IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特許-コンパクト容器 図1A
  • 特許-コンパクト容器 図1B
  • 特許-コンパクト容器 図1C
  • 特許-コンパクト容器 図2
  • 特許-コンパクト容器 図3
  • 特許-コンパクト容器 図4
  • 特許-コンパクト容器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A45D33/00 650E
A45D33/00 640
A45D33/00 610C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166512
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057977
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-090715(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0014434(US,A1)
【文献】国際公開第2017/109866(WO,A1)
【文献】特開平09-285336(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0474225(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00 - 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する受皿部材と、該受皿部材を設置する凹所が形成された容器本体と、前記受皿部材の上端開口を閉塞可能な中蓋と、該中蓋を上方から覆うとともに前記凹所の上端開口を閉塞可能な蓋体とを備えたコンパクト容器であって、
前記中蓋は、弾性部材を有する天壁を有し、前記中蓋を閉塞する際に前記天壁が上方に弾性変形することによって前記受皿部材の内圧上昇を抑制し、
前記中蓋は、前記天壁を径方向外側から囲む枠部材を更に有し、
前記天壁の外周縁には、前記中蓋の閉塞時において、前記中蓋と前記受皿部材との間をシールするシール壁が一体形成されており、
前記中蓋の閉塞時において、前記シール壁が、前記受皿部材の側部と、前記枠部材から垂下する垂下壁との間で挟持されることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
前記天壁の外周部が前記垂下壁と係合することにより、前記天壁は前記枠部材に固定されている、請求項に記載のコンパクト容器。
【請求項3】
前記天壁は、径方向外側に向かって高さが同心状且つ波状に変化する、請求項1又は2に記載のコンパクト容器。
【請求項4】
前記天壁は、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンを主材とする合成樹脂で形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載のコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内容物を収容する受皿部材の内部の気密性を向上させたコンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクト容器は化粧料容器として用いられることが一般的であるが、ファンデーションやアイシャドー等の揮発成分を含んだ内容物を容器本体の受皿部材に収容する場合、容器本体と蓋体との間の隙間から内容物の一部が揮発してしまうことがある。このような内容物の揮発を抑制するため、受皿部材の上部開口を中蓋で閉塞して受皿容器内部の気密性を高めたコンパクト容器が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3778308号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコンパクト容器では、受皿容器内の気密性を高めると、中蓋を閉塞する際に受皿容器内の圧力が上昇して中蓋が閉じにくくなったり中蓋が浮き上がったりするため、中蓋を完全に閉塞させるためには強い押圧力を作用させる必要があった。また、これを回避するために中蓋と受皿容器の間の嵌合部分にエア抜き用の溝を設けるなどすると、受皿容器内の気密性が低下して内容物が揮発し易くなるため、この点において改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的とするところは、中蓋を閉塞する際の受皿容器内の圧力上昇を抑制しつつ気密性を高めたコンパクト容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示のコンパクト容器は、
内容物を収容する受皿部材と、該受皿部材を設置する凹所が形成された容器本体と、前記受皿部材の上端開口を閉塞可能な中蓋と、該中蓋を上方から覆うとともに前記凹所の上端開口を閉塞可能な蓋体とを備えたコンパクト容器であって、
前記中蓋は、弾性部材を有する天壁を有し、前記中蓋を閉塞する際に前記天壁が上方に弾性変形することによって前記受皿部材の内圧上昇を抑制し、
前記中蓋は、前記天壁を径方向外側から囲む枠部材を更に有し、
前記天壁の外周縁には、前記中蓋の閉塞時において、前記中蓋と前記受皿部材との間をシールするシール壁が一体形成されており、
前記中蓋の閉塞時において、前記シール壁が、前記受皿部材の側部と、前記枠部材から垂下する垂下壁との間で挟持されることを特徴とする。
【0008】
また、本開示のコンパクト容器は、上記構成において、前記天壁の外周部が前記垂下壁と係合することにより、前記天壁は前記枠部材に固定されていることが好ましい。
【0009】
また、本開示のコンパクト容器は、上記構成において、前記天壁は、径方向外側に向かって高さが同心状且つ波状に変化することが好ましい。
【0010】
また、本開示のコンパクト容器は、上記構成において、前記天壁は、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンを主材とする合成樹脂で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、中蓋を閉塞する際の受皿容器内の圧力上昇を抑制しつつ気密性を高めたコンパクト容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本開示の一実施形態であるコンパクト容器の平面図である。
図1B】本開示の一実施形態であるコンパクト容器の正面図である。
図1C】本開示の一実施形態であるコンパクト容器の右側面図である。
図2】本開示の一実施形態であるコンパクト容器の蓋体を開放した状態における平面図である。
図3】本開示の一実施形態であるコンパクト容器の正面断面図である。
図4】本開示の一実施形態であるコンパクト容器の右側面断面図である。
図5図4における枠部材と天壁との係合部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態である、コンパクト容器100を詳細に説明する。
【0014】
図1Aから図1Cは、本開示の一実施形態である、コンパクト容器100の外観を示している。本実施形態に係るコンパクト容器100は、特に揮発性を有する化粧料等を収容する化粧用コンパクト容器に好適である。本実施形態のコンパクト容器100は、化粧料等の内容物を収容する受皿部材2(図3及び図4参照)と、受皿部材2を閉塞する中蓋8(図3及び図4参照)と、受皿部材2を設置する容器本体1と、容器本体1の上端開口を覆う蓋体4とを備えている。また、容器本体1には、径方向内側に押圧することで蓋体4と容器本体1との係合を解除して蓋体4を開放可能なフックピース5が設けられている。なお、本実施形態において、上下方向は、図1B及び図1Cにおける上下方向であり、左右方向は、図1Bの左右方向及び図1Cの紙面に垂直方向である。また、図1Bにおける紙面に垂直手前に向かう方向が前方、紙面に垂直に奥に向かう方向を後方とする。すなわち、図1Cにおける左方が前方、図1Cにおける右方が後方となる。また、径方向外側とは、中心軸線Oを通り当該中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oから離れる方向であり、径方向内側とは、中心軸線Oを通り当該中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を意味するものとする。
【0015】
図2は、図1Aのコンパクト容器100の蓋体4を開放した状態を示す平面図である。蓋体4は、回転軸であるピンP1周りに回動可能とされている。また、中心軸線Oを挟んでピンP1と対向する側にはフックピース5が設けられている。蓋体4が閉塞した状態から利用者がフックピース5を径方向内側に押圧して蓋体4と容器本体1との係合が解除されると、利用者は、蓋体4をピンP1周りに回動して図2に示すように中蓋8を露出させ、受皿部材2から中蓋8を取り外し可能な状態とすることができる。本実施形態では、中蓋8は、内容物を収容する受皿部材2の上端開口を気密シールした状態で閉塞する役割を果たし、枠部材7と、枠部材7の径方向内側に設けられた天壁6とを備えている。
【0016】
受皿部材2は、横断面が略円形状をなす側部2aと、側部2aの下端を閉塞する底部2eとを一体に設け、その内側に、揮発性の化粧料を収容する収容空間Sを形成している(図3及び図4参照)。側部2aは、図3等に示すように底部2eに向かって徐々に縮径しており、側部2aと底部2eとの境界部には径方向外側に僅かに突出する係合突部2hが形成されている。係合突部2hが容器本体1の底部1eの径方向中央部に形成された貫通穴1gの辺縁部の段部1hに嵌合することによって、受皿部材2は容器本体1に対して前後、左右及び高さ方向に位置決めされている。
【0017】
受皿部材2における側部2aの径方向外側には、側部2aの上端部から径方向外側に延びるフランジ部2dを介して周壁2bが一体形成されている。周壁2bは、平面視で略円形状を備えており、左右方向における周壁2bの下端部には、径方向外側に突出して容器本体1側の側部1aの内面にアンダーカット係合させるための爪部2cが形成されている。
【0018】
上述のフランジ部2dにおける側部2aの径方向外側には、中蓋8の閉塞時において枠部材7の脚部7cの内面にアンダーカット係合する係合壁2gが立設されている。また、受皿部材2の側部2aの上端壁2fは、中蓋8の閉塞時において後述する天壁6に一体形成されたシール壁6aの外周面に当接する。このように、係合壁2gが枠部材7の脚部7cと係合することで中蓋8を閉塞状態に維持するとともに、側部2aの上端壁2fが中蓋8のシール壁6aに当接することで、中蓋8と受皿部材2とを気密シールしている。
【0019】
本実施形態では、受皿部材2の側部2a及び底部2eをポリプロピレンを主材とする合成樹脂により形成している。しかし、この態様には限定されず、受皿部材2の材料は、例えば他の様々な合成樹脂やアルミニウム等の金属製とすることもできる。また、受皿部材2の材料は、単一の材料に限定されず、各種合成樹脂製部材に金属材料等の異種の材料を貼り合わせて構成してもよい。
【0020】
容器本体1は、横断面が略円形状をなす側部1aの下端に底部1eが一体に設けられており、その内側には、受皿部材2を収納する凹所1jが形成されている。容器本体1の底部1eにおける径方向中央には、底部1eを上下に貫く貫通穴1gが設けられている。そして、貫通穴1gの辺縁部の段部1hに受皿部材2の底部2eから径方向外側に突出する係合突部2hが嵌合することによって、受皿部材2は、容器本体1に対して前後、左右及び上下方向に位置決めされている。また、受皿部材2の周壁2bの下端部に設けられた爪部2cが容器本体1の側部1aの内面に設けられた係合突部1bにアンダーカット係合することによって、受皿部材2は容器本体1に対して着脱可能に装着されている。
【0021】
また利用者は、容器本体1の貫通穴1gを通して受皿部材2の底部2eを下方から直接押圧することで、受皿部材2を容器本体1から取り外して交換できる。すなわち、化粧料を再充填することができる。なお、貫通穴1gは必ずしも設けられていなくてもよい。本実施形態では、係合突部1bは中心軸線O周りの全周に設けられておらず、周方向の一部に設けられている。
【0022】
図3及び図4において、符号4は、凹所1jの上端開口を開閉可能な蓋体である。蓋体4は、図4に示すように、周壁4aと、周壁4aの上端部を閉塞する頂壁4eとを備えている。蓋体4は、周壁4aの後端部の下方に位置する軸穴4dに挿入された円筒状のピンP1を介して容器本体1に連結されており、ピンP1周りに回動可能である。
【0023】
蓋体4は、ピンP1周りに後方に回転して開放される方向の回転モーメントが作用するように図示しない付勢部によって付勢されてもよい。このような構成によって、利用者がフックピース5(アンロック部材)を径方向内側(後方)に押圧することで蓋体4と容器本体1との係合が解除されて、蓋体4が上述の回転モーメントにより後方に回転して開放される。また、利用者が蓋体4をピンP1周りに前方に回転させ、容器本体1に設けたフック1kにフック4bを係合させることで蓋体4を図4に示す閉塞状態とすることができる。本実施形態では、蓋体4の下面には鏡19が固定されている。
【0024】
なお、受皿部材2を、衝撃吸収部材を介して容器本体1に固定するように構成してもよい。このような構成によって、コンパクト容器100に外部から衝撃が加わった場合でも、受皿部材2及び収容空間Sに収容された内容物を衝撃から保護することができる。
【0025】
図3及び図4に示すように、受皿部材2は、中蓋8によって上端開口を閉塞されることによって、気密シールされた状態で閉塞されている。中蓋8は、薄板上の天壁6と、天壁6を径方向外側から囲む枠部材7とを備えている。
【0026】
本実施形態において、天壁6は、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)又はポリプロピレン(PP)などの軟材質の弾性部材により形成することができる。高密度ポリエチレン(HDPE)は、ベースポリマーとなるポリエチレンの密度の値がJIS K6922-1:2018において定められた合成樹脂である。
【0027】
天壁6を、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンを主材とする合成樹脂で形成することによって、天壁6の水蒸気透過度を小さくし、且つ弾性係数を小さくすることができる。従って、揮発性の内容物を収容空間S内に収容した場合でも内容物が揮発して変質してしまうことを抑制しつつ、後述するように中蓋8を閉塞する際の圧力上昇を天壁6の上方変位により抑制して中蓋8を閉塞し易くすることができる。
【0028】
天壁6は、図3又は図4に示すように、径方向外側に向かって高さが同心状且つ波状に変化する薄板状の部材である。天壁6の外周縁には、中蓋8の閉塞時において、中蓋8と受皿部材2との間をシールするシール壁6aが天壁6と一体形成されている。シール壁6aは、図3及び図4に示すように、天壁6の外周部の下面からU字状に径方向外側に延びる部材である。中蓋8が閉塞されると、シール壁6aは、図5に実線で示される状態から、側部2aの上端壁2fによって径方向内側に押し込まれて上端壁2fと枠部材7の垂下壁7eとの間に挟持される。これによって、中蓋8と受皿部材2との間には、図5に示す幅Wのシール領域が形成されるため、受皿部材2の収容空間S内の内容物が揮発して外部に漏れ出しにくくすることができる。
【0029】
従来は、中蓋8と受皿部材2との間を気密にシールすると、中蓋8を閉塞する際に受皿部材2内の圧力が上昇して中蓋8が閉じにくくなったり、閉塞後に中蓋8が浮き上がったりすることがあった。本実施形態では、中蓋8を閉塞する際に収容空間S内の圧力が上昇すると、軟部材である弾性部材で形成された天壁6が、図3及び図4に示すように上方に向かって弾性変形して圧力上昇を吸収するように作用する(弾性変形後の天壁6を二点鎖線で示している)。この構成によって、気密性を維持し得る態様で中蓋8を閉塞しても、内容物の収容空間S内の圧力上昇が抑制されるため、中蓋8が閉じにくくなったり、閉塞後に中蓋8が浮き上がったりすることが抑制される。特に、本実施形態では、天壁6の高さが波状に変化するような構成を採用しているため、収容空間S内の圧力上昇が発生すると、波の高さが低くなるように弾性変形することによって、天壁6がより上方に大きく変位することができる。従って、より効果的に収容空間S内の圧力上昇を抑制することができる。
【0030】
枠部材7は、天壁6の径方向外側を取り囲む円板状の枠体7aと、枠体7aの径方向内側端から下方に垂下する垂下壁7eと、垂下壁7eの径方向外側に設けられ受皿部材2の上端壁2fを径方向内側にガイドするガイド壁7fと、枠体7aから上方に立設される立設部7bと、枠体7aから下方に垂下して受皿部材2の係合壁2gにアンダーカット係合して固定される脚部7cと、ピンP2を受け入れて中蓋8をピンP2周りに回動させる軸受凹所7dとを備えている。
【0031】
立設部7bにおける中心軸線Oを挟んでピンP2と対向する周方向位置には、図2及び図3に示すように、径方向外側に突出する摘み部7gが設けられている。図2に示すように蓋体4が開放された状態で摘み部7gを摘まんで上方に引き上げると、枠部材7の脚部7cと受皿部材2の係合壁2gとの係合が外れ、中蓋8をピンP2周りに回動させて中蓋8を開放することができる。
【0032】
図5等に示すように、天壁6の外周部と枠部材7の垂下壁7eとがアンダーカット係合するように構成されている。この構成によって、弾性係数が異なる天壁6と枠部材7とを容易に装着して一部材(中蓋8)として取り扱うことができる。
【0033】
蓋体4は、その内側にパフ等の化粧道具Tを収納するための空間を形成する。一方、容器本体1側には、図4に示すように、蓋体4に設けたフック4bに係合し蓋体4の開放を阻止するフック1kを設けると共に、これらフック4b及び1kの係合を、その押し込みにより解除するフックピース5(アンロック部材)を設けることができる。
【0034】
フックピース5は、鉛直方向に延びる押圧部5aと、押圧部5aの下端部から径方向内側に延びる基体部5cと、基体部5cの上方において押圧部5aから径方向内側に延びる作用部5bとを備えている。図4の状態から利用者がフックピース5の押圧部5aを内側に向けて押圧すると、基体部5cが容器本体1に設けられた挿入凹部1f内を後方に向けて移動すると共に作用部5bが容器本体1に設けられた傾斜部1nに沿って後方に向かって上方に移動する。これによって作用部5bが蓋体4のフックアーム4cを上方に押し上げるため、フック1kとフック4bとの係合が外れて蓋体4はピンP1周りに後方に回動して蓋体4は開放される。なお、基体部5cの底面に設けた爪部5dが挿入凹部1fの下面に設けた凹所1mに入り込むことによって、フックピース5は前後方向に抜け止めされている。
【0035】
以上の構成を有する本実施形態のコンパクト容器100を使用するに際しては、まず図3及び図4に示す蓋体4が閉塞された状態からフックピース5を径方向内側に押し込む。これによって、フックピース5の作用部5bが傾斜部1nに沿って上方に移動し、フックアーム4cを上方に押し上げるため、フック4bとフック1kとの係合が解除されて、蓋体4は、ピンP1周りに後方に回動して開放される。
【0036】
次に、利用者は、枠部材7の摘み部7gを摘んで上方に持ち上げることで枠部材7の脚部7cと受皿部材2の係合壁2gとの係合を解除する。これによって、気密シールを形成していた上端壁2fとシール壁6aとの当接も解除され、受皿部材2の上端開口は開放される。
【0037】
利用者が受皿部材2内の内容物の使用を終了すると、再び摘み部7g等を把持して中蓋8をピンP2周りに回動させて閉塞させる。中蓋8を閉塞させるに際しては、図5に示すように、枠部材7の脚部7cと受皿部材2の係合壁2gとをアンダーカット係合させることによって中蓋8を閉塞状態とすることができる。また、天壁6に一体形成されたU字状のシール壁6aが、図5の実線で示す形状から上端壁2fの内周面に当接することにより径方向内側に押圧されて、図5に二点鎖線で示すように上端壁2fと垂下壁7eとの間で挟持される。これによって、図5に幅Wで示されるシール領域が形成されるため、中蓋8と受皿部材2との間の気密シールを確実に行うことができる。この気密シールによって、中蓋8の閉塞時に受皿部材2の収容空間S内の圧力が上昇するが、先述のように天壁6が上方に弾性変形することによって収容空間S内の容積が増加するため、圧力上昇は抑制される。これによって、受皿部材2内の圧力が上昇して中蓋8が閉じにくくなったり、閉塞後に中蓋8が浮き上がったりすることが抑制される。
【0038】
以上述べたように、本実施形態は、内容物を収容する受皿部材2と、受皿部材2を設置する凹所1jが形成された容器本体1と、受皿部材2の上端開口を閉塞可能な中蓋8と、中蓋8を上方から覆うとともに凹所1jの上端開口を閉塞可能な蓋体4とを備えたコンパクト容器100であって、中蓋8は、弾性部材を有する天壁6を有し、中蓋8を閉塞する際に天壁6が上方に弾性変形することによって受皿部材2の内圧上昇を抑制するように構成した。このような構成の採用によって、中蓋8で受皿部材2の上端開口を閉塞する際に中蓋8の天壁6が上方に弾性変形して収容空間S内の圧力上昇を抑制することができる。従って、受皿部材2内部の気密性の確保と中蓋8の閉じ易さとを両立させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、中蓋8は、天壁6を径方向外側から囲む枠部材7を更に有し、天壁6の外周縁には、中蓋8の閉塞時において、中蓋8と受皿部材2との間をシールするシール壁6aが一体形成されており、中蓋8の閉塞時において、シール壁6aが、受皿部材2の側部2a(上端壁2f)と、枠部材7から垂下する垂下壁7eとの間で挟持されるように構成した。このような構成の採用によって、軟部材である弾性部材で形成された天壁6と、受皿部材2への確実な装着を行うための枠部材7とを組み合わせて中蓋8を構成することができる。従って、受皿部材2内の圧力上昇の抑制と、中蓋8の受皿部材2への装着とをより確実に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では、天壁6の外周部が垂下壁7eと係合することにより、天壁6が枠部材7に固定されるように構成した。このような構成の採用によって、天壁6と枠部材7の弾性係数が異なる場合でも両者を容易に連結して一部材(中蓋8)として取り扱うことができる。
【0041】
また、本実施形態では、天壁6は、径方向外側に向かって高さが同心状且つ波状に変化するように構成した。このような構成の採用によって、中蓋8の閉塞時に周方向に偏ることなく天壁6の径方向中央部を大きく上方に変位させることができるので、収容空間S内の圧力上昇を効率よく抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、天壁6は、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンを主材とする合成樹脂で形成されるように構成した。このような構成の採用によって、天壁6の水蒸気透過度を小さくし、且つ弾性係数を小さくすることができるので、揮発性の内容物を収容空間S内に収容した場合でも内容物が揮発して変質してしまうことを抑制しつつ、天壁6の上方への弾性変形により中蓋8を閉塞する際の圧力上昇を抑制して閉塞し易くすることができる。
【0043】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0044】
例えば、本実施形態では、容器本体1や蓋体4の平面視における形状を略円形状(図1A参照)としているが、この態様には限定されず、矩形形状など、受皿部材2の平面視での形状等に応じて適宜変更することができる。
【0045】
また、本実施形態では、受皿部材2の収容空間S内に揮発性を有する化粧料を収容するように構成したが、この態様には限定されず、化粧料以外の内容物を収容してもよいし、揮発性を有していない内容物を収容してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、中蓋8を構成する天壁6は、径方向外側に向かって高さが同心状且つ波状に変化するように構成したが、この態様には限定されない。天壁6は、同心状ではなく例えば前後方向や左右方向に高さが波状に変化するようにしてもよい。また、天壁6の高さは、波状以外の形状で変化してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、天壁6の材料は、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンを主材とする合成樹脂で形成されるように構成したが、この態様には限定されない。天壁6の材料は、他の軟質合成樹脂等の弾性材料であってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、蓋体4及び中蓋8がピンP1及びP2周りに回動することによって開閉するように構成したが、この態様には限定されず、蓋体4及び中蓋8は、例えばヒンジ周りに回動するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示は、内容物を収容する受皿部材2の内部の気密性を向上させたコンパクト容器100であれば、様々なものに適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 容器本体
1a 側部
1b 係合突部
1e 底部
1f 挿入凹部
1g 貫通穴
1h 段部
1j 凹所
1k フック
1m 凹所
1n 傾斜部
2 受皿部材
2a 側部
2b 周壁
2c 爪部
2d フランジ部
2e 底部
2f 上端壁
2g 係合壁
2h 係合突部
4 蓋体
4a 周壁
4b フック
4c フックアーム
4d 軸穴
4e 頂壁
5 フックピース
5a 押圧部
5b 作用部
5c 基体部
5d 爪部
6 天壁
6a シール壁
7 枠部材
7a 枠体
7b 立設部
7c 脚部
7d 軸受凹所
7e 垂下壁
7f ガイド壁
7g 摘み部
8 中蓋
19 鏡
100 コンパクト容器
O 中心軸線
P1,P2 ピン
S 収容空間
T 化粧道具
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5