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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び防振用ゴム部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240311BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240311BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240311BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20240311BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/04
C08K9/06
C08L7/00
C08L9/00
F16F1/36 C
F16F15/08 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019131717
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021017455
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000136354
【氏名又は名称】株式会社フコク
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大坪 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛
(72)【発明者】
【氏名】片貝 勇人
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119095(JP,A)
【文献】特開2004-250685(JP,A)
【文献】特開平05-239289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/16
C08K 3/04
C08L 7/00
C08L 9/00
C08K 9/06
F16F 15/08
F16F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、及びエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマー、
(b)90m/g以上、410m/g以下のBET法による比表面積を有する乾式シリカを表面処理した乾式シリカ、
(c)天然ゴム(NR)、及びイソプレンゴム(IR)からなる群より選ばれる少なくとも一種のジエン系ゴム、及び
(d)ヨウ素吸着量が7mg/gを超え、140mg/g未満であり、DBP吸油量が44cm/100gを超え、180cm/100g以下であるカーボンブラック
を含み、
前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)の合計100重量部に対して前記ジエン系ゴム(c)が30重量部未満であり、
前記ポリマー(a)100重量部に対して前記表面処理された乾式シリカ(b)と前記カーボンブラック(d)の合計が30重量部以上、120重量部未満である
ゴム組成物。
【請求項2】
(a)エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、及びエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマー、
(b)90m/g以上、410m/g以下のBET法による比表面積を有する乾式シリカを表面処理した乾式シリカ、及び
(c)天然ゴム(NR)、及びイソプレンゴム(IR)からなる群より選ばれる少なくとも一種のジエン系ゴム
を含み、
前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)の合計100重量部に対して前記ジエン系ゴム(c)が30重量部未満である
ゴム組成物。
【請求項3】
(a)エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、及びエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマー、
(b)90m/g以上、410m/g以下のBET法による比表面積を有する乾式シリカを表面処理した乾式シリカ、及び
(d)ヨウ素吸着量が55mg/g以上、140mg/g未満であり、DBP吸油量が44cm/100gを超え、180cm/100g以下であるカーボンブラック
を含み、
前記ポリマー(a)100重量部に対して前記表面処理された乾式シリカ(b)と前記カーボンブラック(d)の合計が30重量部以上、120重量部未満である
ゴム組成物。
【請求項4】
前記ポリマー(a)としてエチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)を、前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)の合計100重量部に対して75重量部以上含む、
請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記表面処理された乾式シリカ(b)は、シランカップリング剤、トリメチルシリル化剤、ジメチルシリル化剤、ジメチル(ポリ)シロキサン処理剤、アルキルシリル化剤、ステアリン酸及びそれら塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の表面処理剤により表面処理したものである
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)との重量比((a)/(c)=y)が、70/30<y≦95/5
を満たす
請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記カーボンブラック(d)と前記表面処理した乾式シリカ(b)との重量比((d)/(b)=x)が、
50/50<x≦92/8
を満たす
請求項1又は3に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のゴム組成物を架橋剤により硬化成形した防振用ゴム部材。
【請求項9】
エアーコンプレッサー用トーショナルダンパー用、原動機用カップリング用、またはエキゾースト用マフラーハンガー用の請求項8に記載の防振用ゴム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下にて使用されるゴム組成物及び防振用ゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ジエン系ゴムと、充填剤としてカーボンブラックとシリカとを含有し、且つ、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=80/20~20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物が開示されている。特許文献1によれば、当該防振ゴム組成物は、従来技術では適用が困難であった小粒径カーボンを用い、これを一部シリカに置換することにより動倍率の低減化と高い耐久性とを実現させたものである、とされている。
【0003】
特許文献2には、エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体ゴム、シリカ、シランカップリング剤、および硫黄を含有し、前記エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体ゴムは、エチレン含有量が50重量%以上、かつムーニー粘度(ML1+4(125℃))が65以上であり、前記エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体ゴムを含むゴム成分の全量を100重量部としたとき、シリカの配合量が12~24重量部かつ硫黄の配合量が0.75~2.5重量部であることを特徴とする防振ゴム用ゴム組成物が開示されている。特許文献2によれば、当該防振ゴム用ゴム組成物は、低動倍率で防振性能に優れ、かつ高温時の耐クリープ性に優れた防振ゴム用ゴム組成物である、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-119873号公報
【文献】特開2018-95810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、天然ゴムやポリイソプレンゴムに代表されるジエン系ゴムは、ポリマー自体が高い強度、伸びを示す強靭なゴムである。近年高まる過酷な熱環境においてジエン系ゴムは長期的な耐熱性に劣る為、その適用には限界がある。耐熱性に優れるゴムとしてはエチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)に代表される非ジエン系ゴムがある。しかしながら、非ジエン系ゴムは、天然ゴムやポリイソプレンゴムと比較してポリマー自体の強度が低く、特許文献1に記載の構成を非ジエン系ゴムに適用しても十分な効果は得られない。
エチレン-プロピレン共重合ゴムの強度を高める場合、エチレン量を多くする、エチレンブロック単位を長くするといった方法が考えられるが、高温環境(例えば、120℃)においてはエチレンの結晶が融解する事から室温時と比較して極端に強度が低下するといった問題もある。
【0006】
さらに、特許文献2に記載のエチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体ゴムは、高温環境(例えば、120℃)において、エチレンの結晶が融解する事から室温時と比較して極端に強度が低下するといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、先行技術を検討した結果、特に、高温時において高い耐久性を得る為には、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)に対するシリカ配合量が不十分であり、また、シリカ単独では補強性が不十分であることを見出した。
本発明は、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)に対して、表面処理が施された乾式シリカと、カーボンブラック及び/又はジエン系ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、且つ所定の添加量、配合比で混合することにより、高温時(例えば、120℃)においても疲労耐久性に優れた防振ゴムを実現したものである。
【0008】
本発明は以下を包含する。
[1] (a)エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、及びエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマー、
(b)表面処理した乾式シリカ、並びに
(c)天然ゴム(NR)、及びイソプレンゴム(IR)からなる群より選ばれる少なくとも一種のジエン系ゴム、及び/又は
(d)ヨウ素吸着量が7mg/gを超え、140mg/g未満であり、DBP吸油量が44cm/100gを超え、180cm/100g以下であるカーボンブラック
を含み、
前記ジエン系ゴム(c)が存在するとき、前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)の合計100重量部に対して前記ジエン系ゴム(c)が30重量部未満であり、
前記カーボンブラック(d)が存在するとき、前記ポリマー(a)100重量部に対して前記表面処理された乾式シリカ(b)と前記カーボンブラック(d)の合計が30重量部以上、120重量部未満である
ゴム組成物。
[2] 前記ポリマー(a)としてエチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)を、前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)の合計100重量部に対して75重量部以上含む、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 前記表面処理された乾式シリカ(b)は、シランカップリング剤、トリメチルシリル化剤、ジメチルシリル化剤、ジメチル(ポリ)シロキサン処理剤、アルキルシリル化剤、ステアリン酸及びそれら塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の表面処理剤により表面処理したものであり、前記表面処理剤により表面処理した乾式シリカのBET法による比表面積は90m/g以上である[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4] 前記ジエン系ゴム(c)が存在し、前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)との重量比((a)/(c)=y)が、70/30<y≦95/5を満たす[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のゴム組成物。
[5] 前記カーボンブラック(d)が存在し、前記カーボンブラック(d)と前記表面処理した乾式シリカ(b)との重量比((d)/(b)=x)が、50/50<x≦92/8を満たす[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のゴム組成物。
[6] [1]乃至[5]のいずれか一項に記載のゴム組成物を架橋剤により硬化成形した防振用ゴム部材。
[7] エアーコンプレッサー用トーショナルダンパー用、原動機用カップリング用、またはエキゾースト用マフラーハンガー用の[6]に記載の防振用ゴム部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るゴム組成物を硬化成形して得られるゴム部材は、高温下においても優れた疲労耐久性を発揮するので、防振用ゴム部材、特にエアーコンプレッサー用トーショナルダンパー用、あるいは原動機用カップリング用、またはエキゾースト用マフラーハンガー用の防振用ゴム部材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るゴム組成物は、特定のポリマー(a)、表面処理された乾式シリカ(b)、並びにジエン系ゴム(c)及び/またはカーボンブラック(d)を含み、前記ジエン系ゴム(c)が存在するとき、前記ポリマー(a)と前記ジエン系ゴム(c)の合計100重量部に対して前記ジエン系ゴム(c)が30重量部未満であり、前記カーボンブラック(d)が存在するとき、前記ポリマー(a)100重量部に対して前記表面処理された乾式シリカ(b)と前記カーボンブラック(d)の合計が30重量部以上、120重量部未満であるゴム組成物である。
本発明に係るゴム組成物に用いる材料の種類、及びそれらの配合割合等について以下に順に説明する。
【0011】
<ポリマー(a)>
本発明に係るゴム組成物には、ゴム成分として、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、及びエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むポリマー(a)が含まれる。エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、及びエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)としては、いずれも公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。これらのエチレン含有量は通常40乃至80%程度であり、ジエン含有量は通常0乃至15%程度である。また、油展、非油展を問わない。これらは、単独で用いてもよく、あるいは2種以上をブレンドして用いてもよい。市販品として具体的には、EPM 0045(三井化学株式会社製EPM)、Keltan 2450(ランクセス株式会社製EPDM)、EBT K-9330M(三井化学株式会社製EBT)等が挙げられる。なお、これらに加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、下記ジエン系ゴム(c)以外のゴム、例えば、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等を配合してもよい。
【0012】
<表面処理された乾式シリカ(b)>
<<シリカ>>
本発明では乾式シリカを充填剤として配合する。シリカは製法により湿式シリカと乾式シリカに大別される。湿式シリカは液相反応により合成されるシリカであり、一般的にケイ酸ナトリウムと鉱酸(通常は硫酸)の中和反応により得られる。乾式シリカは気相反応により合成されるシリカであり、一般的に四塩化ケイ素を燃焼させることで得られる。シリカとしては乾式シリカが好ましく、特に90m/g以上、410m/g以下の窒素吸着比表面積(BET法)による比表面積を有するものが好ましく、175m/g以上、410m/g以下の比表面積を有するものがより好ましい。本発明による効果を損なわない限りにおいて、湿式シリカを、乾式シリカにブレンドして用いることもできる。BET法による窒素吸着比表面積が90m/g未満である場合、シリカ粒子が大きく、十分な補強効果が得られないために疲労耐久性に劣ることがある。
【0013】
<<表面処理剤>>
通常、シリカはシラノール基を有する親水性充填剤であり、シリカ同士の凝集性が高く、微粒子となるほどゴム中への分散が困難となってくる。このような場合、親水基を疎水化させることでシリカ同士の凝集性が低下し、疎水性であるゴムへの親和性が高くなることからシリカの分散が容易となる。このようなシリカの表面処理剤としては、トリメチルシリル化剤、ジメチルシリル化剤、アルキルシリル化剤、ジメチル(ポリ)シロキサン処理剤が挙げられる。具体的には、ジメチルジクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、シリコーンオイル等が挙げられる。また、市販品として具体的には、TSL8802(モメンティブ社製、ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0014】
また、上記シリカに対してシランカップリング剤を用いることができる。上記の表面処理剤と同じく、シリカ表面のシラノール基と反応させる事でシリカの凝集性を低下させることができ、カップリング反応によりゴムと強固な界面を形成させることができることから疲労耐久性が向上する。シランカップリング剤については特に制限はなく、一般的によく用いられるトリアルコキシメタクリロシラン、トリアルコキシビニルシラン、ビス-トリアルコキシスルフィドシラン等のシランカップリング剤を単独、もしくは2種以上併用することができる。市販品として具体的には、KBM-503(信越化学工業株式会社製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、Si75(エボニックインダストリーズAG社製)等が挙げられる。
【0015】
また、シリカ配合ゴムは混練時にシリカが混練装置のローターや壁面、ロールに張り付くことがあり、このような場合は高級脂肪酸、高級脂肪酸塩を用いると離型性が向上する。具体的にはステアリン酸及びその塩が挙げられ、これらはシリカ表面のシラノール基とも相互作用をもつと考えられ、表面処理剤として用いることができる。市販品として具体的には、ルナックSV-70(花王株式会社製、ステアリン酸)等が挙げられる。
【0016】
その他のシリカの表面処理剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N-プロピルトリメトキシシラン、N-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
前記シランカップリング剤の配合量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲であればよく、シリカの配合量に対して0.05~8質量%が好ましく、より好ましくは0.1~2質量%である。この配合量が0.05質量%未満であると、補強性向上効果を十分に発揮できないおそれがあり、8質量%より多く配合した場合は、シリカ近傍のポリマーの拘束が強すぎることによって返って疲労耐久性を悪化させるおそれがある。
【0018】
本発明に係るゴム組成物には、このようにして表面処理された乾式シリカ(b)が含まれる。本発明では、加工の過程で乾式シリカの表面処理が完了すれば足りるが、予め表面処理が施されたシリカを用いても良い。市販品として具体的には、いずれもエボニックジャパン株式会社製のAEROSIL RX972(BET比表面積:90~130m/g、ジメチルジクロロシラン処理)、AEROSIL R805(BET比表面積:125~175m/g、オクチルシリル化処理)、AEROSIL RY300(BET比表面積:110~140m/g、ジメチルポリシロキサン処理)、AEROSIL 300(BET比表面積:270~330m/g)、AEROSIL 380(BET比表面積:350~410m/g)等が挙げられる。
【0019】
<耐疲労性付与ポリマー及びフィラー>
本発明に係るゴム組成物には、ジエン系ゴム(c)、及び/またはヨウ素吸着量が7mg/gを超え、140mg/g未満であり、DBP吸油量が44cm/100gを超え、180cm/100g以下であるカーボンブラック(d)からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれる。
【0020】
以下に、ジエン系ゴム(c)及びカーボンブラック(d)それぞれを説明する。
<<ジエン系ゴム(c)>>
ジエン系ゴム(c)としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びこれらの変性ゴムが挙げられる。好ましくは、天然ゴム(NR)、及びイソプレンゴム(IR)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0021】
<<カーボンブラック(d)>>
本発明ではシリカに加え、カーボンブラックを充填剤として配合することで飛躍的に疲労耐久性が向上する。本発明で用いるカーボンブラックを物理化学特性で特定すると、ヨウ素吸着量が7mg/gを超え、140mg/g未満であり、DBP吸油量が44cm/100gを超え、180cm/100g以下であるカーボンブラックであり、好ましくはヨウ素吸着量が55mg/g以上、140mg/g未満であり、DBP吸油量が75cm/100g以上、180cm/100g以下であるカーボンブラックである。カーボンブラックとしては、公知のものを使用することができ、一般的にゴムによく用いられるファーネスブラックであるSAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF等が挙げられる。カーボンブラック製造時に生成する微細コークス粒やファーネスの耐火炉材のかけら、金属さびなどからなる粗粒子をグリッドというが、カーボンブラックは低グリッド品であることが好ましい。グリッド量が多いと強度の低下や疲労破壊の起点となるなどゴム部材の疲労耐久性に影響することがある。本発明では特にファーネス法により得られるISAFの低グリッド品を好適に用いることができる。カーボンブラックは、単独で用いてもよく、2種以上をブレンドしてもよい。
市販品として具体的には、シーストG-9H(東海カーボン株式会社製、ヨウ素吸着量:139mg/g、DBP吸収量:130cm/100g)、シーストG-600(東海カーボン株式会社製、ヨウ素吸着量:111mg/g、DBP吸収量:75cm/100g)、旭F-200GS(旭カーボン株式会社製、ヨウ素吸着量:55mg/g、DBP吸収量:180cm/100g)等が挙げられる。
【0022】
<<配合比>>
本発明に係るゴム組成物においては、上記各成分間の比率が重要である。
本発明に係るゴム組成物中に含まれる表面処理された乾式シリカ(b)の量は、ポリマー(a)100重量部に対して表面処理された乾式シリカ(b)が15重量部を超え、96重量部未満であり、好ましくはポリマー(a)100重量部に対して表面処理された乾式シリカ(b)が20重量部以上、90重量部以下である。
また、表面処理された乾式シリカ(b)/カーボンブラック(d)の重量比xは、不等式50/50<x≦92/8を満たす。
【0023】
ポリマー(a)にジエン系ゴム(c)を含む場合、ポリマー(a)とジエン系ゴム(c)との合計が100重量部のうち、ジエン系ゴム(c)は30重量部未満であることが好ましい。
また、ポリマー(a)/ジエン系ゴム(c)の重量比zが不等式70/30<z≦95/5を満たすことが好ましく、不等式75/25≦z≦95/5を満たすことがより好ましく、不等式75/25<z≦95/5を満たすことが最も好ましい。
【0024】
ポリマー(a)にカーボンブラック(d)を含む場合、ポリマー(a)100重量部に対して表面処理された乾式シリカ(b)とカーボンブラック(d)の合計が30重量部以上、120重量部未満であることが好ましい。
また、カーボンブラック(d)/表面処理された乾式シリカ(b)の重量比yは、不等式50/50<y≦92/8を満たすことが好ましく、不等式65/35<y≦83/17を満たすことがより好ましい。yがこれらいずれかの範囲を下回ると、カーボンブラックの併用による疲労耐久性向上効果が小さくなることがあり、逆に、これらいずれかの範囲を上回ると疲労耐久性が悪化することがある。
【0025】
<架橋剤>
本発明に係るゴム組成物には架橋剤を配合することができる。架橋剤の種類に特に制限はなく、ゴムが用いられる環境やゴムの組成に合わせて選定すれば良い。例えば、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)を用いる場合は過酸化物架橋剤を用い、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)やエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(EBT)に対しては硫黄や過酸化物架橋を用いる事ができる。架橋剤は1種もしくは2種以上を併用してもよい。架橋剤の添加量(2種以上の場合にはそれらの合計)については用いるポリマーによって異なるため、特に限定されない。大体の目安を示すと、ポリマー(a)100重量部に対して、硫黄であれば0.1~6質量部、好ましくは0.5~4質量部であり、過酸化物架橋剤であれば0.1~5質量部、好ましくは0.2~6質量部である。これらの範囲から逸脱した添加量を用いた場合は、得られる製品のゴムとしての性能が損なわれるおそれがある。また、架橋剤が多すぎる場合は、得られる製品の破断伸びの低下、疲労耐久性の低下が生じ易く、架橋剤が少なすぎる場合は、得られる製品の破断強度の低下、圧縮永久歪の悪化のおそれがある。市販品として具体的には、パーヘキサ25B(日本油脂株式会社製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン)、硫黄(鶴見化学工業株式会社製)、ノクセラーTT(大内新興化学工業株式会社製、テトラメチルチウラムジスルフィド)、ノクセラーCZ(大内新興化学工業株式会社製、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)等が挙げられる。
【0026】
<共架橋剤>
本発明に係るゴム組成物には共架橋剤を併用する事も可能であり、公知のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)やトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、エチレングリコールジメタクリレート(EG)、ジメタクリル酸亜鉛(MAAZn)等を単独あるいは2種以上ブレンドして用いることもできる。市販品として具体的には、サンエステルTMP(三新化学工業株式会社製、トリメチロールプロパントリメタクリレート)等が挙げられる。
【0027】
<老化防止剤>
本発明に係るゴム組成物には老化防止剤を配合することができる。老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、アミン-ケトン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などを挙げることができる。特に限定されるものではないが、本発明においてはイミダゾール系老化防止剤とアミン系老化防止剤のいずれか単独または両者の併用が好適である。これら老化防止剤の配合量はポリマー(a)100質量部に対し、通常0.1~10質量部、好ましくは0.5~3質量部である。市販品として具体的には、ノクラックCD(大内新興化学工業株式会社製、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)等が挙げられる。
【0028】
<オイル>
本発明に係るゴム組成物にはゴムの硬さ調整の為に軟化剤もしくは可塑剤を用いてもよく、軟化剤・可塑剤としては、公知のものを使用することができる。特に制限するものではないが、具体的には鉱物由来パラフィン系オイルやナフテン系オイル、合成パラフィン系オイル、セバシン酸系可塑剤等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。市販品として具体的には、PW-380(出光興産株式会社製、パラフィン系オイル)等が挙げられる。
【0029】
<その他添加剤>
本発明に係るゴム組成物にはゴムの架橋反応を活性化する架橋活性剤や架橋促進剤、加工性を改良する加工助剤を用いることができる。硫黄架橋の場合は、酸化亜鉛および加硫促進剤を用いることで架橋反応が活性化することが広く知られており、本発明においても適用可能である。また、加工助剤については目的に応じたものを選定すればよく、一般的によく知られている脂肪酸エステル類、脂肪酸アミド類、炭化水素類等を単独、もしくは2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
<高温下における疲労耐久性が向上する推定メカニズム>
本発明に係るゴム組成物を硬化成形して得られるゴム素材が、高温下においても優れた疲労耐久性を発揮するメカニズムに関しては、理論に縛られるわけではないが、以下のように推測している。
すなわち、ゴム組成物にシリカを単独で用いた場合は、ポリマーのマトリクス中にシリカが均一に分散した状態であり、外力によるストレスはマトリクス全体に均一に生じると思われる。この場合、応力が均一に分散されるために破断の開始点となる微小なクラック(ミクロボイド)は発生し難いものの、一度ミクロボイドが発生すると、もしくは潜在的欠陥が存在すると均質であるが故に亀裂の成長が早く、瞬間的に破断に至る。
これに対し、本発明のように、シリカとカーボンブラックを併用する場合には、ポリマーのマトリクス中にカーボンブラックによる不均一な構造が生じる。この場合、不均一部にはストレスが集中し易い事から破断の開始点となるミクロボイドは発生し易くなると思われる。しかしながら、局所的なミクロボイドが生じること、もしくはポリマー-カーボンブラック界面効果によりストレスが緩和され、亀裂の成長が抑制されると思われる。
【0031】
ここで言う界面効果としては、バウンドラバーによるストレスの緩和や界面のすべりが挙げられる。バウンドラバーとは、ポリマーのマトリクスと同種のポリマーではあるが、フィラー(例えば,カーボンブラック、シリカなど)とゴムの混練工程で生成する、分子運動性が異なるポリマーをいう。カーボンブラックによって生成されるバウンドラバーはカーボンブラック表面から遠ざかるにつれてポリマーの拘束度合いが小さくなる弾性率傾斜状態となっており、拘束が最も強い表面近傍ではガラス状態となると言われているが、少し離れたところでは拘束は強いものの、運動性の低いポリマーが存在する。この運動性の低いポリマー層は外力によってひずむことで、そのエネルギーを熱へと変換する。このようなメカニズムにより、ストレスが緩和され、疲労破壊を引き起こしにくくなると思われる。
【0032】
また、カーボンブラックと併用または単独で、ポリマーのマトリクスとは異種の、天然ゴム、イソプレンゴムのようなジエン系ゴムを配合することによっても同様の効果が期待できる。ジエン系ゴムのみをポリマーに配合した場合は、ストレスによりひずみが生じることでジエン系ゴム部が伸長配向結晶化し、これが亀裂の進展を抑制すると思われる。その結果、疲労耐久性が向上するものと思われる。
【0033】
一方で、ジエン系ゴムを多量添加した場合は、EPDMとの共架橋性が悪化するためにポリマー自体の強度が低下し、少なすぎると効果が得られにくい。また、カーボンブラックを多量添加した場合は、カーボンブラックの形成する不均一な構造体が微小な亀裂発生を生じやすいために疲労耐久性は低下する。逆にカーボンブラックが少なすぎると前記の効果が得られにくい。このためにジエン系ゴム、カーボンブラックいずれにおいても適正な配合量が存在すると考えられる。
【0034】
<本発明に係るゴム組成物の防振用ゴム部材への適用>
車載エアーコンプレッサー用トーショナルダンパーは、エンジンのクランクシャフトに取り付けられるダンパープーリーとベルトを介して連結されており、カーエアコンのON/OFF動作に合わせて作動する。ON時にはコンプレッサシャフトを回転させるためにトーショナルダンパーのプーリー部とトーショナルダンパー部が電磁石により合体し、負荷が発生する。この際の衝撃とベルトを介したエンジンの回転比変動による振動を吸収するのがゴムハブ部となる。この為、ゴムハブ部は回転、振動によって動的な捩り歪が生じており、繰り返し歪に対する耐性が必要となる。また、エンジン付近の製品となるため、高温(例えば、120℃)における耐熱性も必要となる。
【0035】
電動機用カップリングは、機械の軸と軸を連結し、動力を駆動側から従動側へスムーズに伝達する部品であり、動力を伝達すること以外にも振動を吸収して周囲の製品を守る役割がある。ゴムカップリングはゴムの弾性を利用して、衝撃や振動を減衰・吸収することができるため、モーター駆動時あるいは停止時の衝撃を緩和させることができる。従来は繰り返し歪に対する疲労耐性が必要であることから、電動機用カップリングは、天然ゴム製がよく用いられてきたが、近年取り付け環境温度の上昇から耐熱性が必要となっており、且つこのような環境における繰り返し歪に対しての疲労性向上が求められている。
また、マフラーハンガーは、エンジンで発生した排出ガスを排出するためのマフラーと車体とを連結する箇所に取り付けられる防振ゴムである。エンジンからの振動や車体から発生する振動を吸収する役割があり、マフラー近傍に取り付けられることから高温環境にて使用される。高温環境且つ振動による繰り返し歪がゴムに入力されるため、耐熱性と疲労耐性が求められる防振ゴムである。
【0036】
上記のとおり、本発明に係るゴム組成物を硬化成形して得られるゴム部材は、高温下においても優れた疲労耐久性を発揮するので、防振用ゴム部材、特にエアーコンプレッサー用トーショナルダンパー用、電動機用カップリング用あるいはエキゾースト用マフラーハンガー用の防振用ゴム部材として好適である。
【実施例
【0037】
以下に実施例、比較例を参照して本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<ゴム評価サンプルの製造方法>
混練槽容積600ccのラボプラストミルを用い、70℃にて原料ゴムを投入し、素練りを行った。その後にシリカ、シランカップリング剤、表面処理剤、カーボンブラック、老化防止剤、その他の添加剤を投入し、混練りを実施した。全体が均一に混合された後に、シリカとシランカップリング剤、表面処理剤を反応させるために160℃まで加温し、混練りを実施した。その後に材料の取り出しを行い、6インチロールにてゴム生地をまとめてシーティングし、24時間かけてゴム生地の冷却を行った。冷却されたゴム生地を6インチロールにて素練りし、その後に架橋剤、架橋促進剤、共架橋剤を添加し、混練を実施した。シーティングしたゴム生地を24時間かけて冷却を行った。
【0039】
(シート状テストピース作製方法)
架橋剤を含むゴム生地を厚み2mmのシート状金型に充填し、実施例1~9、21および比較例1~3については170℃で10分の圧縮成形を行った。実施例10~20、22および比較例4~8については180℃で10分の圧縮成形を行った後にオーブンにて温度150℃で6時間の熱処理を施した。その後、圧縮成形もしくは熱処理を行った後24時間室温にて冷却し、評価サンプルであるシート状ゴム部材を得た。
【0040】
(ディスク状テストピース作製方法)
架橋剤を含むゴム生地を厚み2mmのシート状金型に充填し、実施例1~9、21および比較例1~3については170℃で20分の圧縮成形を行った。実施例10~20、22および比較例4~8については180℃で20分の圧縮成形を行った後にオーブンにて温度150℃で6時間の熱処理を施した。その後、圧縮成形もしくは熱処理を行った後24時間室温にて冷却し、評価サンプルであるディスク状ゴム部材を得た。
【0041】
<評価方法>
実施した試験方法とその条件を下記に記載する。
【0042】
(硬さ)
・測定器:アスカー:デュロメータ硬さ試験器タイプA
・測定条件:JIS K6253に準拠。
【0043】
(引張強さ、伸び)
・測定器:株式会社島津製作所製AGS-X
・サンプル形状:JIS5号ダンベル(シート状)
・試験速度:500mm/min.(JIS K6251に準拠)
【0044】
(圧縮永久歪)
・試験方法:JIS K6262に準拠
・サンプル形状:ディスク状大型試験片
・試験条件:120℃×72h、25%圧縮
【0045】
(耐久性(伸長疲労耐久性))
・測定器:株式会社上島製作所製FT3103
・サンプル形状:JIS4号ダンベル(シート状)
・試験温度:120℃
・ひずみ:0~120%伸長
・試験速度:5Hz
【0046】
<総合判定方法>
防振ゴムにおいて重要特性である耐熱性(圧縮永久歪)、高温時の疲労耐久性(伸長疲労耐久性)の2つの側面から下記の基準にて総合的に判定した。
◎:破断時回数40万回以上、且つ圧縮永久歪60%未満
〇:破断時回数30万回以上、40万回未満、且つ圧縮永久歪60%未満
×:破断時回数30万回未満、もしくは圧縮永久歪60%以上
【0047】
なお、下記全ての表中における空欄部分は、配合量はゼロ(=配合していない)で
あることを示す。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】
【0048】
実施例1~3、比較例1~3はEPDMと天然ゴムのブレンド比率が異なる配合である。実施例1~3は優れた疲労性と圧縮永久歪を示すことがわかる。比較例1はEPDM単独の配合であり、圧縮永久歪は良好であるが著しく疲労性が乏しい。比較例2は天然ゴム単独の配合であり、優れた疲労性は示すが圧縮永久歪は著しく劣る。また、比較例3はEPDMと天然ゴムのブレンド比率が70/30であり、実施例1~3と比較して疲労性・圧縮永久歪が共に劣ることがわかる。これらのことから、EPDMと天然ゴムの比率は70/30よりも大きく95/5以下が良いことがわかる。
【0049】
実施例4はEPDMと合成ポリイソプレンゴムをブレンドした配合であり、実施例4の天然ゴムとのブレンド同様に疲労性、圧縮永久歪に優れることがわかる。
【0050】
実施例5はEPDMと天然ゴム、シリカ、カーボンブラックを含む配合であり、疲労性や圧縮永久歪に優れることがわかる。
【0051】
実施例1、6~9はEPDMと天然ゴムがブレンドされたポリマーにBET法による比表面積、表面処理剤が異なる乾式シリカを添加した配合である。いずれも疲労性に優れることがわかる。これらから、90m/g以上、410m/g以下のBET法による比表面積を有する乾式シリカにより、目的とする効果が得られることがわかる。
【0052】
実施例10~12、比較例4~6はEPDM単独で乾式シリカとカーボンブラックの配合比率が異なる配合である。実施例10~12は比較例4、5のように各フィラーを単独で用いた場合よりも著しく優れた疲労性を有することがわかる。比較例6は実施例10~12よりも疲労性に劣っていることがわかる。これより、乾式シリカとカーボンブラックの配合比率には適値があり、乾式シリカとカーボンブラックの配合比率が50/50より大きく92/8以下にて良好な疲労性が得られることがわかる。
【0053】
実施例12~16はEPDM単独で所定のカーボンブラックとBET法による比表面積、表面処理剤が異なる乾式シリカを併用した配合である。いずれも疲労性に優れることがわかる。これらから、90m/g以上、410m/g以下のBET法による比表面積を有する乾式シリカにより、目的とする効果が得られることがわかる。
【0054】
実施例12、17、18および比較例7はEPDM単独で所定の乾式シリカと併用するカーボンブラックについて、ヨウ素吸着量とDBP吸収量が異なるものを用いた配合である。実施例12、17、18にて優れた疲労性と圧縮永久歪を有することがわかる。これより、ヨウ素吸着量7mg/gを超え、140mg/g未満であり、DBP吸油量が44cm/100gを超え、180cm/100g以下であるカーボンブラックにより、目的とする効果が得られることがわかる。
【0055】
実施例19、20はポリマーにEPM、EBTを用いた配合である。いずれも実施例12同様に優れた疲労性と圧縮永久歪を示すことがわかる。
【0056】
実施例21はEPDM単独で所定の乾式シリカとカーボンブラックを添加し、硫黄および加硫促進剤を含む配合である。実施例12同様に硫黄架橋でも優れた疲労性を示すことがわかる。
【0057】
実施例22、比較例8はEPDM単独で乾式シリカとカーボンブラックを多く含む配合である。実施例22は優れた疲労性と60%未満の圧縮永久歪を示すが、比較例8のようにさらに多量に乾式シリカとカーボンブラックを添加した場合は、圧縮永久歪が60%以上となり、疲労性は悪化する傾向にある。よって、乾式シリカとカーボンブラックの合計添加量が120質量部数未満とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るゴム組成物を硬化成形して得られるゴム素材は、高温下においても優れた疲労耐久性を発揮するので、防振用ゴム部材、特にエアーコンプレッサー用トーショナルダンパー用、原動機用カップリング用、またはエキゾースト用マフラーハンガー用の防振用ゴム部材として好適である。