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特許7451109移動支援装置、制御装置、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】移動支援装置、制御装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240311BHJP
   G08B 21/06 20060101ALI20240311BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240311BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08B21/06
B60W40/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019151131
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021033507
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】武内 秀平
(72)【発明者】
【氏名】角野 彩
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 基博
(72)【発明者】
【氏名】三浦 嘉傑
(72)【発明者】
【氏名】岩片 孝司
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228280(JP,A)
【文献】特開2015-132997(JP,A)
【文献】特開2016-162015(JP,A)
【文献】特開2006-205794(JP,A)
【文献】特開2008-077631(JP,A)
【文献】特開2019-021154(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010568(WO,A1)
【文献】特開平09-091569(JP,A)
【文献】特開2019-215669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G08B 19/00 - 21/24
B60W 30/00 - 60/00
B60K 25/00 - 28/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される移動支援装置であって、
前記移動体の乗員の生体情報に基づいて判断された覚醒度に対応する覚醒度情報を出力する覚醒度検出装置と、
振動を付与する振動刺激と運動の存在を錯覚させる仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を前記乗員に提供する刺激提供装置と、
前記覚醒度情報に基づいて、前記覚醒度が第一閾値を下回った場合に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第一制御信号を出力し、前記第一制御信号の出力後に前記覚醒度が当該第一閾値よりも高い第二閾値以上になるまで前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第二制御信号を出力する制御装置と、
を備えており、
前記制御装置は、前記覚醒度が前記第一閾値以上前記第二閾値未満である時間長さが閾値に達した場合に前記第二制御信号の出力を中止する、
移動支援装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記振動刺激と前記仮現運動刺激の提供される順序が不規則性を伴うように前記第一制御信号と前記第二制御信号を生成する
請求項1に記載の移動支援装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記振動刺激と前記仮現運動刺激の少なくとも一方の提供される位置とタイミングの少なくとも一方が不規則性を伴うように前記第一制御信号と前記第二制御信号を生成する、
請求項1または2に記載の移動支援装置。
【請求項4】
振動を付与する振動刺激と運動の存在を錯覚させる仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を移動体の乗員に提供する刺激提供装置を制御するために当該移動体に搭載される制御装置であって、
前記乗員の生体情報に基づいて判断された覚醒度に対応する覚醒度情報を受け付ける入力インターフェースと、
前記覚醒度情報に基づいて、前記覚醒度が第一閾値を下回った場合に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第一制御信号と第二制御信号を生成するプロセッサと、
前記第一制御信号の出力後に前記覚醒度が前記第一閾値よりも高い第二閾値以上になるまで前記第二制御信号を出力する出力インターフェースと、
を備えており、
前記プロセッサは、前記覚醒度が前記第一閾値以上前記第二閾値未満である時間長さが閾値に達した場合に前記第二制御信号の出力を中止する、
制御装置。
【請求項5】
振動を付与する振動刺激と運動の存在を錯覚させる仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を移動体の乗員に提供する刺激提供装置を制御するために当該移動体に搭載される制御装置において実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、
前記乗員の生体情報に基づいて判断された覚醒度に対応する覚醒度情報に基づいて、当該覚醒度が第一閾値を下回った場合に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第一制御信号を前記制御装置に出力させ、
前記第一制御信号の出力後に前記覚醒度が前記第一閾値よりも高い第二閾値以上になるまで前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第二制御信号を前記制御装置に出力させ、
前記覚醒度が前記第一閾値以上前記第二閾値未満である時間長さが閾値に達した場合に、前記制御装置に前記第二制御信号の出力を中止させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載される移動支援装置に関連する。本発明は、振動を付与する振動刺激と運動の存在を錯覚させる仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を移動体の乗員に提供する刺激提供装置を制御するために当該移動体に搭載される制御装置、および当該制御装置において実行されるコンピュータプログラムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、移動体の移動環境が特定の条件を満たしたことを乗員へ通知することにより移動支援を行なう技術を開示している。
【0003】
本明細書において「移動環境」という語は、移動体の外部環境の状態、移動体の状態、乗員の状態を包括的に意味するものとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-096368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、乗員の覚醒度の低下を抑制することにより移動支援を行なうことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、移動体に搭載される移動支援装置であって、
前記移動体の乗員の覚醒度に対応する覚醒度情報を出力する覚醒度検出装置と、
振動を付与する振動刺激と運動の存在を錯覚させる仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を前記乗員に提供する刺激提供装置と、
前記覚醒度情報に基づいて、前記覚醒度が第一閾値を下回った場合に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第一制御信号を出力し、前記第一制御信号の出力後に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第二制御信号を出力する制御装置と、
を備えている。
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、振動を付与する振動刺激と運動の存在を錯覚させる仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を移動体の乗員に提供する刺激提供装置を制御するために当該移動体に搭載される制御装置であって、
前記乗員の覚醒度に対応する覚醒度情報を受け付ける入力インターフェースと、
前記覚醒度情報に基づいて、前記覚醒度が第一閾値を下回った場合に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第一制御信号と第二制御信号を生成するプロセッサと、
前記第一制御信号の出力後に前記第二制御信号を出力する出力インターフェースと、
を備えている。
【0008】
上記の目的を達成するための一態様は、振動を付与する振動刺激と運動の存在を錯覚させる仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を移動体の乗員に提供する刺激提供装置を制御するために当該移動体に搭載される制御装置において実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記乗員の覚醒度に対応する覚醒度情報に基づいて、当該覚醒度が第一閾値を下回った場合に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第一制御信号を前記制御装置に出力させ、前記第一制御信号の出力後に前記刺激提供装置に前記刺激を提供させる第二制御信号を前記制御装置に出力させる。
【0009】
第一制御信号に基づいて提供される刺激は、乗員に覚醒度の低下を通知する機能を有する。これにより、乗員の覚醒度の回復が促される。しかしながら、当該刺激のみでは乗員の覚醒度の回復が不十分である場合がありうる。上記の構成によれば、第一制御信号に基づく刺激の提供後に、第二制御信号に基づく刺激が追加的に提供される。これにより、乗員の覚醒度の回復がさらに促される。したがって、乗員の覚醒度の低下を抑制することによる移動支援を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る移動支援装置の機能構成を例示している。
図2図1の移動支援装置が搭載される車両を例示している。
図3図1の刺激提供装置の構成を例示している。
図4図1の制御装置により実行される処理の一例を示している。
図5図1の移動支援装置の動作を例示している。
図6図1の制御装置により実行される処理の別例を示している。
図7図1の移動支援装置の動作を説明するための比較例を示している。
図8図1の移動支援装置の動作を説明するための比較例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る移動支援装置10の機能構成を例示している。
【0012】
移動支援装置10は、図2に例示されるような車両20に搭載される。車両20は、移動体の一例である。図2においては、運転者30がシート21に着座している状態が例示されている。運転者30は、移動体の乗員の一例である。運転者30は、シートベルト22を装着している。運転者30は、ステアリングホイール23を把持している。
【0013】
図1に例示されるように、移動支援装置10は、刺激提供装置11、覚醒度検出装置12、および制御装置13を備えている。
【0014】
刺激提供装置11は、運転者30に振動刺激と仮現運動刺激の少なくとも一方を含む刺激を提供する装置である。
【0015】
振動刺激は、運転者30に振動を付与する刺激である。振動は、運転者30の身体の一部が接触する接触部材を通じて付与される。シート21、シートベルト22、およびステアリングホイール23の各々は、接触部材の一例である。ヘッドレストやアームレストもまた、接触部材の一例となりうる。
【0016】
振動は、アクチュエータ、ピエゾ素子、ボイスコイル、ソレノイド、偏心モータなどを用いて発生されうる。発生した振動は、適宜の構成を通じて接触部材へ伝達される。
【0017】
仮現運動刺激は、運転者30に運動の存在を錯覚させる刺激である。運転者30に対する複数の瞬間的な刺激の提供される位置とタイミングが適当な条件を満足することにより、個々の瞬間的な刺激に動きがなくても、運転者30は、刺激が移動しているように知覚する。刺激は、視覚的刺激、聴覚的刺激、振動刺激、電気的刺激、温感刺激、および冷感刺激の少なくとも一つが用いられる。
【0018】
視覚的刺激は、車両20のメータパネル24、センタクラスタ25、センタコンソール(不図示)などに設けられた発光部や表示装置を通じて提供される。すなわち、当該発光部や当該表示装置は、刺激提供装置11の一例である。視覚的刺激の例としては、当該発光部の発光、当該表示装置におけるシンボルやテキストの表示などが挙げられる。
【0019】
聴覚的刺激は、車両20に設けられたスピーカ(不図示)を通じて提供される。すなわち、当該スピーカは、刺激提供装置11の一例である。聴覚的刺激の例としては、警告音などが挙げられる。
【0020】
振動刺激、電気的刺激、温感刺激、および冷感刺激は、接触部材を通じて触覚刺激として提供される。
【0021】
電気的刺激は、接触部材の表面に形成された電極を通じて提供される。運転者30に痛覚を与えることなく電気的刺激を知覚させるために、例えば2~5mAの電流が電極に流される。すなわち、電極に電流を流す装置は、刺激提供装置11の一例である。
【0022】
温感刺激は、接触部材の表面温度を常温よりも高くすることによって提供される。温感は、ヒータなどの動作を通じて提供されうる。すなわち、ヒータおよびその動作を制御する装置は、刺激提供装置11の一例である。
【0023】
冷感刺激は、接触部材の表面温度を常温よりも低くすることによって提供される。冷感は、ペルチェ素子などの動作を通じて提供されうる。すなわち、ペルチェ素子およびその動作を制御する装置は、刺激提供装置11の一例である。
【0024】
提供される触覚刺激の種別と触覚刺激が提供される位置との関係は、任意に定められうる。図3は、考えられうる組合せの例を示す表である。
【0025】
パターンAは、表の上下方向に延びる組合せを示している。シート21、シートベルト22、およびステアリングホイール23の全てが電気的刺激を提供する例が示されている。同種の触覚が複数の接触部材から提供される全ての組合せが、パターンAに含まれうる。例えば、シートベルト22とステアリングホイール23から温感が提供される組合せが、パターンAに含まれうる。
【0026】
パターンBは、表の左右方向に延びる組合せを示している。電気的刺激、温感、および冷感の全てがシート21において提供される例が示されている。複数種の触覚が同じ接触部材から提供される全ての組合せが、パターンBに含まれうる。例えば、ステアリングホイール23において温感と冷感が提供される組合せが、パターンBに含まれうる。
【0027】
パターンCは、表の上下方向または左右方向に並ばない組合せを示している。シート21において電気的刺激が提供され、シートベルト22において温感が提供され、ステアリングホイール23において冷感が提供される例が示されている。複数の接触部材から相違する複数種の触覚が提供される全ての組合せが、パターンCに含まれうる。例えば、シートベルト22において冷感が提供され、ステアリングホイール23において電気的刺激が提供される組合せが、パターンCに含まれうる。
【0028】
本例においては、刺激提供装置11は、パターンA、パターンB、およびパターンCの少なくとも一つに基づいて、提供される触覚刺激の種別と触覚刺激が提供される位置との関係を規定している。
【0029】
覚醒度検出装置12は、運転者30の覚醒度を検出し、検出された覚醒度に対応する覚醒度情報WIを出力する装置である。運転者30の覚醒度は、心拍数の変動、目の動き、表情の変化、体動などの生体情報に基づいて判断されうる。心拍数の変動は、ステアリングホイール23に設けられた電極を通じて取得されてもよいし、運転者30に装着されたウェアラブルデバイスから無線通信を介して取得されてもよい。目の動き、表情の変化、体動は、車室内の適宜の位置に配置されたカメラ(不図示)によって取得されうる。生体情報を用いて運転者30の覚醒度を検出する覚醒度検出装置12の構成自体は公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0030】
制御装置13は、刺激提供装置11を制御する装置である。制御装置13は、入力インターフェース131、プロセッサ132、および出力インターフェース133を備えている。
【0031】
入力インターフェース131は、覚醒度検出装置12から出力された覚醒度情報WIを受け付けるように構成されている。
【0032】
プロセッサ132は、覚醒度情報WIに基づいて、運転者30の覚醒度が第一閾値Th1を下回るかを判断するように構成されている。プロセッサ132は、運転者30の覚醒度が第一閾値Th1を下回ると判断された場合、第一制御信号CS1を生成するように構成されている。第一制御信号CS1は、刺激提供装置11に振動刺激と仮現運動刺激の少なくとも一方を含む第一刺激を提供させる信号である。
【0033】
出力インターフェース133は、生成された第一制御信号CS1を、刺激提供装置11へ送信するように構成されている。第一制御信号CS1を受信した刺激提供装置11は、第一制御信号CS1に対応する振動刺激と仮現運動刺激の少なくとも一方を含む第一刺激を、運転者30に提供する。
【0034】
プロセッサ132は、第二制御信号CS2を生成するように構成されている。第二制御信号CS2は、刺激提供装置11に振動刺激と仮現運動刺激の少なくとも一方を含む第二刺激を提供させる信号である。
【0035】
出力インターフェース133は、生成された第二制御信号CS2を、第一制御信号CS1の出力後に刺激提供装置11へ送信するように構成されている。例えば、第二制御信号CS2の出力は、第一制御信号CS1が出力されてから所定時間の経過後に自動的になされうる。第二制御信号CS2を受信した刺激提供装置11は、第二制御信号CS2に対応する振動刺激と仮現運動刺激の少なくとも一方を含む第二刺激を、運転者30に提供する。第一刺激と第二刺激は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
図4は、上記のように構成された制御装置13により実行される処理の一例を示している。処理が開始されると、制御装置13は、覚醒度検出装置12から出力された覚醒度情報WIを取得する(STEP11)。
【0037】
続いて、制御装置13は、覚醒度情報WIにより示される運転者30の覚醒度が第一閾値Th1を下回るかを判断する(STEP12)。覚醒度が第一閾値Th1以上であると判断されると(STEP12においてNO)、処理はSTEP11に戻り、覚醒度情報WIの取得と第一閾値Th1に係る判断が繰り返される。
【0038】
覚醒度が第一閾値Th1を下回ると判断されると(STEP12においてYES)、制御装置13は、刺激提供装置11に所定の第一刺激を提供させる第一制御信号CS1を出力する(STEP13)。第一刺激の例としては、ステアリングホイール23を通じて提供される電気的刺激の仮現運動刺激が挙げられる。
【0039】
続いて、制御装置13は、刺激提供装置11に所定の第二刺激を提供させる第二制御信号CS2を出力する(STEP14)。第二刺激の例としては、シート21を通じて提供される振動刺激が挙げられる。
【0040】
第二制御信号CS2の出力後、処理はSTEP11に戻り、覚醒度情報WIの取得と第一閾値Th1に係る判断が繰り返される。
【0041】
図5は、運転者30の覚醒度の経時変化を例示している。時点t1において覚醒度が第一閾値Th1を下回っているので、第一刺激S1が提供される。その後、時点t2において第二刺激S2が提供される。例えば、時点t1と時点t2の時間間隔Tが予め定められ、第二刺激S2が自動的に提供されうる。
【0042】
第一制御信号CS1に基づいて提供される刺激は、運転者30に覚醒度の低下を通知する機能を有する。これにより、運転者30の覚醒度の回復が促される。しかしながら、当該刺激のみでは運転者30の覚醒度の回復が不十分である場合がありうる。上記の構成によれば、第一制御信号CS1に基づく刺激の提供後に、第二制御信号CS2に基づく刺激が追加的に提供される。これにより、運転者30の覚醒度の回復がさらに促される。したがって、運転者30の覚醒度の低下を抑制することによる運転支援を実現できる。
【0043】
図6は、制御装置13によって実行される処理の別例を示している。図4を参照して説明した処理と実質的に同一の処理には同一の参照符号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。
【0044】
本例においては、制御装置13は、STEP13における第一制御信号CS1の出力後に、覚醒度情報WIにより示される運転者30の覚醒度が第二閾値Th2を下回るかを判断する(STEP21)。第二閾値Th2は、第一閾値Th1よりも高い。
【0045】
覚醒度が第二閾値Th2以上であると判断されると(STEP21においてNO)、制御装置13は、覚醒度検出装置12から覚醒度情報WIを取得する(STEP22)。その後、処理はSTEP21に戻り、第二閾値Th2に係る判断が繰り返される。
【0046】
覚醒度が第二閾値Th2を下回ると判断されると(STEP21においてYES)、制御装置13は、刺激提供装置11に所定の第二刺激を提供させる第二制御信号CS2を出力する(STEP14)。
【0047】
その後、制御装置13は、覚醒度検出装置12から覚醒度情報WIを取得する(STEP22)。その後、処理はSTEP21に戻り、第二閾値Th2に係る判断が繰り返される。
【0048】
すなわち、本例においては、制御装置13は、第一制御信号CS1の出力後に運転者30の覚醒度のモニタを継続し、覚醒度が第二閾値Th2以上になるまで第二制御信号CS2の出力を繰り返す。
【0049】
図5に示される例の場合、時点t2においては運転者30の覚醒度が第二閾値Th2を下回っているので(図6のSTEP21においてYES)、第二刺激S2が提供される(図6のSTEP14)。この場合、時点t1と時点t2の時間間隔Tは、覚醒度情報WIが取得される周期として予め定められる。
【0050】
さらに時間Tが経過した後の時点t3においても、運転者30の覚醒度は第二閾値Th2を下回っている(図6のSTEP21においてYES)。したがって、第二刺激S2が再び提供される(図6のSTEP14)。さらに時間Tが経過した後の時点t4においては、運転者30の覚醒度は第二閾値Th2を上回っている(図6のSTEP21においてNO)。したがって、第二刺激S2は提供されない。さらに時間Tが経過した後の時点t5においては、運転者30の覚醒度が再び第二閾値Th2を下回っている(図6のSTEP21においてYES)。したがって、第二刺激S2が再び提供される(図6のSTEP14)。
【0051】
このような構成によれば、第二制御信号CS2に基づいて提供される刺激は、運転者30の覚醒度をより高い水準まで回復させるとともに、当該水準に維持する機能を有しうる。したがって、運転者30の覚醒度の低下を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0052】
プロセッサ132は、振動刺激と仮現運動刺激の少なくとも一方の提供される位置が不規則性を伴うように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2を生成しうる。具体的には、プロセッサ132は、乱数表などを用いて刺激を提供する刺激提供装置11を決定し、決定された刺激提供装置11を指定するように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2を生成する。
【0053】
図7に例示されるように、運転者30の覚醒度が閾値を下回る場合に電気的刺激の仮現運動が提供され、かつシート21、シートベルト22、およびステアリングホイール23の各々において電気的刺激の仮現運動の提供が可能である場合を考える。パターンDは、電気的刺激の仮現運動が常にシート21において提供される例を示している。パターンEは、電気的刺激の仮現運動が提供される位置が、シート21、シートベルト22、およびステアリングホイール23の順に繰り返し変化する例を示している。いずれのパターンにおいても、運転者30は、刺激の提供が繰り返されるうちに、次に刺激が提供される位置を予測できるようになる。
【0054】
他方、上記のような位置に係る不規則性を伴うように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2が生成されることにより、電気的刺激の仮現運動は、シート21、シートベルト22、およびステアリングホイール23のいずれかにおいて不規則的に提供される。このような構成によれば、運転者30は、次に刺激が提供される位置を予測しにくくなる。刺激の意外性を維持できるので、運転者30の覚醒度の低下を抑制しやすくなる。
【0055】
これに加えてあるいは代えて、プロセッサ132は、振動刺激と仮現運動刺激の少なくとも一方の提供されるタイミングが不規則性を伴うように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2を生成しうる。具体的には、プロセッサ132は、乱数表などを用いて刺激が提供される繰り返し時間間隔を決定し、決定された時間間隔を指定するように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2を生成する。
【0056】
一例として、運転者30の覚醒度が閾値を下回るとシート21を通じて振動刺激が繰り返し提供される場合を考える。振動刺激が繰り返される時間間隔が一定である場合、運転者30は、刺激の提供が繰り返されるうちに、次に刺激が提供されるタイミングを予測できるようになる。
【0057】
他方、上記のようなタイミングに係る不規則性を伴うように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2が生成されることにより、シート21を通じて提供される振動刺激の繰り返し時間間隔を不規則的にできる。このような構成によれば、運転者30は、次に刺激が提供されるタイミングを予測しにくくなる。刺激の意外性を維持できるので、運転者30の覚醒度の低下を抑制しやすくなる。
【0058】
図4を参照して説明した処理例の場合、第一制御信号CS1が出力されてから第二制御信号CS2が出力されるまでの時間長さTが不規則性を有するように、第二制御信号CS2の出力がなされてもよい。この場合、制御装置13は、乱数表などを用いて時間長さTを決定し、決定された時間長さTに基づいて第二制御信号CS2を出力インターフェース133から出力しうる。
【0059】
第一刺激S1が提供されてから第二刺激S2が提供されるまでの時間長さTが一定である場合、運転者30は、刺激の提供が繰り返されるうちに、第二刺激S2が提供されるタイミングを予測できるようになる。しかしながら、上記のような構成によれば、運転者30は、第二刺激S2が提供されるタイミングを予測しにくくなる。刺激の意外性を維持できるので、運転者30の覚醒度の低下を抑制しやすくなる。
【0060】
図6を参照して説明した処理例の場合、制御装置13は、第一制御信号CS1の出力後に次の覚醒度情報WIが取得されるまでの時間長さTが不規則性を有するように構成されてもよい。この場合、制御装置13は、乱数表などを用いて時間長さTを決定し、決定された時間長さTに基づいて覚醒度情報WIを取得しうる。
【0061】
このような構成によれば、結果的に第二刺激S2が提供されるタイミングを不規則にできる。したがって、運転者30は、第二刺激S2が提供されるタイミングを予測しにくくなる。刺激の意外性を維持できるので、運転者30の覚醒度の低下を抑制しやすくなる。
【0062】
これに加えてあるいは代えて、プロセッサ132は、振動刺激と仮現運動刺激の提供される順序が不規則性を伴うように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2を生成しうる。換言すると、第一刺激S1の種別と第二刺激S2の種別との間の関係が規則性を有しないように、第一制御信号CS1と第二制御信号CS2が生成される。具体的には、プロセッサ132は、乱数表などを用いて提供される刺激の種別を決定し、決定された刺激の種別を指定するように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2を生成する。
【0063】
図8に例示されるように、運転者30の覚醒度が閾値を下回る場合にステアリングホイール23において仮現運動刺激の提供が可能である場合を考える。パターンFは、常に第二刺激S2として電気的刺激の仮現運動が提供される例を示している。パターンGは、第二刺激S2の種別が、電気的刺激の仮現運動、温感刺激の仮現運動、および冷感刺激の仮現運動の順に繰り返し変化する例を示している。いずれのパターンにおいても、運転者30は、刺激の提供が繰り返されるうちに、次に提供される刺激の種別を予測できるようになる。
【0064】
他方、上記のような順序に係る不規則性を伴うように第一制御信号CS1と第二制御信号CS2が生成されることにより、第一刺激S1と第二刺激S2の双方について、電気的刺激の仮現運動、温感刺激の仮現運動、および冷感刺激の仮現運動のいずれかがステアリングホイール23において不規則的に提供される。このような構成によれば、運転者30は、次に提供される刺激の種別を予測しにくくなる。刺激の意外性を維持できるので、運転者30の覚醒度の低下を抑制しやすくなる。
【0065】
本例においては、仮現運動刺激のみを用いて第一刺激S1と第二刺激S2が行なわれ、各刺激において用いられる仮現運動刺激の種別の選定について不規則性が導入されている。しかしながら、振動刺激と仮現運動刺激の双方を用いて第一刺激S1と第二刺激S2が行なわれ、各刺激において用いられる仮現運動刺激の種別の選定について不規則性が導入されてもよい。
【0066】
プロセッサ132は、図7を参照して説明した刺激が提供される位置に係る不規則性と、図8を参照して説明した提供される刺激の種別に係る不規則性とを組み合わせて第一制御信号CS1と第二制御信号CS2を生成しうる。このような構成によれば、運転者30は、次に提供される刺激の位置と種別をさらに予測しにくくなる。これにより、運転者30の覚醒度の低下をさらに抑制しやすくなる。
【0067】
制御装置13は、覚醒度情報WIに基づいて、運転者30の覚醒度が第一閾値Th1を下回っていない時間長さが閾値に達した場合に、第二制御信号CS2の出力を中止するように構成されうる。
【0068】
具体的には、図4に例示されるように、取得された覚醒度情報WIに対応する運転者30の覚醒度が第一閾値Th1を下回っていないと判断されると(STEP12においてNO)、プロセッサ132は、計時を開始するとともに、計時開始からの経過時間が閾値に達したかを判断する(STEP15)。
【0069】
経過時間が閾値に達していないと判断されると(STEP15においてNO)、処理はSTEP11に戻り、覚醒度情報WIの取得と第一閾値Th1に係る判断が繰り返される。経過時間が閾値に達したと判断されると(STEP15においてYES)、処理は終了する。すなわち、第二制御信号CS2の出力は行なわれなくなる。
【0070】
あるいは、図6に例示されるように、第一制御信号CS1の出力後に運転者30の覚醒度が第二閾値Th2を下回っていないと判断されると(STEP21においてNO)、プロセッサ132は、計時を開始するとともに、計時開始からの経過時間が閾値に達したかを判断する(STEP23)。
【0071】
経過時間が閾値に達していないと判断されると(STEP23においてNO)、覚醒度情報WIの取得がなされ(STEP22)、第二閾値Th2に係る判断が繰り返される(STEP21)。経過時間が閾値に達したと判断されると(STEP23においてYES)、処理は終了する。すなわち、第二制御信号CS2の出力は行なわれなくなる。
【0072】
このような構成によれば、運転者30の覚醒度が許容可能な水準に維持されていると判断されうる状況下で刺激の提供が繰り返されないようにできる。したがって、運転者30の覚醒度の低下だけでなく、運転の快適性の低下も抑制できる。
【0073】
これまで説明したプロセッサ132の機能は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ132は、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。プロセッサ132は、上述した処理を実現するコンピュータプログラムを実行可能なマイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの専用集積回路によって実現されてもよい。プロセッサ132は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによって実現されてもよい。
【0074】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0075】
上記の移動支援装置10は、車両以外の移動体にも搭載可能である。そのような移動体の例としては、鉄道列車、船舶、航空機などが挙げられる。
【0076】
上記の移動支援装置10により提供される刺激は、運転者30以外の乗員に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10:移動支援装置、11:刺激提供装置、12:覚醒度検出装置、13:制御装置、131:入力インターフェース、132:プロセッサ、133:出力インターフェース、20:車両、21:シート、22:シートベルト、23:ステアリングホイール、30:運転者、CS1:第一制御信号、CS2:第二制御信号、WI:覚醒度情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8