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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】医療器具セットの管理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/40 20180101AFI20240311BHJP
【FI】
G16H40/40
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019239300
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108028
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 暁典
(72)【発明者】
【氏名】花島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小久保 貴章
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 全
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-282250(JP,A)
【文献】特開2019-028546(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2011-0110531(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの記憶装置と、
前記記憶装置と協働する少なくとも1つの演算装置と
を備え、
医療器具に一対一で関連付けられた器具IDを記憶し、
複数の医療器具で構成された医療器具セットに一対一で関連付けられたセットIDを記憶し、
前記器具IDまたは前記セットIDに関連付けて、医療器具または医療器具セットに設定された滅菌保証期間を記憶し、
前記器具IDまたは前記セットIDに関連付けて、医療器具または医療器具セットに包装作業が実施された時を記憶し、
前記医療器具または医療器具セットに包装作業が実施された時と、前記滅菌保証期間とに基づいて滅菌保証期限を取得し、
前記滅菌保証期限に基づいて、予め定められた条件の前記器具IDまたは前記セットIDを抽出する
ように構成された、医療器具セットの管理システム。
【請求項2】
前記滅菌保証期限が過ぎた前記器具IDまたは前記セットIDを抽出する、請求項1に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項3】
前記滅菌保証期限までの残りの期間が、予め定められた期間内である前記器具IDまたは前記セットIDを抽出する、請求項1に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項4】
表示装置が接続可能であり、
抽出された前記器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットを、前記表示装置が表示するように構成された、
請求項1から3までの何れか一項に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項5】
前記滅菌保証期限が過ぎた前記器具IDまたは前記セットIDを抽出し、
当該抽出された前記器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットに対して、予め定められた再滅菌処理のアラートを、前記表示装置が表示するように構成された、
請求項4に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項6】
前記医療器具または医療器具セットに施される予め定められた管理対象工程の作業履歴を、医療器具セットを特定するセットIDまたは器具を特定する器具IDに関連付けて記憶し、
前記管理対象工程には、洗浄工程と、組立工程と、滅菌工程とを少なくとも含まれており、
前記作業履歴に基づいて、抽出された前記器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットが、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数をカウントする、請求項1から5までの何れか一項に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項7】
前記作業履歴に基づいて、抽出された前記器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットが、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経た場合に、前記回数のカウントを0にする、請求項6に示された医療器具セットの管理システム。
【請求項8】
前記回数が予め定められた回数を超えた前記医療器具または医療器具セットを抽出し、当該医療器具または医療器具セットについて、予め定められたアラート処理が実行される、請求項6または7に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項9】
印刷機に接続可能であり、
滅菌保証期限を含む情報を前記印刷機が印刷するように構成された、
請求項から8までの何れか一項に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項10】
前記器具IDまたはセットIDに関連付けて、前記滅菌保証期限を含む情報を前記印刷機が印刷するか否かが設定された、請求項9に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項11】
前記作業履歴に基づいて、抽出された前記器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットが、前記滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数が予め定められた回数を超えた場合に、当該医療器具または医療器具セットに対して、前記滅菌保証期限を含む情報を前記印刷機が印刷するか否かの設定をする処理が実行される、
請求項10に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項12】
前記作業履歴に基づいて、抽出された前記器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットが、前記滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数が予め定められた回数を超えた場合に、当該器具または医療器具セットについては、前記滅菌保証期限を含む情報を前記印刷機が印刷しないように設定される、
請求項10に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項13】
組立工程が終了した場合に、前記滅菌保証期限を含む情報Aを前記印刷機が印刷するように設定された、前記器具または医療器具セットに対して、前記情報が印刷されるように構成された、請求項9から12までの何れか一項に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項14】
印刷機に接続可能であり、
滅菌保証期限を含む情報を前記印刷機が印刷するように構成された、
請求項からまでの何れか一項に記載された医療器具セットの管理システム。
【請求項15】
前記器具IDまたはセットIDに関連付けて、前記滅菌保証期限を含む情報を前記印刷機が印刷するか否かが設定された、請求項14に記載された医療器具セットの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具セットの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-24609号公報には、医療器具セットの管理システムが開示されている。同公報では、特に、洗浄工程において、医療器具セットを構成する器具の振分けを容易にするシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-24609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療器具は、例えば、手術工程、回収工程、洗浄工程、組立工程、滅菌工程、保管工程の順で概ね管理されている。医療器具セットは回収された後、洗浄方法毎に、選別され、洗浄工程に送られる。次に、組立工程では、医療器具セット毎に仕分けされ、適宜に医療器具が組立てられ、かつ、予め定められた包装形態で包装される。滅菌工程では、医療器具セット毎に、予め定められた滅菌方法で滅菌される。滅菌工程後、医療器具セット毎にインジケータを通じて、滅菌が適切に行なわれたか否かが判定される。滅菌が適切に行なわれた場合は、次の使用まで所定の保管場所に保管される。そして、滅菌後に保管されている器具が再び手術や診療で用いられている。
【0005】
病院などでは、多くの種類の医療器具および医療器具セットを、それぞれ複数保有し、使用している。また、複数の診療科を有するような大病院では、診療科毎に複数の医療器具セットを所有しているが、洗浄工程から滅菌工程などでは、施設が共有している場合がある。このように1つの病院では、同種類の医療器具または医療器具セットが多数存在する。同種類の医療器具または医療器具セットが多数あるような場合には、管理が煩雑である。特に、器具や医療器具セット毎に洗浄方法や包装方法や滅菌方法が予め決められている。
【0006】
本発明者は、かかる医療器具または医療器具セットについて、滅菌の保証期限が適切に管理されることを実現したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示される医療器具セットの管理システムは、少なくとも1つの記憶装置と、記憶装置と協働する少なくとも1つの演算装置とを備えている。システムは、医療器具に一対一で関連付けられた器具IDを記憶する。システムは、複数の医療器具で構成された医療器具セットに一対一で関連付けられたセットIDを記憶する。システムは、記器具IDまたはセットIDに関連付けて、医療器具または医療器具セットに設定された滅菌保証期間を記憶する。システムは、器具IDまたは前記セットIDに関連付けて、医療器具または医療器具セットに包装作業が実施された時を記憶する。システムは、医療器具または医療器具セットに包装作業が実施された時と、滅菌保証期間とに基づいて滅菌保証期限を取得する。システムは、滅菌保証期限に基づいて、予め定められた条件の器具IDまたはセットIDを抽出するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
かかる医療器具セットの管理システムによれば、医療器具または医療器具セットに包装作業が実施された時と、滅菌保証期間とに基づいて滅菌保証期限を取得する。当該、滅菌保証期限は、包装作業が実施された時を基準としており、滅菌保証期限は、滅菌作業が実施された時を基準とするとよりも、安全面で余裕のある期限が設定される。このため、滅菌保証期限がより確実に安全側で管理される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、医療器具セットの管理システム10の概略図である。
図2図2は、システム10の適用例を示す概略図である。
図3図3は、医療器具セットのマスターデータの構成例を示す図である。
図4図4は、医療器具セットのマスターデータの構成例を示す図である。
図5図5は、包装タイプのマスターデータの構成例を示す図である。
図6図6は、滅菌タイプのマスターデータの構成例を示す図である。
図7図7は、回収エリアA2での作業情報を記録したテーブルの構成例を示す図である。
図8図8は、滅菌エリアA5での作業情報を記録したテーブルの構成例を示す図である。
図9図9は、ある器具の作業履歴を抽出したデータテーブルの構成例を示す図である。
図10図10は、器具の種類に基づいて、同じ種類の複数の器具の作業履歴を抽出したデータテーブルの構成例を示す図である。
図11図11は、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係が記憶されたマスターデータの構成例を示す図である。
図12図12は、医療器具セットのマスターデータを登録するための登録画面の一例を示す図である。
図13図13は、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係を登録するための登録画面の一例を示す図である。
図14図14は、滅菌切れセットを示す画面の一例を示す図である。
図15図15は、再滅菌となった回数を記録するマスターデータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る医療器具セットの管理システムを説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
【0011】
ここで、医療器具セットは、一回の手術あるいは手術の一工程さらには診察で使われる複数の医療器具からなる1つの纏まりである。医療器具セットは、1つの纏まりとして、1つの袋や容器に包装され、滅菌され、かつ、保管される。このような医療器具セットは、適宜に「手術セット」または「診察セット」などと称される。ここで、医療器具は、適宜に、器具と称される。
【0012】
医療器具セットに含められる器具には、例えば、トラカール、鉗子、切開装置、洗浄吸引装置、剪刃(クーパー)、メス、メスホルダー、カニューレ、鑷子、開創器、スケール、ゾンデ、エレバ、ラスパ、吸引管、開胸器、閉胸器、持針器、注射器、金属ボール、膿盆、コップ、ピン、ミラー、やすり、開口器、クレンメ、ハンドピース、ノミ、鋭匙、剥離子、鏡、縫合針、スタンツェ、受水器、針、圧子、ブジー、通気管、骨片打込器、リウエル、ラジオペンチ、ハンマー、角度計、スポイト、浣腸器、シリンジなどがある。
【0013】
医療器具には、複数の構成部品で構成された器具がある。例えば、腹腔鏡外科手術で用いられるトラカール、鉗子、切開装置、洗浄吸引装置などは、複数の構成部品からなり、手術後に回収され、複数の構成部品に分解される。ここでは、医療器具を構成する部品を構成部品という。また、構成部品がさらに複数の構成部品からなる場合があるが、このような場合は全て構成部品と称する。
【0014】
このような医療器具および医療器具の構成部品は、それぞれ洗浄作業が決められている。このため、医療器具および器具の構成部品は、手術後に回収されてそれぞれ指定された洗浄作業毎に振分けられて、それぞれ洗浄工程に回送される。洗浄後、複数の構成部品からなる器具は組立てられ、また、医療器具セット毎、あるいは、医療器具毎に分けられて所定の容器に入れられて封止される。その後、指定された滅菌方法で滅菌されて、次に使用されるまで保管される。このように、医療器具セットの使用では、手術(診療)→回収(振分け)→洗浄→組立(包装)→滅菌→保管→手術という工程が繰り返される。組立工程では、組立から包装(封止)までの作業として行なわれる。このため、組立工程は、適宜に包装工程または封止工程とも称されうる。医療器具セットの各器具および構成部品は、それぞれ適切な方法および手順で確実に洗浄されることが、院内感染などを防ぐ上で重要である。
【0015】
ところで、医療器具セットや医療器具は、手術後、回収、洗浄、組立、包装(封止)、滅菌、保管の工程を経るため、多くの病院では、多くの種類の医療器具セットや器具を、それぞれ複数保有し、保管されている医療器具セットや器具を取り出して使用している。このような場合には、管理が煩雑になる。例えば、同種類の医療器具セットや医療器具でも、使用頻度にバラツキが生じる。また、医療器具セットや医療器具がどの程度有効に利用されているかを判断することが難しい。また、一定の期間、全く使用されない医療器具セットや医療器具が存在していても、誰も気付かない場合がある。
【0016】
ここで開示される医療器具セットの管理システムは、例えば、医療器具セットおよび器具を適切に管理するのに用いられうる。
【0017】
図1は、医療器具セットの管理システム10(本明細書において、適宜に「システム10」と称される。)の概略図である。図1に示された形態では、システム10は、ハードウェア構成として、処理装置100と、記憶装置120とを備えている。また、システム10は、リーダー11と、表示装置12と、印刷機13と、操作端末14とを備えている。
【0018】
リーダー11は、医療器具セットの器具、器具の構成部品に組み込まれた個体情報、あるいは、器具や医療器具セットを収容する袋や容器に付された個体情報を読み取る装置である。
【0019】
個体情報は、当該器具や構成部品が特定できるように、それぞれ個別に割り当てられているとよい。ここで、個体情報は、所定の形態の二次元シンボルであり得る。例えば、医療器具セットの器具に用いられる個体情報としては、二次元バーコードや、RFIDのような非接触タグや、器具表面に形成される刻印などの二次元シンボルで具現化されうる。また、刻印には、レーザー刻印や、打刻による形成ができる。
【0020】
打刻による二次元シンボルの形成には、例えば、メタルプリンター(例えば、ローランドディー.ジー.株式会社製 MPX-95など)が用いられうる。このようなメタルプリンターによれば、例えば、1mm~4mm角程度の微細な大きさでデータマトリックスを形成することが可能である。打刻による二次元シンボルは、器具表面を凹ますことによって形成されている。器具表面のメッキ被膜などに傷が付きにくく、二次元シンボルを付けたことによって器具が錆び難い。また、メタルプリンターなどの発達によって、二次元シンボルが形成されていない既存の器具にも適用でき、二次元シンボルをユーザーで設定して付与することができる。
【0021】
組立、滅菌あるいは保管では、例えば、医療器具セットに属さない器具は、適宜に単品で個包装された状態である。また、医療器具セットは、纏めて袋や容器に収容された状態である。この場合、器具や医療器具セットを収容する袋や容器に、二次元シンボルなどの個体情報が付されているとよい。
【0022】
リーダー11は、情報を読み取る読取装置である。リーダー11は、例えば、個体情報を検知するための検知部を備えているとよい。例えば、二次元シンボルを検知するための検知部としては、カメラやCCDイメージセンサなどが挙げられる。リーダー11の検知部は、器具や構成部品や袋などに付された個体情報が向けられることによって、当該個体情報が読み取られるように構成されているとよい。具体的には、リーダー11は、個体情報から読み取られる情報をコンピュータが処理可能な情報に置き換える機能を備えていてもよい。リーダー11は、操作端末14との協働によって、その機能が具現化されるように構成されていてもよい。
【0023】
表示装置12は、システム10の出力装置の1つとして機能する装置である。表示装置12は、画像や動画や文字情報を表示する装置である。また、表示装置12には、タッチパネル機能を備えた装置が用いられうる。この場合、表示装置12は、システム10に対する入力装置として機能しうる。表示装置12は、操作端末14に付随するディスプレイでもよい。例えば、操作端末14が、タブレットコンピュータやスマートフォンのようなモバイル端末である場合には、そのディスプレイが表示装置12として機能しうる。
【0024】
印刷機13は、システム10の出力装置の1つとして機能する装置である。システム10の指示に従って操作され、所定の印刷物を印刷する。例えば、医療器具セットや医療器具あるいはその包装材に貼り付けられるラベルを印刷するものでもよい。
【0025】
操作端末14は、このシステム10の各種処理を操作するための端末である。また、操作端末14は、処理装置や記憶装置を備えており、システム10の一部の処理を実行する機能を備えていてもよい。
【0026】
処理装置100および記憶装置120は、図1では、サーバー20の処理装置および記憶装置として図示されている。処理装置100は、システム10が機能する上で必要な処理を実行する。記憶装置120は、システム10が機能する上で必要な情報が記憶される。記憶装置120には、処理装置100を通じて適宜に情報が書き込まれ、かつ、記憶装置に書き込まれた情報は、処理装置100を通じて適宜に取り出される。サーバー20と操作端末14は、通信ネットワーク15を通じて繋がっているとよい。操作端末14は、サーバー20と連携し、このシステム10のクライアントコンピュータとして機能しうる。操作端末14は、システム10の処理装置または記憶装置の一部としても機能しうる。
【0027】
ここで、処理装置100は、予め定められたプログラムに従ってコンピュータ上で信号を処理する装置である。処理装置100は、プロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)などとも称される。記憶装置120は、コンピュータ上で処理される情報を記憶する装置である。記憶装置120は、メモリーやハードディスクなどと称される。システム10の各機能は、処理装置100と記憶装置120およびソフトウェアとの協働によって処理によって具現化される。ソフトウェアは、例えば、記憶装置120の一部に保存されており、適宜に処理装置100によって実行されるように、システム10に組み込まれているとよい。例えば、システム10の各機能は、所定の演算処理を行う処理モジュールとして、若しくは、データとして、または、それらの一部として具現化されうる。処理モジュールは、具体的には、それぞれプログラムである。システム10には、リーダー11や操作端末14を通じて情報が入力される。また、システム10は、操作端末14を通じて所定の出力が行なわれる。
【0028】
システム10は、図1に示された形態に限定されない。例えば、システム10は、システム全体として処理装置100と記憶装置120を少なくとも1つ備えているとよい。システム10は、それぞれ複数のリーダー11と表示装置12と印刷機13と操作端末14に接続されていてもよい。また、システム10は、ネットワーク15を通じて遠隔にあるリーダー11と表示装置12と印刷機13と操作端末14に接続されていてもよい。
【0029】
図2は、システム10の適用例を示す概略図である。このシステム10では、例えば、図2に示されているように、手術→回収(振分け)→洗浄→組立(封止)→滅菌→保管→手術の各工程(各作業エリア)において、器具または医療器具セットの作業履歴が適宜に記録される。表示装置12や印刷機13や操作端末14は、図2に示されているように、作業エリアにそれぞれ配置されていてもよい。図2に示された形態では、手術エリアA1、回収エリアA2、洗浄エリアA3、組立エリアA4、滅菌エリアA5および保管エリアA6の各エリアA1~A6に、操作端末14a~14fおよびリーダー11a~11fが配置された状態が示されている。
【0030】
手術エリアA1は、医師や看護師などの医療従事者によって医療器具や医療器具セットが使用されるエリアであり、手術や診察などが行われるエリアである。
回収エリアA2は、手術エリアA1から医療器具セットおよび医療器具が回収されるエリアである。ここでは、医療器具セットは、医療器具毎にばらばらに回収されうる。
洗浄エリアA3は、医療器具セットおよび医療器具を洗浄するエリアである。ここでは、医療器具は、部品毎に分解されて洗浄されうる。
組立エリアA4は、洗浄された医療器具セットおよび医療器具を組立て、所定の容器や袋に包装するするエリアである。
滅菌エリアA5は、医療器具セットおよび医療器具を滅菌するエリアである。医療器具セットおよび医療器具は、所定の容器や袋に包装された状態で滅菌される。
保管エリアA6は、滅菌された医療器具セットおよび医療器具を保管するエリアである。
【0031】
なお、この実施形態では、手術エリアA1、回収エリアA2、洗浄エリアA3、組立エリアA4、滅菌エリアA5および保管エリアA6に区分されているが、かかる形態に限定されない。例えば、医療器具セットおよび医療器具は、修理やメンテナンスに出される場合がある。そのような場合は、メンテナンスエリアという概念を設けて、医療器具セットおよび医療器具が修理やメンテナンスに出された場合に当該エリアに区分してもよい。また、洗浄や組立や滅菌の作業は、手術などとは異なる専門の業者が行う場合がある。このような場合、洗浄エリアA3や組立エリアA4や滅菌エリアA5は、手術エリアA1や回収エリアA2や保管エリアA6などとは異なる施設に設けられうる。手術エリアA1や回収エリアA2や保管エリアA6についてもそれぞれ異なる場所に設けられうる。また、このシステム10では、複数の病院で使われる医療器具セットや器具を纏めて管理することが可能である。このような場合、手術エリアA1や回収エリアA2などは、複数の場所に設置されうる。
【0032】
システム10は、各作業エリアに配置された操作端末14a~14fとは別に、操作端末14gが接続されてもよい。操作端末14gは、持ち運び可能ないわゆるモバイル端末であり、場所によって限定されない。操作端末14gは、適宜にシステム10の操作端末として機能する。操作端末14gは、例えば、メンテナンスエリアなど、作業エリアA1~A6とは異なる場所で利用されうる。
【0033】
操作端末14a~14gに付随した表示装置12a~12gは、それぞれシステム10の表示装置として機能する。システム10は、図2に示されているように、操作端末14a~14gと協働して機能するサーバー20を備えていてもよい。サーバー20は、当該システム10の機能を具現化する上で基幹となる処理装置100と記憶装置120を備えていてもよい。なお、本明細書では、各作業エリアに応じて、リーダー11a~11f、表示装置12a~12gおよび操作端末14a~14gなどと符号を区別している。リーダー11a~11f、表示装置12a~12gおよび操作端末14a~14gは、特段区別する必要がない場合には、単に「リーダー11」、「表示装置12」および「操作端末14」と称される。また、印刷機13は、例えば、組立エリアA4に配置されているとよい。
【0034】
上述した各エリアA1~A6は、それぞれ所定の作業が行われる場所と規定されうる。ただし、システム上は、各エリアA1~A6に関連付けられて識別IDが割り当てられ、マスターデータに記憶されているとよい。システム上は、各エリアA1~A6に配置されたリーダー11a~11fや操作端末14a~14fが、各エリアA1~A6に関連付けられているとよい。例えば、リーダー11a~11fや操作端末14a~14fで入力された情報が、各エリアA1~A6で入力された情報としてシステム10において扱われるとよい。本明細書において、「マスターデータ」とは、本システムで共通となる基本的な情報のことをいう。マスターデータは、対象ごとに複数用意される。
【0035】
また、各エリアA1~A6は、実際上の場所が重複していてもよい。例えば、手術や診療が行われている場所と同じ場所で回収が行われる場合には、手術エリアA1と回収エリアA2の場所が重複していてもよい。また、リーダー11や表示装置12や操作端末14が手術エリアA1と回収エリアA2とで共通していてもよい。この場合、操作端末14の機能や設定が、例えば、ソフトウェア上の処理によって各エリアA1~A6に応じて切り替えられるように構成されているとよい。例えば、操作端末14は、手術エリアA1に応じた機能および設定と、回収エリアA2に応じた機能および設定とに、予め定められた操作で適宜に切り替えられるように構成されているとよい。
【0036】
図2では、各エリアA1~A6に、リーダー11、表示装置12および操作端末14がそれぞれ1つずつ配置されているが、各エリアA1~A6に配置されるリーダー11、表示装置12および操作端末14はそれぞれ複数配置されていてもよい。また、各エリアA1~A6では異なるエリアにおいて、リーダー11、表示装置12および操作端末14が共有されていてもよい。なお、図1および図2は、システムの概略図である。システム10は、かかる形態に限定されない。システム10は、さらに多くのリーダー11と表示装置12と操作端末14を備えていてもよい。操作端末14a~14gは、それぞれ単一の装置で具現化してもよいし、複数の装置が協働で処理装置としての機能を奏するものでもよい。つまり、図1では、処理装置100は、1つの装置のように図示されているが、1つの装置であることに限定されない。
【0037】
リーダー11a~11fと、操作端末14a~14gと、サーバー20とは、双方向においてデータ通信可能に接続されていてもよい。図2に示された形態では、リーダー11a~11fと、操作端末14a~14gと、サーバー20とは、通信ネットワーク15を通じてデータ通信可能な状態で連携している。各操作端末14a~14g、リーダー11a~11f、および、処理装置100は、例えば、ルーター(図示省略)を通じて構築される無線通信ネットワークやLANケーブルなどの有線通信ネットワークによって相互に情報通信が可能な状態で接続されているとよい。
【0038】
図2に示された操作端末14a~14gのディスプレイ12a~12gは、それぞれ図1に示された表示装置12として機能する。図2に示された形態では、操作端末14a~14gとサーバー20とは、適宜に協働してシステム10の処理装置100および記憶装置120(図1参照)として機能しうる。このように図1および図2に示された形態では、システム10は、複数の装置によって具現化されている。システム10では、操作端末14a~14gやサーバー20などの複数台のコンピュータが連携している。システム10は、離れた複数の場所で異なる複数のユーザーによって同時に並行して利用される。そして、多くの医療器具セットや器具が複数の工程で並行して管理される。
【0039】
図2は、システム10の1つの適用例を示している。システム10の構成は、図2に示された形態に限定されない。例えば、図2に示された例では、操作端末14は、ラップトップ型の端末が図示されているが、端末の形態には限定されず、例えば、タブレット型端末や据え置き型の端末であってもよい。また、システム10は、基幹となるサーバー20を備えているが、システム10は、サーバー20を備えていなくてもよい。例えば、システム10は、少なくとも1つの記憶装置と、当該記憶装置と協働する、少なくとも1つの処理装置とを備えているとよい。図2に示された形態では、システム10は、サーバー20と複数の操作端末14とが協働することによって具現化されている。サーバー20と複数の操作端末14とは、それぞれ記憶装置と処理装置とを備えている。システム10は、図2に示された形態に限定されない。例えば、システム10は、1つの端末によって具現化されていてもよい。例えば、サーバー20が、システム10の全ての機能を奏するように構成されていてもよい。また、システム10は、例えば、ネットワークで接続された複数の装置が連携して情報を記憶し、また処理するように構成されていてもよい。この場合、システム10は、ネットワークで接続された複数の処理装置100と複数の記憶装置120が、相互に連携してシステム10の処理装置100および記憶装置120として機能するように構成されていてもよい。システム10は、このようにクライアント-サーバー型、スタンドアローン型、あるいは分散ファイルシステム型のシステムとして具現化されうる。
【0040】
医療器具セットには、当該医療器具セットを特定するためのセットIDが一対一で付与されているとよい。医療器具には、当該医療器具を特定するための器具IDが一対一で付与されているとよい。また、洗浄などの作業において分解される医療器具には、部品毎に、当該部品を特定するための部品IDが付与されているとよい。
【0041】
システム10では、例えば、セットIDは、医療器具セットに関する情報に関連付けて記憶されているとよい。器具IDは、医療器具に関する情報に関連付けて記憶されているとよい。部品IDは、部品に関する情報に関連付けて記憶されているとよい。
【0042】
さらに、所属に関する情報が器具IDやセットIDに関連付けて記憶されていてもよい。ここで所属は、例えば、病院であれば、外科や内科などの診療科で規定されうる。また、複数の病院の器具や医療器具セットを合わせて管理するような場合には、所属には、病院などの情報が含まれる。このように、所属は、いくつかの階層で複数の情報が含まれていてもよい。例えば、この実施形態では、所属1には、病院、所属2には、診療科の情報が含まれている。かかる所属に関する情報は、医療器具セットに関する情報や、医療器具に関する情報の一部に含まれていてもよい。
【0043】
このシステム10では、セットID、器具ID、部品ID、および、これらに関連付けられた個体情報や画像データや所属に関する情報などは、マスターデータとしてデータベースなどに予め記憶されているとよい。また、洗浄方法や、包装材や、滅菌方法などの情報も、適宜に、システム10においてマスターデータとして予め記憶されているとよい。
【0044】
図3および図4は、それぞれ医療器具セットのマスターデータ400,410の構成例を示す図である。図3に示されたマスターデータ400では、セットIDを記憶する欄401,医療器具セット名を記憶する欄402,器具IDを記憶する欄403,器具名を記憶する欄404,部品IDを記憶する欄405,個体情報としてのGS1コードを記憶する欄406,医療器具セットや器具や部品の画像ファイルを記憶する欄407が設けられている。図4に示されたマスターデータ410では、セットIDを記憶する欄411,医療器具セットの器具点数を記憶する欄412,所属に関する情報を記憶する欄413,414,包装タイプを記憶する欄415,滅菌タイプを記憶する欄416,保管棚を記憶する欄417a,棚番を記憶する欄417b,滅菌切れアラートの要否を記憶する欄(この実施形態では、滅菌切れ418a,1週間418b,1ヶ月418c),ラベル印刷の要否を記憶する欄419bが設けられている。
【0045】
このように、医療器具セットに関する情報が、それぞれセットIDに関連付けられて記憶されている。このうち、画像ファイルは、医療器具セット、器具または構成部品の画像が納められている。画像ファイルは、表示装置12a~12gを通じて適宜に画像が表示されるように構成されうる。かかるデータベース400に入力される情報は、各欄の情報を入力できる予め定められた登録画面を用意し、当該登録画面に入力された情報がマスターデータとして登録されるように構成されているとよい。
【0046】
なお、マスターデータのデータ構造は、図3および図4に示す構成のものに限定されない。また、マスターデータの登録画面も特に限定されない。セットID、器具ID、部品ID、および、これらに関連付けられた個体情報や画像データや所属に関する情報などは、個々の情報を記憶した複数のデータベースを相互に関連付けたものでもよい。例えば、医療器具セットの情報を記録したデータベースと、医療器具の情報を記録したデータベースと、部品の情報を記録したデータベースとを用意する。各データベースには、医療器具セットと、医療器具と、部品とを相互に関連付ける情報を含ませるとよい。例えば、医療器具と医療器具セットとを関連付ける情報、医療器具と部品とを関連付ける情報がいずれかのデータベースに含まれているとよい。これによって、医療器具セットと、医療器具と、部品とが相互に関連付けられる。同様に、個体情報や画像データや所属に関する情報なども、個別にデータベースを用意し、医療器具セットと、医療器具と、部品とが相互に関連付けられるように構成してもよい。以下でも同様に、マスターデータのデータ構造は、種々選択でき、特に限定されない。
【0047】
包装タイプは、包装材や包装方法を特定するものである。ここで、包装材には、不織布や滅菌バッグやコンテナやトレーなどがある。包装方法としては不織布でくるんだり、滅菌バッグに収容したり、さらに不織布でくるんだ状態で滅菌バッグに収容することなどがある。例えば、包装容器や封止方法などが、包装タイプ毎に特定されるように予め定められるとよい。システム10は、医療器具または医療器具セットの包装タイプを特定する情報を予め記憶しているとよい。例えば、包装タイプは、予めマスターデータが用意されているとよい。
【0048】
図5は、包装タイプのマスターデータの構成例を示す図である。図5に示されたマスターデータ420は、包装タイプを記憶する欄421と、包装材1を記憶する欄422と、包装材2を記憶する欄423と、包装材3を記憶する欄424とを備えている。かかるマスターデータ420によれば、包装タイプから包装材が特定されるように構成されている。包装材1は、例えば、外装材を示している。包装材2は、例えば、内装材を示している。包装材3は、さらに異なる包装材が合わせて用いられる包装方法が、採用されている場合に追加されるとよい。例えば、Pack2とされる包装タイプは、対象となる医療器具または医療器具セットを不織布で包装し、さらにコンテナに入れるものである。
【0049】
滅菌タイプは、滅菌方法を特定するものである。滅菌タイプは、例えば、滅菌方法や滅菌条件などが、滅菌タイプ毎に特定されるように予め定められるとよい。システム10は、医療器具または医療器具セットの滅菌タイプを特定する情報を予め記憶しているとよい。例えば、滅菌タイプは、予めマスターデータが用意されているとよい。図6は、滅菌タイプのマスターデータ440を示す図である。図6に示されたマスターデータ440は、滅菌タイプを記憶する欄441と、滅菌方法を記憶する欄442と、滅菌条件1を記憶する欄443と、滅菌条件2を記憶する欄444と、滅菌条件3を記憶する欄445とを備えている。かかるマスターデータ440によれば、滅菌タイプから滅菌方法および滅菌条件が特定されるように構成されている。滅菌タイプは、滅菌方法のみが特定されるものが含まれていてもよい。
【0050】
ここで滅菌方法には、例えば、高圧蒸気滅菌(いわゆるオートクレーブ)、酸化エチレンガス滅菌(いわゆるEOG滅菌)、プラズマ滅菌(低温プラズマ滅菌などとも称される。)乾熱滅菌、火炎滅菌、煮沸消毒、流通蒸気消毒、炭酸ガス滅菌、放射線滅菌、ガンマ線滅菌、紫外線殺菌、ホルムアルデヒド消毒などがある。滅菌条件は、これらの滅菌方法で採用される条件を意味する。例えば、温度、時間、圧力、放射線やガンマ線や紫外線などでは、その強さなど、滅菌方法ごとに、条件が設定できるように構成されているとよい。図6に示されたマスターデータでは、3つの条件が示されているが、さらに他の条件が設定できるように構成されていてもよい。
【0051】
このように、システム10は、医療器具または医療器具セットの包装タイプを特定する情報が予め記憶されている。このため、医療器具や医療器具セットの包装材や包装方法をコンピュータ上で特定する処理が容易になる。また、システム10は、医療器具または医療器具セットの滅菌タイプを特定する情報が予め記憶されている。医療器具や医療器具セットの滅菌方法や滅菌条件をコンピュータ上で特定する処理が容易になる。
【0052】
作業者IDなどは、システム10においてマスターデータとして予め記憶されており、作業者に配布されたネームタグなどに割り当てられていてもよい。ネームタグに割り当てられた作業者IDは、リーダー11bで読み取り可能なものであってもよい。また、リーダー11a~11fや操作端末14a~14gやサーバー20にも、個体情報が割り当てられており、システム10においてマスターデータとして予め記憶されていてもよい。
【0053】
さらに、システム10では、洗浄工程での洗浄方法や、組立工程でのより具体的な組立方法や包装方法や、滅菌工程のより具体的な滅菌方法なども、器具IDまたはセットIDに関連付けて記憶されていてもよい。これらの情報は、適宜に、システム10においてマスターデータとして予め記憶されていてもよい。つまり、システム10は、予め記憶されたマスターデータに基づいて、器具IDやセットIDが特定されると、洗浄工程での洗浄方法や、組立工程での組立方法や包装方法や、滅菌工程の滅菌方法などの情報が得られるように構成されていてもとよい。ここでは、これらのマスターデータの具体例は、省略するが、マスターデータのデータ構造は特に限定されない。
【0054】
この実施形態では、予め定められた作業スペースとしての各エリアA1~A6にそれぞれリーダー11a~11fが配置されている。システム10には、器具に個体情報が割り当てられている。システム10には、器具の個体情報と器具IDとセットIDとが関連付けて記憶されている。リーダー11a~11fによって個体情報が検知された際に、個体情報によって器具IDとセットIDとが特定されるように構成されている。特定された器具IDに関連付けて器具に施された作業の情報を器具の作業履歴に加えるように構成されている。また、特定されたセットIDに関連付けて医療器具セットに施された作業の情報を医療器具セットの作業履歴に加えるように構成されている。
【0055】
このシステム10では、各エリアA1~A6に配置されたリーダー11a~11fによって、個体情報が検知された際に、個体情報によって器具IDが特定され、各エリアA1~A6で器具に施された作業の情報が器具の作業履歴に加えられる。さらに、個体情報によってセットIDが特定された際には、各エリアA1~A6で医療器具セットに施された作業の情報が医療器具セットの作業履歴に加えられる。このように、リーダー11a~11fを介して器具や医療器具セットが特定されるので、器具や医療器具セットの作業履歴の入力がより確実に行われる。例えば、作業の情報は、器具や医療器具セットを取り間違えて入力されにくい。器具や医療器具セットの作業履歴は、例えば、作業の情報に加えてリーダー11a~11fによって個体情報が検知された時刻が記録される。また、作業者や作業に用いられた器材や材料などの情報が適宜に加えられてもよい。
【0056】
なお、ここでは、個体情報が検知された際に、個体情報によって器具IDが特定され、各エリアA1~A6で器具に施された作業の情報が器具の作業履歴に加えられることを例示している。しかしながら、特段、言及されない場合において、器具IDに関連付けて、器具IDで特定される器具の作業履歴を記憶する具体的な手段や、セットIDに関連付けて、セットIDで特定される医療器具セットの作業履歴を記憶する具体的な手段はかかる形態に限定されない。例えば、各エリアA1~A6で、作業者が作業の情報を手入力するように構成されていてもよい。
【0057】
手術エリアA1では、例えば、保管されている器具や医療器具セットが手術エリアA1に搬入された際に、リーダー11aによって、個体情報が検知され、器具IDやセットIDが特定される。そして、器具IDやセットIDに関連付けて、搬入された日時や使用された際の情報が記録される。また、手術エリアA1で記憶される作業情報には、例えば、医師などの使用者(作業者)や患者や患者のカルテ番号や手術や診療番号などが含まれていてもよい。これにより、器具や医療器具セットがどのような手術に使われたかの作業履歴がシステム10において記憶される。器具や医療器具セットの作業履歴で追跡可能な情報量が多くなる。また、既存の電子カルテの情報が、手術エリアA1での作業情報としてこのシステム10に取り込まれてもよい。また、器具IDやセットIDが既存の電子カルテに書き込まれてもよい。このように既存の電子カルテと、このシステム10とが連携するようにシステムが相互に構築されてもよい。
【0058】
回収エリアA2には、例えば、手術エリアA1で使用された器具や医療器具セットが持ち込まれる。回収エリアA2では、例えば、リーダー11bによって、個体情報が検知され、器具IDやセットIDが特定される。回収エリアA2で記憶される作業情報には、例えば、回収された日時や作業者IDなどの情報が含まれうる。
【0059】
回収エリアA2では、例えば、医療器具セットに含まれる器具の一覧が表示装置12bに表示されるとよい。そして、リーダー11bによって、医療器具セットに含まれる器具の個体情報が検知しつつ器具が回収されるとよい。そして、医療器具セットに含まれる器具の個体情報が検知されて器具が表示装置12bにおいて特定されるように構成されているとよい。さらに、回収作業において作業者が表示装置12bに表示された器具を指定すると、例えば、当該医療器具セットに含まれる器具の一覧から当該個体情報が検知された器具の表示が暗くなるように構成されていてもよい。
【0060】
この場合、表示装置12bは、例えば、タッチパネルで構成されていてもよい。作業者は表示装置12bの画面において、表示された器具の一覧から回収する器具(換言すると、個体情報で特定された器具)に触れると当該器具の表示が変更されるように構成されていいてもよい。このような処理によって、当該器具が回収されたことが作業者において容易に視認できるようになっていてもよい。そして、手術エリアA1で使用された医療器具セットに含まれる全ての器具が回収エリアA2において回収されることによって、当該医療器具セットの回収が終了する。この際、表示装置12bにおいて、当該医療器具セットの表示が暗く表示されたり、回収終了を意味するアイコンが表示されたりするなどして、当該器具が回収されたことが作業者において容易に視認できるようになっていてもよい。
【0061】
洗浄エリアA3では、例えば、リーダー11cによって、医療器具セットに含まれる器具の個体情報が検知されると、器具IDが特定される。かかる特定された器具IDに関連付けて、洗浄エリアA3での作業情報が記憶されるとよい。洗浄エリアA3での作業情報には、例えば、洗浄に用いられた洗浄機や洗剤など洗浄方法の情報や作業者IDが含まれうる。
【0062】
また、このシステム10では、器具IDと洗浄方法とが予め関連付けて記憶されているとよい。この場合、リーダー11cによって、医療器具セットに含まれる器具の個体情報が検知されると、洗浄エリアA3の表示装置12cにおいて、当該特定された器具IDに基づいて、当該器具に必要な洗浄処理が画面上表示されるように構成されていてもよい。リーダー11cによって器具IDが特定されるので、器具を取り違えて洗浄処理が行われたり、器具を取り違えて作業情報が入力されたりすることが生じにくい。リーダー11cは、例えば、洗浄機に設けられていてもよい。この場合、器具の個体情報を読み取りつつ、洗浄機に器具を投入するようにしてもよい。また、洗浄機に設定された洗浄条件などの情報が、作業情報として記録されるとよい。ここで、洗浄方法には、用手洗浄、単層式自動洗浄、多層式自動洗浄、超音波洗浄、薬品洗浄などが挙げられ、それぞれ所定の洗浄機や洗剤が所定の方法で用いられるとよい。
【0063】
また、手術エリアA1での作業情報として既存の電子カルテの情報が取り込まれてもよい。この場合、患者や手術の情報に関連付けて器具の洗浄方法や滅菌方法が予めマスターデータに記憶されているとよい。手術エリアA1での作業情報に含まれる患者や手術の情報と、マスターデータに基づいて、適宜に、器具に必要な洗浄方法が特定されるように構築されていてもよい。電子カルテの情報に基づいて器具や医療器具セットに特別な洗浄が必要になる場合には、その洗浄方法が特定されるようにシステム10が構築されるとよい。同様に、滅菌エリアA5では、電子カルテの情報に基づいて器具や医療器具セットに特別な滅菌が必要になる場合には、その滅菌方法が特定されるようにシステム10が構築されていてもよい。
【0064】
組立エリアA4では、洗浄された部品から器具が組立てられたり、医療器具セットに含まれる器具が集められて医療器具セットとして一纏めにされたりする。器具が組立てられるときには、必要な潤滑油などが塗布されたりする。この際、例えば、リーダー11dによって、医療器具セットに含まれる器具の個体情報が検知されると、当該器具IDと医療器具セットのセットIDとが特定される。そして、医療器具セットに含まれる器具の一覧が表示される。また、この際、組立エリアA4で施す必要がある組立て作業が画面上表示されるとよい。例えば、器具の組み立ての際に塗布する潤滑油などが予め定められているような場合には、そのことが表示されるように構成されているとよい。組立エリアA4では、器具や医療器具セットは、所定の袋や容器に収容される。その際、包装材や包装方法などが合わせて記録されるとよい。
【0065】
このシステム10では、図5に示されているように、包装タイプのマスターデータが用意されている。このため、包装材や包装方法は、マスターデータを通じて、包装タイプによって特定されてもよい。また、組立エリアA4で、包装材や包装方法が選択的に登録されたときに、作業情報に記録される包装タイプがマスターデータを通じて特定されるように構成されていてもよい。
【0066】
このシステム10では、図3に示されているように、器具IDやセットIDと、組立方法や包装方法の情報とが関連付けられてマスターデータに記憶されている。例えば、組立エリアA4でリーダー11dによって、医療器具セットに含まれる器具の個体情報が検知されると、当該器具IDとセットIDとが特定され、さらにマスターデータから組立工程での組立方法や包装方法などの情報が得られる。このため、組立工程での組立方法や包装方法での誤った作業が行なわれにくい。
【0067】
例えば、組立エリアA4では、医療器具セットに含まれるべき器具が全て含まれていることがチェックされつつ、医療器具セットが包装されるとよい。この際、図2に示されているように、表示装置12dにおいて、医療器具セットに含まれる器具の一覧が表示され、器具が包装されるにリーダー11dによって器具の個体情報を検知しつつ、包装されるとよい。そして、器具の一覧において包装された器具の表示を変化させるとよい。包装された器具の表示が表示装置12dにおいて変化することによって、作業者は、包装されていない器具を容易に確認できる。これによって、医療器具セットに含まれるべき器具が欠落したり、誤って他の器具が医療器具セットに入ったりするのが防止されうる。
【0068】
器具や医療器具セットは、例えば、袋や容器に包装されて密閉される。包装された袋や容器には、袋や容器を識別するための個体情報が付されているとよい。組立エリアA4では、当該袋や容器に付された個体情報と、収容された器具を特定するための器具IDや医療器具セットを特定するためのセットIDが関連付けられて記憶されるとよい。例えば、包装作業において、リーダー11dで、袋や容器に付された個体情報と、袋や容器に収容する器具または医療器具セットの個体情報とを読み取りつつ、当該器具または医療器具セットを袋や容器に収容する。この際、システム10は、袋や容器の個体情報と、収容された器具または医療器具セットの個体情報を関連付けて記憶するとよい。これにより、後工程において、袋や容器に付された個体情報に基づいて、収められた医療器具セットのセットIDや器具の器具IDが特定されうる。また、袋や容器に付された個体情報と、収められた医療器具セットのセットIDや器具の器具IDとが、マスターデータから得られた包装方法に合わない場合には、アラートが出されるように構成されていてもよい。これによって、医療器具や医療器具セットがマスターデータから得られた包装方法とは異なる方法で包装されることが防止されうる。
【0069】
このように組立エリアA4では、例えば、リーダー11cによって読み取られる袋や容器の個体情報に関連付けて、組立エリアA4での作業情報が記憶される。組立エリアA4での作業情報には、袋や容器に収容された器具の器具IDや医療器具セットのセットID、作業者や組立作業においてリーダー11cに個体情報が読み取られた日時、作業者を特定するための作業者IDなどが含まれうる。また、併せて袋や容器の個体情報と、収容された器具または医療器具セットの個体情報が、関連付けて記憶されるとよい。
【0070】
滅菌エリアA5では、器具や医療器具セットは袋や容器などの包装材に収容された状態で取り扱われる。滅菌エリアA5では、例えば、リーダー11eによって、袋や容器に付された個体情報が読み取られる。そして、当該個体情報に基づいて器具や医療器具セットが特定される。そして、当該器具や医療器具セットに予め定められた滅菌処理が施される。
【0071】
この実施形態では、当該器具IDやセットIDに関連付けて滅菌処理が予め記憶されたデータベースが予め用意されている。滅菌エリアA5では、リーダー11eによって、袋や容器に付された個体情報が読み取られ、当該袋や容器に収容された器具の器具IDや医療器具セットのセットIDが特定される。そして、当該器具IDやセットIDに基づいて、滅菌エリアA5での滅菌処理が特定され、表示装置12eにおいて表示されるようにシステム10が構成されているとよい。
【0072】
これにより、袋や容器に収容された器具や医療器具セットに施すべき滅菌処理が、作業者において容易に理解されるようになっているとよい。また、この際、例えば、滅菌エリアA5では、例えば、オートクレーブのような滅菌処理機にリーダー11eがさらに備え付けられているとよい。この場合、リーダー11eで、袋や容器に付された個体情報を読み取ってから滅菌処理機に投入されるように構成されているとよい。これにより、予め定められた滅菌処理の条件(温度や処理時間)で滅菌処理が施されるように構成されているとよい。また、システム10は、リーダー11eによって袋や容器に付された個体情報が読み取られたときに、投入されるべき滅菌処理機や滅菌処理機に設定されている滅菌処理の条件が適当でない場合には、アラームが鳴るように構成されていてもよい。この場合。アラームが鳴ることによって、作業者のミスが抑制される。
【0073】
かかる滅菌エリアA5では、例えば、リーダー11dによって袋や容器に付された個体情報が読み取られる。そして、袋や容器に付された個体情報に関連付けられて器具IDやセットIDが特定される。そして、袋や容器に付された個体情報や器具IDやセットIDに関連付けて滅菌エリアA5での作業情報が記憶される。滅菌エリアA5での作業情報には、例えば、滅菌方法や滅菌処理の条件が含まれていてもよい。具体的には、滅菌処理に用いられた滅菌処理機、滅菌の温度や処理時間などの条件、滅菌処理の終了日時、作業者などの情報がさらに含まれうる。
【0074】
このシステム10では、図6に示されているように、滅菌タイプのマスターデータが用意されている。このため、滅菌方法や滅菌処理の条件などは、マスターデータを通じて、滅菌タイプによって特定されてもよい。あるいは、滅菌エリアA5で、滅菌方法や滅菌処理の条件などが選択的に登録されたときに、マスターデータを通じて作業情報に記録される滅菌タイプが特定されるように構成されていてもよい。
【0075】
保管エリアA6では、滅菌後の器具や医療器具セットが保管されるエリアである。保管エリアA6では、リーダー11fによって、袋や容器に付された個体情報が読み取られる。そして、袋や容器に付された個体情報に関連付けて器具IDやセットIDが特定される。収容された器具の器具IDおよび医療器具セットのセットIDを特定した上で袋や容器を仕分けして適当な場所に保管するとよい。保管エリアA6で記録される作業情報には、例えば、器具や医療器具セットの保管場所などの情報が含まれているとよい。器具や医療器具セットの保管場所が記録されていることによって、器具や医療器具セットの取り出しが容易になる。
【0076】
このように、各エリアA1~A6によって記録される作業情報は、それぞれ記録される項目が異なる。システム10の記憶装置140には、例えば、各エリアA1~A6の作業情報を記憶するための予め定められたフォーマットのテーブルが用意されているとよい。各エリアA1~A6の作業情報は、エリアA1~A6毎にそれぞれ用意されたテーブルの各フィールドにそれぞれ記憶されるとよい。
【0077】
図7は、回収エリアA2での作業情報を記録したテーブル450の例である。図8は、滅菌エリアA5での作業情報を記録したテーブル460の例である。
【0078】
回収エリアA2では、例えば、医療器具セットの器具がばらばらの状態で手術エリアA1から回収される。回収エリアA2では、回収場所および作業者を特定し、リーダー11bで器具に付された個体情報を読み取りつつ、回収するとよい。これにより、図7に示されたテーブル450のように、セットID、器具ID、部品ID、回収場所、作業者、作業日時に関する各欄451~456に情報が入力される。なお、回収エリアA2で記録される作業情報の記録は、図7の例に限定されない。回収エリアA2で記録される作業情報の記録には、さらに詳細な情報が含まれうる。なお、組立エリアA4で記録される作業情報も同様に、セットID、器具ID、部品ID、包装場所、作業者、包装材の個体情報、包装作業日時などの各欄に、情報が入力される。
【0079】
滅菌エリアA5では、例えば、リーダー11eで袋や容器に付与された個体情報が読み取られることによって、袋や容器に収容された医療器具セットのセットIDや器具の器具IDが特定される。そして、滅菌エリアA5では、セットIDや器具IDで特定された医療器具セットや器具に対して必要な滅菌方法や滅菌条件が滅菌処理機に設定される。そして、リーダー11eで袋や容器に付与された個体情報が読みとりつつ、滅菌処理機に医療器具セットや器具をセットするとよい。例えば、滅菌処理では、適切な滅菌が施されたかインジケータが器具や医療器具セットを包装した包装材に取付けられることがある。この場合、インジケータは、所定の条件で色が変化したりする。滅菌エリアA5では、器具や医療器具セットにインジケータが取付けられるとよい。なお、インジケータは組立エリアA4で取り付けられてもよい。また、滅菌処理機から取り出される際も、袋や容器に付与された個体情報がリーダー11eによって読み取られて滅菌処理の終了時刻が記録されるとよい。
【0080】
これにより、図8に示されたテーブル460のように、セットID、器具ID、部品ID、包装タイプ、滅菌タイプ、滅菌保証期間、作業者、作業日時、滅菌の良否に関する各欄461~469に情報が入力される。なお、滅菌エリアA5で記録される作業情報の記録は、図8の例に限定されない。滅菌エリアA5で記録される作業情報の記録には、さらに詳細な情報が含まれうる。滅菌エリアA5での作業情報の記録として、例えば、滅菌処理後のインジケータの画像データが含まれていてもよい。滅菌の良否の欄469は良が「○」,滅菌の良否の欄は不良が「×」などと滅菌の良否判定の結果が記録されるとよい。滅菌の良否判定の結果は、例えば、医療器具セットごとにインジケータによる判定に基づいて判定されてもよい。また、滅菌処理機が正常に動作したことを示す判定に基づいて判定されてもよい。
【0081】
ここで、滅菌保証期間の欄466には、滅菌処理の効果が有効とされる期間が入力される。滅菌処理の滅菌保証期間は、滅菌方法と滅菌条件とから滅菌保証期間が定まるように構成されていてもよい。この場合、滅菌方法と滅菌条件と滅菌保証期間との関係が、システム10のマスターデータとして予め記録されていてもよい。また、滅菌処理の滅菌保証期間は、包装方法と滅菌方法と滅菌条件とから滅菌保証期間が定まるように構成されていてもよい。この場合、包装方法と滅菌方法と滅菌条件と滅菌保証期間との関係が、システム10のマスターデータとして予め記録されているとよい。例えば、包装方法と、滅菌方法と、滅菌条件とが、滅菌エリアA5で入力されると、マスターデータに基づいて滅菌保証期間が入力されるように構成されるとよい。
【0082】
作業日時に関する欄468には、例えば、滅菌処理が終わり滅菌処理機から取り出される際に袋や容器に付与された個体情報がリーダー11eによって読み取られた時の時刻が記録されるとよい。
【0083】
システム10の処理装置100には、各エリアA1~A6でのリーダー11a~11fで読み取られた個体情報および個体情報に関連付けて記憶された作業情報が収集されるように構成されているとよい。これにより、このシステム10で管理される器具や医療器具セットの各エリアA1~A6での情報が収集され、一元管理される。そして、例えば、ある特定の器具がいつどのエリアでどのような作業が施されたかの作業情報が時系列に抽出できる。
【0084】
例えば、システム10は、器具IDに関連付けて、当該器具IDで特定される器具の作業履歴を記憶するように構成されているとよい。システム10は、セットIDに関連付けて、当該セットIDで特定される医療器具セットの作業履歴を記憶するように構成されているとよい。システム10は、各操作端末14a~14fから各エリアA1~A6で記録された作業情報を収集する。これにより、器具IDに関連付けて、当該器具IDで特定される器具の作業履歴がシステム10に記憶される。また、セットIDに関連付けて、当該セットIDで特定される医療器具セットの作業履歴がシステム10に記憶される。これらの情報は、例えば、図2に示された形態では、サーバー20に収集され、記憶されることによって、一元管理されるように構成されていてもよい。
【0085】
システム10は、処理装置100に記憶された作業情報から器具IDに基づいて作業情報を抽出し、作業時刻に基づいて順に並べることによって、器具IDで特定される器具の作業履歴が適宜に得られる。また、処理装置100に記憶された作業情報からセットIDに基づいて作業情報を抽出し、作業時刻に基づいて順に並べることによって、セットIDで特定される医療器具セットの作業履歴が適宜に得られる。
【0086】
図9は、ある器具の作業履歴を抽出したデータテーブルの構成例を示す図である。図9に示されたテーブル470では、器具ID、エリア(エリアID)、作業者(ユーザID)、作業日時、包装方法、滅菌方法、滅菌保証期間の項目471~477が順に抽出されて一覧表が形成されている。医療器具セットについても、図9と同様に作業履歴を抽出することができる。作業履歴の抽出項目は、図9の例に限定されない。作業履歴には、各エリアA1~A6で記録された全ての作業時刻が含まれていてもよい。作業履歴には、各エリアA1~A6で記録された全ての作業時刻が含まれていなくてもよい。例えば、各エリアA1~A6で記録された作業情報のうち、予め定められた一部の作業情報が抽出されるように構成されていてもよい。
【0087】
同じ種類の複数の器具がこのシステム10で管理されている場合は、器具の種類に基づいて、同じ種類の複数の器具の作業履歴を抽出することもできる。図10は、器具の種類に基づいて、同じ種類の複数の器具の作業履歴を抽出したデータテーブルの構成例を示す図である。図10に示されたテーブル480では、例えば、医療器具セットに含まれない単品の医療器具としての複数のクーパーがシステム10で管理されている場合において、複数のクーパーの作業履歴を抽出した抽出結果である。ここでは、3つのクーパー(器具ID:BC1,BC2,BC3)がシステム10に管理されている。図10では、3つのクーパー(器具ID:BC1,BC2,BC3)の作業履歴が抽出されている。図10に示されたテーブル480では、器具ID、器具の種類、エリア(エリアID)、作業者(ユーザID)、作業日時、包装タイプ、滅菌タイプ、滅菌保証期間の項目481~488が順に抽出されて一覧表が形成されている。
【0088】
医療器具および医療器具セットの作業履歴には、器具の滅菌方法と滅菌条件とが含まれているとよい。この場合、滅菌方法と滅菌条件と滅菌保証期間とが関連付けて記憶されているとよい。滅菌保証期間は、滅菌の有効期間とも称される。少なくとも記憶された滅菌方法と滅菌条件とに基づいて、器具または医療器具セットに施された滅菌保証期間が得られるように構成されているとよい。
【0089】
また、包装方法によって、滅菌保証期間が異なる場合がありうる。この場合は、包装方法がさらに考慮されるとよい。ここで、包装方法は、例えば、包装材と、封止方法などで規定される。
【0090】
器具の作業履歴には、器具の包装方法と滅菌方法と滅菌条件とが記憶されてもよい。医療器具セットの作業履歴には、医療器具セットの包装方法と滅菌方法と滅菌条件とが記憶されてもよい。包装方法と滅菌方法と滅菌条件と滅菌保証期間とが関連付けて記憶されてもよい。記憶された包装方法と滅菌方法と滅菌条件とに基づいて、器具または医療器具セットに施された滅菌保証期間が得られるように構成されてもよい。器具の包装方法と滅菌方法と滅菌条件の他にも、滅菌保証期間に影響する項目がある場合(例えば、保存方法など)には、マスターデータにおいて適宜に条件が追加され、そのような項目も加味して滅菌保証期間が得られるように構成されてもよい。
【0091】
器具または医療器具セットの滅菌保証期間の残余期間を算出するように構成されてもよい。例えば、滅菌処理の終了日時を基準として滅菌保証期間を得て、残余期間が算出されるように構成されてもよい。なお、滅菌保証期間の残余期間の算出方法は、適当な方法が採用されてもよい。器具または医療器具セット毎に算出された残余期間を表示装置12に表示するように、さらに構成されてもよい。また、さらに残余期間に基づいて器具または医療器具セットを抽出するように構成されてもよい。この場合、残余期間に基づいて抽出された器具または医療器具セットを表示装置12に表示するようにさらに構成されてもよい。残余期間は、残期間、残存期間などとも称されうる。
【0092】
この場合、算出された滅菌保証期間の残余期間によって、作業者は器具または医療器具セットの滅菌保証期間の残余期間を容易に知ることができる。器具または医療器具セット毎に算出された残余期間が、表示装置12に表示されることによって、作業者は表示装置12において器具や医療器具セットの滅菌保証期間の残余期間を確認することができる。
【0093】
システム10は、例えば、器具や医療器具セットの残余期間が、一覧表として表示装置12に表示されるように構成されていてもよい。システム10は、保管エリアA6で保管されている器具や医療器具セットについて、残余期間ごとに円グラフや棒グラフで表示されるように構成されてもよい。さらに、システム10は、残余期間ごと器具や医療器具セットの一覧表が表示されるように構成されてもよい。システム10は、残余期間が0となり、いわゆる滅菌切れとなった器具や医療器具セットの一覧表が得られるように構成されてもよい。この際、一覧表において、器具や医療器具セットが滅菌切れとなった日が表示されてもよい。これにより、滅菌切れからの経過日数などが分かる。また、残余期間が1月未満の器具や医療器具セットの一覧表が得られるように構成されてもよい。残余期間が1月未満の器具や医療器具セットは、使用されるべき優先度が高い。なお、残余期間が0となり、いわゆる滅菌切れとなった器具や医療器具セットは、再度、滅菌処理が施されるとよい。この場合、システム10は、滅菌切れや滅菌切れアラートを出して再滅菌した器材ごとの再滅菌の回数を集計して予め定められたフォーム(ダッシュボードとも称される)によって、表示装置12a~12gに表示してもよい。ここで、再滅菌が複数回行われる場合は、手術→回収→洗浄→組立→滅菌→保管→再滅菌→保管→再滅菌→のようなフローとなる。この場合、組立後の一回目の滅菌は再滅菌に当たらず、「再滅菌の回数」には含まれない。
【0094】
例えば、システム10は、第3記憶部103に記憶された器具の作業履歴に基づいて、再滅菌された器具を抽出するように構成された第11処理部211を備えているとよい。この場合、第11処理部211は、抽出された器具の再滅菌の回数を得るように構成されているとよい。
【0095】
また、システム10は、第4記憶部104に記憶された医療器具セットの作業履歴に基づいて、再滅菌された医療器具セットを抽出するように構成された第12処理部212を備えていてもよい。この場合、第12処理部212は、抽出された器具の再滅菌の回数を得るように構成されているとよい。
【0096】
ここで、再滅菌された器具や医療器具セットを抽出する処理は、例えば、器具や医療器具セットの作業履歴に基づいて、手術エリアA1で使用されないまま、複数回、所定の期間を空けて滅菌処理が行われている器具や医療器具セットを抽出するように構成されているとよい。また、抽出された器具や医療器具セットの再滅菌の回数が得られた場合、予め定められた回数よりも多く再滅菌されている器具や医療器具セットがさらに抽出されるように構成されていてもよい。
【0097】
これにより、再滅菌の回数によって、器具や医療器具セットがさらに抽出される。再滅菌の回数が予め定められた回数よりも多い器具や医療器具セットが抽出されるので、再滅菌の回数が多い器具や医療器具セットを探す手間が減る。この場合、保管エリアA6で記録される作業情報には、器具や医療器具セットの保管場所の情報が含まれているとよい。この場合、再滅菌の回数が多い器具や医療器具セットを取り出す手間はさらに減る。さらに、再滅菌ばかりされている器具や医療器具セットについては、器具や医療器具セットの数を減らしてもよい。例えば、器具や医療器具セットの種類毎に、再滅菌ばかりされている器具や医療器具セットの割合が算出されるようにしてもよい。さらに、再滅菌ばかりされている器具や医療器具セットの割合に基づいて、器具や医療器具セットの種類毎に、器具や医療器具セットの最適な数が算出されるように構成されていてもよい。
【0098】
ここでは、再滅菌の回数が予め定められた数よりも多い器具や医療器具セットの割合を、「再滅菌割合」という。ここで、予め定められた数はシステム10において予め定められていてもよいし、作業者によって任意に設定されるように構成されていてもよい。予め定められた数が変更されることによって、「再滅菌割合」は、変化する。
【0099】
システム10は、例えば、管理されている器具や医療器具セットの種類毎に、再滅菌割合が高い器具や医療器具セットを抽出するように構成されていてもよい。この場合、システム10は、再滅菌割合が高い順に器具や医療器具セットが抽出されてもよい。また、再滅菌割合が予め定められた割合以上である器具や医療器具セットが抽出されてもよい。
【0100】
また、再滅菌の回数が多い順に器具や医療器具セットが除かれると、再滅菌割合が減る。また、器具や医療器具セットの稼働率が向上したり、再滅菌工数が削減されたりする。
そこで、システム10は、例えば、器具や医療器具セットの種類毎に、再滅菌の回数が多い器具や医療器具セットが除かれた場合について、再滅菌割合を算出するように構成されているとよい。これにより、再滅菌の回数が多い順に器具や医療器具セットを何個減らすと、器具や医療器具セットの稼働率がどのように変化するかをシミュレーションしたデータが、システム10によって提供される。
【0101】
システム10は、再滅菌割合を所定以上とするために、再滅菌の回数が多い器具や医療器具セットをいくつ除くとよいかを算出するように構成されていてもよい。これにより、システム10は、再滅菌割合を予め定められた割合以上にするために、いくつ器具や医療器具セットを減らせばよいかを示すデータが、システム10によって提供される。
【0102】
このように、システム10によれば、器具や医療器具セットの種類毎に、器具や医療器具セットの最適数が得られうる。システム10は、再滅菌の回数が予め定められた数よりも多い器具や医療器具セットを抽出したり、再滅菌の回数が予め定められた数よりも多い器具や医療器具セットの割合を算出したりするように構成されているとよい。そして、実際に、滅菌の回数が多い器具や医療器具セットの数が減らされることによって、器具や医療器具セットの稼働率が向上したり、滅菌ばかりされることによって器具や医療器具セットが劣化するのが防止されたり、再滅菌工数が削減されたりする。
【0103】
また、残余期間に基づいて器具または医療器具セットが抽出されるように構成されることによって、例えば、保管エリアA6において、残余期間が0になっている器具や医療器具セットを抽出することができる。また、保管エリアA6において、手術エリアA1で使用される器具や医療器具セットを選択する際に、残余期間が0になっていない器具や医療器具セットのうち残余期間が短いものから順に取り出すことができる。このように残余期間に基づいて抽出された器具または医療器具セットが表示装置12に表示されることによって、作業者は表示装置12の画面を確認しつつ、器具や医療器具セットを取り出すことができる。これによって、作業者が、器具や医療器具セットを取り違えることを防止できる。さらに、システム10は、保管エリアA6では、器具や医療器具セットを収容した袋や容器の個体情報をリーダー11fで読み取ることによって、作業者が取り出した器具や医療器具セットが適切かを判定するように構成されていてもよい。
【0104】
システム10を構成するコンピュータは1つでもよく、スタンドアローン型のコンピュータに当該システムを構築することもできる。例えば、小規模な病院などでは、手術エリアA1から保管エリアA6までが省スペースに纏められている場合がある。このような場合は、一台のコンピュータにシステム10を構築してもよい。
【0105】
また、このシステム10では、複数の病院で使われる医療器具セットや器具に関する情報を処理装置100に集約するなどして纏めて管理することが可能である。この場合、各病院に手術エリアA1や回収エリアA2などが設置される。システム10では、各エリアA1~A6の操作端末14a~14fや処理装置100は、通信ネットワーク15を通じて双方向通信可能に接続されているとよい。また、クラウドコンピューティング技術により、器具や医療器具セットの作業履歴や器具や医療器具セットの稼働率などが、このシステム10に接続された外部端末21によって利用可能に提供されるとよい。
【0106】
システム10は、通信ネットワーク15を介して接続された外部端末21からの要求に応じて、器具または医療器具セットに施された滅菌保証期間が外部端末21に表示されるように構成されてもよい。これにより、システム10によって管理されている器具または医療器具セットに施された滅菌保証期間を外部端末21で確認することができる。
【0107】
システム10は、通信ネットワーク15を介して接続された外部端末21からの要求に応じて、器具または医療器具セットの滅菌保証期間の残余期間が外部端末21に表示されるように構成されてもよい。これにより、システム10によって管理されている器具または医療器具セットの滅菌保証期間の残余期間を外部端末21で確認することができる。
【0108】
システム10は、通信ネットワーク15を介して接続された外部端末21からの要求に応じて、残余期間に基づいて抽出された器具または医療器具セットが外部端末21に表示されるように構成されてもよい。これにより、システム10によって管理されている器具または医療器具セットのうち、残余期間に基づいて抽出された器具または医療器具セットを外部端末21で確認することができる。
【0109】
この場合、器具や医療器具セットと、器具や医療器具セットの残余期間とを含む一覧表が作成されて、外部端末21に表示されるように構成されていてもよい。例えば、残余期間が0の器具や医療器具セットの一覧表や、残余期間が一週間以内の器具や医療器具セットの一覧表、残余期間が1ヶ月以内の器具や医療器具セットの一覧表が作成されてもよい。また、残余期間が0の器具や医療器具セットの数や割合、残余期間が一週間以内の器具や医療器具セットの数や割合、残余期間が1ヶ月以内の器具や医療器具セットの数や割合が、棒グラフや円グラフで表されたグラフなどが作成されてもよい。また、これらの一覧表やグラフは、例えば、器具や医療器具セットの所属毎に、あるいは、器具や医療器具セットの種類毎に作成されるように構成されていてもよい。また、残余期間が0の器具や医療器具セットの数や割合の推移を示すグラフが作成されるように構成されてもよい。
【0110】
ところで、滅菌エリアA5では、滅菌方法毎に複数台の滅菌装置が用意されている場合がある。滅菌処理は、一回の滅菌に数時間を要する場合がある。また、高圧蒸気滅菌機は、複数の医療器具セットがセットできる専用のトレーを備えている場合がある。また、複数の高圧蒸気滅菌機が、順番に時間をずらして並行して使われている場合がある。これにより、一回の滅菌処理で、複数の医療器具セットを同時に滅菌できるように構成されている。他方で、緊急の手術などの対応で、医療器具セットの滅菌処理を急ぐ場合がある。そのとき、所望する滅菌装置が使えない場合も生じうる。このため、マスターデータで定められた所定の滅菌方法で滅菌を行えない場合が生じうる。
【0111】
他方で、医療器具セットによっては、マスターデータに予め定められた所定の滅菌方法以外の方法で滅菌することが許容される場合もある。例えば、ある特定の医療器具セットに関して、高圧蒸気滅菌機で、120℃、3時間などと定められている場合でも、EOG滅菌が許容される場合がある。ただし、この場合、高圧蒸気滅菌機で3時間行なわれた場合と、EOG滅菌が行なわれた場合とで、滅菌保証期間は異なる場合がある。本発明者は、このような医療現場での状況を鑑み、柔軟な対応が可能なシステムを提供したいと考えている。
【0112】
ここで開示されるシステム10では、包装タイプを特定する情報が予め記憶されている。滅菌タイプを特定する情報が予め記憶されている。さらに包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係が予め記憶されている。このシステム10は、包装タイプを特定する情報と滅菌タイプを特定する情報とを取得する。システム10は、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係に基づいて、滅菌保証期間を得るように構成されている。
【0113】
ここで、包装タイプは、医療器具や医療器具セットを包装する包装材の種類や封止方法などを特定するものである。滅菌タイプは、滅菌方法および滅菌条件を特定するものである。包装タイプや滅菌タイプは、それぞれシステム10に予め記憶されているとよい。例えば、包装タイプや滅菌タイプは、図4または図6に示されているように、マスターデータのようなデータベースに記憶されているとよい。マスターデータは、滅菌方法が高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)であっても、温度や時間などの条件毎に、異なる滅菌タイプとして記憶されているとよい。また、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)の他にも、酸化エチレンガス滅菌やプラズマ滅菌なども、温度や時間などの条件毎に、異なる滅菌タイプとして記憶されているとよい。
【0114】
図11は、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係が記憶されたマスターデータの構成例を示す図である。包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係が記憶されたマスターデータ500は、例えば、図11に示されているように、包装タイプを記憶する欄501と、滅菌タイプを記憶する欄502と、滅菌保証期間を記憶する欄503とを備えている。包装タイプを記憶する欄501には、包装タイプを特定するための情報が記憶されている。滅菌タイプを記憶する欄502には、滅菌タイプを特定するための情報が記憶されている。滅菌保証期間を記憶する欄503には、包装タイプと滅菌タイプとに基づいて予め定められた滅菌保証期間を特定するための情報が記憶されている。
【0115】
このシステム10では、図11に示されているように、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係に基づいて、滅菌保証期間が得られる。このため、医療器具や医療器具セットが、医療器具や医療器具セットのマスターデータなどで予め定められた滅菌タイプで処理されない場合でも、包装タイプと滅菌タイプとから適当な滅菌保証期間を得ることができる。例えば、医療器具や医療器具セットのマスターデータに基づいて、包装タイプと滅菌タイプとを特定して、適当な滅菌保証期間を得ることができる。また、実際に処理された滅菌タイプに基づいて、包装タイプと滅菌タイプとから適当な滅菌保証期間を得ることができる。このように、このシステム10では、医療現場での状況を鑑み、柔軟な対応が可能である。
【0116】
システム10は、器具に一対一で関連付けられた器具IDを記憶していてもよい。また、複数の器具で構成された医療器具セットに一対一で関連付けられたセットIDを記憶していてもよい。さらに、器具IDまたはセットIDに関連付けて、包装タイプを特定する情報と、滅菌タイプを特定する情報とを記憶していてもよい。この場合、器具IDまたはセットIDに関連付けて、包装タイプを特定する情報と、滅菌タイプを特定する情報とが取得され、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係に基づいて、滅菌保証期間が得られる。つまり、器具IDまたはセットIDに基づいて、包装タイプと滅菌タイプとに基づいた滅菌保証期間が得られる。システム10では、例えば、図3および図4に示されているように、器具IDまたはセットIDと、予め定められた包装タイプと、予め定められた滅菌タイプと関連付けて記憶したマスターデータ400,410が記憶されていてもよい。マスターデータに基づいて、包装タイプを特定する情報と滅菌タイプを特定する情報とを取得し、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係に基づいて、滅菌保証期間を得てもよい。
【0117】
この場合、マスターデータに基づいて特定される包装タイプと滅菌タイプとに基づいて、滅菌保証期間が得られる。そして、かかる滅菌保証期間に基づいて、医療器具や医療器具セットが保管され、管理されてもよい。この場合、滅菌処理が施される前、例えば、組立エリアA4で、医療器具や医療器具セットに便宜上の滅菌保証期間を設定することができる。システム10には、器具IDまたはセットIDと、包装タイプと、滅菌タイプとを関連付けて記憶したマスターデータについて、包装タイプまたは滅菌タイプを書き換える処理が含まれていてもよい。この場合、マスターデータに登録された包装タイプまたは滅菌タイプが書き換えられると、器具IDまたはセットIDで特定される医療器具や医療器具セットの基準となる包装タイプや滅菌タイプが変更される。このため、包装タイプおよび滅菌タイプから取得される、医療器具や医療器具セットの基準となる滅菌保証期間が変更される。器具IDまたはセットIDで特定される医療器具や医療器具セットの基準となる包装タイプや滅菌タイプが変更されることによって、滅菌保証期間が変更されるので、器具IDまたはセットIDで特定される医療器具や医療器具セットについて、滅菌保証期間を個々に変更する必要が無くなる。
【0118】
システム10は、セットIDに基づいて、当該セットIDで特定される医療器具セットの滅菌保証期間が得られるように構成されていてもよい。この場合、例えば、リーダー11によって、医療器具セットの個体情報からセットIDが取得され、セットIDで特定される医療器具セットの滅菌保証期間が得られる。また、器具IDに基づいて、当該器具IDで特定される器具の滅菌保証期間が得られるように構成されていてもよい。この場合、例えば、リーダー11によって、医療器具の個体情報から器具IDが取得され、器具IDで特定される医療器具の滅菌保証期間が得られる。
【0119】
システム10は、管理対象となる予め定められた作業を特定する情報が予め記憶されていてもよい。また、システム10は、管理対象となる予め定められた作業の作業情報を含む作業履歴を、医療器具セットを特定するセットIDまたは器具を特定する器具IDに関連付けて記憶してもよい。ここで、管理対象となる作業には、手術、回収、洗浄、組立(包装)、滅菌、保管などの作業が含まれていてもよい。管理対象となる作業は、予め定められているとよい。管理対象となる作業に含まれる作業は、任意に定められる。例えば、組立(包装)、滅菌、保管だけを管理してもよい。
【0120】
システム10は、図示は省略するが、管理対象となる作業を記録したマスターデータを用意してもよい。ここで、管理対象となる作業は、医療器具セットまたは医療器具に対して行なわれる作業である。かかるマスターデータは、作業名を記憶する欄と、作業を特定するための作業IDを記憶する欄とが設けられていてもよい。作業名を記憶する欄には、例えば、手術、回収、洗浄、組立(包装)、滅菌、保管などと記憶されているとよい。作業を特定するための作業IDを記憶する欄には、それぞれの作業を特定するためのIDが付与されているとよい。作業を特定するための作業IDは、手術、回収、洗浄、組立(包装)、滅菌、保管の各作業エリアを特定するIDと同じでもよい。また、管理対象となる作業は、「管理対象工程」としてもよい。また作業を特定するための作業IDは、工程を特定するための工程IDとしてもよい。
【0121】
管理対象となる作業には、包装作業が少なくとも含まれていてもよい。この場合、作業履歴に含まれる包装作業の作業情報には、包装作業が実施された時を特定する情報が含まれていてもよい。システム10は、作業履歴に含まれる直近の包装作業が実施された時に、滅菌保証期間を加算して、当該包装作業に関連付けられた医療器具または医療器具セットの滅菌保証期限を取得してもよい。この場合、例えば、直近の包装作業が実施された時に、滅菌保証期間が加算されて滅菌保証期限が得られる。滅菌作業は、包装作業が実施された後で行なわれるため、実際よりも余裕のある滅菌保証期限が得られる。医療器具または医療器具セットの滅菌保証期限は、包装作業に関する作業情報が作業履歴に記憶された場合に取得されてもよい。この実施形態では、包装作業は、組立エリアA4で実施される組立工程の一部の作業であり、組立作業として管理されていてもよい。このため、ここで言及される「包装作業」は、「組立作業」に適宜に置き換えられうる。
【0122】
作業履歴に含まれる包装作業の作業情報には、包装タイプを特定する情報がさらに含まれていてもよい。システム10は、医療器具または医療器具セットの滅菌保証期間を得る場合に、作業履歴に含まれる直近の包装作業の作業情報から包装タイプを特定する情報を取得してもよい。この場合、作業履歴のうち直近の包装作業の作業情報から包装タイプが得られる。そして、当該包装タイプに基づいて、滅菌保証期間が得られる。このため、包装作業で医療器具または医療器具セットのマスターデータで特定される包装タイプとは異なる包装タイプで包装された場合に、包装作業に応じて適当な滅菌保証期間が得られる。このため、システム10は、実際の包装作業に応じて柔軟に対応できる。
【0123】
システム10は、例えば、包装作業が終了した時に、医療器具セットまたは医療器具の滅菌保証期限が取得される。この場合、包装タイプは、包装作業に関する作業情報に基づいて特定されるとよい。滅菌タイプは、例えば、マスターデータに基づいて特定されるとよい。そして、特定された包装タイプと滅菌タイプとから、マスターデータに記録された包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係に基づいて、滅菌保証期間が得られるとよい。システム10は、包装作業が終了した日時に、当該滅菌保証期間を加算して滅菌保証期限を得てもよい。医療器具セットまたは医療器具は、その後、滅菌処理が施される。実際には、滅菌処理が終了した時点から、滅菌保証期間が設定されるべきであるが、ここでは敢えて、包装作業が終了した時点から滅菌保証期間が加算されて滅菌保証期限が得られている。包装作業が終了した時点は、滅菌処理が終了した時点よりも前であるため、ここで得られた滅菌保証期限は、現実の滅菌保証期限よりも余裕があり、安全性は、より確実に保証されうる。このように、システム10は、敢えて、包装作業が終了した時点から滅菌保証期間が加算されて得られる滅菌保証期限を設定することができる。
【0124】
システム10では、管理対象となる予め定められた作業には、滅菌作業が含まれていてもよい。作業履歴に含まれる滅菌作業の作業情報には、滅菌作業が実施された時を特定する情報が含まれていてもよい。システム10は、作業履歴に含まれる直近の滅菌作業が実施された時に、滅菌保証期間を加算して、当該滅菌作業に関連付けられた医療器具または医療器具セットの滅菌保証期限を取得するように構成されていてもよい。この場合、実際の作業に応じた、適当な滅菌保証期限が、医療器具または医療器具セットが得られる。この場合、作業履歴に含まれる直近の包装作業が実施された時に、滅菌保証期間を加算して得られる滅菌保証期限とは、別に、第2の滅菌保証期限として、作業履歴に含まれる直近の滅菌作業が実施された時に、滅菌保証期間を加算した滅菌保証期限が取得されてもよい。
【0125】
また、作業履歴に含まれる滅菌作業の作業情報には、滅菌タイプを特定する情報がさらに含まれていてもよい。システム10は、医療器具または医療器具セットの滅菌保証期間を得る場合に、作業履歴に含まれる直近の滅菌作業の作業情報から滅菌タイプを特定する情報を取得してもよい。このシステム10は、実際の滅菌作業に応じて適当な滅菌保証期間が得られる。このため、実際の滅菌作業に応じて柔軟に対応できる。
【0126】
さらに、システム10は、印刷機に接続可能であってもよい。システム10は、印刷機が滅菌保証期限を含む情報Aを印刷するように構成されていてもよい。例えば、図2に示されているように、印刷機13は、組立エリアA4に配置されていてもよい。この場合、組立エリアA4で、滅菌保証期限を含む情報Aが印刷される。例えば、組立エリアA4では、医療器具セットは予め定められた包装材に包装される。ここで開示されたシステム10は、敢えて、包装作業が終了した時点から滅菌保証期間が加算されて得られる滅菌保証期限を設定することができる。そして、包装作業が終了した時点から滅菌保証期間が加算されて得られた滅菌保証期限を含む情報Aが印刷される。滅菌保証期限を含む情報Aは、例えば、包装材に貼り付けることができるラベルに印刷されるとよい。そして、包装された医療器具セットに当該滅菌保証期限を含む情報Aが印刷されたラベルが貼り付けられるとよい。これによって、当該ラベルに印刷された情報Aに基づいて、包装された医療器具セットの滅菌保証期限が得られる。ここでは、印刷機によって印刷される情報を、特に他の情報と区別するため、特に「情報A」と称している。かかる情報Aには、上述のように、包装された医療器具または医療器具セットの「滅菌保証期限」が含まれているとよい。印刷される情報Aには、滅菌保証期限を特定するための情報が含まれているとよい。例えば、「滅菌保証期限」が可読可能な文字が印刷されてもよい。また、「滅菌保証期限」は、リーダー11で読み取り可能な二次元シンボルで印刷されてもよい。
【0127】
例えば、情報Aには、当該滅菌保証期限が設定された医療器具または医療器具セットを特定する情報が含まれていてもよい。この場合、情報Aに基づいて、包装材で包装された医療器具または医療器具セットが特定される。また、情報Aには、包装タイプを特定する情報が含まれていてもよい。この場合、情報Aに基づいて、包装タイプを特定することができる。さらに、情報Aには、滅菌タイプを特定する情報が含まれていてもよい。この場合、情報Aに基づいて、滅菌タイプを特定することができる。また、情報Aには、医療器具または医療器具セットを包装した包装材を特定する個体情報が含まれていてもよい。例えば、「ラベルに印刷される情報Aには、医療器具セットの名称」、「滅菌タイプ」、「滅菌保証期限」、「包装材を特定する個体情報」、「保管場所」などを特定する項目が含まれているとよい。「医療器具セットの名称」、「滅菌タイプ」および「滅菌保証期限」は、例えば、可読可能な文字でもよい。「包装材を特定する個体情報」は、リーダー11で読み取り可能な二次元シンボルでもよい。
【0128】
図2に示された形態では、印刷機13は、組立エリアA4に配置されている。この場合、印刷機13で印刷される滅菌タイプは、セットIDまたは器具IDに関連付けて、マスターデータに記憶された滅菌タイプでありうる。このため、例えば、印刷機13で印刷された情報Aに基づいて、マスターデータに記憶された滅菌タイプが把握されうる。この場合、滅菌エリアA5で作業するユーザーにおいて、マスターデータに記憶された滅菌タイプを把握することが容易になる。
【0129】
システム10は、今日の日付を特定する情報を取得し、今日の日付を特定する情報と、滅菌保証期限とに基づいて、滅菌保証の残余期間を得るように構成されていてもよい。今日の日付を特定する情報は、コンピュータで日付や時間を取得する公知の手法が採用されうる。滅菌保証期限については、包装作業が終了した時点から滅菌保証期間が加算されて得られる滅菌保証期限が採用されてもよい。この場合、包装作業が終了した時点から得られた滅菌保証期限に基づいて、滅菌保証の残余期間が得られる。当該残余期間は、包装作業が終了した時点から得られた滅菌保証期限に基づいているので、実際には余裕のある期限を設定することができる。また、滅菌保証期限については、滅菌作業が終了した時点から滅菌保証期間が加算されて得られる滅菌保証期限が採用されてもよい。この場合、滅菌作業が終了した時点から得られた滅菌保証期限に基づいて、滅菌保証の残余期間が得られるので、より正確な滅菌保証の残余期間が設定されうる。
【0130】
システム10は、器具IDに基づいて、器具IDで特定される器具の滅菌保証の残余期間を得るように構成されていてもよい。また、システム10は、セットIDに基づいて、セットIDで特定される医療器具セットの滅菌保証の残余期間を得るように構成されていてもよい。この場合、システム10は、例えば、リーダー11で器具IDやセットIDが取得されたときに、医療器具または医療器具セットの滅菌保証の残余期間が得られる。
【0131】
システム10は、滅菌保証の残余期間に基づいて、器具IDまたはセットIDを抽出してもよい。この場合、残余期間切れ、残余期間1週間など、滅菌保証の残余期間に基づいて、医療器具や医療器具セットが特定される。
【0132】
システム10は、表示装置12が接続可能である。システム10は、接続された表示装置12が、滅菌保証の残余期間に基づいて抽出された器具または医療器具セットを表示するように構成されていてもよい。また、システム10は、接続された表示装置12が、器具または医療器具セットについて滅菌保証の残余期間を表示するように構成されていてもよい。
【0133】
システム10は、医療器具または医療器具セットに包装作業が実施された時と、滅菌保証期間とに基づいて滅菌保証期限を取得し、当該滅菌保証期限に基づいて、予め定められた条件の器具IDまたはセットIDを抽出するように構成されていてもよい。つまり、包装作業が実施された時と、滅菌保証期間とに基づいて滅菌保証期限を設定するという考え方である。
【0134】
この場合、システム10は、器具IDまたはセットIDに関連付けて、医療器具または医療器具セットに設定された滅菌保証期間を記憶していてもよい。例えば、滅菌保証期間は、上述のように、包装タイプと滅菌タイプとから導かれたものが記憶されてもよい。また、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係が予め定められていない場合には、滅菌保証期間は、器具IDまたはセットIDに関連付けて、医療器具または医療器具セット毎に予め定められているとよい。器具IDまたはセットIDに関連付けて、滅菌保証期間を定めたマスターデータが用意されていてもよい。また、器具IDまたはセットIDに関連付けて、医療器具または医療器具セットに包装作業が実施された時を記憶してもよい。包装作業が実施された時は、例えば、医療器具または医療器具セットの作業履歴から取得されてもよい。
【0135】
システム10は、滅菌保証期限が過ぎた器具IDまたはセットIDを抽出するように構成されていてもよい。システム10は、滅菌保証期限までの残りの期間が、予め定められた期間内である器具IDまたはセットIDを抽出するように構成されていてもよい。システム10は、表示装置12が接続可能であり、抽出された器具IDまたはセットIDによって特定される医療器具または医療器具セットを、表示装置12が表示するように構成されていてもよい。この場合、表示装置12は、医療器具または医療器具セットの画像や、医療器具または医療器具セットの所属などの情報を合わせて表示装置12に表示してもよい。
【0136】
システム10は、滅菌保証期限が過ぎた器具IDまたはセットIDを抽出し、抽出された器具IDまたはセットIDによって特定される医療器具または医療器具セットに対して、予め定められた再滅菌処理のアラートを、表示装置12が表示するように構成されていてもよい。再滅菌処理のアラートは、医療器具または医療器具セットの画像や、医療器具または医療器具セットの所属などの情報を合わせて、再滅菌処理の要否が表示されるように構成されてもよい。また、例えば、システム10は、器具IDまたはセットIDによって、医療器具または医療器具セットが特定された場合に、当該医療器具または医療器具セットが、滅菌保証期限が過ぎているかを判定するように構成されていてもよい。さらに、システム10は、医療器具または医療器具セットが、滅菌保証期限が過ぎている場合に、再滅菌処理のアラートが表示装置12によって表示されるように構成されていてもよい。また、医療器具または医療器具セットが、滅菌保証期限が過ぎている場合には、再滅菌処理が必要な医療器具または医療器具セットのリストに加えられるように構成されてもよい。再滅菌処理のアラートには、ユーザーが、医療器具または医療器具セットが、滅菌保証期限が過ぎていることを認識できる表示が含まれる。再滅菌処理のアラートの方法は、特に言及されない限りにおいて、限定されない。
【0137】
システム10は、医療器具または医療器具セットに施される予め定められた管理対象工程の作業履歴を、医療器具セットを特定するセットIDまたは器具を特定する器具IDに関連付けて記憶していてもよい。ここで、管理対象工程を定めるためのマスターデータが用意されてもよい。管理対象工程を定めるためのマスターデータは、上述したように、管理対象となる作業を記録したマスターデータを利用してもよい。管理対象工程を定めるためのマスターデータには、手術、回収、洗浄、組立(包装)、滅菌、保管などの各工程と、工程を特定するためのIDとが関連付けられて記憶されているとよい。
【0138】
管理対象工程には、洗浄工程と、組立工程と、滅菌工程とを少なくとも含まれていてもよい。そして、システム10は、作業履歴に基づいて、抽出された器具IDまたはセットIDによって特定される医療器具または医療器具セットが、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数をカウントするように構成されてもよい。この場合、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数は、再滅菌回数と同義ある。この場合、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数は、滅菌工程後に、保管工程に進んだものの一度も洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数であり、連続して再滅菌となった回数を意味する。再滅菌処理では、医療器具または医療器具セットは、手術工程~洗浄工程を経ずに、保管エリアA6から組立エリアA4(図2参照)に回送され、滅菌エリアA5で滅菌される。ここでは、かかる再滅菌処理の回数がカウントされる。再滅菌処理の回数がカウントされることで、再滅菌処理の回数が多い、医療器具または医療器具セットを抽出できる。
【0139】
ただし、滅菌工程で、滅菌の良否判定の結果が「不良」である場合には、再滅菌処理となるが、この場合は、単に滅菌処理のやり直しであり、「再滅菌処理」と区別され、「再滅菌処理の回数」にカウントされない。システム10では、滅菌の良否判定の結果が「不良」であることは、滅菌エリアA5での作業情報の記録として、例えば、滅菌の良否判定の結果が記録される。滅菌工程で、滅菌の良否判定の結果が「不良」である場合には、組立工程に回送される。このため、滅菌工程後に、保管工程に進まない。システム10では、「滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ」か否かが判定される。再滅菌処理の回数は、「滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ」か否かが判定され、「進んだ」と判定されることによって、カウントされる。このため、例えば、滅菌の良否判定の結果が「不良」である場合、即ち、滅菌処理のやり直しは、滅菌工程後に、保管工程を経ずに組立工程に進む。このため、滅菌処理のやり直しは、再滅菌処理の回数にカウントされない。滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだか否かの判定は、医療器具または医療器具セットの作業履歴に基づいて、種々の方法が採用されうる。ここでは、例えば、実質的に、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだか否かが判定され、それに基づいて、再滅菌処理の回数がカウントされているとよい。これにより、医療器具または医療器具セットが、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに包装工程および滅菌工程に進んだ回数をカウントする処理が、実現されうる。
【0140】
また、システム10は、「滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数」は、例えば、保管工程後に洗浄工程を経て組立工程に進んだ場合に、0にリセットされるとよい。保管工程後に洗浄工程を経て組立工程に進んだか否かは、医療器具または医療器具セットの作業履歴に基づいて判定されるとよい。例えば、システム10は、手術工程または洗浄工程を経て組立工程に進んだか否かを判定してもよい。そして、手術工程または洗浄工程を経て組立工程に進んだと判定された場合に、再滅菌処理の回数を0にリセットするとよい。滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経た場合に、再滅菌処理の回数を0にする。これにより、再滅菌処理が繰り返された回数が再滅菌処理の回数としてカウントされる。
【0141】
システム10は、再滅菌処理の回数が予め定められた回数を超えた医療器具または医療器具セットを抽出し、当該医療器具または医療器具セットについて、予め定められたアラート処理が実行されるように構成されていてもよい。ここで、予め定められたアラート処理は、例えば、抽出された医療器具または医療器具セットのリストを表示装置12に表示させる処理であり得る。また、例えば、システム10において、ユーザーによって、抽出された医療器具または医療器具セットが選択された際に、再滅菌処理の回数が予め定められた回数を超えていることを表示装置12が表示するように構成されていてもよい。アラート処理は、ユーザーによって、抽出された医療器具または医療器具セットが選択された際に、予め定められた警告音を鳴らすことなどでもよい。なお、アラート処理については、ここで言及されるものに限定されない。
【0142】
図15は、再滅菌となった回数を記録するマスターデータの構成例を示す図である。マスターデータ600は、図15に示されているように、器具IDまたはセットIDと、包装材の個体情報と、連続して再滅菌となった回数と、滅菌保証期限1と、滅菌保証期限2とを記録する欄601~605を備えている。器具IDまたはセットIDを記憶する欄601には、システム10に登録されている医療器具または医療器具セットの器具IDまたはセットIDが記録される。包装材の個体情報を記憶する欄602には、直近の組立工程で包装された包装材の個体情報が記憶される。この欄602の値は、組立工程の作業情報が記録された時に更新される。滅菌保証期限1には、直近の組立工程の作業終了日時に滅菌保証期間を加算した日が記憶される。滅菌保証期限2には、直近の滅菌工程のうち、滅菌が「良」と判定された作業終了日時に滅菌保証期間を加算した日が記憶される。
【0143】
かかるマスターデータ600によれば、医療器具または医療器具セットに関して、直近の組立工程で包装された包装材の個体情報、再滅菌回数、直近の組立工程の作業終了日時に滅菌保証期間を加算した第1滅菌保証期限、直近の滅菌工程のうち、滅菌が「良」と判定された作業終了日時に滅菌保証期間を加算した第2滅菌保証期限を、それぞれ管理することが容易になる。なお、これらの情報は、専用のマスターデータを用意せず、他のマスターデータや作業履歴から必要な情報を引用して、都度導き出されるようにしてもよい。
【0144】
システム10は、上述したように印刷機13に接続可能であり、滅菌保証期限を含む情報を印刷機13が印刷するように構成されていてもよい。また、システム10は、器具IDまたはセットIDに関連付けて、滅菌保証期限を含む情報を印刷機13が印刷するか否かが設定されていてもよい。例えば、図4に示されているように、医療器具セットに関連付けて登録されたマスターデータにおいて、印刷機13が印刷するか否かを設定する欄419が設けてもよい。システム10は、かかる医療器具セットに関連付けて登録されたマスターデータを参照し、医療器具セットに関して印刷機13が印刷する要否を判定してもよい。この場合、システム10は、刷機13による印刷が「○:要」と設定された医療器具セットについて、滅菌保証期限を含む情報が適宜に印刷機13によって印刷されるように構成されているとよい。
【0145】
システム10は、作業履歴に基づいて、抽出された器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットが、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数が予め定められた回数を超えた場合に、医療器具または医療器具セットに対して、滅菌保証期限を含む情報を印刷機13が印刷するか否かの設定をする処理が実行されるように構成されていてもよい。滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数、つまり、連続して再滅菌となった回数が、予め定められた回数を超えた場合には、滅菌保証期限を含む情報を印刷するか否かがその段階で設定できるようになる。この際、滅菌保証期限を含む情報を印刷しないと設定されると、当該医療器具または医療器具セットについて、滅菌保証期限を含む情報が印刷されなくなる。このため、印刷物に基づいた管理(例えば、棚卸し)が行なわれる対象から、当該医療器具または医療器具セットが外れる。当該医療器具または医療器具セットは、連続して再滅菌される対象から外れる。これにより、連続して再滅菌される医療器具または医療器具セットの数を減らすことができ、再滅菌処理の回数が減る。また医療器具または医療器具セットの管理コストが低減する。
【0146】
また、システム10は、作業履歴に基づいて、抽出された前記器具IDまたは前記セットIDによって特定される医療器具または医療器具セットが、滅菌工程後に、保管工程に進み、その後、洗浄工程を経ずに組立工程および滅菌工程に進んだ回数が予め定められた回数を超えた器具または医療器具セットについては、滅菌保証期限を含む情報を印刷機13が印刷しないように設定されてもよい。この場合、連続して再滅菌となった回数が、予め定められた回数を超えた場合には、滅菌保証期限を含む情報を印刷しないと設定される。このため、人為的な判断を要せず、当該医療器具または医療器具セットが、連続して再滅菌される対象から外れる。これにより、連続して再滅菌される医療器具または医療器具セットの数を減らすことができ、再滅菌処理の回数が減る。医療器具または医療器具セットの管理コストが低減する。なお、医療器具または医療器具セットは、再滅菌される対象から外れてもシステム10で管理されうる。システム10は、これらの医療器具または医療器具セットの滅菌保証期限を、そのまま維持している。これらの医療器具または医療器具セットは、システム10において滅菌切れとして把握されうる。このため、再滅菌されずに手術工程に用いられることは防止される。
【0147】
システム10は、組立工程が終了した場合に、滅菌保証期限を含む情報Aを印刷機13が印刷するように設定された、器具または医療器具セットに対して、情報が印刷されるように構成されてもよい。この場合、システム10は、包装作業が終了した日時に、当該滅菌保証期間を加算して滅菌保証期限を得る。そして、当該滅菌保証期限を含む情報Aを印刷機13が印刷するように設定されているとよい。印刷機13で印刷される印刷物は、医療器具または医療器具セットを包装する包装材に貼り付けることができるラベルでありうる。このシステム10では、組立工程が終了した場合に、かかるラベルを印刷機13が印刷される。ラベルは、滅菌保証期限を含む情報Aが印刷されている。当該ラベルは、組立エリアA4で作業者によって、医療器具または医療器具セットを包装する包装材に貼り付けられるとよい。組立工程が終了した場合にラベルが印刷されるので、作業者は印刷されたラベルを医療器具または医療器具セットを包装した包装材に貼る一連の作業が行える。このため、作業者によって異なる医療器具または医療器具セットに異なるラベルが貼られるミスが抑制される。また、組立エリアA4では、印刷機13はリーダー11dに付随していてもよい。この場合、システム10は、リーダー11dが医療器具または医療器具セットを包んだ包装材に付された個体情報を読み取ったときに、作業履歴に包装作業が終了した日時が記録されるとともに、印刷機13がラベルを印刷するように構成されていてもよい。
【0148】
組立エリアA4は、医療器具または医療器具セットを搬送する作業ラインを備えていてもよい。この場合、リーダー11dが医療器具または医療器具セットを包んだ包装材に付された個体情報を読み取る作業と、印刷されたラベルを医療器具または医療器具セットを包んだ包装材に貼り付ける作業を、医療器具または医療器具セットを搬送するラインで自動化されてもよい。この場合、組立工程が終了した後、印刷されたラベルが、医療器具または医療器具セットを包装した包装材に貼られる一連の作業に人が介在しないので人為的なミスが抑制される。
【0149】
次に、このシステム10を具現化する画面デザインの一例を説明する。
【0150】
図12は、医療器具セットのマスターデータを登録するための登録画面の一例を示す図である。図12に示されているように、医療器具セットのマスターデータを登録するための登録画面700は、登録された医療器具セットの画像を表示する領域701、所属(診療科)が入力される領域702,医療器具セット名が入力される領域703,所属(部門)が入力される領域704,包装タイプが入力される領域705,滅菌タイプが入力される領域706,保管場所が入力される領域707,滅菌切れアラートが設定される領域708,および、医療器具セットを構成する器具の点数を入力する領域709などが用意されている。この実施形態では、滅菌切れアラートが設定される領域708は、滅菌切れ,(滅菌切れまで)1週間,(滅菌切れまで)1ヶ月でのアラートの要否を設定する各領域708a~708cが用意されている。また、登録画面700には、構成品を登録するボタン721が用意されている。かかるボタン721が押されると、医療器具セットの構成品として、医療器具や部品を登録するための画面が表示されるように構成されている。さらに登録画面には、登録ボタン722が用意されている。登録ボタン722が押されると、入力された情報が登録されるように構成されている。また、図12に示された登録画面700には、組立時や、滅菌タイプ、ラベル印刷のチェックアイコンが並べられた領域730が設けられている。さらに、ダブルチェックを行なうためのアイコンが並べられる領域732が設定されていてもよい。図12に示された登録画面700は、医療器具セットの作業確認画面としても利用されうる。
【0151】
図13は、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係を登録するための登録画面の一例を示す図である。図13に示されているように、包装タイプと滅菌タイプと滅菌保証期間との関係を登録するための登録画面740では、例えば、包装タイプを登録する画面740aに付随して、滅菌タイプと滅菌保証期間との関係を登録するためのダイアログボックス740bが出現するように構成されている。包装タイプを登録する画面740aには、「パック」、「不織布」、「コンテナ」、「パック+不織布」などの包装の種類を選択する領域742が用意されている。かかる領域742で選択された包装の種類が、隣接する包装の種類の欄743が入力される。さらに、包装の色などが選択される領域744が設定できるように構成されている。つまり、医療器具や医療器具セットは、人が取り間違えないことが求められる。このシステム10は、包装タイプにさらに包装の色を設定できるように構成されている。さらに、それに付随して、滅菌タイプ毎に滅菌保証期間を設定するためのダイアログボックス740bが出現するように構成されている。当該ダイアログボックス740bは、滅菌タイプ毎に、滅菌保証期間が設定できるように構成されている。
【0152】
図14は、滅菌切れセットを示す画面の一例を示す図である。図14に示されているように、滅菌切れの医療器具セットの数761、1週間以内に滅菌切れになる医療器具セットの数762、1ヶ月以内に滅菌切れになる医療器具セットの数763が、順に表示されるように構成されていてもよい。また、図14に示されているように、滅菌切れになった医療器具セットの所属先の割合が、円グラフ764で表示されてもよい。また、予め定められた種類毎に、滅菌切れとなった医療器具セットの一覧765,766が表示されてもよい。また、登録された所属の一覧767は、各登録された所属がアイコンになっており、それぞれ登録された所属名のアイコンをクリックすると、所属毎の表示に切り替わるようにデザインされている。ここでは、滅菌切れの医療器具セットの数761、1週間以内に滅菌切れになる医療器具セットの数762、1ヶ月以内に滅菌切れになる医療器具セットの数763が表示されるようになっているが、滅菌切れになる医療器具セットの数を表示させるタイミングの設定は、1週間以内とするか、1ヶ月以内とするかなどの改変は、ユーザーによって行えるように構成されていてもよい。なお、図12図14は、各画面の概略を説明するものである。詳細な図示は省略するが、図12~14に示す画面には、適宜に各欄を説明する文字が付加されていてもよい。
【0153】
このようにこのシステム10では、包装タイプと滅菌タイプとが組み合わされて滅菌保証期限が設定される。その上で、滅菌保証期限切れの判断が可能になる。このため、条件に応じた滅菌保証期限の管理が容易になる。また、ユーザーが設定したタイミングで滅菌保証期限切れのアラートを表示させることができる。このため、システム10を通じて、滅菌保証期限切れの医療器具および医療器具セットを把握することができる。このため、滅菌保証期限切れの医療器具および医療器具セットを把握するための棚卸し作業が簡素化できる。
【0154】
以上、システム10の画面デザインの一例を示したが、システム10の画面デザインは、かかる形態に限定されない。
【0155】
ここで、このシステム10では、上述した各種情報を記憶する処理や、その他の処理は、それぞれ処理装置100と記憶装置120との協働により実現される。また、システム10は、各種情報を記憶する処理や、その他の処理を処理装置100と記憶装置120によって実現するための、処理モジュール(プログラム)を備えているとよい。かかるプログラムは、例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)に記憶されていてもよい。例えば、システム10のプログラムは、記憶装置120に記憶されており、適宜に処理装置100で実行されるように構成されていてもよい。
【0156】
このようにシステム10は、システム10で提供しうる種々のデータが、通信ネットワーク15を介して接続された操作端末14gからの要求に応じて、操作端末14gの表示装置12gに表示されるように構成されうる。システム10で提供しうる種々のデータは、ここで例示されるものに限らない。システム10の記憶装置に記憶された情報、システム10の各種処理によって演算あるいは抽出された情報、あるいは、作成されたグラフや一覧表は、システム10で提供しうるデータになり得る。
【0157】
以上の通りに、ここで開示される医療器具セットの管理システムの一実施形態を種々説明したが、ここで開示される医療器具セットの管理システムは、上述した実施形態に限定されない。また、ここで開示される医療器具セットの管理システムは、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【符号の説明】
【0158】
10 医療器具セットの管理システム
11a-11f リーダー
12a-12g 表示装置
13 印刷機
14a-14g 操作端末
15 通信ネットワーク
20 サーバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15