(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240311BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240311BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01L21/304 643D
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/304 648G
H01L21/78 P
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2019180982
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 健吾
(72)【発明者】
【氏名】松井 絵美
(72)【発明者】
【氏名】窪田 俊也
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-165281(JP,A)
【文献】特開2001-053047(JP,A)
【文献】特開2016-100368(JP,A)
【文献】特開2002-093766(JP,A)
【文献】特開2015-213104(JP,A)
【文献】特開2008-098561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の周囲を囲むリングと、前記基板の下面及び前記リングの下面に粘着するダイシングテープとを有する処理対象物を支持するテーブルと、
前記テーブルにより支持された前記処理対象物を前記テーブルに固定する複数のチャックピンと、
前記複数のチャックピンにより前記テーブルに固定された前記処理対象物に、前記基板を処理するための処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液供給部により前記処理液が前記処理対象物に供給されている状態で、前記複数のチャックピンの全てを振動させる振動部と
、
前記テーブルを平面内で回転させる回転機構と、
を備え、
前記振動部は、前記回転機構により回転する前記テーブルの回転数に応じ、前記複数のチャックピンのうち振動させるチャックピンの個数を変える基板処理装置。
【請求項2】
前記振動部は、
前記複数のチャックピンの全てに個別に設けられた複数の振動子と、
前記複数の振動子を個別に覆う複数のカバーと、
を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記振動部は、前記複数のチャックピンの全てに個別に内蔵された複数の振動子を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板と、前記基板の周囲を囲むリングと、前記基板の下面及び前記リングの下面に粘着するダイシングテープとを有する処理対象物をテーブルにより支持する工程と、
前記テーブルにより支持された前記処理対象物を前記テーブルに複数のチャックピンにより固定する工程と、
前記複数のチャックピンにより前記処理対象物が固定された前記テーブルを回転機構により回転させる工程と、
前記複数のチャックピンにより前記テーブルに固定された前記処理対象物に、前記基板を処理するための処理液を処理液供給部により供給する工程と、
前記処理液供給部により前記処理液が前記処理対象物に供給されている状態で、前記複数のチャックピンの全てを振動部により振動させる工程と、
を有し、
前記振動部は、前記回転機構により回転する前記テーブルの回転数に応じ、前記複数のチャックピンのうち振動させるチャックピンの個数を変える基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの更なる薄型化やコストダウンが求められている。そこで、半導体デバイスを支持する基板上において、半導体デバイスを一括で製造することが行われてきている。半導体デバイスを支持する基板(支持基板)として、例えば、半導体用ウェーハや液晶パネル用ガラス基板を用いて、配線形成やチップ載置、モールド封止などの各種処理が支持基板の接着層上に行われ、接着層上に半導体デバイスが形成される。その後、形成された半導体デバイスから支持基板が剥離される。支持基板の剥離工程では、例えば、半導体デバイスと支持基板との間の接着層をレーザ照射により劣化させ、半導体デバイスから支持基板を剥離する。
【0003】
剥離工程が行われるのに先立ち、最終的に半導体デバイスを個々のチップに切り離すために、支持基板と反対の半導体デバイス側の面に粘着テープであるダイシングテープが貼り付けられる。貼り付けられるダイシングテープには、搬送や支持を行うためのリングが、ダイシングテープ上の支持基板及び半導体デバイスを囲むようにダイシングテープに貼り付けられる。したがって、ダイシングテープの粘着面(粘着性を有する面)の中央領域が支持基板及び半導体デバイスにより覆われ、ダイシングテープの粘着面の外縁領域が環状のリングにより覆われる。ダイシングテープの粘着面の中央領域と外縁領域の間の環状の領域(半導体デバイスとリングとの間のダイシングテープの粘着面)は露出する。
【0004】
剥離工程により半導体デバイスから支持基板を剥離したあとは、ダイシングテープ上に半導体デバイスのみが貼り付いた状態となる。また、支持基板上に半導体デバイスを形成するので、一括に形成される半導体デバイスは支持基板と同様の外形で形成される。すなわち、半導体用ウェーハを支持基板とした場合、半導体デバイスの外形は半導体ウェーハ同様の円盤状となる。以降、円盤状に形成された半導体デバイスを例に説明する。また、半導体デバイスを単にデバイス(あるいは基板)と称する。
【0005】
デバイスから支持基板が剥離された際には、接着層である接着物(例えば、カーボン)がデバイスに残留する。このため、残留した接着物をデバイスから除去する必要が生じる。接着物の除去工程では、例えば、複数のチャックピン(固定部材)によりリングを上から押え、デバイスをリング及びダイシングテープと共にテーブルに固定する。そして、デバイスの中心を回転中心としてデバイスをダイシングテープ及びリングと共に水平面内で回転させ、デバイスの中心付近に溶剤などの洗浄液(処理液の一例)を供給し、デバイスの中心付近に供給した洗浄液をデバイス全面(周方向)に広げるとともにデバイスから排出し、デバイスから接着物を除去する。
【0006】
デバイスから除去された接着物は洗浄液と共にデバイスから排出されるが、排出された接着物がチャックピンあるいはデバイスとリングとの間のダイシングテープの粘着面に付着することがある。接着物が付着すると、搬送工程やダイシング工程などにおいて、チャックピン又はダイシングテープから離れてデバイス(基板)に付着して、デバイスが汚染されるため、デバイス品質、すなわち基板品質が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、基板品質を向上させることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、
基板と、前記基板の周囲を囲むリングと、前記基板の下面及び前記リングの下面に粘着するダイシングテープとを有する処理対象物を支持するテーブルと、
前記テーブルにより支持された前記処理対象物を前記テーブルに固定する複数のチャックピンと、
前記複数のチャックピンにより前記テーブルに固定された前記処理対象物に、前記基板を処理するための処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液供給部により前記処理液が前記処理対象物に供給されている状態で、前記複数のチャックピンの全てを振動させる振動部と、
前記テーブルを平面内で回転させる回転機構と、
を備え、
前記振動部は、前記回転機構により回転する前記テーブルの回転数に応じ、前記複数のチャックピンのうち振動させるチャックピンの個数を変える。
【0010】
本発明の実施形態に係る基板処理方法は、
基板と、前記基板の周囲を囲むリングと、前記基板の下面及び前記リングの下面に粘着するダイシングテープとを有する処理対象物をテーブルにより支持する工程と、
前記テーブルにより支持された前記処理対象物を前記テーブルに複数のチャックピンにより固定する工程と、
前記複数のチャックピンにより前記処理対象物が固定された前記テーブルを回転機構により回転させる工程と、
前記複数のチャックピンにより前記テーブルに固定された前記処理対象物に、前記基板を処理するための処理液を処理液供給部により供給する工程と、
前記処理液供給部により前記処理液が前記処理対象物に供給されている状態で、前記複数のチャックピンの全てを振動部により振動させる工程と、
を有し、
前記振動部は、前記回転機構により回転する前記テーブルの回転数に応じ、前記複数のチャックピンのうち振動させるチャックピンの個数を変える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、基板品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る基板処理装置の一部を示す平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る基板処理工程を説明するための図である。
【
図4】第1の実施形態に係る液供給を説明するための第1の図である。
【
図5】第1の実施形態に係るチャックピンの振動を説明するための第1の図である。
【
図6】第1の実施形態に係る液供給を説明するための第2の図である。
【
図7】第1の実施形態に係る液供給を説明するための第3の図である。
【
図8】第1の実施形態に係るチャックピンの振動を説明するための第2の図である。
【
図9】第2の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について
図1から
図8を参照して説明する。
【0014】
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る基板処理装置10は、テーブル20と、振動部30と、回転機構(回転駆動部)40と、処理液供給部50と、液供給部60と、制御部70とを備えている。
【0015】
処理対象物Wは、
図1及び
図2に示すように、基板(例えば、デバイス)W1と、リングW2と、ダイシングテープW3とを有している。基板W1は、ダイシングテープW3の中央に貼り付けられる。リングW2は、環状に形成されており、ダイシングテープW3上の基板W1の周囲を囲むようにダイシングテープW3に貼り付けられる。したがって、ダイシングテープW3の粘着面の中央領域が基板W1により覆われ、ダイシングテープW3の粘着面の外縁領域が環状のリングW2により覆われている。このため、ダイシングテープW3の粘着面の中央領域と外縁領域の間の環状の領域、すなわち基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の上面は露出している。
【0016】
テーブル20は、本体21と、支持体22と、複数のチャックピン23とを有している。このテーブル20は、カップ(不図示)により囲われており、カップ内の略中央に位置付けられ、水平面内で回転可能に回転機構40上に設けられている。テーブル20は、例えば、スピンテーブルと呼ばれる。
【0017】
本体21は、中央が円柱状に盛り上がる凸形状に形成されている。この本体21の凸部の上面は、処理対象物Wの基板W1の下面にダイシングテープW3を介して対向した状態で基板W1を支持する。支持体22は、環状に形成されており、本体21の凸部(突出部)を囲むように本体21の環状の平坦部に設けられている。この支持体22は、処理対象物WのリングW2の下面にダイシングテープW3を介して対向した状態でリングW2を支持する。各チャックピン23は、それぞれ偏心回転可能に本体21の環状の平坦部に設けられている。これらのチャックピン23は、それぞれ同期して偏心回転することで、処理対象物WのリングW2の外周面を内側に押しつつ、処理対象物Wを水平状態に保持する。このとき、処理対象物Wの中心は、テーブル20の回転軸上に位置付けられる。
【0018】
このテーブル20は、本体21及び支持体22により処理対象物Wを支持し、各チャックピン23により本体21及び支持体22に固定して、処理対象物WのリングW2の上面の高さが基板W1の上面の高さより低くなるように(例えば2mm程度の数mm低くなるように)処理対象物Wを支持する。
【0019】
振動部30は、複数の振動子31と、複数のカバー32とを有している。各振動子31は、各チャックピン23の個々の上部にそれぞれ設けられている。これらの振動子31としては、例えば、MEMS(微小電気機械システム)振動子又は水晶振動子、圧電素子が用いられる。各カバー32は、各チャックピン23の上部に個別に位置付けられ、各チャックピン23の上部にそれぞれ位置する各振動子31を覆うよう、各チャックピン23に個別に設けられている。
【0020】
回転機構40は、テーブル20を支持するように設けられ、そのテーブル20を水平面(平面の一例)内で回転させるように構成されている。この回転機構40は、回転軸41と、モータ42とを有している。回転軸41の一端はテーブル20の下方の中央に連結されており、回転軸41の他端はモータ42に連結されている。モータ42はその回転軸41を回転させる。回転機構40は、モータ42の駆動により回転軸41を介してテーブル20を水平面内で回転させる。
【0021】
処理液供給部50は、ノズル51を有している。この処理液供給部50は、テーブル20上の処理対象物Wの基板W1の中央付近の上方(例えば、基板W1の中央付近の直上)にノズル51を位置付け、テーブル20上の処理対象物Wの基板W1の中央付近にノズル51から第1の処理液(例えば、p-メンタンやシクロペンタノンなどの溶剤)や第2の処理液(例えば、IPA:イソプロピルアルコール)を供給する。なお、第1の処理液は、例えば、DIW(超純水)と非相溶性の液体であり、基板W1に残留した接着物を基板W1から剥離するための液体である。
【0022】
ノズル51は、例えば、ノズル移動機構(不図示)によりテーブル20の上方をテーブル20上の処理対象物Wに沿って水平方向に移動可能に形成されている。ノズル移動機構としては、例えば、アームを有する揺動機構やリニアガイドなどが用いられる。このノズル51は、テーブル20上の処理対象物Wの中央付近に対向し、その中央付近に向けて処理液を吐出する。ノズル51には、基板処理装置10外の二つのタンク(不図示)から二種類の処理液が個別に供給される。ノズル51から吐出される第1の処理液の吐出量は調整弁51aの開度調整により変更され、ノズル51から吐出される第2の処理液の吐出量は調整弁51bの開度調整により変更される。
【0023】
液供給部60は、第1のノズル61と、第2のノズル62とを有している。この液供給部60は、テーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面の上方(例えば、リングW2の上面の直上)に第1のノズル61を位置付け、そのリングW2の上面に第1のノズル61から液体(例えば、DIW)を供給する。また、液供給部60は、テーブル20上の処理対象物Wの基板W1の外周端部の上方(例えば、基板W1の外周面の直上)に第2のノズル62を位置付け、その基板W1の外周端部に第2のノズル62から液体(例えば、DIW)を供給する。この液体は、第1の処理液に混和せず第1の処理液よりも比重が大きい(第1の処理液よりも密度が大きい)ものである。
【0024】
第1のノズル61及び第2のノズル62は、例えば、それぞれノズル移動機構(不図示)によりテーブル20の上方をテーブル20上の処理対象物Wに沿って水平方向に移動可能に形成されている。ノズル移動機構としては、例えば、アームを有する揺動機構やリニアガイドなどが用いられる。第1のノズル61は、テーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に対向し、その上面に向けて液体を吐出する。第2のノズル62は、テーブル20上の処理対象物Wの基板W1の外周端部に対向し、その外周端部に向けて液体を吐出する。第1のノズル61及び第2のノズル62の水平離間距離は、例えば200mm程度である。これらの第1のノズル61及び第2のノズル62には、基板処理装置10外のタンク(不図示)から液体が供給される。第1のノズル61から吐出される液体の吐出量は調整弁61aの開度調整により変更され、第2のノズル62から吐出される液体の吐出量は調整弁62aの開度調整により変更される。
【0025】
制御部70は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、基板処理に関する基板処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも不図示)を具備している。この制御部70は、基板処理情報や各種プログラムに基づいて、テーブル20の各チャックピン23による処理対象物保持動作、振動部30による振動動作、回転機構40によるテーブル20の回転動作、処理液供給部50による処理液供給動作、液供給部60による液供給動作などの制御を行う。例えば、各振動子31やモータ42は制御部70に電気的に接続されており、それらの駆動は制御部70により制御される。なお、各振動子31に関して、例えば、テーブル20の回転軸41にスリップリングを用いることで、テーブル20が回転していても、各振動子31と制御部70との電気的な接続が可能になっている。また、各調整弁51a、51b、61a、62aは、例えば電磁弁であり、制御部70に電気的に接続されており、その駆動は制御部70により制御される。
【0026】
(基板処理工程)
次に、前述の基板処理装置10が行う基板処理工程の流れについて説明する。この基板処理工程は、処理対象物Wの基板W1上に残留した接着物を除去する工程である。なお、下記の各種数値はあくまでも例示である。
【0027】
図3に示すように、例えば、ステップ1から6までの工程が連続して実行される。第1の処理液としては溶剤(洗浄液の一例)が用いられ、第2の処理液としてはIPAが用いられ、液体としてはDIWが用いられる。なお、処理対象物Wは各チャックピン23によりテーブル20に固定され、基板処理工程中、テーブル20は回転している。テーブル20の回転数や処理時間は制御部70により変更される。また、溶剤やIPA、DIWの個々の吐出量は、各調整弁51a、51b、61a、62aが制御部70により制御されて変更される。また、各振動子31は制御部70により制御される。例えば、各振動子31の個々の振動数は同じで一定にされる。
【0028】
ステップ1では、DIWが第1のノズル61から吐出され、回転するテーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に供給される。このステップ1では、第1のノズル61から吐出されるDIWの吐出量は380ml/minであり、テーブル20の回転数(第1の回転数)は20rpmであり、処理時間(吐出時間)は10sである。
【0029】
DIWの吐出量はチャックピン23の上部及びチャックピン23の周囲を被液できる量であり、基板W1上には供給されない量であることが望ましい。ただし、例えば、第1のノズル61からのDIWの供給だけでは、チャックピン23をDIWで被覆している状態でもチャックピン23に接着物が付着することがあり、また、DIWの被覆が不十分でチャックピン23に接着物が付着することがある。このため、後述するステップ2において各振動子31による振動動作が必要となる。また、テーブル20の回転数(回転速度)は、DIWを液膜の状態で保持できる回転速度に設定されている。DIWは、回転するテーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に到達し、リングW2の上面に広がる。このとき、リングW2は回転しており、リングW2の上面に供給されたDIWは、リングW2の外側及び内側に広がる。この時のテーブル20の単位時間当たりの回転数、すなわち、処理対象物WのリングW2の単位時間当たりの回転数(第1の回転数)は、リングW2の上面における遠心力の働きが弱い回転数であるため、第1のノズル61から吐出されて処理対象物WのリングW2の上面に到達したDIWが、回転するテーブル20により支持された処理対象物Wの基板W1とリングW2との間に流れるように設定されている。また、処理時間は、設定されたDIWの吐出量により基板W1とリングW2の間を被液するのに要する時間に設定されている。例えば、処理時間は、設定されたDIWの吐出量が380ml/minとすると10sである。DIWの吐出量、テーブル20の回転数及び処理時間は、予め実験などで求められ設定されている。
【0030】
ステップ1において、
図4に示すように、第1のノズル61から吐出されたDIW(
図4中のクロスハッチングによる塗りつぶし領域により示す)は、回転するテーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に到達し、リングW2の外側及びリングW2の内側(基板W1側)に広がる。このため、リングW2の内側に広がるDIWは、基板W1とリングW2との間に流れ込み、基板W1、リングW2及びダイシングテープW3により囲まれる環状の空間に溜まる。これにより、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面にはDIWの液膜が形成され、また、リングW2の上面にもDIWの液膜が形成される。
【0031】
ステップ2では、各振動子31が振動を開始する。
図5に示すように、例えば、八本のチャックピン23のうち四つの振動子31が振動する(
図5中の太線が振動を示す)。詳しくは、基板W1の中心を間にして対向する一対の振動子31を一組とすると、二組の振動子31が振動し、数秒後、他の二組が振動し、再び数秒後、他の二組が振動することを繰り返す。なお、最終的には全ての振動子31が振動したことになる。各振動子31による振動は各チャックピン23、またDIWの液膜にも伝わる。次いで、二組の振動子31が振動している状態で、ステップ2において(
図3参照)、溶剤がノズル51から吐出され、回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の中央付近に供給され、また、DIWが第1のノズル61から吐出され(ステップ1から継続)、回転するテーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に供給される。このステップ2では、第1のノズル61から吐出されるDIWの吐出量は380ml/minであり、テーブル20の回転数(第1の回転数)は20rpmであり、処理時間は240sである。なお、ノズル51から吐出される溶剤の吐出量は480ml/minである(不図示)。各振動子31の振動開始は、ノズル51から溶剤が供給される前である。ただし、第1の処理液である溶剤によって、接着物が基板W1上から剥離され、その剥離された接着物が基板W1の外周(チャックピン23)に流れてくる前に各振動子31の駆動を開始させればよい。
【0032】
テーブル20の回転数(回転速度)は、基板W1上に溶剤を液膜の状態で保持できる回転速度に設定されているため、接着物を溶剤に反応させやすくなる。処理時間は、溶剤が後述するレーザ吸収層を溶解するために要する時間に設定されている。溶剤の吐出量は、前述の設定された処理時間内に、レーザ吸収層を十分に溶かすことができる供給量に設定されている。テーブル20の回転数、処理時間及び溶剤の吐出量は、予め実験などで求められ設定されている。
【0033】
ステップ2において、
図6に示すように、基板W1及びリングW2の間やリングW2の上面にDIWの液膜が存在した状態で、ノズル51から吐出された溶剤は、回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の中央付近に到達し、処理対象物Wの回転による遠心力によって基板W1の上面の全体に広がる。基板W1の上面には溶剤の液膜が形成され、基板W1から接着物(
図4中の基板W1上の太黒線により示す)が溶剤によって徐々に溶融される。ステップ2は、基板W1上の接着物を溶融するためのステップである。接着物は溶融し、基板W1から剥がれる。基板W1から剥がれた接着物は、基板W1上の溶剤の液膜に浮遊する。なお、基板W1上の接着物は、溶融の進行が速い部分から先に剥がれていき、基板W1上の溶剤の液膜に浮遊することになる。
【0034】
ここで、例えば、接着物は、レーザ吸収層が基板W1上に積層され、基板W1上のレーザ吸収層上にレーザ反応層が積層されて構成されている。基板W1側のレーザ吸収層が溶剤により溶かされ、接着物は基板W1から剥がされて除去される。支持基板の剥離工程前において、デバイス(基板W1)は接着層を介して支持基板に支持されている。この接着層は2層構造(レーザ反応層とレーザ吸収層)である。支持基板との剥離時は、支持基板側からレーザを照射すると、レーザ光により反応層が破壊される。レーザ吸収層によりレーザ光は、吸収されてデバイス側には影響を与えないようにしている。レーザ反応層が破壊されると、支持基板を剥離することができる。デバイス側には、破壊されたレーザ反応層及びレーザ吸収層、すなわち、接着層が残る状態になる。デバイスは破壊された接着層の上部(レーザ反応層)が上面で露出した状態でダイシングテープW3に支持される状態となる。第1の処理液である溶剤は、この2層の接着層にうち、レーザ吸収層を溶解させ、レーザ吸収層の上に形成するレーザ反応層ごと一緒に除去する。
【0035】
また、ステップ2において、第1のノズル61から吐出されたDIWは、回転するテーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に向けて進行するが、基板W1の上面から流れてくる溶剤に混和することなく、リングW2の上面に到達してリングW2の外側及び内側に広がる。DIWは、溶剤に混和せず溶剤よりも比重が大きい液体である。処理対象物Wの内側に広がるDIWは、基板W1とリングW2との間に流れ込み、基板W1、リングW2及びダイシングテープW3により囲まれる空間に溜まる。これにより、基板W1及びリングW2の間にはDIWの液膜が維持され、また、リングW2の周囲にもDIWの液膜が維持される。このとき、各振動子31は組ごとに振動しており、それらの振動子31による振動は各チャックピン23、またDIWの液膜や溶剤の液膜にも伝わる。なお、上述したようにDIWは、溶剤に混和せず溶剤よりも比重が大きいものである。そのため、基板W1の上面から排出された溶剤は、基板W1の上面から基板W1とリングW2の間に形成されるDIWに流れ込んだとき、基板W1とリングW2との間に形成されるDIWの液膜と混和せず、DIWの液膜の上を流れることになる(
図6参照)。
【0036】
通常、ステップ2では、基板W1から除去された接着物は、基板W1上の溶剤の液膜に浮遊して留まっているが、浮遊する接着物の中には、溶剤の流れによって溶剤と共に基板W1から排出されるものもある。つまり、基板W1上の溶剤の液膜に浮遊する接着物のうち一部は、基板W1及びリングW2の間やリングW2の上面に存在するDIWの液膜の上を流れる溶剤と共に流れ、振動する二組のチャックピン23を避けるように処理対象物Wから排出される。このとき、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面がDIWの液膜により覆われている状態で、処理対象物Wから接着物が溶剤と共に排出されるので、接着物が基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面に付着することを抑えることができる。DIWが基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面を覆うこと及びDIWは溶剤と混和せず、かつ、比重が大きい関係であるため、溶剤と共に流れる接着物は、基板W1とリングW2の間においてDIWの液膜上を流れる。このため、接着物が基板W1とリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面に付着することを抑制できる。また、チャックピン23の周囲にDIWの液膜を形成することにより、溶剤と共に流れる接着物は、チャックピン23の周囲においてDIWの液膜上を流れるため、チャックピン23への接着物の付着を抑制できる。
【0037】
また、基板W1から除去された接着物は、溶剤と共に流れるが、振動する二組のチャックピン23により生じる波によって、振動する二組のチャックピン23に近づけず、それらのチャックピン23を避けるように溶剤と共に処理対象物Wから排出されるので、接着物がチャックピン23に付着することも抑えることができる。なお、基板W1から除去された接着物が、振動していないチャックピン23に付着した場合でも、そのチャックピン23が振動すると、付着した接着物はチャックピン23から離れ、溶剤と共に処理対象物Wから排出されるので、接着物がチャックピン23に付着し続けることを抑えることができる。
【0038】
また、テーブル20は、リングW2の上面の高さが基板W1の上面の高さより低くなる位置で処理対象物Wを支持している。これにより、基板W1から除去された接着物がリングW2に引っかかり残留することが抑制されるので、接着物の排出効率を向上させることができる。なお、テーブル20が、リングW2の上面の高さが基板W1の上面の高さ以上となる位置で処理対象物Wを支持する場合、基板W1から除去された接着物がリングW2に引っかかり残留することがある。
【0039】
ステップ3では、
図7に示すように、各振動子31は一つずつ順番に振動する(
図7中の太線が振動を示す)。詳しくは、一つの振動子31が振動し、数秒後、他の一つの振動子31が振動し、数秒後、他の一つの振動子31が振動することを繰り返す。例えば、各振動子31は、数秒の所定時間ごとに一つずつ基板W1の円周方向に順次振動する(ステップ2からステップS3で各振動子31の振動動作が変わることの理由については後述する)。なお、最終的には全ての振動子31が振動したことになる。次いで、一つの振動子31が振動している状態で、ステップ3において(
図3参照)、溶剤がノズル51から吐出され(ステップ2から継続)、回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の中央付近に供給され、DIWが第1のノズル61から吐出され(ステップ2から継続)、回転するテーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に供給され、さらに、DIWが第2のノズル62から吐出され、回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の外周端部に供給される。このステップ3では、第1のノズル61から吐出されるDIWの吐出量は380ml/minであり、第2のノズル62から吐出されるDIWの吐出量は200ml/minであり、テーブル20の回転数(第2の回転数)は400rpmであり、処理時間(吐出時間)は60sである。なお、ノズル51から吐出される溶剤の吐出量は480ml/minである(不図示)。
【0040】
DIWの吐出量は、テーブル20の回転数が第2の回転数に変更された際に、基板W1とリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面を被液できる吐出量に設定されている。テーブル20の回転数(回転速度)は、基板W1上で浮遊する接着物を基板W1外に排出させることができる速度に設定されている。処理時間は、設定されたテーブル20の回転数とともに、接着物が基板W1上からすべて排出される時間に設定されている。DIWの吐出量、テーブル20の回転数及び処理時間は、予め実験などで求められ設定されている。
【0041】
ステップ3において、
図8に示すように、処理対象物Wの基板W1とリングW2との間にDIWの液膜が形成され続け、また、基板W1の上面には溶剤の液膜が形成され続ける。テーブル20の回転数が上がり(20→400rpm)、処理対象物W上の溶剤の液膜に浮遊する接着物は、基板W1及びリングW2の間やリングW2の上面に存在するDIWの液膜の上を流れる溶剤と共に流れ、振動する一本のチャックピン23を避けるように処理対象物Wから流れ落ちる。ステップ3は、ステップ2で溶融して基板W1上の溶剤に浮遊する接着物を処理対象物Wから排出するためのステップである。
【0042】
なお、ステップ3において、ノズル51による溶剤の供給と、第1のノズル61によるDIWの供給は、前述のステップ2と同じであるが、加えて、第2のノズル62によるDIWの供給が行われる。第2のノズル62から吐出されたDIWは、基板W1の上面から流れてくる溶剤に混和することなく、テーブル20上の処理対象物Wの基板W1の外周端部に到達し、基板W1とリングW2との間に流れ込み、基板W1、リングW2及びダイシングテープW3により囲まれる空間に溜まる。テーブル20の回転数が上がると(20→400rpm)、遠心力が働いて、第1のノズル61から吐出されたDIWが基板W1及びリングW2の間に流れ込み難くなり、ダイシングテープW3の露出面(粘着面)に形成される液膜が薄くなる。また、露出面の一部では、液膜が完全にない状態になる。ところが、第2のノズル62から吐出されたDIWが基板W1及びリングW2の間に供給され、基板W1及びリングW2の間のDIWの液膜の厚さ(膜厚)が維持されるので、溶剤の供給中、基板W1とリングW2との間のダイシングテープW3の粘着面はDIWの液膜により確実に覆われる。これにより、テーブル20の回転数を上げても、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面がDIWの液膜により覆われている状態となる。結果として、基板W1上の溶剤の液膜に浮遊する接着物は、基板W1基板W1及びリングW2の間やリングW2の上面に存在するDIWの液膜の上を流れる溶剤と共に流れ、処理対象物Wから接着物が溶剤と共に排出される。したがって、基板W1から除去された接着物が、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面に付着することを抑えることができる。
【0043】
前述したように、第1のノズル61による供給だけでは、DIWの液膜が薄くなる状態及び液膜が無くなる状態になるので、第2のノズル62により、更に液量をアシストすることでDIWの液膜の形成を維持するようにする。さらに、第2のノズル62は、処理対象物Wの基板W1の外周端部に向けてDIWを吐出することで、遠心力の影響を考慮して、基板W1とリングW2の間にDIW液膜を形成できるようにしている。リングW2の上面に第2のノズル62からDIWを供給しても、回転数が第2の回転数になることで遠心力が増えるので、DIWがリングW2の内側に流れず外側に排出されてしまう。このため、第2のノズル62によって、基板W1の外周端部にDIWを供給し、その外周端部の外側に位置する、基板W1とリングW2の間のダイシングテープの粘着面にDIWが流れ、そこにDIWの液膜を形成するようにしている。なお、ステップ3でも溶剤(第1の処理液)を供給しており、ステップ4で溶剤の供給を停止する。
【0044】
また、処理対象物Wから接着物を排出するため、テーブル20の回転数をステップ2より上げる(20→400rpm)。これにより、処理対象物W上での遠心力が強くなり、処理対象物Wからの接着物排出が促進されるので、溶剤と共に流れる接着物を排出する排出性能(接着物の排出性能)を向上させることができる。つまり、ステップ2で基板W1上に溶剤の液膜を形成し、基板W1の接着物を溶融して溶剤の液膜に浮遊させ、ステップ3でテーブル20の回転数を上げ、溶剤に浮遊する接着物を処理対象物W上から溶剤と共に排出する。テーブル20の回転数を上げることによって、接着物の排出性能を向上させることが可能である。このように接着物の排出性能が向上するため、基板W1から除去された接着物が基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面や各チャックピン23に付着することを抑えることができる。つまり、基板W1の回転数(回転速度)を上昇させることで、遠心力を発生させ、基板W1の表面上に浮遊した接着物を遠心力で基板W1の外側に排出する。これにより、基板W1の表面上から接着物を除去することができる。なお、基板W1の回転数を上昇した際にも、基板W1中央に溶剤の供給を継続している。これは、基板W1の表面上の液膜が遠心力により薄くなり、基板W1の表面上から剥離した接着物が、再度基板W1の表面上に付着することを抑えるためである。さらに、基板W1上から接着物を排出する排出性能を補助もする。
【0045】
また、テーブル20の回転数が上がると(20→400rpm)、テーブル20の回転数が低い場合に比べ、各チャックピン23によりテーブル20上の処理対象物Wをテーブル20に固定するために大きな固定力(保持力)が必要となる。このため、各チャックピン23による固定力が不十分となる可能性がある場合には、テーブル20の回転数の上昇に応じて、全チャックピン23のうち振動させるチャックピン23の個数を減らす(4→1個)。これにより、テーブル20の回転数を上げても、処理対象物Wを固定する固定力を維持しつつ、基板W1から除去された接着物がチャックピン23に付着することを抑えることができる。
【0046】
ステップ4では、各振動子31が振動を停止し、IPAだけがノズル51から回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の中央付近に供給される。このステップ4では、テーブル20の回転数は400rpmであり、処理時間(吐出時間)は60sである。なお、ノズル51から供給されるIPAの量は200ml/minである(不図示)。
【0047】
ステップ4において、基板W1上に残留する溶剤を除去するため、IPAを供給する。なお、溶剤を排出するためには、溶剤と混和可能であり揮発性が高い液体を用いることが好ましい。テーブル20の回転数(回転速度)は、基板W1上に残留する処理液を基板W1外に排出させることができる速度に設定されている。処理時間は、設定されたテーブル20の回転数とともに、溶剤の残留が基板W1上からすべて無くなる時間に設定されている。テーブル20の回転数及び処理時間は、予め実験などで求められ設定されている。
【0048】
ステップ5では、全ての液供給が無い状態で、高速回転により乾燥が行われる。このステップ5では、テーブル20の回転数は1000rpmであり、処理時間は50sである。基板W1上が乾燥するのに必要な回転数、処理時間は、予め実験などで求められ設定されている。
【0049】
ステップ6では、高速回転により乾燥を停止するため、全ての液供給が無い状態で、回転速度が遅くされる。このステップ6では、テーブル20の回転数は50rpmであり、処理時間は10sである。
【0050】
前述の基板処理工程では、ステップ2及びステップ3において、回転機構40により回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の上面に溶剤が供給されている状態で、各振動子31は振動する。つまり、溶剤が供給されている間に、全ての振動子31が振動するため、全てのチャックピン23が振動することになる。基板W1から除去された接着物は、溶剤と共に流れるが、振動するチャックピン23により生じる波によって、振動するチャックピン23に近づけず、振動するチャックピン23を避けるように溶剤と共に処理対象物Wから排出される。これにより、接着物がチャックピン23に付着することが抑えられる。また、基板W1から除去された接着物が、振動していないチャックピン23に付着したとしても、そのチャックピン23が振動すると、付着した接着物はチャックピン23から離れ、溶剤と共に処理対象物Wから排出される。これにより、接着物がチャックピン23に付着し続けることが抑えられる。したがって、チャックピン23に付着した接着物が、搬送工程などでチャックピン23から離れて基板W1に付着し、基板W1が汚染されることが抑制されるので、基板品質を向上させることができる。なお、例えば、接着物がチャックピン23に付くと、次に搬送されてきた未処理の処理対象物Wが、汚染されたチャックピン23によって保持されることになる。これにより、リングW2に接着物が付着してしまい、そのまま処理が進むと搬送工程やダイシング工程などで基板W1に影響を与えることがある。
【0051】
また、ステップ2において、第1のノズル61は、回転機構40により回転するテーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に向けてDIWを吐出し、処理対象物Wの基板W1とリングW2との間にDIWを供給する。これにより、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面やリングW2の上面がDIWの液膜により覆われる。この状態で、ノズル51は、回転機構40により回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の中央付近に向けて溶剤を吐出する。また、ステップ3において、テーブル20の回転数が上昇すると、第2のノズル62は、回転機構40により回転するテーブル20上の処理対象物Wの基板W1の外周端部に向けてDIWを吐出し、処理対象物Wの基板W1とリングW2との間にDIWを供給する。これにより、テーブル20の回転数が例えば100rpm以上に上昇し(高速回転)、基板W1及びリングW2の間のDIWの液膜の厚さが薄くなっても、その基板W1及びリングW2の間にDIWが供給され、基板W1及びリングW2の間のDIWの液膜の厚さが保持される。したがって、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面がDIWの液膜により覆われている状態が確実に維持される。
【0052】
このようにして、溶剤の供給中、基板W1とリングW2との間のダイシングテープW3の粘着面やリングW2の上面は、DIWの液膜により確実に覆われている。これにより、基板W1から除去された接着物が溶剤と共に基板W1から排出されても、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面やリングW2の上面に付着することが抑えられる。したがって、ダイシングテープW3の粘着面やリングW2の上面に付着した接着物が、搬送工程やダイシング工程(例えば後工程)などでダイシングテープW3やリングW2から離れて基板W1に付着し、基板W1が汚染されることが抑制されるので、基板品質を向上させることができる。
【0053】
ここで、例えば、第1のノズル61が基板W1の外周端部に供給すると、DIWが基板W1の端面側から中心方向に広がってしまう。つまり、第1の回転数では、遠心力が弱いから基板W1の外周に排出する性能が出ない。このため、基板W1の中心方向にDIWが広がると、ステップ2で基板W1の中心に供給される溶剤が基板W1の外周に広がるのを阻害し、溶剤が基板W1の外周部における接着物と反応することができなくなる。前述したように、DIWと第1の処理液である溶剤は混和しないものであり、DIWの方が第1の処理液である溶剤より比重が大きい。そのため、DIWが基板W1の外周端部から中心方向に広がると、基板W1の中心から供給された溶剤が、基板W1の外周付近で、DIWとは混和せずにDIWの上を流れる状態になる。つまり、基板W1の外周付近は、溶剤が基板W1上の接着物に接触することが難しくなり、基板W1上の接着物に対して溶剤を供給することができない。つまり、テーブル20の回転数に応じてDIWの供給位置を変えている理由は、上記したように、基板W1上に供給される第1の処理液である溶剤が、DIWによって阻害されることなく、基板W1の外周までに広がり、基板W1上の接着物の剥離を確実に行うことと、基板W1とリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面に接着物の付着を抑制するためである。
【0054】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、処理液供給部50により第1の処理液(例えば、溶剤)が処理対象物Wに供給されている状態で、振動部30により各チャックピン23の全てを振動させる。基板W1から除去された接着物は、第1の処理液と共に流れるが、振動するチャックピン23により生じる波によって、振動するチャックピン23を避けるように第1の処理液と共に処理対象物Wから排出されるので、接着物がチャックピン23に付着することが抑えられる。したがって、チャックピン23に付着した接着物が、搬送工程などでチャックピン23から離れて基板W1に付着し、基板W1が汚染されることが抑制されるので、基板品質を向上させることができる。
【0055】
また、振動部30は、テーブル20の回転数に応じ、各チャックピン23のうち振動させるチャックピン23の個数を変える。これにより、テーブル20の回転数の上昇や下降に応じて、各チャックピン23により処理対象物Wをテーブル20に固定する固定力を調整することが可能になる。例えば、テーブル20の回転数を上げる場合には、処理対象物Wをテーブル20に固定する固定力を確保するため、振動させるチャックピン23の個数を減らす。一方、テーブル20の回転数を下げる場合には、必要とする固定力を確保できる範囲内において、振動させるチャックピン23の個数を増やす。このようにして、処理対象物Wをテーブル20に固定する固定力を確保しつつ、基板W1から除去された接着物がチャックピン23に付着することを抑えることができる。
【0056】
また、各振動子31を各カバー32によりそれぞれ覆うことによって、各振動子31が露出することを抑制することが可能となり、各振動子31が処理液などによって汚染されることを抑えることができる。これにより、振動子31の汚染に起因して基板W1が汚染されることが抑制されるので、基板品質を確実に向上させることができる。
【0057】
また、第1の実施形態によれば、処理対象物Wをテーブル20により支持し、そのテーブル20を回転機構40により回転させ、テーブル20の回転数に応じて、テーブル20により支持された処理対象物WのリングW2の上面、又は、テーブル20により支持された処理対象物Wの基板W1の外周端部に向けて、第1の処理液(例えば、溶剤)に混和せず第1の処理液よりも比重が大きい液体(例えば、DIW)を吐出し、処理対象物Wの基板W1とリングW2との間に液体を供給し、液体が処理対象物Wの基板W1とリングW2との間に供給されている状態で、回転するテーブル20により支持された処理対象物Wの基板W1の上面に処理液を供給する。
【0058】
つまり、第1の処理液に混和せず第1の処理液よりも比重が大きい液体が基板W1及びリングW2の間に流れ込み、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面がDIWの液膜により覆われる。このため、基板W1から除去された接着物は、基板W1及びリングW2の間やリングW2の上面に存在するDIWの液膜の上を流れる第1の処理液と共に処理対象物Wから排出されるので、その際に基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面に付着することが抑えられる。したがって、ダイシングテープW3の粘着面に付着した接着物が、搬送工程やダイシング工程などでダイシングテープW3から離れて基板W1に付着し、基板W1が汚染されることが抑制されるので、基板品質を確実に向上させることができる。
【0059】
また、リングW2の上面の高さが基板W1の上面の高さより低くなる位置でテーブル20が処理対象物Wを支持することで、接着物の排出性能を向上させることが可能になり、また、リングW2の上面を液膜により覆うことが可能になる。これにより、基板W1から除去された接着物が、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面やリングW2の上面に付着することが確実に抑えられる。したがって、ダイシングテープW3の粘着面やリングW2の上面に付着した接着物が、搬送途中やダイシング工程などの後工程でダイシングテープW3やリングW2から離れて基板W1に付着し、基板W1が汚染されることが確実に抑制されるので、基板品質をより確実に向上させることができる。
【0060】
また、第2のノズル62によるDIWの供給が行われる。第1のノズル61による供給だけでは、DIWの液膜が薄くなる状態及び液膜が無くなる状態になるので、第2のノズル62により、更に液量をアシストすることでDIWの液膜を維持する。さらに、第2のノズル62は、処理対象物Wの基板W1の外周端部に向けてDIWを吐出することで、遠心力の影響を考慮して、基板W1とリングW2の間にDIWの液膜を形成する。これにより基板W1及びリングW2の間のDIWの液膜の厚さ(膜厚)が維持されるので、溶剤の供給中、基板W1とリングW2との間のダイシングテープW3の粘着面はDIWの液膜により確実に覆われる。これにより、テーブル20の回転数を上げても、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面がDIWの液膜により覆われている状態となる。結果として、基板W1上の溶剤の液膜に浮遊する接着物は、基板W1基板W1及びリングW2の間やリングW2の上面に存在するDIWの液膜の上を流れる溶剤と共に流れ、処理対象物Wから接着物が溶剤と共に排出される。したがって、基板W1から除去された接着物が、基板W1及びリングW2の間のダイシングテープW3の粘着面に付着することを抑えることができる。
【0061】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について
図9を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(振動子配置)について説明し、その他の説明は省略する。
【0062】
図9に示すように、第2の実施形態に係る各振動子31は、各チャックピン23の上部にそれぞれ内蔵されている。これにより、各振動子31は露出することがなく、第1の実施形態に係る各カバー32が不要となる。
【0063】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、各振動子31を各チャックピン23の個々の内部にそれぞれ設けることによって、第1の実施形態に係る各カバー32を設けなくても、各振動子31が露出することを抑制することが可能となり、各振動子31が汚染されることを抑えることができる。これにより、振動子31の汚染に起因して基板W1が汚染されることが抑制されるので、装置構成を簡略化しつつ、基板品質を向上させることができる。
【0064】
<他の実施形態>
前述の説明においては、各振動子31を各チャックピン23の個々の上部にそれぞれ露出させて設けたり、各チャックピン23の個々の上部にそれぞれ内蔵させて設けたりすることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、各チャックピン23の個々の下部や中間部などに露出させて設けたり、内蔵させて設けたりするようにしてもよい。
【0065】
また、前述の説明においては、チャックピン23に振動子31を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、振動子31をチャックピン23から離してその近傍に位置付け、振動子により液を振動させて各チャックピン23に接着物が付着することを抑制するようにしてもよい。また、振動子31をテーブル20に内蔵させ、振動子31からの振動を、テーブル20を介してチャックピン23に伝達することも可能である。
【0066】
また、前述の説明においては、各振動子31を数秒の所定時間ごとに基板W1の円周方向に振動させることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、各振動子31の振動パターンは各種あり、各振動子31を所定パターンの順序で振動させるようにしてもよく、また、不規則に振動させるようにしてもよい。なお、各振動子31を選択的に振動させ、各チャックピン23のいずれかを振動させているが、全てのチャックピン23を選択的に振動させて、最終的には全てのチャックピン23を振動させる。つまり、処理液を供給している間に、全てのチャックピン23を振動させることになる。また、全てのチャックピン23を同時に振動させることも可能である。
【0067】
また、前述の説明においては、各振動子31の振動により各チャックピン23のいずれかを振動させてからテーブル20上の処理対象物Wに対する処理液の供給を開始することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、テーブル20上の処理対象物Wに対する処理液の供給を開始してから、各振動子31の振動により各チャックピン23のいずれかを振動させるようにしてもよい。すなわち、処理液の供給開前に各チャックピン23の振動を開始するようにしてもよく、また、処理液の供給開始後に各チャックピン23の振動を開始するようにしてもよいが、いずれの場合でも、処理液が処理対象物Wに供給されている状態で、各チャックピン23のいずれかを振動させることになる。
【0068】
また、前述の説明においては、各振動子31の個々の振動数を同じで一定にすることを例示したが、これに限るものではなく、各振動子31の個々の振動数を異ならせてもよく、あるいは、一定ではなく変化させるようにしてもよい。例えば、各振動子31の個々の振動数を全て異ならせたり、組ごとに異ならせたりする。また、テーブル20の回転数に応じ、各振動子31の個々の振動数を変える。これにより、テーブル20の回転数の上昇や下降に応じて、各チャックピン23により処理対象物Wをテーブル20に固定する固定力を調整することが可能になる。例えば、テーブル20の回転数を上げる場合には、処理対象物Wをテーブル20に固定する固定力を確保するため、振動子31の振動数を下げる。一方、テーブル20の回転数を下げる場合には、必要とする固定力を確保できる範囲内において、振動子31の振動数を上げる。このようにして、処理対象物Wをテーブル20に固定する固定力を確保しつつ、基板W1から除去された接着物がチャックピン23に付着することを抑えることができる。なお、テーブル20の回転数に応じて振動子31の振動数を変えることと、テーブル20の回転数に応じて振動させる振動子31(チャックピン23)の個数を変えることを組み合わせることも可能である。
【0069】
なお、前述の説明において、各振動子31の個々の振動数は、チャックピン23に接着物が付着することを抑制できる振動数になるように予め実験などで求められ設定されている。
【0070】
また、前述の説明においては、振動子31としてのMEMS振動子又は水晶振動子、圧電素子をチャックピン23に設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、振動子31としてのMEMS振動子及び発振回路を有するMEMS発振器、あるいは、振動子31としての水晶振動子及び発振回路を有する水晶発振器をチャックピン23に設けるようにしてもよい。
【0071】
また、前述の説明においては、テーブル20の回転数に応じて、テーブル20により支持された処理対象物WのリングW2の上面、あるいは、テーブル20により支持された処理対象物Wの基板W1の外周端部に向けて液供給部60により液体を吐出することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、テーブル20により支持された処理対象物Wの基板W1とリングW2との間に向けて吐出するようにしてもよい。なお、テーブル20により支持された処理対象物WのリングW2の上面及び基板W1の外周端部の両方に同時に液体を供給することも可能であり、テーブル20により支持された処理対象物Wの基板W1の外周端部及び基板W1とリングW2との間の両方に、また、テーブル20により支持された処理対象物WのリングW2の上面、基板W1の外周端部及び基板W1とリングW2との間の三個所に同時に液体を供給することも可能である。
【0072】
また、前述の説明においては、第1のノズル61及び第2のノズル62の二本のノズルを設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1のノズル61だけを設け、その第1のノズル61を移動機構により移動させて第2のノズル62のかわりに用いるようにしても良い。すなわち、第1のノズル61は、テーブル20の回転数が第1の回転数である場合、テーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に向けて液体を吐出し、テーブル20の回転数が第2の回転数である場合、テーブル20上の処理対象物Wの基板W1の外周端部に向けて液体を吐出する。なお、第1のノズル61は、テーブル20の回転数が第1の回転数から第2の回転数に変更される前に、テーブル20上の処理対象物WのリングW2の上面に向けて液体を吐出する位置から、テーブル20上の処理対象物Wの基板W1の外周端部に向けて液体を吐出する位置に移動する。また、第1のノズル61及び第2のノズル62のどちらか一方又は両方をリングW2及び基板W1の周方向に所定の間隔で複数設けることも可能である。
【0073】
また、前述の説明においては、第1のノズル61及び第2のノズル62は、鉛直方向に対して傾いていてもよく、鉛直方向に平行であってもよい。また、第1のノズル61の傾斜角度及び第2のノズル62の傾斜角度は同じであっても、異なっていてもよい。第1のノズル61及び第2のノズル62の個々の傾斜角度をテーブル20の回転数に応じて変更するようにしてもよく、例えば、連結部材やモータなどを有する角度変更機構(角度変更部)によりテーブル20の回転数に応じて変更するようにしてもよい。また、テーブル20の回転数ごとに傾斜角度の異なる複数のノズルを設けておき、それらのノズルをテーブル20の回転数に応じて選択して用い、テーブル20の回転数に応じてノズルの傾斜角度を変更するようにしてもよい。このようにして、第1のノズル61や第2のノズル62などのノズルがテーブル20上の処理対象物Wに対して液体を吐出する角度(吐出角度)を変更することができる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10 基板処理装置
20 テーブル
23 チャックピン
30 振動部
31 振動子
32 カバー
50 処理液供給部
W 処理対象物
W1 基板
W2 リング
W3 ダイシングテープ