(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240311BHJP
B60K 35/231 20240101ALI20240311BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240311BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/231
B60R11/02 C
G02B26/10 C
(21)【出願番号】P 2019015117
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】河村 健
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】安藤 達哉
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/117012(WO,A1)
【文献】特開2019-8100(JP,A)
【文献】特開2018-146761(JP,A)
【文献】特開2012-88357(JP,A)
【文献】特開2009-3324(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172678(JP,U)
【文献】特開2016-30461(JP,A)
【文献】特開2016-133700(JP,A)
【文献】特開2013-180713(JP,A)
【文献】特開2017-194548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対して前記ユーザが知覚する奥行が異なる複数の虚像を投影するヘッドアップディスプレイ装置であって、
第1表示光を出射する第1表示光出射部と、前記第1表示光を反射して反射光を出射する凹面鏡と、を有し、前記反射光が虚像表示部に投影されることにより前記ユーザに第1虚像を知覚させる第1投影装置と、
ヘッドアップディスプレイ装置のクリアカバーであり、前記反射光を透過させるとともに前記第1表示光と異なる第2表示光を生成する第2表示光生成部を有し、生成した前記第2表示光が前記虚像表示部に投影されることにより
、前記ユーザに
前記第1虚像より大きい画角を有する第2虚像を知覚させる
とともに、前記第1投影装置が前記凹面鏡を駆動して前記第1虚像の表示位置を調整した場合に、前記第1虚像の表示位置に応じて前記第2虚像の表示位置を調整する第2投影装置と、
前記凹面鏡の角度を検出し、検出した前記凹面鏡の角度に応じて前記第2表示光の発光タイミングを調整することにより、前記第2投影装置が投影する前記第2虚像の方向を調整する制御部
と、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第2表示光生成部は、自発光素材を含み、前記自発光素材が発光することにより前記第2表示光を生成する
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第2投影装置は、予め設定された波長の励起光を前記第2表示光生成部に投影する励起光出射部をさらに有し、
前記第2表示光生成部は、前記励起光を受けることにより発光する
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記励起光出射部は、紫外光レーザを発光する紫外光レーザ発光部と、前記紫外光レーザを走査することにより前記第2表示光生成部に前記紫外光レーザを投影する走査部とを有し、
前記第1投影装置が前記凹面鏡を駆動して前記第1虚像の表示位置を調整した場合には、前記紫外光レーザ発光部の発光タイミングを調整することにより前記第2虚像の表示位置を調整する、
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記第2投影装置は、前記反射光が前記虚像表示部に投影される際の入射方向とは異なる入射方向から前記励起光を前記第2表示光生成部に投影する
請求項3又は4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第2投影装置は、前記自発光素材が複数の層に配置され、層ごとに異なる周波数の励起光を受けることにより前記第2表示光を発する、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動体において、ウィンドシールドにユーザ向けの情報を表示するヘッドアップディスプレイ装置が普及しつつある。ヘッドアップディスプレイ装置は透明基材により構成されるコンバイナか、あるいはウィンドシールドに対して所定の情報を投影することにより、運転者等のユーザの視覚に虚像を認識させる。また、ヘッドアップディスプレイ装置の利便性を向上させるために、ユーザの視点からの距離が異なる複数の虚像を表示する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、表示光を発生させる描画デバイスの発光面の一部にレンズを配置し、このレンズを通過する虚像と、このレンズを通過しない虚像とを、ユーザの視点から異なる距離にあるように認識させる。
【0004】
また特許文献2に記載の表示装置は、投影された表示光を反射する反射部材に、自発光型の表示パネルを設置する。そして、表示光を反射した場合の虚像と、自発光型の表示パネルにより表示される虚像とを、ユーザの視点から異なる距離にあるように認識させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-086915号公報
【文献】特開2006-171465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、1の描画デバイスが生成する画面を2つに分けることになるため、それぞれの虚像のサイズに制限がある。またそれぞれの虚像のサイズの制限をなくすために2つの描画デバイスを配置すると、装置サイズが大きくなる虞がある。特許文献2に記載の技術は、自発光型の表示パネルが生成する画像を虚像として表示すると、表示パネルの実サイズを虚像として表示することになり拡張性に乏しい。また自発光型の表示パネルの画像を拡大表示するためには虚像投影面にコンバイナが必要になる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、設計自由度が高く拡張性に優れたヘッドアップディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるヘッドアップディスプレイ装置は、ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対してユーザが知覚する奥行が異なる複数の虚像を投影する。ヘッドアップディスプレイ装置は、第1投影装置と第2投影装置とを有している。第1投影装置は、第1表示光を出射する第1表示光出射部と、第1表示光を反射して反射光を出射する凹面鏡と、を有し、反射光が虚像表示部に投影されることによりユーザに第1虚像を知覚させる。第2投影装置は、反射光を透過するとともに第1表示光と異なる第2表示光を生成する第2表示光生成部を有し、生成した第2表示光が虚像表示部に投影されることによりユーザに第2虚像を知覚させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設計自由度が高く拡張性に優れたヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示した模式図である。
【
図2】実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置における第2表示光生成部の断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる励起光出射部の構成を示した模式図である。
【
図4】ヘッドアップディスプレイ装置が投影した虚像の例を示す図である。
【
図5】実施の形態2にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置は、ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対してユーザが知覚する奥行が異なる複数の虚像を投影する装置である。より具体的には、本実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置は、自動車に搭載されるものであって、自動車のウィンドシールドまたはコンバイナを虚像表示部として、ウィンドシールドまたはコンバイナに虚像を投影することにより、ユーザである運転者に対して情報を表示する装置である。
【0013】
図1を参照しながら実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示した模式図である。図は、自動車1、自動車1のユーザUおよびヘッドアップディスプレイ装置10をそれぞれ模式的に示したものである。なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、
図1には、右手系の直交座標系が付されている。図において、X軸は自動車1の前後方向と一致しており、X軸プラス方向は自動車1の前から後に向かう方向と一致している。Y軸は自動車1の左右方向と一致しており、Y軸プラス方向は自動車1の左から右に向かう方向と一致している。Z軸は自動車1の上下方向と一致しており、Z軸プラス方向は自動車1の下から上に向かう方向と一致している。また、
図2以降において、直交座標系が付されている場合、
図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
【0014】
図に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置10は、自動車1のダッシュボード内に格納されており、ウィンドシールドWSに第1虚像V101および第2虚像V102を投影する。ヘッドアップディスプレイ装置は、主な構成として第1投影装置101および第2投影装置102を有している。
【0015】
第1投影装置101は、第1虚像V101をウィンドシールドWSに投影するための装置である。第1投影装置101は、主な構成として第1表示光出射部110、反射鏡120および凹面鏡130を有している。
【0016】
第1表示光出射部110は、第1光源111および第1画像表示部112を有している。第1表示光出射部110は、第1光源111が発する光を第1画像表示部112に透過させることにより第1表示光L10を生成し、生成した第1表示光L10を出射する。第1表示光L10は、第1虚像V101の元となる表示光であって、第1虚像V101としてユーザUに表示する情報が含まれる。第1光源111は例えばLED(Light Emitting Diode)やランプなどにより構成される。また、第1画像表示部112は、透過型の液晶パネル等により構成される。第1表示光出射部110は生成した第1表示光L10を反射鏡120に投影する。反射鏡120は第1表示光出射部110から受けた第1表示光L10を反射して凹面鏡130に投影する。
【0017】
凹面鏡130は、反射鏡120を介して受けた第1表示光L10を凹面形状の鏡が受けて反射することにより反射光L11を生成する。凹面鏡130は反射光L11をウィンドシールドWSに投影するように構成されている。また凹面鏡130は、凹面鏡130が投影する反射光L11がユーザUから見て歪みのない画像になるように曲面が形成されている。また凹面鏡130により第1表示光L10は拡大投影される。したがって、ユーザUが知覚する第1虚像V101は、第1画像表示部112が表示する画像よりも大きくなっている。また凹面鏡130が投影する反射光L11は、後述する第2表示光生成部140を透過した後にウィンドシールドWSに投影される。このような構成により、第1投影装置101はユーザUに第1虚像V101を知覚させる。
【0018】
また凹面鏡130は、Y軸に平行な軸131を支点として軸131周りに所定の角度回転する駆動部(不図示)を有している。駆動部が凹面鏡130を回転させることにより、凹面鏡130は、反射光L11の方向を変更することができる。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置10は、ユーザUの視点の高さが変化することにより生じる第1虚像V101の表示位置の変化を好適に調整することができる。
【0019】
第2投影装置102は、第2虚像V102をウィンドシールドWSに投影するための装置である。第2投影装置102は、主な構成として第2表示光生成部140および励起光出射部150を有している。
【0020】
第2表示光生成部140は、第1投影装置101が生成する反射光L11を透過するとともに第1表示光L10と異なる第2表示光L21を生成する。第2表示光生成部140が生成した第2表示光L21はウィンドシールドWSに投影されて第2虚像V102をユーザUに知覚させる。
【0021】
第2表示光生成部140は、上面が凹状に湾曲した板状の透明部材を基板として構成されている。基板は、上述の第1投影装置が生成する反射光L11を透過するために、例えばポリカーボネートやアクリル等の透過性の高いプラスチックやガラスが用いられる。第2表示光生成部140は、上面が凹状に湾曲することにより自動車1の外から到来する外光が車室内に反射することを抑制している。また第2表示光生成部140は、ヘッドアップディスプレイ装置10の内部に異物が侵入するのを防止する。なお、第2表示光生成部140はクリアカバーとも称する。
【0022】
図2を参照しながら第2表示光生成部140についてさらに説明する。
図2は実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置における第2表示光生成部の断面図である。第2表示光生成部140は上から、コート層140S、基板140Gおよび自発光層140Lにより構成されている。コート層140Sは光の反射や映り込みを抑制するAR(Anti-Reflection)コートである。またコート層140Sは、傷付き抑制機能を有するものであってもよい。
【0023】
基板140Gは、透明なポリカーボネート素材により形成されている。また、基板140Gは第1投影装置101から投影される反射光L11が通過する際に意図しない屈折を抑えるために、厚さが例えば1ミリメートル程度で構成されている。
【0024】
自発光層140Lは可視光透過率が高いバインダ素材中に自発光素材140Aを含む。自発光素材140Aは、特定の励起光を受けることにより可視光である蛍光を発する素材である。また特定の励起光とは特定の周波数を有する光であって、例えば紫外光である。すなわち本実施の形態における自発光素材140Aは、特定の周波数を有する紫外光を受けると蛍光を発する素材である。なお、自発光素材140Aは、第2表示光生成部140の下層に構成されているとは限らず、中間層や上層に構成されていてもよい。
【0025】
次に、
図3を参照しながら、第2投影装置102が有する励起光出射部150について説明する。
図3は実施の形態1にかかる励起光出射部の構成を示した模式図である。励起光出射部150は、第2表示光生成部140に励起光である紫外レーザ光を投影するレーザプロジェクタ装置である。励起光出射部150は主な構成として、制御部151、レーザ発光部152を有している。制御部151はCPU(Central Processing Unit)やドライバIC(Integrated Circuit)等を含み、レーザ発光部152の各構成を適宜制御する機能を有している。
【0026】
レーザ発光部152は、レーザ光源部153およびレーザ走査部154を有している。レーザ光源部153は、レーザダイオード153LD、ミラー153Mおよびフォトディテクタ153PDを有している。レーザダイオード153LDは、制御部151からの指示により所定のタイミングで紫外レーザ光を生成し、生成した紫外レーザ光をミラー153Mに供給する。ミラー153Mは、レーザダイオード153LDから受けた紫外レーザ光を一部透過して出力するとともに一部反射してフォトディテクタ153PDに供給する。フォトディテクタ153PDは、ミラー153Mから供給された紫外レーザ光の強度を検出し、検出することにより生成した信号を制御部151にフィードバックする。
【0027】
レーザ走査部154は、レーザ光源部153から受け取った紫外レーザ光から励起光L20を生成する。レーザ走査部154は、第1スキャナミラー154Hおよび第2スキャナミラー154Vを有している。第1スキャナミラー154Hは第2虚像V102の水平方向の走査線に沿って紫外レーザ光を所定の角度で往復する。第2スキャナミラー154Vは第2虚像V102の垂直方向の走査線に沿って紫外レーザ光を所定の角度で往復する。レーザ走査部154は、1点から直進して供給される紫外レーザ光に対して2つの直交する走査線に沿って適宜走査することにより、面上の励起光L20を生成する。
【0028】
励起光出射部150はこのような構成により第2虚像V102の元となる励起光を生成して第2表示光生成部140に対して生成した励起光を投影する。また、第2表示光生成部140は、上述のように励起光出射部150から励起光を投影されると、励起光を受けた部分が蛍光を発する。そして第2表示光生成部140が発した蛍光はウィンドシールドWSに投影されて、ユーザUに第2虚像V102として知覚される。
【0029】
図1に戻り説明を続ける。上述のようにして、ヘッドアップディスプレイ装置10は、第1投影装置101が生成した反射光L11と、第2投影装置102が生成した第2表示光L21とをそれぞれウィンドシールドWSに投影する。このとき、図に示すように、第1虚像V101における第1表示光出射部110からウィンドシールドWSまでの光路長は、第2虚像V102における第2表示光生成部140からウィンドシールドWSまでの光路長よりも長い。したがって、ユーザUは、ユーザUの視点から第1虚像V101までの距離が、ユーザUの視点から第2虚像V102までの距離より長いと知覚する。換言すると、ユーザUは、第1虚像V101が第2虚像V102より遠くに位置していると知覚する。すなわちヘッドアップディスプレイ装置10は、ユーザUが知覚する奥行が異なる複数の虚像を投影することができる。
【0030】
また、上述のとおり第1虚像V101は表示位置の調整を行うことができるように構成されている。つまり、反射光L11は、第2表示光生成部140の範囲内を移動できるように構成されている。したがって、第2表示光生成部140を通過する位置において、反射光L11は第2表示光生成部140よりも小さくなるように構成されている。そのため、第1虚像V101の画角は、第2虚像V102の画角より小さい。または、第1虚像V101は、第2虚像V102の表示可能範囲に含まれるということもできる。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置10は、第1虚像V101より画角が大きい第2虚像V102を表示することができるため拡張性に優れたヘッドアップディスプレイ装置を実現している。なお、このような構成において、当然ながら第1虚像V101の画角より第2虚像V102の画角を小さく設定することも可能である。
【0031】
また、励起光出射部150は、凹面鏡130の位置に応じて励起光L20の投影方向を変更することができる。そのため、ヘッドアップディスプレイ装置10は、凹面鏡130を駆動して第1虚像V101の表示位置を調整した場合には、第1虚像V101の表示位置に応じて第2虚像V102の表示位置を調整することができる。この場合、例えば、制御部151は、凹面鏡130の角度を検出し、検出した凹面鏡130の角度に応じてレーザ光源部153の発光タイミングを調整する。レーザ光源部153の発光タイミングを調整することにより、励起光出射部150はレーザ発光部152が投影する画像の方向を調整することができる。
【0032】
なお、図において励起光出射部150は凹面鏡130の近傍であって、凹面鏡130よりも後ろ側(X軸プラス側)に配置されているが、励起光出射部150の位置は第1投影装置が生成する第1表示光L10および反射光L11を妨げない構成であれば、図に示した位置に限られない。すなわち、第2投影装置102の励起光出射部150は、反射光L11が第2表示光生成部140に投影される際の入射方向とは異なる入射方向から励起光を第2表示光生成部140に投影するものであればよい。したがって、第2投影装置102は配置の自由度が高い。すなわち実施の形態1によれば空間設計自由度が高く、体積の増大を抑制したヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0033】
次に、
図4を参照しながらヘッドアップディスプレイ装置10が表示する虚像の1例を説明する。
図4は、ヘッドアップディスプレイ装置が投影した虚像の例を示す図である。図に示す虚像はユーザUが知覚した虚像を示したものである。
【0034】
図に示すように、ユーザUは、第1虚像V101および第2虚像V102を知覚する。図に示す例では、第1虚像V101は、自動車1の走行速度(60km/h)および走行進路の案内表示(右折であることを示す矢印)が表示されている。第1虚像V101にこのような表示がされることにより、ユーザUは運転中の目線の移動や肉眼の焦点距離の変更を小さく抑えながら、適宜運転に必要な情報を得ることができる。
【0035】
一方、第2虚像V102は、左方向から歩行者が近づいていることを示すアイコンと注意を促すメッセージが表示されている。第1虚像V101より近くに知覚される第2虚像V102にこのような表示がされることにより、ヘッドアップディスプレイ装置10は、ユーザUに緊迫感を演出することができる。また第1虚像V101の画角より大きい画角を有する第2虚像V102を利用することにより、通常走行時に表示される情報を妨げることなく、効果的にユーザUへ注意喚起を行うことができる。また第2虚像V102を表示するための第2表示光L21の明るさは、紫外レーザ光の強度を変更することにより変更可能である。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置10は、励起光の強度を変化させることにより第2虚像V102の明るさを調整することができる。
【0036】
以上、実施の形態1について説明したが、実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置10は、上述の構成に限られない。例えば、励起光出射部150の構成要素であるレーザ発光部152は、面発光レーザを発射する構成であってもよい。また、レーザ走査部154は、DLP(Digital Light Processing)であってもよい。
【0037】
また、第2表示光生成部140は、自発光素材140Aが複数の層に配置されていてもよい。その場合、自発光素材は、層ごとに異なる周波数の励起光を受けることにより可視光である蛍光を発するものであってもよい。
【0038】
以上に説明したとおり、ヘッドアップディスプレイ装置は、クリアカバーである第2表示光生成部に第2虚像の元になる画像を表示することにより、体積の増大を抑制しつつ、異なる奥行を有する複数の虚像を投影する。したがって実施の形態1によれば、設計自由度が高く拡張性に優れたヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0039】
<実施の形態2>
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかるヘッドアップディスプレイ装置は、第2虚像を生成するための構成が実施の形態1と異なる。以下に、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0040】
図5は、実施の形態2にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示した模式図である。図に示すヘッドアップディスプレイ装置20は、第2投影装置102に代えて第2投影装置202を有する。
【0041】
第2投影装置202は、紫外レーザ光を投影するレーザプロジェクタ装置に代えて、透過型の表示パネルおよび表示パネルを駆動するドライバ回路を有している。第2投影装置202は、第2表示光生成部240および第2表示光制御部212を有する。
【0042】
第2表示光生成部240は、可視光透過性の高い板状の部材を基板として、透過型の表示パネル241を含む。透過型の表示パネル241は例えば有機EL(Electro Luminescence)により構成される。すなわち第2表示光生成部240は、可視光である反射光L11を透過するとともに自ら発光する層を含んでいる。なお、表示パネル241は有機ELに代えて透過型の液晶パネルであってもよい。
【0043】
第2表示光制御部212は、第2表示光生成部240に接続し、第2表示光生成部240が有する表示パネル241を制御するドライバICを含む回路である。なお、第2表示光制御部212は第1投影装置が生成する第1表示光L10および反射光L11を妨げなければ任意の位置に配置可能である。
【0044】
以上、実施の形態2にかかるヘッドアップディスプレイ装置20は、クリアカバーである第2表示光生成部に第2虚像の元になる画像を表示することにより、体積の増大を抑制しつつ、異なる奥行を有する複数の虚像を投影する。したがって実施の形態1によれば、設計自由度が高く拡張性に優れたヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば上述のヘッドアップディスプレイ装置は、自動車ではない移動体、例えば航空機や船舶にも適用することができる。また上述のヘッドアップディスプレイ装置は、移動体に限らず、自動車の運転模擬装置、飛行機のフライトシミュレータ、ゲーム機器等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 自動車
10、20 ヘッドアップディスプレイ装置
101 第1投影装置
102 第2投影装置
120 反射鏡
130 凹面鏡
131 軸
140、240 第2表示光生成部
140A 自発光素材
140G 基板
140L 自発光層
140S コート層
150 励起光出射部
151 制御部
152 レーザ発光部
153 レーザ光源部
153LD レーザダイオード
153M ミラー
153PD フォトディテクタ
154 レーザ走査部
212 第2表示光制御部
241 表示パネル
L11 反射光
L20 励起光
U ユーザ
V101 第1虚像
V102 第2虚像
WS ウィンドシールド