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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】害虫忌避剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/10 20060101AFI20240311BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A01N37/10
A01P17/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018094877
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019069934
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2017195275
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】小松 利豪
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】土谷 美緒
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】野田 定文
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-8202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
で表される4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを含む害虫忌避剤であって、害虫がナメクジ、ダニおよびシロアリからなる群から選択される1種以上である、害虫忌避剤
【請求項2】
請求項に記載の害虫忌避剤を適用対象物あるいはその周辺に付与することを特徴とする、害虫忌避方法。
【請求項3】
適用対象物への付与を撒布、噴霧または塗布により行う、請求項に記載の害虫忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを含む害虫忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、害虫による様々な被害が報告されている。例えば、ナメクジやカタツムリ等の腹足類害虫は植物の新芽や花芽を食害し、蚊等の媒介動物は病原体を媒介することによってマラリアやジカ熱等の病気を拡大させ、ダニやゴキブリ等の害虫はアレルギー引き起こす原因と成り得る。そのため、これらの害虫対策として駆除剤や忌避剤等を用いた方法が種々検討されている。
【0003】
ナメクジ等の腹足類害虫の対策としては、メタアルデヒドを有効成分とした誘引性の毒餌剤を腹足類害虫の生息場所に設置する方法が知られている(特許文献1)。しかし、腹足類害虫がその毒餌を食べないと効果は得られず、また、近隣の植物への悪影響や、犬や猫が毒餌を誤って舐めたりすると中毒死する危険があった。
【0004】
また、腹足類害虫に対して忌避効果のある銅化合物を担持または含有させた成型品やシートを、植木鉢の底や植木鉢台の上面、家屋の外壁の下部および厨房などに設置し、腹足類害虫を忌避する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、銅化合物を用いた忌避剤は効果が低く、また雨で銅イオンが流れ出し、環境に悪影響を及ぼすこと等が懸念されていた。
【0005】
蚊に対する対策としては、例えばDEET(N,N-ジエチル-1,3-メチルベンズアミド)等の忌避剤を散布する方法が知られている。DEETは蚊に対する忌避効果が非常に高く、2017年現在、日本では人体用害虫忌避剤において高濃度(DEET30%)製品が認可されている。しかしながら、DEETを含む忌避剤を高濃度で皮膚に反復して使用した場合、アレルギーや肌荒れを起こす健康被害が報告されており、また、動物実験で連続的大量摂取により神経毒性が見られたとの報告もある。
【0006】
一方、化粧品や医薬品の防腐剤として広く用いられているパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸エステル類)は、高い安全性と低皮膚刺激性を有しており、抗菌・防カビ効果のみならず、ダニに対しても忌避効果があることが知られている(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、メチルパラベンやブチルパラベン等の炭素原子数1~4の低級アルキル基のパラベンは、安全性には優れるものの、ダニ等の害虫に対する忌避効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-175906号公報
【文献】特開平8-59417号公報
【文献】特開昭60-008202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、安全性に優れるとともに、害虫忌避効果が高い害虫忌避剤を提供することにある。また、本発明の目的は、安全性に優れるとともに、害虫忌避効果が高い害虫忌避方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、害虫忌避剤について鋭意検討した結果、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル(ヘキシルパラベン)がナメクジやダニ等の害虫に対して高い忌避効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを含む害虫忌避剤を提供する。
【化1】
【発明の効果】
【0012】
本発明の害虫忌避剤によれば、安全性に優れるとともに、ナメクジやダニ等の害虫に対して高い忌避効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例3の試験区およびブランクのろ紙の写真である。
図2】比較例5の試験区およびブランクのろ紙の写真である。
図3】比較例6の試験区およびブランクのろ紙の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において使用される式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルは、市販のものを用いてもよく、例えば、本発明の出願人により先に提案した特願2016-240132に記載されるように、酸触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸と1-ヘキサノールとを反応させることによって得られたものを用いてもよい。
【0015】
本発明の害虫忌避剤は有効成分として4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを含む。4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルは、これを各種の溶媒に溶解乃至分散させたり固体担体と混合したり吸着させたりして、エアゾール剤、ポンプ剤、液剤、塗布剤、マット剤、シート剤、テープ剤、粉剤、顆粒剤、ゲル剤、クリーム剤等の剤型に調製し、害虫忌避剤とすることができる。
【0016】
溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ケロシン、パラフィン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、および、酢酸エチル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類の1種以上が使用でき、これらの中でも人体や環境への影響が低い点で水が好ましい。
【0017】
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを溶媒に溶解乃至分散させて本発明の害虫忌避剤とする場合、害虫忌避剤中の4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルの含有量は、害虫忌避剤の質量に対して好ましくは0.1~50質量%であり、より好ましくは1~20質量%である。
【0018】
固体担体としては、例えば、カオリン、タルク、ベントナイト、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト等の鉱物質又は無機質粉末;木粉、大豆粉、小麦粉、澱粉粉等の植物質粉末;フェノール樹脂、ポリアミド、アクリル、ポリエステル等のプラスチック;該プラスチックからなる合成繊維;ポリブタジエン等のゴムまたはその粉末;樟脳、ナフタレン、パラジクロロベンゼン、トリオキサン、シクロドデカン、アダマンタン等の昇華性粉末;リンター、パルプ等の天然繊維;羊毛、綿、絹などの動植物性繊維;レーヨンなどの再生繊維等が挙げられる。また、ガラス繊維、石綿などの無機繊維などから得られる紙、不織布等も固体担体として使用できる。
【0019】
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを固体担体と混合または吸着させて本発明の害虫忌避剤とする場合、害虫忌避剤中の4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルの含有量は、害虫忌避剤の質量に対して好ましくは0.1~50質量%であり、より好ましくは1~20質量%である。
【0020】
本発明の害虫忌避剤は、必要に応じて、塗膜形成剤、界面活性剤、湿潤剤、安定化剤、噴射剤、殺菌剤、防黴剤、香料、撥水・撥油剤等の任意成分Aを含有してよい。塗膜形成剤としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シリコーン、アクリル樹脂、塩化ゴム、石油樹脂、メチルセルロース、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ラテックスエマルジョン等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸塩、直鎖アルキルベンンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。湿潤剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。噴射剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、γ-オリザノール等の安定化剤、液化石油ガス、ジメチルエーテル、フルオロカーボン、圧縮ガス等が挙げられる。殺菌剤としては、パラクロロメタキシレート等が挙げられ、香料としては、レモン系、ローズ系、グリーン系等が挙げられ、撥水・撥油剤としては、ロウ、油脂、金属セッケン、フッ素系撥油剤等が挙げられる。
【0021】
このような任意成分Aを配合する場合、その配合量は、害虫忌避剤の質量に対して好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~4質量%であり、さらに好ましくは0.5~3質量%である。上記の任意成分Aは、前記の剤型に調製するに際して配合することができる。
【0022】
本発明の害虫忌避剤は、必要に応じて、害虫忌避の作用を強化する目的で、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルに加えて殺虫剤、他の害虫防除剤または忌避剤等の任意成分Bを含有してもよい。殺虫剤としては、例えば、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、フッ素系殺虫剤、昆虫成長制御剤等が挙げられ、忌避剤としては、例えば、N-ジエチル-m-トル-アミド、ジメチルフタレート等が挙げられる。
【0023】
このような任意成分Bを配合する場合、その配合量は、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルの質量に対して好ましくは1~80質量%であり、より好ましくは5~70質量%であり、さらに好ましくは8~65質量%である。上記の任意成分Bは、前記の剤型に調製するに際して配合することができる。
【0024】
本発明の害虫忌避剤により忌避される害虫としては、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ、ダニ、ゴキブリ、ハチ、ハエ、ハエ幼虫、蚊、アブ、ノミ、ムカデ、ナンキンムシ、サシバエ、イガ、ゾウリムシ、アリ、シロアリ、ヨコバイ、コナジラミ、スクミリンゴカイ、ヤケヤスデ、ダンゴ虫およびコクヌストモドキからなる群から選択される1種以上が挙げられる。それらの中でも、ナメクジ、ダニおよびシロアリからなる群から選択される1種以上が好適に忌避され、ナメクジがより好適に忌避される。
【0025】
本発明の害虫忌避剤を適用対象物またはその所定部位(以下、単に適用対象物と称する)あるいはその周辺に付与することによって害虫をその適用対象物またはその周辺から忌避させることができる。また、害虫忌避剤を不織布、シート、無機担体等の担体に担持させ、害虫を忌避させたい場所にそれらを設置してもよい。
【0026】
適用対象物としては、例えば、植木鉢やプランター、育苗鉢の底部または周辺部、該底部と土との間、排水口の内側、枯葉の下等が挙げられる。また、害虫の栄養源となり得る生物それ自体または該生物の周辺部も本発明における適用対象物に含まれる。例えば、農作物自体やそれが栽培されている畑、果樹園、花卉等の生育している花壇等が挙げられる。
【0027】
また、屋内での害虫忌避剤の適用場所としては、一般家庭や食堂等の厨房、洗面所、ベランダ、物置等が挙げられる。
【0028】
本発明の害虫忌避剤の適用対象物への付与方法としては、撒布、噴霧または塗布等が挙げられる。本発明の害虫忌避剤の適用量は、忌避剤の剤型や適用方法、適用場所に応じて適宜決定することができる。
【0029】
本発明の害虫忌避剤において、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルの含有量は、害虫忌避剤の剤型や適用方法、適用場所に応じて適宜決定できる。例えば、エアゾール剤の原液やポンプ剤のように液体で用いる場合には、害虫忌避剤中の4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは1~20質量%含有させることができる。また、不織布等の固体担体に担持させて用いる場合、害虫忌避剤中の4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを好ましくは0.1質量%~50質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは2~20質量%含有させることができる。使用する固体担体は、例えば上記した材料の中から、適用場所や適用方法に応じて任意に選択することができる。
【実施例
【0030】
[参考例1]ヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル)の製造
撹拌機、温度センサーおよびディーンスターク装置を備えた300mLスケールの4つ口フラスコ(反応容器)に、4-ヒドロキシ安息香酸91.2g(0.66モル)、1-ヘキサノール101.1g(0.99モル)および触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.8gを加え、38mL/分の窒素気流下、145℃まで昇温し、同温度で6時間反応させ、ヘキシルパラベンを含む粗組成物を得た。そこへ48%水酸化ナトリウムを加えて中和させた後、蒸留により精製し、ヘキシルパラベン(純度99.8wt%)を得た。
【0031】
ダニ忌避試験
[実施例1]
14×17×2.5hcmのホーローバットに供試ダニが繁殖している培地(20g)を広げ、5Lプラスチック製の密閉容器の中に置いた。容器内は、洗浄水で湿度を95~99%に調整し、約27.0℃の温度下に保存した。
【0032】
10×10cmの黒色画用紙1.30g上にヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル)が0.026質量%となるようにアセトンで濃度を調整した各供試検体を1ml滴下処理し、10分間風乾した後、黒色画用紙を2.5cm角に切断し、試験区とした。
なお供試検体と同様に、アセトンのみを処理した区をブランクとした。
【0033】
試験区とブランクを1枚ずつ併置してから30分後に黒色画用紙に這い上がってきたダニ数を観察し、忌避率を算出した。
【0034】
[比較例1]
ヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル)をブチルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ブチル)に変更した以外は実施例1と同様にして、ダニ忌避試験を実施した。結果を表1に示す。
【0035】
[比較例2]
ヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル)を2-エチルヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル)に変更した以外は実施例1と同様にして、ダニ忌避試験を実施した。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例3]
ヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル)をベンジルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル)に変更した以外は実施例1と同様にして、ダニ忌避試験を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
<試験に用いたダニ>
ダニ1:ヤケヒョウヒダニ
ダニ2:コナヒョウヒダニ
【0038】
【表1】
【0039】
ナメクジ忌避試験
[実施例2]
三角フラスコに水86gを加え、そこへ寒天4gを100℃に加熱・撹拌しながら添加した。加熱を停止し、さらにヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル)10gを撹拌しながら加えた。撹拌を停止し、氷で冷却した0.5Lのバットに流した後、そのまま1時間冷却し、ヘキシルパラベン10質量%含有寒天を得た。
【0040】
得られたヘキシルパラベン10質量%含有寒天を縦140mm×横175mm×高さ14mmのトレイの半分に敷き詰め(処理区)、トレイの中央にエサ(キャットフード)を設置した。寒天を敷き詰めていないトレイの残りの部分(無処理区)にチャコウラナメクジ10匹を設置し、トレイを小さな穴の開いたラップで巻き、暗所に保存した。6時間および24時間後の無処理区および処理区内のナメクジの数を観測した。ブランクとして、ヘキシルパラベンを含有しない寒天を用いて同様の試験を実施した。結果を表2に示す。
【0041】
[比較例4]
三角フラスコに水46gを加え、そこへ寒天4gを100℃に加熱・撹拌しながら添加した。加熱を停止し、さらにプロピルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸プロピル)50gを撹拌しながら加えた。撹拌を停止し、氷で冷却した0.5Lのバットに流した後、そのまま1時間冷却し、プロピルパラベン10質量%含有寒天を得た。
その後、実施例2と同様の条件で試験を実施した。結果を表2に示す
【0042】
【表2】
【0043】
シロアリ忌避試験
[実施例3]
ドラフト内に蛇腹状に折ったアルミホイルを敷き、アルミホイルの上に直径55mmの定性ろ紙(ADVANTEC)を置いた。予め1.8%w/vに調整したヘキシルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル)アセトン溶液0.4mLを、ろ紙の片面全体に万遍なく滴下した(処理量10%w/w)。そのままドラフト内にて3時間、風乾した(ヘキシルパラベン処理ろ紙)。ブランク用として、同様の方法でアセトンのみを滴下し乾燥させたろ紙(ブランクろ紙)を用意した。
【0044】
ステンレスバット(24cm×20cm×高さ3cm)の2隅(対角線上)に、上記のヘキシルパラベン処理ろ紙およびブランクろ紙を各1枚設置し、両ろ紙にそれぞれ水道水1mLを滴下した。バット中央にイエシロアリ30頭を放虫し、保湿の為にビニール袋を被せ、更に上から遮光のために黒ポリ袋を被せた状態で25℃で6日間放置した。ヘキシルパラベン処理ろ紙およびブランクろ紙の質量を測定し、質量減少を計算した。結果を表3に示す。ろ紙の質量減少が多いほど、ろ紙がシロアリに摂食されたことを示す。
【0045】
[比較例5]
ヘキシルパラベンをブチルパラベンに変更した以外は実施例3と同様に試験を実施した。結果を表3に示す。
【0046】
[比較例6]
ヘキシルパラベンを4-ヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル(C22)に変更した以外は実施例3と同様に試験を実施した。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕式(1)
[化1]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを含む害虫忌避剤。
〔2〕害虫が、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ、ダニ、ゴキブリ、ハチ、ハエ、ハエ幼虫、蚊、アブ、ノミ、ムカデ、ナンキンムシ、サシバエ、イガ、ゾウリムシ、アリ、シロアリ、ヨコバイ、コナジラミ、スクミリンゴカイ、ヤケヤスデ、ダンゴ虫およびコクヌストモドキからなる群から選択される1種以上である、〔1〕に記載の害虫忌避剤。
〔3〕害虫がナメクジ、ダニおよびシロアリからなる群から選択される1種以上である、〔1〕に記載の害虫忌避剤。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の害虫忌避剤を適用対象物あるいはその周辺に付与することを特徴とする、害虫忌避方法。
〔5〕適用対象物への付与を撒布、噴霧または塗布により行う、〔4〕に記載の害虫忌避方法。

図1
図2
図3