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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ワンタッチ固定式ロックボルト
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
E21D20/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020207469
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094529
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸人
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-094798(JP,U)
【文献】特開2012-036930(JP,A)
【文献】実開平02-091278(JP,U)
【文献】特公昭48-025456(JP,B1)
【文献】特開2017-119961(JP,A)
【文献】特開昭64-001900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
F16B 21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワンタッチ固定式ロックボルトであって、
前記ワンタッチ固定式ロックボルトは、ロックボルト本体と、ロック部材とを備え、
前記ロックボルト本体の長手方向の一方の端部である基部の外周面に、前記外周面の径方向外方に開放状で前記ロックボルト本体の長手方向と直交する方向に貫通して延在する底面とこの底面の両側から起立する一対の側面とを有しそれら一対の側面間は均一幅となっている係止溝が設けられ、
前記係止溝を通り前記ロックボルト本体の長手方向と直交する平面上の前記ロックボルト本体の部分は、前記係止溝が形成されていない前記ロックボルト本体の他の部分に比べて断面積が小さい断面縮小部となっており、
前記ロック部材は、前記一対の側面間に前記ロックボルト本体の長手方向においてがたつかず移動不能に挿入される均一の厚さを有しその厚さ方向の両面が平行する弾性材料からなる単一の平板状部材から構成され、
前記ロック部材は、互いに対向しつつ延在し前記厚さ方向と直交する方向で互いに離れる方向に弾性変形可能な第1脚部と第2脚部とを有し、
前記断面縮小部に係合可能で前記断面縮小部に係合した状態で前記ロックボルト本体の長手方向およびこの長手方向と直交する方向における前記ロック部材の移動を阻止する係合部が前記第1脚部と前記第2脚部とにわたって設けられ、
さらに、前記第1の脚部と前記第2の脚部に前記係合部を前記断面縮小部に案内する案内部が設けられている、
ことを特徴とするワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記第1脚部と前記第2の脚部とを接続する接続部を有し、
前記係合部は、前記第1脚部と前記第2脚部と前記接続部とにわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項3】
前記係合部を挟んで前記接続部と反対に位置する前記第1脚部の部分と前記第2の脚部の部分は、それら脚部の先部となっており、
前記第1の脚部の前記先部と前記第2の脚部の前記先部の互いに向かい合う部分に、前記係合部から離れるにつれてそれらの間隔を次第に大きくするテーパ部が設けられ、
前記案内部は前記第1の脚部と前記第2の脚部の前記テーパ部で構成されている、
ことを特徴とする請求項2記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項4】
前記係止溝は、前記ロックボルト本体の直径上で互いに対向する2箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項5】
前記係止溝は、前記ロックボルト本体の前記基部の長手方向に間隔をおいて複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項6】
前記ワンタッチ固定式ロックボルトはトンネル工事の支保工に用いられるロックボルトであり、
地山内面に吹付けられたコンクリートの上から前記地山内面に削孔され定着材が注入された複数の孔に前記ロックボルト本体が前記基部と反対に位置する先部から挿入され、
前記ロックボルト本体の前記基部寄りの外周面の箇所に、前記コンクリートの表面に対して前記ロックボルト本体をどこまで挿入するかの目印が設けられている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル工事の支保工などに用いられて好適なワンタッチ固定式ロックボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NATM工法で掘削される山岳トンネルでは、図9(A)に示すように、地山が掘削されることで形成された地山内面50にコンクリートC1が吹き付けられる。
その後、トンネルの周方向および長手方向に間隔をおいた複数箇所において、硬化状態のコンクリートC1の上から地山内面50に孔52が削孔され、各孔52にモルタルなどの定着材が注入される。
そして、各孔52にロックボルト54が挿入され、コンクリートC1から突出するロックボルト54の基部が、角型プレートや丸型プレートなどからなる鋼板製のベアリングプレート56の取り付け孔5602に挿通され、このベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に当て付け、ロックボルト54の基部の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を締結してベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付けることで各ロックボルト54の設置作業が終了し、岩盤の固定作業がなされている。
その後、図9(B)に示すように、必要に応じて地山の水がトンネル内に侵入しないようにコンクリートC1の表面に防水シートが敷設され、この防水シートに対向させてコンクリート打設型枠が配置され、防水シートとコンクリート打設型枠の型枠面との間にコンクリートC2が打設されて覆工コンクリートが行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-167774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従ってトンネル工事の支保工のうちロックボルト工では、ロックボルト54の基部の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を回転させてベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付ける作業は、作業員が足場に乗って行なうことから無理な姿勢となる場合が多く、手間取る作業となっている。
さらに、ナット58を回転させる作業であるため時間が掛り、コンクリートC1が吹き付けられた岩盤付近に長時間いなければならないため、危険性を伴う作業となっている。
特に、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなると、ロックボルト54の本数は数千、数万本の単位となり、ナット58の締結作業に多くの時間を要し、危険性も増大し、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る観点から何らかの改善が望まれていた。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、ナットの締結作業を省略し、簡単に確実にベアリングプレートをコンクリートの表面に押し付けることができ、危険性を減少する上で有利となり、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利で、トンネル工事の支保工などに用いられて好適なワンタッチ固定式ロックボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明はワンタッチ固定式ロックボルトであって、前記ワンタッチ固定式ロックボルトは、ロックボルト本体と、ロック部材とを備え、前記ロックボルト本体の長手方向の一方の端部である基部の外周面に、前記外周面の径方向外方に開放状で前記ロックボルト本体の長手方向と直交する方向に貫通して延在する係止溝が設けられ、前記係止溝を通り前記ロックボルト本体の長手方向と直交する平面上の前記ロックボルト本体の部分は、前記係止溝が形成されていない前記ロックボルト本体の他の部分に比べて断面積が小さい断面縮小部となっており、前記ロック部材は、互いに対向しつつ延在し互いに離れる方向に弾性変形可能な第1脚部と第2脚部とを有し、前記断面縮小部に係合可能で前記断面縮小部に係合した状態で前記ロックボルト本体の長手方向およびこの長手方向と直交する方向における前記ロック部材の移動を阻止する係合部が前記第1脚部と前記第2脚部とにわたって設けられ、さらに、前記第1の脚部と前記第2の脚部に前記係合部を前記断面縮小部に案内する案内部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ロック部材は、前記第1脚部と前記第2の脚部とを接続する接続部を有し、前記係合部は、前記第1脚部と前記第2脚部と前記接続部とにわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記係合部を挟んで前記接続部と反対に位置する前記第1脚部の部分と前記第2の脚部の部分は、それら脚部の先部となっており、前記第1の脚部の前記先部と前記第2の脚部の前記先部の互いに向かい合う部分に、前記係合部から離れるにつれてそれらの間隔を次第に大きくするテーパ部が設けられ、前記案内部は前記第1の脚部と前記第2の脚部の前記テーパ部で構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記係止溝は、前記ロックボルト本体の直径上で互いに対向する2箇所に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記係止溝は、前記ロックボルト本体の前記基部の長手方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ワンタッチ固定式ロックボルトはトンネル工事の支保工に用いられるロックボルトであり、地山内面に吹付けられたコンクリートの上から前記地山内面に削孔され定着材が注入された複数の孔に前記ロックボルト本体が前記基部と反対に位置する先部から挿入され、前記ロックボルト本体の前記基部寄りの外周面の箇所に、前記コンクリートの表面に対して前記ロックボルト本体をどこまで挿入するかの目印が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のワンタッチ固定式ロックボルトによれば、単にロック部材をロックボルト本体の断面縮小部に係合させるというワンタッチ作業で済むため、従来のロックボルトの基部の雄ねじにナットを螺合し、ナットを回転していく手間取る作業に比べて短時間でベアリングプレートをコンクリートの表面に押し付ける作業を行なえ、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、ロックボルトの設置作業を短時間で行なうことができることから、コンクリートが吹き付けられた岩盤付近に短時間いれば足り、危険性を減少する上で有利となる。
また、短時間で地山を支保できるため、地山を早期に安定させる上で有利となる。
特に、本発明のワンタッチ固定式ロックボルトを用いれば、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなり、ロックボルトの本数が数千、数万本の単位となった場合でも、ロックボルトの設置作業に要する時間を大幅に短縮でき、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、係合部を、第1脚部と第2脚部と接続部とにわたって設けると、第1の脚部と第2の脚部との長さを短くでき、ロック部材のコンパクト化を図り、ロック部材の取り扱い性を向上し、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、案内部を第1の脚部と第2の脚部のテーパ部で構成すると、断面縮小部への係合部の係合時、第1の脚部と第2の脚部とが次第に均等に開いていくため、断面縮小部への係合部の係合を円滑に行なえ、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、係止溝を、ロックボルト本体の基部の長手方向に間隔をおいて複数設けると、1本のロックボルト本体を、地山に削孔される深さの異なる孔に共通して利用でき、コストダウンを図る上で有利となる。
また、コンクリートの表面に対してロックボルト本体をどこまで挿入するかの目印を設けると、地山内面に削孔した孔へのロックボルト本体の挿入を簡単に迅速に行なえ、また、ロック部材のロックボルト本体への固定を確実に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)はロックボルト本体の基部の正面図、(B)は(A)のB―B断面図である。
図2】(A)はロック部材の側面図、(B)は同正面図である。
図3】(A)はベアリングプレートの取り付け孔に、コンクリートの表面から突出するロックボルトの基部を挿入し、ベアリングプレートをコンクリートの表面に押し付けた状態の断面図、(B)は(A)の状態から係止溝にロック部材を係合した状態の図である。
図4図3(B)の正面図である。
図5】本発明のワンタッチ固定式ロックボルトを用いた支保工の説明図である。
図6】変形例のワンタッチ固定式ロックボルトを構成するロックボルト本体の説明図で、(A)はロックボルト本体の基部の正面図、(B)は(A)のB―B断面図である。
図7】変形例のワンタッチ固定式ロックボルトを構成するロック部材の説明図で、(A)はロック部材の側面図、(B)は同正面図である。
図8】変形例のワンタッチ固定式ロックボルトを構成するロックボルト本体の基部の正面図である。
図9】従来工法の説明図で(A)は支保工の説明図、(B)は覆工コンクリートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、従来の箇所、部材に同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5に示すように、ワンタッチ固定式ロックボルト10は、コンクリートC1の上から地山内面50に削孔された孔52に挿入されるロックボルト本体12と、ロック部材14とを備えている。
【0009】
なお、図5に示すように、削孔された孔52に挿入されるロックボルト本体12の長手方向の一方の端部を先部1202と呼び、他方の端部を基部1204と呼ぶ。
ロックボルト本体12は鋼材製で、ロックボルト本体12には異形鉄筋や丸棒鉄筋など従来公知の様々な棒材が使用可能である。
図1に示すように、ロックボルト本体12の基部1204の外周面に、外周面の径方向外方に開放状でロックボルト本体12の長手方向と直交する方向に貫通して延在する係止溝16が設けられ、図1において符号1602は係止溝16の底面を示している。
本実施の形態では、係止溝16は、ロックボルト本体12の直径上で互いに対向する2箇所に設けられ、係止溝16の幅Wは均一の寸法で形成されている。
【0010】
図1(B)に斜線で示すように、係止溝16を通りロックボルト本体12の長手方向と直交する平面上のロックボルト本体12の部分は、係止溝16が形成されていないロックボルト本体12の他の部分に比べて断面積が小さい断面縮小部1210となっている。
また、図3(A)に示すように、係止溝16からロックボルト本体12の先部1202寄りに離れた基部1204の外周面の箇所に、コンクリートC1の表面に対してロックボルト本体12をどこまで挿入するかの目印1212が設けられている。この目印1212は、例えば、ペンキを塗布することなどで、あるいは、切削加工することなどで設けられている。
【0011】
図2に示すように、ロック部材14は、鋼材または合成樹脂などの弾性材料で形成されている。
ロック部材14は、第1の脚部20、第2の脚部22、接続部24、係合部26、案内部28を含んで構成されている。
第1の脚部20と第2の脚部22とは接続部24から突出し、第1の脚部20と第2の脚部22とは左右対称の形状で形成され、それぞれ互いに対向しつつ延在し、接続部24を支点として互いに離れる方向に弾性変形可能である。
第1の脚部20と第2の脚部22と接続部24とは、図2(A)に示すように均一の厚さTで設けられている。
この厚さTは、後述するように係合部26を断面縮小部1210に対して係脱でき、また、係合部26が断面縮小部1210に係合した状態で、ロック部材14がロックボルト本体12の長手方向においてがたつかず移動不能になる寸法で形成されている。
【0012】
係合部26は、第1の脚部20と第2の脚部22と接続部24とにわたって設けられている。
係合部26は、係止溝16の延在方向から断面縮小部1210に係合可能で、断面縮小部1210に係合した状態でロックボルト本体12の長手方向およびこの長手方向と直交する方向におけるロック部材14の移動を阻止する。
本実施の形態では、係合部26は、第1の脚部20に設けられ一方の係止溝16の底面1602に接触可能な第1の直線部2602と、第2の脚部22に設けられ他方の係止溝16の底面1602に接触可能な第2の直線部2604と、接続部24に設けられロックボルト本体12の外周面に接触可能な湾曲部2606と、湾曲部2606と反対に位置する第1の直線部2602の端部に設けられロックボルト本体12の外周面に接触可能な湾曲状の第1の膨出部2608と、湾曲部2606と反対に位置する第2の直線部2604の端部に設けられロックボルト本体12の外周面に接触可能な湾曲状の第2の膨出部2610とを含んで構成されている。
すなわち、第1の直線部2602と第2の直線部2604が各係止溝16の底面1602に接触し、湾曲部2606と第1の膨出部2608と第2の膨出部2610とがロックボルト本体12の外周面に接触することで、係合部26が断面縮小部1210に係合した状態となる。
【0013】
案内部28は、係止溝16の延在方向から断面縮小部1210へ接触していくことで第1の脚部20と第2の脚部22とを互いに離れる方向に開いて係合部26を断面縮小部1210に案内するものである。
本実施の形態では、係合部26を挟んで接続部24と反対に位置する第1の脚部20の部分と第2の脚部22の部分は、それら脚部20、22の先部20A、22Aとなっており、それら脚部20、22の先部20A、22Aに案内部28が設けられている。
案内部28は、第1の脚部20の先部20Aと第2の脚部22の先部22Aの互いに向かい合う部分に、それぞれ係合部26から離れるにつれてそれらの間隔を次第に大きくするテーパ部2002、2202が設けられ、案内部28は第1の脚部20のテーパ部2002と第2の脚部22のテーパ部2202で構成されている。
【0014】
次に、本実施の形態のワンタッチ固定式ロックボルト10を用いたトンネル工事について説明する。
図3に示すように、従来と同様に、トンネルの地山内面50に吹付けられたコンクリートC1の表面の複数の孔52に定着材を注入した後、各孔52にロックボルト本体12を挿入する。
この場合、ロックボルト本体12に設けられた目印1212が、コンクリートC1の表面に位置するまで挿入する。
次に、ベアリングプレート56の取り付け孔5602に、コンクリートC1の表面から突出するロックボルト本体12の基部1204を挿通し、ベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付ける。
【0015】
つぎに、ロックボルト本体12の長手方向と直交する方向である係止溝16の延在方向から、第1の脚部20と第2の脚部22の間に断面縮小部1210が入るようにロック部材14を把持して断面縮小部1210に向けて移動させる。
このロック部材14の移動により、第1の脚部20のテーパ部2002と第2の脚部22のテーパ部2202とがそれぞれ係止溝16の底面1602に接触していくことで第1の脚部20と第2の脚部22とが互いに離れる方向に弾性変形して開いていく。
ロック部材14のさらなる移動により、湾曲部2606がロックボルト本体12の外周面に当接すると、図3(B)、図4に示すように、第1の脚部20と第2の脚部22とは弾性により元の位置に復帰し、係合部26が断面縮小部1210に係合した状態となり、ロックボルト本体12の長手方向およびこの長手方向と直交する方向におけるロック部材14の移動が阻止された状態となる。
これによりベアリングプレート56は、コンクリートC1の表面から離れる方向への移動がロック部材14により阻止され、コンクリートC1の表面とロック部材14とにより挟持された状態となり、ロックボルトの設置作業が終了する。
【0016】
したがって、本実施の形態のワンタッチ固定式ロックボルト10によれば、単にロック部材14をロックボルト本体12の断面縮小部1210に係合させるというワンタッチ作業で済むため、従来のロックボルト54の基部1204の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を回転していく手間取る作業に比べて短時間でベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付ける作業を行なえ、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、ロックボルト10の設置作業を短時間で行なうことができることから、コンクリートC1が吹き付けられた岩盤付近に短時間いれば足り、危険性を減少する上で有利となる。
また、短時間で地山を支保できるため、地山を早期に安定させる上で有利となる。
特に、本実施の形態のワンタッチ固定式ロックボルト10を用いれば、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなり、ロックボルトの本数が数千、数万本の単位となった場合でも、ロックボルトの設置作業に要する時間を大幅に短縮でき、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0017】
また、第1の脚部20と第2の脚部22の長さを大きくし、接続部24を係合部26から離し、係合部26を第1の脚部20と第2の脚部22にわたって設けてもよいが、本実施の形態のように、係合部26を、第1の脚部20と第2の脚部22と接続部24とにわたって設けると第1の脚部20と第2の脚部22との長さを短くでき、ロック部材14のコンパクト化を図り、ロック部材14の取り扱い性を向上し、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、第1の脚部20と第2の脚部22からテーパ部2002、2202を省き、案内部28を、係合部26を構成する湾曲状の第1の膨出部2608と湾曲状の第2の膨出部2610とで兼用してもよく、この場合には第1の脚部20と第2の脚部22との長さをさらに短くでき、ロック部材14のコンパクト化を図る上で有利となる。
しかしながら、本実施の形態のように、案内部28を第1の脚部20と第2の脚部22のテーパ部2002、2202で構成すると、断面縮小部1210への係合部26の係合時、第1の脚部20と第2の脚部22とが次第に均等に開いていくため、断面縮小部1210への係合部26の係合を円滑に行なえ、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
【0018】
また、図6に示すように、ロックボルト本体12の基部1204の外周面に一つの係止溝16を設け、一つの係止溝16により構成される断面縮小部1220に対して係合する係合部を、図7に示すように、第1の脚部20に設けられ係止溝16の底面1602に接触する直線部2620と、第2の脚部22に設けられロックボルト本体12の外周面に接触する第1の湾曲部2622と、接続部24に設けられロックボルト本体12の外周面に接触する第2の湾曲部2624と、第2の湾曲部2624と反対に位置する直線部2620の端部に設けられロックボルト本体12の外周面に接触する湾曲状の第1の膨出部2626と、第2の湾曲部2624と反対に位置する第1の湾曲部2622の端部に設けられロックボルト本体12の外周面に接触する湾曲状の第2の膨出部2628とを含んで構成してもよい。
しかしながら本実施の形態のように、第1の脚部20と第2の脚部22とを左右対称の形状で形成すると、断面縮小部1210への係合部26の係合時、第1の脚部20と第2の脚部22とが均等に次第に開いていくため、断面縮小部1210へ係合部26を係合させる操作をより円滑に行なう上で有利となり、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
【0019】
また、図8に示すように、係止溝16を、ロックボルト本体12の基部1204の長手方向に間隔をおいて複数設けると、1本のロックボルト54を、地山に削孔される深さの異なる孔52に共通して利用でき、コストダウンを図る上で有利となる。
このように係止溝16を、ロックボルト本体12の長手方向に間隔をおいて複数設ける場合、各係止溝16の延在方向を、ロックボルト本体12の中心軸回りにずらして設けると、ロックボルト本体12の強度、剛性を確保する上で有利となる。
また、本実施の形態のワンタッチ固定式ロックボルト10では、ロックボルト本体12の先部1202寄りの外周面の箇所に、コンクリートC1の表面に対してロックボルト本体12をどこまで挿入するかの目印1212が設けられているので、地山内面50に削孔した孔52へのロックボルト本体12の挿入を簡単に迅速に行なえ、また、ロック部材14のロックボルト本体12への固定を確実に行なう上で有利となる。
【0020】
なお、本実施の形態では、ワンタッチ固定式ロックボルト10がトンネル工事に用いられる場合について説明したが、ワンタッチ固定式ロックボルト10の用途はトンネル工事に限定されず、従来公知の様々な用途に適用される。
【符号の説明】
【0021】
10 ワンタッチ固定式ロックボルト
12 ロックボルト本体
1202 先部
1204 基部
1210,1220 断面縮小部
1412 目印
14 ロック部材
16 係止溝
1602 底面
20 第1の脚部
20A 先部
2002 テーパ部
22 第2の脚部
22A 先部
2202 テーパ部
24 接続部
26 係合部
2602 第1の直線部
2604 第2の直線部
2606 湾曲部
2608、2626 第1の膨出部
2610、2628 第2の膨出部
2620 直線部
2622 第1の湾曲部
2624 第2の湾曲部
28 案内部
50 地山内面
52 孔
54 ロックボルト
56 ベアリングプレート
5602 取り付け孔
58 ナット
C1、C2 コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9