接続部とを通る対応直線に対して互いに同一側に傾斜しながら直線状に延びる第1、第2の梁部と、第1、第2の梁部の第1、第2の対応接続部とは反対側の端部に接続され、対応直線に接近する側に凸の曲線状に延びる第3の梁部とを有する。これにより、衝突初期に生じる反力を抑えつつ、吸収可能な衝突エネルギー量をより確保することができる。発明者らは、シミュレーションなどによりこのことを確認した。
【0037】
[2]本開示の第1の衝撃吸収構造体(上述した[1]に記載の衝撃吸収構造体)において、前記複数の変形部の少なくとも一部は、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して一方側に傾斜しながら延びる第1の変形部と、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して他方側に傾斜しながら延びる第2の変形部と、が任意の数ずつ交互に並ぶように配置されているものとしてもよい。
【0038】
[3]本開示の第1の衝撃吸収構造体(上述した[1]または[2]に記載の衝撃吸収構造体)において、前記複数の変形部は、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して一方側に傾斜しながら延びる第1の変形部と、前記第1、第2の梁部が前記第1、第2の対応接続部から離間するにつれて前記対応直線に対して他方側に傾斜しながら延びる第2の変形部と、を互いに同数有するものとしてもよい。
【0039】
[4]本開示の第1の衝撃吸収構造体(上述した[1]~[3]の何れかに記載の衝撃吸収構造体)において、前記複数の変形部は、それぞれ、前記第1、第2の支持部の少なくとも一方に前記対応直線に沿った方向の荷重が加えられたときに、前記第1、第2の支持部間の距離の変位量の増加に伴って、前記第1、第2の梁部のそれぞれの一部が前記第1、第2の支持部に当接するまで、前記第1、第2の梁部の前記対応直線に対する傾斜角が増加しながら前記第3の梁部の曲率が小さくなる第1段階、前記第1、第2の梁部のそれぞれの一部が前記第1、第2の支持部に当接した状態で前記第3の梁部の曲率が大きくなる第2段階、の順に変形するように構成されているものとしてもよい。
【0040】
[5]本開示の第1の衝撃吸収構造体(上述した[1]~[4]の何れかに記載の衝撃吸収構造体)において、前記衝撃吸収構造体は、前記第1、第2の支持部の少なくとも一方に前記対応直線に沿った方向の荷重が加えられたときに、第1反力帯域を維持しながら変位量が増加する第1変位領域と、前記第1反力帯域よりも大きい第2反力帯域を維持しながら前記変位量が増加する第2変位領域と、を呈するように構成されているものとしてもよい。
【0041】
[6]本開示の第1の衝撃吸収構造体(上述した[1]~[5]の何れかに記載の衝撃吸収構造体)において、前記衝撃吸収構造体は、一体成形されているものとしてもよい。
【0042】
[7]本開示のバンパー芯材は、本開示の第1の衝撃吸収構造体(上述した[1]~[6]の何れかに記載の衝撃吸収構造体)を備えることを要旨とする。したがって、本開示の第1の衝撃吸収構造体が奏する効果と同様の効果を奏することができる。
【0043】
[8]本開示の第2の衝撃吸収構造体は、第1方向に互いに間隔を置いて配置された第1及び第2の支持部と、前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に設けられた一対の変形部と、含み、前記一対の変形部は、前記第1の支持部から前記第1方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第1の直線状梁部と、前記第2の支持部から前記第1方向とは反対方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第2の直線状梁部と、前記一対の第1の直線状梁部と前記一対の第2の直線状梁部との間に設けられ、各々の円弧の凸が互いに向かい合うように配置された一対の円弧状梁部とを有することを要旨とする。
【0044】
本開示の第2の衝撃吸収構造体では、一対の変形部は、第1の支持部から第1方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第1の直線状梁部と、第2の支持部から第1方向とは反対方向に向かうに連れて互いの間隔が次第に拡がるように延びる一対の第2の直線状梁部と、一対の第1の直線状梁部と一対の第2の直線状梁部との間に設けられ、各々の円弧の凸が互いに向かい合うように配置された一対の円弧状梁部とを有する。これにより、衝突初期に生じる反力を抑えつつ、吸収可能な衝突エネルギー量をより十分に確保することができる。発明者らは、シミュレーションなどによりこのことを確認した。
【0045】
[9]本開示の第2の衝撃吸収構造体(上述した[8]に記載の衝撃吸収構造体)において、前記衝撃吸収構造体は、前記第1の支持部又は前記第2の支持部に前記第1方向に沿って荷重を加えた時に、第1の反力帯域を維持しながら変位する第1の変位領域と、前記第1の反力帯よりも大きい第2の反力帯域を維持しながら変位する第2の変位領域とをもたらすように構成されているものとしてもよい。
【0046】
[10]本開示の第2の衝撃吸収構造体(上述した[8]または[9]に記載の衝撃吸収構造体)において、前記衝撃吸収構造体は一体成形されているものとしてもよい。
【要約】 (修正有)
【課題】衝突初期に生じる反力を抑えつつ、吸収可能な衝突エネルギー量をより多く確保することを可能とする衝撃吸収構造体を提供すること。
【解決手段】衝撃吸収構造体は、互いに間隔をおいて配置される第1、第2の支持部と、それぞれ、対応する第1、第2の接続部である第1、第2の対応接続部を介して第1、第2の支持部に接続される複数の変形部とを備える。複数の変形部は、それぞれ、第1、第2の対応接続部から離間するにつれて第1の対応接続部と第2の対応接続部とを通る対応直線に対して互いに同一側に傾斜しながら直線状に延びる第1、第2の梁部と、第1、第2の梁部の第1、第2の対応接続部とは反対側の端部に接続され且つ対応直線に接近する側に凸の曲線状に延びる第3の梁部とを有する。
【選択図】
図1