(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】エッチング組成物添加剤、その製造方法及びこれを含むエッチング組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
H01L21/306 E
(21)【出願番号】P 2019183141
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0128248
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515268869
【氏名又は名称】エスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム チョル ウ
(72)【発明者】
【氏名】シム ユ ナ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】クヮク ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボム
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ジン キュン
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-029717(JP,A)
【文献】特開2013-128109(JP,A)
【文献】特開2012-222330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017224(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0157427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0264308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水リン酸と
前記無水リン酸100重量部に対して下記化学式1で表されるシラン化合物
0.1~10重量部との反応により生成された
シリルホスフェートを含む、エッチング組成物添加剤。
【化1】
前記化学式1中、
Aはn価ラジカルであり;
Lは直接結合又はC
1-C
3ヒドロカルビレンであり;
R
1~R
3は互いに独立して水素、ヒドロキシ、C
1-C
20ヒドロカルビル又はC
1-C
20アルコキシであり、
nは2~5の整数であり、
前記化学式1のシラン化合物はシロキサンを除外する。
【請求項2】
前記R
1~R
3は互いに独立してC
1-C
20アルコキシである、請求項1に記載のエッチング組成物添加剤。
【請求項3】
前記AはC
1-C
20ヒドロカルビレン、アミン塩ラジカル、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル、結合部位がSであるラジカル又は結合部位がPであるラジカルである、請求項1又は2に記載のエッチング組成物添加剤。
【請求項4】
前記Aは
【化2】
である、請求項1から3のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤。
ここで、X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基であり、
R
11~R
26は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、
R
27~R
28は独立して、水素、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリール、C
1-C
20アルコキシ又はC
1-C
20アルキルC
1-C
20アルコキシであり、
L
1~L
4はC
1-C
20アルキレン、C
6-C
20アリーレン又はR
31(OR
32)pであり、ここで、R
31及びR
32は独立してC
1-C
20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、
L
5は直接結合又は(CH
2)qNR
33NR
34であり、ここで、R
33及びR
34は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数である。
【請求項5】
nが2又は3である、請求項1から4のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤。
【請求項6】
前記シラン化合物は下記構造式(1)~(26)のうちから選択される少なくとも一つである、請求項1から5のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤。
【化3】
【化4】
【化5】
(前記式中、Rは水素、又はC
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【請求項7】
前記無水リン酸は正リン酸、ピロリン酸、P
3以上のポリリン酸及びメタリン酸からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1から6のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤。
【請求項8】
無水リン酸及び
前記無水リン酸100重量部に対して下記化学式1
で表されるシラン化合物
0.1~10重量部を含む混合物を製造する段階と、
前記混合物を反応させてシリルホスフェート化合物を生成する段階と、
を含む、エッチング組成物添加剤の製造方法。
【化6】
前記化学式1中
Aはn価ラジカルであり;
Lは直接結合又はC
1-C
3ヒドロカルビレンであり;
R
1~R
3は互いに独立して水素、ヒドロキシ、C
1-C
20ヒドロカルビル又はC
1-C
20アルコキシであり、
nは2~5の整数であり、
前記化学式1のシラン化合物はシロキサンを除外する。
【請求項9】
前記R
1~R
3は互いに独立してC
1-C
20アルコキシである、請求項
8に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【請求項10】
前記AはC
1-C
20ヒドロカルビレン、アミン塩ラジカル、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル又は結合部位がSであるラジカル又は結合部位がPであるラジカルである、請求項
8又は
9に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【請求項11】
前記Aは
【化7】
である、請求項
8から
10のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
ここで、X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基であり、
R
11~R
26は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、
R
27~R
28は独立して、水素、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリール、C
1-C
20アルコキシ又はC
1-C
20アルキルC
1-C
20アルコキシであり、
L
1~L
4はC
1-C
20アルキレン、C
6-C
20アリーレン又はR
31(OR
32)pであり、ここで、R
31及びR
32は独立してC
1-C
20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、
L
5は直接結合又は(CH
2)qNR
33NR
34であり、ここで、R
33及びR
34は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数である。
【請求項12】
nが2又は3である、請求項
8から
11のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【請求項13】
前記
化学式1のシラン化合物は下記構造式(1)~(26)のうちから選択される少なくとも一つである、請求項
8から
12のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【化8】
【化9】
【化10】
(前記式中、Rは水素、又はC
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【請求項14】
前記無水リン酸は正リン酸、ピロリン酸、P
3以上のポリリン酸及びメタリン酸からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項
8から
13のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【請求項15】
前記無水リン酸はリン酸を180~220℃の範囲の温度に加熱して水を除去したものである、請求項
8から
14のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【請求項16】
前記混合物は
前記無水リン酸100重量部、及び
前記無水リン酸100重量部に対して
化学式1のシラン化合物0.1~10重量部を含むものである、請求項
8から
15のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【請求項17】
前記反応は20~200℃の温度範囲で行う、請求項
8から
16のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤の製造方法。
【請求項18】
リン酸
70~89重量%と、
請求項1から
7のいずれか一項に記載のエッチング組成物添加剤
0.01~10重量%と、
溶媒と、
を含む、エッチング組成物。
【請求項19】
下記化学式2で表されるシラン化合物をさらに含む、請求項
18に記載のエッチング組成物。
【化11】
前記化学式2中、R
71~R
74は互いに独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロヒドロカルビルであり、R
71~R
74はそれぞれ存在するか又は2個以上がヘテロ環元素を通じて互いに連結された環状である。
【請求項20】
アンモニウム塩をさらに含む、請求項
18又は19に記載のエッチング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング組成物添加剤、その製造方法及びこれを含むエッチング組成物に関する。具体的には、本発明は酸化膜のエッチング率を最小化しながら窒化膜を選択的に除去することができる高選択比を提供し、エッチング液のゲル化を防止することができるエッチング組成物添加剤、その製造方法及び上記エッチング組成物添加剤を含むエッチング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン酸化膜(SiO2)などの酸化膜及びシリコン窒化膜(SiNx)などの窒化膜は代表的な絶縁膜であり、これらのシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜は半導体製造工程においてそれぞれ単独で、又は1層以上の膜が交互に積層されて用いられる。また、このような酸化膜及び窒化膜は金属配線などの導電性パターンを形成するためのハードマスクとしても利用される。
【0003】
上記窒化膜を除去するためのウェットエッチング工程では一般にリン酸(phosphoric acid)と脱イオン水(deionized water)との混合物が用いられている。上記脱イオン水はエッチング率の減少及び酸化膜に対するエッチング選択性の変化を防止するために添加されるものであるが、供給される脱イオン水の量の微細な変化でも窒化膜エッチング除去工程に不良が発生するという問題がある。また、リン酸は強酸で腐食性を有しており、取り扱いに困難がある。
【0004】
これを解決するために、従来はリン酸(H3PO4)にフッ酸(HF)又は硝酸(HNO3)などを含むエッチング組成物を利用して窒化膜を除去する技術が公知となっていたが、却って窒化膜と酸化膜とのエッチング選択比を阻害させる結果をもたらした。また、リン酸とケイ酸塩、又はケイ酸を含むエッチング組成物を利用する技術も公知となっていたが、ケイ酸やケイ酸塩は基板に影響を及ぼす可能性があるパーティクルを発生させ、却って半導体製造工程に適さないという問題点がある。
【0005】
しかし、このような窒化膜の除去のためのウェットエッチング工程でリン酸を利用する場合、窒化膜と酸化膜とのエッチング選択比の低下によって窒化膜のみならずSOD酸化膜までもエッチングされて有効酸化膜高さ(Effective Field Oxide Height、EFH)を調節することが困難となる。そのため、窒化膜の除去のための十分なウェットエッチング時間を確保することができなかったり、追加工程が必要となったりし、変化を誘発して素子特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
したがって、半導体製造工程で酸化膜に対して窒化膜を選択的にエッチングしながらもパーティクル発生のような問題点を有しない高選択比のエッチング組成物及びこのためのエッチング組成物用添加剤が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、酸化膜のエッチング率を最小化しながら窒化膜を選択的に除去することができ、素子特性に悪影響を及ぼすパーティクル発生などの問題点を有しない高選択比のエッチング組成物及び上記エッチング組成物に用いられる添加剤及びその添加剤を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はエッチング組成物添加剤を提供しようとするものであり、無水リン酸と下記化学式1で表されるシラン化合物との反応生成物であるエッチング組成物添加剤を提供する。
【0009】
【化1】
上記化学式1中、Aはn価ラジカルであり;Lは直接結合又はC
1-C
3ヒドロカルビレンであり;R
1~R
3は互いに独立して水素、ヒドロキシ、C
1-C
20ヒドロカルビル又はC
1-C
20アルコキシであり、nは2~5の整数であり、上記化学式1のシラン化合物はシロキサンを除外する。
【0010】
上記化学式1中、上記R1~R3は互いに独立してC1-C20アルコキシであってもよい。
【0011】
上記化学式1中、上記AはC1-C20のヒドロカルビレン、アミン塩ラジカル、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル、結合部位がSであるラジカル、又は結合部位がPであるラジカルであってもよい。
【0012】
上記Aは
【化2】
であってもよく、ここで、X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基であり、R
11~R
26は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、R
27~R
28は独立して、水素、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリール、C
1-C
20アルコキシ又はC
1-C
20アルキルC
1-C
20アルコキシであり、L
1~L
4はC
1-C
20アルキレン、C
6-C
20アリーレン又はR
31(OR
32)pであり、ここで、R
31及びR
32は独立してC
1-C
20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、L
5は直接結合又は(CH
2)qNR
33NR
34であり、ここで、R
33及びR
34は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数であってもよく、2又は3の整数であることがより好ましい。
【0013】
上記化学式1のシラン化合物は下記構造式(1)~(26)のうちから選択される少なくとも一つであってもよい。
【0014】
【化3】
【化4】
【化5】
(上記式中、Rは水素、又はC
1-C
20のアルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【0015】
上記無水リン酸は正リン酸、ピロリン酸、P3以上のポリリン酸及びメタリン酸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0016】
上記エッチング組成物添加剤は無水リン酸100重量部に対してシラン化合物0.1~10重量部の反応により生成されたものであり、シリルホスフェートを含むことが好ましい。
【0017】
本発明は、他の実施形態として、エッチング組成物添加剤用シリルホスフェートの製造方法に関するものであり、無水リン酸及び化学式1のシラン化合物を含む混合物を製造する段階と、上記混合物を反応させてシリルホスフェート化合物を製造する段階とを含むエッチング組成物添加剤用シリルホスフェートの製造方法を提供する。
【0018】
【化6】
上記化学式1中、Aはn価ラジカルであり;Lは直接結合又はC
1-C
3のヒドロカルビレンであり;R
1~R
3は互いに独立して水素、ヒドロキシ、C
1-C
20のヒドロカルビル又はC
1-C
20アルコキシであり、nは2~5の整数であり、上記化学式1のシラン化合物はシロキサンを除外する。
【0019】
上記化学式1中、R1~R3は互いに独立してC1-C20アルコキシであることがより好ましい。
【0020】
上記化学式1中、上記AはC1-C20のヒドロカルビレン、アミン塩ラジカル、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル、結合部位がSであるラジカル又は結合部位がPであるラジカルであってもよい。
【0021】
上記化学式1中、上記Aは
【化7】
であってもよく、ここで、X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基であり、R
11~R
26は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、R
27~R
28は独立して、水素、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリール、C
1-C
20アルコキシ又はC
1-C
20アルキルC
1-C
20アルコキシであり、L
1~L
4はC
1-C
20アルキレン、C
6-C
20アリーレン又はR
31(OR
32)pであり、ここで、R
31及びR
32は独立してC
1-C
20アルキレンであり、pは1~5の整数であり、L
5は直接結合又は(CH
2)qNR
33NR
34であり、ここで、R
33及びR
34は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数である。
【0022】
上記化学式1中、nは2又は3であることがより好ましい。
【0023】
上記シラン化合物は下記構造式(1)~(26)のうちから選択される少なくとも一つであってもよい。
【0024】
【化8】
【化9】
【化10】
(上記式中、Rは水素、又はC
1-C
20アルキル又はC
1-C
20アリールである。)
【0025】
上記無水リン酸は正リン酸、ピロリン酸、P3以上のポリリン酸及びメタリン酸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0026】
上記無水リン酸はリン酸を180~220℃の範囲の温度に加熱して水を除去したものであってもよい。
【0027】
上記混合物は無水リン酸100重量部、及び無水リン酸100重量部に対してシラン化合物0.1~10重量部を含むものであってもよい。
【0028】
上記反応は20~200℃の温度範囲で行うことができる。
【0029】
また、本発明はエッチング組成物を提供しようとするものであり、リン酸、上記したようなエッチング組成物添加剤用シリルホスフェート又は上記した方法によって製造されたエッチング組成物添加剤用シリルホスフェート、及び溶媒を含むエッチング組成物を提供する。
【0030】
上記エッチング組成物添加剤はシリルホスフェートを0.01~10重量%の含量で含むことができる。
【0031】
上記エッチング組成物はリン酸70~89重量%、エッチング組成物添加剤0.01~10重量%及び溶媒11~30重量%を含むことができる。
【0032】
エッチング組成物は下記化学式2で表されるシラン化合物をさらに含むことができる。
【0033】
【0034】
上記化学式2中、R71~R74は互いに独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロヒドロカルビルであり、R71~R74はそれぞれ存在するか又は2個以上がヘテロ環元素を通じて互いに連結された環状である。
【0035】
また、上記エッチング組成物はアンモニウム塩をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるエッチング組成物は酸化膜の表面と反応して酸化膜を保護することができる保護膜を形成するシラン系添加剤を含むことにより酸化膜に対する窒化膜のエッチング選択比が高い。
【0037】
また、本発明のエッチング組成物は無水状態のリン酸を用いることにより溶媒によってシラン系添加剤の加水分解と重縮合反応により溶解されずに析出する現象を抑制することができる。
【0038】
また、シリコン窒化膜のエッチング速度、エッチング選択比及びエッチング安定性を向上させてエッチング工程の効率を向上させることができる。
【0039】
また、本発明のエッチング組成物を利用すると、窒化膜除去時に酸化膜の膜質損傷や酸化膜のエッチングによる電気的特性の低下を防止し、パーティクル発生を防止して、素子特性を向上させることができる。特に、本発明は2以上のシランを含むシラン化合物を用いることにより少量添加でも優れた選択比が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】フラッシュメモリ素子の素子分離工程を示す工程断面図である。
【
図2】フラッシュメモリ素子の素子分離工程を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0042】
本発明はエッチング組成物、特に、酸化膜のエッチング率を最小化しながら窒化膜を選択的に除去することができる高選択比を有し、かつ貯蔵安定性に優れたエッチング組成物を提供しようとするものである。
【0043】
本発明のエッチング組成物はリン酸及び添加剤及び溶媒を含む。
【0044】
上記リン酸はシリコン窒化物と反応して窒化物をエッチングするものであり、上記リン酸は下記式(1)のような反応によりシリコン窒化物をエッチングする。
【0045】
3Si3N4+27H2O+4H3PO4→4(NH4)3PO4+9SiO2H2O …[式(1)]
【0046】
上記リン酸はエッチング組成物の全重量に対して70~89重量%の含量で含むことが好ましい。70重量%未満の場合には窒化膜が容易に除去されないという問題があり、89重量%を超える場合には窒化膜に対する高い選択比が得られない。
【0047】
本発明のエッチング組成物は無水リン酸と次の化学式1で表されるシラン化合物を反応させて生成された生成物を添加剤として含む。
【0048】
【0049】
上記化学式1中、R1~R3は独立してそれぞれ水素、ヒドロキシ、C1-C20ヒドロカルビル又はC1-C20アルコキシであってもよい。より具体的には、R1~R3は互いに独立してC1-C20アルコキシであってもよい。
【0050】
上記Lは直接結合であってもよく、又はC1-C3ヒドロカルビレン、より具体的には、C1-C3アルキレンであってもよい。
【0051】
さらに、上記nは2~5の整数であってもよい。
【0052】
上記Aはn価のラジカルを示す。例えば、AはC1-C20ヒドロカルビレン、アミン塩ラジカル、結合部位がNであるラジカル、結合部位がOであるラジカル、結合部位がSであるラジカル、結合部位がPであるラジカルなどであってもよい。上記のようなシラン化合物はシリコンの個数が2以上の構造を有することにより窒化膜に対する高選択比を提供し、エッチング液のゲル化を顕著に防止することができるため、より好ましい。
【0053】
上記Aはアミン塩ラジカルであってもよく、具体的には、*-N
+(R
11R
12)X
1
--*、又は
【化13】
であってもよい。ここで、X
1~X
3は互いに独立してハロゲン又はC
1-C
20アルキルカーボネート基であってもよい。
【0054】
上記アミン塩ラジカルを有するシラン化合物としては、これに限定するものではないが、nが2の整数の場合として、次のような式(1)及び(2)の構造を有するものが挙げられる。
【0055】
【0056】
また、上記Aは結合部位がNであるラジカルであってもよい。nが2の整数の場合の結合部位がNであるラジカルとしては、*-NH-*、*-NCH2CHOHCH3-*のような*-NR13-*;*-NH(CH2)3NH-*又は*-NCH3(CH2)3NCH3-*のような*-NR14L1NR15-*;*-NHCONH-*のような*-NR16CONR17-*;*-NHCSNH-*のような*-NR18CSNR19-*;*-NHCONH(CH2)2NHCONH-*、*-NHCONH(C6H4)NHCONH-*又は*-NHCONH(CH2)2O(CH2)2O(CH2)2NHCONH-*のような*-NR20CONR21L2NR22CONR23-*;*-NHCON(CH2)2(CH2)2NCONH-*のような*-NR24CONL3L4NCONR25-*などが挙げられる。
【0057】
上記R13~R25は独立して水素、C1-C20アルキル又はC6-C20アリールであってもよく、L1~L4はC1-C20アルキレン、C6-C20アリーレン又はR31(OR32)pであり、ここで、R31及びR32は独立してC1-C20アルキレンであり、pは1~5の整数である。
【0058】
このようなnが2の整数の場合の結合部位がNであるラジカルを有するシラン化合物としては、例えば、次の式(3)~(13)のような構造を有するものが挙げられる。
【0059】
【0060】
一方、nが3の整数の場合の結合部位がNであるラジカルとしては、
【化17】
が挙げられる。このとき、上記R
26は水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであってもよく、上記L
5は直接結合又は(CH
2)qNR
33NR
34であってもよく、ここで、R
33及びR
34は独立して水素、C
1-C
20アルキル又はC
6-C
20アリールであり、qは1~5の整数である。
【0061】
このようなnが3の整数の場合の結合部位がNであるラジカルを有するシラン化合物としては、例えば、次の式(14)及び(15)のような構造を有するものが挙げられる。
【0062】
【0063】
また、上記Aは結合部位がOであるラジカルであってもよく、具体的には、*-O-*であってもよい。上記結合部位がOであるラジカルを有するシラン化合物としては、これに限定するものではないが、nが2の整数の場合として、次のような式(16)の構造を有するものが挙げられる。
【0064】
【0065】
また、上記Aは結合部位がSであるラジカルであってもよく、具体的には、*-S-*、*-S-S-*、
【化20】
であってもよい。上記結合部位がSであるラジカルを有するシラン化合物としては、これに限定するものではないが、nが2の整数の場合として、次のような式(17)~(20)の構造を有するものが挙げられる。
【0066】
【化21】
(上記式中、Rは水素、又はC
1-C
20のアルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【0067】
また、上記Aは結合部位がPであるラジカルであってもよく、具体的には、
【化22】
であってもよい。上記結合部位がPであるラジカルを有するシラン化合物としては、これに限定するものではないが、nが2又は3の整数の場合として、次のような式(21)~(26)の構造を有するものが挙げられる。
【0068】
【化23】
(上記式中、Rは水素、又はC
1-C
20のアルキル又はC
6-C
20アリールである。)
【0069】
上記のようなシリコンの個数が2以上の構造を有するシラン化合物を用いることによりこれと結合されている水酸基が増加し、これにより、エッチング工程でシリコン酸化物の表面を不動態化して酸化膜のエッチング速度を減少させることができる。
【0070】
但し、本発明において、上記シラン化合物はシロキサンではないことが好ましい。シロキサン化合物は溶剤に対する溶解度が低く、溶解されずに析出したり、エッチング組成物のゲル化を誘発したりするため好ましくない。したがって、上記化学式1においてLが直接結合であり、Aが結合部位がOであるラジカルであるシロキサン化合物は本発明では除外する。
【0071】
本発明のエッチング組成物は上記のような化学式1の化合物と無水リン酸との反応により生成された生成物を添加剤として含む。上記無水リン酸は特に限定するものではないが、リン酸中の水分を完全に除去したものであれば、正リン酸、ピロリン酸、P3以上のポリリン酸、メタリン酸のいずれでもよく、これらのうちいずれか一つを単独で又は2以上混合して用いることができる。上記無水リン酸はリン酸を180~220℃の温度に加熱して水を除去することにより得られる。
【0072】
これと共に無水状態のリン酸を上記シラン化合物と反応させることによりシリルホスフェートを生成することができる。上記無水リン酸と化学式1のシラン化合物との反応は20~200℃の温度範囲で反応副産物、例えば、メタノール又はエタノールを除去することにより行うことができる。
【0073】
上記無水リン酸と化学式1のシラン化合物は無水リン酸100重量部に対して上記シラン化合物を0.1~10重量部の含量で混合して反応させることが好ましい。上記シラン化合物の含量が0.1重量部未満の場合にはシランの含量が低すぎて窒化膜に対する高選択比を具現することが困難であり、シラン化合物の含量が10重量部を超える場合には無水リン酸に溶解されずにパーティクルとして析出する恐れがある。上記シラン化合物は、例えば、無水リン酸100重量部に対して、0.1~7重量部、0.5~7重量部、1~7重量部、1~5重量部、3~5重量部などであってもよい。
【0074】
上記化学式1のシラン化合物のようにシリコン原子に親水性官能基が結合された形を有する場合にはシラン化合物が水分と接触してヒドロキシ基に置換されてシリコン-ヒドロキシ基(-Si-OH)を形成する可能性があり、このようなシリコン-ヒドロキシ基は重合によってシロキサン(-Si-O-Si-)基を生成して、シリコン系パーティクルが異常成長及び析出する現象を示す可能性がある。
【0075】
しかし、本発明のシリルホスフェートをエッチング組成物に含むことにより、溶媒である水によってシラン化合物が加水分解及び重縮合反応で溶解されずに析出する現象を抑制することができ、溶液安定性を向上させることができる。また、上記シリルホスフェートは2以上のシラン基を有するものであり、エッチング液組成物に少量添加されてもシリコン酸化膜を効果的に保護することができ、酸化膜に対する窒化物のエッチング選択性を増加させることができる。
【0076】
上記シリルホスフェートは上記エッチング組成物の全重量に対して0.001~1重量%の含量で含むことができる。上記シリルホスフェートの含量が0.001重量%未満の場合にはシランの含量が低くて窒化膜に対する高選択比を具現することが困難である。一方、1重量%を超える場合には添加量の増加による更なる効果の上昇が得られない。シリルホスフェートの添加量は、例えば、0.001、0.002、0.003、0.005、0.01、0.03、0.05又は0.1重量%以上、0.3、0.5、0.7、1、5又は10重量%以下であってもよい。
【0077】
本発明のエッチング組成物は上記無水リン酸と化学式1のシラン化合物との反応生成物であるシリルホスフェートと共に無水リン酸を含むことができる。例えば、上記無水リン酸と化学式1のシラン化合物との反応によりシリルホスフェートを生成し、残存する未反応無水リン酸を含む状態でエッチング組成物添加剤として用いることができる。
【0078】
このとき、上記エッチング組成物添加剤はシリルホスフェートを0.01~10重量%の含量で含むことができる。上記シリルホスフェートの含量が0.01重量%未満であれば、窒化膜に対する選択比が減少する可能性があり、10重量%を超える場合には、溶液がゲル化する可能性がある。より好ましくは、上記シリルホスフェートはエッチング組成物添加剤に対して0.05、0.1、0.5又は0.7重量%以上、1.2、1.5、3、5又は7重量%以下の含量範囲で選択されることができる。
【0079】
このとき、上記シリルホスフェートと無水リン酸を含むエッチング組成物添加剤は、例えば、エッチング液組成物の全重量に対して0.01~10重量%の含量で含むことができる。上記範囲内でエッチング組成物のゲル化を防止することができるため好ましい。具体的な例として、上記エッチング組成物添加剤は0.01、0.05、0.1、0.3、0.5、0.7又は1重量%以上、そして、1、3、5、7又は10重量%以下の含量範囲で含むことができる。
【0080】
本発明のエッチング組成物は次の化学式2で表されるシラン化合物をさらに含むことができる。
【0081】
【0082】
上記化学式2中、R71~R74は互いに独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロヒドロカルビルであってもよく、R71~R74はそれぞれ存在するか又は2個以上がヘテロ元素を通じて互いに連結された環状であってもよい。例えば、水素、C1-C20アルキル又はC1-C20ヘテロアルキルなどであってもよい。このとき、上記ヘテロ元素は特に限定しないが、例えば、N、S、O、Pなどであってもよい。
【0083】
上記化学式2で表されるシラン化合物はエッチング組成物の全重量に対して0.005~10重量%の含量で含むことができる。
【0084】
また、本発明のエッチング組成物にはアンモニウム塩をさらに添加することができる。アンモニウム塩はエッチング組成物のゲル化を防止することができ、全重量に対して0.001~10重量%の含量で添加することができる。0.001重量%未満添加すると、ゲル化を低下させる物性改善効果が少なく、10重量%を超えて添加すると、アンモニウム塩がゲル化の原因となる可能性がある。
【0085】
上記アンモニウム塩としては、アンモニウムイオンを有する化合物として、本発明の属する分野で通常用いられるものを本発明でも好適に用いることができる。このようなアンモニウム塩としては、これに限定するものではないが、例えば、アンモニア水、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、フッ酸アンモニウムなどが挙げられ、これらのうちいずれか一つを単独で用いることもでき、2以上を混合して用いることもできる。
【0086】
さらに、本発明のエッチング組成物はエッチング性能をより向上させるために、本技術分野で通常用いられる任意の添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては界面活性剤、金属イオン封鎖剤、腐食防止剤などが挙げられる。
【0087】
本発明のエッチング組成物は溶媒を含み、上記溶媒は11~30重量%の含量で含むことができる。上記溶媒は特に限定しないが、水を用いることができる。
【0088】
本発明のエッチング組成物は酸化膜と窒化膜を含む半導体素子から窒化膜を選択的にエッチング除去するために用いられるものであり、上記窒化膜はシリコン窒化膜、例えば、SiN膜、SiON膜などを含むことができる。
【0089】
また、酸化膜はシリコン酸化膜、例えば、SOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro Silicate Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate Glass)膜、LPTEOS(Low Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、APL(Advanced Planarization Layer)膜、ALD(Atomic Layer Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)、O3-TEOS(O3-Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つ以上の膜であってもよい。
【0090】
本発明のエッチング組成物を利用するエッチング工程はウェットエッチング方法、例えば、浸漬させる方法、噴射する方法などによって行われることができる。
【0091】
本発明のエッチング組成物を用いるエッチング工程の例を
図1及び
図2に概略的に示した。
図1及び
図2は、一例として、フラッシュメモリ素子の素子分離工程を示す工程断面図である。
【0092】
まず、
図1に示されたように、基板10上にトンネル酸化膜11、ポリシリコン膜12、バッファ酸化膜13及びパッド窒化膜14を順次形成した後、ポリシリコン膜12、バッファ酸化膜13及びパッド窒化膜14を選択的にエッチングしてトレンチを形成する。次いで、トレンチをギャップフィルするまでSOD酸化膜15を形成した後、パッド窒化膜14を研磨停止膜としてSOD酸化膜15に対してCMP工程を行う。
【0093】
次に、
図2に示されたように、前述した本発明によるエッチング組成物を利用したウェットエッチングによってパッド窒化膜14を除去した後、洗浄工程によってバッファ酸化膜13を除去する。これにより、フィールド領域に素子分離膜15Aが形成される。
【0094】
本発明のエッチング組成物を利用するエッチング工程は当業界で周知のウェットエッチング方法、例えば、浸漬させる方法、噴射する方法などによって行われることができる。
【0095】
エッチング工程時の工程温度は50~300℃の範囲、好ましくは100~200℃の範囲、より好ましくは156~163℃の範囲であってもよく、適正温度は他の工程とその他の要因を考慮して必要に応じて変更されることができる。
【0096】
このように本発明のエッチング組成物を利用して行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法によれば、窒化膜と酸化膜が交互に積層されていたり混在していたりする場合、窒化膜に対する選択的エッチングが可能である。また、従来のエッチング工程で問題となっていたパーティクルの発生を防止して工程の安定性及び信頼性を確保することができる。
【0097】
したがって、このような方法は半導体素子製造工程において酸化膜に対して窒化膜の選択的エッチングが必要な様々な過程に効率的に適用されることができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。以下の実施例は本発明の一例に関するものであり、これにより本発明が限定されるものではない。
【0099】
合成例1-シラン化合物1の製造
100mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し、還流冷却器を設置した後、1,4-ジアザシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)7.29gとDMF15ml、(3-クロロプロピル)トリエトキシシラン37mlを投入した。
【0100】
窒素雰囲気を維持しながら温度を105℃に昇温し、24時間撹拌した後、常温に冷却した。
【0101】
その後、ノルマルヘキサン50mlを投入して再スラリー化した後、ろ過した。
【0102】
ろ過後、個体をノルマルヘキサン50mlで洗浄し、真空乾燥して下記の式のようなシラン化合物(シラン化合物1)32.8gを得た。
【0103】
【化25】
1H-NMR(CDCl
3)3.81~3.76(m、12H)、3.66~3.63(m、4H)、3.55(t、J=7.0Hz、4H)、3.44~3.41(m、4H)、3.25(t、J=7.0Hz、4H)、1.94~1.79(m、4H)、1.19(t、J=2.5Hz、18H)、0.60(t、J=7.0Hz、4H)
【0104】
合成例2-シラン化合物2の製造
50mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン3.4gとジクロロメタン15mlを投入した。
【0105】
窒素雰囲気を維持しながら0℃に冷却した後、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート2.5gを30分間投入し、1時間撹拌した後、常温に昇温した。
【0106】
その後、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物(シラン化合物2)5.7gを得た。
【0107】
【化26】
1H-NMR(CDCl
3)4.91(br、1H)、3.82(q、J=7.0Hz、6H)、3.58(s、18H)、3.21(quint、J=7.0Hz、2H)、3.17(t、J=8.0Hz、4H)、1.66~1.60(m、6H)、1.22(t、J=7.0Hz、9H)、0.66~0.59(m、6H)
【0108】
合成例3-シラン化合物3の製造
100mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン11.1gとジクロロメタン30mlを投入した。
【0109】
窒素雰囲気を維持しながら0℃に冷却した後、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート12.4gを30分間投入し、1時間撹拌した後、常温に昇温した。
【0110】
その後、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物(シラン化合物3)23.0gを得た。
【0111】
【化27】
1H-NMR(CDCl
3)4.48(br、2H)、3.81(q、J=7.0Hz、12H)、3.15(q、J=7.0Hz、4H)、1.16(quint、J=7.5Hz、4H)、1.22(t、J=7.0Hz、18H)、0.63(t、J=8.5Hz、4H)
【0112】
合成例4-シラン化合物4の製造
50mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し、1,3-ジブロモプロパン2.0gとトリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン5.8gを投入した。
【0113】
6時間撹拌してからトルエン50mlを投入した後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液10mlを投入し、10分間撹拌した。
【0114】
その後、有機層を分離して硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物(シラン化合物4)1.1gを得た。
【0115】
【化28】
1H-NMR(CDCl
3)3.57(s、18H)、2.33(quint、J=7.0Hz、8H)、2.21(s、6H)、1.67~1.54(m、6H)、0.64~0.61(m、4H)
【0116】
合成例5-シラン化合物5の製造
100mlの丸底フラスコに撹拌子を投入し、エチレンジアミン4.2gとジクロロメタン50mlを投入した。
【0117】
窒素雰囲気を維持しながら0℃に冷却した後、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート34.6gを30分間投入した。
【0118】
1時間撹拌した後、常温に昇温し、減圧乾燥して下記の式のようなシラン化合物(シラン化合物5)38.4gを得た。
【0119】
【化29】
1H-NMR(CDCl
3)5.34(br、2H)、4.89(br、2H)、3.81(q、J=7.0Hz、12H)、3.27(br、4H)、3.13(q、J=7.0Hz、4H)、1.60(quint、J=7.5Hz、4H)、1.22(t、J=7.0Hz、18H)、0.63(t、J=8.5Hz、4H)
【0120】
実施例
比較例1
リン酸水溶液にエッチング添加剤として3-アミノプロピルシラントリオールを添加して、エッチング用組成物を製造した。
【0121】
このとき、上記エッチング用組成物中のリン酸及びエッチング添加剤の含量は表1に示したようにリン酸85重量%、エッチング添加剤0.5重量%及び残部の水で構成した。
【0122】
参考例1
リン酸水溶液にエッチング添加剤として上記合成例1から得られたシラン化合物1を添加して、エッチング用組成物を製造した。
【0123】
このとき、上記エッチング用組成物中のリン酸及びエッチング添加剤の含量は表1に示したようにリン酸85重量%、シラン化合物1のエッチング添加剤0.5重量%及び残部の水で構成した。
【0124】
実施例1
メタリン酸を200℃の温度で加熱して水を完全に除去して無水メタリン酸を製造した。
【0125】
上記無水メタリン酸100重量部に対して上記合成例1から得られたシラン化合物1を5重量部添加した後、120℃の温度に加熱して反応副産物であるエタノールを除去することによりシリルホスフェートを含むエッチング組成物添加剤(添加剤1)を製造した。
【0126】
上記製造された添加剤1をリン酸水溶液に添加してエッチング組成物を製造した。
【0127】
このとき、上記エッチング組成物中のリン酸及び添加剤1の含量は表1に示したようにリン酸85重量%、添加剤1 0.5重量%及び残部の水で構成した。
【0128】
実施例2
メタリン酸を200℃の温度で加熱して水を完全に除去して無水メタリン酸を製造した。
【0129】
上記無水メタリン酸100重量部に対して上記合成例2から得られたシラン化合物2を5重量部添加した後、120℃の温度に加熱して反応副産物であるメタノール及びエタノールを除去することによりシリルホスフェートを含む添加剤2を製造した。
【0130】
上記製造された添加剤2をリン酸水溶液に添加してエッチング組成物を製造した。
【0131】
このとき、上記エッチング組成物中のリン酸及び添加剤2の含量は表1に示したようにリン酸85重量%、添加剤2 0.5重量%及び残部の水で構成した。
【0132】
実施例3
メタリン酸を200℃の温度で加熱して水を完全に除去して無水メタリン酸を製造した。
【0133】
上記無水メタリン酸100重量部に対して上記合成例3から得られたシラン化合物3を5重量部添加した後、120℃の温度に加熱して反応副産物であるエタノールを除去することによりシリルホスフェートを含む添加剤3を製造した。
【0134】
上記製造された添加剤3をリン酸水溶液に添加してエッチング組成物を製造した。
【0135】
このとき、上記エッチング組成物中のリン酸及び添加剤3の含量は表1に示したようにリン酸85重量%、添加剤3 0.5重量%及び残部の水で構成した。
【0136】
実施例4
メタリン酸を200℃の温度で加熱して水を完全に除去して無水メタリン酸を製造した。
【0137】
上記無水メタリン酸100重量部に対して上記合成例4から得られたシラン化合物4を5重量部添加した後、120℃の温度に加熱して反応副産物であるメタノールを除去することによりシリルホスフェートを含む添加剤4を製造した。
【0138】
上記製造された添加剤4をリン酸水溶液に添加してエッチング組成物を製造した。
【0139】
このとき、上記エッチング組成物中のリン酸及び添加剤4の含量は表1に示したようにリン酸85重量%、添加剤4 0.5重量%及び残部の水で構成した。
【0140】
実施例5
メタリン酸を200℃の温度で加熱して水を完全に除去して無水メタリン酸を製造した。
【0141】
上記無水メタリン酸100重量部に対して上記合成例5から得られたシラン化合物5を5重量部添加した後、120℃の温度に加熱して反応副産物であるエタノールを除去することによりシリルホスフェートを含む添加剤5を製造した。
【0142】
上記製造された添加剤5をリン酸水溶液に添加してエッチング組成物を製造した。
【0143】
このとき、上記エッチング組成物中のリン酸及び添加剤5の含量は表1に示したようにリン酸85重量%、添加剤5 0.5重量%及び残部の水で構成した。
【0144】
【0145】
実験例1:選択比測定
パターンが形成されたシリコン半導体ウエハ上に500Åの厚さに蒸着されたシリコン酸化膜(SiOx)と5000Åの厚さに蒸着されたシリコン窒化膜(SiN)が形成された基板を準備した。
【0146】
比較例1、参考例1及び実施例1~5のエッチング用組成物を丸フラスコに入れて60分間加熱して表2に示したような温度に加熱した後、上記基板を浸漬してエッチングを行った。
【0147】
上記エッチングは上記シリコン半導体ウエハをエッチング組成物に浸漬してそれぞれ720秒及び6000秒間行った。
【0148】
上記パターンが形成されたシリコンウエハの表面を選択的にエッチングしてシリコン酸化膜と窒化膜のエッチング前/後の膜質の厚さを薄膜厚測定装置(NANO VIEW、SEMG-1000)であるエリプソメトリーを利用して測定し、その結果を表2に示した。
【0149】
選択比は酸化膜エッチング速度(SiO E/R)に対する窒化膜エッチング速度(SiN E/R)の比を示し、初期値とエッチング処理後の膜厚の差をエッチング時間(分)で割って算出した値である。
【0150】
【0151】
表2から分かるように、実施例1~5のように無水リン酸とシラン化合物との反応により得られたシリルホスフェートを添加剤として添加したエッチング組成物を用いた場合には比較例1及び参考例1に比べてエッチング選択比が顕著に高い結果を示した。このことから、実施例のエッチング用組成物はシリコン窒化膜のエッチング用組成物として優れることが分かる。また、エッチング速度(SiN E/R)の面でも比較例1のエッチング組成物に比べてより良い効果を示し、シリコン窒化膜のエッチング工程に最適化したエッチング用組成物を提供することができることを確認した。
【0152】
比較例1において用いられた添加剤である3-アミノプロピルシラントリオールは構造的にシリコン個数が1個のものであるが、これとは異なり、参考例1及び実施例1~5に用いられたシラン化合物はシリコン個数が2個である構造を有するものであり、これと結合されている水酸基も増加することによりエッチング工程でシリコン酸化膜の表面を不動態化して酸化膜のエッチング速度を減少させ、これにより、窒化膜に対する選択比が顕著に高いものと判断される。
【0153】
このようなシラン化合物を用いながら、無水状態のリン酸を上記シラン化合物と反応させたシリルホスフェートを添加剤として含むことにより溶媒である水によってシラン系添加剤が加水分解及び重縮合反応で溶解されずに析出する現象を抑制することができる。
【0154】
したがって、本発明で提供するシリルホスフェートを添加剤として含む場合にシリコン窒化膜のエッチング速度、エッチング選択比及びエッチング安定性を向上させてエッチング工程の効率を向上させることができることを確認した。
【0155】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。