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特許7451034熱交換器用タンクおよびそのタンクを具備する熱交換器
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  • 特許-熱交換器用タンクおよびそのタンクを具備する熱交換器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】熱交換器用タンクおよびそのタンクを具備する熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240311BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28D1/053 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020041845
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143782
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】池田 純也
(72)【発明者】
【氏名】石井 紀之
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-130979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0081363(US,A1)
【文献】特開2020-024080(JP,A)
【文献】特開平07-260392(JP,A)
【文献】国際公開第2019/161473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02 - 9/18
F28D 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流体(21)が流通する複数の第1流路と外部流体が流通する複数の第2流路とが交互に設けられた熱交換器用のコア(10)と、前記複数の第1流路の開口が設けられた熱交換器用のコア(10)の端面に接続されるタンク本体(1)とを備え、
タンク本体(1)は、内部流体(21)が流入される入口側のタンク本体(1)であり、
タンク本体(1)は、前記端面に対向する底部(2)と部(2)の外周縁から立ちあげられその内側の開口部(4)がコア(10)の前記端面に接続される側面部(3)とを有し、
部(2)、面部(3)、又は部(2)と側面部(3)の付根のコーナー部(22)のうち少なくとも1つの部分が、他の部分より肉厚に形成された肉厚部(2a)を有する熱交換器用タンクであって、
ンク本体(1)の肉厚部(2a)に、タンク本体(1)内の内部流体(21)の熱を伝達する伝熱促進用の突起(5)が、肉厚部(2a)の厚さよりも大きい寸法で突設された熱交換器用タンク。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器用タンクにおいて、
タンク本体(1)は、前記複数の第1流路の開口が並べられた方向に細長状を呈し、
起(5)タンク本体(1)の長手方向に平行に連続したリブ状を呈し、
突起(5)はタンク本体(1)の長手方向と直交する方向に間隔をおいて複数設けられている熱交換器用タンク。
【請求項3】
請求項2記載の熱交換器用タンクにおいて、
底部(2)は、その厚さが側面部(3)よりも肉厚に形成された肉厚部(2a)として形成され、
突起(5)は底部(2)から突設され、
タンク本体(1)の長手方向と直交する方向から側面部(3)に、タンク本体(1)の内部に内部流体(21)を流入させるパイプ(19)が接続され、
複数の突起(5)には、パイプ(19)から流入される内部流体(21)を通過させる欠切部(5a)が前記端面側に開放状に形成されている熱交換器用タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換器用タンクに関し、特に、タンクの変形によりコア(チューブ)に生じる熱応力の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換器には、図7に示すような、押出し材からなるタンクを用いることがあり、このタンク本体1は、底部2とその底部2の外周縁から立ち上げられた側面部3を有し、このタンク本体1と熱交換器のコアとの接触部で、溶接することにより、熱交換器を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の押出し材からなるタンク本体1を用いる場合、搭載強度やタンクと搭載用部品との溶接性確保のため、そのタンク本体1の肉厚は均一ではなく、底部2、側面部3、又はそれらの付根に位置するコーナー部22のうち少なくとも1つの部分が、他の部分より、肉厚が厚くなる肉厚部2aが形成される場合がある。
その場合に、前記タンク本体1の前記肉厚部2aの部分は、肉厚が厚い分、肉厚が厚くない部分の温度上昇よりも、内部流体の温度変化に対する追従が遅くなる。
それ故、この構造を持つタンクでは、図8に記載のように、そのタンクの内部に熱応力が生じてタンクが反ることにより、コア、特にその構成要素となるチューブ(第1流路)の端部に応力が発生する問題がある。
この問題は上記押出し材からなるタンクの他、鋳造からなるタンクなどタンク本体の肉厚が均一でない構造の場合に生じる。
そこで、本発明は、簡単な構造で、タンクの変形によりコアのチューブの端部に生じる熱応力を効率よく低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の本発明は、底部2と前記底部2の外周縁から立ちあげられた側面部3とを有し、
前記底部2と対向して開口部4が設けられ、
前記底部2、前記側面部3、又は前記底部2と側面部3の付根のコーナー部22のうち少なくとも1つの部分が、他の部分より肉厚に形成された肉厚部2aを有するタンク本体1を具備し、
前記タンク本体1の肉厚部2aに、タンク内の内部流体21の熱を伝達する伝熱促進用の突起5が突設された熱交換器用タンクである。
【0005】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器用タンクにおいて、
前記タンク本体1の肉厚部2aに前記伝熱促進用の突起5が一体に形成されている熱交換器用タンクである。
【0006】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱交換器用タンクにおいて、
前記伝熱促進用の突起5が前記タンク本体1の長手方向に平行に連続したリブ状の突起5で形成された熱交換器用タンクである。
【0007】
請求項4に記載の本発明は、請求項1~請求項3のいずれかに記載の熱交換器用タンクを具備する熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、熱交換器のタンク本体1の肉厚部2aに、タンク内の内部流体21の熱を伝達する伝熱促進用の突起5が突設されたものである。
この構造により、タンクの板厚が厚い肉厚部2aへの内部流体21からの伝熱を促進し、タンクの板厚が薄い部分との温度差が少なくなることで、タンクが反ることを抑制し、コア、特にその構成要素となるチューブ(第1流路)の端部に生じる応力を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、熱交換器のタンク本体1の肉厚部2aに伝熱促進用の突起5を一体成形で形成するものである。この構造により、タンク内の内部流体21の熱を肉厚部2aに伝達する伝熱促進用の突起5を有する熱交換器用タンクの製作が容易となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、伝熱促進用の突起5がタンク本体1の長手方向に平行に連続したリブ状の突起5で形成されたものである。
この構造により、押出し材でも伝熱促進用の突起5を持つ熱交換器用タンクの製作が容易となる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、上記いずれかの熱交換器用タンクを具備した熱交換器である。
この構成により、製造が容易で熱応力の低減が期待できる熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例のタンク本体1を具備する熱交換器の要部分解斜視図。
図2】同第1実施例のタンク本体1を具備する熱交換器の組立て斜視図。
図3】同第1実施例のタンク本体1を具備する熱交換器の作用を示す説明図。
図4】本発明の第2実施例のタンク本体1を示す斜視図及び断面図。
図5】同第2実施例のタンク本体1を具備する熱交換器の要部組立て斜視図。
図6】本発明の第3実施例のタンク本体1を示す斜視図及び断面図。
図7】従来型熱交換器のタンクを具備する熱交換器の要部断面図。
図8】同従来型熱交換器のタンクを使用することによる問題点を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施例につき、説明する。
図1は、本発明の第1実施例のタンク本体1を具備する熱交換器の要部分解斜視図であり、図2は、その熱交換器の組立て斜視図である。図3は、その作用を示す説明図である。
熱交換器に使用されるコア10は、一例として図1に記載の如く、形成することができる。
【0014】
コア10は、内部流体21が流通する第1流路と外部流体が流通する第2流路が、交互に形成されてなる。
内部流体21が流通する第1流路は、一対の板材14とそれらの板材14の間に配置される一対の第2バー材13とにより、偏平のチューブ状に形成されており、その第1流路の両端部が開口している。この例では、第1流路の内部に、図3(B)に示す如く、インナフィン15が挿入されている。なお、インナフィン15は、第1流路に挿入しなくても良い。
偏平のチューブ状の第1流路の外面側には、図2に記載のように、その第1流路の上下端に隣接して、一対の第1バー材12が配置される。この例では、一対の第1バー材12の間に、図1図2図3(A)に示す如く、アウタフィン11が配置され、外部流体が流通する第2流路が形成される。
そして、一対の第1バー材12を介して、第1流路が複数並列されている。また、第1流路の並列方向の両端部には、第1バー材12を介して、端板16が配置されている。
【0015】
図3(A)に示す如く、第1バー材12の端面は平坦に形成され、各第1流路の開口端と面一になるように配置されている。コア10がタンク本体1と接続された時に、内部流体21を各第1流路に導くことができるように構成されている。コア10の各第1流路の開口と各第1バー材12の平坦な端面に、タンク本体1の開口部4が接続される。
そして、各第1流路に内部流体21が流通し、各第2流路に外部流体が流通し、内部流体21と外部流体との間で熱交換が行われる。
本発明の熱交換器用タンクと接続するコア10の構造は、上述及び図面に示すコア10の構造に限定されるものではない。
【0016】
本発明の特徴は、コア10と接続されるタンク本体1の形状にある。
第1実施例のタンク本体1は、押出し材からなるものである。
タンク本体1は、底部2とその底部2の外周縁から立ちあげられた側面部3とを有し、底部2に対向して開口部4が設けられている。また、この例では、底部2の板厚が側面部3よりも肉厚に形成された肉厚部2aを有する。
この例のタンク本体1は、図1及び図2に示す如く、その短手方向の両端縁に一体に立ち上げられた一対の側面部3が形成されている。タンク本体1の長手方向の両端部には、蓋材取付部18が設けられ、その蓋材取付部18に整合する蓋材17が接続されている。タンク本体1の長手方向の両端部の側面部3は、蓋体17により形成される。
また、タンク本体1の肉厚部2aには、タンク内の内部流体21と接する伝熱促進用の突起5が突設されている。
【0017】
この例では、タンク本体1の長手方向に平行に連続したリブ状(板状)の伝熱促進用の突起5が、タンク本体1の短手方向に複数並列して形成されており、各突起5がタンク本体1の肉厚部2aと一体に形成されている。リブ状(板状)の突起5は、タンク本体1の内部側に向いており、底部2の面に対して垂直に突設されている。
底部2と側面部3との付根のコーナー部22では、図1図3(B)に示す如く、肉厚部2aの厚みが増す。そのため、このコーナー部22にも、リブ状(板状)の突起5を設けることが好ましい。そして、各リブ状の突起5の厚さは、伝熱促進用であるため、側面部3の厚さと略同程度、若しくはそれ以下とすることが好ましい。また、このリブ状(板状)の突起5は、内部流体21の液面に接する程度にその先端を伸ばしておくことが好ましい。
タンク本体1の短手方向の一対の側面部3の一方側には、内部流体21をタンク本体1の内部に流入させるための孔20が設けられており、その孔20にパイプ19が取付けられる。前述の複数並列した各リブ状の突起5には、孔20の位置に整合するように、欠切部5aが設けられている。この欠切部5aは、内部流体21の流入を阻害しないために設けられる。
【0018】
このようなタンク本体1の開口部4とコア10とが溶接により接合され、熱交換器が形成される。
図3に示す如く、熱交換器のタンク本体1に内部流体21が流入すると、板厚の薄い側面部3に内部流体21の熱が伝わると共に、タンク本体1内に突設された各リブ状(板状)の突起5に内部流体21の熱が伝わる。
その熱は、各リブ状(板状)の突起5から底部2に伝達される。このような突起5の効果により、タンク本体1の板厚が厚い肉厚部2aへ熱が伝達されるため、突起5のないタンク本体1に比べて、タンク本体1の板厚が薄い側面部3との温度差が少なくなる。その結果、タンク本体1の熱応力を少なくすることができる。
また、本実施例は、タンク本体1と突起5が一体に形成されているため、製造しやすい。さらに、タンク本体1が押出し材からなるものであるため、タンク本体1の長手方向に平行に連続したリブ状の突起5を形成することが容易となる。
なお、突起5は、内部流体21の入口側のタンク本体1に形成すればよく、内部流体21の出口側のタンク本体1には設けても、設けなくても良い。さらに、この実施例では、タンク本体1に一体として突起5が形成されているが、突起5を別部材で形成し、タンク本体1の底部2の肉厚部2aに取付けることもできる。
【0019】
図4(A)は、本発明の第2実施例のタンク本体1を開口部4側から見た斜視図であり、同図(B)は図4(A)のB-B矢視断面図であり、同図(C)は図4(A)のC-C矢視断面図である。図5は、そのタンク本体1を具備する熱交換器の要部組立て斜視図である。
第2実施例のタンク本体1は、鋳造からなるものである。
鋳造によりタンク本体1を製造するため、図4に示すように、その底部2の形状をある程度自由に変形することが可能である。そして、底部2の全外周の縁から側面部3を立ちあげることが可能であるため、押出し材からなるタンク本体1に比べ、蓋体17等の部材を削減することができる。第2実施例においても、底部2は側面部3よりも肉厚に形成された肉厚部2aを有している。
第2実施例のタンク本体1に形成されている突起5は、第1実施例の突起5と同じく、タンク本体1の長手方向に平行に連続したリブ状(板状)の突起5である。
そのタンク本体1とコア10とを、溶接により接続して、図5に示す熱交換器を形成する。
【0020】
図6(A)は、本発明の第3実施例のタンク本体1を開口部4側から見た斜視図であり、同図(B)は図6(A)のB-B矢視断面図であり、同図(C)は図6(A)のC-C矢視断面図である。
第3実施例のタンク本体1も、第2実施例と同様に鋳造からなるものである。
この例が第2実施例と異なる点は、リブ状(板状)の突起5に替えて、タンク本体1の長手方向に沿って複数の柱状の突起5の列を形成するとともに、タンク本体1の短手方向に沿って、柱状の突起5の列を並列させたものである。第3実施例においても、底部2は側面部3よりも肉厚に形成された肉厚部2aを有している。
この柱状の突起5は、内部流体21の流入を阻害する要素となり難いため、第1実施例や第2実施例で形成された欠切部5aのように、孔20の位置に整合する突起5の突出長さを調整する必要がない。
【0021】
上記いずれの実施例も、タンク本体1の底部2に肉厚部2aが形成された実施例を示したが、肉厚部2aの形成位置はこれに限られない。
底部2、側面部3、又はコーナー部22のうち少なくとも1つの部分に、他の部分より肉厚の厚い肉厚部2aが形成されていても良い。
例えば、肉厚部2aは側面部3に形成されていても良い。コーナー部22にのみ肉厚部2aが形成されていても良い。
側面部3に肉厚部2aが形成される場合、伝熱促進用の突起5は側面部3に形成される。コーナー部22にのみ肉厚部が形成されている場合、伝熱促進用の突起5は、コーナー部22からコア10側に突出させることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 タンク本体
2 底部
2a 肉厚部
3 側面部
4 開口部
5 突起
5a 欠切部
【0023】
10 コア
11 アウタフィン
12 第1バー材
13 第2バー材
14 板材
15 インナフィン
16 端板
【0024】
17 蓋材
18 蓋材取付部
19 パイプ
20 孔
21 内部流体
22 コーナー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8