(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】自動分析装置、キャップ、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G01N35/02 B
(21)【出願番号】P 2019067646
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 晋
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001998(JP,A)
【文献】特開2012-026728(JP,A)
【文献】国際公開第2006/104076(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098967(WO,A1)
【文献】特開平10-325838(JP,A)
【文献】特開2011-189270(JP,A)
【文献】特開2009-031300(JP,A)
【文献】特開2007-017412(JP,A)
【文献】特開平08-146299(JP,A)
【文献】特開2013-064754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00- 37/00
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬との混合液を収容する反応容器を保持して回動する反応ディスクと、
前記反応容器へ抑制部材を供給する供給手段と、
前記抑制部材で動きが抑制された混合液を光学的に計測する測光手段と
を具備し、
前記供給手段は、前記抑制部材としてのキャップを供給し、前記供給したキャップを前記反応容器へ挿入し、
前記キャップは、前記反応容器へ挿入されることによって前記混合液と接触する蓋部を有する、自動分析装置。
【請求項2】
前記試料を収容する反応容器へ前記試薬を吐出する試薬分注プローブをさらに具備し、
前記供給手段は、前記試薬を吐出する試薬吐出位置の近傍に設けられる請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記蓋部は、液抜き部を備え、挿入対象となる容器において光が透過する部分の内部形状と対応する形状を有し、
前記キャップは、
前記容器の開口部近傍の内径と略同径の外径を有する胴体部と、
前記蓋部と前記胴体部とを接続し、前記液抜き部を通過した液体を収容可能な空間を、前記蓋部、前記胴体部及び前記反応容器内壁により形成するくびれ部と
を具備する、
請求項1又は請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記胴体部は、前記液抜き部に対し、前記キャップの軸心周りに所定角度だけずらした位置に空気抜き部を有する請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記キャップは、挿入方向を調整するための調整部材をさらに具備する請求項3又は4記載の自動分析装置。
【請求項6】
反応容器へ試薬を吐出し、
前記試薬が吐出されて混合液を収容する反応容器を供給位置へ移動させ、
前記供給位置へ到達した反応容器へ抑制部材としてのキャップを供給し、
前記供給したキャップを前記反応容器へ挿入し、
前記キャップが有する蓋部を前記混合液に接触させ、
前記
蓋部で動きが抑制された、前記反応容器内の混合液を光学的に計測する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置、キャップ、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液及び尿等の生体試料(以下、試料と称する)と、種々の検査項目に対応する試薬とをキュベット(反応容器)内で混合させる。自動分析装置は、得られた混合液に光を当てて得られる透過光、又は散乱光の光量を測定することで、測定対象物質の濃度、活性値、及び変化に掛かる時間等を求める。
【0003】
ところで、自動分析装置では、試料を分注するサンプル分注位置、及び試薬を分注する試薬分注位置等が予め設定されている。反応ディスクは、複数のキュベットを円環状に保持し、制御回路からの指示に従って回動することで、保持するキュベットをサンプル分注位置、又は試薬分注位置等へ移動させる。このとき、所望の位置へのキュベットの移動、及び所望の位置でのキュベットの停止が繰り返されるため、キュベット内の混合液で、反応ディスクの加減速に起因するスロッシングが発生する。このスロッシングにより混合液の液面の乱れ、及び不要な対流等が生じ、測定結果が安定しない要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、測定結果を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、自動分析装置は、反応ディスク、供給手段、及び測光手段を備える。反応ディスクは、試料と試薬との混合液を収容する反応容器を保持して回動する。供給手段は、前記反応容器へ抑制部材を供給する。測光手段は、前記抑制部材で動きが抑制された混合液を光学的に計測する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される分析機構の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2で示されるキャップ供給機構の構成を表す上面図である。
【
図4】
図4は、
図1及び
図2で示されるキャップ供給機構の構成を表す側面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示される自動分析装置が所定の検査項目を測定する際の制御回路の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、
図4に示される押圧部がキュベットにキャップを押し込む際のキャップ供給機構の構成を表す側面図である。
【
図29】
図29は、第2の実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図31】
図31は、
図29に示される自動分析装置が所定の検査項目を測定する際の制御回路の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置1の機能構成の例を示すブロック図である。
図1に示される自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、制御回路9、及びキャップ供給機構10を備える。
【0010】
分析機構2は、血液又は尿等の試料と、各検査項目で用いられる試薬とを混合する。また、分析機構2は、検査項目によっては、所定の倍率で希釈した標準液と、この検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、試料、又は標準液と、試薬との混合液の光学的な物性値を測定する。この測定により、例えば、透過光強度、又は吸光度、及び散乱光強度等で表される標準データ、及び被検データが生成される。
【0011】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析することで、検量データ、及び分析データを生成するプロセッサである。解析回路3は、例えば、記憶回路8から解析プログラムを読み出し、読み出した解析プログラムに従って標準データ、及び被検データを解析する。なお、解析回路3は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えても構わない。
【0012】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0013】
入力インタフェース5は、例えば、操作者から、又は病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース5はマウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
【0014】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
【0015】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0016】
記憶回路8は、磁気的、若しくは光学的記憶媒体、又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を含む。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されても構わない。
【0017】
記憶回路8は、解析回路3で実行される解析プログラム、及び制御回路9に備わる機能を実現するための制御プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを試料毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、又は通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
【0018】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されているプログラムを実行することで、実行したプログラムに対応する機能を実現する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えても構わない。
【0019】
図2は、
図1に示される分析機構2の構成の一例を示す模式図である。
図2に示される分析機構2は、反応ディスク201、恒温部202、ラックサンプラ203、及び試薬庫204を備える。
【0020】
反応ディスク201は、複数のキュベット2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、キュベット2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、反応ディスク201は、例えば、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返されることで、キュベット2011を搬送する。
【0021】
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留し、貯留する熱媒体にキュベット2011を浸漬させることで、キュベット2011に収容される混合液を昇温する。
【0022】
ラックサンプラ203は、測定を依頼された試料を収容する複数の試料容器を保持可能な試料ラック2031を、移動可能に支持する。
図2に示す例では、5本の試料容器を並列して保持可能な試料ラック2031が示されている。
【0023】
ラックサンプラ203には、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで試料ラック2031を搬送する搬送領域が設けられている。搬送領域では、長手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
【0024】
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器を所定のサンプル吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域から引き込む引き込み領域が設けられている。サンプル吸引位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。
【0025】
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器を保持する試料ラック2031を搬送領域へ戻すための戻し領域が設けられている。戻し領域では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
【0026】
試薬庫204は、標準液、及び試料に対して実施される各検査項目で用いられる試薬等を収容する試薬容器100を複数保冷する。試薬庫204内には、回転テーブルが回転自在に設けられている。回転テーブルは、複数の試薬容器100を円環状に載置して保持する。なお、本実施形態において、
図2では図示していないが、試薬庫204は、着脱自在な試薬カバーにより覆われている。
【0027】
また、
図2に示される分析機構2は、サンプル分注アーム206、サンプル分注プローブ207、試薬分注アーム208、試薬分注プローブ209、及び測光ユニット211を備える。
【0028】
サンプル分注アーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
【0029】
サンプル分注プローブ207は、サンプル分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器から試料を吸引するためのサンプル吸引位置が設けられている。また、サンプル分注プローブ207の回動軌道上には、サンプル分注プローブ207が吸引した試料をキュベット2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されているキュベット2011の移動軌道との交点に相当する。
【0030】
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、サンプル吸引位置、又はサンプル吐出位置において上下方向に移動する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、サンプル吸引位置で停止している試料容器から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置で停止しているキュベット2011へ吐出する。
【0031】
試薬分注アーム208は、反応ディスク201と試薬庫204との間に設けられている。試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。試薬分注アーム208は、一端に試薬分注プローブ209を保持する。
【0032】
試薬分注プローブ209は、試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、試薬吸引位置が設けられている。試薬吸引位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、回転テーブルに円環状に載置される試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。また、試薬分注プローブ209の回動軌道上には、試薬分注プローブ209が吸引した試薬をキュベット2011へ吐出するための試薬吐出位置が設定されている。試薬吐出位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されているキュベット2011の移動軌道との交点に相当する。
【0033】
試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の試薬吸引位置、又は試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、試薬吸引位置で停止している試薬容器から試薬を吸引する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した試薬を、試薬吐出位置で停止しているキュベット2011へ吐出する。
【0034】
測光ユニット211は、キュベット2011内に吐出された試料と試薬との混合液中の光学的な物性値を測定する、測光手段の一例である。
図2では、1つの測光ユニット211が例示されているが、測光ユニット211は複数設けられていてもよい。例えば、測光ユニット211は、反応ディスク201で保持可能なキュベット2011と同数だけ設けられている。各々の測光ユニット211は、例えば、反応ディスク201で環状に保持されるキュベット2011の環状中心側(内周側)に光源を有し、キュベット2011の環状外側(外周側)に光検出器(透過光検出器)を有している。なお、各々の測光ユニット211は、光検出器に代えて、キュベット2011の側方に第2の光検出器(散乱光検出器)を有してもよいし、光検出器と第2の光検出器とを有してもよい。
【0035】
光源は、キュベット2011が配列されている環の外側へ向けて光を照射するように設けられている。光源から出射された光は、キュベット2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。
【0036】
光検出器は、キュベット2011から出射された光を検出する。具体的には、例えば、光検出器は、キュベット2011内の標準液と試薬との混合液を透過した光を検出する。光検出器は、検出した光を所定の時間間隔でサンプリングし、透過光強度、又は吸光度等で表される標準データを生成する。また、光検出器は、キュベット2011内の試料と試薬との混合液を透過した光を検出する。光検出器は、検出した光を所定の時間間隔でサンプリングし、透過光強度、又は吸光度等により表される被検データを生成する。光検出器は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。
【0037】
なお、光検出器は、検出した光の強度を検出信号として解析回路3へ出力しても構わない。このとき、解析回路3が、所定の時間間隔で検出信号をサンプリングし、標準データ、及び被検データを生成する。
【0038】
図1及び
図2に示されるキャップ供給機構10は、分析機構2へキャップ20を供給する供給手段の一例である。また、キャップ供給機構10は、供給したキャップ20を、反応ディスク201で保持されているキュベット2011へ挿入する。キャップ供給機構10は、例えば、試薬吐出位置の近傍に設けられる。キャップ供給機構10が試薬吐出位置の近傍に設けられていると、キュベット2011に試薬が吐出されてからキャップ20が挿入されるまでの時間が短縮される。
【0039】
図3及び
図4は、
図1及び
図2で示されるキャップ供給機構10の構成の例を表す模式図である。
図3及び
図4に示されるキャップ供給機構10は、供給ユニット11、移送ユニット12、回転ユニット13、及び挿入ユニット14を備えている。
【0040】
ここで、キャップ供給機構10により供給されるキャップ20の形状、及びキャップ20が挿入されるキュベット2011の形状について説明する。
図5乃至
図7は、
図2乃至
図4で示されるキュベット2011の形状の例を表す図である。
図5は、キュベット2011の斜視図の例を表す。
図6は、キュベット2011の上面図の例を表す。
図7は、キュベット2011の側面図の例を表す。
【0041】
図5乃至
図7で示されるキュベット2011は、試料及び試薬を分注可能、かつ、分注された試料、試薬、又はこれらの混合液を収容可能に形成される容器である。キュベット2011は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はアクリルから成り、一体成形により作成されている。キュベット2011の高さは、例えば、約3cm程度である。キュベット2011は、具体的な構成として、例えば、底部2011a、胴体部2011b、フランジ2011c、頂部2011d、及び開口部2011eを有する。
【0042】
胴体部2011bは、筒部2012b、傾斜部2013b、及び光透過部2014bを有する。筒部2012bは、例えば、延伸方向に直交する断面の形状が底部2011aからの距離に関わらず円形となるように形成されている。なお、断面形状は円形に限定されず、四角形等であっても構わない。
【0043】
光透過部2014bは、照射光、透過光、又は散乱光が透過する部分であり、底部2011aから所定の距離離れた位置に設けられている。光透過部2014bには、例えば、胴体部2011bの周囲にそれぞれ90度毎に隔てて第1平面部20141b-1~20141b-4が形成されている。第1平面部20141b-1~20141b-4は、胴体部2011bの延伸方向に沿って形成されており、互いに直交している。なお、光透過部2014bは、第1平面部20141b-1~20141b-4を有さず、延伸方向に直交する断面の形状が円形であっても構わない。
【0044】
傾斜部2013bは、筒部2012bと、光透過部2014bとの間に設けられ、延伸方向に直交する断面での形状が底部2011aからの距離に応じて変化するように形成されている。傾斜部2013bには、例えば、第2平面部20131b-1~20131b-4が形成されている。第2平面部20131b-1~20131b-4は、それぞれ第1平面部20141b-1~20141b-4と連続して形成され、底部2011aから離れるにつれ、平面の幅が狭くなるようになっている。なお、筒部2012b及び光透過部2014bの断面が略角状である場合には、傾斜部2013bは設けられなくてもよい。
【0045】
フランジ2011cは、胴体部2011bの開口部2015bに設けられる円環状の部材である。フランジ2011cは、外径が胴体部2011bの外径よりも大きくなるように形成されている。フランジ2011cの厚さは、例えば、フランジ2011cによりキュベット2011を支持可能な強度を実現可能な厚さである。
【0046】
頂部2011dは、フランジ2011c上において、開口部2011e方向に延設される角筒状の部材である。頂部2011dは、延伸方向に直交する断面での形状が略正方形となるように形成されている。頂部2011dは、例えば、側壁部2012d-1~2012d-4を有する。側壁部2012d-1~2012d-4は、それぞれ第1平面部20141b-1~20141b-4と平行となるように形成されている。側壁部2012d-1と、この側壁部2012d-1に対向する側壁部2012d-3との距離は、胴体部2011bの開口部2015bの直径と略等しい。
【0047】
なお、頂部2011dの断面形状は、光透過部2014bの第1平面部20141b-1~20141b-4の形成方向に合わせて略角型としているが、これに限定されない。頂部2011dの断面形状は、円形等、任意の形状であっても構わない。
【0048】
続いて、キャップ20の形状について説明する。
図8乃至
図11は、
図3及び
図4で示されるキャップ20の形状の例を表す図である。
図8は、キャップ20の斜視図の例を表す。
図9は、キャップ20の上面図の例を表す。
図10は、キャップ20の側面図の例を表す。
図11は、キャップ20の下面図の例を表す。
【0049】
図8乃至
図11で示されるキャップ20は、キュベット2011に挿入可能であり、キュベット2011に収容される混合液の動きを抑制可能に形成されている。キャップ20は、例えば、ポリエチレン(PE)から成り、一体成形により作成されている。キャップ20の高さは、キュベット2011と同程度の高さであり、例えば、約3cm程度である。キャップ20は、具体的な構成として、例えば、蓋部20a、くびれ部20b、胴体部20c、フランジ20d、及び頂部20eを有する。
【0050】
蓋部20aは、キュベット2011に収容される混合液を物理的に拘束可能に形成される部材である。具体的には、例えば、蓋部20aは、
図11で示されるように、延伸方向に直交する断面での形状が、光透過部2014bの断面と略同一の形状となるように形成されている。なお、蓋部20aの形状は、
図11で示される形状に限定されず、光透過部2014bの断面形状が円形であれば円形であり、方形であれば方形となる。蓋部20aは、例えば、光透過部2014bの内部で停止可能ように、フランジ20dの蓋部20a側の面から所定の距離に設けられている。より具体的には、光透過部2014b内の位置は、例えば、想定される最少量の混合液がキュベット2011に収容された際に、キュベット2011に挿入されたキャップ20の蓋部20aが液面から数mm程度混合液内に沈む位置である。この位置は、例えば、キュベット2011の底部2011aから約5mm程度上方の位置と対応する。
【0051】
蓋部20aは、液抜き部としての切欠き部21a-1,21a-2を有する。切欠き部21a-1,21a-2は、例えば、蓋部20aの中心を挟んで対向した位置に形成される。切欠き部21a-1,21a-2は、キャップ20の挿入時に混合液が通過可能であり、混合液のスロッシングを抑制可能な程度の大きさに形成される。なお、切欠き部21a-1,21a-2は、キャップ20の挿入時に混合液が通過可能であり、かつ、混合液のスロッシングを抑制可能であれば、任意の形状に形成されて構わない。また、切欠き部21a-1,21a-2は、孔であっても構わない。また、切欠き部21a-1,21a-2は、混合液のスロッシングを抑制可能であれば、2つ以上形成されても構わない。
【0052】
くびれ部20bは、蓋部20aと、胴体部20cとの間に設けられる、例えば、柱状の部材である。キュベット2011にキャップ20が挿入されると、くびれ部20bの外壁、蓋部20aのくびれ部20b側の面、胴体部20cのくびれ部20b側の面、及び蓋部20aと胴体部20cとに挟まれるキュベット2011の内壁により収容空間が形成される。収容空間の容量は、例えば、キュベット2011への収容が想定される最大量の混合液のうち、蓋部20aの切欠き部21a-1,21a-2を通過して収容空間へ流入する混合液の量に基づいて設定される。くびれ部20bの高さは、この収容空間を形成可能に設定される。くびれ部20bの太さ及び形状は、例えば、キュベット2011にキャップ20を挿入する際に、挿入時の外力により座屈しない程度の強度を実現可能に設定される。
【0053】
胴体部20cは、同軸上に異なる複数の外径で形成される円柱状の部材である。具体的には、胴体部20cは、例えば、外径がキュベット2011の胴体部2011bの内径と略同一となるように形成されている。また、胴体部20cは、キュベット2011の頂部2011dと対応する部位、例えば、フランジ20d近傍の部位においては、外径が、キュベット2011の胴体部2011bの開口部2015bの内径と略同一となるように形成されている。なお、胴体部20cは、外径が一様の円柱状の部材であっても構わない。胴体部20cの高さは、例えば、フランジ20dの蓋部20a側の面から蓋部20aまでの距離、及びくびれ部20bの高さに基づいて設定される。
【0054】
胴体部20cは、軸心方向に沿って形成される、空気抜き部としての溝部21c-1,21c-2を有する。溝部21c-1,21c-2は、例えば、切欠き部21a-1,21a-2に対し、軸心回りに90度ずらした位置に形成される。溝部21c-1,21c-2の幅及び断面形状は、キュベット2011内の空気を排出可能であれば任意の幅及び形状で構わない。
【0055】
フランジ20dは、胴体部20cの周囲に設けられる円環状の部材である。フランジ20dは、例えば、外径がキュベット2011のフランジ2011cと略同一となるように形成されている。フランジ20dの厚さは、フランジ20dによりキャップ20を支持可能な強度を実現可能な厚さである。フランジ20dは、胴体部20cで溝部21c-1,21c-2が設けられる位置に孔部21d-1,21d-2を有する。孔部21d-1,21d-2の大きさ及び形状は、例えば、溝部21c-1,21c-2の幅及び形状と対応している。
【0056】
頂部20eは、フランジ20d上に延設される柱状の部材である。頂部20eの形状は、例えば、円柱形状であっても、角柱形状であっても構わない。頂部20eは、フランジ20dで孔部21d-1,21d-2が設けられる位置に溝部21e-1,21e-2を有する。溝部21e-1,21e-2の幅及び形状は、孔部21d-1,21d-2の大きさ及び形状と対応している。
【0057】
キャップ供給機構10の説明に戻る。キャップ供給機構10が備える、
図3及び
図4で示される供給ユニット11は、移送ユニット12へキャップ20を供給する。具体的には、供給ユニット11は、例えば、移送ユニット12よりも上方に設けられ、投入口、貯留部、及び排出部を有する。供給ユニット11は、例えば、操作者により投入口へ投入されるキャップ20を貯留部で貯留する。供給ユニット11は、貯留しているキャップ20を、重力を利用して排出部から1つずつ排出し、移送ユニット12へ供給する。
【0058】
移送ユニット12は、供給ユニット11により供給されるキャップ20を回転ユニット13へ移送する。具体的には、移送ユニット12は、例えば、レール12a,12bを有する。レール12a,12bは、例えば、所定距離だけ離間して設けられている。所定距離は、キャップ20の胴体部20cの外径よりも大きく、フランジ20dの直径よりも小さい。これにより、キャップ20は、フランジ20dの胴体部20c側の面がレール12a,12bの上面に接触し、胴体部20cがレール12a,12b間の空間に収まることになる。レール12a,12bは、上面でフランジ20dを支持するキャップ20が重力により摺動可能な程度に傾斜して設けられている。
【0059】
回転ユニット13は、移送ユニット12により移送されたキャップ20を保持し、保持したキャップ20を挿入位置上まで回動させる。挿入位置は、キュベット2011にキャップ20を挿入させるための位置である。具体的には、回転ユニット13は、例えば、保持部13a-1,13a-2及び回転軸13bを有する。保持部13a-1,13a-2は、例えば、回転軸13bを挟んで対向する位置に設けられる。保持部13a-1,13a-2は、移送ユニット12のレール12a,12bの端部と略同一の高さに設けられる。保持部13a-1,13a-2のうち一方は、レール12a,12bにより挟まれた空間と対向する位置に設けられる。保持部13a-1,13a-2のうち他方は、停止している反応ディスク201が保持するキュベット2011の開口部2015b上の位置に設けられる。保持部13a-1,13a-2は、鉛直方向にキャップ20を保持可能に形成されている。保持部13a-1,13a-2は、回転軸13bを中心に、例えば、制御回路9からの指示に従って180度回転する。
【0060】
なお、回転ユニット13は、キュベット2011が保持される姿勢にキャップ20の姿勢を合わせるための調整部(図示せず)を有していても構わない。
【0061】
挿入ユニット14は、回転ユニット13の保持部13a-1,13a-2で保持されるキャップ20をキュベット2011へ押し込む。具体的には、挿入ユニット14は、例えば、押圧部14a及び駆動部14bを有する。押圧部14aは、所定の長さを有する棒状の部材である。所定の長さは、例えば、キュベット2011の直上に位置する回転ユニット13の、例えば、保持部13a-1で保持されるキャップ20を、キュベット2011の方向へ押し込む距離に応じて決定される。押圧部14aは、キュベット2011の直上に位置する回転ユニット13の保持部13a-1の直上に、鉛直方向に沿って設けられている。押圧部14aは、挿入ユニット14の本体により支持されている。押圧部14aは、上死位置においては、下端が保持部13a-1で保持されるキャップ20の上端よりもわずか上方に位置するように支持されている。押圧部14aは、駆動部14bにより、上下方向に駆動される。駆動部14bは、例えば、制御回路9からの指示に従い、押圧部14aを、キュベット2011内部のキャップ20の停止位置まで下降させる。
【0062】
図1に示される制御回路9は、記憶回路8に記憶されている制御プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、制御プログラムを実行することで、システム制御機能91を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが制御プログラムを実行することによりシステム制御機能91を実現しても構わない。
【0063】
システム制御機能91は、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。例えば、システム制御機能91において制御回路9は、検査項目に応じた測定を実施するように駆動機構4を駆動し、分析機構2で生成される標準データ、及び被検データを解析するように解析回路3を制御する。
【0064】
次に、以上のように構成された自動分析装置1による動作を、制御回路9の処理手順に従って説明する。
図12は、
図1に示される自動分析装置1が、所定の検査項目を測定する際の制御回路9の処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御回路9は、例えば、予め設定される起動時刻になると、又は、操作者からの起動指示が入力されると、記憶回路8に記憶されている制御プログラムを読み出し、システム制御機能91を実施する。システム制御機能91において制御回路9は、自動分析装置1における各部を統括して制御する。
【0065】
具体的には、例えば、制御回路9は、駆動機構4を制御し、ラックサンプラ203で支持されている試料ラック2031を移動させる(ステップS121)。試料ラック2031には、血液又は尿等の試料を収容した試料容器が保持されている。試料ラック2031に保持される試料容器がサンプル吸引位置に到達すると、制御回路9は、到達した試料容器内の試料が次の検査対象であることを、記憶回路8に記憶されている検査オーダを参照して確認する(ステップS122)。
【0066】
試料容器内の試料が次の検査対象であることを確認すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207がサンプル吸引位置へ移動するように、サンプル分注アーム206を回動させる。サンプル分注プローブ207がサンプル吸引位置に到達すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207を下降させ、サンプル吸引位置に位置する試料容器から試料を吸引する(ステップS123)。
【0067】
試料を試料容器から吸引すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207を上昇させ、サンプル分注プローブ207がサンプル吐出位置へ移動するように、サンプル分注アーム206を回動させる。サンプル分注プローブ207がサンプル吐出位置に到達すると、制御回路9は、サンプル分注プローブ207を下降させ、サンプル吐出位置に位置する空のキュベット2011へ試料を吐出する(ステップS124)。なお、制御回路9は、駆動機構4により反応ディスク201を回動させ、サンプル分注プローブ207が下降される前までに、空のキュベット2011をサンプル吐出位置に移送している。キュベット2011へ吐出された試料は、恒温部202により所定の温度(例えば、37℃)に昇温される。
【0068】
制御回路9は、例えば、キュベット2011へ試料を分注する動作のバックグラウンドで、試薬分注アーム208、試薬分注プローブ209、及び試薬庫204の回転テーブルを操作し、検査オーダで示される検査項目と対応する試薬を、試薬庫204内の試薬容器100から吸引する(ステップS125)。
【0069】
キュベット2011に試料が吐出されると、制御回路9は、駆動機構4により、反応ディスク201を回動させ、試料が吐出されたキュベット2011を試薬吐出位置へ移動させる(ステップS126)。キュベット2011が試薬吐出位置に到達すると、制御回路9は、試薬分注アーム208、及び試薬分注プローブ209を操作し、試薬吐出位置に到達したキュベット2011へ試薬を吐出する(ステップS127)。このとき、制御回路9は、例えば、試薬を所定の圧力で噴出するようにキュベット2011へ吐出する。所定の圧力で試薬を噴出することで、キュベット2011内での試薬と試料との混和が促進される。
【0070】
キュベット2011へ試薬を吐出すると、制御回路9は、試薬を血液検体へ添加した旨を解析回路3へ通知し、測光ユニット211にキュベット2011で保持される混合液の測光を開始させる(ステップS128)。これにより、測光ユニット211の光源からキュベット2011へ光の照射が開始される。光源から照射された光は、光源と対向して配置される、例えば、キュベット2011の第1平面部20141b-1からキュベット2011内へ入射する。キュベット2011内へ入射した光は、キュベット2011内の混合液を透過し、第1平面部20141b-1と対向して設けられる第1平面部20141b-3から出射する。また、キュベット2011内へ入射した光は、キュベット2011内の混合液で散乱し、第1平面部20141b-1に対して直交する、例えば、第1平面部20141b-2から出射する。第1平面部20141b-3から出射した光、及び第1平面部20141b-2から出射した光は、それぞれ透過光検出器、及び散乱光検出器で検出される。光検出器は、検出した光に基づいて被検データを生成し、生成した被検データを解析回路3へ送信する。
【0071】
キュベット2011へ試薬を吐出すると、つまり、キュベット2011内の混合液の測光開始と並行して、制御回路9は、例えば、反応ディスク201及びキャップ供給機構10を操作し、試薬が吐出されたキュベット2011へキャップ20を挿入する(ステップS129)。
【0072】
具体的には、例えば、制御回路9は、キュベット2011へ試薬を吐出して試薬分注プローブ209を上昇させると、駆動機構4により反応ディスク201を回動させ、試薬が吐出されたキュベット2011を挿入位置へ移動させる。
【0073】
また、制御回路9は、キュベット2011へ試薬を吐出すると、キャップ供給機構10の回転ユニット13を制御し、例えば、移送ユニット12から移送されたキャップ20を保持する保持部13a-1を、回転軸13bを中心として180度回転させる。これにより、キュベット2011が挿入位置に到達する前に、移送ユニット12から移送されたキャップ20が挿入位置に到達することになる。
【0074】
キュベット2011が挿入位置に到達すると、制御回路9は、挿入ユニット14の駆動部14bを制御し、押圧部14aを下降させる。これにより、挿入位置で停止するキュベット2011へ、挿入位置上の保持部13a-1で保持されるキャップ20が押し込まれる。すなわち、キャップ20がキュベット2011へ挿入される。
図13は、
図4に示される押圧部14aがキュベット2011にキャップ20を押し込む際のキャップ供給機構10の構成の例を表す模式図である。
【0075】
キャップ20がキュベット2011へ挿入されると、キュベット2011内に存在している空気が、溝部21c-1,21c-2、孔部21d-1,21d-2、及び溝部21e-1,21e-2を介してキュベット2011外へ排気される。
【0076】
また、キャップ20がキュベット2011へ挿入されると、蓋部20aが、キュベット2011に収容される混合液の液面と接触する。混合液と蓋部20aとが接触した後、キャップ20は、キュベット2011内へさらに押し込まれる。蓋部20aが混合液内へ押し込まれることにより、混合液が、切欠き部21a-1,21a-2を介し、蓋部20aのくびれ部20b側の面、胴体部20cのくびれ部20b側の面、及び筒部2012bの内壁により形成される空間へ流入する。キャップ20のフランジ20dの胴体部20c側の面が、キュベット2011の頂部2011dに接触すると、キャップ20のキュベット2011への挿入は終了する。
【0077】
図14及び
図15は、キャップ20がキュベット2011に挿入されている状態のキャップ20及びキュベット2011の例を表す図である。
図14は、キャップ20及びキュベット2011の斜視図の例を表す。
図15は、キャップ20及びキュベット2011の断面図の例を表す。
【0078】
図14及び
図15において、キャップ20の蓋部20aは、キュベット2011の光透過部2014b内で停止する。蓋部20aの形状は、光透過部2014bの内側形状にと略同一となるように形成されているため、蓋部20aの外周面は、光透過部2014bの内壁と接触する。光透過部2014b内で蓋部20aが停止する位置は、より具体的には、例えば、光が通過する領域の上方、かつ、想定される最少量の混合液の液面よりわずかに下方である。この位置は、例えば、キュベット2011の底部2011aから約5mm程度の高さの位置である。
【0079】
また、
図14及び
図15において、例えば、キャップ20の胴体部20cの外壁は、キュベット2011の胴体部2011bの内壁と接触している。これは、例えば、キャップ20の胴体部20cが、キュベット2011の胴体部2011b内に嵌合されていると換言可能である。これにより、キュベット2011内でキャップ20が固定されるため、キュベット2011内でのキャップ20の姿勢が維持され、キャップ20を挿入した後に蓋部20aがずれるのを防ぐことが可能となる。
【0080】
制御回路9は、ステップS129における、キュベット2011内の混合液の測定が終了すると、記憶されている検査オーダを参照し、次の測定があるか否かを確認する(ステップS1210)。次の測定がない場合、制御回路9は処理を終了する。一方、次の測定がある場合、制御回路9は、処理をステップS121へ移行させる。
【0081】
以上のように、第1の実施形態で示される自動分析装置1は、キュベット2011内の混合液の運動の自由度を強制的に抑制する抑制部材を供給する供給手段としてのキャップ供給機構10を備える。キャップ供給機構10は、抑制部材としてキャップ20を供給し、供給したキャップ20を、反応ディスク201で保持される、試薬が吐出されたキュベット2011へ挿入する。これにより、キュベット2011に収容される混合液がキャップ20により物理的に拘束され、反応ディスク201の加減速に起因する混合液のスロッシングの発生を抑えることが可能となる。また、キュベット2011内のスロッシングの発生を抑えることで、液内の濃度分布の偏在、及び液面揺れノイズ等を低減させることが可能となる。
【0082】
このため、自動分析装置1が測光ユニット211により血液凝固反応を測定する場合には、スロッシングにより血液の凝固が乱されることを抑えることが可能となる。また、自動分析装置1が測光ユニット211によりラテックス凝集法を利用して試料中の検出対象の成分量を測定する場合には、スロッシングによりラテックス粒子の凝集が阻害されることを抑えることが可能となる。
【0083】
また、試薬分注プローブ209からキュベット2011へ所定の圧力で試薬を噴出する場合、混合液内に泡が発生する。この泡が混合液中の光路近傍の領域に存在している場合、測光ユニット211によって検出される光の強度に影響を与えるおそれがある。キャップ20をキュベット2011へ挿入すると、キャップ20の蓋部20aが混合液を抑える際、混合液中の泡が蓋部20aの液抜き部から収容空間へ移動する。これにより、混合液中の泡が減少することになり、泡が測定に与える影響を低減させることが可能となる。
【0084】
また、第1の実施形態で示される自動分析装置1は、キャップ供給機構10を、試薬をキュベット2011へ吐出するための試薬吐出位置の近傍に設けるようにしている。これにより、キュベット2011に試薬を吐出した直後にキュベット2011へキャップ20を挿入することが可能となる。
【0085】
また、第1の実施形態で示されるキャップ20は、蓋部20a、胴体部20c及びくびれ部20bを有している。蓋部20aは、液抜き部を備え、キュベット2011の光透過部の内部形状と対応する形状を有する。胴体部20cは、キュベット2011の開口部近傍の内径と略同径の外径を有する。くびれ部20bは、蓋部20aと胴体部20cとを接続し、蓋部20aの液抜き部を通過した混合液を収容可能な空間をキュベット2011内に形成する。これにより、キュベット2011に収容される混合液の容量にばらつきがある場合であっても、キュベット2011に挿入されるキャップ20の蓋部20aが、混合液を物理的に拘束することが可能となる。
【0086】
また、第1の実施形態で示されるキャップ20の胴体部20cは、液抜き部に対し、キャップ20の軸心周りに所定角度だけずらした位置に空気抜き部を有するようにしている。キャップ20をキュベット2011へ挿入する際、キュベット2011に収容される混合液が液抜き部から噴出することがある。空気抜き部を液抜き部に対してずらして設けることで、液抜き部から噴出した液体が空気抜き部を塞ぐことを防ぐことが可能となる。
【0087】
【0088】
例えば、
図16~
図19に示されるキャップ20は、フランジ20dの蓋部20a側の面に、キュベット2011の頂部2011dの内側形状と同様の形状の角柱部材20fを有している。角柱部材20fは、調整部材の一例である。角柱部材20fの方向に基づいてキャップ20の方向が調整されることで、蓋部20aの方向を、キュベット2011の光透過部2014bの方向に合わせることが可能となる。
【0089】
また、例えば、
図20~
図23に示されるキャップ20は、フランジ20dの形状が、キュベット2011の頂部2011dの形状と対応した形状となっている。すなわち、
図20~
図23に示される例では、フランジ20dは略正方形形状となっている。フランジ20dは、調整部材の一例である。フランジ20dの方向に基づいてキャップ20の方向が調整されることで、蓋部20aの方向を、キュベット2011の光透過部2014bの方向に合わせることが可能となる。
【0090】
また、例えば、
図24~
図27に示されるキャップ20は、頂部20eの形状が、キュベット2011の頂部2011dの形状と同様の形状となっている。頂部20eは、調整部材の一例である。頂部20eの方向に基づいてキャップ20の方向が調整されることで、蓋部20aの方向を、キュベット2011の光透過部2014bの方向に合わせることが可能となる。また、キュベット2011を反応ディスク201に保持させるための機構で用いられる構成を、キャップ供給機構10でも利用することが可能となる。
【0091】
また、第1の実施形態では、キャップ20の蓋部20aの底部2011a側の面が平らである場合を例に説明した。蓋部20aの底部2011a側の面は、平らでなくても構わない。
図28は、
図8乃至
図11で示されるキャップ20の蓋部20aのその他の例を表す模式図である。
図28で示される蓋部20aは、例えば、断面形状が四角形のキュベット2011で用いられる。蓋部20aは、略半円形状の溝が互いに直交するように設けられている。
【0092】
また、第1の実施形態では、キャップ20が自動分析装置1で用いられるキュベット2011に挿入される場合を例に説明した。しかしながら、キャップ20が挿入される容器は、自動分析装置1のキュベット2011に限定されない。収容する液体内の成分を光学的に計測する装置で用いられる容器であれば、任意の大きさの容器に対応させても構わない。
【0093】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、キュベット2011へキャップ20を挿入することで、キュベット2011に収容される混合液を物理的に拘束する場合を例に説明した。第2の実施形態では、キュベット2011へオイルを供給することで、キュベット2011に収容される混合液を物理的に拘束する場合を説明する。
【0094】
図29は、第2の実施形態に係る自動分析装置1aの機能構成の例を示すブロック図である。
図29に示される自動分析装置1aは、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、制御回路9、及びオイル供給機構15を備える。
【0095】
図29に示されるオイル供給機構15は、反応ディスク201で保持されているキュベット2011へオイルを供給する、供給手段の一例である。オイル供給機構15は、例えば、試薬吐出位置の近傍に設けられる。オイル供給機構15が試薬吐出位置の近傍に設けられていると、キュベット2011に試薬が吐出されてからオイルが供給されるまでの時間が短縮される。
【0096】
図30は、
図29で示されるオイル供給機構15の構成の例を表す模式図である。
図30に示されるオイル供給機構15は、オイル供給プローブ151及び駆動部152を備えている。オイル供給プローブ151は、駆動部152によって駆動され、上下方向に移動する。また、オイル供給プローブ151は、制御回路9の制御に従い、停止しているキュベット2011へオイルを供給する。
【0097】
オイル供給プローブ151により供給されるオイルは、例えば、シリコンオイル、又は植物性オイル等である。キュベット2011で収容される混合液の動きを抑えるため、オイルの粘性は高い方が望ましい。一方、混合液の動きを抑制可能な重量のオイルを供給可能であれば、混合液と同程度の粘性のオイルを選定可能である。
【0098】
図31は、
図29に示される自動分析装置1aが、所定の検査項目を測定する際の制御回路9の処理手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS127において、キュベット2011へ試薬を吐出すると、制御回路9は、例えば、反応ディスク201及びオイル供給機構15を操作し、試薬が吐出されたキュベット2011へオイルを供給する(ステップS311)。
【0099】
具体的には、例えば、制御回路9は、キュベット2011へ試薬を吐出して試薬分注プローブ209を上昇させると、駆動機構4により反応ディスク201を回動させ、試薬が吐出されたキュベット2011をオイル供給位置へ移動させる。
【0100】
キュベット2011がオイル供給位置に到達すると、制御回路9は、駆動部152を制御し、オイル供給プローブ151を下降させる。オイル供給プローブ151をキュベット2011内の所定の位置まで下降させると、制御回路9は、オイル供給プローブ151に、予め設定された量のオイルをキュベット2011内へ供給させる。
【0101】
キュベット2011にオイルが供給されると、キュベット2011に収容される混合液の上層に被さるようにオイルが収容される。
図32は、キュベット2011にオイルが供給された状態のキュベット2011の断面図の例を表す。
【0102】
以上のように、第2の実施形態で示される自動分析装置1aは、キュベット2011内の混合液の運動の自由度を強制的に抑制する抑制部材を供給する供給手段としてのオイル供給機構15を備える。オイル供給機構15は、反応ディスク201で保持される、試薬が吐出されたキュベット2011へ、抑制部材としてオイルを供給する。これにより、キュベット2011に収容される混合液がオイルにより物理的に拘束され、反応ディスク201の加減速に起因する混合液のスロッシングの発生を抑えることが可能となる。また、キュベット2011内のスロッシングの発生を抑えることで、液内の濃度分布の偏在、及び液面揺れノイズ等を低減させることが可能となる。
【0103】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、自動分析装置1,1aは、測定結果を安定させることができるようになり、また、より高精度な測定が実現可能となる。
【0104】
実施形態の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0106】
1,1a…自動分析装置
2…分析機構
201…反応ディスク
202…恒温部
203…ラックサンプラ
204…試薬庫
100…試薬容器
206…サンプル分注アーム
207…サンプル分注プローブ
208…試薬分注アーム
209…試薬分注プローブ
211…測光ユニット
2011…キュベット
2011a…底部
2011b…胴体部
2012b…筒部
2013b…傾斜部
20131b-1~20131b-4…第2平面部
2014b…光透過部
20141b-1~20141b-4…第1平面部
2015b…開口部
2011c…フランジ
2011d…頂部
2012d-1~2012d-4…側壁部
2011e…開口部
2031…試料ラック
4…駆動機構
5…入力インタフェース
6…出力インタフェース
7…通信インタフェース
8…記憶回路
9…制御回路
91…システム制御機能
10…キャップ供給機構
11…供給ユニット
12…移送ユニット
12a,12b…レール
13…回転ユニット
13a-1,13a-2…保持部
13b…回転軸
14…挿入ユニット
14a…押圧部
14b…駆動部
15…オイル供給機構
151…オイル供給プローブ
152…駆動部
20…キャップ
20a…蓋部
21a-1,21a-2…切欠き部
20b…くびれ部
20c…胴体部
21c-1,21c-2…溝部
20d…フランジ
21d-1,21d-2…孔部
20e…頂部
21e-1,21e-2…溝部
20f…角柱部材