(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】光電変換装置及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
H04N 25/60 20230101AFI20240311BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20240311BHJP
H04N 25/78 20230101ALI20240311BHJP
【FI】
H04N25/60
H04N25/76
H04N25/78
(21)【出願番号】P 2019197632
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】小黒 康裕
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝教
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 知也
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-032943(JP,A)
【文献】特開2010-011426(JP,A)
【文献】特開2012-257029(JP,A)
【文献】特開2013-093833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行及び複数の列をなすように配され、各々が光電変換部を含む複数の画素と、
前記画素の前記光電変換部で生成された電荷の量に応じた信号を複数のゲインで増幅可能な増幅部と、
前記複数の列に対応して設けられ、前記増幅部により増幅された前記信号を各々が保持する複数の信号保持容量と、
前記複数の列に対応して設けられ、対応する列の前記信号保持容量への前記信号のサンプル・ホールド動作を各々が制御する複数のスイッチと、
前記複数のスイッチの動作を制御する制御信号を供給する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記増幅部において第1のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が第1の長さである前記制御信号を供給し、
前記増幅部において前記第1のゲインよりも高い第2のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が前記第1の長さよりも短い第2の長さである前記制御信号を供給する
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第2のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合に前記複数のスイッチがオンの状態にある期間の長さは、前記第1のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合に前記複数のスイッチがオンの状態にある期間の長さよりも長い
ことを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記制御信号は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が、前記複数のスイッチをオフからオンに遷移する際の整定時間よりも長い
ことを特徴とする請求項1又は2記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、
高電圧電源側ノード、低電圧電源側ノード及び前記制御信号を出力する出力ノードを有するインバータ回路と、前記インバータ回路の前記低電圧電源側ノードと低電圧側電源との間に接続された電流源と、を有するバッファ回路を有し、
前記第1のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記電流源を第1の電流値に設定し、
前記第2のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記電流源を前記第1の電流値よりも大きい第2の電流値に設定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記制御部から前記複数のスイッチに前記制御信号を供給する共通の制御線を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記増幅部は、前記複数の列に対応して設けられ、対応する列の前記画素から出力される信号を各々が増幅する複数の列増幅部を含む
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記複数の列増幅部の各々は、複数の増幅器を有し、使用する前記増幅器の段数により前記ゲインを切り替え可能に構成されている
ことを特徴とする請求項6記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記複数の列に対応して設けられ、対応する列の前記列増幅部のリセット動作を各々が制御する複数の第2のスイッチと、
前記複数の第2のスイッチの動作を制御する第2の制御信号を供給する第2の制御部と、を更に有し、
前記第2の制御部は、前記複数の第2のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が前記複数の第2のスイッチをオフからオンに遷移する際の整定時間よりも長い前記第2の制御信号を供給する
ことを特徴とする請求項6又は7記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第2の制御部から前記複数の第2のスイッチに前記第2の制御信号を供給する共通の第2の制御線を更に有する
ことを特徴とする請求項8記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記複数の列に対応して設けられ、前記増幅部により増幅された前記信号と参照信号とを各々が比較する複数の比較器と、
前記複数の列に対応して設けられ、対応する列の前記比較器のリセット動作を各々が制御する複数の第3のスイッチと、
前記複数の第3のスイッチの動作を制御する第3の制御信号を供給する第3の制御部と、を更に有し、
前記第3の制御部は、前記複数の第3のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が前記複数の第3のスイッチをオフからオンに遷移する際の整定時間よりも長い前記第3の制御信号を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第3の制御部から前記複数の第3のスイッチに前記第3の制御信号を供給する共通の第3の制御線を更に有する
ことを特徴とする請求項10記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記増幅部は、前記複数の画素の各々に設けられた増幅回路を含む
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記増幅回路は、
前記光電変換部から転送される電荷を保持する容量と、
前記容量の容量値を切り替える容量値切り替え手段と、
前記光電変換部から転送される電荷の量及び前記容量の容量値に応じた信号を出力する増幅トランジスタと、を有する
ことを特徴とする請求項12記載の光電変換装置。
【請求項14】
複数の行及び複数の列をなすように配され、各々が光電変換部を含む複数の画素と、前記画素の前記光電変換部で生成された電荷の量に応じた信号を複数のゲインで増幅可能な増幅部と、前記複数の列に対応して設けられ、前記増幅部により増幅された前記信号を各々が保持する複数の信号保持容量と、前記複数の列に対応して設けられ、対応する列の前記信号保持容量への前記信号のサンプル・ホールド動作を各々が制御する複数のスイッチと、を有する光電変換装置の駆動方法であって、
前記増幅部において第1のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が第1の長さであ
る制御信号により、前記複数のスイッチを駆動し、
前記増幅部において前記第1のゲインよりも高い第2のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が前記第1の長さよりも短い第2の長さであ
る制御信号により、前記複数のスイッチを駆動する
ことを特徴とする光電変換装置の駆動方法。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する信号処理部と
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項16】
移動体であって、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画素信号を信号保持手段に保持する際のサンプリングスイッチの駆動方法が記載されている。具体的には、サンプリングスイッチを導通状態から非導通状態に制御する制御信号の振幅の時間変化率がサンプリングスイッチを非導通状態から導通状態に駆動するための制御信号の振幅の時間変化率よりも小さくなるように、制御信号の波形を制御している。サンプリングスイッチの制御信号の波形をこのように制御することで、各列の信号保持手段に保持される画素信号に重畳するオフセット成分のばらつきを小さく抑え、画質を向上することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画素信号を増幅する場合、画素信号を増幅しない場合と比較して信号が整定するまでにより長い時間を必要とする。そのため、特許文献1の方法を用いて増幅した画素信号を信号保持手段に保持する場合、増幅しない画素信号を信号保持手段に保持する場合と比較して制御信号の振幅の時間変化率を更に小さくする必要があり、信号の読み出し時間が増加することがあった。
【0005】
本発明の目的は、画素信号を増幅する場合にも読み出し時間を増加することなく画素信号に重畳するオフセット成分のばらつきを抑制して画質を向上しうる光電変換装置及び撮像システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、複数の行及び複数の列をなすように配され、各々が光電変換部を含む複数の画素と、前記画素の前記光電変換部で生成された電荷の量に応じた信号を複数のゲインで増幅可能な増幅部と、前記複数の列に対応して設けられ、前記増幅部により増幅された前記信号を各々が保持する複数の信号保持容量と、前記複数の列に対応して設けられ、対応する列の前記信号保持容量への前記信号のサンプル・ホールド動作を各々が制御する複数のスイッチと、前記複数のスイッチの動作を制御する制御信号を供給する制御部と、を有し、前記制御部は、前記増幅部において第1のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が第1の長さである前記制御信号を供給し、前記増幅部において前記第1のゲインよりも高い第2のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が前記第1の長さよりも短い第2の長さである前記制御信号を供給する光電変換装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一観点によれば、複数の行及び複数の列をなすように配され、各々が光電変換部を含む複数の画素と、前記画素の前記光電変換部で生成された電荷の量に応じた信号を複数のゲインで増幅可能な増幅部と、前記複数の列に対応して設けられ、前記増幅部により増幅された前記信号を各々が保持する複数の信号保持容量と、前記複数の列に対応して設けられ、対応する列の前記信号保持容量への前記信号のサンプル・ホールド動作を各々が制御する複数のスイッチと、を有する光電変換装置の駆動方法であって、前記増幅部において第1のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が第1の長さである制御信号により、前記複数のスイッチを駆動し、前記増幅部において前記第1のゲインよりも高い第2のゲインで増幅した前記信号を前記信号保持容量へ保持する場合は、前記複数のスイッチをオンからオフに遷移する際の整定時間が前記第1の長さよりも短い第2の長さである制御信号により、前記複数のスイッチを駆動する光電変換装置の駆動方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画素信号を増幅する場合にも読み出し時間を増加することなく画素信号に重畳するオフセット成分のばらつきを抑制し、画質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態による光電変換装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による光電変換装置における画素の構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による光電変換装置における波形制御回路の構成例を示す回路図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。
【
図6】本発明の第3実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。
【
図7】本発明の第4実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。
【
図8】本発明の第5実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第6実施形態による撮像システム及び移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本実施形態による光電変換装置の概略構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態による光電変換装置の概略構成を示す図である。
【0011】
本実施形態による光電変換装置100は、
図1に示すように、画素領域10と、垂直走査回路20と、読み出し回路部30と、水平走査回路80と、タイミングジェネレータ90と、を有する。また、本実施形態による光電変換装置100は、波形制御回路50,56,68と、参照信号発生回路64と、カウンタ72と、を更に有する。
【0012】
画素領域10には、複数の行及び複数の列をなすように行列状に配された複数の画素12が設けられている。各々の画素12は、フォトダイオード等の光電変換素子からなる光電変換部を含み、入射光の光量に応じた画素信号を出力する機能を備える。画素領域10に配される画素アレイの行数及び列数は、特に限定されるものではない。また、画素領域10には、入射光の光量に応じた画素信号を出力する有効画素のほか、光電変換部が遮光されたオプティカルブラック画素や、信号を出力しないダミー画素などが配置されていてもよい。
【0013】
画素領域10の画素アレイの各行には、第1の方向(
図1において横方向)に延在して、制御線14が配されている。制御線14の各々は、第1の方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。制御線14の延在する第1の方向は、行方向或いは水平方向と呼ぶことがある。制御線14は、垂直走査回路20に接続されている。
【0014】
垂直走査回路20は、画素12から信号を読み出す際に画素12内の読み出し回路を駆動するための制御信号を、画素アレイの各行に設けられた制御線14を介して画素12に供給する制御回路部である。垂直走査回路20は、シフトレジスタやアドレスデコーダを用いて構成され得る。
【0015】
画素領域10の画素アレイの各列には、第1の方向と交差する第2の方向(
図1において縦方向)に延在して、出力線16が配されている。出力線16の各々は、第2の方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。出力線16の延在する第2の方向は、列方向或いは垂直方向と呼ぶことがある。出力線16は、読み出し回路部30に接続されている。
【0016】
読み出し回路部30は、画素領域10の各列の画素12から出力線16を介して出力される画素信号に対して、増幅処理やAD変換処理等の信号処理を施す処理回路部である。読み出し回路部30は、画素領域10の各列に対応して設けられた複数の列回路32を有する。列回路32の各々は、増幅器34,36と、比較器38と、メモリ40と、入力容量C0と、フィードバック容量Cfと、信号保持容量Csと、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4と、を有する。
【0017】
増幅器34は、差動増幅回路やソース接地増幅回路により構成され得る。
図1には増幅器34の一例として、2つの入力端子と1つの出力端子とを有する差動増幅回路を示している。増幅器34の一方の入力端子(例えば、反転入力端子)は、入力容量C0を介して、対応する列の出力線16に接続されている。また、増幅器34の当該一方の入力端子と出力端子との間には、フィードバック容量Cfが接続されている。また、増幅器34の当該一方の入力端子と出力端子との間には、増幅器34をリセットするためのスイッチSW1が接続されている。増幅器34の他方の入力端子(例えば、非反転入力端子)には、参照電圧Vrefが供給される。
【0018】
増幅器36は、差動増幅回路により構成され得る。
図1には増幅器36の一例として、2つの入力端子と1つの出力端子とを有する差動増幅回路を示している。増幅器36の一方の入力端子(例えば、非反転入力端子)は、増幅器34の出力端子に接続されている。増幅器36の当該一方の入力端子と出力端子との間には、スイッチSW2が接続されている。また、増幅器36の他方の入力端子(例えば、反転入力端子)と出力端子との間は、短絡されている。これにより、増幅器36は、ボルテージフォロワ回路を構成している。
【0019】
増幅器34,36は、画素12から出力される画素信号、すなわち画素12の光電変換部で生成された電荷の量に応じた信号を複数のゲインで増幅可能な列増幅部を構成している。
【0020】
比較器38は、差動対回路により構成され得る。
図1には比較器38の一例として、2つの入力端子と1つの出力端子とを有する差動対回路を示している。比較器38の一方の入力端子は、スイッチSW3を介して増幅器36の出力端子に接続されている。比較器38の当該一方の入力端子と出力端子との間には、比較器38をリセットするためのスイッチSW4が接続されている。スイッチSW3と比較器38の当該一方の入力端子との間の接続ノードには、信号保持容量Csが接続されている。比較器38の他方の入力端子は、参照信号線66を介して、参照信号発生回路64に接続されている。比較器38の出力端子は、メモリ40に接続されている。
【0021】
スイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、例えばMOSトランジスタにより構成され得る。スイッチSW1,SW2,SW3,SW4をN型MOSトランジスタにより構成する場合、制御ノード(ゲート)にハイレベルの制御信号を供給することでスイッチSW1,SW2,SW3,SW4はオン(導通状態)になる。また、制御ノード(ゲート)にローレベルの制御信号を供給することでスイッチSW1,SW2,SW3,SW4はオフ(非導通状態)になる。スイッチSW1,SW2,SW3,SW4をP型MOSトランジスタにより構成する場合、制御信号の信号レベルは逆になる。なお、本実施形態では、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4がN型MOSトランジスタにより構成されている場合を想定して説明を行うものとする。
【0022】
カウンタ72は、制御線74を介して各列の列回路32のメモリ40に接続されている。また、水平走査回路80は、各列の列回路32のメモリ40に接続されている。各列の列回路32のメモリ40の出力端子は、水平出力線76に接続されている。
【0023】
タイミングジェネレータ90は、垂直走査回路20、波形制御回路50,56,68、参照信号発生回路64、カウンタ72及び水平走査回路80に、これらの動作やそのタイミングを制御する制御信号を供給する制御部である。
【0024】
各列の列回路32のスイッチSW1の制御ノードには、制御線52を介して、波形制御回路50が接続されている。波形制御回路50には、タイミングジェネレータ90が接続されている。各列の列回路32のスイッチSW1は、タイミングジェネレータ90による制御のもと波形制御回路50から制御線52を介して供給される制御信号PC0Rにより、制御される。
【0025】
各列の列回路32のスイッチSW2の制御ノードには、制御線54を介して、タイミングジェネレータ90が接続されている。各列の列回路32のスイッチSW2は、タイミングジェネレータ90から制御線54を介して供給される制御信号PVFTHにより、制御される。
【0026】
各列の列回路32のスイッチSW3の制御ノードには、制御線62を介して、波形制御回路56が接続されている。波形制御回路56には、タイミングジェネレータ90が接続されている。各列の列回路32のスイッチSW3は、タイミングジェネレータ90による制御のもと波形制御回路56から制御線62を介して供給される制御信号PSHにより、制御される。
【0027】
各列の列回路32のスイッチSW4の制御ノードには、制御線70を介して、波形制御回路68が接続されている。波形制御回路56には、タイミングジェネレータ90が接続されている。各列の列回路32のスイッチSW4は、タイミングジェネレータ90による制御のもと波形制御回路68から制御線70を介して供給される制御信号PCRにより、制御される。
【0028】
なお、
図1には明示していないが、参照信号発生回路64、カウンタ72及び水平走査回路80についても、タイミングジェネレータ90により制御され得る。なお、垂直走査回路20、波形制御回路50,56,68、参照信号発生回路64、カウンタ72及び水平走査回路80に供給される制御信号の少なくとも一部は、光電変換装置100の外部から供給してもよい。
【0029】
次に、本実施形態による光電変換装置の動作の概略について
図1を用いて説明する。
画素領域10を構成する複数の画素12は、タイミングジェネレータ90による制御のもと制御線14を介して垂直走査回路20から供給される制御信号により、行単位で制御される。これにより、垂直走査回路により選択された行に属する画素12の各々は、入射光の光量に応じた画素信号を、対応する列の出力線16に出力する。画素12から出力線16を介して出力された画素信号は、対応する列の列回路32に入力される。
【0030】
列回路32に入力された画素信号は、増幅器34により、入力容量C0とフィードバック容量Cfとの容量比(C0/Cf)に応じた増幅率で増幅される。増幅器34で増幅された画素信号は、増幅器36で更に増幅され、信号保持容量Csに保持される。
【0031】
比較器38は、信号保持容量Csに保持されている画素信号のレベルと参照信号発生回路64から供給される参照信号のレベルとを比較する比較動作を行い、これらの大小関係が反転したタイミングでラッチ信号を出力する。メモリ40には、カウンタ72から供給されるカウント信号と、比較器38の出力信号とが入力される。メモリ40は、比較器38からラッチ信号を受信したタイミングにおいてカウント信号が示しているカウント値を、画素信号のデジタルデータとして記憶する。
【0032】
水平走査回路80は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、各列の列回路32のメモリ40に順次、制御信号を出力する。水平走査回路80から制御信号を受信したメモリ40は、画素信号をAD変換したデジタルデータを、水平出力線76に出力する。
【0033】
読み出し回路部30を構成する各列の列回路32は、制御信号PC0R,PVFTH,PSH,PCRによって制御される。
【0034】
制御信号PC0Rは、増幅器34のリセット動作を制御するスイッチSW1を駆動する制御信号である。制御信号PC0Rは、スイッチSW1の制御ノードに供給され、スイッチSW1の接続状態(導通、非導通)を制御する。例えば、制御信号PC0RがハイレベルとなりスイッチSW1がオンになると、増幅器34の入力端子と出力端子とが短絡され、画素信号が参照電圧Vrefにクランプされる。
【0035】
制御信号PVFTHは、増幅器36の要否を選択するスイッチSW2を駆動する制御信号である。制御信号PVFTHは、スイッチSW2の制御ノードに供給され、スイッチSW2の接続状態(導通、非導通)を制御する。例えば、制御信号PVFTHがハイレベルとなりスイッチSW2がオンになると、増幅器36の入力端子と出力端子とが短絡され、増幅器36を使用しない信号経路が構成される。
【0036】
制御信号PSHは、信号保持容量Csへの画素信号のサンプル・ホールド動作を制御するスイッチSW3を駆動する制御信号である。制御信号PSHは、スイッチSW3の制御ノードに供給され、スイッチSW3の接続状態(導通、非導通)を制御する。例えば、制御信号PSHがハイレベルの期間は、スイッチSW3がオンとなり、画素信号が信号保持容量Csにサンプリングされる。また、制御信号PSHがローレベルの期間は、スイッチSW3がオフとなり、画素信号が信号保持容量Csに保持される。
【0037】
制御信号PCRは、比較器38のリセット動作を制御するスイッチSW4を駆動する制御信号である。制御信号PCRは、スイッチSW4の制御ノードに供給され、スイッチSW4の接続状態(導通、非導通)を制御する。例えば、制御信号PCRがハイレベルとなりスイッチSW4がオンになると、比較器38の入力端子と出力端子とが短絡され、比較器38がリセットされる。
【0038】
ここで、読み出し回路部30を制御するこれら制御信号の各々は、読み出し回路部30の一方の側(
図1では左側)から、共通の制御線を介して各列の列回路32に供給される。具体的には、波形制御回路50から供給される制御信号PC0Rは、共通の制御線52を介して、各列の列回路32のスイッチSW1に供給される。タイミングジェネレータ90から供給される制御信号PVFTHは、共通の制御線54を介して、各列の列回路32のスイッチSW2に供給される。波形制御回路56から供給される制御信号PSHは、共通の制御線62を介して、各列の列回路32のスイッチSW3に供給される。波形制御回路68から供給される制御信号PCRは、共通の制御線70を介して、各列の列回路32のスイッチSW4に供給される。つまり、
図1においてより右側の列に配された列回路32ほど、タイミングジェネレータ90や波形制御回路50,56,68からの距離が遠い場所に配置されている。
【0039】
次に、本実施形態による光電変換装置における画素12の構成例について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態による光電変換装置における画素の構成例を示す回路図である。
【0040】
本実施形態による光電変換装置における各々の画素12は、例えば
図2に示すように、光電変換部PDA,PDBと、転送トランジスタM1A,M1Bと、リセットトランジスタM2と、増幅トランジスタM3と、選択トランジスタM4と、を有する。また、本実施形態による光電変換装置における画素12は、FD制御トランジスタM5と、負荷容量CFDと、を更に有する。
【0041】
光電変換部PDA,PDBは、例えばフォトダイオードである。光電変換部PDAを構成するフォトダイオードは、アノードが基準電圧ノードに接続され、カソードが転送トランジスタM1Aのソースに接続されている。光電変換部PDBを構成するフォトダイオードは、アノードが基準電圧ノードに接続され、カソードが転送トランジスタM1Bのソースに接続されている。転送トランジスタM1Aのドレイン及び転送トランジスタM1Bのドレインは、リセットトランジスタM2のソースと、増幅トランジスタM3のゲートと、FD制御トランジスタM5のドレインと、に接続されている。転送トランジスタM1A,M1Bのドレイン、リセットトランジスタM2のソース、増幅トランジスタM3のゲート及びFD制御トランジスタM5のドレインの接続ノードは、いわゆる浮遊拡散(フローティングディフュージョン)部FDである。浮遊拡散部FDが他の配線や拡散領域との間に作る寄生容量(FD容量)は、電荷の保持部としての機能を備える。FD制御トランジスタM5のソースには、負荷容量CFDが接続されている。リセットトランジスタM2のドレイン及び増幅トランジスタM3のドレインは、電源ノード(電圧VDD)に接続されている。増幅トランジスタM3のソースは、選択トランジスタM4のドレインに接続されている。選択トランジスタM4のソースは、出力線16に接続されている。
【0042】
図2の画素構成の場合、各行に配された制御線14は、制御信号PRESを供給する信号線と、制御信号TXAを供給する信号線と、制御信号TXBを供給する信号線と、制御信号PSELを供給する信号線と、制御信号FDincを供給する信号線と、を含む。制御信号PRESを供給する信号線は、対応する行に属する画素12のリセットトランジスタM2のゲートに接続されている。制御信号TXAを供給する信号線は、対応する行に属する画素12の転送トランジスタM1Aのゲートに接続されている。制御信号TXBを供給する信号線は、対応する行に属する画素12の転送トランジスタM1Bのゲートに接続されている。制御信号PSELを供給する信号線は、対応する行に属する画素12の選択トランジスタM4のゲートに接続されている。制御信号FDincを供給する信号線は、対応する行に属する画素12のFD制御トランジスタM5のゲートに接続されている。
【0043】
画素12を構成する各トランジスタがN型トランジスタで構成される場合、垂直走査回路20からハイレベルの制御信号が供給されると対応するトランジスタがオンになる。また、垂直走査回路20からローレベルの制御信号が供給されると対応するトランジスタがオフになる。同一行の画素12に対しては、共通の制御信号が垂直走査回路20から供給される。
【0044】
光電変換部PDA,PDBは、入射光をその光量に応じた量の電荷に変換(光電変換)するとともに、生じた電荷を蓄積する。リセットトランジスタM2は、オンになることにより浮遊拡散部FDを電圧VDDに応じた電圧にリセットする。転送トランジスタM1Aは、オンになることにより光電変換部PDAに蓄積された電荷を浮遊拡散部FDに転送する。また、転送トランジスタM1Bは、オンになることにより光電変換部PDBに蓄積された電荷を浮遊拡散部FDに転送する。これにより浮遊拡散部FDは、その容量成分による電荷電圧変換によって、光電変換部PDA,PDBから転送された電荷の量に応じた電圧となる。
【0045】
増幅トランジスタM3は、ドレインに電圧VDDが供給され、ソースに選択トランジスタM4及び出力線16を介して図示しない電流源からバイアス電流が供給される構成となっており、ゲートを入力ノードとする増幅部(ソースフォロワ回路)を構成する。これにより増幅トランジスタM3は、浮遊拡散部FDの電圧に応じた信号を、選択トランジスタM4を介して出力線16に出力する。
【0046】
FD制御トランジスタM5は、オンになることにより、浮遊拡散部FDに負荷容量CFDを接続する。すなわち、FD制御トランジスタM5がオンのとき、FD容量と負荷容量CFDとが並列に接続され、浮遊拡散部FDに結合される容量成分は、FD制御トランジスタM5がオフのときよりも大きくなる。つまり、画素12は、光電変換部PDA,PDBから転送される電荷の量に応じた信号をFD容量に応じた複数のゲインで増幅可能に構成されている。この意味で、FD制御トランジスタM5は、FD容量の容量値を切り替える容量値切り替え手段である。なお、浮遊拡散部FDに結合される容量成分の容量値は、小さい場合には感度の向上に寄与し、大きい場合にはダイナミックレンジの拡大に寄与し得る。
【0047】
次に、本実施形態による光電変換装置における波形制御回路56の構成例について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態による光電変換装置における波形制御回路の構成例を示す回路図である。
【0048】
本実施形態による光電変換装置における波形制御回路56は、
図3に示すように、インバータ回路58と、N型MOSトランジスタMNと、P型MOSトランジスタMPと、電流源60と、を有する。電流源60は、供給する電流量が変更可能な可変電流源である。N型MOSトランジスタMNとP型MOSトランジスタMPとは、インバータ回路58とは別のインバータ回路を構成している。なお、本明細書では、この後段のインバータ回路と電流源60とを包括的にバッファ回路と呼ぶことがある。
【0049】
インバータ回路58の入力端子は、波形制御回路56の入力端子でもあり、タイミングジェネレータ90から制御信号PSH_iを受ける。インバータ回路58の出力端子は、N型MOSトランジスタMNのゲート及びP型MOSトランジスタMPのゲートに接続されている。後段のインバータ回路の高電圧電源側ノード、すなわちP型MOSトランジスタMPのソースは、高電圧側電源(電圧VDD)に接続されている。P型MOSトランジスタMPのドレインは、N型MOSトランジスタMNのドレインに接続されている。後段のインバータ回路の低電圧電源側ノード、すなわちN型MOSトランジスタMNのソースは、電流源60を介して低電圧側電源(電圧VSS)に接続されている。P型MOSトランジスタMPのドレインとN型MOSトランジスタMNのドレインとの間の接続ノードが、波形制御回路56の出力端子である。波形制御回路56の出力端子から出力される信号が、制御信号PSHとなる。
【0050】
N型MOSトランジスタMNとP型MOSトランジスタMPとは、インバータ回路58とは別のインバータ回路を構成している。つまり、波形制御回路56は、インバータ回路が2段直列に接続された回路によって構成されている。後段のインバータ回路は、基準ノード(GND)側に電流源60を有しており、ハイレベルからローレベルへの立ち下がり時間(整定時間)を電流源60の電流値によって制御可能である。
【0051】
この整定時間は、典型的には、ハイレベルの電圧からローレベルの電圧への遷移の開始から終了までの期間の長さである。このローレベルの電圧への遷移の終了は、必ずしもローレベルと一致する電圧でなくても良い。例えば、ハイレベルからローレベルへの遷移が開始してから、単位時間当たりの遷移量(つまり信号波形の傾き)が、時間が経過するにつれて小さくなる場合がある。このような場合、整定時間の終了は、スイッチであるトランジスタがオフ状態にあるとみなすことができる電圧に達した時とすることができる。例えば、ハイレベルからローレベルの電圧差の80%分、ハイレベルから変化したタイミングを、整定時間の終了とみなすことができる。
【0052】
また、ハイレベルからローレベルへの遷移は、途中で制御信号波形の傾きを変化させるようにしても良い。つまり、遷移の開始時は小さな傾きで制御信号を変化させ、その後、大きな傾きで制御信号を変化させるようにしても良い。また、遷移の開始時は大きな傾きで制御信号を変化させ、その後、小さな傾きで制御信号変化させるようにしても良い。
【0053】
また、ハイレベルからローレベルへの遷移は、制御信号を階段状に変化させるようにしても良い。また、ハイレベルからローレベルの間の電位に一度遷移させてから、ローレベルに遷移させるようにしても良い。これらの場合も、ハイレベルからローレベルへの整定時間を長くする形態に含まれる。
【0054】
また、制御信号のハイレベルからローレベルへの立ち下り時間は、ローレベルからハイレベルへの立ち上がり時間よりも長くなっている。
【0055】
なお、ここでは説明を省略するが、波形制御回路50,68についても、波形制御回路56と同様の回路により構成可能である。すなわち、波形制御回路50は、タイミングジェネレータ90から制御信号PC0R_iを受け、立ち下がり時間が制御された制御信号PC0Rを出力するように構成してもよい(第3実施形態参照)。また、波形制御回路68は、タイミングジェネレータ90から制御信号PCR_iを受け、立ち下がり時間が制御された制御信号PCRを出力するように構成してもよい(第4実施形態参照)。
【0056】
ここで、画素領域10から各列の出力線16に出力される画素信号を、増幅器34,36を介して各列の信号保持容量Csに保持する過程について考察する。
【0057】
画素信号を各列の信号保持容量Csに保持する際、波形制御回路56から出力される制御信号PHSをローレベルからハイレベルへと制御し、各列の列回路32のスイッチSW3をオンにする。これにより、増幅器36の出力端子と信号保持容量Csとが接続され、増幅器34,36により増幅された画素信号の信号保持容量Csへのサンプリングが開始される。
【0058】
制御信号PSHは、行方向に配された共通の制御線62を介して、各列の列回路32に供給される。波形制御回路56は、前述の通り、読み出し回路部30の一方の側(
図1では左側)に配置されていることから、波形制御回路56から近い列と波形制御回路56から遠い列とでは、制御信号PSHの遅延時間が異なる。この制御信号PSHの遅延時間の差は、制御信号PSHによってスイッチSW3を導通状態から非導通状態へと遷移するとき、スイッチSW3の駆動に伴うチャージインジェクションによる電荷注入量に差を生じる。この電荷注入量の差は各列の信号保持容量Csに保持される信号電荷の量に影響することから、制御信号PSHの遅延時間の差は画質劣化の要因となる。同様の現象は、制御信号PC0R,PCRにおいても生じ得る。
【0059】
次に、画素領域10の一部の画素12に強い光が入射した場合について更に考察する。
画素領域10の一部の画素12に強い光が入射した場合、強い光が入射した画素12を含む行では、強い光が入射した画素12から出力される画素信号により、対応する列の出力線16の電位が大きく低下する。そして、当該画素12の画素信号のレベルや増幅器34,36の増幅率に応じて増幅器36の出力ノードの電圧が高くなり、強い光が入射した画素12が属する列では列回路32のスイッチSW3はオフになる。一方、強い光が入射した画素12を含まない行では、増幅器36の出力ノードの電圧は低くなり、総ての列において列回路32のスイッチSW3はオンになる。その結果、制御線62に連なる負荷容量は、強い光が入射した画素12を含む行よりも、強い光が入射した画素12を含まない行において大きくなる。
【0060】
このように、画素領域10の一部の画素12に強い光が入射した場合、強い光が入射した画素12を含む行と強い光が入射した画素12を含まない行とにおいて、制御線62に連なる負荷容量に差を生じることがある。この負荷容量の差により、制御信号PSHがハイレベル(スイッチSW3が導通状態)からローレベル(スイッチSW3が非導通状態)へと遷移する期間の長さが行毎に異なることとなり、横スミアなどのパターンノイズによる画質の劣化を生じる虞がある。
【0061】
このように、列回路32の配置場所や画素12への入射光強度の分布は、制御信号PSHがハイレベルからローレベルへと遷移する期間に影響を与えることがあり、画質劣化の要因となる。
【0062】
制御信号PSHがハイレベルからローレベルへと遷移する期間のばらつきに起因する画質の劣化に対する対策としては、制御信号PSHがハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを長くする方法がある。このように構成することで、波形制御回路56から近い列と遠い列とで制御信号PSHの遅延時間の差が低減されるため、画質劣化への影響が小さくなる。
【0063】
ただし、増幅器の増幅率が大きい高ゲイン時は、低ゲイン時と比較して、信号が落ち着くまでにより長い期間を要する。したがって、高ゲイン時におけるスイッチSW3の導通状態は、信号が落ち着く前に信号保持容量Csへの画素信号のサンプリングが終了するのを避けるために、低ゲイン時よりも長くすることが求められる。しかしながら、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと遷移する期間を低ゲイン時と同じように長くした場合、読み出し時間が増加することになる。また、高ゲイン時における読み出し時間の増加が顕著な場合には、高ゲイン時における垂直走査期間の長さを低ゲイン時における垂直走査期間の長さよりも長くする必要があり、読み出し動作が煩雑化する。
【0064】
このような観点から、本実施形態では、低ゲイン時に制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを長くする一方、高ゲイン時には制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを低ゲイン時よりも短くする。
【0065】
制御信号PSHがハイレベルからローレベルへと遷移する期間のばらつきに起因する画質の劣化は、増幅器の増幅率が小さい低ゲイン時に顕著に見られる。したがって、低ゲイン時には、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを長くすることで、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと遷移する期間のばらつきに起因する画質の劣化を抑制することができる。
【0066】
また、信号保持容量Csに保持される画素信号は、増幅後の画素信号である。そのため、強い光が入射した画素12を含む行と強い光が入射した画素12を含まない行とにおける、制御線62に連なる負荷容量の差による画質劣化の影響は、低ゲイン時よりも高ゲイン時の方が小さくなる。したがって、高ゲイン時には、低ゲイン時よりも制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと遷移する期間を短くすることで、読み出し期間の増加を抑制することができる。
【0067】
次に、本実施形態による光電変換装置の駆動方法について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。
図4には、読み出し対象の画素12が属する行の制御線14に供給される制御信号PSEL,PRES,TXA,TXBの波形と、読み出し回路部30に供給される制御信号PC0R,PVFTH,PSH,PCRの波形と、を示している。制御信号PSHについては、低ゲイン時の場合と高ゲイン時の場合とを示している。
【0068】
時刻t1よりも前の期間において、制御信号PSELはハイレベルであり、制御信号PRES,TXA,TXB,PC0R,PVFTH,PSH,PCRはローレベルである。時刻t3までの制御信号PSELがハイレベルの期間は、時刻t4以降に読み出しを行う画素12が属する行の1行前の行が選択された状態である。
【0069】
時刻t1において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PRESをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、画素12のリセットトランジスタM2がオンになり、浮遊拡散部FDが電圧VDDに応じた電圧にリセットされる。
【0070】
このとき、制御信号TXA,TXBはローレベルであり、画素12の転送トランジスタM1A,M1Bはオフになっている。光電変換部PDA,PDBは、増幅部(増幅トランジスタM3のゲート)から切り離されており、フローティング状態になっている。光電変換部PDA,PDBは、入射光を光電変換し、生じた電荷を蓄積する。また、制御信号PC0R,PVFTH,PSH,PCRはローレベルであり、列回路32のスイッチSW1,SW2,SW3,SW4は総てオフになっている。
【0071】
続く時刻t2において、波形制御回路50は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PC0Rをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、各列の列回路32のスイッチSW1がオンになり、増幅器34の入力端子と出力端子とが短絡され、画素12のリセット状態における信号が参照電圧Vrefにクランプされる。
【0072】
続く時刻t3において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、1行前の行の制御信号PSELをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、1行前の行の選択が解除される。
【0073】
続く時刻t4において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSELをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、選択トランジスタM4がオンになり、画素12の増幅トランジスタM3が選択トランジスタM4を介して出力線16に接続される。
【0074】
続く時刻t5において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PRESをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、リセットトランジスタM2がオフになり、浮遊拡散部FDは電圧VDDに応じた所定のリセット電圧となる。増幅トランジスタM3は、浮遊拡散部FDのリセット電圧に応じた画素信号(ノイズ信号)を、選択トランジスタM4を介して出力線16に出力する。
【0075】
続く時刻t6において、波形制御回路50は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PC0Rをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、スイッチSW1がオフになり、増幅器34のリセット状態が解除される。増幅器34は、入力容量C0とフィードバック容量Cfとの比(C0/Cf)に応じた増幅率で画素信号を増幅して出力する状態となる。
【0076】
続く時刻t7において、波形制御回路56は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオンになり、増幅器34,36により増幅された画素信号(ノイズ信号)が信号保持容量Csにサンプリングされる。
【0077】
続く時刻t8において、波形制御回路56は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオフになり、信号保持容量Csへの画素信号の保持が完了する。スイッチSW3がオフになることにより、信号保持容量Csは増幅器34,36から切り離される。
【0078】
このとき、制御信号PSHがハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さ(立ち下がり時間)は、電流源60に流れる電流量によって決定される。すなわち、電流源60に流れる電流量が少ないほど、制御信号PSHの立ち下がり時間は長くなる。波形制御回路56を、例えば
図3に示す回路により構成することで、制御信号PSHの立ち下がり時間は、制御信号PSHの立ち上がり時間よりも長くなる。
【0079】
増幅器34,36による画素信号の増幅率が小さい低ゲイン時は、スイッチSW3を非導通状態から導通状態に切り替える期間の長さよりもスイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さの方が長くなるように、電流源60を定電流駆動する。これにより、波形制御回路56から近い列の列回路32と波形制御回路56から遠い列の列回路32とにおける制御信号PSHの遅延時間の差を低減することができる。
【0080】
増幅器34,36による画素信号の増幅率が大きい高ゲイン時は、スイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さが低ゲイン時よりも短くなるように、低ゲイン時に電流源60に流す電流量よりも、電流源60に流す電流量を多くする。これにより、スイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さを、低ゲイン時よりも短くすることができる。
【0081】
続く時刻t9において、波形制御回路68は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PCRをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、スイッチSW4がオンとなり比較器38の入力端子と出力端子とが短絡されることで、比較器38がリセット(初期化)される。
【0082】
続く時刻t10において、波形制御回路68は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PCRをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、スイッチSW4がオフとなり比較器38の入力端子と出力端子とが切り離され、比較器38のリセット状態が解除される。
【0083】
時刻t10から時刻t13までの期間は、信号保持容量Csに保持されている画素信号(ノイズ信号)のアナログデジタル変換を行う期間である。この期間の間に、比較器38は、信号保持容量Csの信号レベルと、参照信号発生回路64から参照信号線66を介して供給される参照信号(ランプ信号)の信号レベルとを比較し、これらの大小関係が反転したタイミングでメモリ40にラッチ信号を出力する。メモリ40は、比較器38からラッチ信号を受信したタイミングにおいてカウント信号が示しているカウント値を、画素信号(ノイズ信号)のデジタルデータとして記憶する。
【0084】
続く時刻t11において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号TXAをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、転送トランジスタM1Aがオンになり、光電変換部PDAに蓄積されている電荷が浮遊拡散部FDへと転送され、浮遊拡散部FDは光電変換部PDAから転送された電荷の量に応じた電圧(Vsiga)となる。増幅トランジスタM3は、浮遊拡散部FDの電圧Vsigaに応じた画素信号(光信号(A信号))を、選択トランジスタM4を介して出力線16に出力する。
【0085】
続く時刻t12において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号TXAをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、転送トランジスタM1Aがオフになり、光電変換部PDAは電荷蓄積状態になる。
【0086】
続く時刻t13において、波形制御回路56は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオンになり、増幅器34,36により増幅された画素信号(光信号(A信号))が信号保持容量Csにサンプリングされる。
【0087】
波形制御回路56は、増幅器34,36による画素信号の増幅率が小さい低ゲイン時には、続く時刻t14において、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオフになり、信号保持容量Csへの画素信号の保持が完了する。スイッチSW3がオフになることにより、信号保持容量Csは増幅器34,36から切り離される。この際、スイッチSW3を非導通状態から導通状態に切り替える期間の長さよりもスイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さの方が長くなるように、電流源60を定電流駆動する。これにより、波形制御回路56から近い列の列回路32と波形制御回路56から遠い列の列回路32とにおける制御信号PSHの遅延時間の差を低減することができる。
【0088】
増幅器34,36による画素信号の増幅率が大きい高ゲイン時は、信号が整定するまでに低ゲイン時よりも長い時間を要するため、時刻t14よりも遅い時刻t15までサンプリング動作を続ける。
【0089】
波形制御回路56は、増幅器34,36による画素信号の増幅率が大きい高ゲイン時には、続く時刻t15において、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオフになり、信号保持容量Csへの画素信号の保持が完了する。スイッチSW3がオフになることにより、信号保持容量Csは増幅器34,36から切り離される。この際、スイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さが低ゲイン時よりも短くなるように、低ゲイン時に電流源60に流す電流量よりも、電流源60に流す電流量を多くする。これにより、スイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さを低ゲイン時よりも短くし、読み出し時間の増加を抑制することができる。
【0090】
時刻t15から時刻t18までの期間は、信号保持容量Csに保持されている画素信号(光信号(A信号))のアナログデジタル変換を行う期間である。この期間の間に、比較器38は、信号保持容量Csの信号レベルと、参照信号発生回路64から参照信号線66を介して供給される参照信号(ランプ信号)の信号レベルとを比較し、これらの大小関係が反転したタイミングでメモリ40にラッチ信号を出力する。メモリ40は、比較器38からラッチ信号を受信したタイミングにおいてカウント信号が示しているカウント値を、画素信号(光信号(A信号))のデジタルデータとして記憶する。
【0091】
続く時刻t16において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号TXA,TXBをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、転送トランジスタM1A,M1Bがオンになり、光電変換部PDA,PDBに蓄積されている電荷が浮遊拡散部FDへと転送され、浮遊拡散部FDは光電変換部PDA,PDBから転送された電荷の量に応じた電圧(Vsigb)となる。増幅トランジスタM3は、浮遊拡散部FDの電圧Vsigbに応じた画素信号(光信号(A+B信号))を、選択トランジスタM4を介して出力線16に出力する。
【0092】
続く時刻t17において、垂直走査回路20は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号TXA,TXBをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、転送トランジスタM1A,M1Bがオフになり、光電変換部PDA,PDBは電荷蓄積状態になる。
【0093】
続く時刻t18において、波形制御回路56は、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをローレベルからハイレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオンになり、増幅器34,36により増幅された画素信号(光信号(A+B信号))が信号保持容量Csにサンプリングされる。
【0094】
波形制御回路56は、増幅器34,36による画素信号の増幅率が小さい低ゲイン時には、続く時刻t19において、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオフになり、信号保持容量Csへの画素信号の保持が完了する。スイッチSW3がオフになることにより、信号保持容量Csは増幅器34,36から切り離される。この際、スイッチSW3を非導通状態から導通状態に切り替える期間の長さよりもスイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さの方が長くなるように、電流源60を定電流駆動する。これにより、波形制御回路56から近い列の列回路32と波形制御回路56から遠い列の列回路32とにおける制御信号PSHの遅延時間の差を低減することができる。
【0095】
増幅器34,36による画素信号の増幅率が大きい高ゲイン時は、信号が整定するまでに低ゲイン時よりも長い時間を要するため、時刻t19よりも遅い時刻t20までサンプリング動作を続ける。
【0096】
波形制御回路56は、増幅器34,36による画素信号の増幅率が大きい高ゲイン時には、続く時刻t20において、タイミングジェネレータ90による制御のもと、制御信号PSHをハイレベルからローレベルへと制御する。これにより、スイッチSW3がオフになり、信号保持容量Csへの画素信号の保持が完了する。スイッチSW3がオフになることにより、信号保持容量Csは増幅器34,36から切り離される。この際、スイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さが低ゲイン時よりも短くなるように、低ゲイン時に電流源60に流す電流量よりも、電流源60に流す電流量を多くする。これにより、スイッチSW3を導通状態から非導通状態に切り替える期間の長さを低ゲイン時よりも短くし、読み出し時間の増加を抑制することができる。
【0097】
時刻t20以降の期間は、信号保持容量Csに保持されている画素信号(光信号(A+B信号))のアナログデジタル変換を行う期間である。この期間の間に、比較器38は、信号保持容量Csの信号レベルと、参照信号発生回路64から参照信号線66を介して供給される参照信号(ランプ信号)の信号レベルとを比較し、これらの大小関係が反転したタイミングでメモリ40にラッチ信号を出力する。メモリ40は、比較器38からラッチ信号を受信したタイミングにおいてカウント信号が示しているカウント値を、画素信号(光信号(A+B信号))のデジタルデータとして記憶する。
【0098】
この後、水平走査回路80は、タイミングジェネレータ90による制御のもとで各列の列回路32を走査し、各列の列回路32のメモリ40に保持されている画素信号のデジタルデータを、水平出力線76を介して外部へと出力する。
【0099】
このように、本実施形態によれば、画素信号を増幅する場合にも読み出し時間を増加することなく画素信号に重畳するオフセット成分のばらつきを抑制し、画質を向上することができる。また、高ゲイン時における読み出し時間の増加を抑制することで、低ゲイン時と高ゲイン時とにおける垂直走査期間の長さを揃えることも容易になる。
【0100】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による光電変換装置の駆動方法について、
図5を用いて説明する。第1実施形態による光電変換装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
図5は、本実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。本実施形態では、第1実施形態で説明した光電変換装置の他の駆動方法を説明する。
【0101】
本実施形態による光電変換装置の駆動方法は、制御信号PVFTHが異なるほかは、第1実施形態による光電変換装置の駆動方法と同様である。すなわち、本実施形態による光電変換装置の駆動方法においては、
図5に示すように、低ゲイン時には制御信号PVFTHをハイレベルに維持し、高ゲイン時には制御信号PVFTHをローレベルに維持する。
【0102】
制御信号PVFTHは、増幅器36の要否を選択するスイッチSW2を駆動する制御信号である。制御信号PVFTHがローレベルのとき、スイッチSW2は非導通状態となり、増幅器34から出力された画素信号は、増幅器36を介して信号保持容量Csへと出力される。一方、制御信号PVFTHがローレベルのとき、スイッチSW2は導通状態となり、増幅器34から出力された画素信号は、増幅器36を介さずに信号保持容量Csへと出力される。
【0103】
増幅器34の増幅率が小さい低ゲイン時には、制御信号PVFTHをハイレベルに制御し、増幅器36を使用しない信号経路とする。このように構成することで、低ゲイン時の消費電力を低減することができる。
【0104】
一方、増幅器34の増幅率が大きい高ゲイン時には、増幅器34の駆動電流を低ゲイン時における駆動電流よりも大きくする。また、制御信号PVFTHをローレベルに制御し、増幅器36を使用する信号経路とする。
【0105】
高ゲイン時は、信号が整定するまでに低ゲイン時よりも長い時間を要するため、信号の読み出し時間が増加することがある。増幅器34の駆動電流を増加し、また、増幅器36を使用するように構成することで、高ゲイン時における信号の整定時間を短縮することが可能となる。これにより、信号の読み出し時間の増加を抑制することができる。
【0106】
なお、本実施形態では、列増幅部を増幅器34と増幅器36の2段構成としたが、列増幅部を構成する増幅器の段数を更に増加してもよい。この場合、列増幅部を構成する増幅器の段数により、低ゲイン時と高ゲイン時とを定義することが可能である。
【0107】
このように、本実施形態によれば、画素信号を増幅する場合にも読み出し時間を増加することなく画素信号に重畳するオフセット成分のばらつきを抑制し、画質を向上することができる。
【0108】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による光電変換装置の駆動方法について、
図6を用いて説明する。第1及び第2実施形態による光電変換装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
図6は、本実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。本実施形態では、第1実施形態で説明した光電変換装置の他の駆動方法を説明する。
【0109】
本実施形態による光電変換装置の駆動方法は、制御信号PC0Rの波形が異なるほかは、第2実施形態による光電変換装置の駆動方法と同様である。すなわち、本実施形態による光電変換装置の駆動方法においては、
図6に示すように、制御信号PC0Rをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを、制御信号PC0Rをローレベルからハイレベルへと遷移する期間の長さよりも長くしている。制御信号PC0Rは、増幅器34のリセット動作を制御するスイッチSW1を駆動する制御信号である。
【0110】
波形制御回路50から出力される制御信号PC0Rは、行方向に配された共通の制御線52を介して、各列の列回路32に供給される。波形制御回路50は、前述の通り、読み出し回路部30の一方の側(
図1では左側)に配置されていることから、波形制御回路50から近い列と波形制御回路50から遠い列とでは、制御信号PC0Rの遅延時間が異なる。この制御信号PC0Rの遅延時間の差は、制御信号PC0RによってスイッチSW2を導通状態から非導通状態へと遷移するとき、スイッチSW2の駆動に伴うチャージインジェクションによる電荷注入量に差を生じる。この電荷注入量の差は各列の増幅器34のオフセットレベルの差となることから、制御信号PC0Rの遅延時間の差は画質劣化の要因となる。
【0111】
このような観点から、本実施形態では、制御信号PC0Rをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを、制御信号PC0Rをローレベルからハイレベルへと遷移する期間の長さよりも長くしている。このように構成することで、波形制御回路50から近い列と波形制御回路50から遠い列とで制御信号PC0Rの遅延時間の差が低減されるため、各列の増幅器34のオフセットレベルの差を低減することができる。
【0112】
制御信号PC0Rをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さは、制御信号PSHと同様に制御可能である。すなわち、波形制御回路50を
図3に示す回路と同様の回路により構成し、電流源60に流れる電流量を第1又は第2実施形態の場合よりも少なくすることで、制御信号PC0Rをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを長くすることができる。
【0113】
このように、本実施形態によれば、画素信号を増幅する場合にも読み出し時間を増加することなく画素信号に重畳するオフセット成分のばらつきを抑制し、画質を向上することができる。
【0114】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による光電変換装置の駆動方法について、
図7を用いて説明する。第1乃至第3実施形態による光電変換装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
図7は、本実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミング図である。本実施形態では、第1実施形態で説明した光電変換装置の他の駆動方法を説明する。
【0115】
本実施形態による光電変換装置の駆動方法は、制御信号PCRの波形が異なるほかは、第3実施形態による光電変換装置の駆動方法と同様である。すなわち、本実施形態による光電変換装置の駆動方法においては、
図7に示すように、制御信号PCRをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを、制御信号PCRをローレベルからハイレベルへと遷移する期間の長さよりも長くしている。制御信号PCRは、比較器38のリセット動作を制御するスイッチSW4を駆動する制御信号である。
【0116】
波形制御回路68から出力される制御信号PCRは、行方向に配された共通の制御線70を介して、各列の列回路32に供給される。波形制御回路68は、前述の通り、読み出し回路部30の一方の側(
図1では左側)に配置されていることから、波形制御回路68から近い列と波形制御回路68から遠い列とでは、制御信号PCRの遅延時間が異なる。この制御信号PCRの遅延時間の差は、制御信号PCRによってスイッチSW4を導通状態から非導通状態へと遷移するとき、スイッチSW4の駆動に伴うチャージインジェクションによる電荷注入量に差を生じる。この電荷注入量の差は各列の比較器38のオフセットレベルの差となることから、制御信号PCRの遅延時間の差は画質劣化の要因となる。
【0117】
このような観点から、本実施形態では、制御信号PCRをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを、制御信号PCRをローレベルからハイレベルへと遷移する期間の長さよりも長くしている。このように構成することで、波形制御回路68から近い列と波形制御回路68から遠い列とで制御信号PCRの遅延時間の差が低減されるため、各列の比較器38のオフセットレベルの差を低減することができる。
【0118】
制御信号PCRをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さは、制御信号PSHと同様に制御可能である。すなわち、波形制御回路68を
図3に示す回路と同様の回路により構成し、電流源60に流れる電流量を第1乃至3実施形態の場合よりも少なくすることで、制御信号PCRをハイレベルからローレベルへと遷移する期間の長さを長くすることができる。
【0119】
このように、本実施形態によれば、画素信号を増幅する場合にも読み出し時間を増加することなく画素信号に重畳するオフセット成分のばらつきを抑制し、画質を向上することができる。
【0120】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による撮像システムについて、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【0121】
上記第1乃至第4実施形態で述べた光電変換装置100は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。
図8には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0122】
図8に例示した撮像システム200は、撮像装置201、被写体の光学像を撮像装置201に結像させるレンズ202、レンズ202を通過する光量を可変にするための絞り204、レンズ202の保護のためのバリア206を有する。レンズ202及び絞り204は、撮像装置201に光を集光する光学系である。撮像装置201は、第1乃至第4実施形態のいずれかで説明した光電変換装置100であって、レンズ202により結像された光学像を画像データに変換する。
【0123】
撮像システム200は、また、撮像装置201から出力される信号の処理を行う信号処理部208を有する。信号処理部208は、撮像装置201が出力するデジタル信号から画像データの生成を行う。また、信号処理部208は必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。光電変換装置100は、信号処理部208で処理されるデジタル信号を生成するAD変換部を備え得る。AD変換部は、撮像装置201の光電変換部が形成された半導体層(半導体基板)に形成されていてもよいし、撮像装置201の光電変換部が形成された半導体層とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、信号処理部208が撮像装置201と同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0124】
撮像システム200は、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部210、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)212を有する。更に撮像システム200は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体214、記録媒体214に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)216を有する。なお、記録媒体214は、撮像システム200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0125】
更に撮像システム200は、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部218、撮像装置201と信号処理部208に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部220を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム200は少なくとも撮像装置201と、撮像装置201から出力された出力信号を処理する信号処理部208とを有すればよい。
【0126】
撮像装置201は、撮像信号を信号処理部208に出力する。信号処理部208は、撮像装置201から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部208は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0127】
このように、本実施形態によれば、第1乃至第4実施形態による光電変換装置100を適用した撮像システムを実現することができる。
【0128】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による撮像システム及び移動体について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態による撮像システム及び移動体の構成を示す図である。
【0129】
図9(a)は、車載カメラに関する撮像システムの一例を示したものである。撮像システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記第1乃至第4実施形態のいずれかに記載の光電変換装置100である。撮像システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、撮像システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、撮像システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0130】
撮像システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0131】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム300で撮像する。
図9(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の撮像システムを示した。車両情報取得装置320が、撮像システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0132】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0133】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0134】
また、上記実施形態では、増幅器34,36による画素信号の増幅率が小さいときを低ゲイン時、増幅器34,36による画素信号の増幅率が高いときを高ゲイン時としたが、低ゲイン時及び高ゲイン時は、この組み合わせに限定されるものではない。例えば、画素信号のゲインは、FD容量の容量値によっても制御可能である。制御信号FDincをハイレベルとし、浮遊拡散部FDに負荷容量CFDを接続することで、FD容量は増加し、画素信号のゲインは低下する。したがって、制御信号FDincをハイレベルに設定する場合を低ゲイン時、制御信号FDincをローレベルに設定する場合を高ゲイン時と定義することもできる。また、増幅器34のフィードバック容量Cfの容量値を切り替え可能に構成するなど、増幅器34においてゲインを調整できるように構成してもよい。浮遊拡散部FDによるゲインの制御と増幅器34,36によるゲインの制御とを任意に組み合わせ、低ゲイン時と高ゲイン時とを定義するようにしてもよい。
【0135】
また、上記実施形態では、画素領域10を構成する画素12として、2つの光電変換部PDA,PDBと2つの転送トランジスタM1A,M1Bとを含む構成を例示したが、画素12の構成はこれに限定されるものではない。例えば、光電変換部PD及び転送トランジスタM1は、各々の画素12に1つずつであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、光電変換部PD及び浮遊拡散部FDのほかに電荷を保持する保持部を追加し、グローバル電子シャッタ動作に適用可能な画素構成としてもよい。また、光電変換部PDの電荷を排出するための電荷排出トランジスタを更に追加してもよい。
【0136】
また、上記第1乃至第3実施形態では、光電変換装置100の読み出し回路部30において画素信号のAD変換処理を行っているが、光電変換装置100から画素信号をアナログ信号で出力し、光電変換装置100の外部でAD変換処理を行ってもよい。
【0137】
また、上記第5及び第6実施形態に示した撮像システムは、本発明の光電変換装置を適用しうる撮像システム例を示したものであり、本発明の光電変換装置を適用可能な撮像システムは
図8及び
図9に示した構成に限定されるものではない。
【0138】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0139】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0140】
10…画素領域
12…画素
14,52,54,62,70…制御線
16…出力線
20…垂直走査回路
30…読み出し回路部
32…列回路
34,36…増幅器
38…比較器
40…メモリ
50,56,68…波形制御回路
60…電流源
100…光電変換装置