(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】一斉開放弁並びにチャッキ弁構造
(51)【国際特許分類】
F16K 31/363 20060101AFI20240311BHJP
F16K 15/04 20060101ALI20240311BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F16K31/363
F16K15/04 Z
A62C35/68
(21)【出願番号】P 2019072609
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小林 達朗
(72)【発明者】
【氏名】飯島 陽一
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-151749(JP,U)
【文献】中国実用新案第202402724(CN,U)
【文献】特開2012-215241(JP,A)
【文献】特許第2532023(JP,B2)
【文献】実開平06-050667(JP,U)
【文献】特開2004-135849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00 - 99/00
F16K 31/363
F16K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁体により一次側流路、二次側流路及び圧力制御室が区画されている一斉開放弁であって、
前記主弁体に前記一次側流路と前記圧力制御室とを連通する内部流路が設けられ、
前記内部流路の前記圧力制御室側に設けられた収容室に、前記一次側流路から前記圧力制御室への流体の流入のみを可能にするチャッキ弁が着脱可能に設けられ、
前記チャッキ弁は、
略円筒状で両端
に開口を有する
とともに内径の狭い部分を有するケーシングと、
前記ケーシング
における一方の開口
の周縁付近に装着されたOリングと、内径の狭
い部分と前記Oリングとの間に収容されたボール弁体とを有
し、前記収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、
前記Oリングは、前記チャッキ弁を前記収容室に取り付けると前記収容室の内壁面に当接され、
前記Oリングにより前記ケーシングと前記内壁面との境界部分がシールされるようにしたことを特徴とする一斉開放弁。
【請求項2】
前記Oリングは、前記ケーシングの内周に形成された装着溝に嵌め込まれている請求項1に記載の一斉開放弁。
【請求項3】
前記ケーシングの内部に、前記ボール弁体を前記Oリングに向けて付勢する
付勢手段を設けた請求項1又は2に記載の一斉開放弁。
【請求項4】
チャッキ弁が主弁体の内部流路に設けた収容室内に着脱可能に装着されたチャッキ弁構造であって、
前記チャッキ弁が、略円筒状で両端に開口を有するとともに内径の狭い部分を有するケーシングと、前記ケーシングにおける一方の開口の周縁付近に装着されたOリングと、内径の狭い部分と前記Oリングとの間に収容されたボール弁体とを有し、前記収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、
前記Oリングは、前記チャッキ弁を前記収容室に取り付けると前記収容室の内壁面に当接され、
前記Oリングにより前記ケーシングと前記内壁面との境界部分がシールされるようにしたことを特徴とするチャッキ弁構造。
【請求項5】
前記ケーシングの内部に、前記ボール弁体を前記Oリングに向けて付勢する
付勢手段を設けた請求項4に記載のチャッキ弁構造。
【請求項6】
主弁体により一次側流路、二次側流路及び圧力制御室が区画されている一斉開放弁であって、
前記主弁体に前記一次側流路と前記圧力制御室とを連通する内部流路が設けられ、前記内部流路の前記圧力制御室側に設けられた収容室に、前記一次側流路から前記圧力制御室への流体の流入のみを可能にす
るチャッキ弁が着脱可能に設けられ、
前記チャッキ弁は、
略円筒状で両端に開口を有するケーシングと、前記ケーシング内に収容されたボール弁体と、前記ボール弁体が前記ケーシングの一方の開口からの脱落することを防止するように前記一方の開口の周縁付近に装着されたOリングと、を有し、前記収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、
前記Oリングは、前記チャッキ弁を前記収容室に取り付けると前記内部流路への前記チャッキ弁の組付け方向で前記内部流路の内壁面に当接して前記チャッキ弁と前記内壁面との境界部分がシールされるようにしたことを特徴とする一斉開放弁。
【請求項7】
チャッキ弁が主弁体の内部流路に設けた収容室内に着脱可能に装着されたチャッキ弁構造であって、
前記チャッキ弁は、
略円筒状で両端に開口を有するケーシングと、前記ケーシング内に収容されたボール弁体と、前記ボール弁体が前記ケーシングの一方の開口からの脱落することを防止するように前記一方の開口の周縁付近に装着されたOリングと、を有し、前記収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、
前記Oリングは、前記チャッキ弁を前記収容室に取り付けると前記内部流路への前記チャッキ弁の組付け方向で前記内部流路の内壁面に当接して前記チャッキ弁と前記内壁面との境界部分がシールされるようにしたことを特徴とするチャッキ弁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備や泡消火設備などの消火設備で使用される一斉開放弁並びにチャッキ弁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一斉開放弁は、主にスプリンクラー設備や泡消火設備などの消火設備で使用され、通常、その弁箱内部の一次側流路と二次側流路との間に有底円筒形状のピストン状弁体が設けられ、このピストン状弁体の昇降動により流路が開閉される。ピストン状弁体にはチャッキ弁機構が設けられ、このチャッキ弁機構によりピストン状弁体の背面側に設けられた圧力感知用の圧力制御室に一次側流路から流体が流れ込み、かつ圧力制御室から一次側流路への流体の逆流が防がれるようになっている。
【0003】
この種の一斉開放弁として、例えば特許文献1の一斉開放弁が開示されている。この一斉開放弁では、チャッキ弁機構としてボール状弁体、コイルスプリング、ばね押え、弁座用Oリングが備えられ、ピストン状弁体に形成された凹状部に弁座用Oリングが収納され、ばね押えがピストン状弁体にねじ込まれてコイルスプリング及びボール弁体が凹状部の所定位置に配置されている。これにより、ばね押えによって、ボール状弁体、コイルスプリング、弁座用Oリングのピストン状弁体からの抜け出しが防がれ、ボール状弁体がコイルスプリングにより弾発付勢されてチャッキ弁機能が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の一斉開放弁のチャッキ弁構造は、ボール状弁体、弁座用Oリング、コイルスプリング、ばね押えがそれぞれ別々にピストン状弁体に取付けられているため、組立てが複雑化するという問題がある。具体的には、チャッキ弁機構を設ける場合には、ピストン状弁体の凹状部に弁座用Oリングを収納しつつ、コイルスプリングの弾発力に抗してばね押えをねじ込み、このコイルスプリングやボール弁体を凹状部に適切に配置する必要があるため、組立てに手間や時間がかかる。
【0006】
弁座用Oリング、ボール状弁体をピストン状弁体の凹状部に別々に組み込んでいるために両者の組込み精度が一定でなくなり、これらの当たりにばらつきが生じやすい。これに加えて、弁座用Oリングは、その外周側が凹状部に形成された段付部への係止によって装着されているため、ボール状弁体が弁開方向に移動したときに流体圧で位置ずれを起こす可能性がある。これらのことから、シール性が不安定になってボール状弁体と弁座用Oリングとの間から漏れを生じるおそれがある。
【0007】
凹状部に収納されたOリングの上からボール状弁体を重ねてシールしているため、これらOリングとボール状弁体とを合わせたチャッキ弁機構の高さが大きくなり、一斉開放弁全体が大型化するという問題も有している。
この構造により、圧力制御室の流体圧が増加するにつれてOリングが押しつぶされることとなり、Oリングに永久変形が生じたり消耗が激しくなってチャッキ弁機構のシール性の低下にもつながる。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、カートリッジ構造のチャッキ弁機構により簡便に組立てでき、安定した逆止シール機能を発揮することができる一斉開放弁並びにチャッキ弁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、主弁体により一次側流路、二次側流路及び圧力制御室が区画されている一斉開放弁であって、主弁体に一次側流路と圧力制御室とを連通する内部流路が設けられ、この内部流路の圧力制御室側に設けられた収容室に、一次側流路から圧力制御室への流体の流入のみを可能にするチャッキ弁が着脱可能に設けられ、チャッキ弁は、略円筒状で両端に開口を有するとともに内径の狭い部分を有するケーシングと、ケーシングにおける一方の開口の周縁付近に装着されたOリングと、内径の狭い部分とOリングとの間に収容されたボール弁体とを有し、収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、Oリングは、チャッキ弁を収容室に取り付けると収容室の内壁面に当接され、Oリングによりケーシングと内壁面との境界部分がシールされるようにした一斉開放弁である。
【0011】
請求項2に係る発明は、Oリングは、ケーシングの内周に形成された装着溝に嵌め込まれている一斉開放弁である。
【0012】
請求項3に係る発明は、ケーシングの内部に、ボール弁体をOリングに向けて付勢する付勢手段を設けた一斉開放弁である。
【0013】
請求項4に係る発明は、チャッキ弁が主弁体の内部流路に設けた収容室内に着脱可能に装着されたチャッキ弁構造であって、チャッキ弁が、略円筒状で両端に開口を有するとともに内径の狭い部分を有するケーシングと、ケーシングにおける一方の開口の周縁付近に装着されたOリングと、内径の狭い部分とOリングとの間に収容されたボール弁体とを有し、収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、Oリングは、チャッキ弁を収容室に取り付けると収容室の内壁面に当接され、Oリングによりケーシングと内壁面との境界部分がシールされるようにしたチャッキ弁構造である。
【0014】
請求項5に係る発明は、ケーシングの内部に、ボール弁体をOリングに向けて付勢する付勢手段を設けたチャッキ弁構造である。
請求項6に係る発明は、主弁体により一次側流路、二次側流路及び圧力制御室が区画されている一斉開放弁であって、主弁体に一次側流路と圧力制御室とを連通する内部流路が設けられ、内部流路の圧力制御室側に設けられた収容室に、一次側流路から圧力制御室への流体の流入のみを可能にするチャッキ弁が着脱可能に設けられ、チャッキ弁は、略円筒状で両端に開口を有するケーシングと、ケーシング内に収容されたボール弁体と、ボール弁体がケーシングの一方の開口からの脱落することを防止するように一方の開口の周縁付近に装着されたOリングと、を有し、収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、Oリングは、チャッキ弁を収容室に取り付けると内部流路へのチャッキ弁の組付け方向で内部流路の内壁面に当接してチャッキ弁と内壁面との境界部分がシールされるようにした一斉開放弁である。
請求項7に係る発明は、チャッキ弁が主弁体の内部流路に設けた収容室内に着脱可能に装着されたチャッキ弁構造であって、チャッキ弁は、略円筒状で両端に開口を有するケーシングと、ケーシング内に収容されたボール弁体と、ボール弁体がケーシングの一方の開口からの脱落することを防止するように一方の開口の周縁付近に装着されたOリングと、を有し、収容室に対して着脱可能なカートリッジとして構成され、Oリングは、チャッキ弁を収容室に取り付けると内部流路へのチャッキ弁の組付け方向で内部流路の内壁面に当接してチャッキ弁と内壁面との境界部分がシールされるようにしたチャッキ弁構造である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、カートリッジ一体構造に組み込まれたチャッキ弁を予め設けることにより、このチャッキ弁を主弁体に装着するだけで主弁体にチャッキ弁機構を簡便に組み込み可能である。また、チャッキ弁機構が一体構造化されているため、各部品の組込み精度を高くして安定した逆止シール機能を発揮しつつ、チャッキ弁を通して一次側流路から圧力制御室に流体を補充し、且つ、圧力制御室から一次側流路への流体の逆流を確実に阻止可能となる。
【0016】
しかも、ケーシングの開口部付近にOリングの装着のみでカートリッジ一体構造のチャッキ弁を設け、このチャッキ弁を、ケーシングと収容室との間にOリングをシール状態で挟み込むようにしつつ主弁体に装着できる。これにより、ケーシングと収容室との間にOリングを位置規制してこのOリングの脱落や位置ずれを確実に防止し、このOリングでボール弁体の内部流路側への脱落を防止した状態で、ボール弁体をOリングに当接シールさせて逆止めシール機能を発揮させることができる。このように、カートリッジ一体構造により、チャッキ弁を簡便に主弁体に組み込むことができるほか、Oリング及びボール弁体を所定位置に配置できるためシール性能も向上する。
また、Oリングが、カートリッジ一体構造における蓋の役割と逆止めシールの役割とを兼ねることができるため、全体高さを最小に抑えて小型化を図ることができ、Oリングの内径側が流路となることで大流量を確保することもできる。カートリッジ一体構造の組み込みの際にOリングのつぶし量も容易に調整できるため、必要以上にOリングが押しつぶされることがなく、Oリングの永久変形や消耗、破損を防いでシール性の低下を抑えることが可能になる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、Oリングを装着溝に嵌め込むことによりカートリッジ一体構造のチャッキ弁を簡便に組み立てでき、しかも、Oリングの脱落を防止してボール弁体の抜け出しを確実に阻止できる。Oリングを簡単に着脱でき、内部のメンテナンスを容易に実施可能となる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、ボール弁体をケーシングの開口部側に付勢することで、ケーシングをあらゆる向きに配置した場合にも無負荷の状態ではボール弁体がOリングに接して保持されるので、逆止シール機能を発揮し易くなる。このため、縦方向の流路に設ける場合は勿論のこと、横向きや斜めに配置した場合にも良好なチャッキ弁機能を発揮できる。
【0019】
請求項4に係る発明によると、チャッキ弁機能を担うボール弁体及びOリングを予めカートリッジ一体構造に組み込み、このチャッキ弁を所定のボデー内に構成できるため、ボール弁体やOリングが分離することを防止しつつ簡便に設けることができる。これにより、流路の任意の場所に容易にチャッキ弁を設けることが可能となり、配管設計におけるチャッキ弁の配置の自由度を高めることができる。ケーシングの開口部付近に、Oリングの装着のみによりチャッキ弁をカートリッジ一体構造に設け、このチャッキ弁を、ケーシングとボデーの収容室との間にOリングをシール状態に挟み込みつつ装着できる。これにより、Oリングを位置規制してその脱落や位置ずれを確実に防止し、このOリングでボール弁体の入口側流路側への脱落を防止した状態でOリングに当接シールさせて逆止めシール機能を発揮させることができる。このように、カートリッジ一体構造によりチャッキ弁を簡便に所定のボデーの内部流路に組み込むことができるほか、Oリング及びボール弁体を所定位置に配置できるためシール性能も向上する。
また、Oリングがカートリッジ一体構造における蓋の役割と逆止めシールの役割とを兼ねることができるため、全体高さを最小に抑えて小型化を図ることができ、Oリングの内径側が流路となることで大流量を確保することもできる。カートリッジ一体構造の組み込みの際にOリングのつぶし量も容易に調整できるため、必要以上にOリングが押しつぶされることがなく、Oリングの永久変形や消耗、破損を防いでシール性の低下を抑えることが可能になる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、ボール弁体を一方の開口部側に付勢することで、ケーシングをあらゆる向きに配置した場合にも無負荷の状態ではボール弁体がOリングに接して保持されるので、逆止シール機能を発揮し易くなる。このため、縦方向の流路に設ける場合は勿論のこと、横向きや斜めの流路に設けた場合にも良好なチャッキ弁機能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明における一斉開放弁の実施形態を示す縦断面図である。
【
図5】
図1の一斉開放弁の弁開状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明における一斉開放弁並びにチャッキ弁構造を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一斉開放弁の実施形態の縦断面図、
図2は、
図1におけるA部拡大断面図を示している。
図3は、チャッキ弁の斜視図を示している。
【0023】
図に示した一斉開放弁(以下、弁本体1という)は、図示しないスプリンクラー設備や泡消火設備などの消火設備に設けられ、送水元弁として常時は閉止状態にあり、火災時等には自動制御によりスプリンクラーヘッドから同時に放水するための開放弁として動作するように設けられる。弁本体1には、火災報知機と連動する自動式と人為的な手動式とがあり、本実施形態では、感知ラインの減圧による圧力信号で自動的に作動する、いわゆる減圧型と呼ばれる自動式の場合を説明する。
【0024】
図1において、本発明における弁本体1は、ボデー2、ピストン状の主弁体3、チャッキ弁4、シートリング5、円筒保持体6、バタフライ弁7を有している。
【0025】
ボデー2は、鋳造により内部に隔壁2aを有する中空状に形成され、この隔壁2aには連通穴10が穿孔されている。ボデー2内部は、この隔壁2aにより一次側流路11と二次側流路12とに仕切られており、一次側流路11と二次側流路12とは、連通穴10により連通されている。連通穴10の上面外周縁には、シートリング5装着用の弁座面13が設けられる。
【0026】
ボデー2内において、主弁体3の一次側に対して背面の上部側には、圧力制御用の円筒穴状の圧力制御室14が設けられ、この圧力制御室14の上部には拡径状の係止段部15が形成される。圧力制御室14には円筒保持体6が装着され、この円筒保持体6の内周側に主弁体3が昇降動自在な状態で内挿される。この主弁体3により、一次側流路11、二次側流路12及び圧力制御室14が区画されている。
【0027】
ボデー2の両端側には配管フランジ16、16が設けられ、この配管フランジ16を介して、一次側流路11、二次側流路12に図示しない外部の一次側配管、二次側配管がそれぞれ接続される。図示しないが、一次側配管には消化液源、例えば消化液タンクや貯水槽に接続され、この消火液源から消火剤(流体)が一斉開放弁側に供給可能となっている。一方、二次側配管にはスプリンクラーヘッドや泡ヘッドが設けられる。
【0028】
圧力制御室14には、後述の蓋体20を介して外部流路である感知ライン21が接続され、この感知ライン21には図示しない感知ヘッドが設けられ、この感知ヘッドを介して火災が感知可能に設けられる。
【0029】
圧力制御室14の係止段部15付近には開口部22が設けられ、この開口部22に圧力制御室14を閉鎖する蓋体20が嵌め込みにより取付けられる。蓋体20の内部には、感知ライン21との接続用の接続流路23が形成されている。
【0030】
圧力制御室14は、接続流路23を介して感知ライン21と連通されることで、感知ヘッドの火災感知により圧力変化するように設けられ、この圧力変化に応じて主弁体3が昇降動し、この主弁体3のシートリング5への接離により連通穴10を開閉して、一次側流路11と二次側流路12との間が弁開或は弁閉状態に動作するようになっている。
【0031】
主弁体3は、有底の略筒状に形成され、円筒保持体6の内側にシール用Oリング24を介して昇降動可能に装着される。この場合、主弁体3は、圧縮スプリング25により弁座面13側に弾発付勢するように蓋体20に装着され、通常時にボデー2に対して下降して弁閉状態となるように設けられている。その際、主弁体3の底面3aがシートリング5に当接シールする。
【0032】
主弁体3には、一次側流路11と圧力制御室12とを連通する内部流路30が設けられ、この内部流路30の一部に収容室31が形成される。本例における収容室31は、内部流路30の圧力制御室12側に設けられ、主弁体3の上面中央付近に形成され、この収容室31の内部流路30との境界側に底面31aが設けられ、この底面31aには開口縁部32が形成されている。
【0033】
収容室31には、カートリッジ一体構造に組み込まれたチャッキ弁4が着脱可能に取付けられ、このチャッキ弁4により一次側流路11から圧力制御室14への流体の流入のみが可能になっている。収容室31を主弁体3の上面中央付近に設けることで、主弁体3への加工が容易となる。ただし、同様の機能が奏される限り、収容室31は、内部流路30の途中の位置に設けられていてもよく、また、主弁体3の上面中央付近ではなく、中央から外周側にずれた位置に設けられていてもよい。
【0034】
図2~
図4において、チャッキ弁4は、両端に開口を有する略円筒状のケーシング40と、ボール弁体41と、Oリング42と、ばね43とを有し、これらが組み合わされた状態で収容室31に装着されている。
【0035】
ケーシング40の内部には流路44が貫通形成され、この流路44内にボール弁体41が昇降動可能な状態で収容されている。ボール弁体41は、流路44内において、ケーシング40の一次側開口部40a側の部分に収容されており、この一次側開口部40aは、ケーシング40の入口側に位置する入口側流路である内部流路30に対向し、この内部流路30とつながるように設けられる。流路44におけるボール弁体41が収容される部分の内径は、ボール弁体41の径よりもわずかに大きくされている。これにより、ボール弁体41が収容されている部分でのゴミ詰まり等が起こらないようになっている。ケーシング40の一次側開口部40a付近の下部側内周には装着溝45が形成され、この装着溝45には外周側に向けて複数の切欠き部46が形成されている。
【0036】
Oリング42は、ケーシング40にボール弁体41が収容された状態で装着溝45に嵌め込まれ、これによってボール弁体41の一次側開口部40aからの脱落が防止されたカートリッジ一体構造のチャッキ弁4が構成される。このようにOリング42が装着溝45に保持されることで、チャッキ弁4単体の状態でもボール弁体41の落下が防止される。Oリング42は、切欠き部46を通して図示しないピン状の治具でケーシング40の外側から抜き出すことで、取り外し可能となっている。切欠き部46は、本例ではケーシング40に対して3箇所に設けられているが、任意の数により設けることができる。
【0037】
ケーシング40内部のボール弁体41との間には、コイルスプリングからなるばね43が装着される。ばね43は、流路44におけるボール弁体41が収容されている部分よりも縮径された部分に嵌まるように取り付けられている。このばね43の弾発力によりボール弁体41がケーシング40の一次側開口部40a側に付勢され、このボール弁体41にOリング42に着座する方向の力が常時加わるようになっている。
【0038】
図4(a)においては、チャッキ弁4の中央縦断面図、
図4(b)においては、
図4(a)の中央縦断面図を示している。図に示すように、ケーシング40内の流路44の外周側には、複数の貫通路47が流路44と連通して形成されている。弁開時に内部流路30と圧力制御室14とが連通する際には、貫通路47も同時に連通することで一次側流路11から圧力制御室14への流量が確保される。
【0039】
ケーシング40の外周にはオネジ部50が形成され、一方、収容室31の当該位置にはオネジ部50と螺合するメネジ部51が形成されている。ケーシング40の上面側には六角穴部48が形成され、ケーシング40は、この六角穴部48を介して図示しない六角レンチにより締め込み可能とされ、オネジ部50とメネジ部51との螺合により収容室31内の所定位置に固定される。
【0040】
ケーシング40の締め込みを調整することで、Oリング42の適度なつぶし量を得ることができる。Oリング42の好適なつぶし量は特に限定されないが、10~15%の範囲であると、チャッキ弁4として動作する際に良好な封止力が得られる。ケーシング40の締め込みは、Oリング42のつぶし量を見ながら適度に行えばよい。例えば、ケーシング40の装着溝45の深さを調整するなどにより、ケーシング40の先端が収容室31の底面31aに突き当たったときに好適なOリング42のつぶし量が得られるようにすることができる。このようにすれば、ケーシング40の必要な締め込み量の把握が容易となり、また一定のOリング42のつぶし量が得られるようになる。
【0041】
ケーシング40(チャッキ弁4)の締め込み後には、チャッキ弁4は、Oリング42が収容室31の底面31aと当接するようにこの収容室31に収容され、このOリング42によりケーシング40と底面31aとの境界部分とをシールさせるようにしている。
さらに、チャッキ弁4内に収容されたボール弁体41が、その弁閉時には開口縁部32に接触可能に設けられている。
【0042】
ボール弁体41が弁閉時に開口縁部32に接触するように設けられることで、ボール弁体41はケーシング40内において最大限一次側開口部40a側に寄せられることになる。その結果、カートリッジ一体構造を有するチャッキ弁4の高さを最小限とすることができるほか、ボール弁体41のサイズに対して開口縁部32の径を大きくすることができ、大きな流量を確保し易い。また、圧力制御室14からの圧力(逆圧)がボール弁体41に過大に加わった場合であっても、開口縁部32がストッパとして機能するので、Oリング42が過剰に押し潰されることがなく、このOリング42の劣化も防ぐことができる。
【0043】
図1において、シートリング5は、鋼材等により環状に形成された芯金52がゴム材料からなる軟質材53で被覆されて設けられる。このシートリング5は、ボデー2の弁座面側に配置され、円筒保持体6によりボデー2内の所定位置に装着される。
【0044】
円筒保持体6は、円筒状の円筒部55と、この円筒部55から垂下形成された脚部56とを有している。円筒部55は、圧力制御室14内に嵌合する大きさの内径に設けられ、この円筒部55の上端には、係止段部15に係止する環状鍔部57が形成されている。脚部56は3箇所に形成され、弁開時にはこれら脚部56同士の間を流体が通過可能に設けられる。脚部56の下端には、切欠き状の係合段部58が形成され、この係合段部58にシートリング5の外周側を嵌め込んだ状態で円筒保持体6が開口部22側から圧力制御室14に挿入される。このとき、環状鍔部57が係止段部15に係止することで円筒保持体6が高さ方向に位置決めされ、弁座面13にシートリング5が所定圧力で装着される。
【0045】
上述した構造により、主弁体3の弁閉状態で一次側流路11が開状態であるときには、この一次側流路11から内部流路30を介してチャッキ弁4内に流体が流れ込もうとし、その流体圧によりボール弁体41がOリング42から離れる方向に流路44内を上昇し、チャッキ弁4が弁開状態となる。これにより、一次側流路11からチャッキ弁4を通して圧力制御室14に流体が流れ込み、圧力制御室14が流体で満たされた状態となる。
【0046】
一方、ボール弁体41には、その自重及びばね43の弾発付勢力でOリング42に着座する方向の力が加わっていることで、一次側流路11側から流体圧が加わらないときにはボール弁体41がOリング42に接触し、これらによりシール部52が構成される。このように弁閉状態が維持され、圧力制御室14から一次側流路11への流体の通過(逆流)が阻止される。
【0047】
図1、
図5において、バタフライ弁7は、ボデー2側への開放弁として一次側流路11及び二次側流路12の配管フランジ16付近に設けられる。バタフライ弁7は、操作用ステム60とこのステム60に接続されたジスク61とを有し、ステム60の回転操作により、ジスク61を介して一次側流路11、二次側流路12がそれぞれ開閉可能になっている。弁本体1の作動試験等に応じてこのバタフライ弁6が適宜開閉操作され、弁本体1を動作可能な状態にする場合には、一、二次側の双方のバタフライ弁7、7を弁開状態とすればよい。
【0048】
上記実施形態では、チャッキ弁4を一斉開放弁(弁本体1)に設ける場合を説明したが、一斉開放弁以外のバルブや或はパイプなどの配管部材、又は各種の配管機器に上述したチャッキ弁構造を設けることもできる。
【0049】
何れの場合にも、前述した場合と同様に、チャッキ弁が所定のボデーの内部流路に設けた収容室に着脱可能に装着された構造とし、このチャッキ弁は、両端に開口を有する略円筒状のケーシング内にボール弁体が収容された状態で、ケーシングの一方の開口部付近にOリングが装着されることで、このOリングにより一方の開口部からのボール弁体の脱落が防止されたカートリッジ一体構造に構成される。
このとき、チャッキ弁は、Oリングが収容室の内壁面に当接するように当該収容室に収容され、このOリングによりケーシングと内壁面との境界部分とをシールさせるようにすればよい。
【0050】
さらに、前記実施形態と同様に、ケーシングの内部のボール弁体との間にコイルスプリングからなるばねを装着し、このばねの弾発力によりボール弁体を一方の開口部側に付勢するようにしてもよい。
【0051】
なお、チャッキ弁構造を構成する場合、必ずしもケーシング40の一次側開口部40aが
図1のような下向きとなるように配置する必要はなく、ばね43でボール弁体41を弁閉方向に弾発付勢させたときにボール弁体41の脱落をOリング42で防ぐ構造であれば、あらゆる向きのチャッキ弁構造を設けることができる。すなわち、前述した「ボール弁体の落下」とは、一次側流路11及び二次側流路12が水平方向の一斉開放弁の場合を述べたものであり、ボール弁体41の脱落方向は、落下方向に限られることはない。このことから、チャッキ弁構造を設けたバルブやパイプなどの配管部材や各種の配管機器を、縦配管や横配管、斜め配管などの各種向きに取付け可能になる。
【0052】
また、ばね43は、コイルスプリング以外であってもよく、各種態様のスプリングを用いることができる。さらには、ボール弁体41をチャッキ弁4の弁閉方向に付勢可能であれば、その付勢手段はばねに限らず各種の態様のものを用いることもできる。
【0053】
続いて、上述した弁本体1の動作を述べる。
図1において、通常時には、一、二次側のバタフライ弁7が弁開状態とされ、一次側流路11と一次側配管、二次側流路12と二次側配管がそれぞれ連通した状態にある。
主弁体3は、圧縮スプリング25の弾発力によりシートリング5側に付勢され、シートリング5の両面が主弁体底面3aと弁座面13にそれぞれ密着してシール性が維持される。これにより、主弁体3により一次側流路11と二次側流路12とが遮断され、弁閉状態が維持される。
【0054】
この状態において、一次側配管から一次側流路11に流体が供給されると、この流体がそれまでOリング42とシール状態にあったボール弁体41を押圧し、このボール弁体41を上昇させながら内部流路30から圧力制御室14内に流れ込む。その結果、圧力制御室14が流体で満たされ、さらに、圧力制御室14から感知ライン21を介して感知ヘッドまでの経路に流体が流れ込み、これらも流体で満たされることで火災を感知可能な待機状態となる。
【0055】
感知ヘッドが火災を感知し、放水がおこなわれた場合には、感知ライン21を介して圧力制御室14に充填されていた流体が減少することで、圧力制御室14内の圧力が低下する。これにより一次側流路11内の水圧が、圧力制御室14内の圧力及び圧縮スプリング25の弾発力による力を上回ることになり、これらの圧力差により、
図5に示すように主弁体3が上方へと押し上げられる。このため主弁体3とシートリング5との間の流路から一次側流路11から二次側流路12へと流体が流入し、二次側流路12から二次側配管に流体が供給され、二次側配管に接続されたスプリンクラーヘッドや泡ヘッドから消火用の放水がおこなわれる。
【0056】
次いで、本発明の一斉開放弁並びにチャッキ弁構造の上記実施形態における作用を説明する。
図1において、主弁体3の一次側流路11と圧力制御室14とを連通する内部流路30にカートリッジ一体構造に組み込まれたチャッキ弁4を装着し、このチャッキ弁4により一次側流路11から圧力制御室14への流体の流入のみを可能に設けた構成としているので、このユニット化したチャッキ弁4を主弁体3に一体に装着できる。しかも、チャッキ弁4を主弁体3にねじ込むだけで手間を要することなく短時間で簡便に取付けできる。チャッキ弁4を着脱可能に設けていることで、主弁体3から容易に取外してメンテナンスや交換も可能になる。
【0057】
ケーシング40、ボール弁体41、Oリング42、ばね43を組込んでカートリッジ一体構造のチャッキ弁4を構成していることで高い組立て精度を確保でき、ボール弁体41とOリング42とのシール時における当たりを一定に保持して安定した逆止シール機能を発揮する。この場合、チャッキ弁4は、Oリング42が収容室31の底面31aと当接するように収容室31に収容され、Oリング42によりケーシング40と底面31aとの境界部分とをシールしているので、Oリング42を位置決めした状態で高精度に装着できる。これにより、圧力制御室14から一次側流路11への流体の流入を確実に防止しつつ、一次側流路11から圧力制御室14に流体を補充可能となる。
【0058】
チャッキ弁4のねじ込み後には、Oリング42が一定の押圧力で収容室31の底面31aに押し付けられることで、チャッキ弁4と主弁体3とのシール性を確保している。
チャッキ弁4の弁閉時において、ボール弁体41が収容室31の開口縁部32に接触するようにしているので、チャッキ弁4全体の組付け高さを小さくし、主弁体3並びに弁本体1の大型化を防ぐことができる。
【0059】
Oリング42をケーシング40の装着溝45への嵌め込みにより装着しているので、Oリング42の着脱がワンタッチであり、チャッキ弁4の組立て或は分解が簡単になる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 弁本体
2 ボデー
3 主弁体
4 チャッキ弁(カートリッジ)
11 一次側流路
12 二次側流路
14 圧力制御室
30 内部流路(入口側流路)
31 収容室
31a 底面
32 開口縁面
40 ケーシング
40a 一次側開口部
41 ボール弁体
42 Oリング
43 コイルスプリング(ばね)
44 流路
45 装着溝
70 シール部