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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】生体状態推定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240311BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240311BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240311BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240311BHJP
   G01S 13/536 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/113
A61B5/00 102A
G08B21/02
G01S13/536
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020083450
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021177830
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】米澤 真也
(72)【発明者】
【氏名】小礒 康正
(72)【発明者】
【氏名】小島 和也
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155071(JP,A)
【文献】特開2019-061643(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183528(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216363(WO,A1)
【文献】特開2017-000484(JP,A)
【文献】特開2012-005745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/00
G08B 19/00 - 21/24
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信電波を放射して前記送信電波の反射波を受信するとともに前記送信電波と前記反射波とを混合してビート信号を生成する送受信部と、
前記送受信部から出力される前記ビート信号の位相を計算する位相計算部と、
前記送受信部から出力される前記ビート信号のデータと前記位相計算部から出力される前記位相のデータとのそれぞれから静止物からの反射波に相当する成分を除去する静止物反射除去部と、
前記送受信部から出力される前記ビート信号のデータと前記位相計算部から出力される前記位相のデータとのそれぞれから体動に相当する成分を除去する体動成分除去部と、
前記2つの成分の除去後の前記位相のデータを用いて前記送受信部と物標としての生体との相対速度を算出する速度算出部と、
前記相対速度が前記生体の呼吸の速度よりも大きい場合に前記生体が移動状態である判断する移動状態推定部と、
前記相対速度が前記生体の前記呼吸の速度以下であり、且つ、前記2つの成分の除去後の前記ビート信号のデータを高速フーリエ変換して得られる周波数スペクトルの分布のうちの特定の周波数範囲のスペクトル強度の合計前記特定の周波数範囲以外の所定の領域のスペクトル強度の合計よりも大きい場合に前記生体が安静状態である判断する安静状態推定部と、
前記特定の周波数範囲のスペクトル強度の合計が前記特定の周波数範囲以外の所定の領域のスペクトル強度の合計以下である場合に前記2つの成分の除去後の前記ビート信号の振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布であるか否かに基づいて前記生体が不在状態であるか否かを判断する不在状態推定部と、を有
前記特定の周波数範囲が、0Hz~5Hz未満に設定される、
ことを特徴とする生体状態推定装置。
【請求項2】
記生体の前記呼吸の速度が、1cm~10cm/秒に設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体状態推定装置。
【請求項3】
前記生体の状態の推定結果が、前記安静状態から、前記移動状態を経ることなく、前記不在状態へと推移した場合に、前記生体が危険状態にあると判断する危険状態検知部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の生体状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体状態推定装置に関し、具体的には、レーダーセンサを用いて生体の移動状態、安静状態、および不在状態を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の人感センサとして、焦電センサや赤外線センサ、カメラが主に用いられており、生体の動作を検出して見守りなどが行われる。具体的には例えば、介護施設などにおいて利用者の見守りを行う技術として、各部屋に設置された利用者用センサと、各部屋に設置された利用者用ビデオカメラと、利用者の情報を表示する介護者用端末とを備える見守りシステムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-132795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、焦電センサや赤外線センサでは、ドアの開閉や生体の歩行などによって受信レベルが著しく変化することを利用して存在の有無を判別している。この際、受信レベル(別言すると、振幅)に関する閾値を予め設定してこの閾値と実際に観測される受信レベル(振幅)とを比較することによって判別するため、受信レベル(振幅)に関する閾値の設定が困難であり、結果として、動作の小さい安静状態のときに不在状態と誤認識するケースが多々ある、という問題がある。さらに、センサを使用する環境ごとに手動で受信レベル(振幅)に関する閾値を設定する必要があり、手間がかかるとともに、使用環境が変化するたびに閾値の設定を変更しないと誤認識してしまう、という問題がある。また、特許文献1に記載の技術のようにカメラを用いる場合には、プライバシーが侵害される、という問題があり、さらに、映像では睡眠時と生体の危機的状況とを判別することができない、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、プライバシーを侵害することなく、また、使用環境ごとに閾値を手動で設定することなく、生体の移動状態、安静状態、および不在状態を高精度に判別することが可能な、生体状態推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、送信電波を放射して前記送信電波の反射波を受信するとともに前記送信電波と前記反射波とを混合してビート信号を生成する送受信部と、前記送受信部から出力される前記ビート信号の位相を計算する位相計算部と、前記送受信部から出力される前記ビート信号のデータと前記位相計算部から出力される前記位相のデータとのそれぞれから静止物からの反射波に相当する成分を除去する静止物反射除去部と、前記送受信部から出力される前記ビート信号のデータと前記位相計算部から出力される前記位相のデータとのそれぞれから体動に相当する成分を除去する体動成分除去部と、前記2つの成分の除去後の前記位相のデータを用いて前記送受信部と物標としての生体との相対速度を算出する速度算出部と、前記相対速度が前記生体の呼吸の速度よりも大きい場合に前記生体が移動状態である判断する移動状態推定部と、前記相対速度が前記生体の前記呼吸の速度以下であり、且つ、前記2つの成分の除去後の前記ビート信号のデータを高速フーリエ変換して得られる周波数スペクトルの分布のうちの特定の周波数範囲のスペクトル強度の合計前記特定の周波数範囲以外の所定の領域のスペクトル強度の合計よりも大きい場合に前記生体が安静状態である判断する安静状態推定部と、前記特定の周波数範囲のスペクトル強度の合計が前記特定の周波数範囲以外の所定の領域のスペクトル強度の合計以下である場合に前記2つの成分の除去後の前記ビート信号の振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布であるか否かに基づいて前記生体が不在状態であるか否かを判断する不在状態推定部と、を有前記特定の周波数範囲が、0Hz~5Hz未満に設定される、ことを特徴とする生体状態推定装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生体状態推定装置において、前記生体の前記呼吸の速度が、1cm~10cm/秒に設定される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の生体状態推定装置において、前記生体の状態の推定結果が、前記安静状態から、前記移動状態を経ることなく、前記不在状態へと推移した場合に、前記生体が危険状態にあると判断する危険状態検知部をさらに有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び2に記載の発明によれば、例えば壁や床などの静止物からの反射波に相当する成分を自律的に除去するようにしているので、使用環境ごとに閾値を設定することなく、言い換えると、使用環境に影響を受けることなく、また、使用環境に依存することなく、生体の不在状態、安静状態、および移動状態を高精度に判別することが可能となる。請求項1に記載の発明によれば、また、移動状態、安静状態、そして不在状態というように動作の大きい順に段階的に状態を区分して特定するようにしているので、無駄なく効率的に且つ精度高く、生体の状態を推定することが可能となる。
【0011】
また、請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、観測対象の生体が人である場合に特に、移動状態であるか否かを適切に判断することが可能となる。
【0012】
また、請求項1及び請求項に記載の発明によれば、観測対象の生体が人である場合に特に、安静状態であるか否かを適切に判断することが可能となる。
【0013】
請求項に記載の発明によれば、生体が移動状態、安静状態、および不在状態のうちのいずれであるかに加えて生体が危険状態にあることを検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態に係る生体状態推定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2図1の生体状態推定装置における処理手順を示すフロー図である。
図3】位相変位を速度に変換する処理、および、生体が移動状態であるか否かを判断する処理を説明する図である。
図4】生体が安静状態であるか否かを判断する処理を説明する図である。(A)は生体が不在状態であるときの周波数スペクトルの分布を示す図である。(B)は生体が安静状態であるときの周波数スペクトルの分布を示す図である。
図5】生体が不在状態であるか否かを判断する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。図1は、この発明の実施の形態に係る生体状態推定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。また、図2は、実施の形態に係る生体状態推定装置1における処理手順を示すフロー図である。生体状態推定装置1は、レーダーセンサを用いて生体の移動状態、安静状態、および不在状態を推定するための仕組みであり、送受信部2と、推定装置3と、を有する。なお、生体としては、例えば、人や、飼育されたり保護されたりしている種々の動物が挙げられる。
【0016】
そして、この実施の形態に係る生体状態推定装置1は、送信電波を放射して送信電波の反射波を受信するとともに送信電波と反射波とを混合してビート信号を生成する送受信部2と、送受信部2から出力されるビート信号の位相を計算する位相計算部(位相計算タスク33a)と、送受信部2から出力されるビート信号のデータと位相計算部(位相計算タスク33a)から出力される位相のデータとのそれぞれから静止物からの反射波に相当する成分を除去する静止物反射除去部(静止物反射除去タスク33b)と、送受信部2から出力されるビート信号のデータと位相計算部(位相計算タスク33a)から出力される位相のデータとのそれぞれから体動に相当する成分を除去する体動成分除去部(体動成分除去タスク33c)と、前記2つの成分の除去後の位相のデータを用いて送受信部2と物標としての生体との相対速度を算出する速度算出部(速度算出タスク33d)と、相対速度に基づいて生体が移動状態であるか否かを判断する移動状態推定部(移動状態推定タスク33e)と、前記2つの成分の除去後のビート信号のデータを高速フーリエ変換して得られる周波数スペクトルの分布のうちの特定の周波数範囲のスペクトル強度の合計と前記特定の周波数範囲以外の所定の領域のスペクトル強度の合計との比較に基づいて生体が安静状態であるか否かを判断する安静状態推定部(安静状態推定タスク33g)と、前記2つの成分の除去後のビート信号の振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布であるか否かに基づいて生体が不在状態であるか否かを判断する不在状態推定部(不在状態推定タスク33h)と、を有する、ようにしている。
【0017】
この実施の形態に係る生体状態推定装置1は、さらに、生体の状態の推定結果が、安静状態から、移動状態を経ることなく、不在状態へと推移した場合に、生体が危険状態にあると判断する危険状態検知部(危険状態検知タスク33i)を有する、ようにしている。
【0018】
送受信部2は、所定の領域についてレーダースキャンを行うとともに送信波と反射波とを混合してビート信号を生成するための機序であり、送信波としてマイクロ波を照射する送信部21と、前記マイクロ波の反射波を検出する受信部22とを備える。送信部21から照射されるマイクロ波の周波数帯は、例えば24GHz帯が挙げられるものの、24GHz帯には限定されない。また、前記における所定の領域は、観測対象の生体が居る空間であり、例えば居住空間や飼育スペース、保護区画などの生体の生活空間/活動空間が挙げられる。
【0019】
送信部21は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave の略;周波数変調連続波)方式のレーダーを送信用アンテナ211を介して送信する。FMCW方式のレーダーは、時間の経過に応じて周波数変調を行う連続発振レーダーであり、複数のチャープを含むバースト波を生成して照射する。バースト波に含まれる各チャープは、周波数が時間的に掃引されて(具体的には、時間経過に伴って周波数が線形的に変化するように)生成される。
【0020】
送信部21は、例えば、時間軸上で周波数が次第に高くなる変調区間と周波数が次第に低くなる変調区間とが交互に連続的に設けられて三角波形状に変化する送信信号を生成するための制御電圧値のデジタルデータをデジタル-アナログ変換して制御電圧信号を生成するとともに、前記制御電圧信号に応じて送信信号を生成して送信用アンテナ211へと伝送する。また、送信信号の一部が、所定の分配比で、ローカル信号として受信部22へも伝送される。
【0021】
そして、送信部21の送信用アンテナ211は、伝送される送信信号に基づく送信電波を放射する。
【0022】
FMCW方式のレーダーでは、送信波と受信波(即ち、反射波)との差分を解析することにより、送受信部2と物標との間の距離や送受信部2と物標との相対速度などが計算される。なお、チャープの周波数の変調幅や変調の周期(即ち、チャープの繰返し周期)は適宜調節されるようにしてよく、また、複数のチャープをすべて同一波形とするか一部のチャープを異なる波形とするかが適宜選択されるようにしてよい。
【0023】
受信部22は、送信部21の送信用アンテナ211から放射されるFMCW方式のレーダーの反射波(具体的には、反射電波)を受信用アンテナ221を介して受信するとともに、反射波のToF(Time of Flight の略)に比例する中間周波数へのダウンコンバート処理を施した信号を生成して出力する。
【0024】
例えば、受信部22の受信用アンテナ221は、送信用アンテナ211から放射される送信電波が反射して戻ってくる反射電波を受信して受信信号を生成して出力する。受信信号は、同レベル比で分割されて、後の処理へと供給される。
【0025】
ここで、送信部21から受信部22へと伝送されるローカル信号は、同レベル比で分割され、分割されたうちの一方はそのまま後の処理へと供給され、分割されたうちの他方はπ/2の位相回転処理が施されたうえで後の処理へと供給される。
【0026】
そして、受信部22は、受信用アンテナ221から出力される受信信号のうちの分割された一方の信号と、送信部21から伝送されるローカル信号のうちの分割された一方の信号(即ち、π/2位相回転処理が施されていない方の信号)とを混合して、中間周波数信号(IF信号:Intermediate Frequency signal)であるビート信号を、具体的には、送信信号と同相(In Phase)成分のI信号を生成する。
【0027】
受信部22は、また、受信用アンテナ221から出力される受信信号のうちの分割された他方の信号と、送信部21から伝送されるローカル信号のうちの分割されたうえでπ/2位相回転処理が施された方の信号とを混合して、中間周波数信号(IF信号)であるビート信号を、具体的には、送信信号に対して直交位相(Quadrature Phase)成分のQ信号を生成する。
【0028】
受信部22は、続いて、I信号に対して、必要に応じて不要な周波数成分の除去処理や信号レベルの増幅処理を施したうえで、アナログ-デジタル変換処理を施して、デジタル信号化したI信号を生成して出力する。
【0029】
受信部22は、また、Q信号に対して、必要に応じて不要な周波数成分の除去処理や信号レベルの増幅処理を施したうえで、アナログ-デジタル変換処理を施して、デジタル信号化したQ信号を生成して出力する。
【0030】
なお、ToFは、送信されたレーダーが反射波として受信されるまでの時間であり、つまり送受信部2とレーダーを反射させた物との間の距離に比例する値である。ToFを用いることにより、送受信部2とレーダーを反射させた物(物標)との間の距離やレーダーを反射させた物(物標)に纏わる速度が計算される。
【0031】
送受信部2によるレーダースキャンは、所定の時間間隔で連続的に繰り返し行われる。そして、受信部22から、デジタル信号化されたビート信号(具体的には、I信号とQ信号との組み合わせ)が、前記所定の時間間隔で連続して継続的に出力される(ステップS1)。
【0032】
推定装置3は、送受信部2から出力されるビート信号に基づいて生体の状態を推定するための機序であり、主として、入力受部31と、記憶部32と、メインタスク33と、中央処理部34と、を備える。
【0033】
中央処理部34は、推定装置3を構成する各部を統制して制御などする機能を備え、例えば、CPU(Central Processing Unit の略)などを用いたプロセッサによって構成されたり、記憶部32に格納されたプログラムに従って各機能を実現するものとして構成されたりする。
【0034】
入力受部31は、受信部22から出力されるビート信号(具体的には、I信号とQ信号との組み合わせ)の入力を受け、入力された前記ビート信号(I信号とQ信号との組み合わせ;図2においては「IQデータ」)を記憶部32に記憶させる(ステップS2)。
【0035】
記憶部32は、例えばハードディスクやメモリであり、各種の情報、プログラム、およびデータなどを記憶する記憶領域/記憶装置として機能する。記憶部32として、生体の状態の推定に纏わる処理を実行する際の作業領域として機能するRAM(Random Access Memory の略)が含まれるようにしてもよい。
【0036】
メインタスク33は、記憶部32に記憶されているビート信号(I信号とQ信号との組み合わせ)を用いて、生体の状態の推定に纏わる処理を実行するためのタスク・プログラム群である。このメインタスク33は、主として、位相計算タスク33a、静止物反射除去タスク33b、体動成分除去タスク33c、速度算出タスク33d、移動状態推定タスク33e、FFT処理タスク33f、安静状態推定タスク33g、不在状態推定タスク33h、および危険状態検知タスク33iを備える。
【0037】
位相計算タスク33aは、ビート信号の位相を計算するためのタスク・プログラムである。位相計算タスク33aは、具体的には、記憶部32に記憶されているビート信号(I信号とQ信号との組み合わせ)を読み込み、相互に対応するI信号とQ信号との組み合わせに基づいて直交検波を行って前記組み合わせそれぞれの位相を計算する(ステップS3)。
【0038】
位相計算タスク33aは、計算した位相を記憶部32に記憶させる。
【0039】
静止物反射除去タスク33bは、受信信号に対して信号処理を施して得られる信号から、例えば壁や床などの静止物からの反射波に相当する成分を除去するためのタスク・プログラムである。
【0040】
ここで、受信用アンテナ221から出力される、反射波に対応する信号(即ち、受信信号)には、静止物からの反射波、生体からの反射波、およびノイズが含まれる。静止物反射除去タスク33bは、生体からの反射波を良好に検出して生体の状態を精度よく推定するために、前記のうちの静止物からの反射波に相当する成分を除去する。前記における静止物は、観測対象の生体が居る空間に存在する固定物であり、例えば前記空間を囲む壁や床などが挙げられる。
【0041】
静止物からの反射波は、直流波である(もしくは、殆ど直流波である)と仮定すると、ステップS3の処理によって計算される位相の時間平均として把握される。そこで、静止物反射除去タスク33bは、記憶部32に記憶されている位相のデータを読み込んで所定の分だけ蓄積するとともに蓄積した位相の時間平均を計算し、計算した時間平均に相当する信号を、ステップS3の処理によって計算される位相のそれぞれから差し引くことによって静止物からの反射波に相当する成分を除去する(ステップS4)。
【0042】
静止物からの反射波に相当する成分を除去するための、位相のデータの蓄積の程度は、特定の時間長さあるいはデータ数に限定されるものではなく、静止物からの反射波に相当する成分を良好に除去することができるような適切な平均が計算され得る適当な時間長さやデータ数に適宜設定される。
【0043】
静止物反射除去タスク33bは、静止物からの反射波に相当する成分の除去処理後の位相のデータ(「第1の除去処理後位相データ」と呼ぶ)を記憶部32に記憶させる。
【0044】
体動成分除去タスク33cは、受信信号に対して信号処理を施して得られる信号から、観測対象の生体の意識とは関係なく起きる低周期の体全体の揺れ(「体動」とも呼ばれる)に相当する成分を除去するためのタスク・プログラムである。
【0045】
体動に相当する成分を除去する仕法は、特定の手法や手順に限定されるものではなく、位相データから体動に相当する成分を除去(別言すると、抑圧)し得る手法や手順の中から適当なものが適宜選択される。具体的には例えば、位相データを所定の時間長さで区切り、区切られた区間それぞれのデータのN次関数近似曲線(但し、Nは自然数)を推定することによって体動に相当する成分を表す回帰曲線を求め、求めた回帰曲線に相当する信号を、位相データから差し引く手法が用いられ得る。
【0046】
体動成分除去タスク33cは、記憶部32に記憶されている第1の除去処理後位相データを読み込み、読み込んだ前記第1の除去処理後位相データから体動に相当する成分を除去する(ステップS5)。
【0047】
体動成分除去タスク33cは、体動に相当する成分の除去処理後の位相データ(「第2の除去処理後位相データ」と呼ぶ)を記憶部32に記憶させる。
【0048】
速度算出タスク33dは、生体に纏わる速度を算出するためのタスク・プログラムである。
【0049】
ここで、生体からの反射波は、生体の腕や脚の動作、呼吸、および拍動などの生体の動きに応じて位相や振幅が変化し、生体の腕や脚の動作に対応する反射波、生体の呼吸の動きに対応する反射波、さらに、生体の拍動に対応する反射波を含む。そして、生体からの反射波の位相や振幅の変化に伴って受信信号の位相や振幅が変化する。
【0050】
速度算出タスク33dは、記憶部32に記憶されている第2の除去処理後位相データを読み込み、位相変位を速度に変換して(図3参照;左の図の2本の線は、I信号とQ信号との各々の振幅の時間変化を表す)、送受信部2と物標(ここでは、特に生体)との相対速度を算出する(ステップS6)。
【0051】
なお、送受信部2と物標としての生体との相対速度の算出の仕法は、特定の手法や手順に限定されるものではなく、生体の腕や脚の動作、呼吸、および拍動などの生体の動きに纏わる速度を計算することができる手法や手順の中から適当なものが適宜選択される。
【0052】
速度算出タスク33dは、算出した相対速度を移動状態推定タスク33eへと転送する。
【0053】
移動状態推定タスク33eは、速度算出タスク33dによる相対速度の算出結果に基づいて、物標としての生体が移動しているか否かを判断するためのタスク・プログラムである。移動状態推定タスク33eは、速度算出タスク33dから転送される相対速度に基づいて、物標としての生体が移動しているか否かを判断する(ステップS7)。
【0054】
移動状態推定タスク33eは、具体的には、速度算出タスク33dから転送される相対速度の値を確認し、生体の呼吸の速度を上回る速度が検出された場合に、物標としての生体が移動していると判断する(図3参照)。生体の呼吸であるのか移動であるのかを推定/判別するための呼吸の速度は、特定の値に限定されるものではなく、公知の知見などに基づいて適当な値に適宜設定される。呼吸の速度は、具体的には例えば、人の呼吸について、苦しいときには腹部が大凡1秒に1回、最大で5cm程度の幅で拡縮するので、1cm~10cm/秒程度に設定されることが考えられ、5cm/秒程度に設定されることが好ましい。
【0055】
なお、呼吸の速度は、後のステップS13の処理とも関係して、移動状態と安静状態とを区別するための速度でもある。呼吸の速度は、このため、安静状態における呼吸の速度と、例えば寝返りの速度とを区別できるように設定される。具体的には例えば、呼吸の速度が5cm/秒程度に設定されると、寝返りのような生体の動きを移動と判断し、一方で、安静状態における呼吸に伴う生体の動きを移動とは判断しないようにすることができる。
【0056】
速度算出タスク33dから転送される相対速度が呼吸の速度よりも大きい場合には(ステップS7:Yes)、移動状態推定タスク33eは、生体が移動している(移動状態である)と判断する(ステップS8)。そして、メインタスク33は、処理手順をステップS19へと進める。
【0057】
一方、速度算出タスク33dから転送される相対速度が呼吸の速度以下である場合には(ステップS7:No)、移動状態推定タスク33eは、生体が移動していないと判断し、処理手順をステップS9へと進める。
【0058】
ステップS9以降の処理では、ステップS2の処理において記憶部32に記憶されるビート信号(I信号とQ信号との組み合わせ:IQデータ)が用いられる。
【0059】
静止物反射除去タスク33bは、ビート信号(I信号とQ信号との組み合わせ:IQデータ)を記憶部32から読み込み(ステップS9)、I信号およびQ信号のそれぞれから、例えば壁や床などの静止物からの反射波に相当する成分を除去する。
【0060】
静止物からの反射波は、直流波である(もしくは、殆ど直流波である)と仮定すると、I信号とQ信号との各々の時間平均として把握される。そこで、静止物反射除去タスク33bは、記憶部32に記憶されているI信号およびQ信号のデータを読み込んで所定の分だけ蓄積するとともに蓄積したI信号とQ信号との各々の時間平均を計算し、計算した時間平均に相当する信号を、I信号とQ信号とのそれぞれから差し引くことによって静止物からの反射波に相当する成分を除去する(ステップS10)。
【0061】
静止物からの反射波に相当する成分を除去するための、I信号およびQ信号のデータの蓄積の程度は、特定の時間長さあるいはデータ数に限定されるものではなく、静止物からの反射波に相当する成分を良好に除去することができるような適切な平均が計算され得る適当な時間長さやデータ数に適宜設定される。
【0062】
静止物反射除去タスク33bは、静止物からの反射波に相当する成分の除去処理後のI信号とQ信号との組み合わせのデータ(「第1の除去処理後IQデータ」と呼ぶ)を記憶部32に記憶させる。
【0063】
体動成分除去タスク33cは、第1の除去処理後IQデータを記憶部32から読み込み、I信号およびQ信号のそれぞれから、観測対象の生体の意識とは関係なく起きる低周期の体全体の揺れ(「体動」とも呼ばれる)に相当する成分を除去する。
【0064】
体動に相当する成分を除去する仕法は、上述したとおり特定の手法や手順に限定されないものの、具体的には例えば、I信号のデータとQ信号のデータとのそれぞれを所定の時間長さで区切り、区切られた区間それぞれのデータのN次関数近似曲線(但し、Nは自然数)を推定することによって体動に相当する成分を表す回帰曲線を求め、求めた回帰曲線に相当する信号を、I信号のデータとQ信号のデータとのそれぞれから差し引く手法が用いられ得る。
【0065】
体動成分除去タスク33cは、記憶部32に記憶されている第1の除去処理後IQデータを読み込み、読み込んだ第1の除去処理後IQデータから体動に相当する成分を除去する(ステップS11)。
【0066】
体動成分除去タスク33cは、体動に相当する成分の除去処理後のI信号とQ信号との組み合わせのデータ(「第2の除去処理後IQデータ」と呼ぶ)を記憶部32に記憶させる。
【0067】
FFT処理タスク33fは、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform の略)処理を用いてビート信号の周波数スペクトルを生成するためのタスク・プログラムである。
【0068】
FFT処理タスク33fは、第2の除去処理後IQデータについて、I信号を実部とするとともにQ信号を虚部とする複素数のビート信号として高速フーリエ変換処理を用いてビート信号の周波数スペクトルを生成する(ステップS12)。
【0069】
そして、FFT処理タスク33fは、生成した周波数スペクトルを記憶部32に記憶させる。
【0070】
安静状態推定タスク33gは、生体が安静状態であるか否かを判断するためのタスク・プログラムである。安静状態推定タスク33gは、周波数領域の信号分布に注目して、生体が安静状態であるか否かを判断する。
【0071】
生体が不在のときの周波数スペクトルの分布ではすべての周波数領域(即ち、0Hz~∞Hz)においてスペクトル強度が概ね同じ強度で(言い換えると、大きく変動することなく)分布するのに対して(図4(A)参照)、生体が存在して安静状態にあるときの周波数スペクトルの分布では特定の周波数範囲においてスペクトル強度が他の周波数と比べて大きく変動する(同図(B)参照)。
【0072】
そこで、安静状態推定タスク33gは、特定の周波数範囲のスペクトル強度の合計(「特定範囲強度合計値」と呼ぶ)と、前記特定の周波数範囲以外の所定の領域のスペクトル強度の合計(「その他領域強度合計値」と呼ぶ)とを比較することにより、生体が安静状態であるか否かを判断する。
【0073】
生体が安静状態であるときにスペクトル強度が変動する周波数の範囲(「特定範囲」と呼ぶ)は、大凡0.25Hz~3.25Hzの範囲である。具体的には、呼吸は概ね3秒に1回とすると呼吸の動きに対応するスペクトル強度は0.3Hz付近に分布し、心拍は概ね1秒に1回とすると拍動に対応するスペクトル強度は1Hz付近に分布する。また、人の場合、起こり得る生体活動の周波数として、心拍が大凡200回/分(尚、痙攣を起こすような状態になる)が上限であると言われている。
【0074】
上記を踏まえ、例えば、特定範囲が0Hz~5Hz未満程度に設定されるとともに特定範囲以外の所定の領域(「その他領域」と呼ぶ)が5Hz~20Hz程度に設定されたり、特定範囲が0.25Hz~3.25Hz未満程度に設定されるとともにその他領域が3.25Hz~10Hz程度に設定されたりする。
【0075】
安静状態推定タスク33gは、記憶部32に記憶されている周波数スペクトルを読み込み、特定範囲強度合計値とその他領域強度合計値とをそれぞれ計算する。安静状態推定タスク33gは、続いて、特定範囲強度合計値がその他領域強度合計値よりも大きいか否かを判断する(ステップS13)。
【0076】
特定範囲強度合計値がその他領域強度合計値よりも大きい場合には(ステップS13:Yes)、安静状態推定タスク33gは、生体が安静状態であると判断する(ステップS14)。そして、メインタスク33は、処理手順をステップS19へと進める。
【0077】
一方、特定範囲強度合計値がその他領域強度合計値以下である場合には(ステップS13:No)、安静状態推定タスク33gは、処理手順をステップS15へと進める。
【0078】
なお、安静状態推定タスク33gは、特定範囲のスペクトル強度の平均値とその他領域のスペクトル強度の平均値とを比較して、特定範囲のスペクトル強度の平均値がその他領域のスペクトル強度の平均値よりも大きい場合に生体が安静状態であると判断するようにしてもよい。
【0079】
ステップS15以降の処理では、ステップS11の処理において記憶部32に記憶される第2の除去処理後IQデータ(図2においては「減算信号」)が用いられる。
【0080】
不在状態推定タスク33hは、生体が不在であるか否かを判断するためのタスク・プログラムである。不在状態推定タスク33hは、ホワイトノイズの振幅の大きさ別の度数分布が正規分布に従うことに注目して、生体が不在であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0081】
不在状態推定タスク33hは、第2の除去処理後IQデータとしてのビート信号(具体的には、I信号,Q信号)の振幅の大きさ別の度数分布について正規性の検定を行う。不在状態推定タスク33hは、具体的には、記憶部32に記憶されている第2の除去処理後IQデータとしてのI信号およびQ信号を読み込んで所定の分だけ蓄積するとともに、蓄積したI信号とQ信号とのそれぞれについて振幅の大きさ別の度数を計算する(図5参照)。図5について、上の図の1本の線はI信号の振幅の時間変化を表し、また、下の図はI信号についての振幅の大きさ別の度数分布を表し、特に、下の左の図は度数分布形が正規分布である場合の例であり、下の右の図は度数分布形が正規分布でない場合の例である。
【0082】
振幅の大きさ別の度数を計算するための、I信号やQ信号のデータの蓄積の程度は、特定の時間長さあるいはデータ数に限定されるものではなく、振幅の大きさ別の度数分布が正規分布に従うか否かを良好に判定することができるような適切な振幅の大きさ別の度数が計算され得る適当な時間長さやデータ数に適宜設定される。また、振幅の大きさについて所定のピッチで区切られてランクが設定され、振幅の大きさのランク別に度数が計算されるようにしてもよい。
【0083】
I信号やQ信号の振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布である場合には、生体は不在であると判断される。なお、I信号やQ信号の振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布であるか否かの検定は、度数分布形の正規分布への適合度が所定の適合度以上であるか否かによって行われるようにしてもよい。また、振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布であるか否かの検定は、I信号とQ信号とのうちのどちらか一方のみについて行われるようにしてもよく、或いは、I信号とQ信号との両方について行われるようにしてもよい。
【0084】
ビート信号の振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布であると判定される場合には(ステップS16:Yes)、不在状態推定タスク33hは、生体は不在である(不在状態である)と判断する(ステップS17)。そして、メインタスク33は、処理手順をステップS19へと進める。
【0085】
以上のように、生体状態推定装置1は、はじめに、移動状態に対応する大きな動作を生体がしているか否かを判断し(ステップS7)、次に、大きな動作をしていないと判断された場合に安静状態に対応する小さな(或いは、微小な)動作を生体がしているか否かを判断し(ステップS13)、さらに、小さな動作をしていないと判断された場合に不在状態であるか否かを判断する(ステップS16)ようにしている。このように、移動状態、安静状態、そして不在状態というように動作の大きい順に段階的に状態を区分して特定することにより、無駄なく効率的に且つ精度高く、生体の状態が推定される。
【0086】
一方、ビート信号の振幅の大きさ別の度数分布形が正規分布でないと判定される場合には(ステップS16:No)、不在状態推定タスク33hは、混信の状態であると判断する(ステップS18)。そして、メインタスク33は、生体状態の推定結果を保留して、処理手順をステップS19へと進める。
【0087】
危険状態検知タスク33iは、生体が危険状態にあることを検知するためのタスク・プログラムである。危険状態検知タスク33iは、時系列における直前の生体の状態と新しく推定された生体の状態との組み合わせに基づいて、言い換えると、時系列における生体の状態の変化のパターンに基づいて、生体が危険状態にあるか否かを判定する(ステップS19)。
【0088】
危険状態検知タスク33iは、例えば、生体の状態の推定結果の時系列での推移において、安静状態から、移動状態を経ることなく、不在状態へと推移した場合には、バイタルがある状態からバイタルが無い状態へと直接推移したので、言い換えると、呼吸をしている状態から呼吸をしていない状態へと直接推移したので、生体が危険状態にあると判断する。この場合、危険状態検知タスク33iは、例えば、警報音を発したり、予め登録されているアドレスへとメールを送信したりして、生体が危険状態にあることを知らせるようにしてもよい。
【0089】
なお、生体の状態の推定結果の時系列での推移において、不在状態から、移動状態を経ることなく、安静状態へと推移した場合には、観測対象の所定の領域において例えば遠隔操作や自律制御によって電気機器等が作動したり、地震が発生したりするなどの外乱が発生したと判別して、生体の状態についてではないその他の異常事象が発生したと判断するようにしてもよい。
【0090】
そして、メインタスク33は、処理手順をステップS2へと戻す。なお、上述の通り、送受信部2によるレーダースキャンは所定の時間間隔で連続的に繰り返し行われ、受信部22から、デジタル信号化されたI信号とQ信号との組み合わせが、前記所定の時間間隔で連続して継続的に出力される(ステップS1)。
【0091】
上記のような生体状態推定装置1によれば、例えば壁や床などの静止物からの反射波に相当する成分を自律的に除去するようにしているので、使用環境ごとに閾値を設定することなく、言い換えると、使用環境に影響を受けることなく、また、使用環境に依存することなく、生体の不在状態、安静状態、および移動状態を高精度に判別することが可能となる。上記のような生体状態推定装置1によれば、また、移動状態、安静状態、そして不在状態というように動作の大きい順に段階的に状態を区分して特定するようにしているので、無駄なく効率的に且つ精度高く、生体の状態を推定することが可能となる。
【0092】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では呼吸の速度や特定範囲を確定する閾値の設定について人を観測対象とする場合を中心に説明したが、この発明における観測対象の生体は人に限定されるものではなく、種々の動物を観測対象としてこの発明が適用されるようにしてもよい。
【0093】
また、上記の実施の形態ではメインタスク33が危険状態検知タスク33iを含むようにしているが、危険状態検知タスク33iはこの発明において必須の構成ではない。すなわち、移動状態、安静状態、および不在状態のうちのいずれであるかを推定する構成が、この発明における基本の構成である。
【0094】
なお、所定の領域(即ち、観測対象の生体が居る空間)に対して複数の送受信部を設置し、得られる受信データを周知の技術を用いて物標ごとに分離して、複数の生体の状態を同時に推定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
この発明は、人や種々の動物のバイタル情報に基づいて生体の状態を推定することができるので、例えば、在宅の高齢者の遠隔での見守り、療養中の患者の容体観察、および飼育動物や保護下の動物の状態監視などの分野に適用され得る。また、住宅や施設への侵入監視の分野にも適用され得る。
【符号の説明】
【0096】
1 生体状態推定装置
2 送受信部
21 送信部
211 送信用アンテナ
22 受信部
221 受信用アンテナ
3 推定装置
31 入力受部
32 記憶部
33 メインタスク
33a 位相計算タスク
33b 静止物反射除去タスク
33c 体動成分除去タスク
33d 速度算出タスク
33e 移動状態推定タスク
33f FFT処理タスク
33g 安静状態推定タスク
33h 不在状態推定タスク
33i 危険状態検知タスク
34 中央処理部
図1
図2
図3
図4
図5