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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】送風機取付部付き石綿除去作業用防護服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20240311BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20240311BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240311BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240311BHJP
   B01D 46/10 20060101ALI20240311BHJP
   A62B 17/00 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D31/02 C
A41D31/00 502E
B01D39/16 A
B01D39/16 E
B01D46/10 Z
A62B17/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023150616
(22)【出願日】2023-09-15
【審査請求日】2023-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517374591
【氏名又は名称】セーフラン安全用品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174171
【弁理士】
【氏名又は名称】原 慶多
(72)【発明者】
【氏名】熊 斌
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-028830(JP,A)
【文献】特開2022-054779(JP,A)
【文献】特開2022-008072(JP,A)
【文献】特開2017-150120(JP,A)
【文献】国際公開第2021/203068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002
A41D 31/02
A41D 31/00
B01D 39/16
B01D 46/10
A62B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面側胴体部の左右両側に設けられた外気導入部と、
背面側胴体部であって、前記外気導入部より上方に設けられた排気部と、
前記外気導入部の前記防護服内側に設けられ、着脱可能に送風機を取り付ける送風機取付部と、を備える送風機取付部付き石綿除去作業用防護服であって、
前記外気導入部は、ポリアクリロニトリル繊維及びポリオレフィン繊維を含む坪量150~250g/mの積層中間体と、ポリプロピレン繊維を含む坪量15~35g/mの外側層及び内側層と、を有するフィルタ部材を備え、
前記外気導入部、前記排気部及び前記送風機取付部を除いて、プラスチックフィルム層を有する生地を備え、
前記送風機取付部が、送風機を取り付けるための開口部を有する合成樹脂部材と、前記合成樹脂部材を取り付ける外枠と、を含み、
前記開口部は、略U字状の送風機第1係合部と、前記送風機第1係合部の上方の送風機第2係合部と、前記送風機第1係合部と前記送風機第2係合部との間に設けられた切欠部と、を備える、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服
【請求項2】
背面側胴体部の左右両側に設けられた外気導入部と、
正面側胴体部であって、前記外気導入部より上方に設けられた排気部と、
前記外気導入部の前記防護服内側に設けられ、着脱可能に送風機を取り付ける送風機取付部と、を備える送風機取付部付き石綿除去作業用防護服であって、
前記外気導入部は、ポリアクリロニトリル繊維及びポリオレフィン繊維を含む坪量150~250g/mの積層中間体と、ポリプロピレン繊維を含む坪量15~35g/mの外側層及び内側層と、を有するフィルタ部材を備え、
前記外気導入部、前記排気部及び前記送風機取付部を除いて、プラスチックフィルム層を有する生地を備え、
前記送風機取付部が、送風機を取り付けるための開口部を有する合成樹脂部材と、前記合成樹脂部材を取り付ける外枠と、を含み、
前記開口部は、略U字状の送風機第1係合部と、前記送風機第1係合部の上方の送風機第2係合部と、前記送風機第1係合部と前記送風機第2係合部との間に設けられた切欠部と、を備える、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服
【請求項3】
前記積層中間体と、前記外側層と、前記内側層とが、超音波接着によって接着されている、請求項1又は2に記載の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服。
【請求項4】
前記排気部がSMS不織布又は前記フィルタ部材である、請求項1又は2に記載の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服。
【請求項5】
前記排気部がSMS不織布又は前記フィルタ部材である、請求項3に記載の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石綿は、20世紀後半に建材や摩擦材等に広く使われてきた。しかし、石綿を吸入した労働者や一般人に対し、長い潜伏期間の後に肺がんや中皮腫といった重篤な健康障害を引き起こしていたため、現在では殆どの先進国が石綿の使用を禁止している。
【0003】
しかし、21世紀中頃までは既存の建築物の解体が進むことから、石綿含有建築物の解体等の作業に従事する労働者の石綿ばく露防止対策と一般環境への石綿飛散漏えいの防止対策は極めて重要な喫緊の課題となっている。
【0004】
そのため、厚生労働省及び環境省は、「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」の作成を行い、石綿除去作業に関する指針を示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】厚生労働省、環境省 「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」 令和3年3月(令和4年3月訂正事項反映) <https://www.env.go.jp/content/900396898.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載されている通り、身体表面、下着及び保護服の下に着用する作業衣への石綿の付着を防止する観点から、作業時にはJIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)同等品以上のものを使用するよう定められている。このような保護服は、頭部を含む全身を覆う形状となっており、保護服と呼吸用保護具の全面形面体、手袋、シューズカバーなどとの接合部は、テーピングを行う必要があるため、非常に密閉性が高い。このような保護服を着用した上で、非常に複雑かつ多岐に渡る作業を、長時間行うことは、作業員の大きな負担となっている。
【0007】
さらにこのような状況においては、夏の猛暑下での作業になると、熱中症の危険が非常に高くなる。また、暑さ等により、作業員の集中力が続かなくなり、特に石綿除去作業においては犯してはならない作業ミスが発生してしまう可能性もある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、過酷な作業を強いられる石綿除去作業においても、熱中症の危険性を軽減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服は、正面側胴体部の左右両側に設けられた外気導入部と、背面側胴体部であって、前記外気導入部より上方に設けられた排気部と、前記外気導入部の前記防護服内側に設けられ、着脱可能に送風機を取り付ける送風機取付部と、を備える送風機取付部付き石綿除去作業用防護服であって、前記外気導入部は、ポリアクリロニトリル繊維及びポリオレフィン繊維を含む坪量150~250g/mの積層中間体と、ポリプロピレン繊維を含む坪量15~35g/mの外側層及び内側層と、を有するフィルタ部材を備え、前記外気導入部、前記排気部及び前記送風機取付部を除いて、プラスチックフィルム層を有する生地を備える。
【0010】
本態様によれば、石綿繊維を保護服内に取り込むことがほとんどなく、外気を効率的に保護服内へ導入することができる。そして導入された外気は、排気部から排気される。これにより、作業員の熱中症の危険性を軽減することができる。
【0011】
また、本発明の他の一態様に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服は、背面側胴体部の左右両側に設けられた外気導入部と、正面側胴体部であって、前記外気導入部より上方に設けられた排気部と、前記外気導入部の前記防護服内側に設けられ、着脱可能に送風機を取り付ける送風機取付部と、を備える送風機取付部付き石綿除去作業用防護服であって、前記外気導入部は、ポリアクリロニトリル繊維及びポリオレフィン繊維を含む坪量150~250g/mの積層中間体と、ポリプロピレン繊維を含む坪量15~35g/mの外側層及び内側層と、を有するフィルタ部材を備え、前記外気導入部、前記排気部及び前記送風機取付部を除いて、プラスチックフィルム層を有する生地を備える。
【0012】
本態様によれば、石綿繊維が保護服内部に入り込むのを防ぐことができ、かつ、外気を効率的に保護服内へ導入することができる。そして導入された外気は、正面側胴体部の排気部から排気される。これにより、作業員の熱中症の危険性を軽減することができる。
【0013】
上記各態様の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服において、前記積層中間体と、前記外側層と、前記内側層とが、超音波接着によって接着されていてもよい。
【0014】
本態様によれば、石綿繊維が保護服内に取り込まれるのをより効率的に防ぎ、かつ、良好な通気性を有する外気導入部を設けることができる。
【0015】
上記各態様の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服において、前記排気部がSMS不織布又は前記フィルタ部材であってもよい。
【0016】
本態様によれば、良好な排気性を有し、かつ、排気部から石綿繊維が取り込まれる可能性を非常に低くすることができる。
【0017】
上記各態様の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服において、前記送風機取付部が、蓋付きの袋型収容部を備えていてもよい。
【0018】
本態様によれば、作業員が保護服を着脱する際に、送風機を取り付けることが容易になる。
【0019】
上記各態様の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服において、前記送風機取付部が、送風機を取り付けるための開口部を有する合成樹脂部材と、前記合成樹脂部材を取り付ける外枠と、を含み、前記開口部は、略U字状の送風機第1係合部と、前記送風機第1係合部の上方の送風機第2係合部と、前記送風機第1係合部と前記送風機第2係合部との間に設けられた切欠部と、を備えていてもよい。
【0020】
本態様によれば、作業員が送風機を取り付けることがさらに容易になり、かつ、送風機を安定して保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服によれば、過酷な作業を強いられる石綿除去作業においても、熱中症の危険性を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一の実施形態に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の(a)正面図及び(b)背面図である。
図2】本発明の第二の実施形態に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の(a)正面図及び(b)背面図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の外気導入部を拡大した正面拡大図である。
図4】本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられるフィルタ部材の一例に関する(a)超音波接着部分を示した概略正面図及び(b)概略断面図である。
図5】本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の一例である蓋付きの袋型収容部に送風機を収容している状態を示した(a)概略側面図及び(b)概略背面図である。
図6】本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の一例である蓋付きの袋型収容部に送風機を収容した後に蓋をしている状態を示した概略側面図である。
図7】本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の他の例を示す概略図である。
図8】本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる他の例の送風機取付部に(a)送風機を取り付ける流れを示す概略図及び(b)送風機が取り付けられた状態を示す概略図である。
図9】本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の他の例の変形例を示す概略図である。
図10】本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる他の例の送風機取付部に送風機が取り付けられた状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の(a)正面図及び(b)背面図である。図1(a)に示すように、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pは、正面側胴体部の左右両側に外気導入部1を備え、また、(b)に示すように、背面側胴体部の外気導入部1より上方に排気部2を備える。
【0025】
送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pは、「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」 令和3年3月(令和4年3月訂正事項反映)のP.253に記載されているように、負圧隔離内部などの石綿除去作業場所では、JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)の要件を満たすものである。
【0026】
送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの材質としては、JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)の要件を満たしていれば特に限定されないが、例えば、プラスチックフィルム層、SMS不織布層及びポリプロピレンスパンボンド層からなる群より選ばれる1層又は2層以上の構造が考えられる。これらのうち、石綿繊維の取り込みをできるだけ防ぐという観点から、プラスチックフィルム層及びSMS不織布層の2層構造であることが好ましい。当該材質は、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pにおいて、外気導入部、前記排気部及び前記送風機取付部を除く部分に含まれる。
【0027】
プラスチックフィルム層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらのうち、コストを抑える観点から、ポリエチレンが好ましく、石綿繊維の取り込み防止性能の観点から、高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0028】
SMS不織布層の材質としては、例えば、ポリプロピレンスパンボンド層、ポリプロピレンメルトブローン層及びポリプロピレンスパンボンド層の3層構造が挙げられる。
【0029】
外気導入部1は、石綿繊維が送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に入り込むのを防ぎ、かつ、外気を送風機取付部付き石綿除去作業用防護服P内に導入するためのものである。外気導入部1は、通常、正面側胴体部に設けられるが、胴体部の側面部分(わき腹部分)に設けられていてもよい。
【0030】
排気部2は、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服P内に導入された外気を排気するためのものである。排気部2は、体温によって温められた防護服内の空気を効果的に排出する観点から、外気導入部1より上方かつ外気導入部1の逆面側に設けられる。排気部2の材質としては、例えば、SMS不織布、外気導入部1と同じフィルタが挙げられる。排気部2の面積としては、少なくとも外気導入部1より大きいことが好ましい。
【0031】
図2は、本発明の第二の実施形態に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の(a)正面図及び(b)背面図である。図2(b)に示すように、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服P1は、背面側胴体部の左右両側に外気導入部100を備え、また、図2(a)に示すように、正面側胴体部の外気導入部100より上方に排気部200を備える。この態様においても、外気導入部100は、胴体部の側面部分(わき腹部分)に設けられていてもよい。
【0032】
図3は、本発明の第一の実施形態に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の外気導入部を拡大した正面拡大図である。図3に示すように、外気導入部1は、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pに設けた開口部をフィルタ部材10で密閉することにより、形成される。外気導入部1における送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側には、送風機取付部に送風機Fが着脱可能に取り付けられており、送風機Fが作動することにより、フィルタ部材10を介して外気が送風機取付部付き石綿除去作業用防護服P内に取り込まれる。
【0033】
図4は、本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられるフィルタ部材の一例に関する(a)超音波接着部分を示した概略正面図及び(b)概略断面図である。フィルタ部材10は、石綿除去作業時に石綿繊維が送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に侵入しないような構造とする必要がある。図4(b)に示すように、フィルタ部材10は、ポリアクリロニトリル繊維及びポリオレフィン繊維を含む積層中間体L2とポリプロピレン繊維を含む外側層L1及び内側層L3を有する。
【0034】
積層中間体L2の坪量としては、150~250g/mであり、好ましくは、160~240g/mである。また、外側層L1の坪量、及び、内側層L3の坪量としては、15~35g/mであり、好ましくは、20~30g/mである。
【0035】
積層中間体L2に関する製造方法としては、公知の方法で製造することができ、そのような方法としては、例えば、特開平7-256024、特開2000-189732、特開2002-249963等に記載されている方法が挙げられる。ポリオレフィン繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらのうち、通気性を保ち、かつ、効果的に石綿繊維の侵入を防ぐ観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0036】
外側層L1及び内側層L3の製造方法としては、公知の方法で製造することができる。例えば、一般的に製造されている、ポリプロピレンを含む不織布を使用したマスクと同様に、ポリプロピレン繊維を不織布としたものを用いることができる。
【0037】
フィルタ部材10の製造方法として、例えば、スパンボンド、超音波接着等が挙げられる。これらのうち、本件の場合は、超音波接着によって製造することが好ましい。L1、L2及びL3を積層し、図4(a)に示すように、外枠接着部E1及び複数の枠内接着部E2を超音波接着することにより、フィルタ部材10を製造する。
【0038】
フィルタ部材10は、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pに設けられた開口部を密閉し、開口部を完全に塞ぐ形で取り付けられる。取付方法としては、例えば、両面テープ、縫合等の方法が挙げられる。開口部の大きさはフィルタ部材10よりやや小さくすることが好ましく、通気部12と同様の大きさとすることがより好ましい。
【0039】
図5は、本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の一例である蓋付きの袋型収容部に送風機を収容している状態を示した(a)概略側面図及び(b)概略背面図である。送風部取付部の形態としては、例えば、袋型収容部に収容するもの、開口部を含む合成樹脂部材に係合させるもの、U字型係合部に係合させるもの等が挙げられる。図5(a)に示すように、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に設けられた袋型収容部3に送風機Fが収容される。袋型収容部3には、通気部12から取り込まれた外気が送風機Fを通って送風機取付部付き石綿除去作業用防護服P内部に導入されるための開口部31が設けられている。また、フィルタ部材10は、接合部11において送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pに取り付けられている。袋型収容部3の端部には、接着用部材A2が設けられており、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pには接着用部材A1が設けられている。
【0040】
図6は、本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の一例である蓋付きの袋型収容部に送風機を収容した後に蓋をしている状態を示した概略側面図である。図6に示すように、接着用部材A1と接着用部材A2が接着することにより、送風機Fを安定的に保持することができる。接着用部材A1と接着用部材A2としては、例えば、面ファスナー、ジッパー、ボタン等が挙げられる。これらのうち、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pを迅速に装着する観点から、面ファスナーが好ましい。
【0041】
図7は、本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の他の例を示す概略図である。図7に示すように、送風機取付部4は、外枠41及び合成樹脂部材42を備える。送風機取付部4は、フィルタ部材10とほぼ同じ大きさであり、袋型収容部3と同様に送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に取り付けられ、固定される。合成樹脂部材42は、外枠41と同じかやや大きさが小さく、外枠に取り付けられて、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pに固定されるときは、外枠41より送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に位置するように配置される。
【0042】
外枠41を送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pに固定する方法は、特に限定されないが、例えば、両面テープ等により接着させることが考えられる。
【0043】
合成樹脂部材42の材質としては、例えば、プラスチック、ゴム等が挙げられる。プラスチックとしては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。合成樹脂部材42は、開口部43、第1係合部44、第2係合部45、切欠部46、突起部47aを備える。
【0044】
図8は、本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる他の例の送風機取付部に(a)送風機を取り付ける流れを示す概略図及び(b)送風機が取り付けられた状態を示す概略図である。送風機取付部4に送風機Fを取り付ける流れについて、以下に説明する。
【0045】
まず、送風機Fのフランジ部F1を切欠部46に通すようにして第1係合部44と係合するまで挿入する。その後、第2係合部45を送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に向かって湾曲させ、図8(b)に示すようにフランジ部F1の上部と係合させて、送風機Fを送風機取付部4に固定する。
【0046】
図9は、本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる送風機取付部の他の例の変形例を示す概略図である。図9に示すように、合成樹脂部材42には折曲線47bが設けられており、突起部47aが折曲線47bを軸として回動可能となっている。合成樹脂部材42の材質によっては、折曲線47bを設けることで、送風機Fをよりスムーズに取り付けることが可能となる。
【0047】
図10は、本発明の送風機取付部付き石綿除去作業用防護服に用いられる他の例の送風機取付部に送風機が取り付けられた状態を示す概略側面図である。送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pは、図10では示されていないが、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの外側にフィルタ部材10が取り付けられ、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に送風機取付部4が設けられている。送風機Fは、フランジ部F1が合成樹脂部材42と係合するようにしてさらに内側に取り付けられる。このような構成とすることにより、作業終了毎に破棄しなければならない送風機取付部付き石綿除去作業用防護服について、何度も繰り返し使用する送風機の着脱が容易となり、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の迅速な装着が可能となる。
【0048】
なお、図示していないが、作業の継続性及び保護服の脱着の容易性の観点から、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの内側に、電池等の電源部を取り付けるための電源部取付部を設けることが好ましい。
【実施例
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0050】
(フィルタ部材の積層中間体)
フィルタ部材の積層中間体は、ポリアクリロニトリル繊維及びポリオレフィン繊維を含んでおり、ポリアクリロニトリル繊維とポリオレフィン繊維を混合したフィルタ部材又は不織布は、従来より知られている。例えば、特開平7-256024には、これらの混合物を効果のためのニードリングを行い、熱で活性化させる製法により静電効果を有する空気濾過材が示されている。また、特開2000-189732には、プレフィルターとして、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維をニードルパンチを施して摩擦帯電型不織布が調製されている。さらに、特開2002-249963には、ポリオレフィン系繊維にリン系添加剤とイオウ系添加剤を含有させた帯電不織布が開示されている。
【0051】
<実施例>
フィルタ部材として、まずポリプロピレン繊維とポリアクリロニトリル繊維を特開2002-249963の実施例の記載に基づき混合し、ニードルパンチ法により、坪量80g/mの不織布を作成した。この不織布を2枚重ねて坪量160g/mの積層中間体とし、さらに、外側層としての坪量25g/mのポリプロピレンスパンボンド不織布、及び、内側層としての坪量20g/mのポリプロピレンスパンボンド不織布と重ね合わせ、図3で示すように、超音波接着によって、本発明に係るフィルタ部材を作製した。
【0052】
<比較例1>
内側層としての坪量20g/mのポリプロピレンスパンボンド不織布、積層中間体としての坪量25g/mのポリプロピレンメルトブローン不織布及び外側層としての坪量25g/mポリプロピレンスパンボンド不織布を重ね合わせて、SMS不織布を得た。
【0053】
(通気性試験)
JIS L 1913に規定されている「一般不織布試験方法A法」に準じて、実施例及び比較例1について通気性試験を行った。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示されているように、比較例1と比較して、実施例は通気性が約3.5倍であり、外気導入部1に用いた場合、外気を導入する性能が非常に高かった。
【0056】
(圧力損失試験)
JIS T 9001に規定されている「微小粒子捕集効率試験」に準じて、実施例について圧力損失試験を行った。その結果、圧力損失の値は、10.8Pa/cmとなった。JIS T 9001に記載されている医療用マスクの品質基準に係る圧力損失及び一般用マスクの品質基準に係る圧力損失は、いずれも60Pa/cm未満となっていることから、実施例に係るフィルタ部材は、圧力損失の値が非常に小さく、外気を導入しやすいことがわかった。
【0057】
(微小粒子捕集効率試験)
JIS T 9001に規定されている「微小粒子捕集効率試験」に準じて、実施例について微小粒子捕集効率試験を行った。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、実施例に係る微小粒子捕集効率に平均値は99.6%となっている。当該試験では粒径0.1μmのポリスチレンラテックス粒子が用いられているが、石綿繊維は、最小幅が約1μm、長さが最短5μmであるから、実施例に係るフィルタ部材10は石綿繊維をほとんど通さないことが示された。
【0060】
(化学防護服としての性能についての要求事項)
JIS T 8115は、化学防護服に関する規格である。本件発明に関する送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pは、タイプ5の浮遊固体粉じん防護用密閉服の要件を満たす必要がある。そして、JIS T 8115には、浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)は、JIS T 8124-2で試験したとき、JIS T 8124-1の性能要求事項に適合しなければならない旨記載されている。
【0061】
JIS T 8124-1は、固体粉じんに対する防護服-第1部:浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5化学防護服)の性能要求事項に関する規格である。浮遊固体粉じん防護用密閉服の材料は、引裂強さ、突刺強さ、摩耗強さ及び屈曲強さの各特性をJIS T 8115に規定する方法で試験し、JIS T 8115に記載されている各特性に関する分類のクラス1に適合しなければならない。そのため、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの材料については、クラス1に適合しているものを使用した。
【0062】
浮遊固体粉じん防護用密閉服の完成品については、JIS T 8124-2によって、微粒子エアロゾルの服内部への漏れ率を試験しなければならない。具体的には、個別漏れ率(Ljmn,82/90)及び全漏れ率(LS,8/10)について、個別漏れ率が30%以下、全漏れ率が15%以下でなければならない。
【0063】
(送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの微粒子エアロゾル漏れ率試験)
微粒子エアロゾル漏れ率試験について、以下の試験条件に基づき実施した。
温度:20℃
湿度:70%RH
試験者数:5人が各2着試験
微粒子エアロゾル(NaCl粒子):
粒子濃度 12±6mg/m 濃度変動幅 平均値±15%以内
粒子濃度測定器:
炎光光度計漏れ率試験装置 Model No.1300(SFP社製)
温湿度測定器:SEIKO SQ763
サンプリング位置:既定の3箇所(ひざの側面、ウエストの背中、右胸)
サンプリング流量:2±0.5L/min以内の一定流量
動作:
1.静止起立
2.時速5kmでの歩行
3.1分間に5回の屈伸運動
動作時間:サンプリング位置及び動作ごとに3分間
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
表3に示すように、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pの全漏れ率の平均値は9.7%となった。また、表4に示すように、JIS T 8124の個別漏れ率(Ljmn,82/90)は15.5%、全漏れ率(LS,8/10)は11.0%となり、性能要求事項を満たしていることがわかった。そのため、送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pは、石綿除去作業の現場で問題なく使用することができる。
【0067】
(送風機取付部付き石綿除去作業用防護服着用時の湿球黒球温度(WBGT)試験)
日本生気象学会の「日常生活における熱中症予防 第3版(2023年)」 <https://seikishou.jp/cms/wp-content/uploads/008ab7fdbb0b958314827de9a7b8c74c.pdf>に記載されているように、熱中症予防のための指標として湿球黒球温度(WBGT)が利用されている。この指針では、WBGTの値によって、熱中症の危険度を「危険」、「厳重警戒」、「警戒」及び「注意」の4段階で示している。具体的には、室内用のWBGT簡易推定図 Ver.4を用いて判断することができる。本試験では、本発明に用いられるフィルタ部材を取り付けた送風機取付部付き石綿除去作業用防護服と、比較例1のフィルタ部材を取り付けた送風機取付部付き石綿除去作業用防護服とを使用して熱中症の危険度を確認した。
【0068】
〔測定条件〕
室内温度27.5℃、湿度65%
送風機:FAN2200(株式会社空調服)
着用者:40代男性
【0069】
まず、着用後、送風機がOFFの状態で9分経過時に送風機取付部付き石綿除去作業用防護服の胴体部を測定したところ、実施例のフィルタ部材を使用したもの、比較例1のフィルタ部材を使用したもの共に、温度29.1℃、湿度87%となった。
【0070】
その後、送風機をONにすると、実施例のフィルタ部材を使用したものは、5分後に温度28.6℃、湿度64%となったのに対し、比較例1のフィルタ部材を使用したものは、5分後に温度28.6℃、湿度90%となった。
【0071】
これらを室内用のWBGT簡易推定図 Ver.4に当てはめると、比較例1は「厳重警戒」のままである一方、実施例は「厳重警戒」から「警戒」に改善された。そのため、本発明に係る送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pは、作業員の熱中症予防に非常に効果があることがわかる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1,100 外気導入部
2,200 排気部
3 袋型収容部
4 送風機取付部
10 フィルタ部材
11 接合部
12 通気部
31 開口部
41 外枠
42 合成樹脂部材
43 開口部
44 第1係合部
45 第2係合部
46 切欠部
47a 突起部
47b 折曲線
A1,A2 接着用部材
F 送風機
F2 フランジ部
L1 外側層
L2 積層中間体
L3 内側層
P,P1 送風機取付部付き石綿除去作業用防護服
【要約】
【課題】過酷な作業を強いられる石綿除去作業においても、熱中症の危険性を軽減することができる送風機取付部付き石綿除去作業用防護服を提供する。
【解決手段】送風機取付部付き石綿除去作業用防護服Pは、外気導入部1と、排気部2と、外気導入部1の防護服内側に設けられ、着脱可能に送風機を取り付ける送風機取付部10と、を備えており、外気導入部1は、ポリアクリロニトリル繊維及びポリオレフィン繊維を含む坪量150~250g/mの積層中間体と、ポリプロピレン繊維を含む坪量15~35g/mの外側層及び内側層と、を有するフィルタ部材を備え、外気導入部1、排気部2及び送風機取付部3を除いて、プラスチックフィルム層を含む生地を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
図9
図10