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  • 特許-駆動装置 図1
  • 特許-駆動装置 図2
  • 特許-駆動装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
F16H25/20 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018239596
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101233
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】横塚 力
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031634(JP,A)
【文献】特開平11-108141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0377329(US,A1)
【文献】特開2011-169423(JP,A)
【文献】特開2014-173708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物を軸方向に沿って移動させる駆動装置であって、
金属粉末射出成形材料からなるフレームと、
前記軸方向に延びるリードスクリューと、
前記リードスクリューに螺合するナット部と、前記駆動対象物が取り付けられる取付部とを有する可動フランジ部と、
前記リードスクリューに連結される歯車機構と、
前記歯車機構の一部を構成する内歯車が内周面に一体的に形成されたギアケースと、
前記ギアケース内の前記歯車機構を介して前記リードスクリューを回転させるモータと
を備え、
前記ギアケースは樹脂により形成され、
前記フレームは、
前記リードスクリューを支持するフランジと、
該フレーム内に一体的に形成されるギア収容部であって、内部に前記ギアケースを固定的に収容し、前記ギアケースの外周を覆うギア収容部
を有し、
前記ギアケースの外周面は前記ギア収容部の内周面に密着する、
駆動装置。
【請求項2】
前記モータは、前記フレームの前記ギア収容部の端部に固定される、請求項1に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に係り、特にレンズやカメラなどの駆動対象物を軸方向に沿って移動させる駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ照射型ディスク装置やスマートフォンなどの電子機器においては、レンズやカメラなどを必要に応じて移動させる機構(駆動装置)が搭載されることが増えてきている。例えば、カメラを備えたスマートフォンにおいては、カメラをスマートフォン本体から出し入れする機能を付加することがある。このようなレンズやカメラなどの駆動対象物を移動させるために、例えばリードスクリューを用いた駆動装置を用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなリードスクリューを用いた駆動装置においては、リードスクリューに取り付けられた可動部にレンズやカメラなどの駆動対象物が固定され、モータの回転を歯車機構により減速してリードスクリューを回転させることにより駆動対象物を軸方向に移動するようになっている。一般的に、このような歯車機構やリードスクリューを支持するフレームなどは、小さくて複雑な構造の成形に好適な金属粉末射出成形(MIM(Metal Injection Molding))により形成されている。
【0004】
しかしながら、MIMを用いた成形では、焼結時に材料の収縮が生じるため、成形された部品の寸法精度が十分に確保できず、装置の性能にも影響を与えるという問題がある。また、製造コストの観点から、MIM成形材料に代えて安価な樹脂を使用したいという要望もある。一方で、樹脂により成形した部品は、MIM成形材料により成形した部品に比べて強度や放熱性の点で劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国実用新案公告第207526979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、全体としての強度を維持しつつ、寸法精度の高い部品を用いて性能を向上させることができる安価な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、全体としての強度を維持しつつ、寸法精度の高い部品を用いて性能を向上させることができる安価な駆動装置が提供される。この駆動装置は、駆動対象物を軸方向に沿って移動させるために使用される。上記駆動装置は、金属粉末射出成形材料からなるフレームと、上記軸方向に延びるリードスクリューと、可動フランジ部と、上記リードスクリューに連結される歯車機構と、上記歯車機構の一部を構成する内歯車が内周面に一体的に形成されたギアケースと、上記ギアケース内の上記歯車機構を介して上記リードスクリューを回転させるモータとを備える。上記可動フランジ部は、上記リードスクリューに螺合するナット部と、上記駆動対象物が取り付けられる取付部とを有する。上記ギアケースは樹脂により形成される。上記フレームは、上記リードスクリューを支持するフランジと、該フレーム内に一体的に形成されたギア収容部であって、内部に上記ギアケースを固定的に収容し、上記ギアケースの外周を覆うギア収容部を有する。上記ギアケースの外周面は上記ギア収容部の内周面に密着する。
【0008】
このように、ギアケースを樹脂により形成することにより、ギアケースを金属粉末射出成形材料により形成する場合に比べて、安価な構成とすることができるとともに、ギアケースの寸法精度を高めることができる。したがって、駆動装置の製造コストを低減することができ、組み立てられた駆動装置の性能も向上する。また、このようにギアケースを樹脂により形成した場合においても、ギアケースを覆うギア収容部が金属粉末射出成形材料により構成されているため、駆動装置全体の強度を確保することができる。
【0009】
上記モータは、上記フレームの上記ギア収容部の端部に固定されることが好ましい。従来のように金属粉末射出成形材料で形成したギアケースを用いる場合には、ギアケースとフレームとの間及びギアケースとモータとの間の2箇所を溶接や接着材により結合する必要があるが、ギアケースはフレームのギア収容部の内部に収容されているため、ギアケースとフレームとの間を溶接や接着材により結合する必要がなくなる。これにより、結合箇所が1箇所となるので、駆動装置の組立工数を少なくすることができる。また、相対的に強度が低くなる結合箇所が2箇所から1箇所に減るため、駆動装置全体の部品保持強度を高くすることができる。さらに、モータは、金属粉末射出成形材料からなるフレームのギア収容部の端部に固定されているため、モータで発生した熱がフレームを通って効果的に外部に放出される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ギアケース及び歯車機構を樹脂により形成することにより、これらの部材を金属粉末射出成形材料により形成する場合に比べて、安価な構成とすることができるとともに、部材の寸法精度を高めることができる。したがって、駆動装置の製造コストを低減することができ、組み立てられた駆動装置の性能も向上する。また、このようにギアケース及び歯車機構を樹脂により形成した場合においても、ギアケースを覆うギア収容部が金属粉末射出成形材料により構成されているため、駆動装置全体の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態における駆動装置を駆動対象物とともに示す正面図である。
図2図2は、図1の駆動装置の分解斜視図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る駆動装置の実施形態について図1から図3を参照して詳細に説明する。なお、図1から図3において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図3においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態における駆動装置1を駆動対象物としてのカメラユニット2とともに示す正面図である。例えば、駆動装置1は、スマートフォン本体3の内部に設けられるものであり、撮像レンズ及び撮像素子を含むカメラユニット2をZ方向に移動させるものである。図1は、カメラユニット2が使用されていない状態を示しており、この状態ではカメラユニット2がスマートフォン本体3の内部に収容されている。カメラを使用する際には、駆動装置1によりカメラユニット2を上方に移動して、カメラユニット2をスマートフォン本体3から外部に突出させる。なお、本実施形態では、便宜的に、図1における+Z方向を「上」又は「上方」といい、-Z方向を「下」又は「下方」ということとする。
【0014】
図2は駆動装置1を示す分解斜視図、図3図2のA-A線断面図である。図3においては、一部の部材のみが断面で示されている。図1から図3に示すように、駆動装置1は、MIM成形材料からなるフレーム10と、フレーム10に取り付けられたステッピングモータ20とを含んでいる。フレーム10は、+Z方向側に設けられた上側フランジ11と、-Z方向側に設けられた下側フランジ12と、下側フランジ12の-Z方向側に設けられたギア収容部13とを有している。ステッピングモータ20は、フレーム10のギア収容部13の-Z方向側の端部13Aに例えば溶接により固定される。なお、本明細書において「MIM成形材料」は、金属粉末とバインダーを混合し、射出成形した後、焼結することにより得られる材料を意味する。
【0015】
また、駆動装置1は、フレーム10の下側フランジ12と上側フランジ11との間でZ方向(軸方向)に延びるリードスクリュー30と、フレーム10の下側フランジ12と上側フランジ11との間でZ方向に延びるガイドシャフト32と、リードスクリュー30に係合しつつガイドシャフト32上をZ方向に沿って摺動可能な可動フランジ部40とを備えている。可動フランジ部40は、リードスクリュー30に螺合するナット部42と、ガイドシャフト32にガイドされつつガイドシャフト32上を摺動可能な摺動部44と、カメラユニット2が取り付けられる取付部46とを有している。可動フランジ部40の取付部46に取り付けられたカメラユニット2は、可動フランジ部40とともにZ方向に移動するようになっている。
【0016】
図2に示すように、フレーム10のギア収容部13の内部には、円筒状の空間Sが形成されており、-Z方向側の端部が開放されている。このギア収容部13の内部には、樹脂から形成される円筒状のギアケース50が収容されている。このように、フレーム10のギア収容部13は、内部に樹脂製のギアケース50を収容しつつ、その外周を覆うものである。
【0017】
ギアケース50の内周面には内歯車51が形成されており、ギアケース50の内部には、前段ギアユニット55A及び後段ギアユニット55Bからなるギアアセンブリ52が収容されている。前段ギアユニット55A及び後段ギアユニット55Bは、それぞれ太陽歯車、遊星歯車、及び遊星キャリアを含んでいる。前段ギアユニット55Aに含まれる太陽歯車、遊星歯車、及び遊星キャリアは、ギアケース50と同様に樹脂から構成されている。後段ギアユニット55Bに含まれる太陽歯車、遊星歯車、及び遊星キャリアは、MIM成形材料で構成されている。後段ギアユニット55Bは、前段ギアユニット55Aに比べて減速比が大きく、より大きな荷重がかかるが、このような後段ギアユニット55BをMIM成形材料で構成することで、後段ギアユニット55Bに含まれる歯車の摩耗を低減することができる。ギアケース50の-Z方向型の端部には、ステッピングモータ20のモータシャフト(図示せず)が挿通される貫通孔54Aが形成されたフランジ54が取り付けられている。
【0018】
前段ギアユニット55Aの太陽歯車には、ステッピングモータ20のモータシャフトに連結される入力軸56が形成されており、後段ギアユニット55Bのキャリアには、リードスクリュー30の下端部に連結される出力軸58が形成されている。後段ギアユニット55Bの出力軸58には、周方向に沿って伸びる溝58Aが形成されており、この溝58Aにはワッシャ60が嵌め込まれている。このようなギアケース50の内歯車51及びギアアセンブリ52により、ステッピングモータ20のモータシャフトの回転を減速してリードスクリュー30に伝達する遊星歯車機構53が構成される。
【0019】
リードスクリュー30の上端部は、ベアリング70を介してフレーム10の上側フランジ11に固定されており、リードスクリュー30は、ベアリング70によりフレーム10に対して回転可能に構成されている。なお、ベアリング70は固定プレート72によって軸方向の位置が固定されている。
【0020】
このような構成において、ステッピングモータ20を駆動すると、ステッピングモータ20のモータシャフトの回転が遊星歯車機構53を介してリードスクリュー30に伝達され、リードスクリュー30が回転するようになっている。リードスクリュー30が回転すると、リードスクリュー30に螺合するナット部42を介して可動フランジ部40及びこれに取り付けられたカメラユニット2が上下動するようになっている。
【0021】
このように、本実施形態では、ギアケース50及びその内部のギアアセンブリ52の一部(前段ギアユニット55Aの太陽歯車、遊星歯車、及び遊星キャリア)を樹脂により形成している。樹脂による成形はMIMによる成形よりも安価であるため、このようにギアケース50及びギアアセンブリ52の一部を樹脂により形成することで、すべてをMIM成形材料により形成する場合に比べて、安価な構成とすることができ、駆動装置1の製造コストを低減することができる。また、樹脂による成形品はMIMによる成形品よりも寸法精度が良いため、ギアケース50及びギアアセンブリ52の一部を樹脂により形成することで、すべてをMIM成形材料により形成する場合に比べて、部品の寸法精度を高めることができ、これらの部品を用いて組み立てられた駆動装置1の性能も向上する。一方、ギアケース50を樹脂により形成した場合には、その強度が問題となるが、ギアケース50を覆うフレーム10のギア収容部13がMIM成形材料により構成されているため、駆動装置1全体の強度は維持される。
【0022】
従来のようにMIM成形材料で形成したギアケースを用いた場合には、ギアケースとフレームとの間及びギアケースとモータとの間の2箇所を溶接又は接着材により結合する必要がある。これに対して、本実施形態では、ギアケース50はフレーム10のギア収容部13の内部に収容されているため、ギアケース50とフレーム10との間を溶接や接着材により結合する必要がなくなる。これにより、結合箇所が1箇所となるので、駆動装置1の組立工数を少なくすることができる。また、相対的に強度の低くなる結合箇所が2箇所から1箇所に減るため、駆動装置1全体の部品保持強度を高くすることができる。さらに、ステッピングモータ20は、MIM成形材料からなるフレーム10のギア収容部13の端部13Aに固定されるため、ステッピングモータ20で発生した熱はフレーム10を通って効果的に外部に放出される。
【0023】
上述した実施形態では、リードスクリュー30を回転させるためにステッピングモータ20を用いた例を説明したが、リードスクリュー30を回転させるモータはステッピングモータに限られるものではない。ただし、カメラユニット2の移動量を正確に制御するためには、リードスクリュー30を回転させるモータとしてステッピングモータを用いることが好ましい。
【0024】
また、上述した実施形態では、ステッピングモータ20の出力軸の回転を減速する歯車機構として遊星歯車機構53を用いた例を説明したが、ステッピングモータ20の出力軸の回転を減速する歯車機構としては任意の歯車機構を用いることができる。
【0025】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 駆動装置
2 カメラユニット
3 スマートフォン本体
10 フレーム
11 上側フランジ
12 下側フランジ
13 ギア収容部
13A 端部
20 ステッピングモータ
30 リードスクリュー
32 ガイドシャフト
40 可動フランジ部
42 ナット部
44 摺動部
46 取付部
50 ギアケース
51 内歯車
52 ギアアセンブリ
53 遊星歯車機構
54 フランジ
55A 前段ギアユニット
55B 後段ギアユニット
56 入力軸
58 出力軸
60 ワッシャ
70 ベアリング
72 固定プレート
図1
図2
図3