(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】クラッチ付きモータおよび電気チェーンブロック
(51)【国際特許分類】
H02K 7/12 20060101AFI20240311BHJP
H02K 7/108 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H02K7/12 A
H02K7/108
(21)【出願番号】P 2022557522
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038442
(87)【国際公開番号】W WO2022085629
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020177449
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】大村 真也
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053839(JP,A)
【文献】特公昭54-011582(JP,B2)
【文献】特公昭53-042937(JP,B2)
【文献】特開2018-173033(JP,A)
【文献】特開2013-184790(JP,A)
【文献】特開2009-079635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0041651(US,A1)
【文献】米国特許第04460838(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/12
H02K 7/108
B66D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動伝達軸に駆動力を伝達するクラッチ付きモータであって、
コイルに電流を流すことで回転磁界を生じさせることが可能なステータと、
前記ステータの内筒部に配置され、前記回転磁界によって回転させられるロータと、
前記ロータの径方向の中心を挿通していると共に、前記ロータに対し軸受を介して回転可能なモータ軸と、
前記ロータのうち前記モータ軸の軸方向の端部側に
おいて当該モータ軸と同軸上に配置されるフリクションクラッチ機構と、
前記ステータ、前記ロータ、前記モータ軸および前記フリクションクラッチ機構を収納するモータケーシングと、
を備え、
前記フリクションクラッチ機構は、
前記ロータのうち前記モータ軸の軸方向の端面側に固定されることで前記ロータと一体的に回転するクラッチ板と、
筒状部を有し、この筒状部の内筒部に前記モータ軸と前記駆動伝達軸とが当該筒状部と一体的に回転する状態で挿入される
ことで、前記モータ軸と前記駆動伝達軸とが同軸上に配置される状態で接続する接続部材と、
前記接続部材の外周側に配置され、当該接続部材と一体的に回転するクラッチ受けと、
前記筒状部を回転自在に軸支するベアリングと、
前記クラッチ板と前記クラッチ受けとを互いに当接させる向きに付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とするクラッチ付きモータ。
【請求項2】
請求項1記載のクラッチ付きモータであって、
前記クラッチ受けは、フランジ状に設けられていると共に前記筒状部と一体形成されている、
ことを特徴とするクラッチ付きモータ。
【請求項3】
請求項1記載のクラッチ付きモータであって、
前記クラッチ受けは前記接続部材とは別体のリング状に設けられていて、
前記クラッチ受けは、前記接続部材の外周面に対して一体回転する状態で結合されている、
ことを特徴とするクラッチ付きモータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のクラッチ付きモータであって、
前記モータ軸の先端側は、前記
モータケーシングの軸孔に位置していると共に、当該軸孔に位置する前記モータ軸の先端側の雄ネジ部には、前記付勢手段の付勢力を調整する調整部材が捻じ込まれている、
ことを特徴とするクラッチ付きモータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のクラッチ付きモータを備えると共に、
前記モータ軸と同軸上に配置されて当該モータ軸と一体的に回転する前記駆動伝達軸を備え、
前記駆動伝達軸からの回転を減速する減速機構と、
前記減速機構を介して駆動力が伝達されると共にチェーンが巻回されるロードシーブと、
を備えることを特徴とする電気チェーンブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ付きモータおよび電気チェーンブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力を利用して荷を昇降させる電気チェーンブロックにおいては、たとえば特許文献1に示すように、フリクションクラッチを備える構成が存在している。この構成では、チェーンを巻き上げる際に、過負荷が作用すると、フリクションクラッチ(11)の摺動面が滑り、ロータ(2)が空回りすることで、チェーンに過大な負荷がかかるのを防止している。
【0003】
なお、特許文献1においては、ロータ軸(1)の出力側の構成については、何ら開示されていないが、一般的には、このロータ軸(1)の出力側には、不図示の筒状の接続部材が取り付けられ、その接続部材を介して、不図示の駆動伝達軸と接続されている。なお、駆動伝達軸は、減速歯車を介して、ロードシーブに駆動力を伝達するための軸である。
【0004】
また、フリクションクラッチを備える電気チェーンブロックには、特許文献2に示すような構成も存在している。特許文献2では、大径の中空シャフト(26)の内部に挿入シャフト(71)の一部が挿入されると共に、その中空シャフト(26)の内部にベアリング等が配置されている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6116451号公報
【文献】DE4408578C2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の構成では、ロータ軸(1)には、不図示の接続部材を介して、ブレーキモータを収納しているケーシングの外側で不図示の駆動伝達軸が接続されている。このため、接続部材と、駆動伝達軸とがケーシングの外部に存在する分だけ、軸方向の長さが長い状態となっている。ここで、電気チェーンブロックの軸方向の長さを短くしようとすると、接続部材とクラッチ受け(16)等が干渉してしまう。
【0007】
また、特許文献2に開示の構成では、大径の中空シャフト(26)を用いているので、その分だけケーシングの径方向の寸法が大きくなってしまう。なお、特許文献1に開示のロータ軸(1)は中実シャフトであることから、中空シャフト(26)を有する特許文献2と組み合わせることは困難となっている。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、モータ軸の軸方向長さを短くして小型化することが可能であると共に、径方向に大型化するのを防止することが可能なクラッチ付きモータおよび電気チェーンブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、駆動伝達軸に駆動力を伝達するクラッチ付きモータであって、コイルに電流を流すことで回転磁界を生じさせることが可能なステータと、ステータの内筒部に配置され、回転磁界によって回転させられるロータと、ロータの径方向の中心を挿通していると共に、ロータに対し軸受を介して回転可能なモータ軸と、ロータのうちモータ軸の軸方向の端部側に配置されるフリクションクラッチ機構と、を備え、フリクションクラッチ機構は、ロータのうちモータ軸の軸方向の端面側に固定されることでロータと一体的に回転するクラッチ板と、筒状部を有し、この筒状部の内筒部にモータ軸と駆動伝達軸とが当該筒状部と一体的に回転する状態で挿入される接続部材と、接続部材の外周側に配置され、当該接続部材と一体的に回転するクラッチ受けと、クラッチ板とクラッチ受けとを互いに当接させる向きに付勢する付勢手段と、を有することを特徴とするクラッチ付きモータが提供される。
【0010】
また、上述の発明において、クラッチ受けは、フランジ状に設けられていると共に筒状部と一体形成されている、ことが好ましい。
【0011】
また、上述の発明において、クラッチ受けは接続部材とは別体のリング状に設けられていて、クラッチ受けは、接続部材の外周面に対して一体回転する状態で結合されている、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、モータ軸の先端側は、ステータおよびロータを収納するモータケーシングの軸孔に位置していると共に、当該軸孔に位置するモータ軸の先端側の雄ネジ部には、付勢手段の付勢力を調整する調整部材が捻じ込まれている、ことが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によると、上述の発明に係るクラッチ付きモータを備えると共に、モータ軸と同軸上に配置されて当該モータ軸と一体的に回転する駆動伝達軸を備え、駆動伝達軸からの回転を減速する減速機構と、減速機構を介して駆動力が伝達されると共にチェーンが巻回されるロードシーブと、を備えることを特徴とする電気チェーンブロックが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、モータ軸の軸方向長さを短くして小型化することが可能であると共に、径方向に大型化するのを防止することが可能な電気チェーンブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気チェーンブロックの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電気チェーンブロックを、モータ軸を切断する平面で切断した状態を示す断面図である。
【
図3】
図2のうちモータ部(クラッチ付きモータ)付近の構成を拡大して示す部分的な断面図である。
【
図4】
図1に示す電気チェーンブロックのモータ部を構成するステータ、ロータおよびモータ軸と、駆動伝達軸の構成を示す分解斜視図である。
【
図5】
図1に示す電気チェーンブロックのロータと、モータ軸と、フリクションクラッチを構成するクラッチ板および接続部材の構成を示す分解斜視図である。
【
図6】第2の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構およびロータ付近の構成を示す断面図である。
【
図7】第3の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構を有するモータ部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、モータ部20(クラッチ付きモータ)を備える電気チェーンブロック10について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、Z方向とは、チェーンC1を吊り下げる方向を指し、Z1側とは上フック90が位置する側を指し、Z2側とはそれとは逆の下フック100が位置する側を指す。
【0017】
また、X方向とは、モータ軸25の長手方向を指し、X1側とは
図2において右側を指し、X2側とはそれとは逆の左側を指す。また、Y方向とは、Z方向およびX方向に直交する方向を指し、Y1側とは
図1において右下側を指し、Y2側とはそれとは逆の左上側を指す。
【0018】
<チェーンブロックの全体構成について>
図1は、本発明の一実施の形態に係る電気チェーンブロック10の構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電気チェーンブロック10を、モータ軸25を切断する平面で切断した状態を示す断面図である。
図3は、
図2のうちモータ部20(クラッチ付きモータ)付近の構成を拡大して示す部分的な断面図である。
図1から
図3に示すように、電気チェーンブロック10は、モータ部20と、駆動伝達軸40と、減速機構50と、ロードシーブ60と、ブレーキ機構70と、制御回路80と、上フック90と、下フック100とを有している。
【0019】
図4は、
図1に示す電気チェーンブロック10のモータ部20を構成するステータ23、ロータ24およびモータ軸25と、駆動伝達軸40の構成を示す分解斜視図である。
図1から
図4に示すように、モータ部20は、モータケーシング21と、モータ22と、フリクションクラッチ機構30とを有している。モータケーシング21は、モータ22を覆うケースであり、外部の衝撃や塵埃等からモータ22を保護している。なお、モータケーシング21は、エンドカバー21A1を備え、そのエンドカバー21A1によって、モータ22の軸方向(X方向)の一方側が覆われている(後述する第2の実施の形態および第3の実施の形態における構成も同様)。
【0020】
モータ22は、ステータ23とロータ24とを備えていて、たとえば三相誘導モータが該当する。しかしながら、モータ22は、三相誘導モータには限られず、単相誘導モータ等、その他の誘導モータを用いるようにしても良い。なお、モータ22は、誘導モータ以外のモータを用いることも可能である。その他のモータとしては、たとえば同期モータ等が挙げられる。
【0021】
ステータ23は、モータケーシング21の内周面に回転不能に固定されている。また、ステータ23は、ステータコア(符号省略)および導線を巻回することで形成されるコイル231を有していて、そのコイル231には、
図2に示すように、軸方向(X方向)においてロータ24の端面から突出する筒状の突出部分231aが形成されている。
【0022】
また、ロータ24は、積層されたケイ素鋼板とアルミ系金属を材質とする導体パー(共に図示省略)と、その導体バーの両端側に配置されるエンドリング241とを有している。また、ロータ24の径方向の中央には、モータ軸25を挿通させる挿通孔242が形成されている。なお、エンドリング241には、後述するクラッチ板が取り付けられている。
【0023】
また、ロータ24の挿通孔242における軸方向(X方向)の両端側には、挿通孔242の中間部分よりも拡径された軸受取付部242aがそれぞれ設けられている。この軸受取付部242aには、ベアリングB1,B2が配置されている。なお、ベアリングB1は軸方向(X方向)の一方側に配置されると共に、ベアリングB2は軸方向(X方向)の他方側(X2側)に配置されている。これらベアリングB1,B2によって、モータ軸25と回転自在な状態でロータ24を軸支している。
【0024】
なお、軸受取付部242aは、ロータ24の長手方向(ここでは軸方向(X方向))の中心位置に向かうにつれて小径となるように設けられている。このため、軸方向(X方向)の一方側(X1側)の軸受取付部242aに配置されているベアリングB1が軸方向(X方向)の他方側(X2側)に移動するのを阻止している。
【0025】
また、モータ軸25は、本実施の形態では、中空ではなく中実の軸部材を用いている。このモータ軸25は、上記のようにベアリングB1,B2を介してロータ24に回転自在に支持されていて、すなわち、モータ軸25は、後述するフリクションクラッチ機構30が存在しなければ、ロータ24に対して自由に回転可能となっている。このモータ軸25の軸方向の他端側(X2側)には、スプライン251が外周に設けられている。スプライン251は、後述するフリクションクラッチ機構30の接続部材32の内筒面に形成されているスプライン溝321aと噛み合う。また、モータ軸25と接続部材32は軸心が一致する状態に圧入固定している。したがって、モータ軸25は、接続部材32と回転振れをせずに一体的に回転する。
【0026】
また、接続部材32には、駆動伝達軸40の軸方向(X方向)の一端側(X1側)が挿入される。この駆動伝達軸40の軸方向(X方向)の一端側(X1側)には、スプライン41が外周に設けられていて、接続部材32のスプライン溝321aと噛み合う。したがって、モータ軸25の駆動力は、接続部材32を介して駆動伝達軸40に伝達される。
【0027】
また、駆動伝達軸40の中途部分にはギヤ部42が設けられていて、そのギヤ部42には減速機構50の伝達ギヤ(図示せず)に噛み合っている。そして、駆動伝達軸40の駆動は、この減速機構50を介して、ロードシーブ60へ伝達される。このロードシーブ60は複数のチェーンポケット(符号省略)を備え、そのチェーンポケットにはロードチェーンC1の金属環が嵌まり込むことが可能となっている。したがって、モータ22の駆動によって、ロードチェーンC1の巻上げおよび巻下げを行うことを可能としている。
【0028】
また、電気チェーンブロック10は、ブレーキ機構70と、制御回路80とを備えている。ブレーキ機構70は、駆動伝達軸40の他端側(X2側)に配置され、ロードシーブ60を制動させて、荷を所定の位置に保持する機構である。また、制御回路80は、モータ22の作動を制御するための回路である。この制御回路80は、不図示のメモリを備え、そのメモリに所望の制御を実行するためのプログラムおよびデータが記憶されている。
【0029】
<フリクションクラッチ機構30について>
次に、フリクションクラッチ機構30について説明する。
図5は、
図1に示す電気チェーンブロックのロータ24と、モータ軸25と、フリクションクラッチを構成するクラッチ板31および接続部材32の構成を示す分解斜視図である。
図2から
図5に示すように、フリクションクラッチ機構30は、クラッチ板31と、接続部材32と、ばね部材33と、調整部材34とを有している。これらのうち、クラッチ板31は、接続部材32のクラッチ受け322との間で所望の摩擦力を及ぼすための部材である。このクラッチ板31は、所定の摩擦材(たとえばウーブン系の摩擦材、レジンモールド系の摩擦材、金属を含む材料を焼結した焼結材等)を材質としている。
【0030】
このクラッチ板31は、上述したエンドリング241に取り付けられている。すなわち、エンドリング241は、クラッチ板31と側面と密着するように、回転軸と垂直な平坦面241aを有し、その中心部には、クラッチ板31の内周と嵌合するボス部241bを有している。また、エンドリング241の外周側には、平坦面241aよりも軸方向(X方向)において突出する円弧状の突出部241cが設けられている。その突出部241cは、クラッチ板31の後述する嵌合部312と周方向において嵌合し、クラッチ板31と一体回転するように固定している。
図5では、4つの円弧状の突出部241c間に所定ピッチで切り欠いた取付用凹部241dが形成されている。なお、取付用凹部241dは、軸方向には所定深さだけ平坦面241aよりも凹むように設けられている。
【0031】
ここで、クラッチ板31には、リング状部311と、その外周部に嵌合部312が設けられている。
図5では、嵌合部312は円周方向において幅狭の突出片部となっているが幅広としても良い。リング状部311はリング状に設けられ、その表面(後述するクラッチ受けと対向する面)が摺動面となっている。また、嵌合部(突出片部)312は、リング状部311から外径側に向かって突出する部分であり、上述した突出部241cと周方向において嵌合しクラッチ板31の回り止め手段となっている。
図4および
図5では突出部241cは円弧状(扇状)となっているが、円弧状である必要はなく、クラッチ板31の外周部と嵌合しロータ24の回転方向に対し回り止め可能な係止形状であれば、どのような形状でも良い。
【0032】
また、接続部材32には、筒状部321と、クラッチ受け322とが設けられている。筒状部321は筒状に設けられている部分である。ここで、筒状部321の内筒面には、スプライン溝321aが設けられていて、このスプライン溝321aが上述したモータ軸25のスプライン251および駆動伝達軸40のスプライン41と噛み合う。モータ軸25のスプライン251の外径は駆動伝達軸40のスプライン41の外径より僅かに大きく、クラッチ受け322とモータ軸25は互いに同軸で圧入固定されている。
【0033】
なお、筒状部321のうち、軸方向(X方向)の他方側(X2側)には、ベアリングB3が取り付けられている。このベアリングB3は、モータケーシング21のベアリング取付部211aに取り付けられる。ここで、上述したモータ軸25の軸方向(X方向)の一端側(X1側)にも、ベアリングB4が取り付けられていて、このベアリングB4は、モータケーシング21のベアリング取付部211bに取り付けられている。これらのベアリングB3,B4によって、モータ軸25はステータ23が固定されているモータケーシング21に対し軸ブレすることなく回転自由に軸支されている。なお、ベアリングB3は、ベアリングB4よりも大径に設けられている。
【0034】
また、筒状部321には、クラッチ受け322が一体的に設けられている。すなわち、筒状部321の外周面からは、その筒状部321と一体的なクラッチ受け322が外径側に向かって突出している。いわば、接続部材32において、クラッチ受け322はフランジ状に設けられている。このクラッチ受け322は、クラッチ板31の摺動面と所定の摩擦力を及ぼしながら当接する部分である。なお、ロードシーブ60を介して、駆動伝達軸40および接続部材32に規定以下の負荷が作用する場合には、後述するばね部材33からの押圧力に応じたクラッチ板31とクラッチ受け322との間の摩擦力よって、クラッチ受け322は、クラッチ板31の回転に追従する。一方、ロードシーブ60に過負荷が作用する場合(規定よりも大きな負荷が作用する場合)には、後述するばね部材33からの押圧力に応じたクラッチ板31とクラッチ受け322との間の摩擦力よりも大きな負荷の作用により、クラッチ受け322は、クラッチ板31の回転には追従できなくなる。それにより、クラッチ板31と一体的に回転するロータ24が回転しても、接続部材32側は回転しない状態(ロータ24が空回り状態)となる。
【0035】
ここで、クラッチ板31と接続部材32のクラッチ受け322は、ステータ23のうち、筒状の突出部分231aで囲まれる部分(突出部分231aの内筒側)に配置されている。このため、突出部分231aの外側(突出部分231aの内筒側から軸方向(X方向)の他方側(X2側)に突出した部位にクラッチ板31と接続部材32とが配置される構成と比較して、デッドスペースとなる突出部分231aの内筒側を有効利用することができ、モータ部20の軸方向(X方向)の全長を短くすることが可能となっている。
【0036】
また、上記のように、筒状部321とクラッチ受け322とが一体化されているので、クラッチ受け322は、クラッチ板31に対して平行に当接する状態となる。ここで、筒状部321とクラッチ受け322とが別体である等により、クラッチ受け322がクラッチ板31に平行に当接しない場合には、クラッチ受け322はクラッチ板31によって斜めに押される状態となる。その場合、接続部材32の回転の安定性がなくなり、接続部材32を起因としてモータ部20やその他の部分に振動が生じる虞がある。しかしながら、筒状部321とクラッチ受け322とが一体化されているので、そのような振動が生じるのを防止可能となっている。
【0037】
また、ロータ24のうち、軸方向(X方向)の一方側(X1側)には、ベアリングB1に隣接する状態で、ばね部材33が配置されている。なお、ばね部材33は、付勢手段に対応する。このばね部材33は、本実施の形態では、複数の皿ばね33aを軸方向(X方向)に重ねることで構成されている。また、ばね部材33よりも軸方向(X方向)の一方側(X1側)には、調整部材34が配置されている。この調整部材34は、本実施の形態ではナットであり、モータ軸25の一端側に形成されている雄ネジ部(符号省略)に捻じ込み可能となっている。なお、調整部材34とばね部材33の間には、調整部材34の回り止め用の座金Z1と中空軸のスペーサS1が配置されていて、この座金Z1と中空軸のスペーサS1を介して、調整部材34はばね部材33を押圧している。また、接続部材32は、モータ軸25に圧入固定されて該モータ軸25と一体となっている。この接続部材32のクラッチ受け322は、ばね部材33による押圧力を受け止めることが可能となっている。
【0038】
ここで、上記の調整部材34を軸方向(X方向)の他方側(X2側)に捻じ込むと、その捻じ込みが進行するにつれて、ばね部材33がベアリングB1のインナーレースを他方側(X2側)に向けて徐々に強く押圧し、そのベアリングB1を介してロータ24およびクラッチ板31は軸方向(X方向)の他方側(X2側)に徐々に強く押圧される。すなわち、モータ22の組み立て後であって、モータケーシング21を取り付ける前に、調整部材34の捻じ込みの程度を調整することにより、ばね部材33の付勢力を容易に行うことが可能となっており、その付勢力の調整によって、クラッチ板31とクラッチ受け322との間の摩擦力を調整可能となっている。このようにして、クラッチ板31とクラッチ受け322との間の摩擦力をステータ23の内周部に組み込む前に調整可能となっている。
【0039】
なお、このようなフリクションクラッチ機構30を備えることで、規定以上の負荷(過負荷)が接続部材32に伝達されると、クラッチ受け322は、ばね部材33(付勢手段)の押圧によるクラッチ板31からクラッチ受け322との間の摩擦力に追従できなくなり、クラッチ板31(ロータ24)は、クラッチ受け322(接続部材32)に対して空回りする。
【0040】
なお、電気チェーンブロック10は、上記の構成以外に、上フック90と、下フック100とを備えている。上フック90は、たとえば天井等の所定の部位に掛ける部分である。また、下フック100は、荷等に掛ける部分であり、チェーンC1の端部に連結されている。そして、荷を下フック100に掛けた状態で、チェーンC1を巻上げたり巻下げることで、電気チェーンブロック10は、荷を昇降させることができる。
【0041】
なお、上記とは異なり、電気チェーンブロック10の向きを上下反転させると共に、下フック100を天井等の所定の部位に掛け、上フック90に荷を掛けるようにしても良い。このように構成する場合、チェーンC1を巻上げたり巻下げると、電気チェーンブロック10が昇降するが、その昇降に伴って、荷も昇降する。
【0042】
<効果について>
以上のような構成のモータ部20(クラッチ付きモータ)においては、コイル231に電流を流すことで回転磁界を生じさせることが可能なステータ23と、ステータ23の内筒部に配置され、回転磁界によって回転させられるロータ24と、ロータ24の径方向の中心を挿通していると共に、ロータ24に対し軸受(ベアリングB1,B2)を介して回転可能なモータ軸25と、ロータ24のうちモータ軸25の軸方向(X方向)の端部側に配置されるフリクションクラッチ機構30と、を備える。そして、フリクションクラッチ機構30は、ロータ24のうちモータ軸25の軸方向(X方向)の端面側に固定されることでロータ24と一体的に回転するクラッチ板31と、筒状部321を有し、この筒状部321の内筒部にモータ軸25と駆動伝達軸40とが当該筒状部321と一体的に回転する状態で挿入される接続部材32と、接続部材32の外周側に配置され、当該接続部材32と一体的に回転するクラッチ受け322と、クラッチ板31とクラッチ受け322とを互いに当接させる向きに付勢するばね部材33(付勢手段)と、を有している。
【0043】
このように構成する場合、接続部材32の外周側には、クラッチ受け322が配置されている。このため、特許文献1に開示の構成のように、接続部材とクラッチ受けとが別個独立してモータ軸25の軸方向(X方向)に配置されている構成と比較して、モータ軸25の軸方向(X方向)長さを短くしてモータ部20(クラッチ付きモータ)の小型化することが可能となる。
【0044】
また、上述の実施の形態では、特許文献2に開示の大径の中空シャフトが接続部材と同径となっているのとは異なり、モータ軸25は、接続部材32の筒状部321よりも小径の中実軸となっている。このため、モータ部20(クラッチ付きモータ)が径方向に大型化するのを防止することが可能となる。また、フリクションクラッチ機構30が作動したときの振動を、モータ軸25の一端側を軸受けしているベアリングB4よりも大径のベアリングB3で、クラッチ受け322を有する接続部材32の筒状部321を直接軸受けしているので、軸受け寿命が向上し、かつ、フリクション性能も安定している。
【0045】
また、本実施の形態では、クラッチ受け322は、フランジ状に設けられていると共に筒状部と一体形成されている。
【0046】
このように構成する場合、筒状部321とクラッチ受け322とが一体形成されていることから、クラッチ受け322は、周方向の全周に亘って、軸方向(X方向)に直交する方向に突出する。このため、クラッチ受け322は、クラッチ板31に対し、周方向の全周に亘って、平行に当接する状態となる。ここで、筒状部321とクラッチ受け322とが別体である等により、クラッチ受け322がクラッチ板31に平行に当接しない場合には、クラッチ受け322はクラッチ板31によって斜めに押される状態となる。その場合、接続部材32の回転の安定性がなくなり、接続部材32を起因としてモータ部20やその他の部分に振動が生じる虞がある。しかしながら、筒状部321とクラッチ受け322とが一体形成されている。このため、上記のような振動が生じるのを防止することができる。
【0047】
また、本実施の形態の電気チェーンブロック10は、モータ部20(クラッチ付きモータ)を備えると共に、モータ軸25と同軸上に配置されて当該モータ軸25と一体的に回転する駆動伝達軸40を備え、駆動伝達軸40からの回転を減速する減速機構50と、減速機構50を介して駆動力が伝達されると共にチェーンC1が巻回されるロードシーブ60と、を備えている。
【0048】
このように構成する場合、特許文献1に開示の構成のように、接続部材とクラッチ受けとが別個独立してモータ軸25の軸方向(X方向)に配置されている構成と比較して、モータ軸25の軸方向(X方向)長さを短くしてモータ部20(クラッチ付きモータ)の小型化することが可能となる。したがって、電気チェーンブロック10の軸方向(X方向)の寸法を小さくすることができ、その分だけ電気チェーンブロック10の小型化を図ることができる。
【0049】
また、上述の実施の形態では、特許文献2に開示の大径の中空シャフトが接続部材と同径となっているのとは異なり、モータ軸25は、接続部材32の筒状部321よりも小径の中実軸となっている。このため、モータ部20(クラッチ付きモータ)が径方向に大型化するのを防止することが可能となる。また、フリクションクラッチ機構30が作動したときの振動を、モータ軸25の一端側を軸受けしているベアリングB4よりも大径のベアリングB3で、クラッチ受け322を有する接続部材32の筒状部321を直接軸受けしているので、軸受け寿命が向上し、かつ、フリクション性能も安定させることができる。したがって、電気チェーンブロック10が、軸方向(X方向)とは直交する方向に大型化するのを防止することができると共に、長寿命で安定した性能を発揮することができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る、モータ部20(クラッチ付きモータ)を備える電気チェーンブロック10について説明する。なお、本実施の形態のモータ部20(クラッチ付きモータ)は、第1の実施の形態に係るモータ部20と同様の構成となっている。したがって、以下の説明では、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を用いて説明する。
【0051】
図6は、第2の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構30Bおよびロータ24付近の構成を示す断面図である。本実施の形態では、フリクションクラッチ機構30の構成が、上述した第1の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構30と異なっている。以下の説明では、第2の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構30を、フリクションクラッチ機構30Bと称呼し、フリクションクラッチ機構30Bの独自構成については、符号の後ろにアルファベット「B」を加えて説明する。
【0052】
本実施の形態では、フリクションクラッチ機構30Bには、第1フリクションクラッチ機構30B1と、第2フリクションクラッチ機構30B2とが設けられている。ただし、これら第1フリクションクラッチ機構30B1および第2フリクションクラッチ機構30B2に共通な構成として、調整部材34および座金Z1も存在している。以下、これらについて詳述する。
【0053】
第1フリクションクラッチ機構30B1は、ロータ24の軸方向(X方向)の他方側(X2側)に配置されている。この第1フリクションクラッチ機構30B1は、第1の実施の形態と同様のクラッチ板31と、接続部材32Bと、クラッチ受け322Bと、ばね受け35Bと、ばね部材36Bとを有している。これらのうち、接続部材32Bは、上述した筒状部321とは形状の異なる筒状部321Bを有している。この筒状部321Bには、クラッチ受け322と同様の部分が一体的に設けられていない。すなわち、クラッチ受け322Bは、接続部材32Bとは別体的に設けられている。また、接続部材32Bには、軸方向(X方向)の他方側よりも大径に形成されている大径部323Bが設けられている。
【0054】
この大径部323Bの外周側には、接続部材32Bとは別体的なクラッチ受け322Bが配置されている。したがって、クラッチ受け322Bは、リング状に設けられているが、接続部材32Bに対してクラッチ受け322Bが回転しないように、クラッチ受け322Bは、接続部材32Bの外周面に対して、スプライン結合や、後述するピン部材39Bと、このピン部材39Bと同様のピン部材を用いて、連結されている。
【0055】
ここで、大径部323Bの軸方向(X方向)の他端側(X2側)には係止突起324Bが設けられていて、その係止突起324Bは大径部323Bよりも外径側に向かって突出している。この係止突起324Bには、リング状のばね受け35Bが配置されている。そして、ばね受け35Bとクラッチ受け322Bの間には、ばね部材36Bが配置されている。なお、接続部材32Bとモータ軸25は、上述の第1の実施の形態における構成と同様に同一軸心で強固に圧入固定されている。したがって、ばね部材36Bは、調整部材34の締め込みにより、第2フリクションクラッチ機構30B2とロータ24を介してクラッチ板31をクラッチ受け322Bに向けて押圧し、ばね部材36Bはばね部材33と共に押圧力を調整可能に受け止め伝達している。なお、ばね部材36Bは、ばね部材33と同様に、複数の皿ばね33Baを軸方向(X方向)に重ねることで構成されている。
【0056】
また、第2フリクションクラッチ機構30B2は、ロータ24の軸方向(X方向)の一方側(X1側)に配置されている。この第2フリクションクラッチ機構30B2は、クラッチ板37Bと、クラッチ受け38Bと、ばね部材33とを有している。
【0057】
これらのうち、クラッチ板37Bは、軸方向(X方向)の一方側(X1側)のエンドリング241に固定されている。また、クラッチ板37Bの一方側(X1側)の面に当接するクラッチ受け38Bは、その一方側(X1側)の面がばね部材33によって押圧されていて、このばね部材33での押圧によって、クラッチ受け38Bとクラッチ板37Bの間には、所定の摩擦力を生じさせている。
【0058】
ここで、モータ軸25にはピン部材39Bを挿入するためのピン孔25aが、径方向に沿って貫くように形成されている。このピン孔25aに挿入されるピン部材39Bは、上述したクラッチ受け38Bのピン挿通孔38Baにも挿入される。なお、ピン挿通孔38Baは、上記のピン孔25aと同様に、径方向に沿って形成されている幅狭の孔部分である。ここで、クラッチ受け38Bを軸方向(X方向)に沿って移動可能とするために、ピン挿通孔38Baは、クラッチ受け38Bを軸方向(X方向)に貫いている。したがって、クラッチ受け38Bは、ばね部材33による押圧状態の変動によって軸方向(X方向)に移動可能である。しかしながら、クラッチ受け38Bが回転方向へ移動することは、ピン部材39Bによって阻止されている。
【0059】
以上のような構成のフリクションクラッチ機構30Bを用いる場合、第1フリクションクラッチ機構30B1と第2フリクションクラッチ機構30B2の2つのフリクションクラッチ機構を用いることができるので、フリクションクラッチ機構30Bの寿命を延ばすことが可能となる。また、2つのフリクションクラッチ機構を用いることができるので、ロータ24が小径でも伝達する負荷トルクの値を高くすることが可能となる。さらに、クラッチ板31とクラッチ受け322B間にはたらく押圧力は、ベアリングB1、B2に作用しないので、調整部材34による締め付けを高くすることが可能で、高トルクのモータを採用した電気チェーンブロック10にフリクションクラッチ機構30Bを適用することが可能となる。なお、調整部材34の捻じ込みの程度を調整することにより、ばね部材33,36Bの付勢力を容易に行うことが可能となっており、その付勢力の調整によって、クラッチ板31,37Bとクラッチ受け322B,28Bとの間の摩擦力を調整可能となっている。
【0060】
また、本実施の形態では、クラッチ受け322Bは接続部材32Bとは別体のリング状に設けられていて、そのクラッチ受け322Bは、接続部材32Bの外周面に対して一体回転する状態で結合されている。
【0061】
このため、接続部材32Bに対してクラッチ受け322Bを独立した状態で軸方向(X方向)に移動させることができるので、
図6に示すように、接続部材32Bの外周側にばね部材36Bを配置することが可能となる。
【0062】
なお、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態における構成と同様の効果を生じさせることが可能となっている。すなわち、本実施の形態の構成は、接続部材とクラッチ受けとが別個独立してモータ軸25の軸方向(X方向)に配置されている構成と比較して、モータ軸25の軸方向(X方向)長さを短くしてモータ部20(クラッチ付きモータ)の小型化することが可能となる。
【0063】
また、上述の実施の形態では、特許文献2に開示の大径の中空シャフトが接続部材と同径となっているのとは異なり、モータ軸25は、接続部材32Bの筒状部321Bよりも小径の中実軸となっている。このため、モータ部20(クラッチ付きモータ)が径方向に大型化するのを防止することが可能となる。また、フリクションクラッチ機構30が作動したときの振動を、モータ軸25の一端側を軸受けしているベアリングB4よりも大径のベアリングB3で、クラッチ受け322を有する接続部材32の筒状部321を直接軸受けしているので、軸受け寿命が向上し、かつ、フリクション性能も安定している。
【0064】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係る、モータ部20(クラッチ付きモータ)を備える電気チェーンブロック10について説明する。なお、本実施の形態のモータ部20(クラッチ付きモータ)は、第1の実施の形態に係るモータ部20と同様の構成となっている。したがって、以下の説明では、第1の実施の形態と共通する部分については、同一の符号を用いて説明する。
【0065】
本実施の形態では、フリクションクラッチ機構30の構成が、上述した第1の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構30および第2の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構30Bと異なっている。以下の説明では、第3の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構30を、フリクションクラッチ機構30Cと称呼し、フリクションクラッチ機構30Cの独自構成については、符号の後ろにアルファベット「C」を加えて説明する。
【0066】
図7は、第3の実施の形態に係るフリクションクラッチ機構30Cを有するモータ部20の構成を示す断面図である。
図7に示すように、本実施の形態では、モータケーシング21Cの軸方向(X方向)のエンドカバー21C1に、軸孔21C2が形成されている。そして、この軸孔21C2にベアリングB4が配置され、モータ軸25CはベアリングB4よりも軸孔21C2の外方側に向かって延出している。この延出部の先端部分には図示を省略する雄ネジ部が形成されていて、この雄ネジ部に調整部材34Cがねじ込まれている。調整部材34CとベアリングB4の間には、ばね部材33Cを構成する皿ばね33Caが配置され、調整部材34Cをねじ込むことによってばね部材33CとベアリングB4のインナーレースを押圧している。ベアリングB4とベアリングB1間には中空軸状のスペーサS1Cが配置され、両方のインナーレースを介して押圧力はロータ24に伝達されている。したがって、モータ軸25Cは、第1の実施の形態および第2の実施の形態のモータ軸25よりも軸方向(X方向)の長さが同じか長く設けられている。
【0067】
また、モータ軸25Cの軸方向(X方向)の先端側は、モータケーシング21Cの外部に位置しているが、その先端側には、樹脂製キャップ21C3が配置されていて、モータケーシング21Cの内部、及び、モータ軸25Cの一端部、調整部材34C、ばね部材などへの粉塵や雨水の侵入を防止するように、軸孔21C2を封止している。また、モータケーシング21Cのベアリング取付部211aにはベアリングB3と共にベアリング用の波ワッシャーZWが配置され、クラッチ板31の摩耗などによる厚さ変動を吸収しモータ軸25のガタツキを防止している。
【0068】
このように構成する場合には、モータ軸25Cの先端側は、モータケーシング21Cの軸孔21C2に位置していると共に、当該軸孔21C2に位置するモータ軸25Cの雄ネジ部には、ばね部材33C(付勢手段)の付勢力を調整する調整部材34Cが捻じ込まれている。
【0069】
このように、調整部材34Cは、モータケーシング21Cの外部に配置されているので、モータケーシング21Cを分解しなくても、ナットである調整部材34Cを捻じ込む作業が可能となる。したがって、調整部材34Cの捻じ込み量(捻じ込みトルク)を調整するだけで、モータ22の組み立て後であって、モータケーシング21を取り付ける前に、調整部材34の捻じ込みの程度を調整することにより、ばね部材33Cの付勢力を容易に行うことが可能となっている。したがって、その付勢力の調整によって、フリクションクラッチ機構30Cの摩擦力を調整することが可能となる。
【0070】
なお、フリクションクラッチ機構30Cにおいては、上述した第1の実施の形態のフリクションクラッチ機構30と同様の作用効果を生じさせることが可能となっている。
【0071】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0072】
上述の第3の実施の形態においては、上述の第2の実施の形態で述べたのと同様のフリクションクラッチ機構30Bを用いるようにしても良い。すなわち、フリクションクラッチ機構30Cにおいては、第1フリクションクラッチ機構30B1と同様の第1フリクションクラッチ機構を用いると共に、第2フリクションクラッチ機構30B2と同様の第2フリクションクラッチ機構を用いるようにしても良い。
【0073】
また、例えば
図7に示すモータ軸25Cの一端側をさらに延長してエンドカバー21C1よりも軸方向(X方向)の一方側に突出させて、冷却用ファンを取り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0074】
10…電気チェーンブロック、20…モータ部(クラッチ付きモータに対応)、21,21C…モータケーシング、21A1,21C1…エンドカバー、21C2…軸孔、21C3…樹脂製キャップ、22…モータ、23…ステータ、24…ロータ、25,25C…モータ軸、25a…ピン孔、30,30B,30C…フリクションクラッチ機構、30B1…第1フリクションクラッチ機構、30B2…第2フリクションクラッチ機構、31,37B…クラッチ板、32,32B…接続部材、33,33C…ばね部材(付勢手段に対応)、33a,33Ba…皿ばね、34,34C…調整部材、35B…ばね受け、36B…ばね部材、38B…クラッチ受け、38Ba…ピン挿通孔、39B…ピン部材、40…駆動伝達軸、41…スプライン、42…ギヤ部、50…減速機構、51…伝達ギヤ、60…ロードシーブ、70…ブレーキ機構、80…制御回路、90…上フック、100…下フック、211a,211b…ベアリング取付部、231…コイル、231a…突出部分、241…エンドリング、241a…平坦面、241b…ボス部、241c…突出部、241d…取付用凹部、242…挿通孔、242a…軸受取付部、251…スプライン、311…リング状部、312…嵌合部(突出片部)、321,321B…筒状部、321a…スプライン溝、322,322B…クラッチ受け、323B…大径部、324B…係止突起、B1~B4…ベアリング、C1…チェーン、S1,S1C…スペーサ、Z1…座金、ZW…波ワッシャー