(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】光ファイバのガラス偏心測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20240311BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01M11/00 G
G01B11/00 D
(21)【出願番号】P 2019550482
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2018040643
(87)【国際公開番号】W WO2019088216
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2017211691
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】耕田 浩
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-5504(JP,A)
【文献】特開平10-10005(JP,A)
【文献】特表平10-508946(JP,A)
【文献】特開平4-315939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M11/00-11/02
G01B11/00
G02B6/00
G02N21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条のガラスに被覆が施された光ファイバの側面に光を照射する照射部と、
前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光を受光する受光部と、を備え、
前記受光部で受光された光の明暗のパターンにより、前記光ファイバにおける前記ガラスの偏心を測定する、ガラス偏心測定装置であって、
前記光ファイバの周囲に、前記照射部と前記受光部とからなる組を三組以上有し、
前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる方向に前記組がそれぞれ配置されており、
前記光ファイバを挟
み、前記光ファイバの軸方向における位置が同じで、且つ対向する位置に、それぞれが前記照射部の一つとなる第一の照射部と第二の照射部とが配置されている、
光ファイバのガラス偏心測定装置。
【請求項2】
前記組が、前記光ファイバを中心とする円周上で等角度となる方向にそれぞれ配置されている、
請求項1に記載の光ファイバのガラス偏心測定装置。
【請求項3】
前記第一の照射部および前記第二の照射部は、それぞれ発光部である、
請求項1または請求項2に記載の光ファイバのガラス偏心測定装置。
【請求項4】
前記第一の照射部は、発光部であり、
前記第二の照射部は、前記発光部から照射された光を反射する反射ミラーであり、前記反射ミラーによって反射された光を照射光として、当該照射光が前記光ファイバの側面に照射される、
請求項1または請求項2に記載の光ファイバのガラス偏心測定装置。
【請求項5】
前記光ファイバを中心とする円周上における、前記第二の照射部に対向する位置に、さらに前記光ファイバを中心とする円周に沿った円弧状の反射部を備え、
それぞれが前記受光部の一つとなる第一の受光部と第二の受光部とが、前記光ファイバを中心とする円周上の同じ角度位置で前記光ファイバの軸方向に沿って並んで配置されており、
前記第一の受光部は、前記第一の照射部から直接前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光を受光する受光部であり、
前記第二の受光部は、前記第二の照射部から照射された光が前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折し、前記反射部によってさらに反射された光を受光する受光部である、
請求項3または請求項4に記載の光ファイバのガラス偏心測定装置。
【請求項6】
線条のガラスに被覆が施された光ファイバの側面に、前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる三方向以上から光を照射する照射工程と、
前記三方向以上から前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光する受光工程と、
前記受光したそれぞれの光の明暗のパターンにより、前記光ファイバにおける前記ガラスの偏心を測定する測定工程と、
を含み、
前記照射工程は、
前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる方向に配置された二つの第一の照射部と、前記光ファイバを挟
み、前記光ファイバの軸方向における位置が同じで、且つ対向する位置に配置された二つの第二の照射部とから、前記光ファイバの側面にそれぞれ光が照射されることにより、
前記光ファイバの側面に光を照射する工程である、光ファイバのガラス偏心測定方法。
【請求項7】
前記照射工程は、前記光ファイバを中心とする円周上で等角度となる三方向以上から光を照射する、請求項6に記載の光ファイバのガラス偏心測定方法。
【請求項8】
前記第一の照射部および前記第二の照射部は、それぞれ発光部であり、
前記受光工程は、
前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光する、
請求項6または請求項7に記載の光ファイバのガラス偏心測定方法。
【請求項9】
前記第一の照射部は、発光部であり、
前記第二の照射部は、前記発光部から照射された光を反射する反射ミラーであり、
前記受光工程は、
前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光する、
請求項6または請求項7に記載の光ファイバのガラス偏心測定方法。
【請求項10】
前記受光工程は、
前記二つの第一の照射部から直接前記光ファイバの側面にそれぞれ照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光する二つの第一の受光部と、
前記二つの第二の照射部から前記光ファイバの側面にそれぞれ照射されて散乱、および/または屈折し、前記光ファイバを中心とする円周上における、前記第二の照射部に対向する位置にそれぞれ配置され前記光ファイバを中心とする円周に沿った円弧状の二つの反射部によってさらに反射された光をそれぞれ受光する二つの第二の受光部と、
によってそれぞれ受光し、
前記第一の受光部と前記第二の受光部とが、前記光ファイバを中心とする円周上のそれぞれ同じ角度位置で前記光ファイバの軸方向に沿って並んで配置されている、
請求項8または請求項9に記載の光ファイバのガラス偏心測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバのガラス偏心測定装置および測定方法に関する。
本出願は、2017年11月1日出願の日本出願2017-211691号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4には、従来の技術として、線引きされる被覆光ファイバの側面にレーザ光源からのレーザビームを照射し、その前方散乱光パターンを検出することにより偏肉を測定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開平4-315939号公報
【文献】日本国特開平4-319642号公報
【文献】日本国特開平5-107046号公報
【文献】日本国特開平5-87681号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る光ファイバのガラス偏心測定装置は、
線条のガラスに被覆が施された光ファイバの側面に光を照射する照射部と、
前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光を受光する受光部と、を備え、
前記受光部で受光された光の明暗のパターンにより、前記光ファイバにおける前記ガラスの偏心を測定する、ガラス偏心測定装置であって、
前記光ファイバの周囲に、前記照射部と前記受光部とからなる組を三組以上有し、
前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる方向に前記組がそれぞれ配置されている。
【0005】
また、本開示の一態様に係る光ファイバのガラス偏心測定方法は、
線条のガラスに被覆が施された光ファイバの側面に、前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる三方向以上から光を照射する照射工程と、
前記三方向以上から前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光する受光工程と、
前記受光したそれぞれの光の明暗のパターンにより、前記光ファイバにおける前記ガラスの偏心を測定する測定工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】光ファイバの線引装置の一例を示す図である。
【
図2】第一実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置の概略を説明する図である。
【
図3A】第二実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置におけるX軸方向に配置された測定部材の組を示す図である。
【
図3B】第二実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置におけるY軸方向に配置された測定部材の組を示す図である。
【
図5A】第三実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置におけるX軸方向に配置された測定部材の組を示す図である。
【
図5B】第三実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置におけるY軸方向に配置された測定部材の組を示す図である。
【
図7】従来の光ファイバのガラス偏心測定装置の概略を説明する図である。
【
図8】
図7のガラス偏心測定装置において、被覆ガラスファイバに入射した光が屈折する様子を示す図である。
【
図9】第二実施形態のガラス偏心測定装置および第三実施形態のガラス偏心測定装置において、被覆ガラスファイバに入射した光が屈折する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
例えば上記特許文献1~4の偏肉測定方法を用いて、次のように光ファイバのガラスの偏心を検知することができる。まず、線条のガラスに被覆が施された光ファイバの側面に対して、レーザ光を互いに垂直な二方向(X、Y方向)から光ファイバに照射する。そして、得られたレーザ光屈折像から、ガラス表面に対応する明暗パターンの非対称性により、被覆に対するガラスの偏心状態を検知する。
【0008】
近年、光ファイバの細径化が求められており、ガラス径は従来径のまま、被覆を薄くして、光ファイバの被覆外径を細くする場合がある。この場合、ガラス径と被覆外径との差が小さくなるため、被覆に入射したレーザ光がガラス表面で全反射せず、上記のようにレーザ光を光ファイバに照射して得られる光の明暗のパターンが消失してしまう場合がある。この場合、光ファイバにおけるガラスの偏心状態が検知できなくなってしまう。
【0009】
本開示は、ガラス径と被覆外径との差が小さい場合でもガラスの偏心状態が検知できる光ファイバのガラス偏心測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示の光ファイバのガラス偏心測定装置および測定方法によれば、ガラス径と被覆外径との差が小さい場合でもガラスの偏心状態が検知できる。
【0011】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバのガラス偏心測定装置は、
(1)線条のガラスに被覆が施された光ファイバの側面に光を照射する照射部と、
前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光を受光する受光部と、を備え、
前記受光部で受光された光の明暗のパターンにより、前記光ファイバにおける前記ガラスの偏心を測定する、ガラス偏心測定装置であって、
前記光ファイバの周囲に、前記照射部と前記受光部とからなる組を三組以上有し、
前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる方向に前記組がそれぞれ配置されており、
前記光ファイバを挟み、前記光ファイバの軸方向における位置が同じで、且つ対向する位置に、それぞれが前記照射部の一つとなる第一の照射部と第二の照射部とが配置されている。
上記構成によれば、光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる方向に、照射部と受光部とからなる組が三組以上配置されているので、ある方向で受光した光の明暗のパターンが消失しても、それ以外の二方向以上でそれぞれ受光した光の明暗のパターンからガラスの偏心を検知できる。これにより、ガラス径と被覆外径との差が小さい場合でもガラスの偏心を検知できる。
【0012】
(2)前記組が、前記光ファイバを中心とする円周上で等角度となる方向にそれぞれ配置されていてもよい。
上記構成によれば、円周上で等角度となる三方向以上から光ファイバの側面に光を照射できるので、光の明暗のパターンが消失して偏心を把握できない領域が形成されないように組相互で効率よくカバーすることができる。
【0013】
(3)前記第一の照射部および前記第二の照射部は、それぞれ発光部であってもよい。
上記構成によれば、第一または第二の何れか一方の照射部から照射した光による明暗のパターンが消失しても、光ファイバを挟んで対向する位置に配置された他方の照射部から照射した光による明暗のパターンを併せ見ることにより、第一または第二の照射部の照射方向と直交する方向の偏心を把握することができる。
【0014】
(4)前記第一の照射部は、発光部であり、
前記第二の照射部は、前記発光部から照射された光を反射する反射ミラーであり、前記反射ミラーによって反射された光を照射光として、当該照射光が前記光ファイバの側面に照射されてもよい。
上記構成によれば、発光部の数を少なくすることができ、ガラス偏心測定装置のコストを低減することができる。
【0015】
(5)前記光ファイバを中心とする円周上における、前記第二の照射部に対向する位置に、さらに前記光ファイバを中心とする円周に沿った円弧状の反射部を備え、
それぞれが前記受光部の一つとなる第一の受光部と第二の受光部とが、前記光ファイバを中心とする円周上の同じ角度位置で前記光ファイバの軸方向に沿って並んで配置されており、
前記第一の受光部は、前記第一の照射部から直接前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光を受光する受光部であり、
前記第二の受光部は、前記第二の照射部による前記照射光が前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折し、前記反射部によってさらに反射された光を受光する受光部であってもよい。
上記構成によれば、第一の受光部と第二の受光部とが、光ファイバの軸方向に沿って並んで配置されているので、上記二つの受光部に形成される光の明暗のパターンの比較が容易にできる。
【0016】
また、本開示の一態様に係る光ファイバのガラス偏心測定方法は、
(6)線条のガラスに被覆が施された光ファイバの側面に、前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる三方向以上から光を照射する照射工程と、
前記三方向以上から前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光する受光工程と、
前記受光したそれぞれの光の明暗のパターンにより、前記光ファイバにおける前記ガラスの偏心を測定する測定工程と、
を含み、
前記照射工程は、
前記光ファイバを中心とする円周上で異なる角度となる方向に配置された二つの第一の照射部と、前記光ファイバを挟み、前記光ファイバの長手方向における位置が同じで、且つ対向する位置に配置された二つの第二の照射部とから、前記光ファイバの側面にそれぞれ光が照射されることにより、前記光ファイバの側面に光を照射する工程である。
上記方法によれば、ある方向で受光した光の明暗のパターンが消失しても、それ以外の二方向以上でそれぞれ受光した光の明暗のパターンからガラスの偏心を検知できる。これにより、ガラス径と被覆外径との差が小さい場合でもガラスの偏心を検知できる。
【0017】
(7)前記照射工程は、前記光ファイバを中心とする円周上で等角度となる三方向以上から光を照射してもよい。
上記方法によれば、円周上で等角度となる三方向以上から光ファイバの側面に光を照射できるので、光の明暗のパターンが消失して偏心を把握できない領域が形成されないように組相互で効率よくカバーすることができる。
【0018】
(8)前記第一の照射部および前記第二の照射部は、それぞれ発光部であり、
前記受光工程は、
前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光してもよい。
上記方法によれば、第一または第二の何れか一方の照射部から照射した光による明暗のパターンが消失しても、光ファイバを挟んで対向する位置に配置された他方の照射部から照射した光による明暗のパターンを併せ見ることにより、第一または第二の照射部の照射方向と直交する方向の偏心を把握することができることができる。
【0019】
(9)前記第一の照射部は、発光部であり、
前記第二の照射部は、前記発光部から照射された光を反射する反射ミラーであり、
前記受光工程は、
前記光ファイバの側面に照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光してもよい。
上記方法によれば、発光部が二つであっても四方向から光ファイバの側面に光を照射することができる。これにより、ガラス偏心測定装置のコストを低減することができる。
【0020】
(10)前記受光工程は、
前記二つの第一の照射部から直接前記光ファイバの側面にそれぞれ照射されて散乱、および/または屈折した光をそれぞれ受光する二つの第一の受光部と、
前記二つの第二の照射部から前記光ファイバの側面にそれぞれ照射されて散乱、および/または屈折し、前記光ファイバを中心とする円周上における、前記第二の照射部に対向する位置にそれぞれ配置され前記光ファイバを中心とする円周に沿った円弧状の二つの反射部によってさらに反射された光をそれぞれ受光する二つの第二の受光部と、
によってそれぞれ受光し、
前記第一の受光部と前記第二の受光部とが、前記光ファイバを中心とする円周上のそれぞれ同じ角度位置で前記光ファイバの軸方向に沿って並んで配置されていてもよい。
上記方法によれば、第一の受光部と第二の受光部とが、光ファイバの軸方向に沿って並んで配置されているので、上記二つの受光部に形成される光の明暗のパターンの比較が容易にできる。
【0021】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置および光ファイバのガラス偏心測定方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1は、光ファイバのガラス偏心測定装置を備える光ファイバの製造装置の一例を示す図である。
図1に示すように、光ファイバの製造装置100は、光ファイバの走行ラインにおける上流側に、光ファイバ母材Gを加熱する加熱炉1を備えている。光ファイバ母材Gは、送り装置によってその上部が把持されて、加熱炉1の加熱領域にその下端部分が位置するように加熱炉1内に送られる。光ファイバ母材Gの下端側は、加熱領域で加熱されて軟化し、下方に引き延ばされて細径化して、ガラスファイバG1とされる。
【0023】
加熱炉1の下流側には、例えば、ヘリウムガス等の冷却溶媒を用いた冷却装置2が設けられており、ガラスファイバG1が数百℃から室温近くまで急速に冷却される。冷却装置2の下流側には、ガラスファイバG1の径を測定するガラス径測定装置3が設けられている。
【0024】
ガラス径測定装置3の下流側には、被覆ダイス4が設けられており、被覆ダイス4を通過したガラスファイバG1にはその外周に紫外線硬化型樹脂が塗布される。被覆ダイス4の下流側には、ガラス偏心測定装置5が設けられており、紫外線硬化型樹脂が塗布されたガラスファイバG1(以下、被覆ガラスファイバG2と称す。)がガラス偏心測定装置5を通過することで、紫外線硬化型樹脂(被覆)に対するガラスファイバG1の偏心が測定される。
なお、ガラス偏心測定装置5は、このように、被覆ダイス4の直後にあってもよいが、後述する紫外線照射装置6の後にあってもよい。後者の場合、紫外線を照射することで被覆が硬化収縮し、偏肉状態が測定しにくくはなるが、樹脂が硬化してから装置に入線するため、ガラス偏心測定装置5が汚れにくいという利点がある。一方、前者の場合は、ガラス偏心測定装置5が汚れやすくはなるが、偏肉状態を測定しやすいという利点がある。
【0025】
ガラス偏心測定装置5の下流側には、紫外線照射装置6が設けられており、被覆ガラスファイバG2が紫外線照射装置6を通過することで樹脂が硬化され、線条のガラスの周囲に被覆層が形成された光ファイバG3となる。紫外線照射装置6の下流側には、被覆径測定装置7が設けられており、被覆径測定装置7を通過する光ファイバG3の外径が測定される。
【0026】
光ファイバG3は、被覆径測定装置7の下流側に設けられたガイドローラ8aを介してキャプスタン8bに引き取られ、リール9に巻き取られる。
【0027】
(第一実施形態)
図2を参照して、第一実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置5Aについて説明する。
図2は、ガラス偏心測定装置5Aの概略を説明する図であり、
図1に示す光ファイバの走行ラインにおいて、ガラス偏心測定装置5Aを被覆ガラスファイバG2の軸方向から見た図である。
【0028】
図2に示すように、ガラス偏心測定装置5Aは、被覆ガラスファイバG2の側面に向けて光(例えばレーザ光)12a,12b,12cを照射する照射部11a,11b,11cを備えている。また、ガラス偏心測定装置5Aは、被覆ガラスファイバG2の側面に照射されて散乱、屈折した光13a,13b,13cを受光することが可能なスクリーン(受光部の一例)14を備えている。スクリーン14は、例えば被覆ガラスファイバG2の周囲を外周面から所定の間隔を空けた状態で囲う円筒状に形成されている。なお、受光部は、スクリーンに限定されるものでは無く、例えば、ラインセンサーであっても良く、また、CCDやCMOSのような、2次元的な受光素子であっても良い。
【0029】
被覆ガラスファイバG2の周囲には、照射部11aとそれに対向する位置のスクリーン14とからなる測定部材の組、照射部11bとそれに対向する位置のスクリーン14とからなる測定部材の組、および照射部11cとそれに対向する位置のスクリーン14とからなる測定部材の組が配置されている。これら三組の測定部材は、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上で例えば等角度となる方向(120°間隔となる方向)にそれぞれ配置されている。
【0030】
照射部11aから照射された光12aは、被覆ガラスファイバG2の側面に照射され、被覆ガラスファイバG2のガラスおよび被覆で屈折、散乱した光13aとなって進む。光13aは、照射部11aに対向する位置のスクリーン14上に照射され、光の明部と暗部を含むパターンとなって表示される。また、照射部11b、11cから照射された光12b、12cも、同様にして明部と暗部を含むパターンとなってそれぞれ対向するスクリーンに表示される。
【0031】
ガラス偏心測定装置5Aの制御部(図示省略)は、スクリーン14上に形成された三つの明暗のパターンの少なくとも一つを用いて、被覆ガラスファイバG2における被覆に対するガラスファイバG1の偏心量を測定する。
【0032】
このような構成のガラス偏心測定装置5Aによれば、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上で異なる角度となる方向に、照射部とスクリーン(受光部)とからなる測定部材の組が三組配置されている。このため、ある一組の方向から入射した光がガラス表面で全反射せず、その光からはガラスファイバG1の偏心量を測定するために必要な明暗のパターンが得られなくても、それ以外の二組の方向から入射した光の明暗のパターンを用いてガラスファイバG1の偏心量を測定することが可能である。これにより、光ファイバにおけるガラス径と被覆外径との差が小さい場合でも、ガラスの偏心状態(偏心方向および偏心量)を測定することができる。
【0033】
また、照射部とスクリーンとからなる三組の測定部材が、光ファイバを中心とする円周上で等角度となる方向(120°間隔となる方向)にそれぞれ配置されている場合は、被覆ガラスファイバG2におけるガラスファイバG1の偏心量を把握できない領域がでないように各組によって互いに効率よくカバーすることができる。
【0034】
(第二実施形態)
図3A、
図3Bおよび
図4を参照して、第二実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置5Bについて説明する。
図3Aおよび
図3Bは、
図1に示す光ファイバの走行ラインにおいて、ガラス偏心測定装置5Bを被覆ガラスファイバG2の軸方向から見た図である。図を見やすくするために、X軸方向に配置された測定部材の組を示す
図3Aと、Y軸方向に配置された測定部材の組を示す
図3Bとに分けている。
図4は、
図3Aの測定部材の組を斜め上方から見た斜視図である。
【0035】
図3A,
図3Bおよび
図4に示すように、ガラス偏心測定装置5Bは、被覆ガラスファイバG2の側面に向けて光(例えばレーザ光)31を照射する照射部の1つとなる発光部21a,21bを備えている。つまり、ガラス偏心測定装置5BにおけるX軸とY軸との二軸方向に発光部21aと21bとが配置されている。Y軸は、X軸を左方向へ90°回転させた軸である。本実施形態では、発光部21aが配置されている方向をX(+)とし、発光部21bが配置されている方向をY(+)とする。
【0036】
また、ガラス偏心測定装置5Bは、被覆ガラスファイバG2の側面に照射されて散乱、屈折した光を受光することが可能なスクリーン(受光部の一例)22を備えている。スクリーン22は、第一実施形態のスクリーン14と同様、円筒状に形成されている。
【0037】
また、ガラス偏心測定装置5Bは、被覆ガラスファイバG2を間に挟んで、発光部21aに対向する位置に反射ミラー23aを備え、発光部21bに対向する位置に反射ミラー23bを備えている。反射ミラー23a,23bは、円筒状のスクリーン22の内周側に設けられている。
【0038】
反射ミラー23aは、発光部21aから照射された光31を反射することが可能であり、反射した光を照射光として照射可能な照射部の一つとして機能する。同様に、反射ミラー23bは、発光部21bから照射された光31を反射することが可能であり、反射ミラー23aと同様に、照射部の一つとして機能する。
【0039】
反射ミラー23a,23bによって反射された光は、それぞれ折り返された照射光33として被覆ガラスファイバG2の側面に向け照射される。本実施形態では、反射ミラー23aが配置されている方向をX(-)とし、反射ミラー23bが配置されている方向をY(-)とする。なお、反射ミラー23a,23bは、光を全反射させるものであってもよいが、ハーフミラーであってもよい。ハーフミラーであれば、反射ミラーに対するファイバ位置を反射ミラーの裏側からモニタすることができるので、装置の芯出し作業がしやすくなる。
【0040】
図4に示すように、例えば円筒状のスクリーン22に開けられた穴20を通して発光部21aから照射された光31(以下、直射光と称す。)は、その一部が被覆ガラスファイバG2の側面に照射される。このように、被覆ガラスファイバG2の側面に照射された直射光31は、被覆ガラスファイバG2内を通過する。被覆ガラスファイバG2内を通過する光は、被覆の外周面で屈折し、さらにガラスと被覆との境界面で屈折する。これにより、被覆ガラスファイバG2内を通過する光は、レンズのように集光され、集光された後の光は散乱して、被覆ガラスファイバG2の外へ、光路32aから光路32bの間で散乱、屈折した光となって照射される。この散乱、屈折した光は、スクリーン22で受光され、光の明暗パターン40として表示される。
【0041】
明暗パターン40には、例えばガラスと被覆の両方を通過した屈折光による明部のパターン41と、被覆のみを通過した屈折光による明部のパターン42とが含まれ得る。また、パターン41とパターン42との間には、ガラスと被覆との境界面(ガラス表面)での全反射による暗部のパターン43が形成される。
【0042】
反射ミラー23aは、スクリーン22において、被覆ガラスファイバG2に対し発光部21aと対向する位置に配置されている。発光部21aから照射された直射光31は、対向する位置のスクリーン22に向けて直進し、その一部が反射ミラー23aによって反射される。反射された光は、反射ミラー23aを照射部とする照射光33となって被覆ガラスファイバG2の側面に照射される。
【0043】
被覆ガラスファイバG2に照射された照射光33は、上記直射光31の場合と同様に被覆ガラスファイバG2内を通過し、被覆ガラスファイバG2の外へ光路34aから光路34bの間で散乱、屈折した光となって照射される。この散乱、屈折した光は、スクリーン22で受光され、光の明暗パターン50として表示される。明暗パターン50には、例えばガラスと被覆の両方を通過した屈折光による明部のパターン51と、被覆のみを通過した屈折光による明部のパターン52とが含まれ得る。また、パターン51とパターン52との間には、ガラス表面での全反射による暗部のパターン53が形成される。
【0044】
ガラス偏心測定装置5Bの制御部(図示省略)は、スクリーン22上に形成された明暗パターン40および明暗パターン50の少なくとも一方の明暗パターンに基づいて、被覆ガラスファイバG2における被覆に対するガラスファイバG1のY軸方向(Y(+)方向またはY(-)方向)への偏心量を測定する。
【0045】
なお、
図4には、発光部21aから照射された光によってスクリーン22上に形成される明暗パターン40,50についてのみ表示したが、発光部21bから照射された光によっても同様にしてY(+)方向およびY(-)方向のスクリーン22上に明暗パターンが形成される。ガラス偏心測定装置5Bの制御部は、これらの明暗パターンに基づいて、被覆ガラスファイバG2における被覆に対するガラスファイバG1のX軸方向(X(+)方向またはX(-)方向)への偏心量を測定する。
【0046】
このように、被覆ガラスファイバG2の周囲には、X軸方向に、発光部21aとそれに対向する位置のスクリーン22とからなる測定部材の組、および照射部としての反射ミラー23aとそれに対向する位置のスクリーン22とからなる測定部材の組が配置されている。また、Y軸方向に、発光部21bとそれに対向する位置のスクリーン22とからなる測定部材の組、および照射部としての反射ミラー23bとそれに対向する位置のスクリーン22とからなる測定部材の組が配置されている。これら四組の測定部材は、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上で等角度となる方向(90°間隔となる方向)にそれぞれ配置されている。なお、本実施形態では、反射ミラー23a,23bを照射部として機能させているが、これらの反射ミラーを用いずに、直射光を照射可能な発光部を4個配置するようにしてもよい。また、反射ミラーの代わりに、後述する円筒状の反射部を用いてもよい。
【0047】
(第三実施形態)
図5A、
図5Bおよび
図6を参照して、第三実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置5Cについて説明する。
図5Aおよび
図5Bは、
図1に示す光ファイバの走行ラインにおいて、ガラス偏心測定装置5Cを被覆ガラスファイバG2の軸方向から見た図である。前述の第二実施形態と同様に、図を見やすくするために、X軸方向に配置された測定部材の組を示す
図5Aと、Y軸方向に配置された測定部材の組を示す
図5Bとに分けている。
図6は、
図5Aの測定部材の組を斜め上方から見た斜視図である。
なお、第二実施形態に係るガラス偏心測定装置5Bと同様の構成については同じ符号を付しその説明については適宜省略する。
【0048】
図5A,
図5Bおよび
図6に示すように、ガラス偏心測定装置5Cは、被覆ガラスファイバG2を間に挟んで、反射ミラー23aに対向する位置に円弧状の円弧ミラー61a(反射部の一例)を備え、反射ミラー23bに対向する位置に円弧状の円弧ミラー61b(反射部の一例)を備えている。円弧ミラー61a,61bは、円筒状のスクリーン22の内側にスクリーン22の内周に沿って設けられている。
【0049】
円弧ミラー61aは、反射ミラー23aで反射され被覆ガラスファイバG2の側面に照射されて散乱、屈折した光(散乱光や屈折光によって形成される明暗のパターン)を反射することが可能である。同様に、円弧ミラー61bは、反射ミラー23bで反射され被覆ガラスファイバG2の側面に照射されて散乱、屈折した光を反射することが可能である。
【0050】
図6に示すように、発光部21aから照射された直射光31は、前述の第二実施形態の場合と同様に、被覆ガラスファイバG2のガラスおよび被覆で屈折され、スクリーン22に明暗パターン40となって表示される。反射ミラー23aによって反射された光は、反射ミラー23aを照射部とする照射光33となって被覆ガラスファイバG2の側面に向け照射される。照射光33は、前述の第二実施形態の場合と同様に被覆ガラスファイバG2内を通過し、被覆ガラスファイバG2の外へ光路34aから光路34bの間で散乱、屈折し、明暗パターン50の光となって円弧ミラー61aに照射される。
【0051】
明暗パターン50の光は、円弧ミラー61aによってさらに反射され、光路35aから光路35bの間で対向する位置のスクリーン22に向け進行し、スクリーン22で受光され、光の明暗パターン50Aとなって表示される。明暗パターン50Aは、上記明暗パターン40と共に、円筒状のスクリーン22における同方向の領域に被覆ガラスファイバG2の軸方向(
図6の上下方向)に並んだ状態で表示される。
【0052】
スクリーン22上における明暗パターン40と明暗パターン50Aとの表示位置は、反射ミラー23aおよび円弧ミラー61aの傾き角度を調整することで所定の位置に表示することが可能である。
【0053】
本実施形態では、下側表示領域(第一の受光部の一例)22aと上側表示領域(第二の受光部の一例)22bとが、スクリーン22における円周上の同じ角度位置で被覆ガラスファイバG2の軸方向に沿って並んで配置されている。そして、明暗パターン40が下側表示領域22aに表示され、明暗パターン50Aが上側表示領域22bに表示されている。なお、明暗パターン50Aには、円弧ミラー61aで反射された明暗パターン50のパターン51~パターン53が左右反転して形成される。
【0054】
ガラス偏心測定装置5Cの制御部(図示省略)は、スクリーン22上に形成された明暗パターン40および明暗パターン50Aの少なくとも一方の明暗パターンに基づいて、被覆ガラスファイバG2における被覆に対するガラスファイバG1のY軸方向(Y(+)方向またはY(-)方向)への偏心量を測定する。
【0055】
なお、
図6には、発光部21aから照射された光によってスクリーン22上に形成される明暗パターン40,50Aについてのみ表示したが、発光部21bから照射された光によっても同様にしてY(-)方向のスクリーン22上に明暗パターンが形成される。ガラス偏心測定装置5Cの制御部は、これらの明暗パターンに基づいて、被覆ガラスファイバG2における被覆に対するガラスファイバG1のX軸方向(X(+)方向またはX(-)方向)への偏心量を測定する。
【0056】
次に、比較のために、被覆ガラスファイバG2の側面に向けて、光を二方向から照射する従来のガラス偏心測定装置について、
図7および
図8を参照して説明する。
図7は、従来のガラス偏心測定装置の概略を説明する図である。
図8は、被覆ガラスファイバG2に入射した光が屈折する様子を示す図である。
【0057】
図7に示すように、従来のガラス偏心測定装置では、被覆ガラスファイバG2に対して光が互いに垂直な二方向(X(+)、Y(+)方向)から照射されている。
【0058】
X(+)方向から被覆ガラスファイバG2に入射した光は、
図8に示すように屈折して、X(-)方向へ進行する。このとき被覆ガラスファイバG2内には、光が屈折することにより、X(+)からの光が通過しない空白領域70X(+)(
図8に示す斜線領域)が発生する。この空白領域は、対向するスクリーンに表示される明暗のパターンを形成しない領域である。同様に、Y(+)方向から被覆ガラスファイバG2に入射した光の場合も、
図8に示すように、Y(+)からの光が通過しない空白領域70Y(+)(
図8に示す斜線領域)が発生する。
【0059】
次に、従来のガラス偏心測定装置におけるガラスファイバの偏心量の測定について、
図8に示すように、被覆径が同じで、外径が相違する2本のガラスファイバ(G1aとG1b)の偏心量を測定する場合を例にして説明する。なお、
図8では、ガラスファイバの外径が小さい場合(G1a)と大きい場合(G1b)とを1つの図で示している。
【0060】
本例では、被覆71に対するガラスファイバG1aの偏心量およびガラスファイバG1bの偏心量が、いずれも(-x1,-y1)であるとする。なお、ガラスファイバG1aは、ガラスファイバG1bよりも外径が大きいガラスファイバである。換言すると、ガラスファイバG1aに対する被覆71の厚さは、ガラスファイバG1bに対する被覆71の厚さよりも薄くなっている。
【0061】
この場合、外径が小さいガラスファイバG1bは、空白領域70X(+)にも空白領域70Y(+)にも掛かっていない。このため、ガラスファイバG1bの偏心量(-x1)は、Y(+)方向からの光によって測定することができる。また、ガラスファイバG1bの偏心量(-y1)は、X(+)方向からの光によって測定することができる。
【0062】
一方、外径が大きいガラスファイバG1aは、空白領域70Y(+)及び空白領域70X(+)に掛かっている。このため、この空白領域70X(+)に掛かっている部分で、X(+)方向からの光がガラス表面で全反射されず、スクリーン上の明暗のパターンに暗部のパターンが表示されなくなる。また、空白領域70Y(+)に掛かっている部分で、Y(+)方向からの光がガラス表面で全反射されず、スクリーン上の明暗のパターンに暗部のパターンが表示されなくなる。これにより、ガラスファイバG1aの偏心量(-x1)、(-y1)は、測定することができない。
【0063】
したがって、光を二方向から照射する場合、ガラスファイバG1bの偏心量(-x1,-y1)は、測定することができるが、ガラスファイバG1aの偏心量(-x1,-y1)は、測定することができない。すなわち、光を二方向から照射する従来のガラス偏心測定装置では、上記ガラスファイバG1aの場合のように、ガラス径と被覆外径との差が小さくなると(被覆の厚さが薄くなると)、ガラスの偏心状態(偏心方向および偏心量)を測定することができなくなる。
【0064】
これに対して、被覆ガラスファイバG2の側面に対して、光を四方向から照射する第二実施形態のガラス偏心測定装置5Bおよび第三実施形態のガラス偏心測定装置5Cの場合には
図9に示すようになる。
図9は、被覆ガラスファイバG2に向けて光がX(+),X(-)、Y(+),Y(-)の四方向から照射され、被覆ガラスファイバG2に入射した四方向からの光が屈折する様子を示す。
【0065】
本例も、被覆71に対するガラスファイバG1aの偏心量が、(-x1,-y1)であるとする。なお、被覆71の外径およびガラスファイバG1aの外径は、
図8で説明したそれぞれの外径と同じである。
【0066】
この場合、ガラスファイバG1aは、空白領域70Y(-)及び空白領域70X(-)には掛かっていない。このため、ガラスファイバG1aの偏心量(-x1)は、Y(-)方向からの光によって測定することができ、ガラスファイバG1aの偏心量(-y1)は、X(-)方向からの光によって測定することができる。したがって、光を四方向から照射することにより、ガラスファイバG1aの偏心量(-x1,-y1)は、測定することができる。
【0067】
以上のように、ガラス偏心測定装置5Bおよびガラス偏心測定装置5Cによれば、照射部とスクリーン(受光部)とからなる組が、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上でX(+)方向とX(-)方向、およびY(+)方向とY(-)方向にそれぞれ配置されている。このため、ある方向で受光した光のパターンに明暗のパターンが発生しなくても、それ以外の少なくとも二方向以上でそれぞれ受光した光の明暗のパターンから被覆に対するガラスファイバG1の偏心量を測定することができる。したがって、光ファイバの細径化などにより、ガラス径と被覆外径との差が小さい場合でも、ガラスの偏心状態(偏心方向および偏心量)を測定することができる。
【0068】
また、照射部とスクリーンとからなる組が、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上で等角度となる方向にそれぞれ配置されているので、偏心状態を把握できない領域が生じないように組相互で効率よくカバーすることができる。
【0069】
また、照射部の一つとなる発光部に対向する位置に照射部の一つとして機能する反射ミラー23a,23bを備えているので、照射部とスクリーンとからなる組が四組であっても、発光部の数を少なくすることができる。このため、ガラス偏心測定装置5B,5Cのコストを低減することができる。
【0070】
また、ガラス偏心測定装置5Cによれば、スクリーン22における円周上の同じ角度位置で被覆ガラスファイバG2の軸方向に沿って並んで配置された下側表示領域22aと上側表示領域22bとに、それぞれ明暗パターン40と明暗パターン50Aとが表示されるので、光の明暗のパターンの比較が容易である。
【0071】
(ガラス偏心測定方法)
次に、第一実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置5Aによる光ファイバのガラス偏心測定方法について、
図2を参照しつつ説明する。
線条のガラスファイバG1の周囲に被覆が施された被覆ガラスファイバG2の側面に向け、例えば
図2で示したように、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上で異なる角度となる三方向以上に配置した照射部から光を照射する(照射工程の一例)。例えば
図2で示したように、各照射部11a,11b,11cは、円周上で等角度となる方向にそれぞれ配置する。
被覆ガラスファイバG2の側面に照射され、被覆ガラスファイバG2内を通過して散乱、屈折した光を、各照射部の対向する位置に配置されたスクリーン14の一部によってそれぞれ受光する(受光工程の一例)。
スクリーン14で受光したそれぞれの光の明暗のパターンにより、被覆ガラスファイバG2における被覆に対してのガラスファイバG1の偏心状態(偏心方向および偏心量)を測定する(測定工程の一例)。
【0072】
このような光ファイバのガラス偏心測定方法によれば、ある方向で受光した光の明暗のパターンが消失しても、それ以外の方向で受光した光の明暗のパターンからガラスファイバG1の偏心状態を判断することができる。これにより、光ファイバの細径化により、ガラス径と被覆外径との差が小さい場合でもガラスの偏心状態を検知することができる。
【0073】
次に、第二実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置5Bによるガラス偏心測定方法について、
図3A,
図3Bおよび
図4を参照しつつ説明する。(照射工程)
例えば
図3A,
図3Bおよび
図4で示したように、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上で異なる角度となる方向に配置された二つの発光部21a,21bから被覆ガラスファイバG2の側面にそれぞれ光を照射する。照射された光の一部を、二つの発光部21a,21bとそれぞれ対向する位置に配置した二つの反射ミラー23a,23bによって反射する。二つの反射ミラー23a,23bで反射された二方向からの反射光を折り返された照射光として被覆ガラスファイバG2の側面にそれぞれ照射することにより、四方向から被覆ガラスファイバG2の側面に光を照射する。(受光工程)
四方向から被覆ガラスファイバG2の側面に照射されて散乱、屈折した光を、対向する位置に配置されたスクリーン22の一部によってそれぞれ受光する。
【0074】
このような光ファイバのガラス偏心測定方法によれば、発光部21a,21bと対向する位置に配置した反射ミラー23a,23bを照射部として機能させて被覆ガラスファイバG2の側面に光を照射することができる。このため、二つの発光部21a,21bを用いることで四方向から被覆ガラスファイバG2の側面に光を照射することができるので、ガラス偏心測定装置のコストを低減することができる。なお、これらの反射ミラーを用いずに、直射光を照射可能な発光部を4個配置するようにしてもよい。また、反射ミラーの代わりに、円筒状の反射部を用いてもよい。
【0075】
次に、第三実施形態に係る光ファイバのガラス偏心測定装置5Cによるガラス偏心測定方法について、
図5A,
図5Bおよび
図6を参照しつつ説明する。(照射工程)
例えば
図5A,
図5Bおよび
図6で示したように、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上で異なる角度となる方向に配置された二つの発光部21a,21bから被覆ガラスファイバG2の側面にそれぞれ光を照射する。被覆ガラスファイバG2の側面に当たらなかった光の一部を、二つの発光部21a,21bとそれぞれ対向する位置に配置した二つの反射ミラー23a,23bによって反射する。二つの反射ミラー23a,23bで反射された二方向からの反射光を被覆ガラスファイバG2の側面にそれぞれ照射する。照射されて散乱、屈折した光を、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上における二つの反射ミラー23a,23bに対向する位置に被覆ガラスファイバG2を中心とする円周に沿ってそれぞれ配置させた円弧状の二つの円弧ミラー61a,61bによって、さらに反射させる。
【0076】
(受光工程)
二つの発光部21a,21bから直接被覆ガラスファイバG2の側面に照射されて散乱、屈折した光を、二つの発光部21a,21bにそれぞれ対向する位置のスクリーン22における下側表示領域22aで受光する。二つの円弧ミラー61a,61bによってさらに反射された光を、二つの円弧ミラー61a,61bにそれぞれ対向する位置のスクリーン22における上側表示領域22bで受光する。それぞれの発光部に対応する下側表示領域22aと上側表示領域22bとは、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上のそれぞれ同じ角度位置で被覆ガラスファイバG2の軸方向に沿って並んで配置されている。
【0077】
このような光ファイバのガラス偏心測定方法によれば、二つの発光部21a,21bから直接被覆ガラスファイバG2の側面に照射されて散乱、屈折した光をそれぞれ受光する二つの下側表示領域22aと、二つの円弧ミラー61a,61bによってさらに反射された光をそれぞれ受光する二つの上側表示領域22bとが、被覆ガラスファイバG2を中心とする円周上のそれぞれ同じ角度位置で被覆ガラスファイバG2の軸方向に沿って並んで配置されている。このため、受光した二つの光の明暗のパターンを容易に比較することができる。
【0078】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0079】
5,5A,5B,5C:ガラス偏心測定装置
11a~11c:照射部
12a~12c:光(照射された光)
13a~13c:光(散乱、屈折した光)
14、22:スクリーン(受光部の一例)
21a、21b:発光部(照射部の一例)
23a、23b:反射ミラー(照射部の一例)
31:光(直射光)
32a、32b、34a、34b、35a、35b:光路
33:照射光(反射ミラーを照射部とする照射光)
40、50、50A:明暗パターン
41~43、51~53:パターン
61a、61b:円弧ミラー(反射部の一例)
22a:下側表示領域(第一の受光部の一例)
22b:上側表示領域(第二の受光部の一例)
70X(+),70X(-),70Y(-),70Y(+):空白領域
100:光ファイバの製造装置
G:光ファイバ母材
G1:ガラスファイバ
G2:被覆ガラスファイバ
G3:光ファイバ