IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱商事ライフサイエンス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ゲル積層体の製造方法 図1
  • 特許-ゲル積層体の製造方法 図2
  • 特許-ゲル積層体の製造方法 図3
  • 特許-ゲル積層体の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ゲル積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/269 20160101AFI20240311BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240311BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
A23L29/269
A23L17/00 Z
A23L13/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019207801
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021078391
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】北村 進吾
(72)【発明者】
【氏名】岸江 奈緒子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-132156(JP,A)
【文献】特開平02-308776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾルを1種又は2種以上調製し、該1種又は2種以上の水分散液又はヒドロゾルによって形成される層を複数積層して多層体とし、該多層体を加熱することによりゲル化させるゲル積層体の製造方法であって、1種又は2種以上の水分散液又はヒドロゾルによって形成される層を複数積層した多層体において、該層間に、熱凝固性β-1,3-グルカン含有粉末を堆積して形成される層を設けることを特徴とするゲル積層体の製造方法。
【請求項2】
熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾル中に含まれる熱凝固性β-1,3-グルカンの含有量が、該水分散液又は該ヒドロゾルに含まれる水に対して2~10質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾルが、さらに油脂、澱粉、乳化剤、粉末状蛋白質素材、セルロース、カルシウム塩、色素及び増粘剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上の添加剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾルが、該熱凝固性β-1,3-グルカンのアルカリ水溶液を中和する、又は該熱凝固性β-1,3-グルカンを水中で高速で撹拌することによって調製することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
ゲル積層体が、多層のゲル状食品である請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
多層のゲル状食品が、魚肉様食品又は食肉様食品である請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のゲル層が積層されたゲル積層体の製造方法として、例えば、比重差が0.008以上であるゾル区分を用意し、各区分がゲル化を完成しない間にある流動物を容器に同時に又は継時に流し込み、ゲル化温度以下の温度に静置して、複数のゲル層を積層させ一体化させる積層ゲル状物の製造方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、ブリックス値(糖度)が最終製品であるゼリー菓子のブリックス値と略等しい増粘多糖類を含有する加熱溶解物であって、カラギナン単独又はカラギナンと寒天とを主成分とする増粘多糖類を含有する加熱溶解物を最終製品の大きさよりも大きな成型器内に充填する工程、ブリックス値が最終製品であるゼリー菓子のブリックス値と略等しいゼラチンを含有する加熱溶解物を、前記増粘多糖類を含有する加熱溶解物からなる充填物上に充填する工程、充填した前記増粘多糖類を含有する充填物とゼラチンを含有する充填物とが固化するまで静置する工程、固化物を成型器から取り出し、最終製品の大きさにカットする工程、からなるゲル積層体(ここではゼリー菓子)の製造方法が知られている(特許文献2参照)。しかし、かかる製造方法を用いることにより、各ゲル層が強固に接着した多層のゲル状物が得られるが、得られた多層のゲル状物は、熱に弱く加熱調理等の熱処理することができなかった。
【0004】
一方、熱凝固性β-1,3-グルカンを含有する分散液をかきまぜながら55℃ないし60℃に保持することにより調製された該多糖類を0.5ないし5重量%含有する材料(I)と、別に前記と同様にして調製された多糖類含有材料(II)とを、両者がそれぞれ独立し、かつ、それらが密着した状態で存在するように組み合わせ、該組合せにゲル状物同志の接触面が存在する場合はこれを60℃ないし70℃に加熱し、必要に応じてさらに80℃以上に加熱し、それ以外の組合せの場合は、これを65℃以上に保持し、次いで冷却することを特徴とするゲル積層体(ここではゼリー食品類)の製造方法が知られている(特許文献3参照)。しかし、かかる製造方法によれば、上記材料(I)及び材料(II)がゾル状態で接触してゲル化するので、耐熱性もあり、層間の密着性に優れた多層状のゼリー食品類が得られるが、熱凝固性グルカンの含有量を増やしてより歯ごたえのある食感の食品を製造する場合に、この製造方法では、温度管理が煩雑であり、材料(I)及び(II)の粘性が高くなり取扱いが困難となる問題があった。また、得られるゼリーの食感も必ずしも満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭55-165759号公報
【文献】特開2007-202447号公報
【文献】特開昭50-132156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、カードラン等の熱凝固性β-1,3-グルカンの含有量を増やしてゲル積層体を製造する場合においても、製造を行う上で取り扱いが容易であり、層間密着性にも優れ、かつ食感に優れたゲル積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特にカードランのアルカリ水溶液を中和することで得られる、又はカードランを水中で高速撹拌することで得られるカードラン等の熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾルを用いて形成される層を複数積層して多層体とし、該多層体を加熱することでゲル積層体が容易に製造でき、それらは、層間密着性にも優れ、かつ食品として用いた際には食感も優れた多層のゲル状食品とすることも可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に示す事項で特定されるとおりのものである。
(1))熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾルを1種又は2種以上調製し、該1種又は2種以上の水分散液又はヒドロゾルによって形成される層を複数積層して多層体とし、該多層体を加熱することによりゲル化させることを特徴とするゲル積層体の製造方法。
(2)熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾル中に含まれる熱凝固性β-1,3-グルカンの含有量が、該水分散液又は該ヒドロゾルに含まれる水に対して2~10質量%の範囲であることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾルが、さらに油脂、澱粉、乳化剤、粉末状蛋白質素材、セルロース、カルシウム塩、色素及び増粘剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上の添加剤を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)1種又は2種以上の水分散液又はヒドロゾルによって形成される層を複数積層した多層体において、該層間に、熱凝固性β-1,3-グルカン含有粉末を堆積して形成される層を設けることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載の製造方法。
(5)熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾルが、該熱凝固性β-1,3-グルカンのアルカリ水溶液を中和する、又は該熱凝固性β-1,3-グルカンを水中で高速で撹拌することによって調製することを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載の製造方法。
(6)ゲル積層体が、多層のゲル状食品である(1)~(5)のいずれか1つに記載の製造方法。
(7)多層のゲル状食品が、魚肉様食品又は食肉様食品である(6)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法を用いることにより、カードラン等の熱凝固性β-1,3-グルカンの含有量を増やしても、ゲル積層体を容易に製造することができ、かつ得られるゲル積層体は、層間密着性に優れ、また食品として用いた際にはより歯ごたえのある食感に優れた多層のゲル状食品をとすることができるゲル積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の製造方法によってつくられたマグロ刺身風食品を示す(実施例1)。
図2】本発明の製造方法によってつくられたマグロ刺身風食品を示す(実施例1)。
図3】本発明の製造方法によってつくられたサーモン刺身風食品を示す(実施例2)。
図4】本発明の製造方法によってつくられたベーコン風食品を示す(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のゲル積層体の製造方法は、熱凝固性β-1,3-グルカン(以下、単に「熱凝固性グルカン」ということがある。)の水分散液又はヒドロゾル(以下、これらを総称して「水分散液等」ということがある。)を1種又は2種以上調製し、該1種又は2種以上の水分散液等によって形成される層を複数積層して多層体とし、該多層体を加熱することによりゲル化させる製造方法であり、より詳しくは、(1)熱凝固性グルカンの水分散液等を1種調製する場合は、水分散液等によって形成される層と層の間に熱凝固性グルカン含有粉末を堆積して形成される層を設けることによって多層体を形成し、あるいは(2)熱凝固性グルカンの水分散液等を2種以上調製する場合は、水分散液等によって形成される層を多層となるように複数積層して多層体を形成し(この場合であっても、層と層の間に熱凝固性グルカン含有粉末を堆積して形成される層を設けることもできる)、形成された多層体を加熱することによりゲル化させる製造方法である。なお、本発明の製造方法に用いられる「熱凝固性グルカンの水分散液又はヒドロゾル」は、熱凝固性グルカンが水中に分散している溶液又はヒドロゾルを意味し、熱凝固性グルカンが、水中に分散している状態であれば、他の成分を含んでいてもよいことを意味する。
【0012】
本発明の製造方法で得られるゲル積層体(本発明のゲル積層体ともいう)とは、ゲル化した層が、2層以上積層されて多層となった組成物を意味し、これを食品用途に用いた場合、具体的には、ゼリー、ムース、プリン、ババロア、フラン、ブラマンジュ、水ようかん等の洋風・和風の多層デザートといった甘味を有する食品;ゼリー状、ムース状の食品を同種あるいは異種の食品と組み合わせて積層した、煮こごり、ゼリー寄せ、テリーヌ、食肉様食品、魚肉様食品といった多層のゲル状食品;等が挙げられ、中でも多層構造を有する食肉様食品又は魚肉様食品が好ましく挙げられる。食肉様食品及び魚肉様食品とは、食肉又は魚肉を植物性蛋白質等で代替した食品であり、具体的には、赤身部分を植物性蛋白質を用いたゲル化物で代替し、脂身部分を、植物性油を用いたゲル化物で代替したベーコン、ハム、叉焼等の食肉様食品、又は赤身部分を、植物性蛋白質を用いたゲル化物で代替し、スジ部分をカードランと色素の混合粉末で代替したマグロ、サーモン等の魚肉様食品(例えば、刺身風食品等)などが挙げられる。なお、本発明のゲル積層体は、上記のような食品用途に限られず、ゲル状組成物が応用される種々の用途に使用してもよい。
【0013】
本発明の製造方法に用いられる熱凝固性β-1,3-グルカンとしては、D-グルコースを構成糖とし、β-1,3-グルコシド結合を主体とし、熱凝固性を有する多糖類であれば特に制限されず、例えば、カードラン、パラミロン、パキマン等を挙げることができるが、なかでもカードランを好適に例示することができる。かかるカードランとしては、例えばアルカリゲネス属又はアグロバクテリウム属の微生物によって生産されるものが挙げられる。具体的にはアルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kにより生産されるカードラン[アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural Biological Chemistry),30巻,196頁(1966年)]、アルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kの変異株NTK-u(IFO13140)により生産されるカードラン(特公昭48-32673号)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(IFO13127)及びその変異株U-19(IFO13126)により生産されるカードラン(特公昭48-32674号)などを使用することができる。市販のカードラン(例えば、三菱商事ライフサイエンス社製)を用いることもできる。
【0014】
上記水分散液等の調製方法としては、熱凝固性グルカンを水中に懸濁状又はゾル状に分散できる方法であれば特に限定されないが、特に熱凝固性グルカンがカードランである場合、本発明の製造方法においては、カードランのアルカリ水溶液を中和することによって調製する方法、又はカードランを水中で高速撹拌して調製する方法を好適に挙げることができる。
【0015】
熱凝固性グルカンのアルカリ水溶液は、熱凝固性グルカンを水及びアルカリ剤で膨潤させて調製することができる。例えば熱凝固性グルカンがカードランである場合、カードランのアルカリ水溶液の調製方法として、具体的には、アルカリ剤でpH10.5~13、好ましくはpH11~12(アルカリ剤の量として、カードラン水分散液中、通常、0.1~1質量%)に調整したカードランの水分散液を、通常40℃以下で、カッターミキサー、サイレントカッターミキサー、ボールカッターミキサー等で撹拌して膨潤させる。この条件で、通常、2~10分で膨潤が完了する。アルカリ水溶液中の熱凝固性グルカンの含有量としては、最終的に得られるゲル積層体の性状によって、任意に選択できるが、熱凝固性グルカンがカードランである場合、カードランアルカリ水溶液中の水に対して、0.5~10質量%の範囲が好ましく、2~10質量%の範囲がより好ましく、3~8質量%の範囲がさらに好ましい。
【0016】
用いるアルカリ剤は、特に限定されるものではなく、ゲル積層体を食品として用いる場合、食品用のアルカリ剤であればいずれでもよく、例えば、かん水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられ、これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記のようにして調製した熱凝固性グルカンのアルカリ水溶液を、酸により中和することで本発明の製造方法に用いられる水分散液等を調製することができる。中和する方法としては、膨潤させる際のpHにもよるが、通常、酸を直接又は溶液の状態で熱凝固性グルカンのアルカリ水溶液に添加して、そのpHを3~10の範囲、好ましくは、pH4~9、pH5~8、pH6~7.5の範囲(通常、酸の添加量として熱凝固性グルカンのアルカリ水溶液に対して0.1~1質量%)に調整する方法を挙げることができる。アルカリ水溶液の中和に用いる酸も、食用の酸であれば特に限定されるものではなく、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、本発明に用いられる水分散液等は、熱凝固性グルカンを水中で、ホモジナイザー、カッターミキサー、サイレントカッターミキサー、ボールカッターミキサー等の高速撹拌機などを用いて撹拌することにより調製することができる。この場合、高速とは、通常1000rpm以上であり、好ましくは、2000rpm以上、又は3000rpm以上である。
【0019】
本発明の製造方法に用いられる「熱凝固性β-1,3-グルカンの水分散液又はヒドロゾル」は、該熱凝固性グルカンが水中に分散している溶液又はヒドロゾルを意味し、該熱凝固性グルカンが水中に分散している状態であれば、他の成分を含んでいてもよいことを意味する。
本発明の製造方法に用いられる水分散液等には、熱凝固性グルカンのゲル化を阻害しない他の成分を含有してもよい。例えば、本発明のゲル積層体を食品として用いる場合は、他の成分として食用の油脂、澱粉、乳化剤、粉末状蛋白質素材、セルロース、カルシウム塩、色素及び増粘剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上の添加剤を含むことができる。
前記油脂としては、食用のものであれば、植物性油脂又は動物性油脂のいずれでもよく、例えば、綿実油、大豆油、菜種油、パーム油、オリーブ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂等の動物性油脂などのトリグリセライド、及びそれらより得られる脂肪酸やジグリセライドが挙げられる。また、それらより分離精製した精製油、精製脂肪酸を用いてもよい。これらの油脂は、1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記油脂の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記水分散液等中の油脂の含有量は、該水分散液等に含まれる水に対して、1~40質量%の範囲が好ましく、3~30重量%の範囲がより好ましい。
【0020】
上記澱粉としては、食用のものであれば特に限定されず、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉又はこれらに架橋、エステル化、エーテル化、酸化、α化等を施した加工澱粉(難消化性含む)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。前記澱粉の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記水分散液等に含まれる中の水に対して、1~15質量%の範囲が好ましく、2~10質量%の範囲がより好ましい。
【0021】
上記乳化剤としては、食用のものであれば特に限定されず、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン等が挙げられ、これらの1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記乳化剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記水分散液等中に含まれる水に対して、0.05~約1.0質量%の範囲が好ましく、さらに0.2~0.8質量%の範囲が好ましい。
【0022】
上記粉末状蛋白質素材としては、食用のものであれば植物性蛋白質又は動物性蛋白質のいずれでもよく、例えば、全卵、卵黄、卵白及びこれらから分離されるオボアルブミン、オボグロブリン等の卵蛋白質、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエー蛋白質等の乳蛋白質、ゼラチン、コラーゲン等の動物性蛋白質、大豆蛋白質、小麦蛋白質等の植物性蛋白質などの蛋白質の粉状物が挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記粉末状蛋白質素材の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記水分散液等中に含まれる水に対して、5~30質量%の範囲が好ましく、さらに、8~20質量%の範囲が好ましい。
【0023】
上記増粘剤(ゲル化剤、安定剤、増粘安定剤、糊料ともいう)としては、食用のものであれば特に限定されず、例えば、ローカストビーンガム、κ-カラギナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、カラギナン、ゼラチン、ローメトキシルペクチン、ハイメトキシルペクチン、ペクチン、タラガム、寒天、低強度寒天、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記増粘剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記水分散液等中に含まれる水に対して、0.5~10質量%の範囲が好ましく、さらに、0.5~5質量%の範囲が好ましい。
【0024】
上記セルロースとしては、草木類や微生物などから得られるセルロースが挙げられ、より具体的には、木材パルプを機械的若しくは化学的に処理して得られる粉末セルロース、発酵セルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、微小繊維状セルロースなどが挙げられ、これらの1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記セルロースの配合量は、特に限定されないが、水分散液等全体に対して、0.5~10質量%の範囲が好ましく、さらに1~5質量%、2~3質量%の範囲が好ましい。
【0025】
上記カルシウム塩は、水への溶解性にかかわらず、食品の用途に使用できるものであれば特に制限はなく、具体的には、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム等が挙げられる。前記カルシウム塩の配合量は特に限定されないが、水分散液等全体に対して、0.5~10質量%の範囲が好ましく、さらに1~5質量%、2~3質量%の範囲が好ましい。
また、カルシウム塩を水分散液などに含有させることにより、生成するゲルの油脂感が向上する。
【0026】
上記色素として、食品添加物として認められ目的とする色味に適合するものであれば特に限定されず、具体的には、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色1号及び食用青色2号の食用タール系色素、三二酸化鉄、二酸化チタンの無機系の指定色素、カロチノイド色素、カロテノシド色素、ウコン色素、カラメル色素、クチナシ色素、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、ベニコウジ色素、ベニバナ色素等の天然系基原由来の色素が挙げられる。さらに、食品添加物として用いられる炭酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸銅、硫酸第一鉄、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硫酸亜鉛等もその固体の色に応じて用いることができる。上記色素の配合量は、特に制限されないが、水分散液等全体に対して、0.01~5質量%の範囲が好ましく、さらに0.05~3質量%、0.1~1.5質量%の範囲が好ましい。
【0027】
本発明のゲル積層体を食品として用いる場合、上記水分散液等には、上記各添加剤に加えて、必要に応じてさらに野菜、果物、海藻類、小麦粉、調味料、香辛料、着色料等の任意成分を添加することができる。用いられる野菜として、ゲル状食品の外観、味、風味、食感等を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、タマネギ、ニンジン、ピーマン等が挙げられる。調味料、香辛料も同様であり、例えば、ニンニク、ショウガ、トウガラシ、コショウ、醤油、味噌等が挙げられる。
前記任意成分の状態は、特に限定されず、固体状、液状、半固体状のいずれでもよく、また、乾燥状態であってもよい。
【0028】
上記各添加剤及び上記任意成分(以下、「添加剤等」という。)は、上記水分散液等の調製時に熱凝固性グルカンと共に水に混合してもよく、該水分散液等の調製後に添加して混合撹拌してもよく、さらに、該水分散液等に油脂を添加してエマルジョンを調製後に油脂以外の添加剤等を添加して混合撹拌してもよい。前記添加剤等は、全てを同時に添加する必要はなく、各添加剤及び各成分を必要に応じて、順次添加して混合撹拌して、前記水分散液等を調製することができる。
【0029】
上記のようにして調製された1種又は2種以上の水分散液等からなる層(以下、「水分散液等層」という。)を多層となるように複数積層して多層体とする。多層体を調製する方法は特に制限されないが、例えば、水分散液等を耐熱性の型に流し入れて水分散液等層1を成型し、該水分散液等層1の上に水分散液等を流し入れ水分散液等層2を成型し、その操作を繰り返すことにより多層体を調製する方法、又は水分散液等を型に流し入れて水分散液等層1を成型し、さらに水分散液等を水分散液等層1の下に管を通して流し入れて水分散液等層1の下に水分散液等層2を成型し、さらに水分散液等層2の下に水分散液等を、管を通して流し入れて水分散液等層3を成型し、この操作を繰り返すことにより多層体を調製する方法等が挙げられる。水分散液等層の厚みは、目的に応じて適宜設定することができる。
【0030】
本発明の製造方法において、上記水分散液等層間には熱凝固性グルカンを堆積して形成される層(以下、「熱凝固性グルカン含有粉末層」という。)を設けることができる。この熱凝固性グルカン含有粉末層は1種の水分散液等からなる層間に特に有利に用いることができる。熱凝固性グルカン含有粉末層には、熱凝固性グルカン以外に必要に応じて、油脂、調味料、香辛料、増粘剤、澱粉、色素(着色料)等を固体状、好ましくは粉末状で含有させることができる。前記油脂、調味料、香辛料、増粘剤、澱粉、色素として、具体的には、上記添加剤等において例示されたものと同様のものを例示することができる。常温で液体である油脂等については、油脂を食品添加物である無機系化合物に含浸したものを、必要に応じて粉砕することで粉末状として供することができる。
【0031】
上記水分散液等層間に熱凝固性グルカン含有粉末層を設ける方法として、例えば、上記の成型された水分散液等層上に熱凝固性グルカンを、前記水分散液等層を覆うように散布させるなどして、該粉末を堆積して層を形成する方法等が挙げられる。前記熱凝固性グルカン含有粉末層を設ける手段は、特に限定されないが、具体的には、メッシュ付きの粉振り器で振りかける方法等が挙げられる。前記熱凝固性グルカン含有粉末層の厚みは特に限定されないが、目的に応じて適宜設定することができるが、例えば、上下の水分散液等層が混じり合わないようにするためには、0.1~3mmとするのが好ましく、0.1~1mmとするのがさらに好ましい。また、必要に応じて前記熱凝固性グルカン含有粉末層の厚みを3mm以上とすることもできる。前記熱凝固性グルカン含有粉末層は、前記水分散液等層上を覆っていればよく、必ずしも均一である必要はなく、場合によっては、覆われていない場所があってもよく、厚みも均一である必要はない。
【0032】
上記のようにして調製された熱凝固性グルカン含有粉末層上にさらに上記水分散液等を流し入れ、前記熱凝固性グルカン含有粉末層上にさらに水分散液等層を設け、水分散液等層/熱凝固性グルカン含有粉末層/水分散液等層の順で積層された多層体を得ることができる。この操作を繰り返すことにより、水分散液等層と熱凝固性グルカン含有粉末層層を複数交互に積層した多層体とすることができる。
【0033】
上記のようにして調製された多層体を、必要に応じて脱気して80℃以上に加熱することによって本発明のゲル積層体を得ることができる。前記多層体の脱気方法は特に限定されず、例えば、容器に充填し、公知の脱気装置を用いて脱気することができる。脱気された前記多層体を加熱する方法としては、特に限定されないが、煮沸加熱、蒸気加熱、加圧加熱、通電加熱等が挙げられ、好ましくは蒸気加熱である。加熱条件は、熱凝固性グルカンが熱不可逆性のゲルを形成できる条件である限り特に限定されず、当業者によって適宜決定されるが、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは、80~120℃であり、さらに好ましくは85~100℃である。また、加熱時間は、好ましくは5分間以上であり、より好ましくは5~90分間、さらに好ましくは15~60分間である。
【0034】
得られたゲル積層体はそのまま用途に応じて使用することができる。また加熱乾燥、凍結乾燥などの方法により水分を除去し、ゲル積層体の乾燥物として用いてもよい。例えば、ゲル積層体を食品として用いる場合は、そのまま調理を行っても、冷凍保存してもよい。また加熱乾燥、凍結乾燥などの方法により水分を除去し、乾燥した多層のゲル状食品を得ることもできる。
【0035】
本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は、実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
(マグロ刺身風食品の製造)
以下に、スジの入ったまぐろの刺身風食品の製造方法を、赤身製造用水分散液の調製と、スジ製造用粉末の調製と、それらを用いたマグロ刺身風食品用のマグロ風の切身の製造及びマグロ刺身風食品の製造に分けて説明する。
【0037】
(赤身製造用水分散液Aの調製)
水58質量部と粉末状カードラン(三菱商事ライフサイエンス社製。以下同じ。)2.8質量部を高速撹拌機で混合して水分散液を得た。得られた水分散液に高速撹拌下にリン酸三ナトリウム(無水)0.5質量部、水29質量部の水溶液を添加し、カードランを溶解させた後に、50質量%の発酵乳酸水溶液0.70質量部を添加してpH7.3に調整してカードランの均一な水分散液を得た。セルロース粉末(50メッシュパスが90%以上)1.5質量部、セルロース粉末(400メッシュパスが90%以上)1.0質量部、加工澱粉3.0質量部、デキストリン0.7質量部、醤油0.5質量部、水産エキス調味料1.1質量部、色素(トマト色素)0.48質量部を添加して、高速撹拌混合し、赤身製造用水分散液Aとした。
【0038】
(スジ製造用粉末Bの調製)
粉末状カードラン20質量部、粉末状の炭酸カルシウム(白色色素)10質量部、粉末状のデキストリン70質量部をよく混合してスジ製造用粉末Bを調製した。
【0039】
(マグロ刺身風食品用のマグロ風の切身の調製)
上記のように調製した赤身製造用水分散液Aを耐熱性の型にいれ、その上に、上記のように調製したスジ製造用粉末Bを一面に敷き詰め、さらにその上に赤身製造用水分散液Aを流し入れる工程を複数回繰返し、赤身製造用水分散液Aとスジ製造用粉末Bが複数層交互に積み重なった多層体を耐熱性の型の中で調製した。前記多層体が調製された耐熱性の型を、脱気シーラーで脱気及びシーリングし、95℃の蒸気加熱装置(スチームコンベクションオーブン、マルゼン(株)製)に投入し、40分間蒸気加熱した。40分後、オーブンから取り出し、室温まで冷却し、マグロ刺身風食品用のマグロ風の切身を調製した。これを、さらに-40℃に急速冷凍して2月間冷凍保存した。
【0040】
(マグロ刺身風食品の製造)
上記のようにして得られ、冷凍保存されたマグロ風の切身を室温で解凍したのち、通常、マグロの刺身と思われる大きさ、形に、層状になった赤身とスジに対して垂直方向から切り分けて、マグロ刺身風食品とした。
【0041】
(外観評価)
マグロの赤身に相当する部分と中トロのスジに相当する白い層が複数交互積層されているのが観察され、外観はスジの入ったマグロを思わせた(図1及び図2参照)。刺身となった状態で持ち上げても、赤身部とスジ部は切り離されることなく、密着していた。
【実施例2】
【0042】
(サーモン刺身風食品の製造)
以下に、サーモンピンク部製造用水分散液Cの調製と、スジ製造用粉末Dの調製と、それらを用いたサーモン刺身風食品用のサーモン風の切身の製造及びサーモン刺身風食品の製造に分けて説明する。
【0043】
(サーモンピンク部製造用水分散液Cの調製)
水49質量部と粉末状カードラン2.8質量部を、高速撹拌機で混合して水分散液を得た。得られた水分散液に、高速撹拌下にリン酸三ナトリウム(無水)0.5質量部、水29質量部の水溶液を添加し、カードランを溶解させた後に、50質量%の発酵乳酸水溶液0.6質量部を添加してpH7.3に調整してカードランの均一な水分散液を得た。セルロース粉末(100メッシュパスが90%以上)2.5質量部、加工澱粉3.0質量部、デキストリン0.7質量部、食塩0.3質量部、醤油0.5質量部、水産エキス調味料0.45質量部、色素(トウガラシ色素、トマト色素及び竹炭色色素)0.45質量部、サラダ油10.0質量部及び乳化剤0.23質量部を添加してよく高速撹拌混合し、サーモンピンク部製造用水分散液Cとした。
【0044】
(スジ製造用粉末Dの調製)
粉末状カードラン20質量部、粉末状の炭酸カルシウム(白色色素)10質量部、粉末状のデキストリン70質量部をよく混合してスジ製造用粉末Dを調製した。
【0045】
(サーモン刺身風食品用のサーモン風の切身の製造)
上記のように調製したサーモンピンク部製造用水分散液Cを耐熱性の型に流し入れ、その上に、上記のように調製したスジ部製造用粉末Dを一面に敷き詰め、さらにその上にサーモンピンク部製造用水分散液Cを流し入れる工程を複数回繰返し、サーモンピンク部製造用水分散液Cとスジ製造用粉末Dが複数層交互に積み重なった多層体を耐熱性の型の中で調製した。前記多層体が調製された耐熱性の型を、脱気シーラーで脱気及びシーリングし、95℃の蒸気加熱装置(スチームコンベクションオーブン、マルゼン(株)製)に投入し、40分間蒸気加熱した。40分後、オーブンから取出し、室温まで冷却し、サーモン刺身風食品用のサーモン風の切身を調製した。これを、さらに-40℃に急速冷凍して2月間冷凍保存した。
【0046】
(サーモン刺身風食品の製造)
上記のようにして得られ、冷凍保存されたサーモン風の切身を室温で解凍したのち、通常、サーモンの刺身と思われる大きさ、形に、層状になったサーモンピンク部とスジに対して垂直方向から切り分けて、サーモン刺身風食品とした。
【0047】
(外観評価)
サーモンのサーモンピンクの身に相当する部分とトロサーモンのスジに相当する白い層とが、交互に複数積層されているのが観察され、外観はトロサーモンの刺身を思わせた(図3参照)。刺身となった状態で持ち上げても、サーモンピンク部とスジ部は切り離されることなく、密着していた。
【実施例3】
【0048】
(ベーコン風食品の製造)
ベーコン風食品の製造方法を、肉赤身製造用水分散液Eの調製と、脂肪製造用水分散液Fの調製と、それらを用いたベーコン風食品の製造に分けて以下に説明する。
【0049】
(肉赤身製造用水分散液Eの調製)
水46質量部と粉末状カードラン2.8質量部を、高速撹拌機で混合して水分散液を得た。得られた水分散液に、高速撹拌下にリン酸三ナトリウム(無水)0.5質量部、水29質量部の水溶液を添加し、カードランを溶解させた後に、50質量%の発酵乳酸水溶液0.6質量部を添加してpH7.3に調整してカードランの均一な水分散液を得た。セルロース粉末(100メッシュパスが90%以上)2.5質量部、加工澱粉3.0質量部、デキストリン0.7質量部、粉末状大豆蛋白質2.0質量部、食塩1.0質量部、醤油0.5質量部、うま味調味料0.4質量部、香料(スミビヤキフレーバー、ベーコンフレーバー)0.5質量部、色素0.01質量部、サラダ油10.0質量部及び乳化剤0.23質量部を添加してよく高速撹拌混合し、肉赤身製造用水分散液Eを調製した。
【0050】
(脂肪製造用水分散液Fの調製)
水89質量部と粉末状カードラン5質量部を、高速撹拌機で懸濁させ、水分散液を得た。この水分散液に、炭酸カルシウム(白色色素)2.0質量部、サラダ油2.0質量部及び加工澱粉2.0質量部を添加してさらに十分に高速撹拌して、脂肪製造用水分散液Fを調製した。
【0051】
(ベーコン風食品の製造)
上記肉赤身製造用水分散液Eを耐熱性の型に流し入れ、上記脂肪製造用水分散液Fを肉赤身製造用水分散液Eの上に流し込み、さらにその上に肉赤身製造用水分散液Eを流し入れる工程を複数回繰返し、肉赤身製造用水分散液Eと脂肪製造用水分散液Fが複数層交互に積み重なった多層体を耐熱性の型の中で調製した。前記多層体が調製された耐熱性の型を、脱気シーラーで脱気及びシーリングし、95℃の蒸気加熱装置(スチームコンベクションオーブン、マルゼン(株)製)に投入し、40分間蒸気加熱した。40分後、オーブンから取出し、室温まで冷却し、塊状のベーコン風食品を製造した。これを、さらに-40℃に急速冷凍して2月間冷凍保存した。
【0052】
上記冷凍保存された塊状のベーコン風食品を室温で解凍したのち、層状になった肉赤身と脂肪に対して垂直方向から薄く切り分けて、その切身をサンプルとして評価した。
【0053】
(外観評価)
肉赤身部と脂肪部が層状になっており、外観はベーコンの薄切りを思わせた(図4参照)。薄切りした状態で持ち上げても、肉赤身部と脂肪部は切り離されることなく、密着していた。
【0054】
(官能評価)
数名の官能評価員(ベジタリアンでもヴィーガンでもない通常の食生活をしている成人の健常者)に上記サンプルを試食してもらったところ、実際のベーコンに似た食感及び味であったとの評価を得た。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の製造方法を用いることにより、食品用途とした場合、耐熱性があり食感に優れたゲル積層体を、効率よく製造することができる。本発明のゲル積層体の用途は食品に限定されないが、多層に積層されたゲル状食品は、食品分野において広く利用されていることから、本発明の製造方法は、特に食品分野で好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4