(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
B25D 17/24 20060101AFI20240311BHJP
B25D 17/04 20060101ALI20240311BHJP
B23B 45/16 20060101ALI20240311BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B25D17/24
B25D17/04
B23B45/16 C
B25F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2020007020
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】古澤 正規
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176411(JP,A)
【文献】特開昭49-032802(JP,A)
【文献】特開2004-330389(JP,A)
【文献】特表2003-505257(JP,A)
【文献】特開2016-055359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/24
B25D 17/04
B23B 45/16
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転によって作動する打撃機構を少なくとも備えた本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに対して前記打撃機構の打撃軸線方向で相対移動可能に連結されるハンドル部と、
前記本体ハウジングと前記ハンドル部とにそれぞれ一体的に設けられ、前記本体ハウジングからの離間方向へ前記ハンドル部が所定の第1距離を相対移動した位置で互いに当接して前記離間方向への前記ハンドル部の相対移動を規制する規制部と、
前記本体ハウジングと前記ハンドル部との間に介在される弾性部材と、
前記本体ハウジングに対する前記ハンドル部の相対移動を検知するセンサ部と、
前記センサ部による検知状態に基づいて、
前記規制部同士が当接して前記ハンドル部が相対移動しない無負荷時の前記モータの回転数を、前記ハンドル部が相対移動
して前記規制部同士が離れる負荷時の前記回転数よりも小さく制御するコントローラと、を含み、
前記弾性部材は、前記無負荷時及び前記負荷時に前記ハンドル部を前記
離間方向へ付勢する付勢力を発生させる第1の弾性部材と、
前記負荷時に
前記センサ部が前記ハンドル部の相対移動を検知するまでは前記本体ハウジング又は前記ハンドル部と非接触となる第2の弾性部材とを含んでな
り、
前記センサ部は、前記負荷時において、前記ハンドル部が前記本体ハウジングへの接近方向へ前記第1距離よりも短い所定の第2距離を相対移動したことを検知し、
前記コントローラは、前記ハンドル部が前記第2距離を相対移動したことを前記センサ部が検知すると、前記モータの回転数を前記無負荷時の回転数から前記負荷時の回転数に制御し、
前記第2の弾性部材は、前記ハンドル部が前記第2距離を相対移動した位置で前記本体ハウジング又は前記ハンドル部と接触して前記付勢力を発生させることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
前記第1の弾性部材のバネ荷重は、前記第2の弾性部材のバネ荷重よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の打撃工具。
【請求項3】
前記ハンドル部の少なくとも上部が前記本体ハウジングに対して相対移動可能に連結され、前記第1の弾性部材及び前記第2の弾性部材は、前記ハンドル部の上部で前記本体ハウジングとの間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の打撃工具。
【請求項4】
前記打撃軸線方向は、前記打撃機構の出力側が前方となる前後方向であり、前記第2の弾性部材は、前記第1の弾性部材を挟んで左右に少なくとも1つずつ配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の打撃工具。
【請求項5】
前記ハンドル部の下部が前記本体ハウジングに対して相対移動可能に連結され、前記ハンドル部の下部と前記本体ハウジングとの間に、前記無負荷時及び前記負荷時に前記ハンドル部を前記本体ハウジングからの離間方向へ付勢する付勢力を発生させる第3の弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の打撃工具。
【請求項6】
前記本体ハウジングを覆う外側ハウジングを有し、前記外側ハウジングは、前記ハンドル部と一体に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の打撃工具。
【請求項7】
前記ハンドル部に、バッテリー装着部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の打撃工具。
【請求項8】
前記モータは、前記本体ハウジングと一体に結合されるモータハウジングに収容されていることを特徴とする請求項1乃至
7の何れかに記載の打撃工具。
【請求項9】
前記本体ハウジングは、前後方向に配置され、前記モータハウジングは、前記本体ハウジングの下側に結合されて、前記モータは、出力軸を上向きとした姿勢で前記モータハウジングに収容されていることを特徴とする請求項
8に記載の打撃工具。
【請求項10】
前記第1の弾性部材及び前記第2の弾性部材は、コイルバネであることを特徴とする請求項1乃至
9の何れかに記載の打撃工具。
【請求項11】
前記コイルバネは、前記本体ハウジング側に設けられたボスと、前記ハンドル部側に設けられたボスとに両端がそれぞれ外装されて支持されていることを特徴とする請求項
10に記載の打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振機構を備えたハンマドリル等の打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリルやハンマ等の打撃工具においては、打撃動作に伴って振動が発生する。この振動がハンドルを把持する作業者の手に伝わることによる使用感の低下を防止するために、例えば特許文献1に開示されるような防振機能を具備するものが知られている。この防振機能は、ハンドル部が、打撃機構を有するハウジングと別体に形成されて、ハウジングに対して打撃軸線方向へ相対移動可能に設けられると共に、ハンドル部とハウジングとの間にコイルバネ等の弾性部材を介在させる構造となっている。
また、この打撃工具においては、振動低減のため、先端のビットを被加工材に押し当てない無負荷時にスイッチをON操作した際のモータの回転数を、ビットを被加工材に押し当てる負荷時のモータの回転数よりも少なくする無負荷時回転抑制機能を備えたものも知られている。この無負荷時と負荷時との回転数の切替のタイミングは、ビットを被加工材に押し当てた際のハンドル部の移動をセンサ部で検知して行う。すなわち、スイッチのON後、センサ部が検知するまでを低回転、センサ部の検知後を高回転とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】ドイツ特許出願公開第10036078号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ハンドル部を後方へ付勢するコイルバネの初期荷重が高いため、無負荷時でもセンサ部が検知するまではハンドル部を強い力で押し込む必要があり、使用感がよくなかった。かといってコイルバネの初期荷重を低くすると、ハンドル部を押し込んだ際にハウジングに当接してしまい、防振機能が失われるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、防振機能と無負荷時回転抑制機能とを備えたものにおいて、防振機能を損なうことなく無負荷時での使用感を向上させることができる打撃工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、モータと、
モータの回転によって作動する打撃機構を少なくとも備えた本体ハウジングと、
本体ハウジングに対して打撃機構の打撃軸線方向で相対移動可能に連結されるハンドル部と、
本体ハウジングとハンドル部とにそれぞれ一体的に設けられ、本体ハウジングからの離間方向へハンドル部が所定の第1距離を相対移動した位置で互いに当接して離間方向へのハンドル部の相対移動を規制する規制部と、
本体ハウジングとハンドル部との間に介在される弾性部材と、
本体ハウジングに対するハンドル部の相対移動を検知するセンサ部と、
センサ部による検知状態に基づいて、規制部同士が当接してハンドル部が相対移動しない無負荷時のモータの回転数を、ハンドル部が相対移動して規制部同士が離れる負荷時の回転数よりも小さく制御するコントローラと、を含み、
弾性部材は、無負荷時及び負荷時にハンドル部を離間方向へ付勢する付勢力を発生させる第1の弾性部材と、
負荷時にセンサ部がハンドル部の相対移動を検知するまでは本体ハウジング又はハンドル部と非接触となる第2の弾性部材とを含んでなり、
センサ部は、負荷時において、ハンドル部が本体ハウジングへの接近方向へ第1距離よりも短い所定の第2距離を相対移動したことを検知し、
コントローラは、ハンドル部が第2距離を相対移動したことをセンサ部が検知すると、モータの回転数を無負荷時の回転数から負荷時の回転数に制御し、
第2の弾性部材は、ハンドル部が第2距離を相対移動した位置で本体ハウジング又はハンドル部と接触して付勢力を発生させることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、ハンドル部の少なくとも上部が本体ハウジングに対して相対移動可能に連結され、第1の弾性部材及び第2の弾性部材は、ハンドル部の上部で本体ハウジングとの間に配置されていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、打撃軸線方向は、打撃機構の出力側が前方となる前後方向であり、第2の弾性部材は、第1の弾性部材を挟んで左右に少なくとも1つずつ配置されていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、ハンドル部の下部が本体ハウジングに対して相対移動可能に連結され、ハンドル部の下部と本体ハウジングとの間に、無負荷時及び負荷時にハンドル部を本体ハウジングからの離間方向へ付勢する付勢力を発生させる第3の弾性部材が設けられていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、本体ハウジングを覆う外側ハウジングを有し、外側ハウジングは、ハンドル部と一体に設けられていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、ハンドル部に、バッテリー装着部が一体に設けられていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、モータは、本体ハウジングと一体に結合されるモータハウジングに収容されていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、本体ハウジングは、前後方向に配置され、モータハウジングは、本体ハウジングの下側に結合されて、モータは、出力軸を上向きとした姿勢でモータハウジングに収容されていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、第1の弾性部材及び第2の弾性部材は、コイルバネであることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、コイルバネは、本体ハウジング側に設けられたボスと、ハンドル部側に設けられたボスとに両端がそれぞれ外装されて支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無負荷時から負荷時まではハンドル部を強い力で押し込む必要がなくなる。また、負荷時にはハンドル部を押し込んでも弾性連結が維持され、ハンドル部が本体ハウジングに当接することはない。よって、防振機能を損なうことなく無負荷時での使用感を向上させることができる。
特に、第2の弾性部材が、センサ部がハンドル部の相対移動を検知するまでは、本体ハウジング又はハンドル部と非接触となっていることで、無負荷時で必要な押し込み力を確実に低くすることができる。
別の態様によれば、第1の弾性部材のバネ荷重を第2の弾性部材のバネ荷重よりも小さくしたことで、無負荷時から負荷時までの使用感がより良好となる。
別の態様によれば、ハンドル部の少なくとも上部が本体ハウジングに対して相対移動可能に連結され、第1の弾性部材及び第2の弾性部材が、ハンドル部の上部で本体ハウジングとの間に配置されることで、第1、第2の弾性部材の付勢力を打撃軸線方向でハンドル部へ効果的に伝えることができる。
別の態様によれば、第2の弾性部材が第1の弾性部材を挟んで左右に少なくとも1つずつ配置されることで、負荷時の第2の弾性部材の付勢力をハンドル部へバランスよく伝えることができる。
別の態様によれば、ハンドル部の下部が本体ハウジングに対して相対移動可能に連結され、ハンドルの下部と本体ハウジングとの間に、無負荷時及び負荷時にハンドル部を本体ハウジングからの離間方向へ付勢する付勢力を発生させる第3の弾性部材が設けられることで、無負荷時からハンドル部を上下にバランスよく付勢することができる。
別の態様によれば、本体ハウジングを覆う外側ハウジングを有し、外側ハウジングが、ハンドル部と一体に設けられることで、弾性部材を外側ハウジングでも保護可能となる。
別の態様によれば、ハンドル部に、バッテリー装着部が一体に設けられることで、ハンドル部は安定して相対移動可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】センサ部の説明図で、(A)はモータハウジングを含めて後方から見た状態、(B)はセンサ部のみを右側から見た状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電動ハンマ1の一例を示す中央縦断面図である。電動ハンマ1は、本体ハウジング2と、モータハウジング3とを備えている。本体ハウジング2は、打撃機構4を収容して、打撃軸線方向となる前後方向に延びる。モータハウジング3は、本体ハウジング2の下側へ一体に結合され、出力軸6を上向きとしたブラシレスのモータ5を収容している。出力軸6は、本体ハウジング2内に突出している。
また、電動ハンマ1は、外側ハウジング7と、ハンドルハウジング8とをさらに備えている。外側ハウジング7は、前後方向に延びて本体ハウジング2の外側を覆っている。ハンドルハウジング8は、外側ハウジング7の後側へ一体に結合され、外側ハウジング7の後方からモータハウジング3の下方にかけて設けられている。
【0010】
ハンドルハウジング8は、ハンドル部9と、バッテリー装着部10とを備えている。ハンドル部9は、上下方向に延び、前側に、外側ハウジング7の後端に連結されて本体ハウジング2の後部を後方から覆う連結部9aを備えている。ハンドル部9は、スイッチ11及びスイッチレバー12を備えている。バッテリー装着部10は、ハンドル部9の下端からモータハウジング3の下側へ回り込んで形成されている。バッテリー装着部10の前面上端には、係止部13(ハンドル部側の規制部の一例)が後ろ向きに形成されて、モータハウジング3の前面下端に形成された係止凹部14(本体ハウジング側の規制部の一例)に前方から係止している。
バッテリー装着部10には、電源となる前後2つのバッテリーパック15,15が装着されている。バッテリー装着部10内でバッテリーパック15,15の上側には、制御回路基板を備えたコントローラ16が前後方向に収容されている。
【0011】
打撃機構4は、筒状のツールホルダ20及びシリンダ21を備えている。ツールホルダ20は、本体ハウジング2の前側に保持されて前後方向に延びている。シリンダ21は、本体ハウジング2の後側に保持されてツールホルダ20と同軸で前後方向に延びている。
本体ハウジング2内でシリンダ21の後側には、クランク軸22が上下方向に支持されている。クランク軸22の上側には、偏心ピン23が上向きに設けられ、クランク軸22の下側には、ギヤ24が設けられている。ギヤ24は、出力軸6の上端に設けたピニオンと噛合している。
シリンダ21には、ピストン25が前後移動可能に収容されている。ピストン25は、コネクティングロッド26を介して偏心ピン23と連結されている。シリンダ21内でピストン25の前方には、空気室27を介してストライカ28が前後移動可能に収容されている。ストライカ28の前方でツールホルダ20内には、前端に挿入されたビット(図示略)が当接するインパクトボルト29が設けられている。ツールホルダ20の前端には、ビットを着脱操作するための操作スリーブ30が設けられている。
【0012】
外側ハウジング7及びハンドルハウジング8は、本体ハウジング2及びモータハウジング3に対して前後へ相対移動可能に設けられている。
本体ハウジング2とハンドル部9との間には、第1防振部31が設けられている。第1防振部31は、
図2に示すように、連結部9a内で、軸線が前後方向となる3つのコイルバネ32A~32Cを左右方向に所定間隔をおいて配置してなる。コイルバネ32A~32Cは、本体ハウジング2の後面とハンドル部9の前面とにそれぞれ設けられた前ボス33A~33Cと後ボス34A~34Cとに跨がって両端が外装されている。後ボス34A~34Cの根元外周には、リブ35がそれぞれ設けられている。
左右2つのコイルバネ32A,32Cは、前端が前ボス33A,33Cに嵌合して本体ハウジング2側に固定されている。コイルバネ32A,32Cの後端は、後ボス34A,34Cに対して相対移動可能に外装されている。前ボス33A,33Cと後ボス34A,34Cとには、ピン36の両端がそれぞれ挿入されている。
中央のコイルバネ32Bも、前端が前ボス33Bに嵌合して本体ハウジング2側に固定されている。コイルバネ32Bの後端は、後ボス34Bのリブ35に当接している。
【0013】
モータハウジング3とバッテリー装着部10との間には、第2防振部40が設けられている。第2防振部40は、突出片41と、受けリブ42と、コイルバネ43とを有している。突出片41は、モータハウジング3の下面に設けられてバッテリー装着部10内へ下向きに突出している。受けリブ42は、突出片41の後方でバッテリー装着部10内に立設されている。コイルバネ43は、突出片41と受けリブ42との間で前後方向に保持されている。
第1防振部31の中央のコイルバネ32Bと、第2防振部40のコイルバネ43とのバネ荷重は、第1防振部31の左右2つのコイルバネ32A,32Cのバネ荷重よりも小さく設定されている。外側ハウジング7及びハンドルハウジング8は、常態ではコイルバネ32B,43の付勢により、バッテリー装着部10の係止部13がモータハウジング3の係止凹部14に当接する
図1の後退位置へ弾性的に付勢される。この後退位置では、
図2に示すように、第1防振部31の左右2つのコイルバネ32A,32Cは、後端が後ボス34A,34Cの根元外周に設けたリブ35よりも前方に位置して、ハンドルハウジング8を付勢しない自由長となっている。
【0014】
モータハウジング3内において、モータ5の後側には、ハンドルハウジング8の相対移動を検知するセンサ部50が設けられている。センサ部50は、
図3にも示すように、センサ基板51と、揺動部材52とを備えている。センサ基板51は、モータハウジング3内に設けられた支持部材53によって上下及び前後方向で規定される平面と平行に支持される。センサ基板51は、右側にホール素子54を搭載して、検出信号をコントローラ16へ出力可能となっている。
揺動部材52は、センサ基板51の右側で上下方向に延びる板状で、支持部材53に設けられて右側へ突出する支持軸55により、センサ基板51と平行な面上で回転可能に支持されている。揺動部材52の下端は、ホール素子54の右側を揺動する回転軌跡を有し、永久磁石56を備えている。揺動部材52の上端は、外側ハウジング7内に突出している。支持部材53と揺動部材52との間には、揺動部材52を右側(
図3(B))から見て左回転方向へ回転付勢するトーションバネ57が設けられている。揺動部材52は、常態では、支持部材53に設けられたストッパ58に当接する初期位置(
図3の実線位置)に付勢される。この初期位置で永久磁石56は、ホール素子54に対峙している。
【0015】
ハンドル部9において、連結部9aの下端には、前方へ突出する押圧片60が設けられている。押圧片60の前端は、モータハウジング3から上方へ突出する揺動部材52の上端に前後方向で対向している。ハンドルハウジング8の後退位置で、押圧片60の前端は、初期位置の揺動部材52の上端に当接している。
センサ部50の下方でモータハウジング3の下部には、回転数調整ダイヤル61が設けられている。コントローラ16は、回転数調整ダイヤル61の回転操作によって選択された回転数(打撃数)でモータ5を駆動させる。
【0016】
以上の如く構成された電動ハンマ1では、ツールホルダ20に装着したビットを被加工材に押し当てない無負荷時では、外側ハウジング7及びハンドルハウジング8は後退位置にあり、揺動部材52は初期位置にある。この無負荷時に、ハンドル部9を把持する手でスイッチレバー12を押し込んでスイッチ11をONさせると、コントローラ16は、モータ5を、回転数調整ダイヤル61で選択された回転数にかかわらず、予め設定された低回転数で駆動させる(無負荷時回転抑制機能)。よって、出力軸6が回転し、ギヤ24を介してクランク軸22が回転して、コネクティングロッド26を介してピストン25を前後移動させる。これにより、空気室27を介してストライカ28が連動して前後移動する。
【0017】
ここからビットを被加工材に押し当てると、外側ハウジング7及びハンドルハウジング8は、第1防振部31の中央のコイルバネ32B及び第2防振部40のコイルバネ43の付勢力に抗して前進する。コイルバネ32B,43はバネ荷重が小さいので、作業者の押し込み力は小さくて済む。
ハンドルハウジング8のハンドル部9の前進に伴い、センサ部50では、押圧片60が揺動部材52の上端を前方へ押圧し、
図1及び
図3(B)に二点鎖線で示すように、揺動部材52をトーションバネ57の付勢に抗して右側から見て右回転させる。よって、永久磁石56がホール素子54との対峙位置から後方へ移動する。この移動による磁界の変化をホール素子54が検出し、その検出信号を得たコントローラ16は、モータ5を、回転数調整ダイヤル61で選択された高回転数で駆動させる。よって、多い打撃数で加工作業が行える。
【0018】
モータ5が高回転数に切り替わると同時に、第1防振部31では、
図4に示すように、左右のコイルバネ32A,32Cの後端に、後ボス34A,34Cのリブ35,35がそれぞれ当接する。そして、ハンドル部9のさらなる押し込みに伴ってコイルバネ32A,32Cを圧縮する。よって、バネ荷重が大きいコイルバネ32A,32Cの付勢力も加わって外側ハウジング7及びハンドルハウジング8が弾性保持されるため、ハンドル部9を押し込んでも後ボス34A,34Cが前ボス33A,33Cに当接することがない。このため、防振機能が維持されて、打撃機構4からハンドル部9へ伝わる振動が低減される。
【0019】
このように、上記形態の電動ハンマ1では、モータ5と、モータ5の回転によって作動する打撃機構4を備えた本体ハウジング2とを含む。また、本体ハウジング2に対して打撃機構4の打撃軸線方向で相対移動可能に連結されるハンドル部9と、本体ハウジング2とハンドル部9との間に介在されるコイルバネ32A~32C(弾性部材)とを含む。また、本体ハウジング2に対するハンドル部9の相対移動を検知するセンサ部50と、センサ部50による検知状態に基づいて、ハンドル部9が相対移動しない無負荷時のモータ5の回転数を、ハンドル部9が相対移動する負荷時の回転数よりも小さく制御するコントローラ16とを含む。そして、弾性部材は、無負荷時及び負荷時にハンドル部9を本体ハウジング2からの離間方向へ付勢する付勢力を発生させるコイルバネ32B(第1の弾性部材)と、負荷時にのみ付勢力を発生させるコイルバネ32A,32C(第2の弾性部材)とを含んでなる。
この構成により、無負荷時から負荷時まではハンドル部9を強い力で押し込む必要がなくなる。また、負荷時にはハンドル部9を押し込んでも弾性連結が維持され、ハンドル部9が本体ハウジング2に当接することはない。よって、防振機能と無負荷時回転抑制機能とを備えたものにおいて、防振機能を損なうことなく無負荷時での使用感を向上させることができる。
【0020】
特に、コイルバネ32Bのバネ荷重は、コイルバネ32A,32Cのバネ荷重よりも小さくなっている。よって、無負荷時から負荷時までの使用感がより良好となる。
また、ハンドル部9の上部が本体ハウジング2に対して相対移動可能に連結され、コイルバネ32A~32Cは、ハンドル部9の上部で本体ハウジング2との間に配置されている。よって、コイルバネ32A~32Cの付勢力を打撃軸線方向でハンドル部9へ効果的に伝えることができる。
また、コイルバネ32A,32Cは、コイルバネ32Bを挟んで左右に2つ配置されている。よって、負荷時のコイルバネ32A,32Cの付勢力をハンドル部9へバランスよく伝えることができる。
また、ハンドル部9の下部のバッテリー装着部10が本体ハウジング2と一体のモータハウジング3に対して相対移動可能に連結され、バッテリー装着部10とモータハウジング3の間に、無負荷時及び負荷時にハンドル部9を本体ハウジング2からの離間方向へ付勢する付勢力を発生させるコイルバネ43(第3の弾性部材)が設けられている。よって、無負荷時からハンドル部9を上下にバランスよく付勢することができる。
【0021】
また、本体ハウジング2を覆う外側ハウジング7を有し、外側ハウジング7は、ハンドル部9と一体に設けられている。よって、コイルバネ32A~32Cを外側ハウジング7でも保護可能となる。
また、ハンドル部9に、バッテリー装着部10が一体に設けられている。よって、ハンドル部9は安定して相対移動可能となる。
また、コイルバネ32A,32Cは、センサ部50がハンドル部9の相対移動を検知するまでは、本体ハウジング2と非接触となっている。よって、無負荷時で必要な押し込み力を確実に低くすることができる。
また、コイルバネ32A~32Cは、本体ハウジング2側に取り付けられている。よって、第1防振部31を介したハンドルハウジング8の組み付けを容易に行うことができる。
【0022】
なお、上記形態では、第1、第2の弾性部材となるコイルバネは、本体ハウジング側の前ボスに取り付けられているが、これを逆にして、コイルバネを後ボスに取り付けてもよい。
また、3つのコイルバネは左右でなく上下に並べて配置してもよい。但し、コイルバネの数は上記形態に限らず、適宜増減して差し支えない。無負荷時の押し込み力の低減が可能であれば、全てのコイルバネのバネ荷重を同じにしてもよい。第2の弾性部材となるコイルバネは、無負荷時で自由長としなくてもよい。
第3の弾性部材となるコイルバネも、数や配置を変更したり、省略したりすることができる。
【0023】
センサ部も、位置や構造は適宜変更可能である。ホール素子と永久磁石とを用いるものに限らず、マイクロスイッチ等を用いてハンドル部の相対移動を検知することもできる。
また、電動ハンマの構造も上記形態に限らない。モータの向きや配置、コントローラの位置、バッテリーパックの位置や数等、変更して差し支えない。
そして、上記形態では電動ハンマを例示しているが、ツールホルダの回転機構を備えたハンマドリルであっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・電動ハンマ、2・・本体ハウジング、3・・モータハウジング、4・・打撃機構、5・・モータ、6・・出力軸、7・・外側ハウジング、8・・ハンドルハウジング、9・・ハンドル部、16・・コントローラ、20・・ツールホルダ、31・・第1防振部、32A~32C・・コイルバネ、33A~33C・・前ボス、34A~34C・・後ボス、40・・第2防振部、43・・コイルバネ、50・・センサ部、52・・揺動部材。