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特許7451010キャリア分解式光ホールシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】キャリア分解式光ホールシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240311BHJP
   H10N 52/01 20230101ALI20240311BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01L21/66 L
H10N52/01
G01R33/07
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021556267
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 IB2020052428
(87)【国際公開番号】W WO2020208443
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】16/382,937
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】グナワン、オキ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、ワーン
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0095147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0223733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0144466(US,A1)
【文献】Oki Gunawan et al.,Carrier-Resolved Photo Hall Measurement in World-Record-Quality Perovskite and Kesterite Solar Absorbers,arXiv,米国,Cornell University,2018年,1802.07910,pp.1-13, Supplimentaly Materials pp.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H10N 52/01
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定チャンバと、
前記測定チャンバに結合された光学モジュールであって、
光源と、
前記光源からの光を変調し、前記光源からの変調光で被検試料を照射するように動作可能なフィルタであって、前記フィルタは、前記光源と前記被検試料との間の光路に沿って配置される、一定の回転下で単一高調波振動を生成するように動作可能な高調波変調器フィルタである、フィルタ
を含む光学モジュールと、
前記変調光に基づいて、前記被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを示す1つ又は複数のホール測定値を出力するホール測定モジュールと
を含む、測定システム。
【請求項2】
前記ホール測定モジュールに結合され、前記第1のキャリア移動度と前記第2のキャリア移動度と前記光キャリア密度とを示す出力を生成するように動作可能な機器モジュールをさらに含む、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記機器モジュールは、前記ホール測定モジュールからの前記ホール測定値の質を判断するように動作可能なディープニューラルネットワークを含む、請求項に記載の測定システム。
【請求項4】
前記機器モジュールは、前記ホール測定モジュールからの前記ホール測定値に基づいて前記変調光の強度の関数として導電率及びホール係数を求めるように動作可能である、請求項又は請求項のいずれかに記載の測定システム。
【請求項5】
前記機器モジュールは、前記ホール測定モジュールからの前記ホール測定値に基づいて前記変調光の振動の関数として導電率及びホール係数を求めるように動作可能である、請求項又は請求項のいずれかに記載の測定システム。
【請求項6】
測定チャンバ内に準備された被検試料を照射することと、
前記被検試料の照射を変調することであって、前記変調することは、前記照射の光強度を選択された光強度の周りで振動させることを含む、変調することと、
前記被検試料の前記変調された照射に基づいて、前記被検試料のホール測定値を測定することと、
前記ホール測定値及び前記変調された照射に基づいて、前記被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを求めることと
を含む、方法。
【請求項7】
前記被検試料の照射を変調することは、前記照射の強度を第1の強度から第2の強度に変調することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ホール測定値を測定することは、前記被検試料の導電率及びホール係数を前記照射の強度の関数として測定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ホール測定値を測定することは、前記被検試料の導電率及びホール係数を前記光強度の振動の関数として測定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のキャリア移動度と前記第2のキャリア移動度と前記光キャリア密度とを求めることは、
ディープニューラルネットワークによって、前記ホール測定値の質を分類することと、
前記ホール測定値の質の特定の尺度に基づいて、前記第1のキャリア移動度と前記第2のキャリア移動度と前記光キャリア密度とを計算することと
をさらに含む、請求項から請求項までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のキャリア移動度と前記第2のキャリア移動度と前記光キャリア密度とを求めることは、
前記ホール測定値から、導電率の変化に対するホール係数の変化の傾きを計算することと、
導電率の変化に対するホール係数の変化の前記傾きに基づいて、前記第1のキャリア移動度と前記第2のキャリア移動度と前記光キャリア密度とを計算することと
をさらに含む、請求項から請求項までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータ可読ストレージ媒体上に格納され、デジタルコンピュータの内部メモリにロード可能なコンピュータ・プログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるとき、請求項から請求項11までのいずれか1項に記載の方法を実行するためのソフトウェアコード部分を含む、コンピュータ・プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータ・プログラムが格納されたコンピュータ可読ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホール効果測定に関し、より具体的には、平行双極子線(parallel dipole line)ホールシステムを用いるものなど、AC場ホールシステムを使用したキャリア分解式(carrier-resolved)光ホールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホール効果測定は、電子材料及び電子デバイスの最も重要な測定方法の1つである。半導体における多数キャリア及び少数キャリアのタイプ、密度及び移動度などの特性は、光電子デバイス及び太陽電池などのデバイスの動作を支配するパラメータである。「古典的ホール(Classic Hall)」測定では、多数キャリアに関する情報しか得られない。少数キャリアを測定する方法は非常に困難で、不十分である。したがって、当技術分野では、前述の問題に対処する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
以下では、本発明の1つ又は複数の実施形態の基本的な理解を提供するための概要を提示する。この概要は、鍵となる又は重要な要素を特定したり、又は特定の実施形態の範囲又はいずれかの特許請求の範囲を画定したりすることを意図したものではない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前段階として、概念を簡略化して提示することである。
【0004】
第1の態様から見ると、本発明は、ホール測定を容易する装置であって、この装置は、測定チャンバと、測定チャンバに結合された光学モジュールであって、光源と、光源からの光を変調し、光源からの変調光で被検試料を照射するフィルタとを含む光学モジュールと、変調光に基づいて、被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを示す1つ又は複数のホール測定値を出力するホール測定モジュールとを含む、装置を提供する。
【0005】
さらなる態様から見ると、本発明は、測定チャンバ内に準備された被検試料を照射することと、被検試料の照射を変調することと、被検試料の変調された照射に基づいて、被検試料のホール測定値を測定することと、ホール測定値及び変調された照射に基づいて、被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを求めることとを含む、方法を提供する。
【0006】
さらなる態様から見ると、本発明は、ホール測定を容易にするためのコンピュータ・プログラム製品であって、処理回路によって読み取り可能なコンピュータ可読ストレージ媒体を含み、コンピュータ可読ストレージ媒体は、処理回路による実行のための、本発明のステップを実行するための命令を格納する、コンピュータ・プログラム製品を提供する。
【0007】
さらなる態様から見ると、本発明は、ホール測定を容易にするためのコンピュータ・プログラム製品であって、処理回路によって読み取り可能なコンピュータ可読ストレージ媒体を含み、コンピュータ可読ストレージ媒体は、処理回路による実行のための命令であって、測定チャンバ内に準備された被検試料を照射することと、被検試料の照射を変調することと、被検試料の変調された照射に基づいて、被検試料のホール測定値を測定することと、ホール測定値及び変調された照射に基づいて、被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを求めることとをプロセッサに行わせる命令を格納するコンピュータ可読ストレージ媒体を含む、コンピュータ・プログラム製品を提供する。
【0008】
さらなる態様から見ると、本発明は、コンピュータ可読媒体上に格納され、デジタルコンピュータの内部メモリにロード可能なコンピュータ・プログラムであって、プログラムがコンピュータ上で実行されるとき本発明のステップを実行するためのソフトウェアコード部分を含む、コンピュータ・プログラムを提供する。
【0009】
一実施形態によれば、測定システムが提供される。測定システムは、測定チャンバと、測定チャンバに結合された光学モジュールとを含むことができる。光学モジュールは、光源と、光源からの光を変調し、光源からの変調光で被検試料を照射するフィルタとをさらに含むことができる。本システムは、変調光に基づいて、被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを示す1つ又は複数のホール測定値を出力するホール測定モジュールをさらに含むことができる。
【0010】
別の実施形態によれば、方法が提供される。本方法は、測定チャンバ内に準備された被検試料を照射することを含むことができる。本方法は、被検試料の照射を変調することをさらに含むことができる。本方法は、被検試料の変調された照射に基づいて、被検試料のホール測定値を測定することを含むことができる。本方法は、ホール測定値及び変調された照射に基づいて、被検試料の第1のキャリア又は多数キャリアの移動度と、第2のキャリア又は少数キャリアの移動度とを求めることをさらに含むことができる。
【0011】
別の実施形態によれば、ホール測定を容易にするコンピュータ・プログラム製品が提供される。コンピュータ・プログラム製品は、具体化されたプログラム命令を有するコンピュータ可読ストレージ媒体を含むことができ、プログラム命令は、プロセッサによって実行可能である。プログラム命令は、測定チャンバ内に準備された被検試料を照射することと、被検試料の照射を変調することとをプロセッサに行わせることができる。プログラム命令はさらに、被検試料の変調された照射に基づいて、被検試料のホール測定値を測定することをプロセッサに行わせることができる。プログラム命令は、ホール測定値及び変調された照射に基づいて、被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを求めることをプロセッサに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここで、例証に過ぎないが、以下の図に示される好ましい実施形態を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的な、変調光で照射された異なる少数キャリア移動度を有する2つの試料の導電率(σ)とホール係数(Η)とのプロットを示す。
図2】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態によるシステムの例示的かつ非限定的なブロック図を示す。
図3A】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的なホールモジュールを示す。
図3B】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的なホールモジュールを示す。
図3C】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的なホールモジュールを示す。
図4】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的なシステムを示す。
図5】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的な、キャリア分解式光ホール測定のために被検試料を照射する光の変調を示す。
図6】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、図2に示されたシステムによって得ることができる例示的かつ非限定的な光ホール測定解析結果を示す。
図7】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、例示的かつ非限定的な光ホール測定のための方法を示す。
図8】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、別の例示的かつ非限定的な光ホール測定のための方法を示す。
図9】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、例示的かつ非限定的な光ホール測定を検証するための方法を示す。
図10】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、本明細書に記載される方法論の1つ又は複数を実行するための例示的かつ非限定的な例示的装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は例証に過ぎず、実施形態、もしくは実施形態の用途もしくは使用、又はその両方を制限することを意図するものではない。さらに、前述の背景セクション又は概要セクション又は詳細な説明セクション内に提示されたいずれの明示的情報又は暗黙的情報にも制約されることを意図しない。
【0015】
ここで、図面を参照して、1つ又は複数の実施形態を説明し、図中、全体を通して同様の要素を指すために同様の参照番号を用いる。以下の説明において、1つ又は複数の実施形態のより完全な理解を与えるために、説明目的で、多数の特定の詳細が記述される。しかしながら、種々の場合において、1つ又は複数の実施形態は、これらの特定の詳細がなくても実施できることが明らかである。上記の概念を説明するために用いられる図示された例の間の寸法の相対的な差異にかかわらず、この説明で参照される図1図10は、縮尺通りに描かれることを意図しておらず、この点は当てにすべきではないことに留意すべきである。
【0016】
本明細書の実施形態は、AC電磁石などのAC場ホールシステム、又は回転する平行双極子線(PDL:parallel dipole line)磁石システムと、測定チャンバ又はクライオスタットシステムとを使用する、キャリア分解式光ホールシステム(carrier-resolved photo-Hall system)に関する。このシステムは、多数キャリア及び少数キャリア両方の、移動度、光キャリア密度、再結合寿命及び再結合係数などの様々な半導体パラメータを計算することができる。1つ又は複数の実施形態において、システムは、光ホールデータ解析技術を利用して、多数キャリア及び少数キャリアのタイプ、移動度及び密度、並びにキャリアの再結合寿命など、半導体材料の様々なパラメータを同時に求めることができる。
【0017】
半導体における多数キャリア及び少数キャリアのタイプ、密度及び移動度などの特性は、光電子デバイス及び太陽電池などのデバイスの動作を支配するパラメータである。これらのパラメータの測定は、以前は非常に困難で不十分であった。1つ又は複数の実施形態において、キャリア分解式光ホール技術を用いて、本システムは、被検試料の変調された照射下でこれらのパラメータを同時に測定し、再結合寿命、拡散長、及び再結合係数などのパラメータを求めることができる。
【0018】
さらに、1つ又は複数の実施形態において、AC場ホール測定技術を用いて、平行双極子線ホールシステムを用いてクリーンなホール信号を抽出することができる。本明細書でさらに説明するように、システムは、横方向の双極子の線形分布に等しい磁場を生成する横方向磁化を有する円筒形の磁石である、双極子線磁石を含むことができる。このシステムは、1つ又は複数のPDL磁石を使用して光ホール測定を行うことができる。
【0019】
図1は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、例示的かつ非限定的な、変調光で照射された異なる少数キャリア移動度を有する2つの試料の導電率(σ)とホール係数(Η)とのプロットを示す。図示されているように、曲線102及び曲線104は、多数キャリア移動度は同じだが、少数キャリア移動度は異なる、p型材料の2つの試料を示し、したがって照射範囲(例えば、暗(dark)から明るい(bright)照射まで)にわたって異なるホール係数(Η)対導電率(σ)特性を示す。この現象により、1つ又は複数の実施形態の光ホール技術を、多数キャリア及び少数キャリア両方の特性を識別するキャリア分解式(carrier-resolved)とすることが可能になる。
【0020】
例えば、2つのp型半導体試料は、多数キャリアの密度(ρ)及び移動度(μ)を示すが、曲線102及び曲線104で示されるように少数キャリア移動度(μ)が異なる。一例として、暗い又は照射なしの状態で、両試料は、導電率(σ)及びホール係数(Η)が同じであれば同じ点から開始することができる。しかし、少数キャリア移動度の違いに起因して、これらの試料が特定の最大光キャリア密度Δnmaxまで照射されるとき、両試料は異なるσ-Η曲線(例えば曲線102対曲線104)を辿ることになる。この効果は、暗いときには同じ点から開始しても、照射下では全導電率に対する少数キャリアの役割が増大することに起因して生じる。1つ又は複数の実施形態において、σ-Η曲線の軌跡を用いて、少数キャリアに関する情報を判定し、計算する。例えば、曲線102又は104のいずれかに沿った任意の所与の点における傾き(dΗ/dσ)を用いて、多数キャリア及び少数キャリアの情報を判定又は計算することができる。
【0021】
照射下では、半導体材料内で光生成効果(photogeneration effect)が過剰の多数キャリア及び少数キャリアを生成する。これらのキャリアの輸送特性は、導電率σ=e(pμ+nμ)及びホール係数
【数1】
によって記述することができ、ここでeは電子の電荷、pは全正孔キャリア密度、nは全電子密度、rはホール散乱因子、μは正孔移動度、μは電子移動度であり、β=μ/μは少数キャリアと多数キャリアとの比である。全正孔密度は、p=p+Δpとして表すことができ、n=n+Δnである。一例において、n型材料の場合、nは小さいのでn=Δnである。したがって、1つ又は複数の実施形態において、σ、Ηの測定値及び傾きdΗ/dσを用いて、光強度ごとにμ、μ、及びΔnについて解くことができる。
【0022】
光ホール測定において、σ-Η曲線の任意の点におけるホール移動度の差は
【数2】

として表すことができ、ここでΔμ=μ-μ=Δμ/rは、正孔移動度と電子移動度との間の差である。多数キャリア及び少数キャリアについて解くと、p型材料の場合は次式
【数3】
が得られ、N型材料の場合は、次式
【数4】

が得られる。そしてP型及びN型材料の両方について、
【数5】

である。
【0023】
したがって、1つ又は複数の実施形態において、このシステム及び方法によって、多数キャリア移動度μ及び少数キャリア移動度μの両方を求めることができる。
【0024】
加えて、さらに後述するように、1つ又は複数の実施形態のシステム及び方法によって、光キャリア密度(Δn)、再結合寿命(τ)、多数キャリア拡散長(LD,M)、並びに少数キャリア拡散長(LD,m)及び両極性拡散長(LD,am)を求めることができるようになった。これらのパラメータは、暗から最大輝度までの様々な光強度設定Nにおける被検試料の光ホール測定値から得ることができる。
【0025】
例えば、様々な光照射変調において、以下の関係式に基づいて被吸収光子密度Gγを求めることができる。
【数6】

このとき試料に入射する光子束密度(Φ)は、次のように計算され、
【数7】


ここでαは吸収係数(/m)、Rは試料の反射率、IPD,MONはモニタ光検出器(PD,MON)電流、dは試料の厚さ、及びkPDは基準光検出器(PD,REF)とモニタ光検出器(PD,MON)との間の電流の比である。この比は、較正ステップで求めることができ、較正ステップでは、基準PDは試料位置に配置されるシリコン光検出器であり、モニタPDと同時に測定される。QEREFは基準PDの量子効率、AREFは基準PDの面積、λは動作波長である。被吸収光子密度は、モニタ光検出器で測定される光強度又は光電流(IPD-MON)の関数として計算することができ、
【数8】

であり、ここでkはその実験構成の光子密度定数である。
【数9】

【0026】
さらに、1つ又は複数の実施形態において、予め(例えば上記の式1-式3から)計算された光生成キャリア密度(Δn及びΔp)を考慮して、一連の派生的なパラメータ、例えば再結合寿命
【数10】

などを計算することができ、ここでGは光キャリア生成率であり、量子効率が1の場合、被吸収光子密度Gγに等しいと仮定される。再結合寿命は、低い光強度又は一分子再結合レジメでは定数とすることができる。例えば、k=1/τの場合であり、ここでkは一分子再結合係数である。より高い光強度では、電荷トラップ効果、二分子再結合、及び非常に高い光強度におけるオージェ再結合に起因して、τは小さくなる傾向がある。したがって、1つ又は複数の実施形態において、多数キャリア又は少数キャリアの拡散長は、次式から求めることができ、
【数11】

ここで、Dはキャリア拡散係数であり、Tは温度である。正孔及び電子の光キャリア密度が暗平衡密度よりもはるかに高い(例えば、Δn~Δp>>p)高注入レベルでは、この場合、両極性拡散長がより妥当であり、次式に従って計算することができる。
【数12】
【0027】
したがって、1つ又は複数の実施形態において、新規な光ホール技術は、多数キャリア及び少数キャリア両方の特性を抽出することができるので、キャリア分解式とみなすことができる。例えば、この技術は、多数/少数又は正孔/電子キャリアの移動度(μ、μ)、光キャリア密度(Δn)、再結合寿命(τ)、並びに正孔、電子及び両極性輸送の拡散長(LD,P、LD,N、LD,am)を含むがこれらに限定されない7N個のパラメータを与えることができ、ここでNは測定における光強度設定の数である。
【0028】
ここで、様々なシステム及び方法の非限定的な例を、図2図10を参照して説明する。
【0029】
図2は、本明細書に記載されている1つ又は複数の実施形態によるシステム200の例示的かつ非限定的なブロック図を示す。図示するように、システム200は、制御プログラム202と、データ及び信号解析モジュール204と、電子機器モジュール206と、ホールモジュール208と、測定チャンバ210と、光学モジュール212とを含むことができる。
【0030】
制御プログラム202は、電子機器モジュール206と、システム200のデータ取得からデータ格納及び報告までにわたる全体的な動作とを制御することができる。例えば、制御プログラムは、ユーザと対話することができ、試料情報の入力を受け、データ及び信号解析モジュール204、電子機器モジュール206、ホールモジュール208、測定チャンバ210、及び光学モジュール212を制御することができる。
【0031】
データ及び信号解析プログラム204は、フーリエスペクトル解析及びロックイン検出などの信号処理及び計算を行うことができる。例えば、データ及び信号解析プログラム204は、磁気抵抗(MR)信号のフーリエスペクトル又はパワースペクトル密度の視覚化を生成、前処理、及び表示し、ロックイン検出を行い、光強度ごとにホール係数を計算することができる。1つ又は複数の実施形態において、プログラム204は、上述の式(1)-式(13)によって示されるキャリア分解式光ホール技術及び計算を実装するための実行可能なプログラムコードを含むことができる。
【0032】
電子機器モジュール206は、ソース及び測定動作、スイッチマトリックス及びバッファリング、モータ制御、場のセンシング及びクライオスタット温度制御を行うための、一組の電子機器サブモジュールを含むことができる。
【0033】
ホールモジュール208は、磁石又は電磁石のシステムを含む。例えば、ホールモジュール208は、一組のモータ駆動式及び(複数の)自由回転式の双極子線磁石と、場センサと、試料ステージと、電気的相互接続とを含むことができる。ホールモジュールの異なる形態の様々な非限定的な例は、図3A図3Cを参照して説明される。
【0034】
測定チャンバ210は、試料測定が行われる密閉型の真空チャンバ、又は製造インライン試験システムの一部とすることができる。1つ又は複数の実施形態では、測定チャンバは、クライオスタットを含むことができる。モジュール210は、真空チャンバ、コールドステージ、冷却器エンジン、及び制御電子機器を含むことができる。
【0035】
光学モジュール212は、単色又は広帯域の光源、連続減光フィルタ(continuous neutral density filter)、高調波変調器フィルタホイール(harmonic modulator filter wheel)、光検出器、及びビームスプリッタなどの、試料に照射を提供するためのシステムをさらに含むことができる。光学モジュールは、単色光源として1つ又は複数のレーザを含むことができる。あるいは、光学モジュール212は、広帯域光源及びモノクロメータを光源として含むことができる。
【0036】
1つ又は複数の実施形態では、光学モジュール212は、モータによって制御される連続減光フィルタを通して光の経路を制御して、光を減衰させる。さらに、光学モジュール212は、付加的な光変調を加えて微調整(例えば、光強度の±50%)を行う高調波変調器フィルタホイール(図示せず)を随意的に含むことができる。高調波変調器フィルタホイールは、一定の回転下で正弦波減衰を生成する。光学モジュール212は、測定チャンバ210内の被検試料に対するレンズ、ビームスプリッタ及びプリズム又はウェッジレンズをさらに含むことができる。
【0037】
図3A図3Cは、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的なホールモジュールを示す。図示されるように、ホールモジュールの様々な構成を実施形態において、例えばシステム200において用いることができる。簡潔にするために、本明細書で説明される他の実施形態において用いられる同様の要素の反復的な説明は省略する。
【0038】
図3Aは、AC磁場をもたらす、回転式平行双極子線磁石などの回転磁石を含むホールモジュール208Aを示す。1つ又は2つの磁石が測定チャンバ210の内部にあり、外側の磁石が外部で回転して、チャンバ210の内部にある磁石アセンブリを駆動する。
【0039】
図3Bは、インライン式ホールモジュール208Bを示す。ホールモジュール208Bは、例えば製造ラインにインラインで設けられ、製造プロセスライン内でデバイスをインラインでホール測定することを可能にする。図示されるように、照射は(例えば、光学モジュール212から)製造ライン上に経路制御され、製造中に、例えばコンベヤベルト上での被検試料を照射する。回転式平行双極子線磁石などの回転磁石が、1つ又は複数の接触プローブを介してアクセスされるホール測定のためのAC磁場をもたらす。1つ又は複数の実施形態において、インライン式ホールモジュール208Bは、製造プロセス中にデバイスのインライン光ホール測定をより速く又はより迅速に行うことを可能にする。
【0040】
図3Cは、AC磁場をもたらす電磁石を含むホールモジュール208Cを示す。図示するように、ホールモジュール208Cは、例えば、AC電源(図示せず)によって駆動されるAC電磁石システム又はヘルムホルツコイルシステムを含むことができる。本実施形態では、光学モジュール212からの光は、ボアホールを通過して、クライオスタットなどの測定チャンバ内に保持された試料に照射される。
【0041】
図4は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的なシステムを示す。ここで、システム300の各構成要素の詳細な説明を行う。簡潔にするために、本明細書で説明される他の実施形態において用いられる同様の要素の反復的な説明は省略する。したがって、図4は、システム200のホールモジュール208と、測定モジュール210と、光学モジュール212との例示的な構成400を示す。
【0042】
説明のために、図4に示す例では、ホールモジュール208及び測定チャンバ210は、例えば、図3Aに示すホールモジュール208Aのような構成の中に、モータ404及びギヤボックス406によって駆動される双極子線(DL:dipole line)磁石402を含むことができる。簡潔にするために、図3B図3Cに示された実施形態など本明細書で説明される他の実施形態において用いられる同様の要素の反復的な説明は省略する。1つ又は複数の実施形態では、DL磁石402は、極(N極又はS極)が曲面の両側にある、均一な横方向磁化を有する円柱形とすることができる。
【0043】
ホールモジュール208において、ホールセンサ408をモータ駆動DL磁石402に隣接して位置決めして、磁石の位相又は回転角を監視することができる。ホールセンサ408は、磁場に応じてその出力電圧を変化させるデバイスとすることができる。
【0044】
1つ又は複数の自由回転DL磁石410を測定チャンバ210内に配置することができる。第1の自由回転DL磁石410は、モータ駆動DL磁石402に近接したチャンバ210の領域内に位置決めすることができる。例えば、モータ駆動DL磁石402は、チャンバ210の上部側に隣接させることができる。したがって、第1の自由回転DL磁石410は、チャンバ210の上部側に近接して、チャンバ210内に存在することができる。この構成により、モータ駆動DL磁石402及びその関連ハードウェア(ステッパモータ404及びギヤボックス406など)をチャンバ210の外部に配置することができる。1つ又は複数の実施形態において、この配置を用いて、チャンバ210内のスペースを節約し、モータ404及び他のハードウェアがチャンバ210内の低温環境に曝されることを防止することができる。
【0045】
随意的に、少なくとも1つの第2の自由回転DL磁石412をチャンバ210に含めることもできる。第2の自由回転DL磁石412を含めることで、被検試料に対する場の強度を高めることができる。図4に示すように、存在する場合、第2の自由回転DL磁石412は、チャンバ210内の第1の自由回転DL磁石410の反対側に(それらの間に試料などが位置決めされる状態で)、モータ駆動DL磁石402から遠位に配置することができる。
【0046】
図4にさらに示すように、モータ駆動DL磁石402は、チャンバ210の上部側に隣接させることができ、第2の自由回転DL磁石412は、チャンバ210の上部側から遠位に(すなわち、チャンバの底部側に隣接して)配置することができる。図4にさらに示されるように、モータ駆動DL磁石402の回転方向は、第1の自由回転DL磁石410の回転方向とは逆とすることができ、存在する場合には、第2の自由回転DL磁石412の回転方向と同じとすることができる。第1の自由回転DL磁石410の回転は、モータ駆動DL磁石402の回転に基づくものとすることができ、一方、第2の自由回転DL磁石412の回転は、第1の自由回転DL磁石412の回転に基づくものとすることができる。
【0047】
コールドステージ414を用いて、測定チャンバ210内の試料の温度を調節することができる。図4に示すように、コールドステージ414は、電子機器モジュール206によって調節することができる。
【0048】
試料ステージは、試料を、2つの向きのうちの一方、すなわち全磁場に対して垂直又は平行に取り付けることを可能にする。試料ステージ(図示せず)は、光ホール測定においては磁場に対して垂直な試料208、又は、光電磁(PEM:Photo-Electro-Magnet)測定においては磁場に対して平行な試料208の解析のためのものである。試料が全磁場に対して垂直に取り付けられている場合(例えば、試料がy-z平面上にある場合)はホール測定を行うことができる。試料が全磁場に対して平行に取り付けられている場合(例えば、試料がx-z平面上にある場合)は、PEM測定を行うことができる。異なる試料マウント又は可動/回転式マウントを用いて、試料をこれら2つの向きで取り付けることができる。
【0049】
図5は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的な、キャリア分解式光ホール測定のために被検試料を照射する光の変調を示す。一実施形態では、光学モジュール(光学モジュール212など)は、照射502によって図示されるように離散的な設定及び間隔で暗から明へと変化する光を与えるように制御される。ホール測定(σ,Η)は、このとき照射502下で提供されるこの離散的設定及び間隔で行うことができる。
【0050】
別の実施形態では、光は、照射504に従ってσなどのバイアス点の周りで変調される。σにおけるσ及びΗの初期測定が行われる。変調器フィルタホイールを光モジュール212(図5には示されていない)内で回転させて、バイアス点σの周りで光強度をΔσだけ振動させる照射を与えることができる。上述の式(1)-式(13)に従って、傾きを実験的に測定することができ、dΗ/dσ~ΔΗ/Δσとして、様々な少数キャリア及び多数キャリアの特性について解くことができる。本実施形態を用いると、例えば特定の光強度又は特定の条件下でホール測定を行いたい場合に、より迅速な測定を可能にすることができる。また、本実施形態では、照射及び測定の範囲が狭いので、長期的なドリフト誤差が発生しにくくなり得る。
【0051】
図6は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、図2に示されたシステムによって得ることができる例示的かつ非限定的な光ホール測定解析結果を示す。例えば、図示されるように、例示的かつ非限定的な表示として、ペロブスカイト6端子ホールバー試料について、データ+信号解析プログラム204によって提供することができるホール測定解析結果が示される。具体的には、データ+信号解析プログラム204は、AC場磁気抵抗データと、σ-Ηプロット解析と、移動度及びキャリア密度と、再結合寿命及び拡散長とを示す結果を出力することができる。表示のプロット及び構成は、例示的かつ非限定的な出力である。実施形態に従って、任意のタイプの結果表示を提供することができる。
【0052】
図7は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による、例示的かつ非限定的なホール測定のための方法700を示す。本明細書で説明される他の実施形態において用いられる同様の要素の反復的な説明は省略する。
【0053】
702において、方法700は、測定チャンバ210内に準備された被検試料を照射することを含むことができる。
【0054】
704において、方法700は、被検試料の照射を変調することを含むことができる。
【0055】
706において、方法700は、図5に示す変調された照射のような、変調された照射に基づいて、被検試料のホール測定値を測定することを含むことができる。1つ又は複数の実施形態では、試料を測定して、その導電率、ホール係数、及び導電率の変化に対するホール係数の変化の微分(又は傾き)を求める。これは、例えば、連続減光フィルタ426及びフィルタホイール428を用いて、ある光強度の範囲にわたってホール係数及び導電率を測定することによって行うことができる。あるいは、ある選択された光強度において導電率及びホール係数を測定することができ、次いでフィルタホイール428を回転させて、得られた測定値に基づいて微分(又は傾き)を得ることができる。
【0056】
708において、方法700は、ホール測定値及び変調された照射に基づいて、被検試料の第1のキャリア移動度と第2のキャリア移動度と光キャリア密度とを求めることを含むことができる。一実施形態において、試料の光ホール測定値、キャリア移動度の差、及び後続の解の間の誤り率を考慮した反復プロセスに基づいて、第1の(又は多数)キャリア移動度及び第2の(又は少数)キャリア移動度を求めることができる。この反復プロセスを、環境1000で動作するデータ+信号解析プログラム204によって実行される機械学習アルゴリズムなどの様々な技術によって処理して、誤り率をモデル化し、試料の測定値に対する収束解を展開することができる。図9を参照して、1つ又は複数の実施形態による、収束解を展開するための例示的かつ非限定的なプロセスフローが提供される。
【0057】
図8は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的なホール測定のための方法800を示す。例えば、方法800は、制御プログラム202によって実装され、上述したようなホール測定の1つ又は複数の方法を提供することができる。本明細書で説明される他の実施形態において用いられる同様の要素の反復的な説明は省略する。
【0058】
802において、試料は、例えば測定チャンバ210内に取り付けられる。制御プログラム202は、測定チャンバ210に対して、磁石間隙g、試料位置x、及び試料サイズsを測定するよう命令する。
【0059】
804において、試料上の最大磁場Bmaxを求める。これは、例えば、試料を中心に置いた状態で、双極子線磁石間の間隙を測定することによって行われる。
【0060】
806において、暗ホール測定が行われる。例えば、制御プログラム202は、光学モジュール212に対して、試料の照射をオフにするよう命令することができ、それにより、試料を測定チャンバ210内で暗い又は低レベルの光条件に供することができる。
【0061】
808において、制御プログラム202は、測定チャンバ210内で試料の接触抵抗を測定する。
【0062】
810において、制御プログラム202は、測定チャンバ210内で試料のシート抵抗又は長手方向抵抗を測定する。
【0063】
812において、制御プログラム202は、ホールモジュール208に対して、例えば磁石402(図4に示す)を回転させることによって、AC磁場を生成するよう命令する。制御プログラム202は、次いで、試料の横方向の磁気抵抗(MR)を測定することができる。
【0064】
814において、制御プログラム202はデータ+信号プログラム204と協働してMR信号を処理する。例えば、データ+信号プログラム204は、試料のバックグラウンド減算並びにフーリエ及びパワースペクトル密度解析を行うことができる。上述したように、解析及び結果の非限定的な例が図6を参照して示される。
【0065】
816において、制御プログラム202は、ロックイン検出を行い、測定値からホール係数Hを抽出する。一実施形態では、制御プログラム202は、試料から抽出された時系列の横方向磁気抵抗データ(RXY)からホール係数を求める。
【0066】
818において、制御プログラム202は、多数キャリアのタイプ、タイプ移動度、及び密度を計算する。
【0067】
820において、制御プログラム202は、試料の光ホール測定を行う。1つ又は複数の実施形態では、制御プログラム202は、光学モジュール212に対して、例えばフィルタホイール428(図4に示す)を用いて、光強度を設定するよう命令する。さらに、制御プログラム202は、PDモニタ434(図4に示す)を用いてこの光強度レベルを記録することができる。
【0068】
822において、制御プログラム202は、試料の接触抵抗を測定する。
【0069】
824において、制御プログラム202は、磁場B=0における試料の長手方向抵抗を測定し、試料の導電率σを求める。
【0070】
826において、制御プログラム202は、ホールモジュール208に対して、測定チャンバ210に与えられるAC磁気信号を変調するよう命令する。制御プログラム202は、次いで、AC磁気信号の結果生じる経時的な試料の横方向MR(RXY)を測定する。
【0071】
828において、制御プログラム202とデータ+信号プログラム204とが協働して、再びMR信号を処理し、試料のバックグラウンド減算並びにフーリエ及びパワースペクトル密度解析を行う。
【0072】
830において、制御プログラム202は、ロックイン検出を行い、ホール信号を抽出して、試料のホール係数Ηを求める。
【0073】
832において、制御プログラム202は、照射を変調させる方法を選択する。上述したように、照射を変調させる非限定的な例を、図5を参照して説明した。制御プログラム202は、ユーザ入力、もしくは、制御プログラム202内の1つ又は複数の設定、又はその両方などの様々な基準に基づいて、照射を変調する方法を選択することができる。説明のために、832において、制御プログラム202は、方法I又はIIを選択することができる。制御プログラム202が方法Iを選択した場合、プロセス800は838に進む。制御プログラム202が方法IIを選択した場合、プロセス800は834に進む。
【0074】
834において、制御プログラム202は、方法IIを選択しており、光モジュール212に対して、高調波変調器フィルタホイール428(図4に示すように)を回転させるよう命令した。
【0075】
836において、制御プログラム202は、光学モジュール212によって与えられる照射の変調に基づいて、ΔΗ(ホール係数の変化)及びΔσ(導電率の変化)を測定する。
【0076】
その後、処理は838にフローする。838において、制御プログラム202は、例えば図5に図示された光変調に従って、別の光強度で繰り返すかどうかを判断する。制御プログラム202が別の光強度で繰り返すことを選択した場合、処理は820に戻るようにフローし、上述のように進む。制御プログラム202が繰り返さないことを選択した場合、処理は840にフローする。
【0077】
840において、制御プログラム202は、例えば吸収PD452及び吸収サブモジュール440(図4に示す)を用いて、試料の反射率、吸収及び透過を測定する。
【0078】
842において、制御プログラム202は、PD較正係数kPDを測定する。較正係数は、測定チャンバ210内に試料として配置されたシリコンPDなどの基準PDに基づいて求めることができる。
【0079】
844において、制御プログラム202とデータ+信号解析プログラム204とが協働して、様々なデータ解析結果を出力する。上述したように、1つ又は複数の実施形態において、本明細書で説明したキャリア分解式光ホール技術によって、多数キャリア特性と少数キャリア特性の両方を抽出して測定することができる。さらに、再結合寿命、拡散長、再結合係数などのパラメータを求めることができる。上述したように、制御プログラム202もしくはデータ+信号解析プログラム204又はその両方によって提供することができる例示的かつ非限定的な結果は、図6を参照して示される。
【0080】
図9は、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態による例示的かつ非限定的な、移動度が変化する光ホール測定のための方法900を示す。一実施形態では、試料の光ホール測定値、キャリア移動度の差、及び後続の解の間の誤り率を考慮した反復プロセスに基づいて、第1の(例えば、多数)キャリア移動度及び第2の(例えば、少数)キャリア移動度を求めることができる。この反復プロセスを操作環境1000によって処理して、後続の解の間の誤り率を計算し、測定値に対する収束解を得ることができる。
【0081】
例えば、方法900は、環境1000で動作する制御プログラム202及びデータ+信号解析プログラム204によって実装され、収束解を得ることができる。収束解を検定して、キャリア移動度が一定であるかどうかを確認することができる。キャリア移動度が一定でない場合、データ+信号解析プログラム204は、一般化された式を使用し、解が収束するまで反復計算を行うように構成することができる。方法900について、例示的かつ非限定的なプロセスは説明しない。
【0082】
902において、制御プログラム202は、前述のように、導電率σ及びホール係数Ηを得る。
【0083】
904において、制御プログラム202は、データ+信号解析プログラム204と協働して、Δμ(移動度の変化)及びΔn(光キャリア密度)のベースライン又は初期値を計算する。
【0084】
906において、制御プログラム202は、データ+信号解析プログラム204と協働して、導電率(σ)に対して、キャリア移動度μ及びμ、並びに光キャリア密度Δnについて解く。
【0085】
908において、制御プログラム202は、データ+信号解析プログラム204と協働して次式を計算し、
【数13】

ここで
【数14】

である。
【0086】
910において、制御プログラム202は、データ+信号解析プログラム204と協働して、反復して、新たなΔμ’を計算する。
【0087】
912において、制御プログラム202は、データ+信号解析プログラム204と協働して、反復して、重み係数wに基づいて次のΔμ’を計算し、
【数15】

ここで、nは反復回数である。
【0088】
914において、制御プログラム202は、Δμ’についての解が収束しているかどうかを判定する。例えば、制御プログラム202は、以下の式を用いて収束を確認することができる。
【数16】
【0089】
Δμ’についての解が収束した場合、処理は916にフローする。収束していない場合、906で処理を繰り返す。
【0090】
916において、制御プログラム202は、データ+信号解析プログラム204と協働して、キャリア移動度、光キャリア密度(Δn)及び被吸収光密度Gγについて、収束したとみなされる最終結果を報告する。システムは、ディープニューラルネットワークを組み込んで、様々な試料からの様々な光ホール測定シナリオを分類することができる。
【0091】
図10並びに以下の説明は、開示される主題の種々の態様を実装できる適切な環境の一般的な説明を提供することが意図される。簡潔にするために、本明細書で説明される他の実施形態において用いられる同様の要素の反復的な説明は省略する。図10は、本明細書に説明される1つ又は複数の実施形態を容易にすることができる例示的かつ非限定的な動作環境のブロック図を示す。簡潔にするために、本明細書で説明される他の実施形態において用いられる同様の要素の反復的な説明は省略する。ここで図10を参照すると、本開示の種々の態様を実装するための好適な動作環境1000は、コンピュータ1012を含むこともできる。コンピュータ1012は、処理ユニット1014、システム・メモリ1016及びシステム・バス1018を含むこともできる。システム・バス1018は、システム・メモリ1016を含むがこれに限定されないシステム・コンポーネントを処理ユニット1014に結合する。処理ユニット1014は、種々の利用可能なプロセッサのいずれかとすることができる。デュアルマイクロプロセッサ及び他のマルチプロセッサ・アーキテクチャを処理ユニット1014として用いることもできる。システム・バス1018は、業界標準アーキテクチャ(ISA)、マイクロ・チャネル・アーキテクチャ(MSA)、拡張ISA(EISA)、Intelligent Drive Electronics(IDE)、VESA Local Bus(VLB)、Peripheral Component Interconnect(PCI)、カード・バス、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)、Advanced Graphics Port(AGP)、Firewire(IEEE1394)、及びSmall Computer Systems Interface(SCSI)を含むがこれらに限定されない任意の種々の利用可能なバス・アーキテクチャを用いた、メモリ・バス又はメモリ・コントローラ、周辺バス又は外部バス、もしくは、ローカル・バス、又はそれらの組合せを含む、幾つかのタイプのバス構造のいずれかとすることができる。システム・メモリ1016は、揮発性メモリ1020及び不揮発性メモリ1022を含むこともできる。起動の際などにコンピュータ1010内の要素の間で情報を転送するための基本ルーチンを含む基本入力/出力システム(BIOS)が、不揮発性メモリ1022に格納される。限定ではなく例証として、不揮発性メモリ1022は、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能ROM(PROM)、電気的プログラム可能ROM(EPROM)、電気的消去可能ROM(EEPROM)、フラッシュ・メモリ、又は不揮発性ランダム・アクセス・メモリ(RAM)(例えば、強誘電体RAM(FeRAM))を含むことができる。揮発性メモリは、外部キャッシュ・メモリとして働くことができるランダム・アクセス・メモリ(RAM)を含むことができる。限定ではなく例証として、RAMは、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、ダブル・データ・レートSDRAM(DDR SDRAM)、エンハンストSDRAM(ESDRAM)、Synchlink DRAM(SLDRAM)、direct Rambus RAM(DRRAM)、direct Rambus dynamic RAM(DRDRAM)、及びRambus dynamic RAM(DRDRAM)のような多くの形で利用可能である。
【0092】
コンピュータ1012は、取り外し可能/取り外し不能な揮発性/不揮発性コンピュータ・ストレージ媒体を含むこともできる。図10は、例えば、ディスク・ストレージ1024を示す。ディスク・ストレージ1024は、これらに限定されるものではないが、磁気ディスク・ドライブ、フロッピー・ディスク・ドライブ、テープ・ドライブ、Jazドライブ、Zipドライブ、LS-100ドライブ、フラッシュ・メモリ・カード、又はメモリ・スティックのようなデバイスを含むこともできる。ディスク・ストレージ1024は、ストレージ媒体を別々に含むこともでき、又はコンパクトディスクROMデバイス(CD-ROM)、CD記録可能ドライブ(CD-Rドライブ)、CD書き換え可能ドライブ(CD-RWドライブ)又はデジタル多目的ディスクROMドライブ(DVD-ROM)のような光ディスクデバイスを含むがこれらに限定されない他のストレージ媒体と組み合わせて含むこともできる。システム・バス1018へのディスク・ストレージ1024の接続を容易にするために、インタフェース1026のような取り外し可能又は取り外し不能なインタフェースが一般に用いられる。図10は、ユーザと、好適な動作環境1000内に記載される基本的なコンピュータ・リソースとの間の媒介として働くソフトウェアも示す。そうしたソフトウェアは、例えば、オペレーティング・システム1028を含むこともできる。オペレーティング・システム1028は、ディスク・ストレージ1024上に格納されることができ、コンピュータ1012のリソースを制御し、割り当てるように働く。システム・アプリケーション1030は、例えばシステム・メモリ1016内又はディスク・ストレージ1024上に格納された、プログラム・モジュール1032及びプログラム・データ1034を通じて、オペレーティング・システム1028によるリソースの管理を利用する。この開示は、種々のオペレーティング・システム、又はオペレーティング・システムの組み合わせで実装できることを認識されたい。ユーザは、入力デバイス1036を通じてコンピュータ1012にコマンド又は情報を入力する。入力デバイス1036は、これらに限定されるものではないが、マウス、トラックボール、スタイラス、タッチパッドのようなポインティング・デバイス、キーボード、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲームパッド、衛星放送受信アンテナ、スキャナ、TVチューナ・カード、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ウェブカメラ等を含む。これら及び他の入力デバイスは、インタフェース・ポート1038を介してシステム・バス1018を通じて処理ユニット1014に接続される。インタフェース・ポート1038は、例えば、シリアル・ポート、パラレル・ポート、ゲーム・ポート及びユニバーサル・シリアル・バス(USB)を含む。出力デバイス1040は、入力デバイス1036と同じタイプのポートのうちのいくつかを使用する。従って、例えば、USBポートは、コンピュータ1012への入力を与えるため、及び、コンピュータ1012から出力情報を出力デバイス1040に与えるために用いることができる。出力アダプタ1042は、他の出力デバイス1040の中でもとりわけ、特別なアダプタを必要とする、モニタ、スピーカ及びプリンタのような幾つかの出力デバイス1040が存在することを示すために設けられる。出力アダプタ1042は、限定ではなく例示として、出力デバイス1040とシステム・バス1018との間の接続方法を提供するビデオ及び音声カードを含む。遠隔コンピュータ1044のような他のデバイスもしくはデバイスのシステム又はその両方が、入力及び出力の機能の両方を提供することに留意されたい。
【0093】
コンピュータ1012は、遠隔コンピュータ1044のような1つ又は複数の遠隔コンピュータへの論理接続を用いるネットワーク化環境で動作することができる。遠隔コンピュータ1044は、コンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ワークステーション、マイクロプロセッサ・ベースの器具、ピア・デバイス、又は他の共通ネットワーク・ノード等とすることができ、一般的に、コンピュータ1012に関して記載される要素の多く又は全てを含むこともできる。簡潔にするために、メモリ・ストレージ・デバイス1046だけが、遠隔コンピュータ1044と共に示されている。遠隔コンピュータ1044は、ネットワーク・インタフェース1048を通じてコンピュータ1012に論理的に接続され、次に、通信接続1050を介して物理的に接続される。ネットワーク・インタフェース1048は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、セルラー・ネットワーク等のような有線通信ネットワークもしくは無線通信ネットワーク又はその両方を含む。LAN技術として、Fiber Distributed Data Interface(FDDI)、Copper Distributed Data Interface(CDDI)、イーサネット、トークン・リング等が挙げられる。WAN技術として、これらに限定されるものではないが、ポイント・ツー・ポイント・リンク、統合サービス・デジタル網(Integrated Service Digital Networks:ISDN)及びその変形のような回路交換網、パケット交換網、及びデジタル加入者線(Digital Subscriber Line:DSL)が挙げられる。通信接続1050は、ネットワーク・インタフェース1048をシステム・バス1018に接続するために用いられるハードウェア/ソフトウェアを指す。通信接続1050は、図解を分かりやすくするためにコンピュータ1012内部に示されているが、これはコンピュータ1012の外部にあってもよい。ネットワーク・インタフェース1048への接続のためのハードウェア/ソフトウェアは、例示目的で、通常の電話級モデム、ケーブル・モデム及びDSLモデムを含むモデム、ISDNアダプタ、並びにイーサネット・カードのような内部及び外部技術を含むこともできる。
【0094】
説明を簡単にするために、方法もしくはコンピュータ実施方法又はその両方を一連の動作として示し、説明する。主題となるイノベーションは、示された動作もしくは動作の順序、又はその両方に限定されるものではなく、例えば、動作は、様々な順序で行われることもあり、もしくは同時に行われることもあり、又はその両方の場合もあり、本明細書において提示及び説明されていない他の動作と共に行われることもあることを理解及び認識されたい。さらに、開示された主題によるコンピュータ実施方法を実施するために必ずしも全ての示された動作が必要とされるわけではない。さらに、当業者であれば、コンピュータ実施方法は、状態図を介して相互に関連した一連の状態又はイベントとして代替的に表現することができることも理解及び認識するであろう。また、以下に開示される及び本明細書の全体を通して開示されるコンピュータ実施方法は、こうしたコンピュータ実施方法をコンピュータに移送及び転送するのを容易にするために、物品上に格納できることをさらに認識されたい。本明細書で用いられる場合、物品という用語は、あらゆるコンピュータ可読デバイス又はストレージ媒体からアクセス可能なコンピュータ・プログラムを含むことが意図される。
【0095】
本発明は、集積のあらゆる可能な技術的詳細レベルにおける、システム、方法、もしくはコンピュータ・プログラム製品又はその組み合わせとすることができる。コンピュータ・プログラム製品は、プロセッサに本発明の態様を実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令をその上に有する1つ又は複数のコンピュータ可読ストレージ媒体を含むことができる。コンピュータ可読ストレージ媒体は、命令実行デバイスにより使用される命令を保持及び格納できる有形デバイスとすることができる。コンピュータ可読ストレージ媒体は、例えば、これらに限定されるものではないが、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁気記憶装置、半導体記憶装置、又は上記のいずれかの適切な組み合わせとすることができる。コンピュータ可読ストレージ媒体のより具体的な例の非網羅的なリストとして、以下のもの:すなわち、ポータブル・コンピュータ・ディスケット、ハードディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM又はフラッシュ・メモリ)、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、ポータブル・コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリ・スティック、フロッピー・ディスク、パンチカードもしくは命令がそこに記録された溝内の隆起構造のような機械的にエンコードされたデバイス、及び上記のいずれかの適切な組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される場合、コンピュータ可読ストレージ媒体は、電波、又は他の自由に伝搬する電磁波、導波管もしくは他の伝送媒体を通じて伝搬する電磁波(例えば、光ファイバケーブルを通る光パルス)、又はワイヤを通って送られる電気信号などの、一時的信号自体として解釈されない。
【0096】
本明細書で説明されるコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読ストレージ媒体からそれぞれのコンピューティング/処理デバイスに、又は、例えばインターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、広域ネットワーク、もしくは無線ネットワーク又はその組み合わせなどのネットワークを介して外部コンピュータ又は外部ストレージ・デバイスにダウンロードすることができる。ネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイ・コンピュータ、もしくはエッジサーバ又はその組み合わせを含むことができる。各コンピューティング/処理デバイスにおけるネットワーク・アダプタ・カード又はネットワーク・インタフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受け取り、それぞれのコンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ可読ストレージ媒体内に格納するためにコンピュータ可読プログラム命令を転送する。本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路のための構成データ、又は、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、及び、「C」プログラミング言語、Matlab、Pytonもしくは類似のプログラミング言語などの通常の手続き型プログラミング言語を含む1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されるソース・コード又はオブジェクト・コードとすることができる。コンピュータ可読プログラム命令は、完全にユーザのコンピュータ上で実行される場合もあり、一部がユーザのコンピュータ上で、独立型ソフトウェア・パッケージとして実行される場合もあり、一部がユーザのコンピュータ上で実行され、一部が遠隔コンピュータ上で実行される場合もあり、又は完全に遠隔コンピュータもしくはサーバ上で実行される場合もある。最後のシナリオにおいて、遠隔コンピュータは、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)もしくは広域ネットワーク(WAN)を含むいずれかのタイプのネットワークを通じてユーザのコンピュータに接続される場合もあり、又は外部コンピュータへの接続がなされる場合もある(例えば、インターネットサービスプロバイダを用いたインターネットを通じて)。幾つかの実施形態において、例えば、プログラム可能論理回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はプログラム可能論理アレイ(PLA)を含む電子回路は、コンピュータ可読プログラム命令の状態情報を用いて、電子回路を個別化することによりコンピュータ可読プログラム命令を実行し、本発明の態様を実施することができる。
【0097】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータ・プログラム製品のフローチャート図もしくはブロック図又はその両方を参照して説明される。フローチャート図もしくはブロック図又はその両方の各ブロック、並びにフローチャート図もしくはブロック図又はその両方内のブロックの組み合わせは、コンピュータ可読プログラム命令によって実装できることが理解されるであろう。これらのコンピュータ可読プログラム命令を、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに与えてマシンを製造し、それにより、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサによって実行される命令が、フローチャートもしくはブロック図又はその両方の1つ又は複数のブロック内で指定された機能/動作を実施するための手段を作り出すようにすることができる。これらのコンピュータ・プログラム命令を、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイスを特定の方式で機能させるように指示することができるコンピュータ可読媒体内に格納し、それにより、そのコンピュータ可読媒体内に格納された命令が、フローチャートもしくはブロック図又はその両方の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実施する命令を含む製品を製造するようにすることもできる。コンピュータ・プログラム命令を、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイス上にロードして、一連の動作ステップをコンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイス上で行わせてコンピュータ実施のプロセスを生成し、それにより、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行される命令が、フローチャートもしくはブロック図又はその両方の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実行するためのプロセスを提供するようにすることもできる。
【0098】
図面内のフローチャート及びブロック図は、本発明の種々の実施形態による、システム、方法、及びコンピュータ・プログラム製品の可能な実装の、アーキテクチャ、機能及び動作を示す。この点に関して、フローチャート内の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つ又は複数の実行可能命令を含む、モジュール、セグメント、又はコードの一部を表すことができる。幾つかの代替的な実装において、ブロック内に示される機能は、図に示される順序とは異なる順序で生じることがある。例えば、連続して示される2つのブロックは、関与する機能に応じて、実際には実質的に同時に実行されることもあり、又はこれらのブロックはときとして逆順で実行されることもある。ブロック図もしくはフローチャート図又はその両方の各ブロック、及びブロック図もしくはフローチャート図又はその両方内のブロックの組み合わせは、指定された機能又は動作を実行する、又は専用のハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを実行する、専用ハードウェア・ベースのシステムによって実装できることにも留意されたい。
【0099】
本主題は、1つのコンピュータもしくは複数のコンピュータ又はその両方上で実行されるコンピュータ・プログラム製品のコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で上述されたが、当業者であれば、本開示は、他のプログラム・モジュールと組み合わせて実装する又は実装されることも可能であることを認識するであろう。一般に、プログラム・モジュールは、特定のタスクを実行するもしくは特定の抽象データ型を実装する又はその両方を行う、ルーチン、プログラム、コンポーネント、データ構造などを含むことができる。さらに、当業者であれば、本発明のコンピュータ実施方法は、シングルプロセッサ又はマルチプロセッサ・コンピュータ・システム、ミニ・コンピューティング・デバイス、メインフレーム・コンピュータ、並びにコンピュータ、手持ち式コンピューティング・デバイス(例えば、PDA、電話)、マイクロプロセッサ・ベースの又はプログラム可能な民生用又は産業用電子機器等を含む、他のコンピュータ・システム構成で実施できることを認識するであろう。示される態様は、通信ネットワークを通じてリンクされる遠隔処理デバイスによってタスクが実行される分散型コンピューティング環境で実施することもできる。しかしながら、本開示の全てではないとしても一部の態様をスタンドアロン・コンピュータ上で実施することができる。分散型コンピューティング環境において、プログラム・モジュールは、ローカル及び遠隔両方のメモリ・ストレージ・デバイス内に配置することができる。
【0100】
本出願において用いられるとき、「コンポーネント」、「システム」、「プラットフォーム」、「インタフェース」等の用語は、コンピュータに関連するエンティティ、又は1つ又は複数の特定の機能を有する動作マシンに関連するエンティティを指す場合もあり、もしくはこれを含む場合もあり、又はその両方の場合もある。本明細書に開示されるエンティティは、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせ、ソフトウェア、又は実行中のソフトウェアとすることができる。例えば、コンポーネントは、これらに限定されるものではないが、プロセッサ上で実行されているプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行スレッド、プログラム、もしくはコンピュータ又はその組み合わせとすることができる。例証として、サーバ上で実行されているアプリケーション及びサーバの両方がコンポーネントであってもよい。1つ又は複数のコンポーネントは、プロセスもしくは実行スレッド又はその両方の中に常駐することができ、コンポーネントは、1つのコンピュータ上に局所化されること、もしくは2つ以上のコンポーネント間で分散されること又はその両方が可能である。別の例において、それぞれのコンポーネントは、種々のデータ構造がその上に格納された種々のコンピュータ可読媒体から実行することができる。コンポーネントは、1つ又は複数のデータ・パケットを有する信号(例えば、信号を介して、ローカル・システム、分散型システム内で、及び/又は他のシステムと共にインターネットなどのネットワークにわたって、別のコンポーネントと対話する1つのコンポーネントからのデータ)などに従って、ローカル・プロセスもしくは遠隔プロセス又その両方を介して通信することができる。別の例として、コンポーネントは、プロセッサによって実行されるソフトウェア又はファームウェア・アプリケーションによって動作する、電気回路もしくは電子回路によって動作する機械的部品によって与えられる特定の機能を有する装置とすることができる。こうした場合、プロセッサは、装置の内部にあっても又は外部にあってもよく、ソフトウェア又はファームウェア・アプリケーションの少なくとも一部を実行することができる。更に別の例として、コンポーネントは、機械的部品なしに電子コンポーネントを通じて特定の機能を提供する装置とすることができ、電子コンポーネントは、電子コンポーネントの機能を少なくとも部分的に与えるソフトウェア又はファームウェアを実行するためのプロセッサ又は他の手段を含むことができる。1つの態様において、コンポーネントは、例えば、クラウド・コンピューティング・システム内の仮想マシンを介して電子コンポーネントをエミュレートすることができる。
【0101】
さらに、用語「又は(or)」は、排他的「又は」ではなく包含的「又は」を意味するよう意図される。つまり、特に断らない限り、又は文脈から明らかな場合でない限り、「XはA又はBを用いる」は、自然の包含的順列(natural inclusive permutation)のいずれかを意味するように意図される。つまり、XはAを用いる、XはBを用いる、又はXはA及びBの両方を用いる場合、「XはA又はBを用いる」は、上記の例のいずれかにおいて満たされる。さらに、本明細書及び添付図面において使用される冠詞「1つ(「a」及び「an」)」は一般的に、特に断らない限り、又は文脈から単数の形態に向けることが明らかな場合でない限り、「1つ又は複数」を意味するように解釈すべきである。本明細書で用いられる場合、用語「例」もしくは「例示的」又はその両方は、例、事例、又は例証としての役割を果たすことを意味するために用いられる。誤解を避けるために、本明細書に開示される主題は、こうした例に限定されない。さらに、用語「例」もしくは「例示的」又はその両方として本明細書で説明されるいずれの態様又は設計も、他の態様又は設計と比べて好ましい又は有利であると解釈すべきものとは限らず、又は当業者に知られた同等の例示的構造及び技術を排除することを意味するものでもない。
【0102】
本明細書で用いられるとき、用語「プロセッサ」は、これらに限定されるものではないが、シングルコア・プロセッサ、ソフトウェア・マルチスレッド実行能力を有するシングルプロセッサ、マルチコア・プロセッサ、ソフトウェア・マルチスレッド実行能力を有するマルチコア・プロセッサ、ハードウェア・マルチスレッド技術を有するマルチコア・プロセッサ、並列プラットフォーム、及び分散型共有メモリを有する並列プラットフォームを含む、実質的にあらゆるコンピューティング処理ユニット又はデバイスを指すことがある。付加的に、プロセッサは、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プログラム可能論理コントローラ(PLC)、複合プログラム可能論理回路(complex programmable logic device、CPLD)、ディスクリート・ゲート又はトランジスタ論理、ディスクリート・ハードウェア・コンポーネント、又は本明細書で説明される機能を実施するように設計されたそれらの任意の組み合わせを指すこともある。さらに、プロセッサは、空間使用量を最適化するため又はユーザ機器の性能を高めるために、これらに限定されるものではないが、分子及び量子ドット・ベースのトランジスタン、スイッチ及びゲートのようなナノスケールのアーキテクチャを利用することができる。プロセッサはまた、コンピューティング処理ユニットの組み合わせとして実装することもできる。本開示において、「格納する(store)」、「ストレージ」、「データ・ストア」、「データ・ストレージ」、「データベース」、並びにコンポーネントの動作及び機能に関連した実質的にすべての他の情報ストレージ・コンポーネントなどの用語は、「メモリ・コンポーネント」、「メモリ」内に具体化されたエンティティ、又はメモリを含むコンポーネントを指すために用いられる。本明細書で説明されるメモリもしくはメモリ・コンポーネント又はその両方は、揮発性メモリもしくは不揮発性メモリのいずれかとすることができ、又は揮発性メモリ及び不揮発性メモリの両方を含むことができることを認識されたい。限定ではなく例証として、不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能ROM(PROM)、電気的プログラム可能ROM(EPROM)、電気的消去可能ROM(EEPROM)、フラッシュ・メモリ、又は不揮発性ランダム・アクセス・メモリ(RAM)(例えば、強誘電体RAM(FeRAM))を含むことができる。揮発性メモリは、RAMを含むことができ、これは例えば外部キャッシュ・メモリとして働くことができる。限定ではなく例証として、RAMは、シンクロナスRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、ダブル・データ・レートSDRAM(DDR SDRAM)、エンハンストSDRAM(ESDRAM)、Synchlink DRAM(SLDRAM)、Direct Rambus RAM(DRRAM)、Direct Rambus Dynamic RAM(DRDRAM)、及びRambus Dynamic RAM(RDRAM)のような多くの形で利用可能である。さらに、システム又はコンピュータ実施方法の開示されたメモリ・コンポーネントは、これら及び他の何れかの好適なタイプのメモリを含むが、これらに限定されないことを意図する。
【0103】
上記で説明してきたことは、システム及びコンピュータ実施方法の単なる例を含むに過ぎない。もちろん、本開示を説明するためにコンポーネント又はコンピュータ実施方法のあらゆる考えられる組み合わせを説明することはできないが、当業者であれば、本開示の多くのさらなる組み合わせ及び並べ換えが可能であることを認識することができる。さらに、用語「含む(include)」、「有する(have)」、「持っている(possess)」等が詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付図面に用いられる範囲で、そうした用語は、用語「備える(comprising)」が特許請求の範囲中で移行語として用いられるときに解釈されるように用語「備える(comprising)」と同様に包括的であることが意図されている。種々の実施形態の説明が例証のために提示されたが、網羅的であること又は開示される実施形態を制限することを意図するものではない。当業者には、説明される実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が明らかであろう。本明細書で用いられる用語は、実施形態の原理、実際の用途、又は市場で見出される技術に優る技術の改善を最もよく説明するために、又は、当業者が本明細書で開示される実施形態を理解することができるように、選択された。
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