IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の特許一覧

特許7451170情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
<>
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図1
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図2
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図3
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図4
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図5
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図6
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図7
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240311BHJP
   G06Q 50/163 20240101ALI20240311BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
G06Q50/163
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019230427
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021099607
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】金児 裕美
(72)【発明者】
【氏名】平尾 明子
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/029135(WO,A1)
【文献】特許第6013665(JP,B1)
【文献】特開2018-181255(JP,A)
【文献】喜多 泰代 Yasuyo KITA,二次元濃度ヒストグラムを用いた画像間変化抽出 Change Detection Using Joint Intensity Histogram,電子情報通信学会論文誌 (J90-D) 第8号 THE IEICE TRANSACTIONS ON INFORMATION AND SYSTEMS (JAPANESE EDITION),日本,社団法人電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS,2007年08月21日,第J90-D巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06Q 50/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
賃貸借に係る住居の変化の程度を表す情報を提示する情報処理装置であって、
入居時に対応する第1の日時において前記住居の内部または外部に配置された対象物を撮影した第1の画像を取得する、第1の画像取得部と、
退去時に対応する第2の日時において前記対象物を撮影した第2の画像を取得する、第2の画像取得部と、
前記第1の画像および前記第2の画像から前記対象物に係る特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって前記第1の画像と前記第2の画像との類似度を算出し、前記類似度に基づいて、前記第1の日時と前記第2の日時との間の前記対象物の変化の程度を表す変化率を求める評価部と、
前記変化率を表す文字情報を生成し出力する出力部と、
を具備し、
前記評価部は、前記類似度が第1しきい値以上及び第2しきい値以下の場合に、前記対象物の変化が時間経過に応じて自然に生じる変化であると判定し、前記類似度が前記第1しきい値未満の場合に、それ以外の変化であると判定し、
前記出力部は、上記判定の結果を表す情報を生成し出力する、情報処理装置。
【請求項2】
住居に発生した損害に対する原状回復費用の算出を支援する情報処理装置であって、
前記損害の発生前である第1の日時において前記住居の内部または外部に配置された対象物を撮影した第1の画像を取得する、第1の画像取得部と、
前記損害の発生後である第2の日時において前記対象物を撮影した第2の画像を取得する、第2の画像取得部と、
前記第1の画像および前記第2の画像から前記対象物に係る特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって前記第1の画像と前記第2の画像との類似度を算出し、前記類似度に基づいて、前記第1の日時と前記第2の日時との間の前記対象物の変化の程度を表す変化率を求める評価部と、
前記変化率を表す文字情報を生成し出力する出力部と、
を具備し、
前記評価部は、前記類似度が第1しきい値以上及び第2しきい値以下の場合に、前記対象物の変化が時間経過に応じて自然に生じる変化であると判定し、前記類似度が前記第1しきい値未満の場合に、それ以外の変化であると判定し、
前記出力部は、上記判定の結果を表す情報を生成し出力する、情報処理装置。
【請求項3】
賃貸借に係る住居の変化の程度を表す情報を提示する情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
入居時に対応する第1の日時において前記住居の内部または外部に配置された対象物を撮影した第1の画像を取得する過程と、
退去時に対応する第2の日時において前記対象物を撮影した第2の画像を取得する過程と、
前記第1の画像および前記第2の画像から前記対象物に係る特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって前記第1の画像と前記第2の画像との類似度を算出し、前記類似度に基づいて、前記第1の日時と前記第2の日時との間の前記対象物の変化の程度を表す変化率を求め、前記類似度が第1しきい値以上及び第2しきい値以下の場合に、前記対象物の変化が時間経過に応じて自然に生じる変化であると判定し、前記類似度が前記第1しきい値未満の場合に、それ以外の変化であると判定する過程と、
前記変化率を表す文字情報を生成し出力し、上記判定の結果を表す情報をさらに生成し出力する過程と、
を具備する情報処理方法。
【請求項4】
住居に発生した損害に対する原状回復費用の算出を支援する情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記損害の発生前である第1の日時において前記住居の内部または外部に配置された対象物を撮影した第1の画像を取得する過程と、
前記損害の発生後である第2の日時において前記対象物を撮影した第2の画像を取得する過程と、
前記第1の画像および前記第2の画像から前記対象物に係る特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって前記第1の画像と前記第2の画像との類似度を算出し、前記類似度に基づいて、前記第1の日時と前記第2の日時との間の前記対象物の変化の程度を表す変化率を求め、前記類似度が第1しきい値以上及び第2しきい値以下の場合に、前記対象物の変化が時間経過に応じて自然に生じる変化であると判定し、前記類似度が前記第1しきい値未満の場合に、それ以外の変化であると判定する過程と、
前記変化率を表す文字情報を生成し出力し、上記判定の結果を表す情報をさらに生成し出力する過程と、
を具備する情報処理方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置の各部による処理をプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一態様は、対象物の変化の評価に使用される情報を提示する情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物やその設備は、時間の経過とともに、劣化し、損耗する。そのような劣化や損耗の程度は、使用状況に応じて異なることがある。
【0003】
ここで、建物の劣化や不具合が生じた場合に、建物を撮影した画像データおよび建物から発生した音を録音した音声データをもとに、建物を診断する専門技術者が現地へ赴くことなく、建物の診断を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、建築現場や不動産物件等において360°カメラで施工記録の写真を撮影することも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-134053号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】株式会社レゴリス、“「RICOH THETA(リコーシータ)」と連携、施工記録を360°写真で/「国交省営繕工事電子納品対応」をリリース”、[online]、2019年12月13日検索、インターネット<URL: https://spider-plus.com/news/update/231/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、建物の劣化や損耗の程度は、評価者の経験に基づいて評価される。ところで、特に賃貸物件では、そのような劣化や損耗の程度が問題となることがある。例えば、貸主(賃貸人)またはその貸主から依頼を受けた物件管理会社は、借主(賃借人)の退去時に物件の劣化や損耗の程度を目視によって確認し、原状回復のための費用を借主(賃借人)に請求することがある。しかし、そのような請求は、多くの場合貸主側の主観や経験に基づくため、借主にとって不合理と感じられ、貸主と借主の間でトラブルになる場合も多い。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、対象物の変化の客観的な評価に使用される情報を提示する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためにこの発明の第1の態様は、賃貸借に係る住居の変化の程度を表す情報を提示する情報処理装置であって、入居時に対応する第1の日時において前記住居の内部または外部に配置された対象物を撮影した第1の画像を取得する第1の画像取得部と、退去時に対応する第2の日時において前記対象物を撮影した第2の画像を取得する第2の画像取得部と、上記第1の画像および上記第2の画像から上記対象物に係る特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって上記第1の画像と上記第2の画像との類似度を算出し、上記類似度に基づいて、上記第1の日時と上記第2の日時との間の上記対象物の変化の程度を表す変化率を求める評価部と、上記変化率を表す文字情報を生成し出力する出力部と、を具備し、上記評価部は、上記類似度が第1しきい値以上及び第2しきい値以下の場合に、上記対象物の変化が時間経過に応じて自然に生じる変化であると判定し、上記類似度が上記第1しきい値未満の場合に、それ以外の変化であると判定し、上記出力部は、上記判定の結果を表す情報を生成し出力する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の第1の態様によれば、情報処理装置によって、第1の日時に対象物を撮影した画像と第2の日時に当該対象物を撮影した画像とが取得され、それらの画像を対比することによって、第1の日時と第2の日時との間の対象物の変化率が求められ、提示される。
これにより、評価者の経験に頼ることなく、変化の程度を把握し、客観的な評価を行うことができる。
【0010】
すなわちこの発明の各態様によれば、対象物の変化を客観的に評価できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置を備えたシステムの全体構成を示す図である。
図2図2は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置を備えたシステム全体の処理シーケンスを示す図である。
図5図5は、カメラにより現実空間を撮影するイメージを示す図である。
図6図6は、ユーザ端末に表示される場所選択画面の一例を示す図である。
図7図7は、ユーザ端末に表示される撮影画像表示画面の一例を示す図である。
図8図8は、ユーザ端末に表示される変化評価結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(構成)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置1を含むシステム全体の構成を示す図である。
このシステムは、ネットワークNWを介して、情報処理装置1と、カメラCD1,CD2,...,CDm(以下、総称して「カメラCD」と言う)と、ユーザ端末UT1,UT2,...,UTn(以下、総称して「ユーザ端末UT」と言う)とを互いに通信可能に接続する。なお、情報処理装置1には、任意の数のカメラCDおよび任意の数のユーザ端末UTが接続されてよい。
【0013】
ユーザ端末UTは、例えば、ブラウザまたはそれに代わるアプリケーションを備える、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末などのクライアント端末である。ユーザ端末UTは、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等を用いた表示デバイスを備えるか、またはそのような表示デバイスと組み合わせて用いられる。一実施形態によれば、ユーザ端末UTは、例えば、不動産管理会社、不動産情報提供業者、仲介業者などによって、賃貸物件の情報を管理・閲覧するとともに、物件の変化を評価するために使用される。ユーザ端末UTはまた、賃貸物件の貸主または借主により、物件の閲覧や変化の評価のために使用されてもよい。
【0014】
カメラCDは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の固体撮像デバイスを用いたものである。カメラCDは、対象物の変化を評価する対象物を撮影できるものであれば、静止画または動画撮影機能を有するデジタルカメラ、パノラマカメラ、360度カメラなど、任意のカメラであってよい。カメラCDはまた通信機能を備えるものであってもよい。一実施形態によれば、カメラCDによって撮影された静止画または動画(以下、単に「画像」と言う)は、撮影した日時を表す情報(以下、「日時情報」)および撮影した場所を識別する情報(以下、「場所情報」)を付加されて、画像データとして情報処理装置1に送信される。場所情報は、画像の撮影者等が手作業により付加するものであってもよいし、GPS情報などの位置情報として自動的に付加されるものであってもよい。画像データはさらに、撮影したカメラCDを識別する情報を含んでもよい。
【0015】
画像データは、カメラCDからネットワークNWを介して情報処理装置1に直接送信されてもよいし、ユーザ端末UTを経由して送信されてもよい。なお、カメラCDとユーザ端末UTは、カメラ機能を備えるスマートフォンのように一体のものであってもよい。カメラCDは、撮影のたびに画像データを送信してもよいし、画像データをカメラCDのメモリに蓄積し、一定期間または一定量ごとに送信してもよい。
【0016】
ネットワークNWは、例えば、インターネットに代表されるIP網と、このIP網に対しアクセスするための複数のアクセス網とから構成される。
【0017】
(2)情報処理装置
情報処理装置1は、例えばクラウド上に配置されたサーバ装置であり、変化を評価する対象物を2つの異なる日時において撮影した画像データに基づいて、当該対象物の変化の程度を表す情報を算出し出力する。一実施形態によれば、評価の対象物は、賃貸物件である住居の内部の、例えば、壁クロス、フローリング、畳など、借主に原状回復が要求され得る物体または設備である。ただしこれらに限定されるものではなく、情報処理装置1は、住居の外部の物体や設備、住居以外の建物にかかる物体や設備、あるいは建物以外の物体など、画像に基づいて変化を評価可能な他の対象物にも適用可能である。ここでは、「変化」または「対象物の変化」は、建物や設備等の自然な劣化・損耗等のいわゆる経年劣化、借主の通常の使用により生ずる損耗等のいわゆる通常損耗、および借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用に起因する損耗を含む。
【0018】
一実施形態によれば、情報処理装置1は、Webサーバの機能を有し、専用のWebサイトを介して、ユーザに対し、評価対象である対象物の画像やその変化の程度を表す情報の閲覧を可能にするサービスを提供する。
【0019】
(2-1)ハードウェア構成
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
情報処理装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサ20Aを有する。そして、このハードウェアプロセッサ20Aに対し、プログラムメモリ20B、データメモリ30、および通信インタフェース(I/F)10を、バス40を介して接続したものとなっている。
【0020】
通信インタフェース10は、1つ以上の有線または無線の通信インタフェースを含む。通信インタフェース10は、ネットワークNWを介して、カメラCDおよびユーザ端末UTをはじめとする他の外部機器との間で情報の送受信を可能にする。有線インタフェースとしては、例えば有線LANが使用され、また無線インタフェースとしては、例えば無線LANやBluetooth(登録商標)などの小電力無線データ通信規格を採用したインタフェースが使用される。
【0021】
プログラムメモリ20Bは、記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリにより構成され、一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納している。
【0022】
データメモリ30は、記憶媒体として、例えば、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリにより構成され、例えば、情報処理の過程で取得および作成された各種データを記憶するために用いられる。
【0023】
(2-2)ソフトウェア構成
図3は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置1のソフトウェア構成を、図2に示したハードウェア構成と関連付けて示した機能ブロック図である。制御ユニット20は、上記ハードウェアプロセッサ20Aと、上記プログラムメモリ20Bとを含む。
【0024】
通信インタフェース10は、外部装置から種々のデータをネットワーク経由で受信する受信部11と、外部装置へ種々のデータをネットワーク経由で送信する送信部12とを含む。例えば、受信部11は、カメラCDから画像データを受信し、これを制御ユニット20に渡す。受信部11はまた、ユーザ端末UTからユーザ要求を受信し、制御ユニット20に渡す。このユーザ要求は、例えばHTTP(Hyper Text Transport Protocol)リクエストであってよい。画像データを受信する受信部とユーザ要求を受信する受信部は別個に設けられてもよい。送信部12は、出力部として、制御ユニット20から出力される応答メッセージを受け取り、これを要求元のユーザ端末UTに送信する。この応答は、例えばHTTPレスポンスであってよい。
【0025】
データメモリ30の記憶領域には、画像データ記憶部31が設けられている。
【0026】
画像データ記憶部31は、カメラCDによって撮影された画像データまたはそれに基づいて生成された種々の画像データを記憶するために使用される。画像データは、少なくとも場所情報に紐づけて記憶される。
【0027】
制御ユニット20は、ソフトウェアによる処理機能部として、画像処理部21と、ユーザ要求受付部22と、表示用画像取得部23と、変化評価部24と、表示データ生成部25とを備えている。これらの処理機能部は、いずれもプログラムメモリ20Bに格納されたプログラムを、上記ハードウェアプロセッサ20Aに実行させることにより実現される。制御ユニット20は、また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(field-programmable gate array)などの集積回路を含む、他の多様な形式で実現されてもよい。
【0028】
画像処理部21は、受信部11から画像データを受け取り、それらをデータメモリ30に書き込む。一実施形態によれば、画像処理部21は、画像データから場所情報を抽出し、所定の処理を行ってから、それらの画像データを場所情報に紐づけて画像データ記憶部31に格納する。
【0029】
ユーザ要求受付部22は、受信部11からユーザ要求を受け取り、解析して、要求に応じた処理を行う。一実施形態によれば、ユーザ要求は、特定のWebページの閲覧に必要なデータの取得要求、特定の画像の取得要求、および変化の評価要求を含む。ユーザ要求受付部22は、ユーザ要求を受け取り、必要な識別情報を抽出して、表示用画像取得部23に渡す。
【0030】
表示用画像取得部23は、ユーザ要求受付部22から受け取った情報に基づき、必要な画像を取得または生成して、変化評価部24または表示データ生成部25に渡す処理を行う。一実施形態によれば、表示用画像取得部23は、特定の場所および日時に対応する画像の取得要求を受け取り、画像データ記憶部31から対応する画像データを読み出して、表示データ生成部25に渡す。または、表示用画像取得部23は、変化の評価要求を受け取り、変化を評価するために必要な画像を画像データ記憶部31から読み出して変化評価部24に渡す。
【0031】
変化評価部24は、表示用画像取得部23から受け取った画像をもとに、変化を評価し、評価結果を表示データ生成部25に渡す処理を行う。一実施形態によれば、変化評価部24は、表示用画像取得部23から受け取った2つの画像を対比し、それらの類似度を算出する。そして、変化評価部24は、類似度に基づいて、対象物間の変化の程度を表す情報として変化率を求め、変化率を含む評価結果を表示データ生成部25に渡す。
【0032】
表示データ生成部25は、表示用画像取得部23から受け取った画像データに基づき、ユーザ要求に応じた表示データを含む応答メッセージを生成して、送信部12に渡す処理を行う。表示データ生成部25はまた、変化評価部24から評価結果を表す情報を受け取り、ユーザに提示するための表示データを含む応答メッセージを生成して、送信部12に渡す処理を行う。表示データは、文字列および画像を含み得る。
【0033】
(動作)
次に、以上のように構成された情報処理装置1を含むシステム全体の動作の概要を説明する。
図4は、そのようなシステム全体の処理シーケンスの一例を示す図である。
【0034】
(1)画像の収集・蓄積
はじめに、情報処理装置1は、カメラCDから画像データを収集し、蓄積する。なお、図4では便宜上カメラCDを1つだけ示しているが、情報処理装置1は、複数のカメラCDから画像データを収集することができる。
【0035】
矢印C1において、カメラCDは、例えば不動産管理会社の従業員や貸主または借主自身の操作により、評価の対象物を撮影し、生成した画像データを情報処理装置1に送信する。撮影日時は、評価目的に応じて任意に選択されてよい。例えば、賃貸住宅における入居時と退去時の間の変化を評価する場合、少なくとも入居時と退去時の住居に関する画像データが取得される。「入居時」は、例えば借主が入居する数日前から数日後までの期間内の任意の時点であってよく、同様に「退去時」は、例えば借主が退去する数日前から数日後までの期間内の任意の時点であってよい。取得される画像データには、「入居時」と「退去時」以外の時点において撮影された画像が含まれてもよい。
【0036】
一実施形態によれば、カメラCDは、スマートフォンと連携して動作可能な360度カメラである。360度カメラは、例えば、前後方向に180度を超える超広角の魚眼レンズを備え、同時に前後方向の画像または映像を撮影することができる。360度カメラはまた、撮影した前後方向の画像をもとに、傾き補正、歪み補正、色補正等を含む前処理を行ったのち、いわゆる「イメージスティッチング(Image Stitching)技術」により画像をつなぎ合わせて、360度の全天球画像データを生成することができる。
【0037】
図5は、360度カメラであるカメラCDが、評価の対象物として住居内の空間TGを撮影して画像データを生成するイメージを示す。カメラCDは、空間TGの任意の位置に固定され、スマートフォンを介した遠隔操作により前後方向の画像を撮影し、その前後方向の画像を、上記イメージスティッチングによりつなぎ合わせ、360度画像データを生成する。生成された360度画像データは、その撮影日時を表す情報とともに、例えばWiFi機能によってカメラCDからスマートフォンに転送される。画像データには、スマートフォンのユーザ(例えば、上記従業員や貸主または借主)によって撮影場所を識別する場所情報を付加される。場所情報は、例えば、住所、建物名、部屋番号、緯度経度、高さなどを含んでよい。画像データにはまた、ユーザによって、入居時の画像であるか退去時の画像であるかまたはそれ以外かを識別する情報が付加されてもよい。またこれらのうちのいくつかの情報は、カメラCD自体によって自動的に画像データに付加されてもよい。画像は、特定の空間TGについて、例えば空間TGの中央付近など、一か所で撮影されてもよいし、所定の間隔ずつ移動しながら複数の位置で撮影されてもよい。
【0038】
スマートフォンは、ユーザの操作を受けて、例えば専用のWebページに画像データをアップロードすることによって、情報処理装置1に画像データを送信する。送信される各画像データは、上記のように、少なくとも場所情報および日時情報を含む。送信される画像データはまた、撮影したカメラCDまたはスマートフォンを識別する情報ならびに撮影位置に関するGPS情報を含み得る。
【0039】
情報処理装置1は、カメラCD(またはスマートフォン)から画像データを受信すると、ステップS101において、画像処理部21の制御の下、受信した画像データを少なくとも場所情報に紐づけて画像データ記憶部31に記憶させる。例えば、画像データは、場所情報として「A県A市,Xマンション,101号室」に紐づけて記憶される。画像データはさらに、日時情報に紐づけて、あるいは入居時の画像であるか退去時の画像であるかまたはそれ以外かを区別する情報に紐づけて記憶される。
【0040】
ここで、一実施形態によれば、画像処理部21は、同日に近接する撮影位置で撮影された複数の画像データから特徴を抽出し、互いに関連付けることによって、現実空間を表す仮想的な3D空間モデルを生成することもできる。画像処理部21は、360度画像データに加えて、または代わりに、生成された3D空間モデルを画像データ記憶部31に記憶させることもできる。
【0041】
このように、情報処理装置1は、カメラCDから画像データを受け取るたびに、必要な処理を行ってから画像データ記憶部31に記憶させる。なお、情報処理装置1は、受信した2Dの画像(写真)データを2Dデータのまま蓄積するようにしてもよい。また、上記で説明した複数の画像をつなぎ合わせるスティッチング処理は、情報処理装置1が行うものであってもよい。
【0042】
さらに、一実施形態によれば、画像データ記憶部31に蓄積された画像データは、生成された3D空間モデルに基づき、建物または部屋のレイアウト(間取り)に関連付けられる。これは、情報処理装置1が、画像データまたは3D空間モデルをもとに市販の間取り作成ソフトウェア等を用いて作成するものであってもよいし、画像データまたは3D空間モデルをもとにあらかじめデータメモリ30に格納されたレイアウトデータとの関連付けを行うものであってもよい。あるいは、情報処理装置1のオペレータが、任意のタイミングで画像データ記憶部31に格納された画像データを読み出し、手動でレイアウトデータに関連付けてもよい。レイアウトデータもまた画像データ記憶部31に記憶される。
【0043】
以上のような処理により情報処理装置1に少なくとも特定の部屋について入居時と退去時それぞれの画像データが収集・蓄積されているという前提で、後続の動作について以下で説明する。
【0044】
(2)初期画面の提供
情報処理装置1は、ユーザ端末UTからの要求に応答して、蓄積された画像の閲覧サービスを提供することができる。画像の閲覧に使用されるユーザ端末UTは、画像データをアップロードするために使用されるユーザ端末UTと同じものであっても異なるものであってもよい。以下の例では、ユーザ端末UTが、例えば不動産管理会社に設置されその従業員によって操作される、ディスプレイを備えるパーソナルコンピュータであり、ユーザUSは上記従業員であるものとして説明する。
【0045】
ユーザUSが、例えば、ある賃貸物件について、数日前に退去したばかりの借主に対し原状回復に要する費用を請求する必要があるかどうかを検討しようとする。ユーザUSは、そのような検討の目的で、情報処理装置1が提供するWebページを閲覧するために、図4の破線矢印U1において、パーソナルコンピュータUTを操作し、ブラウザを起動する。すると、パーソナルコンピュータUTのブラウザは、情報処理装置1に対し、当該Webページの取得要求を送信する。
【0046】
ステップS102において、情報処理装置1は、受信部11により、パーソナルコンピュータUTのブラウザからWebページの取得要求を受信する。受信部11は、ユーザ要求受付部22にこの取得要求を渡す。ユーザ要求受付部22は、取得要求から必要な情報、例えば、要求に係るWebページの情報およびパーソナルコンピュータUTのブラウザ情報を抽出し、表示用画像取得部23に渡す。表示用画像取得部23は、要求されたWebページのHTMLファイルをデータメモリ30内の記憶部(図示せず)から読み出し、表示データ生成部25に渡す。表示用画像取得部23はまた、要求されたWebページの表示に必要な画像データがあれば、データメモリ30から読み出し、表示データ生成部25に渡す。表示データ生成部25は、上記HTMLファイルを含む応答メッセージを生成して送信部12に渡す。
【0047】
ステップS103において、送信部12は、受け取った応答メッセージをパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。
【0048】
メッセージを受信したパーソナルコンピュータUTのブラウザは、D1において、受信したHTMLファイルに基づき、対応するWebページを表示する。
【0049】
図6は、情報処理装置1が提供するWebページの表示イメージの一例を示す。図6の例では、ページ60において、ボックス61に建物の名称「XXアパート」および住所「A県A市・・・」が表示され、ボックス62にその建物の外観の写真が表示される。同様に、ボックス63には別の建物の名称「メゾンYY」および住所「B県B市・・・」が表示され、ボックス64にその建物の外観の写真が表示される。一実施形態によれば、ボックス62および64にはそれぞれ他のWebページへのリンクが設定されており、ユーザUSは、例えばマウス等の入力デバイスを用いてマウスポインタ70を操作し、いずれかのボックス内をクリックすることによって、閲覧を希望する建物を選択することができる。建物名のボックス61および63にリンクが設定されてもよい。またWebページを表示する際に、ユーザごとにその権限に応じて閲覧対象が制限されるようにしてもよい。なお、マウスポインタ70は例示にすぎず、ユーザ端末UTがスマートフォンであればタッチパネルを介して選択されてもよいし、マウス操作以外にも、キーボード操作、音声入力、視線入力、ジェスチャ入力など他の操作により入力されてもよい。
【0050】
(3)評価対象の選択
図4の破線矢印U2は、上記のようなユーザUSによる対象の選択操作を示す。例えば、図6に示したように、ユーザUSがボックス62に表示された「XXアパート」を選択したとする。パーソナルコンピュータUTのブラウザは、このユーザの選択操作を受け付けて、リンク先のページを閲覧するための情報を再び情報処理装置1に要求する。
【0051】
ステップS104において、情報処理装置1は、受信部11により、パーソナルコンピュータUTのブラウザからこの取得要求を受信する。受信部11は、ユーザ要求受付部22にこの取得要求を渡す。
【0052】
次いでステップS105において、情報処理装置1は、ユーザ要求受付部22の制御の下、取得要求から必要な情報、例えば、リンク先のページの情報を抽出して表示用画像取得部23に渡す。
【0053】
ステップS106において、情報処理装置1は、表示用画像取得部23の制御の下、データメモリ30からリンク先のページのHTMLファイルおよび必要な画像データを読み出して、表示データ生成部25に渡す。一実施形態によれば、表示用画像取得部23は、必要な画像データとして、評価対象の部屋番号をユーザUSに指定させるための画像データを取得する。表示データ生成部25は、表示用画像取得部23から受け取った情報をもとに応答メッセージを生成して送信部12に渡す。
【0054】
ステップS107において、送信部12は、受け取った応答メッセージをパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。
【0055】
メッセージを受信したパーソナルコンピュータUTのブラウザは、D2において、受信したHTMLファイルに基づき、対応するWebページを表示する。
【0056】
図7は、そのようなWebページの表示イメージの一例を示す。図7の例では、Webページ60において、ボックス61に選択された建物の名称および住所「XXアパート,A県A市・・・」が表示され、選択ボックス65に閲覧可能な部屋番号「101号室,102号室,・・・」が表示される。部屋番号に限らず、フロア単位で閲覧可能としてもよい。またユーザごとに閲覧権限を設定してもよい。
【0057】
図7に示したように、ユーザUSにより閲覧対象として「101号室」が選択されると、ボックス66に「XXアパートの101号室」のレイアウトが表示される。そして、例えばユーザUSがマウスポインタ70を用いてレイアウト内のいずれかの部屋を選択することによって、当該部屋に係る入居時および退去時に撮影された画像がそれぞれボックス80および90に表示される。この例では、ボックス66のレイアウト内の網掛け67は、現在ボックス80および90に表示されている画像が101号室内のどの部屋に対応するかを示す。
【0058】
より詳細には、図7において、ユーザUSによりパーソナルコンピュータUTのブラウザを介して「101号室」が選択されると、再び図4の矢印U2、ステップS104~ステップS107およびD2に関して説明したのと同様の処理が行われる。例えば、情報処理装置1のユーザ要求受付部22が、取得要求から場所情報「XXアパート,101号室」を抽出し、表示用画像取得部23が、画像データ記憶部31から場所情報「XXアパート,101号室」に紐づけられたレイアウト画像を読み出す。そして、表示データ生成部25が、このレイアウト画像を含むメッセージを生成し、送信部12を介してパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。パーソナルコンピュータUTのブラウザは、D2においてページ60内に図7のボックス66に示したようなレイアウト表示を表示する。
【0059】
同様に、図7のボックス66を介して、ユーザUSがさらに「部屋67」を閲覧対象として選択すると、再び図4の矢印U2、ステップS104~ステップS107に関して説明したのと同様に、表示用画像取得部23が画像データ記憶部31から「XXアパート101号室」の「部屋67」に対応する画像80および90を読み出す。そして、表示データ生成部25が画像80および90をWebページに表示させるための応答メッセージを生成し、送信部12を介してパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。このとき、表示データ生成部25は、画像80および90の撮影日時情報および入居時の画像か退去時の画像かを識別する情報を抽出し、表示のための文字情報を生成してもよい。
【0060】
表示用画像取得部23は、例えば、場所情報に加えて、入居時の画像か退去時の画像かを表す情報をキーとして、画像データ記憶部31から画像80および90を読み出すことができる。あるいは、表示用画像取得部23は、場所情報に紐づけて記憶された画像データのうち、撮影日時が最も古いものと最も新しいものを入居時の画像と退去時の画像として読み出すようにしてもよい。あるいは、入居時画像および退去時画像として読み出すべき画像の日時情報を、Webページ60内でユーザUSが指定できるようにしてもよい。
【0061】
応答メッセージを受信したパーソナルコンピュータUTのブラウザは、D2において、「XXアパート101号室」の「部屋67」に対応する画像80および90が埋め込まれたWebページを表示する。
【0062】
図7の例では、画像80には、入居時の画像であることおよび撮影日を示す「入居時:201X年X月X日」という文字表示が重ねて表示され、画像90には、退去時の画像であることおよび撮影日を示す「退去時:201Y年Y月Y日」という文字表示が重ねて表示される。ユーザUSは、並べて表示された画像80および90を見て、視覚的に変化を観察することができる。図7の例では、退去時画像90には、入居時画像80には映っていない、壁の傷91および床の変色92が映っている。
【0063】
入居時画像80および退去時画像90は、それぞれ360度画像に基づいて生成された3D空間の一部を切り取った画像であってもよいし、360度カメラではない通常のカメラによって撮影された写真(2D画像)であってもよい。
【0064】
また、表示データ生成部25は、読み出した入居時画像80と退去時画像90のカメラアングルおよびカメラ位置を調整する処理を行ってもよい。そのような調整処理の一例として、両画像から特徴を抽出し、表示する2D画像内で特徴の角度や大きさを一致させるように調整する処理が考えられる。そのような特徴を抽出する方法の一例として、エッジや色変化を検出する方法がある。エッジや色変化の検出は、任意の方法で行われてよい。例えば、カラー画像をグレースケール画像に変換し、一定のバイアスをかけてから2値画像を得ることによって、エッジや色変化を検出することが可能である(例えば、特開2014-219781号公報参照)。
【0065】
あるいは、あらかじめ窓、壁、床、天井など対象画像内に存在し得る物体を認識できるように学習させたモデルを用いて画像内の物体認識を行い、それらの対応付けに基づいて画像処理を行うことも考えられる。あるいは、カメラCDによる撮影の際に、あらかじめ設定された撮影条件にしたがって撮影するようにしてもよい。
【0066】
さらに、一実施形態によれば、情報処理装置1は、図7に例示したWebページ60内の入居時画像80および退去時画像90を、カメラのアングルを変更して再表示させることもできる。例えば、図7においてユーザUSが画像80または90の左辺付近、例えば、左側の小窓または傷91のあたりをマウスポインタ70を介してクリックしたとする。この場合、パーソナルコンピュータUTのブラウザは、左方へのアングル変更の指示入力を受け付けたと判断し、左方へのアングル変更を要求する信号を生成してそれを情報処理装置1に送信する。この信号を受信した情報処理装置1は、ユーザ要求受付部22および表示用画像取得部23の制御の下、入居時画像80および退去時画像90のそれぞれについて、3D空間においてカメラのアングルを90度左方向に回転させて切り取った画像を作成する処理を行う。これらの画像は、あらかじめ複数のアングルの画像として用意されたものでもよい。そして情報処理装置1は、表示データ生成部25により、作成した画像を含むメッセージを生成して再びパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。パーソナルコンピュータUTのブラウザは、受信したメッセージをもとに表示を生成する。上記処理は、例えば図4のU3、S108~S111およびD3に関して説明したのと同様に行うことができる。
【0067】
図7に示したWebページ60はまた、変化の評価を指示するためのGUI部品である「比較」ボタン71と、「比較ボタンを押してください 評価を開始します」との文字情報を含むボックス72を含む。例えばユーザUSが入居時画像80と退去時画像90の間の室内の変化の程度をより客観的に知りたい場合、変化の程度の評価を要求するためにマウスポインタ70を介してボタン71をクリックする。ボタン71がクリックされると、パーソナルコンピュータUTのブラウザは、情報処理装置1に対して、表示中の画像に係る場所情報とともに変化の程度の評価開始を要求する信号を送信する。図4の破線矢印U3は、ユーザUSがパーソナルコンピュータUTのブラウザに要求を入力したことを示す。ステップS108において、情報処理装置1は、ユーザ要求受付部22の制御の下、この要求を受け付け、以下のように評価を開始する。
【0068】
(4)変化の評価
まずステップS109において、情報処理装置1は、変化評価部24の制御の下、変化を評価するために用いるべき2つの画像を特定し、対比処理のためにそれらの画像を取得する処理を行う。一実施形態によれば、変化評価部24は、比較ボタン71が押された時点でパーソナルコンピュータUTのブラウザによって表示されていた入居時画像80および退去時画像90の識別情報に基づき、それらの画像を取得する。
【0069】
次いで、ステップS110において、情報処理装置1は、変化評価部24の制御の下、2つの画像の対比処理を行う。
【0070】
例えば、変化評価部24は、対比処理の一例として2つの画像の類似度を算出する。類似度の算出には、例えば、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、AKAZE(Accelerated-KAZE)、SURF(Speed-Up Robust Features)、ORB(Oriented BRIEF)、BRISK(Binary Robust Invariant Scalable Keypoints)等のアルゴリズムが使用される。この場合、変化評価部24は、上記アルゴリズムを使用して2つの画像から特徴点をそれぞれ抽出し、抽出された各特徴点間の距離を求めることによって、類似度を算出する。
【0071】
変化評価部24はまた、背景差分法を用いて2つの画像間の相違を検出することもできる。その際、上記SIFT、AKAZE、SURF、ORB、BRISK等のアルゴリズムを使用して特徴点マッチングを行ってから背景差分法を用いてもよい。これにより、例えば、図7における入居時画像80および退去時画像90の相違点として、退去時画像90にのみ存在する傷91および床の変色92を容易に検出することができる。
【0072】
対比処理の別の例として以下のような各種手法も採用することができる。第1の手法は、入力画像に対して物体認識を行う学習済みのCNN(Convolutional Neural Network)の隠れ層から特徴量を抽出し、類似度を算出するものである。第2の手法は、各画像の画素値のヒストグラムを作成し、それらを対比することによって類似度を算出するものである。第3の手法は、各画素値の相関係数を得ることによって画像間の類似度を算出するものである。第4の手法は、各画素のRGB値それぞれの平均値を画像ごとに算出し、それらの距離に基づいて類似度を算出するものである。
【0073】
あるいは、変化評価部24は、上記で説明したエッジ検出を行ってもよい。すなわち、変化評価部24は、両画像を2値化して、エッジ検出を行い、検出されたエッジの長さ、角度、画素数等を比較することによって、類似度を算出することができる。また、あらかじめ多数の画像データを用いて類似度を出力するように学習させた学習済みモデルを用いて、類似度を算出してもよい。あるいは、各画像を複数のセグメントに分割し、分割されたセグメントごとに、上記様々な方法のいずれかを用いて類似度を算出するようにしてもよい。
【0074】
次いで、ステップS111において、情報処理装置1は、変化評価部24の制御の下、算出された類似度に基づいて、変化の程度を表す情報として変化率を求める。変化率は、任意の方法を用いて求められてよい。例えば、変化評価部24は、2つの画像から特徴点のマッチングを行い、背景差分をもとに類似度が所定のしきい値を下回る領域を識別して、その画像全体に対する面積比を求めることにより、変化率を算出する。ただしこれに限るものではなく、類似度に基づく変化率の計算は、任意の方法を用いてよい。
【0075】
別の方法の例として、変化評価部24は、算出された類似度(例えば、パーセンテージで算出される)をそのまま変化率の値としてもよい。または変化評価部24は、画像間の類似度(パーセンテージ)の逆数をとることによって、それを変化率として用いてもよい。または類似度を0から1までの小数値として算出し、その逆数を変化率の値としてもよい。または、変化評価部24は、算出された類似度を所定の変換式に代入することによって変化率を求めてもよい。あるいは、変化評価部24は、まず天井、床、壁、窓などの物体認識を行い、認識された物体ごとに上記類似度算出方法により類似度を算出するようにしてもよい。そして、物体ごとに算出された類似度を加算平均することによって、あるいはあらかじめ設定された重み付けを用いて加重平均することによって、全体の変化率を算出するようにしてもよい。
【0076】
ステップS112において、情報処理装置1は、表示データ生成部25の制御の下、評価結果として上記の変化率をユーザに提示するための表示データを含む応答メッセージを生成する。
【0077】
そしてステップS113において、情報処理装置1は、送信部12を介して、応答メッセージをパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。
【0078】
パーソナルコンピュータUTのブラウザは、D3において、受信したメッセージに基づき、Webページを表示することができる。
【0079】
図8は、パーソナルコンピュータUTのブラウザにより表示される、評価結果を表示するイメージの一例である。ボックス72に、変化の程度を表す情報として「変化率は35%です」と表示される。この値は、例えば上述のように、類似度が所定のしきい値を下回ると判定された領域の面積が、画像80または画像90全体の面積に対して占める割合として算出される。
【0080】
変化の程度を表す情報は、文字だけに限られない。例えば、特に相違する箇所(類似度が低い箇所)を強調表示するようにしてもよい。図8の例では、特に類似度が低い箇所を示すため、退去時画像90内の傷91が星印93で強調表示され、変色した床92が破線94で強調表示されている。入居時画像80内の対応する箇所にも、それぞれ星印83および破線84がマークされている。これは、例えばまず物体認識を行い、認識された物体ごとに類似度を算出し、類似度を所定のしきい値と比較することにより、類似度が所定のしきい値を下回る物体を識別することによって実施される。そして、表示データ生成部25が、類似度がしきい値を下回る物体に対し、当該物体を強調表示するための表示を生成して、上記画像に重ねて表示させる。
【0081】
この例では、類似度が所定の第1のしきい値未満の場合に、修復を要する部分と判定して星印を付し、類似度が第1のしきい値以上であるが所定の第2のしきい値以下の場合に(第1のしきい値 < 第2のしきい値)、自然に生じる経年劣化もしくは経年変化または通常の使用による通常損耗と判定し、破線を付すように設定される。あるいは、機械学習によって、修復を要する傷、凹み、変形などのパターン画像、または経年変化や通常損耗を表す画像を用いて、借主が原状回復費用を負担すべき変化であるか、自然な経年変化であるかの分類を出力するように学習させたモデルを用いて、上記判定を行ってもよい。このように、画像間の対象物の変化が時間経過に応じて自然に生じる変化であるか、またはそれ以外の変化(例えば、借主が原状回復義務を負う傷など)であるかを判定し、その判定結果を含む情報をさらに出力することによって、より詳細な評価を行うことができる。
【0082】
さらに、修復を要すると判定された部分については、予想修復額を算出するようにしてもよい。図8に示した例では、ボックス72内に、「予想修復額=¥20,000」との文字表示がなされている。これは、例えば、傷91の面積と、傷91が存在する対象の種別(この例では壁クロス)に応じて所定の計算式をもとに概算することができる。やはり機械学習により傷などの画像を入力すると予想修復額を出力するように学習させたモデルを利用してもよい。ボックス72に「星印は修復を要する可能性があります」「丸で囲まれた部分は経年変化または通常損耗と考えられます」との文字で示したように、さらに画像内のマークの説明が表示されるようにしてもよい。
【0083】
以上のような対比手法を用いることによって、評価者の主観や経験だけに依存しない、より客観的な評価結果を得ることができる。上記のような評価結果に対し、さらに個別具体的な条件に応じた調整を加えることによって、最終的な請求金額または敷金の返金額を算出するようにしてもよい。
【0084】
(変形例)
上記のように、情報処理装置1は、2つの異なる時点において撮影された画像に基づき、それらの間の変化の程度を表す情報を算出することができる。したがって、上記で説明したような賃貸物件における入居時と退去時の変化の評価以外にも、多種多様な用途が考えられる。
【0085】
一例として、地震、火事、盗難などの災害または損害に対する保険金の申請や算出の際にも、情報処理装置1を適用可能である。例えば、保険会社の社員と保険契約者双方の立会いの下、保険の補償対象となる建物や家財を任意の時点で撮影し、サーバとしての情報処理装置1にアップロードしておくことができる。そして、万一災害または損害が発生したときには、再び対象物を撮影し、情報処理装置1にアップロードして、上記実施形態で説明したような処理によって変化率を求めることによって、被害の程度を客観的かつ簡易に評価することができる。これにより、万一の災害または損害発生時にも、画像という客観的な根拠に基づいた適切かつ迅速な対応をとることが可能になる。
【0086】
また、上記実施形態に係る情報処理装置1は、建物や家財に限らず、絵画や彫刻などの美術品、自動車や自転車などの物品に適用されてもよい。
【0087】
(効果)
以上詳述したように、この発明の一実施形態では、対象物の変化の程度を表す情報を提示する情報処理装置、情報処理装置が実行する方法、または情報処理装置の各部の処理をプロセッサに実行させるためのプログラムにあって、第1の日時において対象物を撮影した第1の画像を取得し、上記第1の日時とは異なる第2の日時において上記対象物を撮影した第2の画像を取得し、上記第1の画像と上記第2の画像とを対比することによって、上記第1の日時と上記第2の日時との間の上記対象物の変化の程度を表す変化率を求め、上記変化率を表す情報を生成し出力するようにした。
【0088】
このように、画像間の対比によって変化率が算出されるので、評価者の主観や経験だけに依存せず、変化を客観的に評価することができる。
【0089】
また、上記変化率の算出においては、第1の画像および第2の画像から上記対象物に係る特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって画像間の類似度を算出し、類似度に基づいて変化率を算出することができる。これにより、画像類似度の算出により、客観的に変化率を推定することができる。
【0090】
また、上記情報処理装置1、情報処理方法またはプログラムは、賃貸借に係る住居の変化の程度を表す情報を提供することもできる。一例として、入居時に対応する第1の日時において住居の内部または外部に配置された対象物を撮影した第1の画像を取得し、退去時に対応する第2の日時において上記対象物を撮影した第2の画像を取得し、上記第1の画像および上記第2の画像から上記対象物に係る特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって上記第1の画像と上記第2の画像との類似度を算出し、上記類似度に基づいて、上記第1の日時と上記第2の日時との間の上記対象物の変化の程度を表す変化率を求め、上記変化率を表す情報を生成し出力するようにした。
【0091】
これにより、貸主と借主の間でトラブルになることの多い、入居時と退去時の間の変化に対する評価を、より客観的なものとすることができる。評価者の主観や経験だけに依存しないので、ばらつきの少ない安定した評価結果を得ることができる。
【0092】
また、上記情報処理装置1、情報処理方法またはプログラムは、住居に発生した損害に対する保険金の算出を支援することもできる。一例として、損害の発生前である第1の日時において住居の内部または外部に配置された対象物を撮影した第1の画像を取得し、上記損害の発生後である第2の日時において上記対象物を撮影した第2の画像を取得し、上記第1の画像と上記第2の画像とを対比することによって、上記第1の日時と上記第2の日時との間の上記対象物の変化の程度を表す変化率を求め、上記変化率を表す情報を生成し出力するようにした。
【0093】
これにより、保険会社と契約者の間に生じる感覚的な相違に起因するトラブルを軽減し、共通の画像情報に基づく、より客観的な評価を簡易にかつ迅速に行うことができる。評価者の主観や経験だけに依存しないので、ばらつきの少ない安定した評価結果を得ることができる。
【0094】
さらに、上記変化率を表す情報に加えて、対象物の変化が時間経過に応じて自然に生じる変化であるか、またはそれ以外の変化であるかをさらに判定して出力することもできる。これにより、単なる画像間の相違にとどまらず、変化の質についても考慮して評価を行うことができる。
【0095】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、情報処理装置1は、必ずしも360度画像データを用いる必要はなく、また必ずしも3D空間モデルを作成する必要もない。情報処理装置1は、少なくとも2つの異なる撮影時点に係る対比可能な静止画を収集することによって、上記実施形態を実現することができる。
【0096】
また図6図8に示した表示イメージは一例にすぎず、多様なバリエーションが可能である。いくつかの表示を組み合わせてもよいし、いくつかの表示を省略してもよい。例えば、賃貸物件の例では、入居時と退去時以外の中間の時点でも画像を撮影しておき、経時変化を詳細に分析するようにしてもよい。変化率の算出方法は例示にすぎず、2つの画像を対比する任意の評価方法を用いることができる。
【0097】
上記実施形態では、情報処理装置1がいくつかの機能部を含むものとして説明したが、これらは各機能部の実装の一例に過ぎない。例えば、1つの装置に実装されると説明された複数の機能部が複数の別々の装置に亘って実装されることもあり得るし、逆に複数の別々の装置に亘って実装されると説明された機能部が1つの装置に実装されることもあり得る。また上記実施形態において説明された各機能部は、回路を用いることで実現されてもよい。回路は、特定の機能を実現する専用回路であってもよいし、プロセッサのような汎用回路であってもよい。
【0098】
また、以上で説明した各処理の流れは、説明した手順に限定されるものではなく、いくつかのステップの順序が入れ替えられてもよいし、いくつかのステップが同時並行で実施されてもよい。また、以上で説明した一連の処理は、時間的に連続して実行される必要はなく、各ステップは任意のタイミングで実行されてもよい。
【0099】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0100】
要するにこの発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0101】
1…情報処理装置
10…通信インタフェース(I/F)
11…受信部
12…送信部
20…制御ユニット
20A…ハードウェアプロセッサ
20B…プログラムメモリ
21…画像処理部
22…ユーザ要求受付部
23…表示用画像取得部
24…変化評価部
25…表示データ生成部
30…データメモリ
31…画像データ記憶部
40…バス
60…Webページ
70…マウスポインタ
80…入居時画像
90…退去時画像
CD…カメラ
UT…ユーザ端末
TG…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8