(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20240311BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20240311BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240311BHJP
B23K 26/02 20140101ALI20240311BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B23K26/03
B23K26/382
B23K26/082
B23K26/02 A
H05K3/00 N
(21)【出願番号】P 2020165805
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久世 修
(72)【発明者】
【氏名】前田 和夫
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-230408(JP,A)
【文献】特開2007-237199(JP,A)
【文献】特開2004-283998(JP,A)
【文献】特開2010-162559(JP,A)
【文献】特許第6793892(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/03
B23K 26/382
B23K 26/082
B23K 26/02
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板の重心位置を中心とする円軌道を通過し、プリント配線板の外周部から内
周部に向かって周回するようにガルバノのスキャンエリアの経路を生成するレーザ加工装置において
、
前記ガルバノのスキャンエリアが前記スキャンエリアの経路を1周するごとに、前記プリント配線板に設けたアライメントマークを基準として前記プリント配線板の面内方向の伸縮量を測定し、前記プリント配線板の面内方向の伸縮量に応じて加工位置を補正して加工することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
プリント配線板の重心位置を中心とする円軌道を通過し、プリント配線板の外周部から内
周部に向かって周回するようにガルバノのスキャンエリアの経路を生成するレーザ加工方法において、
前記ガルバノのスキャンエリアが前記スキャンエリアの経路を1 周するごとに、前記プリント配線板に設けたアライメントマークを基準として前記プリント配線板の面内方向の伸縮量を測定し、前記プリント配線板の面内方向の伸縮量に応じて加工位置を補正して加工することを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザパルスを用いてプリント基板のような被加工物に穴あけ等を行うレーザ加工の加工位置を補正する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の回路形成では、薄い絶縁層の両面に薄い銅箔を配置した薄い両面板に貫通穴をあける加工が行われている。レーザ加工で貫通穴をあける場合、プリント配線板の表側および裏側の両面からレーザ光を照射し、形成される加工穴を接続させて貫通穴を形成する。この際、表側の穴と裏側の穴の位置を一致させる必要があるため、穴あけ加工の位置の補正が重要である。
【0003】
また、プリント配線板は温度変化等の影響により伸縮等の歪が生じるため、プリント配線板のレーザ穴あけ加工では、加工前に加工位置の補正を行っている。
例えば、特許文献1に開示されている技術においては、プリント配線板の伸縮等の歪が発生した場合、プリント配線板の四隅に設けられたアライメントマークを基準として、アライメントマークの位置のずれからプリント配線板の変形量を算出し、変形量に応じた補正値をXYテーブルの位置決め位置と加工プログラムの加工位置座標に加えてから、プリント基板の全体面にレーザ穴あけ加工を行っている。
【0004】
プリント配線板のレーザ穴あけ加工では、ガルバノのスキャンエリアの移動の経路を生成している。例えば、特許文献2に開示されている技術においては、加工時間を短縮するために、加工経路が最短となるように、ガルバノスキャンエリアの移動経路として渦巻き状の経路を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-125915 号公報
【文献】特開2011-140057 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、
図4中の矢印に示すようにプリント配線板9の外周部分の経路始点D45から、渦巻き状のスキャンエリアの経路に沿って加工していた。しかし、穴あけ加工中のプリント配線板の伸縮は、プリント基板の中心部よりも外周部が大きくなるため、従来の渦巻き状の経路で経路の方向が変化するスキャンエリアA25,スキャンエリアB26,スキャンエリアC27,スキャンエリアD28では、経路の途中で、伸縮量のより大きい部分を通過することになり、穴加工位置のずれが大きくなる問題があった。このように、従来技術では、穴加工位置のずれを小さくする加工経路を生成する配慮がなされていなかった。
【0007】
また、従来技術ではプリント配線板のレーザ穴あけ加工中に穴加工位置を補正しないので、レーザ穴あけ加工中に生ずるプリント配線板の伸縮により穴あけ加工位置がずれる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の発明においては、プリント配線板の重心を中心とした伸縮量が同一の領域に沿ったスキャンエリアの経路を生成し、生成したスキャンエリアの経路を周回する。さらに、生成したスキャンエリアの経路の1周回ごとに、アライメントマークを基準として加工位置の補正を行う。
【0009】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上のとおりであるが、ここで説明していない特徴については、以下に説明する実施例に適用されており、また特許請求の範囲にも示したとおりである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絶縁層が薄く、表層銅箔の薄いプリント配線板に対し表裏から レーザを照射し貫通穴を形成する表裏加工に於いて、周回するスキャンエリアごとに加工位置補正することで加工位置のずれを軽減し、加工穴位置の精度が高い穴を加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用したレーザ加工装置の一例の全体を示す模式図である。
【
図2】本発明を適用したガルバノスキャンエリアの経路の一例を表す図である。
【
図3】本発明を適用したプリント基板の一例の断面図である。
【
図4】従来のレーザ加工装置のガルバノスキャンエリアの経路を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
図1は本発明のレーザ加工装置の概要を示す模式図である。レーザ加工装置は、レーザ発振器1、制御装置3、第1及び第2の反射ミラー4、5、第1及び第2のガルバノスキャナ6、7、fシータレンズ8、fシータレンズ8と同時に移動可能な図示されないプレートに固定されたアライメントマーク認識用カメラシステム11、XYテーブル15から基本的に構成されている。
【0013】
プリント配線板9の四隅には穴明け位置の基準となるアライメントマーク10が形成されている。12は、ガルバノスキャナ6、7の位置決め動作で加工されるガルバノスキャンエリア、13は、12の次に加工するガルバノスキャンエリア、15は機械正面から見て17の前後方向に図示されない送り系に機構により支持されたXYテーブルである。
【0014】
レーザ発信器1から発振されたレーザビーム2は、ミラー4及びミラー5で反射され、ガルバノスキャナ6及びガルバノスキャナ7に入射し、fシータレンズ8を介して、プリント配線板9の表面に照射される。
【0015】
アライメントマーク認識用カメラシステム11で被加工物であるプリント配線板9の四隅に配置されたアライメントマーク10を認識し、プリント配線板9のレーザ加工機に対するアライメントマーク10の位置を測定し、加工位置の補正処理を行った後、ガルバノスキャナ6,7及びXYテーブル15に移動指令を与え、加工位置の位置決めを行う。
【0016】
図2は本発明のレーザ加工装置によって生成されたガルバノスキャンエリアの経路の一例を示す模式図である。
図2のプリント配線板9には、穴あけ位置の基準となるアライメントマーク10がプリント基板の四隅に1か所ずつ(P1,P2,P3,P4)配置されている。
【0017】
プリント配線板重心20を中心として、プリント配線板9の伸縮量が同一となる領域の一例として、同心円状の領域A21、領域B22、領域C23、領域D24を図示している。
【0018】
次に、
図2を用いて本発明のレーザ加工装置によるガルバノスキャンエリアの経路生成の手順を説明する。まず、最外周の領域A21を通過するスキャンエリアA25、スキャンエリアB26、スキャンエリアC27、スキャンエリアD28を経路とする。次に、領域A21の内周にある領域B22を通過するスキャンエリアの経路の経路始点A29にスキャンエリアを移動し、
図2の右方向に向かってスキャンエリアを移動し、スキャンエリアが外周の領域A21に含まれる手前で上方のスキャンエリアに移動したのち、次にスキャンエリアが内周の領域C23に含まれる前に右のスキャンエリアに移動したのち、再び上方のスキャンエリアに移動し、以後同様にして、領域A22を通過するスキャンエリアの周回経路を定める。
【0019】
以後、同様にして経路始点B30から、領域C23を通過するスキャンエリアの経路を生成し、経路始点C31から、領域D24を通過するスキャンエリアの経路を生成し、プリント配線板20の中心のエリアに至る周回経路を生成する。
【0020】
次に、以上で説明した、プリント配線板の重心を中心とした伸縮量が同一の領域に沿って生成した、プリント配線板の面内を周回する、ガルバノスキャンエリアの経路に沿って穴加工を行った結果を説明する。
図3は、本発明のレーザ加工装置による加工結果を示す図である。プリント配線板の加工穴中心位置40を基準としてプリント配線板9の表側に表側穴41を形成し、裏側に裏側穴42を形成した。表側穴41及び裏側穴42は加工穴中心位置40を同軸中心とした、プリント配線板を貫通する穴が形成される。
【0021】
次に、本発明に係る他の実施の形態について
図2を用いて説明する。まず、領域A21を通過するスキャンエリアA25,スキャンエリアB26,スキャンエリアC27,スキャンエリアD28に対する加工位置を、アライメントマーク10を基準として、補正した後、スキャンエリアA25,スキャンエリアB26,スキャンエリアC27,スキャンエリアD28を加工する。次に、領域B22を通過する、経路始点A29からの周回経路のスキャンエリア内の加工位置をアライメントマーク10を基準として補正した後、経路始点A29からの周回経路に沿って加工する。以降、同様にして、領域C23を通過する経路始点B30からの周回経路、領域D24を通過する経路始点C31からの周回経路に沿って、プリント配線板9の中心部分まで加工する。
【0022】
以上で説明した、加工の結果においても、
図3に示すように、表側穴41及び裏側穴42は加工穴中心位置40を同軸中心とした、プリント配線板を貫通する穴が形成される。
【0023】
なお、本実施例では一例として4周回の軌跡としたが、プリント配線板の寸法、スキャンエリアの寸法に応じて任意の周回数を設定してよい。
【0024】
また、プリント配線板の1枚目の加工では、ガルバノスキャンエリアの移動経路の1周回毎に伸縮量を測定し補正量に反映して加工を行うが、プリント配線板の2枚目以降の加工では、1枚目で測定し把握した、ガルバノスキャンエリアの周回経路ごとに求めた補正係数を記憶して用いることで、周回ごとに新たにアライメント補正値毎回の測定を行わなくてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1:レーザ発振器
2:レーザビーム
3:制御装置
4:第1のコーナミラー
5:第2のコーナミラー
6:第1のガルバノスキャナ
7:第2のガルバノスキャナ
8:fシータレンズ
9:プリント配線板
10:アライメントマーク
11:アライメントマーク認識用カメラシステム
12:ガルバノスキャンエリア
13:次のガルバノスキャンエリア
15:XYテーブル
16:Y方向
17:X方向
20:プリント配線板重心
21:領域A
22:領域B
23:領域C
24:領域D
25:スキャンエリアA
26:スキャンエリアB
27:スキャンエリアC
28: スキャンエリアD
29:経路始点A
30:経路始点B
31:経路始点C
40:加工穴中心位置
41:表側穴
42:裏側穴
45:経路始点D