(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】画像記録装置、画像記録装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240311BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B41J2/175 133
B41J29/38 204
B41J2/175 121
B41J2/175 119
(21)【出願番号】P 2019225535
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐原 昭慶
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167436(JP,A)
【文献】特開2009-220564(JP,A)
【文献】特開2017-047590(JP,A)
【文献】特開2002-92299(JP,A)
【文献】特開2001-228761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 29/00 - 29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するタンクを装着可能な装着部と、
記録データに従ってインクを吐出する記録ヘッドと、
前記タンクから供給されたインクを受容し前記記録ヘッドに供給するサブタンクと、
を備え、
前記装着部に装着されたタンクから前記サブタンクへ
のインク
の補充
を制御する制御手
段
を有する画像記録装置であって、
前記制御手段は、
前記画像記録装置が所定の契約に締結されていない、かつ、前記所定の契約に対応する特定タンクが前記装着部に装着されている場合に、前記特定タンクから前記サブタンクへインクが補充されないように制限を行い、
前記装着部に前記特定タンクが装着されている間に、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない状態から締結されている状態に変更されたことに応じて、前記制限を解除した上で、さらに、前記特定タンクから前記サブタンクへのインクの補充を行うことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドに対するメンテナンス処理を
制御するメンテナンス手段を更に備え、
前記
メンテナンス手段は、
前記装着部に
前記特定タンクが装着され
、かつ、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない場合に、前記メンテナンス処理の制限を行い、
前記装着部に前記特定タンクが装着されている間に、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない状態から締結されている状態に変更されたことに応じて、前記制限を解除した上で、さらに、前記メンテナンス処理を行
うことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記装着部に前記特定タンクが装着されている間に、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない状態から締結されている状態に変更された場合でも、前記サブタンクに収容されているインク
の量が所定値以上である場合は、前記
特定タンクから前記サブタンクへのインクの補充を行
わないことを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記所定の契約が締結されていない状態において、前記装着部に装着されるタンクが前記特定タンクから前記
特定タンクとは異なる一般タンクに交換された場合に、
前記一般タンクから前記サブタンクへのインクの補充を行
うことを特徴とする
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記画像記録装置が前記所定の契約
に締結されているか否かを示す情報をサーバーより取得する取得手段を更に備えることを特徴とする
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記装着部には複数のタンクを装着可能であり、
前記複数のタンクのそれぞれから供給されたインクを受容する複数のサブタンクを備え、
前記制御手段は、前記装着部に装着された少なくとも1つのタンクが前記
特定タンクであり、かつ、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない場合に、前記装着部に装着された全ての前記複数のタンクから
前記複数のサブタンク
のそれぞれへインクが補充されないように制限を行うことを特徴とする
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドが記録動作を行っているとき、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの間でインクを循環させる循環手段を更に備えることを特徴とする
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドを用いて前記記録データを記録する指示を受信する受信手段をさらに有し、
前記制御手段は、
前記装着部に前記特定タンクが装着されている間に、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない状態から締結されている状態に変更されたことに応じて、前記制限を解除した上で、さらに、前記指示を受信する前に、前記特定タンクから前記サブタンクへのインクの補充を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
インクを収容するタンクを装着可能な装着部と、
記録データに従ってインクを吐出する記録ヘッドと、
前記タンクから供給されたインクを受容し前記記録ヘッドに供給するサブタンク
と、
を備え
、前記装着部に装着されたタンクから前記サブタンクへのインクの補充を補充することが可能な画像記録装置の制御方法であって、
前記画像記録装置が所定の契約に締結されていない、かつ、前記所定の契約に対応する特定タンクが前記装着部に装着されている場合に、前記特定タンクから前記サブタンクへインクが補充されないように制限を行い、
前記装着部に前記特定タンクが装着されている間に、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない状態から締結されている状態に変更されたことに応じて、前記制限を解除した上で、さらに、前記特定タンクから前記サブタンクへのインクの補充を行うことを特徴とする画像記録装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の制御方法を1つ以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
インクを収容するタンクを装着可能な装着部と、
記録データに従ってインクを吐出する記録ヘッドと、
前記タンクから供給されたインクを受容し前記記録ヘッドに供給するサブタンクと、
を備え、
前記記録ヘッドに対するメンテナンス処理を制御するメンテナンス手段
を有する画像記録装置であって、
前記メンテナンス手段は、
前記画像記録装置が所定の契約に締結されていない、かつ、前記所定の契約に対応する特定タンクが前記装着部に装着されている場合に、前記メンテナンス処理の制限を行い、
前記装着部に前記特定タンクが装着されている間に、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない状態から締結されている状態に変更されたことに応じて、前記制限を解除した上で、さらに、前記メンテナンス処理を行うことを特徴とする画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗品を収容したカートリッジを着脱可能な画像記録装置、画像記録装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
消耗品である色材を収容したカートリッジを着脱可能に搭載する画像記録装置において、ユーザは、色材が消耗されたカートリッジを新品のカートリッジと交換することができる。
【0003】
特許文献1には、交換可能なメインタンク(カートリッジ)と記録ヘッドとの間に、インクを受容するバッファタンクを設け、バッファタンクと記録ヘッドとの間でインクを循環させながら記録動作を行う記録装置が開示されている。特許文献1によれば、記録コマンドが発信してから記録動作完了までの時間をなるべく短縮するために、メインタンクからバッファタンクへのインクの補充は、記録動作のコマンドを受ける前の準備段階で行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、契約が締結されている記録装置のみで使用が許可される特定のメインンタンクが、契約の締結状態に関わらず実質的に使用可能となってしまう場合がある。なお、ここでは所定の契約の有無を例に説明したが、このような状況は記録装置に何らかの利用条件を設定した場合に同様に起こりうる状況である。
【0006】
本発明は上記課題を解消するためになされたものである。よってその目的とするところは、画像記録装置において、所定の利用条件に応じた処理を適切に行うこと実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明は、インクを収容するタンクを装着可能な装着部と、記録データに従ってインクを吐出する記録ヘッドと、前記タンクから供給されたインクを受容し前記記録ヘッドに供給するサブタンクと、を備え、前記装着部に装着されたタンクから前記サブタンクへのインクの補充を制御する制御手段を有する画像記録装置であって、前記制御手段は、前記画像記録装置が所定の契約に締結されていない、かつ、前記所定の契約に対応する特定タンクが前記装着部に装着されている場合に、前記特定タンクから前記サブタンクへインクが補充されないように制限を行い、前記装着部に前記特定タンクが装着されている間に、前記画像記録装置が前記所定の契約に締結されていない状態から締結されている状態に変更されたことに応じて、前記制限を解除した上で、さらに、前記特定タンクから前記サブタンクへのインクの補充を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像記録装置において、所定の利用条件の下で適切な処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インクジェット記録装置の内部構成図である。
【
図2】記録装置における制御構成を示すブロック図である。
【
図4】記録媒体が給送されるときの搬送経路を示す図である。
【
図5】記録媒体が給送されるときの搬送経路を示す図である。
【
図6】記録媒体が給送されるときの搬送経路を示す図である。
【
図7】記録装置がメンテナンス状態のときの図である。
【
図9】インク供給ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図10】タンク交換シーケンスのフローチャートである。
【
図11】タンク交換シーケンスのフローチャートである。
【
図12】操作パネルの表示部に表示される画面の例を示す図である。
【
図13】タンク適合判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図14】通信許可フラグを設定する際の操作パネルの画面例を示す図である。
【
図15】利用契約確認シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【
図16】契約対応シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【
図17】エラー解除シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【
図19】タンク交換シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【
図20】エラー解除シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置(以下、記録装置)1の内部構成図である。以降、図においてx方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列する方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0011】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。
図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0012】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0013】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側と下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、記録ヘッド8の上流側に配され、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送経路における最下流に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配され、記録媒体Sを所定方向に案内する。拍車7bのうち、搬送ローラ7または排出ローラ12と対向する位置に設けられたものは、搬送ローラ7または排出ローラ12と記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0014】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0015】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッド(ラインヘッド)であり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、
図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が
図1に示す待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aはキャップユニット10によってキャップされている。このキャップユニット10の位置をキャッピング位置とも称する。記録ヘッド8が記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0016】
インクタンクユニット14には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのインクをそれぞれ貯留する4つのメインタンク501(カートリッジ)が着脱可能に搭載される。インク供給ユニット15は、メインタンク501と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0017】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンスユニット16については後に詳しく説明する。
【0018】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0019】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した記録対象となる画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0020】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。
【0021】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0022】
メインコントローラ101は、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してクラウドサーバー450と接続している。クラウドサーバー450は、記録装置1のIDなどに対応付けられた利用契約情報を管理している。メインコントローラ101は、上記利用契約情報をクラウドサーバー450より読み込み、読み込んだ情報に基づいて記録装置1の動作を制御することができる。
【0023】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2の各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ(制御手段)202は、これを一旦RAM204に保存する。プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させることで、記録ヘッド8が記録動作に利用できるようにする。
【0024】
記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して
図1に示す第1給送ユニット6A、第2給送ユニット6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0025】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、メインタンク501からインク供給ユニット15へのインクの供給を制御する。また、インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0026】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えば、コントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザがADFに搭載した原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0027】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。
図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0028】
記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を
図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを下降させながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0029】
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
【0030】
図4(a)~(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。
図4以降で、搬送される記録媒体Sは点線によって示す。第1カセット5A内で1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
【0031】
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、排出ローラ12と拍車7bに案内されながら、先端が
図4において右側に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。
図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pを過ぎると、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
【0032】
記録媒体Sは鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。
図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出トレイ13に排出される状態を示す。記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で排出され、排出トレイ13上に保持される。
【0033】
図5(a)~(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内で1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
【0034】
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字状に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
【0035】
その後の搬送経路は、
図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。
図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。
図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0036】
図6(a)~(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。記録装置1が両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は
図4(a)~(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、
図4(c)以後の搬送工程について説明する。
【0037】
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が
図6において左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。
図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
【0038】
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。
図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
【0039】
その後の搬送経路は、
図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。
図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。
図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。なお、A3サイズの記録媒体Sの両面記録においても、同様の搬送が行われる。
【0040】
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。
図1でも説明したように、メンテナンスユニット16はキャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
【0041】
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、まず記録ヘッド8を鉛直方向において斜め上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から
図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0042】
一方、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置から
図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、まず記録ヘッド8を約45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202はワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0043】
図8(a)はメンテナンスユニット16が待機ポジションにある状態を示す斜視図であり、
図8(b)はメンテナンスユニット16がメンテナンスポジションにある状態を示す斜視図である。
図8(a)は
図1に示すメンテナンスユニット16の位置に対応し、
図8(b)は
図7に示すメンテナンスユニット16の位置に対応している。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、メンテナンスユニット16は
図8(a)に示す待機ポジションにあり、キャップユニット10はキャッピング位置にあり、ワイピングユニット17はメンテナンスユニット16の内部に収納されている。キャップユニット10はy方向に延在する箱形のキャップ部材10aを有し、これを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させることにより、吐出口からのインクの蒸発を抑制することができる。また、キャップユニット10は、キャップ部材10aに予備吐出等で吐出されたインクを回収し、回収したインクを不図示の吸引ポンプに吸引させる機能も備えている。
【0044】
一方、
図8(b)に示すメンテナンスポジションにおいて、キャップユニット10は鉛直方向下方の退避位置に移動しており、ワイピングユニット17がメンテナンスユニット16から引き出されている。ワイピングユニット17は、ブレードワイパユニット171とバキュームワイパユニット172の2つのワイパユニットを備えている。
【0045】
ブレードワイパユニット171には、吐出口面8aをx方向に沿ってワイピングするためのブレードワイパ171aが吐出口の配列領域に相当する長さだけy方向に配されている。ブレードワイパユニット171を用いてワイピング動作を行う際、ワイピングユニット17は、記録ヘッド8がブレードワイパ171aに当接可能な高さに位置決めされた状態で、ブレードワイパユニット171をx方向に移動する。この移動により、吐出口面8aに付着するインクなどはブレードワイパ171aに拭き取られる。
【0046】
ブレードワイパ171aが収納される際のメンテナンスユニット16の入り口には、ブレードワイパ171aに付着したインクを除去するとともにブレードワイパ171aにウェット液を付与するためのウェットワイパクリーナ16aが配されている。これにより、ブレードワイパ171aはメンテナンスユニット16に収納される度にウェットワイパクリーナ16aによって付着物が除去されウェット液が塗布される。そして、次に吐出口面8aをワイピングしたときにウェット液を吐出口面8aに転写し、吐出口面8aとブレードワイパ171a間の滑り性を向上させている。
【0047】
一方、バキュームワイパユニット172は、y方向に延在する開口部を有する平板172aと、開口部内をy方向に移動可能なキャリッジ172bと、キャリッジ172bに搭載されたバキュームワイパ172cとを有する。バキュームワイパ172cは、キャリッジ172bの移動に伴って吐出口面8aをy方向にワイピング可能に配されている。バキュームワイパ172cの先端には、不図示の吸引ポンプに接続された吸引口が形成されている。このため、吸引ポンプを作動させながらキャリッジ172bをy方向に移動すると、記録ヘッド8の吐出口面8aに付着したインク等は、バキュームワイパ172cによって拭き寄せられながら吸引口に吸い込まれる。この際、平板172aと開口部の両端に設けられた位置決めピン172dは、バキュームワイパ172cに対する吐出口面8aの位置合わせに利用される。
【0048】
図9は、インク供給ユニット15の構成を模式的に示す図である。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14に装着されたメインタンク501より供給されたインクを、適切な圧力で循環させながら記録ヘッド8へ供給する働きを有する。ここでは、1色のインクについての構成を示すが、記録装置1には同様の構成がインク色ごとに設けられている。
【0049】
インク供給ユニット15は、サブタンク502、減圧ポンプ503、供給ポンプ504、回収ポンプ505、接続流路506、供給流路507及び回収流路508を含む。サブタンク502は、記録ヘッド8に供給するためのインクを一時的に受容するためのタンクであり、供給流路507と回収流路508を介して記録ヘッド8と接続されている。供給流路507にはサブタンク502に受容されているインクを記録ヘッド8に供給するための供給ポンプが配されている。回収流路508には、記録ヘッド8で使用されなかったインクをサブタンク502に回収するための回収ポンプ505が配されている。以上の構成の下、インクは、サブタンク502、供給流路507、記録ヘッド8、回収流路508の順に循環し、再びサブタンク502に戻る。そして上記循環が行われている中、記録ヘッド8は記録データに従ってインクを吐出する。
【0050】
このようなインク循環制御を行うことにより、記録ヘッド8に対し新鮮なインクを安定して供給することが可能となる。その結果、記録ヘッド8の吐出動作を安定させ、出力される画像を高品位に維持することができる。
【0051】
サブタンク502に受容されるインクの量は記録動作に伴って徐々に減少していく。このため、プリントコントローラ202は、サブタンク502に受容されているインクの量が所定値以下になると、所定のタイミングで減圧ポンプ503を駆動し、サブタンク502の内部を減圧する。これにより、接続流路506によって接続されたメインタンク501よりサブタンク502にインクが補充される。サブタンク502に受容されるインクが所定値以上になったとき、プリントコントローラ202は減圧ポンプ503を停止する。なお、メインタンク501は、インクが収容された可撓性の容器を有し、可撓性の容器はインクの消費と共に縮小していく。インクが消費されたメインタンク501はインクタンクユニット14より取り外され、ユーザによって新たなメインタンク501に交換することができる。
【0052】
プリントコントローラ201は、このようなサブタンク補充処理を、記録コマンドの受信とは別に、記録コマンドを受ける前の準備段階として適宜行う。これにより、記録コマンドが発信された際には、補充動作を伴うことなく記録動作を迅速に開始することができる。
【0053】
本実施形態において、プリントコントローラ202は、インク供給制御部209を介して、上記ポンプや不図示のバルブを動作させ、上述した循環を制御している(
図2参照)。この際、プリントコントローラ202は、供給ポンプ504の駆動と停止は全インク色で共通に制御し、回収ポンプ505の駆動と停止をインク色ごとに制御する。そのため、カラー画像の記録する際、4つの供給ポンプ504と4つの回収ポンプ505は全て駆動され、全インク色のインクが記録ヘッド8と個々のサブタンク502の間で循環する。一方、モノクロ画像を記録する際、4つの供給ポンプ504は駆動されるものの、回収ポンプ505はブラックインクの回収ポンプ505のみが駆動される。このため、全インク色のうち、ブラックインクは記録ヘッド8とサブタンク502の間で循環するが、3色のカラーインクは循環しない。但し、供給ポンプ504と回収ポンプ505の制御構成は本形態に限定されない。カラー印刷かモノクロ印刷かに応じて、インクを選択的に循環できる構成でなくてもよい。
【0054】
ここで、本実施形態の記録装置1に関する利用契約について簡単に説明する。本実施形態の記録装置1においては、利用形態が拡大される特定の契約が用意されている。特定の契約の内容は限定されないが、例えば、月々定額料金を支払うことによってインクの消費量によらず既定枚数までの記録が可能となる契約が挙げられる。そして、市場には、上記特定の契約が締結された場合のみに使用が許可される特定タンクと、特定の契約を締結しなくても使用が許可される一般タンクとが提供され、どちらも形状は等しく記録装置1のインクタンクユニット14に装着可能であるとする。このため、記録装置1においては、契約の締結状態に適応した利用をユーザに的確に提供することが求められる。
【0055】
図10は、プリントエンジンユニット200のプリントコントローラ202が実行するタンク交換シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理は、プリントコントローラ202が、ROM203に記憶されているプログラムに従ってRAM204をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。本シーケンスは、記録装置1において、メインタンク501の装着が検知された時に開始される。メインタンク501の装着の検知方法は特に限定されないが、例えば、インクタンクユニット14(
図1参照)の装着部のカバーにセンサを配し、当該センサがカバーの開閉を検知した際に、メインタンク501が装着されたと判定することができる。
【0056】
本処理が開始されると、プリントコントローラ202は、まずS1001において、各メインタンク501に取り付けられている不揮発メモリより、タンク種別情報を取得する。不揮発メモリには、そのタンクに収容されているインク色情報と共に、そのタンクが上記特定の契約が締結された場合のみに使用が許可される特定タンクであるか、一般タンクであるかの情報がタンク種別情報として記憶されている。
【0057】
S1002において、プリントコントローラ202は、S1001で取得したタンク種別情報をコントローラユニット100に送信する。すなわち、インクタンクユニット14に装着されている4つのメインタンク501のそれぞれについて、インク色情報と特別タンクであるか一般タンクであるかの情報をコントローラユニット100に送信する。その後、プリントコントローラ202は、S1003でタンク使用許容情報を受信したと判定するまで待機状態に入り、使用許容情報を受信したと判定するとS1004に進む。
【0058】
ここで、タンク使用許容情報とは、現時点で装着されているメインタンク501の「使用許容」又は「使用非許容」を示す情報である。このようなタンク使用許容情報は、メインコントローラ101がタンク種別情報に基づいて生成しプリントコントローラ202に送信する。
【0059】
S1004において、プリントコントローラ201は、受信したタンク使用許容情報が「使用許容」を示しているか「使用非許容」を示しているかを判定する。タンク使用許容情報が「使用非許容」を示している場合、プリントコントローラ201は、サブタンク補充処理を実行することなく、本処理を終了する。
【0060】
一方、タンク使用許容情報が「使用許容」を示している場合、プリントコントローラ202はS1005に進み、サブタンク補充処理を実行する。具体的には、サブタンク502内のインクが所定値以上になるまで、減圧ポンプ503を駆動してメインタンク501に収容されているインクをサブタンク502に流動させる(
図9参照)。プリントコントローラ202は、このようなサブタンク補充処理を全インク色について行う。以上で本処理を終了する。
【0061】
図11は、コントローラユニット100のメインコントローラ101が実行するタンク交換シーケンスを説明するためのフローチャートである。本シーケンスも、
図10で説明したプリントコントローラ202が行うタンク交換シーケンスと同様、メインタンク501の装着が検知された時に開始される。本処理は、メインコントローラ101がROM107に記憶されているプログラムに従ってRAM106をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。
【0062】
本処理が開始されると、メインコントローラ101は、タンク種別情報の待機状態に入る。ここで、タンク種別情報は、
図10のS1001において、プリントエンジンユニット200のプリントコントローラ202が送信するタンク種別情報である。S1101においてタンク種別情報の受信を確認すると、メインコントローラ101は、S1102に進む。
【0063】
S1102において、メインコントローラ101は、受信したタンク種別情報をROM107に保存し、保存したタンク種別情報に基づいてタンク適合判定処理を行う。そして、4つのメインタンク501のそれぞれについて「適合」又は「不適合」が設定されたタンク適合情報を生成する。ここで、「適合」とは、搭載されたメインタンク501が契約内容に対応していることを示し、「不適合」とは、搭載されたメインタンク501が契約内容に対応していないことを示す。タンク適合判定処理については後に詳しく説明する。
【0064】
S1103において、メインコントローラ101は、全メインタンク501のタンク適合情報が「適合」であるか否かを判定する。全メインタンク501のタンク適合情報が「適合」である場合、メインコントローラ101は、S1104に進み、タンク使用許容情報を「使用許容」に設定してプリントエンジンユニット200に送信する。更に、S1105において、メインコントローラ101は、記録装置1が「エラー状態」にある場合はこれを解除する。
【0065】
一方、S1103において、少なくとも1つのタンク適合情報が「不適合」である場合、メインコントローラS101は、S1106に進み、タンク使用許容情報を「使用非許容」に設定してプリントエンジンユニット200に送信する。更に、メインコントローラ101は、S1107において、記録装置1を「エラー状態」設定し、記録装置1に適切でないメインタンク501が装着されている旨を、操作パネル104の表示部に表示する。以上で本処理を終了する。
【0066】
なお、S1104又はS1106で、メインコントローラ101が送信するタンク使用許容情報は、
図10のS1003において、プリントエンジンユニット200のプリントコントローラ202が受信を確認する情報に相当する。
【0067】
図12は、
図11のS1107において、操作パネル104の表示部に表示される画面の例を示す図である。メインコントローラ101は、タンク適合情報に基づいた表示を行う。ここでは、シアンおよびイエローのメインタンク501のタンク適合情報が「不適合」であった場合を示している。ユーザは、表示された画面を見て、記録装置1に搭載されているメインタンク501の対応状態を確認することができる。なお、画面においては、搭載されているメインタンク501を一般タンクへ交換すること、又は契約を締結することを推奨する表示を行ってもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の記録装置1において、契約内容に非対応のメインタンク501が1つでも装着された場合は「エラー状態」が設定され、全てのメインタンク501についてサブタンク補充処理が行われないようにしいる。また、「エラー状態」が解除されない限り、記録コマンドを受け付けず記録動作を行われないようにしている。
【0069】
図13は、
図11のS1102において、メインコントローラ101が行うタンク適合判定処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、メインコントローラ101がROM107に記憶されているプログラムに従ってRAM106をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。
【0070】
本処理が開始されると、メインコントローラ101は、まずS1300において、搭載されている4つのメインタンク501の中から処理対象のメインタンク501を1つ設定する。S1301において、メインコントローラ101は、処理対象のインク色のタンク種別情報が「特定タンク」であるか否かを判定する。そして、特定タンクである場合はS1302に進み、特定タンクではない即ち一般タンクである場合はS1304に進む。
【0071】
S1302において、メインコントローラ101は、RAM106に保存されている利用契約情報を参照し、所定の契約が締結状態にあるか非締結状態にあるかを判定する。そして、非締結状態にある場合はS1303に進み、処理対象のメインタンク501のタンク適合情報を「不適合」に設定する。一方、締結状態にある場合はS1304に進み、処理対象のメインタンク501のタンク適合情報を「適合」に設定する。なお、RAM106に保存されている利用契約情報は、適宜クラウドサーバー450(
図2参照)より取得され更新される情報である。利用契約情報をクラウドサーバー450から取得する方法については後に
図14を用いて説明する。
【0072】
S1305において、メインコントローラ101は、4つのメインタンク501の全てについてタンク適合情報が設定されたか否かを判定する。タンク適合情報がまだ設定されていないメインタンク501が存在する場合はS1300に戻り、次の処理対象のメインタンク501を設定する。一方、全てのメインタンク501についてタンク適合情報が設定された場合は、本処理を終了する。
【0073】
本実施形態の記録装置1は、クラウドサーバー450との通信の許可(ON)または非許可(OFF)を示す通信許可フラグを、ROM107において書き換え可能に管理している。通信許可フラグのデフォルトはOFF(非許可)に設定されているが、ユーザは、操作パネル104を介して通信許可フラグの内容を変更することができる。
【0074】
図14は、通信許可フラグを設定する際に、操作パネル104に表示される画面の例を示す。ユーザが「はい」の部分を押下したとき、メインコントローラ101は、ROM107に保存されている通信許可フラグを許可(ON)に更新する。一方、通信許可フラグが許可(ON)の状態であっても、上記所定の契約が非締結である状態が所定期間以上継続した場合、メインコントローラ101は通信許可フラグを許可(ON)からOFF(非許可)に切り替えるものとする。
【0075】
図15は、メインコントローラ101が行う利用契約確認シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理は、記録装置1の電源がONされたときに開始され、電源がONの状態にあるときにメインコントローラ101によって、定常的に行われるシーケンスである。
【0076】
本処理が開始されると、まず、メインコントローラ101は、S1401において、ROM107の設定内容を確認し、通信許可フラグが許可に設定されているか非許可に設定されているかを判定する。非許可に設定されている場合はS1402に進み、電源がOFFされたか否かを判定する。そして、電源がOFFされた場合は本処理を終了し、OFFされていない場合はS1401に戻る。このようなS1401およびS1402の判定処理は、通信許可フラグがONであると判定されるか電源がOFFされるまで繰り返される。すなわち、S1401およびS1402は、通信許可フラグがOFFである場合に定常的に行われるルーティンである。
【0077】
S1401において、通信許可フラグが許可であると判定した場合、メインコントローラ101はS1403に進み、クラウドサーバー450にアクセスして利用契約情報を取得する。
【0078】
S1404において、メインコントローラ101は、通信許可フラグが許可であるか否かを判定する。非許可である場合はS1401に戻り、許可である場合はS1405に進む。S1401で通信許可フラグがONであると判定された場合であっても、契約が非締結である場合は、以下に説明するS1404~S1408のルーティンを行っているうちに所定期間が経過し、通信許可フラグがOFFに切り替ってしまう場合がある。この場合は、再びS1401に戻り、S1401およびS1402のルーティンを行うことになる。
【0079】
S1405において、メインコントローラ101は、利用契約情報をクラウドサーバー450より取得してからの経過時間が、閾値(例えば16時間)を超えているか否かを判定する。経過時間が閾値を超えている場合は、利用契約情報が更新されている可能性があるため、メインコントローラ101はS1407に進み、クラウドサーバー450より最新の利用契約情報を取得する。
【0080】
一方、経過時間が閾値以下の場合、メインコントローラ101はS1406に進み、メインタンク501の交換が検知されたか否かを判定する。そして、メインタンク501の交換が検知された場合は、S1407に進み、クラウドサーバー450より最新の利用契約情報を取得する。メインタンク501の交換が検知されない場合は、クラウドサーバー450との通信を行うことなく、S1408に進む。
【0081】
S1408において、メインコントローラ101は、記録装置1の電源がオフされたか否かを判定する。電源がオフされていない場合はS1404に戻り、電源がOFFされた場合は本処理を終了する。このように、S1404~S1408は、通信許可フラグが許可に設定されている場合に定常的に行われるルーティンである。但し、クラウドサーバーとの通信を行うS1407のみは、クラウドサーバーの負荷を軽減するために、所定の間隔(16時間)が経過したタイミングと、メインタンク501の交換が検知された場合のみに行うようにしている。
【0082】
図16は、利用契約情報が取得された際に、メインコントローラ101が実行する契約対応シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理は、
図15のS1403又はS1407において、メインコントローラ101が利用契約情報を取得したタイミングで開始される。本処理は、メインコントローラ101がROM107に記憶されているプログラムに従ってRAM106をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。
【0083】
本処理が開始されると、メインコントローラ101は、S1601において、今回取得した利用契約情報が前回取得した利用契約情報から変更されているか否かを判定する。利用契約情報が変更されている場合はS1602に進み、変更されていない場合は本処理を終了する。
【0084】
S1602において、メインコントローラ101は、取得した利用契約情報に基づいて
図13のフローチャートで説明したタンク適合判定処理を行う。この際、判定基準となるタンク種別情報については、
図11で説明したメインタンク交換シーケンスが前回行われた際に、ROM107に保存された情報を用いる。
【0085】
S1603において、メインコントローラ101は、全てのメインタンク501のタンク適合情報が「適合」であるか否かを判定する。「不適合」と設定されたタンク適合情報が1つでも存在する場合、メインコントローラS101は、S1608に進み、タンク使用許容情報を「使用非許容」に設定してプリントエンジンユニット200に送信する。更に、メインコントローラ101は、S1609において、記録装置1を「エラー状態」設定し、記録装置1に不適応なメインタンク501が装着されている旨を操作パネル104の表示部に表示し、本処理を終了する。
【0086】
一方、S1603において、全インク色のタンク適合情報が「適合」であると判定した場合、メインコントローラ101は、S1604に進み、タンク使用許容情報を「使用許容」に設定してプリントエンジンユニット200に送信する。
【0087】
更に、S1605において、メインコントローラ101は、本処理の開始時点で、タンク使用許容情報が「使用非許容」に設定されていたか否かを判定する。開始時点において「使用非許容」に設定されていなかった場合、本処理は終了する。一方、開始時点において「使用非許容」に設定されていた場合、メインコントローラ101は、S1606に進み、記録装置1の「エラー状態」を解除する。
【0088】
S1607において、メインコントローラ101は、エラー解除コマンドをプリントエンジンユニット200に送信する。以上で本処理を終了する。
【0089】
図17は、プリントコントローラ201が実行するエラー解除シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理は、メインコントローラ101が送信したエラー解除コマンドを、プリントコントローラ202が受信した際に開始される。本処理は、プリントコントローラ202がROM203に記憶されているプログラムに従ってRAM204をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。
【0090】
本処理が開始されると、プリントコントローラ202は、受信したタンク使用許容情報が「使用許容」に設定されているか否かを判定する。「使用許容」でない場合、本処理は終了する。一方、「使用許容」である場合、プリントコントローラ202はS1702に進み、サブタンク補充処理を行う。S1702で行うサブタンク補充処理は、
図10のS1005で行うサブタンク補充処理と同様の処理である。以上で本処理は終了する。
【0091】
ここで、所定の契約が締結されていない状態で、記録装置1に特定タンクが装着された状態について考える。この状態において、記録装置1は「エラー状態」にあり、サブタンク補充処理も記録動作も行われない。この「エラー状態」を解消するためにユーザが取り得る方法は、搭載されている特定タンクを一般タンクに交換する方法か、非締結の状態にある契約を締結する方法かである。
【0092】
特定タンクを一般タンクに交換した場合、ユーザがメインタンク501を交換したタイミングで、
図10及び
図11で説明したタンク交換シーケンスが行われる。この場合、
図11のS1102では、全てのメインタンク501についてタンク適合情報が「適合」に設定される。そして、S1104では「使用許容」に設定されたタンク使用許容情報がプリントコントローラ202に送信され、S1105で「エラー状態」が解消される。その上で、
図10のS1005において、サブタンク補充処理が行われる。
【0093】
一方、非締結の状態にある契約を締結した場合、
図16で説明した契約対応シーケンスが行われる。この場合、S1602では、全てのメインタンク501についてタンク適合情報が「適合」に設定され、S1604では「使用許容」に設定されたタンク許容情報がプリントエンジンユニット200に送信される。更に、S1606で「エラー状態」が解除され、S1607でエラー解除コマンドがプリントコントローラ202に送信される。その上で、
図17のS1702において、サブタンク補充処理が行われる。
【0094】
以上説明した本実施形態によれば、所定の契約が締結された記録装置でのみ使用が許可される特定タンクが、所定の契約が締結されていない記録装置に装着された場合、メインタンクからサブタンクへのインク補充動作が制限される。その上で、上記制限は、特定タンクを一般タンクに交換する、又は、所定の契約を締結することによって解消することができる。この際、サブタンクへのインク補充動作は、特定タンクを一般タンクに交換したタイミング又は所定の契約を締結したタイミングから、実際に記録コマンドが発信されるタイミングまでの間に行っておくことができる。すなわち、実際の記録コマンドを受信した際、記録装置1は記録動作に先立ってサブタンク補充処理行う必要がなく、記録物を迅速に出力することができる。
【0095】
(第2の実施形態)
本実施形態においても、第1の実施形態同様、
図1~
図9で説明した記録装置1を用いる。
【0096】
図18は、本実施形態のプリントコントローラ202が記録装置1の電源がONされたときに行う電源ONシーケンスを示す。本処理は、プリントコントローラ202が、ROM203に記憶されているプログラムに従ってRAM204をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。
【0097】
本処理が開始されると、プリントコントローラ202は、まずS1801において、
図10で説明したメインタンク交換シーケンスを実行する。この際、メインコントローラ101においても、S1801と並行して、
図11で説明したメインタンク交換シーケンスを実行する。すなわち、プリントコントローラ202は、S1801において、電源ONの時点におけるタンク使用許容情報をメインコントローラより受信する。そして、使用許容情報が「使用許容」である場合は、サブタンク補充処理も行う。
【0098】
S1802において、プリントコントローラ201は、タンク使用許容情報が「使用許容」であるか否かを判定する。タンク使用許容情報が「使用許容」である場合、プリントコントローラ202はS1803に進み、記録ヘッド8に対し、所定のメンテナンス処理を行う。すなわち、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を介して、
図8を用いて説明したワイピング処理や吸引処理を行う。
【0099】
一方、S1802において、タンク使用許容情報が「使用非許容」である場合、プリントコントローラ201は、S1804進み、メンテナンスフラグをON(未実施)に設定する。以上で本処理を終了する。
【0100】
ここで、メンテナンスフラグについて簡単に説明する。メンテナンスフラグとは、例えば電源ON時のような、通常は記録ヘッド8に対しメンテナンス処理を行うべきタイミングにおいて、当該メンテナンス処理を実施していないときにONにするフラグである。メンテナンスフラグは、ROM107で管理され、デフォルトはOFFに設定されている。
【0101】
図19は、本実施形態のプリントコントローラ202が実行するタンク交換シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理は、プリントコントローラ202が、ROM203に記憶されているプログラムに従ってRAM204をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。本シーケンスは、記録装置1おいて、メインタンク501の装着が検知された時に開始される。
【0102】
本処理が開始されると、プリントコントローラ202は、S1811において、
図10で説明したメインタンク交換シーケンスを実行する。この際、メインコントローラ101においても、S1811と並行して、
図11で説明したメインタンク交換シーケンスを実行する。すなわち、プリントコントローラ202は、S1811において、メインタンクが交換された時点におけるタンク使用許容情報をメインコントローラより受信する。そして、使用許容情報が「使用許容」である場合は、サブタンク補充処理も行う。
【0103】
S1812において、プリントコントローラ202は、タンク使用許容情報が「使用許容」であるか否かを判定する。タンク使用許容情報が「使用非許容」である場合、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8に対するメンテナンス処理を行うことなく本処理を終了する。
【0104】
一方、S1812において、タンク使用許容情報が「使用許容」である場合、プリントコントローラ201は、S1813進み、メンテナンスフラグがON(未実施)であるか否かを判定する。ON(未実施)である場合はS1814に進み、OFF(実施済み)である場合はこれ以上のメンテナンス処理の必要はないため、本処理を終了する。
【0105】
S1814において、プリントコントローラ202は、所定のメンテナンス処理を行う。例えば、記録装置1の電源がONされた時点で、タンク使用許容情報が「使用非許容」でありメンテナンス処理が行われなかった場合でも、ユーザがメインタンク501を交換した際は、S1814でメンテナンス処理が行われる。なお、S1814で行うメンテナンス処理の内容は、電源ONシーケンスのS1803と同じであっても良いし異ならせてもよい。
【0106】
S1815において、プリントコントローラ202は、メンテナンスフラグをOFF(実施済み)に設定する。以上で本処理を終了する。
【0107】
図20は、プリントコントローラ201が実行するエラー解除シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理は、メインコントローラ101が送信したエラー解除コマンドを、プリントコントローラ202が受信した際に開始される。本処理は、プリントコントローラ202が、ROM203に記憶されているプログラムに従ってRAM204をワークエリアとして使用しながら実行する(
図2参照)。
【0108】
S1821及びS1822の工程は、
図17で説明した第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は割愛する。
【0109】
S1823において、プリントコントローラ202は、メンテナンスフラグがON(未実施)であるか否かを判定する。OFF(実施済み)である場合はこれ以上のメンテナンス処理の必要はないため、本処理を終了する。
【0110】
一方、メンテナンス未実施フラグがON(未実施)である場合、プリントコントローラ202はS1824に進み、記録ヘッド8に対する所定のメンテナンス処理を行う。例えば、記録装置1が電源ONされた時点で、タンク使用許容情報が「使用非許容」でありメンテナンス処理が行われなかった場合でも、ユーザが所定の契約を締結した際は、S1824でメンテナンス処理が行われる。なお、S1824で行うメンテナンス処理の内容は、S1803やS1814と同じであっても良いし異ならせてもよい。
【0111】
S1825において、プリントコントローラ202は、メンテナンスフラグをOFF(実施済み)に設定する。以上で本処理を終了する。
【0112】
通常、記録装置1の電源がONされた時やメインタンク501が交換されたとき、プリントコントローラ202は、サブタンク502へのインクの補充を行うとともに、記録ヘッド8に対するメンテナンス処理を行うのが一般である。そして、非対応のメインタンク501が搭載されていた場合には、サブタンク補充処理を行われないようにしているのが第1の実施形態である。しかしながら、サブタンク補充処理を行われないようにしても、記録ヘッド8に対するメンテナンス処理を行ってしまうと、このメンテナンス処理に伴ってメインタンク501からサブタンク502へインクが送液されてしまう可能性がある。よって、本実施形態においては、非対応のメインタンク501が搭載されていた場合、サブタンク補充処理に加え記録ヘッドに対するメンテナンス処理も行われないようにしている。
【0113】
すなわち、以上説明した本実施形態によれば、所定の契約が締結された記録装置でのみ使用が許可される特定タンクが、所定の契約が締結されていない記録装置に装着された場合、サブタンク補充動作に加え記録ヘッドのメンテナンス処理が制限される。その上で、上記制限は、特定タンクを一般タンクに交換する、又は、所定の契約を締結することによって解消することができる。この際、サブタンクへのインク補充動作及び記録ヘッドのメンテナンス処理は、特定タンクを一般タンクに交換したタイミング又は所定の契約を締結したタイミングから、実際に記録コマンドが受信されるタイミングまでの間に行っておくことができる。すなわち、実際の記録コマンドを受信した際、記録装置1は記録動作に先立ってサブタンク補充処理及び記録ヘッドに対するメンテナンス処理を行う必要がなく、記録物を迅速に出力することが可能となる。
【0114】
(第3の実施形態)
以上の実施形態では、エラー状態の解消に伴ってサブタンク補充処理を行う内容で説明した。しかしながら、サブタンク502においては、必要最低限のインクが残っていれば、補充動作を行わなくてもエラー解消後の最初の記録動作を行うことはできる。すなわち、エラー解消時においては、必ずしもサブタンク補充処理が必要とされない場合もある。また、エラー解消のためにメインタンクを交換したり契約を締結したりする作業は、記録コマンドを発信する直前に行うことも十分に考えられ、この場合は、サブタンクへの補充動作が記録動作の直前に行われることになってしまう。
【0115】
以上のことに鑑み、本実施形態においては、全てのサブタンク502内に、上記必要最低限以上のインクが残っている場合には、エラーが解消された時点でサブタンク補充処理を行わないようにする。具体的には、サブタンク内のインク量として、インク循環制御に好適な第1の閾値と、記録動作のために最低限必要な第2の閾値を設定する。そして、通常のサブタンク充填処理においては、サブタンク内のインク貯留量が第1の閾値を下回っていた時にサブタンク内にインクを補充する。一方、上記エラーが解消された際は、インク貯留量が第2の閾値を下回っているサブタンク502が存在する場合のみサブタンク充填処理を行うようにする。この際、サブタンク502へのインク補充は、上記第2の閾値を超えるまでとしてもよい。
【0116】
これにより、エラー解消に伴うサブタンク補充動作の回数や時間が減り、記録動作を実施することができないダウンタイムを削減することができる。結果、上記実施形態に比べて、エラー解消後の最初の記録動作において、記録物をより一層短時間に出力することが可能となる。
【0117】
(その他の実施形態)
以上では、上記実施形態を実現するための処理を、コントローラユニット100のメインコントローラ101とプリントエンジンユニット200のプリントコントローラ202とで協働して行ったが、本発明はこのような形態に限定されない。上記実施形態を実現するための処理は、1つのプロセッサが一括して行ってもよいし、3つ以上のプロセッサが協働して行う形態としてもよい。
【0118】
また、以上では、消耗品としてインクを使用するインクジェット記録装置を例に説明したが、消耗品の種類や記録装置の記録方法はこれに限定されない。例えば消耗品をトナーとする電子写真方式の記録装置であっても本発明は適用可能である。更に、消耗品はインクやトナーのような記録材でなくてもよく、装置は記録装置でなくてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、利用契約情報をクラウドサーバー450で管理し、メインコントローラ101がクラウドサーバー450から取得したが、利用契約情報はコントローラユニット100のROM107など、他の手段で管理してもよい。この際、サブタンク補充処理の許容/非許容は、所定の契約の締結状態ではなく、ユーザ自身が設定する他の条件に基づいて判定してもよい。例えば、記録装置1がモノクロ画像の出力専用に設定された状態でカラーのメインタンクが装着された場合は、サブタンク補充処理を非許容とし、上記モノクロ専用の設定を解除したタイミングでサブタンク補充処理を行ってもよい。
【0120】
いずれにせよ、交換可能なカートリッジと消耗品を消費する部材との間に、消耗品を収容するバッファを介在させる形態において、所定の条件が満たされた場合のみ使用が許可されるカートリッジが提供される形態であれば、上記方法は有効に機能する。
【0121】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 画像記録装置
8 記録ヘッド
14 インクタンクユニット
15 インク供給ユニット
101 メインコントローラ
202 プリントコントローラ
501 メインタンク
502 サブタンク