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  • 特許-錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019058841
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020156726
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 保次
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135157(WO,A1)
【文献】特開昭49-133516(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003579(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を供給部から受け取り、搬送する第1の搬送ベルトと、
前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の一方面にシェラックを塗布する第1の塗布部と、
前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の、前記第1の塗布部により塗布された前記シェラックに熱を与える第1の乾燥部と、
前記第1の乾燥部よりも前記錠剤の搬送方向下流側において、前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の一方面にインクジェットヘッドでインクを塗布する第1の印刷部と、
前記第1の印刷部よりも前記搬送方向下流側において、前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与える第2の乾燥部と、
前記第1の塗布部と前記第1の印刷部との間に設けられ、前記錠剤を撮像する第1の撮像部と、
前記第1の印刷部により印刷された前記錠剤を反転させた状態で受け取る第2の搬送ベルトと、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の他方面に前記シェラックを塗布する第2の塗布部と、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の、前記第2の塗布部により塗布された前記シェラックに熱を与える第3の乾燥部と、
前記第3の乾燥部よりも前記搬送方向下流側において、前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の他方面にインクジェットヘッドでインクを塗布する第2の印刷部と、
前記第2の印刷部よりも前記搬送方向下流側において、前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与える第4の乾燥部と、
前記第2の塗布部と前記第2の印刷部との間に設けられ、前記錠剤を撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部で取得した画像に基づき前記錠剤の位置情報を生成し、前記位置情報に基づいて前記第1の印刷部による印刷を実行させ、前記第2の撮像部で取得した画像に基づき前記錠剤の位置情報を生成し、前記位置情報に基づいて前記第2の印刷部による印刷を実行させる制御部と
を備える錠剤印刷装置。
【請求項2】
前記インクは、前記シェラックを含んでいる請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記錠剤において前記シェラックが塗布される塗布面積及び塗布形状のどちらか一方又は両方を調整するマスクを備える請求項1または2に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
錠剤を第1の搬送ベルトにて搬送し、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の一方面シェラックを塗布し、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤上の、前記シェラックに熱を与え、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記一方面を撮像し、
前記一方面の撮像によって取得した画像に基づいて生成した前記錠剤の位置情報に基づき、前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記一方面に第1のインクジェットヘッドでインクを塗布し、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与え、
前記第1の搬送ベルトにて前記第1のインクジェットヘッドで前記インクが塗布された前記錠剤を、反転した状態で第2の搬送ベルトにて受け取り、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の他方面に前記シェラックを塗布し、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の、前記シェラックに熱を与え、
前記第2の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記他方面を撮像し、
前記他方面の撮像によって取得した画像に基づいて生成した前記錠剤の位置情報に基づき、前記第2の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記他方面に第2のインクジェットヘッドでインクを塗布し、
前記第2の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与える錠剤印刷方法。
【請求項5】
記インクは前記シェラックを含んでいる請求項4に記載の錠剤印刷方法。
【請求項6】
前記錠剤に前記シェラックを塗布する際、前記一方面において前記シェラックが塗布される塗布面積及び塗布形状のどちらか一方又は両方を調整する請求項4または5に記載の錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤に文字やマークなどの識別情報(情報の一例)を印刷するため、インクジェットヘッド(印刷部の一例)を用いて印刷を行う技術が知られている。この技術を用いる錠剤印刷装置は、コンベアなどの搬送装置により錠剤を搬送し、搬送装置の上方に配置されたインクジェットヘッドの各ノズルから、インクジェットヘッド下方を通過する錠剤に向けてインクを吐出し、錠剤に識別情報を印刷する。
【0003】
このような印刷工程において、インクが錠剤の被印刷面に塗布されるが、錠剤の素材によっては、錠剤(特に糖衣錠)に対するインクの定着性が低いことがあり、錠剤におけるインクが塗布された箇所、すなわち、錠剤における識別情報が印刷された箇所が、他の錠剤や搬送ベルトなどの装置内の部材にぶつかるなどして擦れると、錠剤に印刷された識別情報(文字やマークなど)がにじんで不鮮明になり、印刷品質が低下することがある。これにより、印刷不良の錠剤が発生するため、生産性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-081050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、生産性を上げることができる錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷装置は、
錠剤を供給部から受け取り、搬送する第1の搬送ベルトと、
前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の一方面にシェラックを塗布する第1の塗布部と、
前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の、前記第1の塗布部により塗布された前記シェラックに熱を与える第1の乾燥部と、
前記第1の乾燥部よりも前記錠剤の搬送方向下流側において、前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の一方面にインクジェットヘッドでインクを塗布する第1の印刷部と、
前記第1の印刷部よりも前記搬送方向下流側において、前記第1の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与える第2の乾燥部と、
前記第1の塗布部と前記第1の印刷部との間に設けられ、前記錠剤を撮像する第1の撮像部と、
前記第1の印刷部により印刷された前記錠剤を反転させた状態で受け取る第2の搬送ベルトと、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の他方面に前記シェラックを塗布する第2の塗布部と、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の、前記第2の塗布部により塗布された前記シェラックに熱を与える第3の乾燥部と、
前記第3の乾燥部よりも前記搬送方向下流側において、前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の他方面にインクジェットヘッドでインクを塗布する第2の印刷部と、
前記第2の印刷部よりも前記搬送方向下流側において、前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与える第4の乾燥部と、
前記第2の塗布部と前記第2の印刷部との間に設けられ、前記錠剤を撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部で取得した画像に基づき前記錠剤の位置情報を生成し、前記位置情報に基づいて前記第1の印刷部による印刷を実行させ、前記第2の撮像部で取得した画像に基づき前記錠剤の位置情報を生成し、前記位置情報に基づいて前記第2の印刷部による印刷を実行させる制御部と
を備える。
【0007】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷方法は、
錠剤を第1の搬送ベルトにて搬送し、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の一方面シェラックを塗布し、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤上の、前記シェラックに熱を与え、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記一方面を撮像し、
前記一方面の撮像によって取得した画像に基づいて生成した前記錠剤の位置情報に基づき、前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記一方面に第1のインクジェットヘッドでインクを塗布し、
前記第1の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与え、
前記第1の搬送ベルトにて前記第1のインクジェットヘッドで前記インクが塗布された前記錠剤を、反転した状態で第2の搬送ベルトにて受け取り、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤の他方面に前記シェラックを塗布し、
前記第2の搬送ベルトにより搬送される前記錠剤上の、前記シェラックに熱を与え、
前記第2の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記他方面を撮像し、
前記他方面の撮像によって取得した画像に基づいて生成した前記錠剤の位置情報に基づき、前記第2の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤の前記他方面に第2のインクジェットヘッドでインクを塗布し、
前記第2の搬送ベルトにて搬送される前記錠剤上の前記インクに熱を与える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、生産性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置の一部を示す平面図である。
図3】第1の実施形態に係る実験結果を説明するための図である。
図4】第2の実施形態に係る塗布部及び第1の乾燥部を示す図である。
図5】第3の実施形態に係る塗布部及びマスクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図3を参照して説明する。
【0011】
(基本構成)
図1に示すように、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置50とを備えている。錠剤印刷装置1の各構成要素である供給装置10、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40はこの順で配置され、錠剤Tが搬送される搬送路Pが形成されており、搬送路Pに沿って錠剤Tの供給、印刷、回収の一連の処理が行われる。搬送路Pの上流は供給装置10側であり、下流は回収装置40側である。
【0012】
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受渡フィーダ13を有している。この供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されており、第1の印刷装置20の一端側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列フィーダ12に錠剤Tを順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを一列に整列し、受渡フィーダ13に向けて搬送する。受渡フィーダ13は、整列フィーダ12上に一列に並ぶ各錠剤Tを錠剤Tの上側から順次吸引して保持し、保持した各錠剤Tを第1の印刷装置20まで一列で搬送して第1の印刷装置20に渡す。供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。整列フィーダ12や受渡フィーダ13としては、例えば、ベルト搬送機構が用いられる。
【0013】
第1の印刷装置20は、図1及び図2に示すように、搬送部21と、検出部22と、塗布部23と、第1の乾燥部(インク定着剤用の乾燥部)24と、第1の撮像部(印刷用の撮像部)25と、印刷部26と、第2の撮像部(検査用の撮像部)27と、第2の乾燥部(インク用の乾燥部)28とを備えている。
【0014】
搬送部21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。搬送部21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
【0015】
搬送ベルト21aの表面には、円形状の吸引孔21g(図2参照)が複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、一本の搬送路Pを形成するように搬送方向A1に沿って一列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、その吸引チャンバ21f内から空気が排出されることにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21f内の空気は、排気管や排気ブロアなどを有する排気部(図示せず)により排出される。なお、吸引路は、例えば、吸引チャンバ21fの外周面(搬送ベルト21aと対向する面)に形成されたスリット状の貫通孔、あるいは、吸引チャンバ21fの外周面(搬送ベルト21aと対向する面)に溝状に形成された凹部とその凹部の底面に形成された複数の貫通孔により形成されている。
【0016】
検出部22は、供給装置10によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この検出部22は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(錠剤Tの搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部22としては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサが用いられる。検出部22は制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
【0017】
塗布部23は、検出部22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この塗布部23は、搬送ベルト21a上の錠剤Tの表面、すなわち被印刷面に対してインク定着剤を吐出して塗布する。このインク定着剤は、インクを定着させる定着成分(例えば、粘着成分)を含んでいる。塗布部23としては、例えば、スプレーノズル、ディスペンサ、インクジェットヘッドが用いられる。塗布部23は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0018】
ここで、インク定着剤としては、例えば、糊料やガムベース、増粘安定剤に分類される物質が用いられる。具体的には、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプンなどがある。また、オクラ抽出物、海藻セルロース、褐藻抽出物、グルテン、グルテン分解物、コンニャクイモ抽出物、サツマイモセルロース、ナタデココ、マンナン、レンネツトカゼインなどがある。また、アウレオバシジウム培養液、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸、ウェランガム、エレミ樹脂、オゾケライト、カシアガム、ガティガム、カードラン、カラギナン(加工ユーケマ藻類、精製カラギナン、ユーケマ藻末)、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、グアヤク樹脂、グッタハンカン、グッタペルカ、グルコサミン、酵母細胞壁、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、シェラック(白シェラック、精製シェラック)、ジェランガム、ジェルトン、ソルバ、ソルビンハ、タマリンドシードガム、タラガム、チクル、チルテ、ツヌー、低分子ゴム、デキストラン、トラガントガム、トロロアオイ、納豆菌ガム、ニガーグッタ、パラフィンワックス、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、粉末モミガラ、ペクチン、ベネズエラチクル、マクロホモプシスガム、マスチック、マッサランドババラタ、ミルラ、モモ樹脂、ラムザンガム、レッチュデバカ、レバン、ロシディンハ、ロシンなどがある。
【0019】
第1の乾燥部24は、塗布部23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この第1の乾燥部24は、搬送ベルト21a上の錠剤Tに塗布されたインク定着剤を乾燥させる。第1の乾燥部24としては、空気などの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部が用いられる。第1の乾燥部24は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0020】
第1の撮像部25は、第1の乾燥部24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この第1の撮像部25は、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像部25の直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(錠剤位置検出用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。第1の撮像部25としては、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第1の撮像部25は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0021】
印刷部26は、第1の撮像部25が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この印刷部26は、複数のノズル26a(図2参照)を有するインクジェットヘッドであり、それらのノズル26aから個別にインクを吐出する。印刷部26は、ノズル26aが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷部26としては、圧電素子、発熱素子または磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェットヘッドが用いられる。印刷部26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0022】
第2の撮像部27は、印刷部26が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この第2の撮像部27は、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像部27の直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷状態検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。第2の撮像部27としては、前述の第1の撮像部25と同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第2の撮像部27は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0023】
第2の乾燥部28は、印刷部26が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送部21の下方に設けられている(図1参照)。この第2の乾燥部28は、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。第2の乾燥部28としては、前述の第1の乾燥部24と同様、エアーなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部が用いられる。第2の乾燥部28は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0024】
なお、図1に示すように、前述の第2の乾燥部28の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
【0025】
第2の印刷装置30は、前述の第1の実施形態と同様、搬送部31と、検出部32と、塗布部33と、第1の乾燥部34と、第1の撮像部35と、印刷部36と、第2の撮像部37と、第2の乾燥部38とを備えている。搬送部31は、搬送ベルト31a、駆動プーリ31b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ31c、モータ31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ31fを有している。なお、これらの、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20に対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)である。
【0026】
回収装置40は、不良品回収部41と、良品回収部42とを備えている。この回収装置40は、不良品回収部41により不良品(例えば、印刷不良や欠け)の錠剤Tを回収し、良品回収部42により良品の錠剤Tを回収する。
【0027】
不良品回収部41は、噴射ノズル41aと、収容部41bとを有している。噴射ノズル41aは、吸引チャンバ31f内に設けられており、搬送ベルト31aにより搬送される不良品の錠剤Tに向けて気体(例えば、空気)を噴射し、搬送ベルト31aから不良品の錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2の吸引孔21gと同様)を通過して不良品の錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部41bは、搬送ベルト31aから落下した不良品の錠剤Tを受け取って収容する。
【0028】
良品回収部42は、気体吹出部42aと、収容部42bとを有している。気体吹出部42aは、搬送部31内であってその搬送部31の端部、すなわち搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部に設けられている。気体吹出部42aは、例えば、印刷処理中、常に搬送ベルト31aに向けて気体(例えば、空気)を吹き出し、搬送ベルト31aから良品の錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部42aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2の吸引孔21gと同様)を通過して良品の錠剤Tに当たる。気体吹出部42aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローが用いられる。気体吹出部42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部42bは、搬送ベルト31aから落下した良品の錠剤Tを受け取って収容する。
【0029】
制御装置50は、画像処理部51と、印刷処理部52と、検査処理部53と、記憶部54とを内蔵している。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。各処理部51~53としては、例えばCPUが用いられ、記憶部54としては、例えばRAMやROMが用いられる。このような制御装置50は、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出部22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像部25、27、35、37から送信される画像などを受信する。
【0030】
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理及び検査処理(一連の印刷工程)について説明する。
【0031】
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に記憶される。そして、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により一列に並べられて移動する。この一列で移動する錠剤Tは受渡フィーダ13により第1の印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で一列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによる駆動プーリ31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
【0032】
第1の印刷装置20では、錠剤Tが搬送ベルト21a上に吸引保持され、搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出部22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部54に保存されて後処理で用いられる。検出済の錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていく。
【0033】
搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが塗布部23の直下に到達したタイミングで、塗布部23によりインク定着剤の塗布が実行される。塗布部23から搬送ベルト21a上の錠剤Tの被印刷面に向けてインク定着剤が吐出され(例えば、噴射又は滴下され)、錠剤Tの被印刷面に塗布される。インク定着剤が塗布された錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥動作中の第1の乾燥部24の下方を通過する。錠剤Tの被印刷面に塗布されたインク定着剤は、錠剤Tが第1の乾燥部24の下方を通過する間に第1の乾燥部24によって乾燥し、インク定着剤が乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていく。
【0034】
次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが第1の撮像部25の直下に到達したタイミングで、第1の撮像部25により錠剤Tの上面が撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第1の撮像部25から送信された画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、図2におけるX方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。この錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(印刷に使用するノズル26aやインクの吐出タイミングなど)が印刷処理部52により設定され、記憶部54に保存される。
【0035】
次いで、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷部26の直下に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷部26により印刷が実行される。印刷部26の各ノズル26aからインクが適宜吐出され、インク定着剤が塗布された錠剤Tの被印刷面に付着し、その被印刷面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。
【0036】
識別情報が印刷された錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが第2の撮像部27の直下に到達したタイミングで、第2の撮像部27により錠剤Tの上面が撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像部27から送信された画像に基づき、錠剤Tの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が記憶部54に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に印刷されているか否かが判断される。なお、印刷良否の判断処理時には、錠剤Tに欠けなどの不良があるか否かも判断される。
【0037】
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥動作中の第2の乾燥部28の上方を通過する。このとき、錠剤Tに塗布されたインクは、錠剤Tが第2の乾燥部28の上方を通過する間に第2の乾燥部28によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aの下面に保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に渡される。
【0038】
第2の印刷装置30でも、錠剤Tが搬送ベルト31a上に吸引保持され、前述と同じように印刷処理及び検査処理が行われる。検査後の錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、乾燥動作中の第2の乾燥部38の上方を通過する。そして、インクが乾燥した錠剤Tは不良品回収部41に到達する。この位置で不良品の錠剤Tは、噴射ノズル41aによる気体の噴射により搬送ベルト31aの下面から落下し、収容部41bによって回収される。一方、良品の錠剤Tは不良品回収部41を通過し、良品回収部42に到達する。この位置で良品の錠剤Tは、吸引作用が錠剤Tに働かなくなるとともに、気体吹出部42aによる気体の吹出しによって搬送ベルト31aの下面から落下し、収容部42bによって回収される。
【0039】
このような一連の印刷工程によれば、印刷部26(又は36)によりインクが錠剤Tの被印刷面に塗布される前に、塗布部23(又は33)によって錠剤Tの被印刷面にインク定着剤が塗布される。このとき、錠剤Tにおいて少なくとも印刷対象となる領域(被印刷領域)を含む領域にインク定着剤が塗布される。そして、インク定着剤が塗布された錠剤Tの被印刷面にインクが印刷部26(又は36)により塗布され、インクによる識別情報が錠剤Tの被印刷面に印刷される。この識別情報が印刷された箇所が擦れても、被印刷面に塗布されたインクは錠剤Tに定着しており、識別情報がにじんで不鮮明になったり、識別情報の一部が消失してしまったりすることが抑えられるので、印刷品質の低下を抑制することが可能となる。これにより、印刷不良の錠剤Tの発生を抑制し、生産性を上げることができる。
【0040】
なお、錠剤Tの被印刷面を粗面化し、インクの接触角を小さくすることにより錠剤Tに対するインクの定着性を高めることも可能であるが、錠剤Tが損傷し、また、印刷が不鮮明になる。錠剤Tが損傷するとは、薬効成分が多少でも失われるため、薬として問題である。例えば、錠剤Tが損傷によって削られると、患者がその錠剤Tを服用しても、規定量の薬を服用できないことになる。一方、本実施形態によれば、錠剤Tの被印刷面にインク定着剤を塗布することで、錠剤Tに対するインクの定着性を高めることができる。したがって、粗面化による錠剤Tの損傷がなく、インク定着性を高めることができる。つまり薬効成分が失われることを防止することができ、また、印刷が不鮮明になることを防止することができる。
【0041】
本実施形態において、錠剤Tに対するインクの定着性を高めるためには、粘着性質のある成分をインクに混ぜることが有効である。ところが、粘着性質のある成分をインクに混ぜることにより、インクの粘度が高くなってしまう。インクジェットヘッドにおいて、通常、吐出が可能な粘度の範囲が予め決まっており(以下「適正粘度範囲」という。)、錠剤Tにインクを定着させるために十分なだけの粘着性質のある成分をインクに混ぜると、吐出すべきインクがこの適正粘度範囲を超えることになる。このため、粘着性質のある成分を含むインクは、印刷部26、36であるインクジェットヘッドから吐出できない場合がある。また、インクジェットヘッドの適正粘度範囲内となるようにインクに混ぜる粘着成分の量を調整するようにすると、錠剤Tに対するインクの定着性を十分に高めることが難しい。一方、本実施形態によれば、印刷部26、36と別に、インク定着剤を塗布する塗布部23、33を設けることによって、錠剤Tに対するインクの定着性を高めるために粘着性質のある成分をインク定着剤として用いる。これに加えて、適正粘度範囲内となるように粘着性質のある成分の量を調整したインクによって印刷を行う。これにより、錠剤Tの被印刷面にインクの定着性を高めるのに十分な量の粘着性質のある成分を確実に塗布することができる。インク定着剤の粘度は、印刷に用いられるインクの粘度よりも高い。
【0042】
また、インク定着剤としては、インクに含まれる成分と共通の成分を含むインク定着剤を用いることが望ましい。インク定着剤の成分として、インクに含まれる成分と同じ成分を用いることで、錠剤Tに付着する物質(溶媒などの一時的に付着する物質も含む)の種類を抑えることができる。また、インクとインク定着剤が共通の成分を有すると、耐擦過性が向上するため、インクとインク定着剤が共通の成分を有していない場合に比べ、錠剤Tの被印刷面に対するインクの定着性を向上させることができる。これに関し、以下本発明の発明者らが本発明に至った実験方法およびその結果について説明する。
【0043】
実験の流れとしては、カルナバロウ、サラシミツロウによって糖衣コーティングされた糖衣錠に各種インクを付着させて耐擦過性を評価し、インク定着性の検証を行った。さらに、カルナバロウ、サラシミツロウによって糖衣コーティングされた糖衣錠を、シェラック(粘着成分の一例)によりさらにコーティングし、このコーティング錠剤に対して各種のインクを付着させて耐擦過性を評価し、インク定着性の検証を行った。
【0044】
(実験方法)
糖衣錠、シェラックでさらにコーティングした糖衣錠に対し、各種インクをピンの先端につけて錠剤表面に付着させてマークを描画し、完全に乾燥させた後に指でこすり、マークがどの程度残っているかを観察した。
【0045】
(実験結果)
図3は、上記の実験の結果を示したものである。図3に示す「○」は擦過後も描画したマークが全体的に残っており、耐擦過性が高いことを表す。「△」は擦過後に描画したマークが一部消失し、耐擦過性が低いことを表し、「×」は半分以上消失し、耐擦過性が著しく低いことを表す。
【0046】
実験1は、シェラックによるコーティングを行っていない糖衣錠に対し、シェラックを含まないインクによってマークを描画した場合の評価であり、結果は「×」であった。
【0047】
実験2は、シェラックによるコーティングを行っていない糖衣錠に対し、シェラックを含むインクによってマークを描画した場合の評価であり、結果は「△」となった。
【0048】
実験3、4は、シェラックによるコーティングを行った糖衣錠に対し、シェラックを含むインクによってマークを描画した場合の評価であり、いずれも結果は「○」となった。実験3においてはコート剤に5%、実験4においてはコート剤に30%のシェラックを含有させたが、いずれにおいても耐擦過性が向上した。
【0049】
実験2においてはコート剤にシェラックは含まれていないが、実験1にくらべて耐擦過性が向上したことが分かる。これは、シェラックを含むインクを使用することによって、耐擦過性が向上することを示している。したがって、インクに含むシェラックの量を増やせば耐擦過性が向上し、インク定着性が増すことが考えられる。しかしながら、上述のとおり、インク定着剤の一例であるシェラックを多く含むインクほどインクの粘度が高くなり、これによってインクジェットヘッドからの吐出が困難になってしまう。およそ1%~12%程度シェラックを含有することが好適であるということが分かっており、それ以上含有量が多くなると、インクジェットヘッドからの吐出がうまく行えないことが分かっている。
【0050】
実験3、4においては実験2と同一量のシェラックをインクに添加した。結果、コート剤に5%のシェラックを含む場合も、30%のシェラックを含む場合においても、耐擦過性が向上しており、インクとコート剤との両方に同一成分を含むことによってさらに耐擦過性が増すことが明らかとなった。
【0051】
以上のように、インクにシェラックが含まれれば耐擦過性は増し、さらにコーティングにもシェラックが含まれることによってさらに耐擦過性が増すことが分かった。
【0052】
ここで、錠剤Tに塗布されたインク定着剤に錠剤Tの粉(例えば、装置内の気流の関係で搬送ベルト21a、31aから舞い上がった粉)が付着することがある。この付着箇所では、錠剤Tに対するインクの定着性が低下するため、印刷品質が低下することにつながる。錠剤T上のインク定着剤への粉の付着による印刷品質の低下を抑えるためには、錠剤Tの被印刷面にインク定着剤が塗布されてから印刷が行われるまでの時間ができるだけ短い方がよい。このため、錠剤Tの被印刷面にインクを塗布する直前に、インク定着剤を錠剤Tの被印刷面に塗布して乾燥させることが好ましい。この直前の所定範囲としては、第1の印刷装置20において、例えば、検出部22により錠剤Tが検出される位置から、印刷部26によりインクが錠剤Tの被印刷面に塗布される位置までの間の範囲である。つまり、塗布部23及び乾燥部24は、搬送方向A1において検出部22よりも下流側であって印刷部26よりも上流側に設けられている。第2の印刷装置30も同様である。
【0053】
ただし、第1の印刷装置20において、第1の撮像部25により錠剤Tが撮像される位置から、印刷部26によりインクが錠剤Tの被印刷面に塗布される位置までの間の範囲で、インク定着剤を錠剤Tの被印刷面に塗布して乾燥させる場合には、第1の撮像部25による錠剤Tの位置検出後に、錠剤Tに対するインク定着剤の塗布及び乾燥を行うことになるため、その間に錠剤Tの位置が変わって印刷品質が低下する可能性がある。この錠剤Tの位置ズレを抑えるためには、検出部22により錠剤Tが検出される位置から、第1の撮像部25により錠剤Tが撮像される位置までの間の範囲で、インク定着剤を錠剤Tの被印刷面に塗布して乾燥させることが好ましい。つまり、塗布部23及び乾燥部24は、搬送方向A1において検出部22よりも下流側であって第1の撮像部25よりも上流側に設けられている。第2の印刷装置30も同様である。
【0054】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、搬送される錠剤Tの被印刷面にインク定着剤を塗布し、そのインク定着剤が塗布された被印刷面にインクを塗布することによって、錠剤Tに対するインクの定着性が高まる。これにより、インクが塗布された箇所が擦れても、インクによる識別情報(情報の一例)が不鮮明になることが抑えられるので、印刷品質の低下を抑制することが可能となる。したがって、印刷不良の錠剤Tの発生を抑制し、生産性を上げることができる。
【0055】
また、インク定着剤とインクとで共通の成分が含まれている場合には、さらにインクの耐擦過性が向上するため、インク定着性が向上する。したがって、インクによる識別情報が不鮮明になることがさらに抑えられ、印刷不良の錠剤Tの発生を抑制し、さらに生産性を上げることができる。
【0056】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図4を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(塗布部及び第1の乾燥部)について説明し、その他の説明は省略する。
【0057】
図4に示すように、第2の実施形態では、塗布部23は、ホッパ11が備えるシュータ11aに設けられている。シュータ11aは、凹字形状に形成されており、上部は開口している。塗布部23は、ケース23aと、噴霧ノズル23bとを有している。ケース23aは、例えば、箱形状に形成されており、シュータ11aに取り付けられている。このケース23aは、シュータ11aを流れる錠剤Tが通過することが可能に形成されている。噴霧ノズル23bは、ケース23aに設けられており、ケース23a内にインク定着剤を噴霧する。これにより、ケース23a内が霧状のインク定着剤の雰囲気となる。第1の乾燥部24は、シュータ11aの上方に設けられており、ケース23a内を通過してシュータ11aを流れる錠剤Tに付着したインク定着剤を乾燥させる。
【0058】
このような構成において、ホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはシュータ11aから整列フィーダ12に順次供給される。シュータ11aに設けられたケース23a内にはインク定着剤が噴霧ノズル23bから吐出され、ケース23a内は霧状のインク定着剤の雰囲気となっている。シュータ11aを流れる錠剤Tがケース23a内を通過すると、錠剤Tの被印刷面(例えば、上面及び、側面の一部を含む被印刷面)にインク定着剤が付着する。これにより、錠剤Tの被印刷面の全体にインク定着剤が塗布される。インク定着剤が塗布された錠剤Tは、シュータ11aを流れ、乾燥動作中の第1の乾燥部24の下方を通過する。錠剤Tの被印刷面に塗布されたインク定着剤は、錠剤Tが第1の乾燥部24の下方を通過する間に第1の乾燥部24によって乾燥し、インク定着剤が乾燥した錠剤Tは整列フィーダ12に流れていく。その後、第1の実施形態と同様、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30により印刷が行われる。インク定着剤が塗布された錠剤Tの被印刷面にインクが印刷部26、36により塗布され、インクによる識別情報が錠剤Tの被印刷面に印刷される。この識別情報が印刷された箇所が擦れても、被印刷面に塗布されたインクは錠剤Tに定着しており、識別情報がにじんで不鮮明になることが抑えられるので、印刷品質の低下を抑制することが可能となる。これにより、印刷不良の錠剤Tの発生を抑制し、生産性を上げることができる。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、搬送状態の錠剤Tの上面に加え、錠剤Tの側面の方までインク定着剤を塗布することができる。これにより、錠剤Tの被印刷面が広い場合でも、被印刷面の全体に確実にインク定着剤を塗布することが可能となるので、印刷品質の低下を確実に抑制することが可能となる。したがって、印刷不良の錠剤Tの発生を抑制し、生産性を上げることができる。
【0060】
なお、前述のように、ケース23a内を霧状のインク定着剤の雰囲気とし、そのケース23a内に錠剤Tを通過させ、錠剤Tにインク定着剤を塗布しているが、例えば、錠剤Tが紡錘形状である場合には、錠剤Tの全面にインク定着剤を塗布することができる。詳しくは、錠剤Tにおけるシュータ11aとの接触部分にはインク定着剤が塗布されないが、錠剤Tの形状が紡錘形状であるため、錠剤Tがシュータ11aを流れるときに揺れ動き、接触部分が変わる。この接触部分にもインク定着剤が付着するため、錠剤Tの全面にインク定着剤が塗布されることになる。このような場合には、第2の印刷装置30の塗布部33や第1の乾燥部34を省略することが可能であり、装置構成を簡略化することができる。
【0061】
また、前述のように、ケース23aをシュータ11aに設けているが、搬送ベルト21a、31aの途中に、錠剤Tが通過するトンネルを有するトンネル部材を設け、そのトンネル内にインク定着剤を噴霧するようにしても良い。ただし、このような場合、搬送ベルト表面にインク定着剤が付着するため、搬送ベルト表面を定期的に拭き取るようにするか、あるいは、錠剤回収位置から錠剤供給位置の間に、搬送ベルト表面を拭き取る拭き取り部を設けるようにすることが望ましい。なお、トンネル部材を整列フィーダ12又は受渡フィーダ13に設けることも可能である。
【0062】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について図5を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点(マスク)について説明し、その他の説明は省略する。
【0063】
図5に示すように、第3の実施形態では、マスク60が設けられている。マスク60は、錠剤Tの被印刷面に対するインク定着剤の塗布領域を調整する部材であり、塗布部23の下方に位置付けられている。このマスク60は、所定の開口形状(例えば、円形、楕円形、矩形)及び所定の開口面積の貫通孔60aを有している。塗布部23から吐出されたインク定着剤は、マスク60の貫通孔60aを通過する。インク定着剤の塗布領域は、少なくともインクが塗布される予定の領域を含む所定領域(被印刷面の全領域よりも狭い)であればよい。この所定領域だけに選択的にインク定着剤を塗布するため、マスク60が使用される。このマスク60の貫通孔60aの開口面積や開口形状を変えることで、インク定着剤の塗布領域の面積や形状(塗布面積や塗布形状)を調整することができる。例えば、貫通孔60aの開口面積や開口形状が異なる数種類のマスク60が用意されており、それらの中から選択されて用いられる。
【0064】
このような構成において、塗布部23から吐出(例えば、噴射)されたインク定着剤は、下方に向って広がってマスク60により遮られるが、そのマスク60の貫通孔60aだけを通過し、搬送ベルト21a上の錠剤Tの被印刷面に付着する。これにより、マスク60により規定される領域、すなわち錠剤Tの被印刷面においてインクが塗布される予定の領域を含む所定領域だけにインク定着剤が塗布される。したがって、錠剤Tの被印刷面の全体にインク定着剤が塗布される場合に比べ、インク定着剤の塗布領域を狭くすることが可能であり、インク定着剤の使用量を減らすことができる。さらに、搬送ベルト21a(31a)に、粘着質な成分を含有するインク定着剤が付着することを防げるため、異物や錠剤Tの粉などを搬送ベルト21a上に保持するのを防ぐことができるので、搬送ベルト21aを清浄に保つことができる。また、気流の関係で舞い上がった錠剤Tの粉が、マスク60に付着したインク定着剤に付着するため、錠剤Tの粉を回収することができる。なお、マスク60は、所定時間ごとにアルコール成分を含ませた布類で払拭されたり、あるいは、清掃済又は新品のマスクに交換されたりする。
【0065】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、マスク60を設けることによって、錠剤Tの被印刷面に対するインク定着剤の塗布領域を調整することが可能になるので、インク定着剤の使用量を減らすことができる。また、舞い上がった錠剤Tの粉が、マスク60に付着したインク定着剤に付着するので、錠剤Tの粉を回収することができる。
【0066】
<他の実施形態>
前述の説明においては、塗布部23、33として、スプレーノズル、ディスペンサ、インクジェットヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、刷毛やローラーを用いるようにしてもよい。また、インク定着剤の塗布領域の形状として、円形、楕円形、矩形を例示したが、これに限るものではなく、例えば、印刷パターンに合わせてインク定着剤の塗布領域の形状や面積を調整するようにしてもよい。また、錠剤Tの被印刷面にインク定着剤を面状に塗布すること(ベタ塗り)を例示したが、例えば、点状や線状、網目状に塗布するようにしてもよい。
【0067】
また、前述の説明においては、印刷部26、36として、ノズルが一列に並ぶインクジェットヘッドを例示したが、これに限るものではなく、インクを用いる印刷部を用いればよく、例えば、凸版印刷方式や凹版印刷方式の印刷部、あるいは、ノズルが複数列に並ぶインクジェットヘッドを用いるようにしてもよい。また、水平面内において搬送方向A1と直交する方向にインクジェットヘッドを複数並べて用いるようにしてもよい。
【0068】
また、前述の説明においては、錠剤Tを一列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は二列や三列又は四列以上であってもよく、搬送路Pの数や搬送ベルト21a、31aの数は限定されるものではない。
【0069】
また、前述の説明においては、各第1の乾燥部24、34を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、インク定着剤や錠剤Tの種類によっては、自然乾燥のスピードが速く、各第1の乾燥部24、34を必要としないこともあるため、各第1の乾燥部24、34を省略してもよい。
【0070】
また、前述の説明においては、各第2の乾燥部28、36を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、インクや錠剤Tの種類によっては、自然乾燥のスピードが速く、各第2の乾燥部28、38を必要としないこともあるため、各第2の乾燥部28、38を省略してもよい。
【0071】
また、前述の説明においては、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30を上下に重ねて配置して、錠剤Tの両面または片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の印刷装置20だけを設け、錠剤Tの片面だけを印刷するようにしてもよい。
【0072】
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 錠剤印刷装置
21 搬送部
22 検出部
23 塗布部
24 第1の乾燥部
25 第1の撮像部
26 印刷部
31 搬送部
32 検出部
33 塗布部
34 第1の乾燥部
35 第1の撮像部
36 印刷部
60 マスク
T 錠剤
図1
図2
図3
図4
図5