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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/70 20230101AFI20240311BHJP
   H04N 25/76 20230101ALI20240311BHJP
   H04N 25/626 20230101ALI20240311BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H04N25/70
H04N25/76
H04N25/626
H01L27/146 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020009839
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021118417
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田岡 峰樹
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 敬
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054499(JP,A)
【文献】特表2018-516013(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094229(WO,A1)
【文献】米国特許第06847398(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0122168(US,A1)
【文献】特開2013-070181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/70
H04N 25/76
H04N 25/626
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に形成され、光電変換を行う有機光電膜と、
前記基板と前記有機光電膜との間に配置された複数の画素電極であって、前記基板の上面に平行な面内において、第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向にマトリックス状に並んで配置された複数の前記画素電極と、
前記基板に形成され、前記第1方向にライン状に並んだ複数の前記画素電極を含む画素電極ラインにおける各画素電極から画素情報を読み出すとともに、前記画素電極ラインにおける前記各画素電極に前記光電変換を行わせるオン電圧または前記光電変換を停止させるオフ電圧を印加する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、複数の前記画素電極ラインのうち、前記画素情報を読み出す読み出しラインを、前記第2方向における一方側に走査するタイミングに同期して、前記オン電圧を印加する前記画素電極ラインを含んだ光電変換オン領域を、前記一方側に走査し、
前記光電変換オン領域は、複数の前記画素電極ラインを含み、
前記光電変換オン領域は、
複数のn個の前記読み出しラインと、
前記n個の前記読み出しラインよりも前記一方側に配置された複数のm個の前記画素電極ラインと、
を含み、
前記駆動回路は、前記読み出しラインとして、前記n個の前記画素電極ラインを走査したタイミングに同期して、前記光電変換オン領域を、前記一方側に前記n個のライン移動させる、
イメージセンサ。
【請求項2】
前記駆動回路は、光電変換オン領域以外の前記画素電極ラインに前記オフ電圧を印加する、
請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記読み出しラインよりも前記第2方向における他方側の前記画素電極ラインに前記オフ電圧を印加する、
請求項1または2に記載のイメージセンサ。
【請求項4】
前記光電変換オン領域に含まれた前記画素電極ラインのライン数は、前記オン電圧が印加される露光時間に基づいて設定される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項5】
前記駆動回路は、前記読み出しラインとして、1ラインの前記画素電極ラインを走査するタイミングに同期して、前記光電変換オン領域を、前記一方側に1ライン移動させる、
請求項1~のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記画素情報としてのキャリアを蓄積する浮遊拡散容量部を有し、
前記オン電圧が印加される露光時間は、前記浮遊拡散容量部の容量に基づいて設定される、
請求項1~のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項7】
前記露光時間は、前記有機光電膜を照射する光の照度に基づいて設定される、
請求項に記載のイメージセンサ。
【請求項8】
前記駆動回路は、
前記各画素電極に形成され、前記各画素電極から前記画素情報を読み出す読み出し回路と、
前記各画素電極ラインに形成され、前記各画素電極ラインにおける前記画素電極に前記オン電圧及び前記オフ電圧を印加するバイアス回路と、
を有する、
請求項1~のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項9】
有機光電膜上に形成された光電膜電極をさらに備え、
前記バイアス回路は、
前記光電膜電極を、前記画素電極に対してプラスの電位となるように、前記画素電極に前記オン電圧を印加し、
前記画素電極を、前記光電膜電極に対してプラスの電位となるように、前記画素電極に前記オフ電圧を印加する、
請求項に記載のイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ(Digital Camera)等で用いられる光電変換部材は、シリコン(Silicon)を単一材料として用いて発展してきた。しかしながら、シリコンを単一材料として用いると、バンドギャップ(Band Gap)が固定となり、かつ、表面にしか色フィルタ(Filter)を構成することができないため、赤色の画素、緑色の画素、及び、青色の画素を面方向に配列する以外に、単板でカラー撮像を行うことが困難である。以下、赤色を「Red」、緑色を「Green」、青色を「Blue」と称する場合がある。
【0003】
また、上記のような光電変換部材を用いて、より高解像度の被写体を撮像すると、輝度モアレ(Moire)や色モアレが発生してしまう場合がある。そのため、輝度モアレや色モアレを抑制するために、撮像装置に光学ローパスフィルタ(Low Pass Filter)を搭載する必要が生じる。しかしながら、撮像装置に光学ローパスフィルタを搭載すると、解像度が低下してしまう。
【0004】
そこで、特許文献1では、Blueの画素及びRedの画素を配列したシリコン膜を半導体製造工程により形成し、形成したシリコン膜の上層に、Green波長を吸収する有機光電膜(Organic Photoelectric Conversion Film)を配置するという光電変換部材の製造方法が開示されている。特許文献1に記載された光電変換部材では、当該光電変換部材の全面にGreenの波長を吸収する画素が存在するため、理論的に輝度モアレが発生せず、色モアレも大幅に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4700947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された光電変換部材を用いてGreenの光電変換を行った場合には、シリコンに比べて有機材料の応答が遅いため、強い光を受光後に急激に消灯した場合に、Green画素だけが残像となって残るという問題が発生する。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高画質でかつ応答特性の高いイメージセンサ(Image Sensor)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるイメージセンサは、基板と、基板上に形成され、光電変換を行う有機光電膜と、前記基板と前記有機光電膜との間に配置された複数の画素電極であって、前記基板の上面に平行な面内において、第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向にマトリックス状に並んで配置された複数の前記画素電極と、前記基板に形成され、前記第1方向にライン状に並んだ複数の前記画素電極を含む画素電極ラインにおける各画素電極から画素情報を読み出すとともに、前記画素電極ラインにおける前記各画素電極に前記光電変換を行わせるオン電圧または前記光電変換を停止させるオフ電圧を印加する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、複数の前記画素電極ラインのうち、前記画素情報を読み出す読み出しラインを、前記第2方向における一方側に走査するタイミングに同期して、前記オン電圧を印加する前記画素電極ラインを含んだ光電変換オン領域を前記一方側に走査する。
【0009】
また、前記駆動回路は、光電変換オン領域以外の前記画素電極ラインに前記オフ電圧を印加する。
【0010】
さらに、前記駆動回路は、前記読み出しラインよりも前記第2方向における他方側の前記画素電極ラインに前記オフ電圧を印加する。
【0011】
前記光電変換オン領域は、複数の前記画素電極ラインを含む。
【0012】
また、前記光電変換オン領域は、前記読み出しラインと、前記読み出しラインよりも前記一方側に配置された前記画素電極ラインと、を含む。
【0013】
さらに、前記光電変換オン領域に含まれた前記画素電極ラインのライン数は、前記オン電圧が印加される露光時間に基づいて設定される。
【0014】
前記駆動回路は、前記読み出しラインとして1ラインの前記画素電極ラインを走査するタイミングに同期して、前記光電変換オン領域を、前記一方側に1ライン移動させる。
【0015】
また、前記駆動回路は、前記読み出しラインとして複数ラインの前記画素電極ラインを走査するタイミングに同期して、前記光電変換オン領域を、前記一方側に複数ライン移動させる。
【0016】
さらに、前記駆動回路は、前記画素情報としてのキャリアを蓄積する浮遊拡散容量部を有し、前記オン電圧が印加される露光時間は、前記浮遊拡散容量部の容量に基づいて設定される。
【0017】
前記露光時間は、前記有機光電膜を照射する光の照度に基づいて設定される。
【0018】
また、前記駆動回路は、前記各画素電極に形成され、前記各画素電極から前記画素情報を読み出す読み出し回路と、前記各画素電極ラインに形成され、前記各画素電極ラインにおける画素電極に前記オン電圧及び前記オフ電圧を印加するバイアス回路とを有する。
【0019】
さらに、前記有機光電膜上に形成された光電膜電極をさらに備え、前記バイアス回路は、前記光電膜電極を、前記画素電極に対してプラスの電位となるように、前記画素電極に前記オン電圧を印加し、前記画素電極を、前記光電膜電極に対してプラスの電位となるように、前記画素電極に前記オフ電圧を印加する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高画質でかつ応答特性の高いイメージセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るイメージセンサを例示した上面図である。
図2】実施形態に係るイメージセンサを例示した断面図である。
図3】実施形態に係るイメージセンサを例示した回路図である。
図4】実施形態に係るイメージセンサにおいて、有機光電膜にオン電圧及びオフ電圧を印加させる駆動パターンを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示す。
図5】比較例に係るイメージセンサにおいて、有機光電膜にオン電圧を印加させる駆動パターンを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示す。
図6】実施形態に係るイメージセンサの動作を例示した図である。
図7】実施形態に係るイメージセンサの動作を例示した図である。
図8】実施形態に係るイメージセンサの動作を例示した図である。
図9】実施形態に係るイメージセンサにおいて、光の露光時間と有機光電膜中の残存キャリアの推移を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、キャリアの残存量を示す。
図10】比較例に係るイメージセンサにおいて、光の露光時間と有機光電膜20中の残存キャリアの推移を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、キャリアの残存量を示す。
図11】実施形態に係るイメージセンサにおいて、読み出しラインを-Y軸方側に1ライン走査するタイミングに同期して、5ラインの画素電極ラインを含む光電変換オン領域を-Y軸方向側に1ライン走査する動作を例示した図である。
図12】実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、読み出しラインを-Y軸方側に2ライン走査するタイミングに同期して、6ラインの画素電極ラインを含む光電変換オン領域を-Y軸方向側に2ライン走査する動作を例示した図である。
図13】実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、読み出しラインを-Y軸方側に4ライン走査するタイミングに同期して、8ラインの画素電極ラインを含む光電変換オン領域を-Y軸方向側に4ライン走査する動作を例示した図である。
図14】実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、1EA/4Lineの場合の残留キャリア及び光電変換オン領域を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、残留キャリア数を示す。
図15】実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、1EA/4Lineの場合の残留キャリア及び残留キャリア数に影響を及ぼす期間を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、残留キャリア数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0023】
(実施形態)
以下、実施形態に係るイメージセンサを説明する。まず、イメージセンサの構成を説明する。その後、イメージセンサの動作を説明する。そして、変形例として、回路規模を削減するイメージセンサを説明する。
【0024】
<イメージセンサの構成>
図1は、実施形態に係るイメージセンサを例示した上面図である。図2は、実施形態に係るイメージセンサを例示した断面図である。図3は、実施形態に係るイメージセンサを例示した回路図である。図1図3に示すように、イメージセンサ1は、基板10、有機光電膜20、光電膜電極30、画素電極40、駆動回路50、制御部60を備えている。図1では、有機光電膜20及び光電膜電極30を省いた上面図を示している。以下で、各構成を説明する。
【0025】
<基板>
基板10は、例えば、半導体基板である。基板10は、シリコン(Silicon)を含むシリコン基板が望ましい。基板10がシリコン基板の場合には、基板10において、赤色(Red)の光及び青色(Blue)の光の光電変換を行う画素が形成されてもよい。なお、基板10は、シリコン基板に限らず、他の半導体材料を含んだ基板でもよい。
【0026】
<有機光電膜>
有機光電膜20は、基板10上に形成されている。有機光電膜20は、いわゆるベタ膜として、基板10上に一体的に形成されている。有機光電膜20は、例えば、有機半導体(organic Semiconductor)を含む。有機光電膜20の厚さは、例えば、数百nmである。有機光電膜20は、光電変換を行う。例えば、有機光電膜20は、緑色(Green)の光の光電変換を行う。有機光電膜20は、光電膜電極30と複数の画素電極40とに挟まれている。有機光電膜20において、一つの画素電極40と光電膜電極30との間の部分は画素に対応する。
【0027】
<光電膜電極>
光電膜電極30は、有機光電膜20上に形成されている。光電膜電極30は、いわゆるベタ膜として、有機光電膜20上に一体的に形成されている。光電膜電極30は、複数の画素電極40と有機光電膜20を介して対向している。光電膜電極30は、複数の画素に共通であり、同じ電位である。例えば、光電膜電極30には、電源54によって光電変換を行う電圧VOPF_Onが印加されている。光電膜電極30は、例えば、透明電極である。光電膜電極30は、例えば、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、以下、ITOと呼ぶ。)を含んでいる。
【0028】
<画素電極>
画素電極40は、基板10と有機光電膜20との間において、基板10上に複数配置されている。画素電極40は、例えば、ITOを含んでいる。シリコン基板を基板10とし、シリコン基板でも光電変換を行う場合には、画素電極40は、ITO等の透明電極が望ましい。なお、画素電極40は、ITO以外の材料を含んでもよい。
【0029】
図1では、図が煩雑にならないように、いくつかの画素電極40に符号を付し、それ以外の画素電極40の符号を省略している。複数の画素電極40は、基板10の上面に平行な面内において、第1方向及び第1方向に交差する第2方向にマトリックス状に並んで配置されている。
【0030】
ここで、イメージセンサ1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。基板10の上面に直交する方向をZ軸方向とする。+Z軸方向を上方とし、-Z軸方向を下方とする。Z軸に直交する面をXY面とする。例えば、複数の画素電極40は、基板10の上面に、X軸方向及びY軸方向にマトリックス状に並んで配置されている。なお、XYZ直交座標軸系で示した上方及び下方は、説明の便宜上のものであり、実際のイメージセンサ1の各構成が配置される向きを示したものではない。
【0031】
複数の画素電極40は、例えば、1~2μmのピッチで配置されている。画素電極40は、各画素に設けられている。画素電極40は、有機光電膜20への光電変換用の電圧の印加と、各画素からの画素情報を読み出す機能とを有している。画素情報は、例えば、電荷等のキャリアである。有機光電膜20で発生したキャリアは、画素電極40を介して、駆動回路50によって出力される。
【0032】
図1に示すように、画素電極ライン41は、X軸方向にライン状に並んだ複数の画素電極40を含む。画素電極ライン41は、Y軸方向に複数本並んでいる。画素電極ライン41がY軸方向に並ぶ複数の本数を、複数のライン数とも呼ぶ。図1では、図が煩雑にならないように、いくつかの画素電極ライン41に符号を付し、それ以外の画素電極ライン41の符号を省略している。
【0033】
画素情報を読み出す場合には、画素電極ライン41における各画素電極40から画素情報が読み出される。画素情報を読み出す画素電極ライン41は、例えば、1ラインの画素電極ライン41である。画素情報を読み出す画素電極ライン41を読み出しラインと呼ぶ。図1では、読み出しラインは、点線で囲んで示されている。本実施形態のイメージセンサ1は、読み出しラインを-Y軸方向に1ラインずつ走査する。
【0034】
有機光電膜20を用いた光電変換を行う場合には、例えば、Y軸方向に並んだ所定のライン数の画素電極ライン41における各画素電極40に光電変換を行わせるオン電圧を印加させる。図1では、オン電圧を印加させる所定のライン数の画素電極ライン41として、3ラインの画素電極ライン41を一点鎖線で囲んで示している。
【0035】
オン電圧を印加させる所定のライン数の画素電極ライン41を光電変換オン領域と呼ぶ。光電変換オン領域は、複数の画素電極ライン41を含んでもよい。光電変換オン領域は、読み出しラインと、読み出しラインよりも-Y軸方向側に配置された画素電極ライン41とを含む。光電変換オン領域のオン電圧が印加された画素電極40と、光電膜電極30との間の有機光電膜20は、光電変換を行う。
【0036】
本実施形態のイメージセンサ1は、光電変換オン領域を-Y軸方向に走査する。例えば、読み出しラインを-Y軸方向に走査するタイミングに同期して、光電変換オン領域を-Y軸方向に走査する。具体的には、イメージセンサ1は、光電変換を行う画素電極ライン41を、画素情報の読み出しタイミングに合わせて走査させる。
【0037】
一方、有機光電膜20における光電変換を停止させる場合には、画素電極ライン41における各画素電極40に光電変換を停止させるオフ電圧を印加させる。図1では、一点鎖線で囲んでいない画素電極ライン41にはオフ電圧が印加されている。すなわち、光電変換オン領域以外の画素電極ライン41にはオフ電圧が印加されている。例えば、読み出しラインよりも+Y軸方向側の画素電極ライン41にはオフ電圧が印加されている。オフ電圧が印加された画素電極40と、光電膜電極30との間の有機光電膜20は、光電変換を停止する。
【0038】
<駆動回路>
駆動回路50は、基板10に形成されている。駆動回路50は、画素電極ライン41における各画素電極40から画素情報を読み出す。例えば、駆動回路50は、各画素電極40から画素情報を読み出す読み出しラインを-Y軸方向に走査しながら、読み出しラインにおける各画素情報を読み出す。
【0039】
また、駆動回路50は、画素電極ライン41における各画素電極40に光電変換を行わせるオン電圧または光電変換を停止させるオフ電圧を印加させる。具体的には、駆動回路50は、光電変換オン領域の画素電極ライン41にオン電圧を印加し、光電変換オン領域以外の画素電極ライン41にオフ電圧を印加する。
【0040】
駆動回路50は、複数の画素電極ライン41のうち、読み出しラインを-Y軸方向に走査するタイミングに同期して、光電変換オン領域を-Y軸方向に走査する。したがって、駆動回路50は、読み出しラインよりも+Y軸方向側の画素電極ライン41にオフ電圧を印加する。
【0041】
図3に示すように、有機光電膜20は、光電膜電極30と画素電極40との間に配置されている。光電膜電極30には、電圧VAが印加されている。画素電極40には、電圧VBが印加されている。有機光電膜20を備えたイメージセンサ1では、通常、正孔読み出しが行われる。よって、光電変換が行われている場合には、光電膜電極30の電圧VAは、画素電極40の電圧VBに対して、プラスの電位が印加される。
【0042】
例えば、各画素電極ライン41において、時間Tsecのみ光電変換が行われるように、光電膜電極30の電圧は、画素電極40の電圧に対してプラスの電位となる。光電変換が行われる時間Tsec、すなわち、画素電極40に光電変換を行うオン電圧が印加される時間Tsecを露光時間と呼ぶ。露光時間Tsecは、後述するように、画素情報としてのキャリアを蓄積する浮遊拡散(Floating Diffusion)容量部の容量に基づいて設定される。露光時間Tsec以外の期間において、画素電極40には、光電変換を停止させるオフ電圧が印加される。
【0043】
駆動回路50は、読み出し回路51及びバイアス回路52を有している。読み出し回路51は、各画素電極40に形成されている。読み出し回路51は、各画素電極40から画素情報を読み出す。読み出し回路51は、例えば、浮遊拡散容量部FD、トランジスタTR1、トランジスタTR2、トランジスタTR3を含んでいる。トランジスタTR1、トランジスタTR2、トランジスタTR3は、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)である。
【0044】
浮遊拡散容量部FDの一端は、画素電極40に接続されている。浮遊拡散容量部FDの他端は、接地されている。これにより、浮遊拡散容量部FDは、画素における有機光電膜20に形成されたキャリアを蓄積することができる。
【0045】
トランジスタTR1の一端は、電源に接続されている。トランジスタTR1の他端は、浮遊拡散容量部FDの一端に接続されている。非露光時、すなわち、光電変換を停止中には、トランジスタTR1をオンにする。よって、非露光時に、バイアス回路52によって浮遊拡散容量部FDに蓄積されたキャリアを、電源に導くことができる。一方、露光時には、トランジスタTR1をオフにし、有機光電膜20に形成されたキャリアを浮遊拡散容量部FDに蓄積する。
【0046】
なお、非露光時から露光時に遷移した直後のわずかの間に、非露光時に浮遊拡散容量部FDに蓄積されたキャリアを、トランジスタTR1を介して電源に導くことにより、浮遊拡散容量部FDを空にする。その後、トランジスタTR1をオフにして露光する。このように、トランジスタTR1は、リセット(Reset)トランジスタの機能を有する。
【0047】
トランジスタTR2の一端は、電源に接続されている。トランジスタTR2の他端は、トランジスタTR3の一端に接続されている。トランジスタTR2のゲートは、浮遊拡散容量部FDの一端に接続されている。よって、露光時に光電変換によって形成された電荷に応じて、信号を出力することができる。トランジスタTR2は、増幅トランジスタの機能を有する。
【0048】
トランジスタTR3の一端は、トランジスタTR2の他端に接続されている。トランジスタTR3の他端は、出力端子に接続されている。よって、トランジスタTR3をオンにすることにより、画素情報を出力端子から取り出すことができる。トランジスタTR3は、選択(Serect)トランジスタの機能を有する。
【0049】
バイアス回路52は、各画素電極ライン41に形成されている。バイアス回路52は、例えば、電圧可変電源53を含む。電圧可変電源53の一端は、画素電極ライン41における各画素電極40に接続されている。電圧可変電源53の他端は、接地されている。バイアス回路52は、各画素電極ライン41における画素電極40に光電変換を行わせるオン電圧及び光電変換を停止させるオフ電圧を印加する。
【0050】
バイアス回路52は、光電膜電極30を、画素電極40に対してプラスの電位となるように、画素電極40にオン電圧を印加する。また、バイアス回路52は、画素電極40を、光電膜電極30に対してプラスの電位となるように、画素電極40にオフ電圧を印加する。このように、駆動回路50は、各画素電極ライン41に有機光電膜20の光電変換機能をオンまたはオフする電圧印加機構として、バイアス回路52を搭載している。
【0051】
図4は、実施形態に係るイメージセンサにおいて、有機光電膜にオン電圧及びオフ電圧を印加させる駆動パターン(Pattern)を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示す。図5は、比較例に係るイメージセンサにおいて、有機光電膜にオン電圧を印加させる駆動パターンを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示す。
【0052】
図4に示すように、電圧VOPF_Onは、有機光電膜20が光電変換を効率的に行える電圧であり、電圧VOPF_Offは、有機光電膜20の光電変換が停止する電圧である。図4の電圧の極性は、ダイオード(Diode)動作時の順方向を基準としている。有機光電膜20は、逆方向電界をかけることで光電変換が促進される。太陽電池と同様の光電変換機能を有し、電界がかかっていない状態でも光電変換が発生する。このため、通常動作時と逆の電圧、つまり、ダイオードの順方向電圧を印加することにより、光電変換が停止する。よって、電圧VOPF_Onと電圧VOPF_Offとでは、一般的に電圧の極性が異なる。
【0053】
露光時間Tsecは、各画素電極ライン41にオン電圧が印加される時間を示す。露光時間Tsecは、浮遊拡散容量部FDの容量に基づいて設定される。また、露光時間Tsecは、有機光電膜20を照射する光の照度または光量に基づいて設定される。例えば、露光時間Tsecは、有機光電膜20において形成されたキャリアを蓄積する浮遊拡散容量部FDが飽和に至るまでの時間及び光量から計算される。露光時間Tsecは、以下の式(1)が示すように、イメージセンサ1の感度(E)、レンズの明るさ(F)、光量(S)に反比例し、浮遊拡散容量部FDの容量(C)に比例する。ここで、kは、一定値である。
【0054】
Tsec=k×C÷(F×E×S) (1)
【0055】
本実施形態のイメージセンサ1において、露光及び光電変換を行う場合には、バイアス回路52が出力する電圧VFDは、0のままである。これにより、有機光電膜20には、電源54の電圧VOPF_Onの電圧が印加され、光電変換が行われる。光電変換を行わない場合には、有機光電膜20に電圧VOPF_Offに相当する電圧を印加する必要がある。光電膜電極30には電圧VOPF_Onの絶対値に相当する正の電圧が印加されている。このため、有機光電膜20に順方向電圧である電圧VOPF_Offを印加するためには、バイアス回路52が出力する電圧VFDを電圧VOPF_Off-電圧VOPF_Onとする。
【0056】
光電変換を行わない期間には、有機光電膜20には順方向電圧がかかることになり、比較的大きな暗電流が流れることになる。このため、トランジスタTR1をオンとし、この電流を全て電源に流すことで対応する。
【0057】
図5に示すように、比較例においては、読み出しラインを-Y軸方向に走査するタイミングによらず、一定の電圧VOPF_Onが印加される。このため、露光に必要のない期間も光電変換が行われている。露光に必要のない期間に光電変換で生成されたキャリアは、通常、トランジスタTR1を介して、電源側に導かれる。しかしながら、有機光電膜20の反応速度は、シリコン等の単結晶に比較して遅い。このため、キャリアが有機光電膜20中に残り、キャリアの読み出し時に追加のキャリアとして出力されてしまう。よって、有機光電膜20中に残ったキャリアは、イメージセンサ1の画質に悪影響を及ぼす。具体的には、動画像のボケや残像といった形で現れる。
【0058】
これに対して、本実施形態では、露光時間Tsec以外では、有機光電膜20に光電変換を停止させるオフ電圧を印加する。よって、露光時間Tsec以外では、有機光電膜20中のキャリアの形成は抑制されるので、キャリアが有機光電膜20中に残り、画素のキャリアの読み出し時に追加のキャリアとして出力されることを抑制することができる。よって、残像やボケの少ない鮮明な動画像の撮影を実現することができる。
【0059】
<制御部>
制御部60は、駆動回路50の動作を制御する。例えば、制御部60は、タイミングコントローラを含み、駆動回路50に対して、所定のタイミングで、画素電極ライン41における各画素電極40から画素情報を読み出すとともに、画素電極ライン41における各画素電極40にオン電圧またはオフ電圧を印加させるように制御する。
【0060】
<イメージセンサの動作>
次に、本実施形態に係るイメージセンサ1の動作を説明する。図6図8は、実施形態に係るイメージセンサの動作を例示した図である。本実施形態のイメージセンサ1は、動作の過程で、オン電圧が印加された画素電極ライン41及びオフ電圧が印加された画素電極ライン41を含んでいる。そして、オン電圧が印加された画素電極ライン41を含む光電変換オン領域は、読み出しラインの-Y軸方向のスキャンに同期して、-Y軸方向にスクロールするように移動する。そこで、図1及び図6図8に示す特定の画素電極ライン41a(上から5ライン目)に着目して、イメージセンサ1の動作を説明する。
【0061】
図1及び図4に示すように、時間TOffにおいて、画素電極ライン41aは、光電変換オン領域に含まれていない。よって、画素電極ライン41aに対応する有機光電膜20には、電圧VOPF_Offが印加されるように、バイアス回路52は、画素電極ライン41aに電圧VFD=電圧VOPF_Off-電圧VOPF_Onの電圧を印加する。
【0062】
次に、図6及び図4に示すように、時間TOnにおいて、駆動回路50は、読み出しラインを-Y軸方向に1ライン分走査させて、画素電極40から画素情報を読み出す。また、駆動回路50は、読み出しラインの走査に同期させて、光電変換オン領域を-Y軸方向に1ライン分走査させる。そうすると、画素電極ライン41aは、光電変換オン領域に含まれるようになる。したがって、画素電極ライン41aに対応する有機光電膜20には、電圧VOPF_Onが印加されるように、バイアス回路52は、画素電極ライン41aにオン電圧を印加する。具体的には、バイアス回路52は、オン電圧として、電圧VFD=0を印加する。
【0063】
次に、図7及び図4に示すように、時間TReadにおいて、駆動回路50は、読み出しラインを-Y軸方向に1ライン分走査させて、画素電極ライン41aから画素情報を読み出す。具体的には、画素電極ライン41aにおける各画素電極40に対応するトランジスタTR3のゲートをオンにして、画素電極40を介して画素情報を読み出す。この時点で、画素電極ライン41aの各画素は、必要な露光を完了している必要がある。このため、図6に示すように、駆動回路50は、読み出しラインよりも-Y軸方向側の画素電極ライン41に光電変換を行わせている。例えば、読み出しラインから-Y軸方向側に2ライン分の画素電極ライン41にオン電圧を印加する。すなわち、光電変換オン領域は、読み出しライン及び読み出しラインから-Y軸方向側に2ライン分の画素電極ライン41を含んでいる。
【0064】
各画素電極ライン41の読み出し期間は、露光時間よりも非常に短い。一方、露光時間は、0.1msec~30msec程度である。よって、上述のように、読み出し期間に至る前から予め露光する。具体的には、読み出しラインよりもスキャン方向である-Y軸方向側の複数の画素電極ライン41に跨って光電変換が行われる。
【0065】
露光時間Tsecに相当するライン数(L)は、フレームレート(Frame Rate)(F)、画面全体のライン数(Lf)、露光時間(Tsec)により、以下の(2)式のように決定される。
【0066】
L=Tsec×F×Lf (2)
【0067】
このように、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数L、すなわち、光電変換オン領域に含まれる画素電極ライン41のライン数Lは、画素電極ライン41における画素電極40にオン電圧が印加される露光時間Tsecに基づいて設定される。
【0068】
次に、図8及び図4に示すように、画素電極ライン41aは、光電変換オン領域から外れる。具体的には、画素電極ライン41aは、読み出しラインよりも+Y軸方向側に位置する。よって、画素電極ライン41aに対応する有機光電膜20には、電圧VOPF_Offが印加されるように、バイアス回路52は、画素電極ライン41aに電圧VFD=電圧VOPF_Off-電圧VOPF_Onの電圧を印加する。このように、駆動回路50は、画素情報を読み出す画素電極ライン41よりも+Y軸方向側の画素電極ライン41にオフ電圧を印加する。
【0069】
図9は、実施形態に係るイメージセンサにおいて、光の露光時間と有機光電膜20中の残存キャリアの推移を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、キャリアの残存量を示す。図10は、比較例に係るイメージセンサにおいて、光の露光時間と有機光電膜20中の残存キャリアの推移を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、キャリアの残存量を示す。
【0070】
図9及び図10に示すように、有機光電膜20では、応答性がシリコン等の単結晶半導体に比較して遅い。よって、光電変換の結果、生じたキャリアが即時的に出力されない。出力されないキャリアは、残存キャリアとして残存する。そして、残存キャリアは時間の経過とともに減少する。このことは、有機光電膜20に照射した光を消灯した際に残存キャリアという形で現れる。図9の本実施形態では、必要最低限の時間だけ露光している。すなわち、照度、浮遊拡散容量部FDの容量等により設定された露光時間Tsecだけ露光される。これにより、残存キャリアの減少は、比較例より早い。
【0071】
これに対して、図10の比較例では、図9の本実施形態よりも露光時間が長い。例えば、比較例の残存キャリアの減少挙動reB(T)は、本実施形態の残存キャリアの減少挙動reA(T)を複数(n=0、1、・・・n)総和したものとなっている。よって、比較例において、照射した光を消灯した際の残存キャリアは、本実施形態において消灯した際の残留キャリアよりも多い。これにより、残留キャリアが出力される時間も長くなる。
【0072】
このような残存キャリアは、画像では、残像やボケとして現れる。このため、残存キャリアは、できるだけ少なくすることが求められる。本実施形態では、読み出しラインのスキャンに同期させて、有機光電膜20に対して、光電変換を行うオン電圧及び光電変換を停止させるオフ電圧を印加する。よって、必要な時間だけ露光されるので、残存キャリアを低減することができる。
【0073】
また、有機光電膜20では、高輝度ほど、残留キャリアが増加するという特徴がある。そして、輝度及び露光時間は、発生キャリア数と正の相関を有している。よって、暗い場所における撮影では、低輝度のため、長時間露光でも残存電子を少なくすることができる。一方、明るい場所における撮影では、高輝度のため、残存キャリアの発生は多くなるが、短時間の露光であれば、残存キャリアを少なくすることができる。
【0074】
比較例のイメージセンサでは、常時光電変換を行うため、有機光電膜20に常時オン電圧が印加されている。このため、短時間の露光は、構造上困難である。一方、本実施形態のイメージセンサ1は、上述したように、短時間の露光を実現する構成となっているので、高輝度の撮影でも、高画質でかつ応答特性を向上させることができる。
【0075】
下記表1は、実施形態に係るイメージセンサにおいて、(2)式を用いて算出した露光時間Tsecに相当するライン数を例示した表である。
【0076】
表1に示すように、曇天午前10時太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、25000(lx)、80(μs)及び10ラインである。曇天昼太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、32000(lx)、63(μs)及び8ラインである。晴天午後3時太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、35000(lx)、57(μs)及び7ラインである。晴天午前10時太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、65000(lx)、31(μs)及び4ラインである。晴天昼太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、100000(lx)、20(μs)及び3ラインである。雪山昼の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、200000(lx)、10(μs)及び2ラインである。
【0077】
【表1】
【0078】
このように、照度及び浮遊拡散容量部FDの容量等から算出した露光時間Tsec及びオン電圧を印加するライン数を設定することにより、高輝度でも、短時間の露光とすることができ、高画質でかつ応答特性の高いイメージセンサ1とすることができる。
【0079】
<変形例>
本実施形態のイメージセンサ1において、駆動回路50は、読み出しラインとして、1ラインの画素電極ライン41を-Y軸方側に走査するタイミングに同期して、光電変換オン領域を-Y軸方向側に1ライン移動させている。これに対して、変形例のイメージセンサ1では、駆動回路50は、読み出しラインとして、複数ラインの画素電極ライン41を-Y軸方側に走査するタイミングに同期して、光電変換オン領域を、-Y軸方向側に複数ライン移動させる。まず、実施形態と同様の1EA/1Lineの動作を説明した後で、変形例の1EA/2Line及び1EA/4Lineの動作を説明する。
【0080】
<1EA/1Line>
図11は、実施形態に係るイメージセンサにおいて、読み出しラインを-Y軸方向側に1ライン走査するタイミングに同期して、光電変換オン領域を-Y軸方向側に1ライン走査する動作を例示した図である。この動作を、1EA/1Lineと呼ぶ。図11に示すように、光電変換オン領域は、5ラインの画素電極ライン41を含んでいる。黒色の太線は、オフ電圧が印加された画素電極ライン41を示す。グレーの太線は、オン電圧が印加された画素電極ライン41を示す。点線は、読み出しラインを示す。以下、図12及び図13も同様である。
【0081】
駆動回路50は、-Y軸方向に読み出しラインを走査させて、各画素電極40から画素情報を読み出す。例えば、図に示すNo1~No5の画素電極ライン41から画素情報を読み出す。その際、駆動回路50は、-Y軸方向に読み出しラインを1ライン走査させるタイミングに同期させて、光電変換オン領域を-Y軸方向側に1ライン走査している。
【0082】
例えば、読み出しラインがNo1の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、No1~No5の画素電極ライン41を含む。読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo2の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、No2~No6の画素電極ライン41を含む。同様に、読み出しラインを1ラインずつ走査させて、読み出しラインがNo3、No4及びNo5の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、それぞれ、No3~No7、No4~No8及びNo5~No9の画素電極ライン41を含む。
【0083】
<1EA/2Line>
図12は、実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、読み出しラインを-Y軸方側に2ライン走査するタイミングに同期して、6ラインの画素電極ライン41を含む光電変換オン領域を-Y軸方向側に2ライン走査する動作を例示した図である。この動作を、1EA/2Lineと呼ぶ。図12に示すように、光電変換オン領域は、6ラインの画素電極ライン41を含んでいる。
【0084】
駆動回路50は、-Y軸方向に読み出しラインを走査させて、各画素電極40から画素情報を読み出す。例えば、図に示すNo1~No5の画素電極ライン41から画素情報を読み出す。その際、駆動回路50は、-Y軸方向に読み出しラインを2ライン走査させるタイミングに同期させて、光電変換オン領域を-Y軸方向側に2ライン走査している。
【0085】
例えば、読み出しラインがNo1の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、No1~No6の画素電極ライン41を含む。しかしながら、1EA/2Lineの動作の場合には、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo2の画素電極ライン41の場合にも、光電変換オン領域は、No1~No6の画素電極ライン41を含んだままである。
【0086】
そして、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo3の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、2ライン-Y軸方向側に移動して、No3~No8の画素電極ライン41を含むようになる。次に、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo4の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、No3~No8の画素電極ライン41を含んだままである。
【0087】
そして、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo5の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、2ライン-Y軸方向側に移動して、No5~No10の画素電極ライン41を含むようになる。
【0088】
このように、1EA/2Lineの動作の場合には、駆動回路50は、読み出しラインの2ライン目を走査するタイミングで、光電変換オン領域を2ライン分走査させている。
【0089】
<1EA/4Line>
図13は、実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、読み出しラインを-Y軸方側に4ライン走査するタイミングに同期して、8ラインの画素電極ライン41を含む光電変換オン領域を-Y軸方向側に4ライン走査する動作を例示した図である。この動作を、1EA/4Lineと呼ぶ。図13に示すように、光電変換オン領域は、8ラインの画素電極ライン41を含んでいる。
【0090】
駆動回路50は、-Y軸方向に読み出しラインを走査させて、各画素電極40から画素情報を読み出す。例えば、図に示すNo1~No5の画素電極ライン41から画素情報を読み出す。その際、駆動回路50は、-Y軸方向に読み出しラインを4ライン走査させるタイミングに同期させて、光電変換オン領域を-Y軸方向側に4ライン走査している。
【0091】
例えば、読み出しラインがNo1の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、No1~No8の画素電極ライン41を含む。また、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo2の画素電極ライン41の場合にも、光電変換オン領域は、No1~No8の画素電極ライン41を含んだままである。さらに、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo3の画素電極ライン41の場合にも、光電変換オン領域は、No1~No8の画素電極ライン41を含んだままである。また、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo4の画素電極ライン41の場合にも、光電変換オン領域は、No1~No8の画素電極ライン41を含んだままである。
【0092】
そして、読み出しラインを1ライン走査させて、読み出しラインがNo5の画素電極ライン41の場合には、光電変換オン領域は、4ライン-Y軸方向側に移動して、No5~No12の画素電極ライン41を含むようになる。
【0093】
このように、1EA/4Lineの動作の場合には、駆動回路50は、読み出しラインの4ライン目を走査するタイミングで、光電変換オン領域を4ライン分走査させている。
【0094】
変形例における1EA/2Line及び1EA/4Lineの動作では、駆動回路50は、読み出しラインを-Y軸方側に複数ライン走査するタイミングに同期して、光電変換オン領域を-Y軸方向側に複数ライン走査している。読み出しラインの走査タイミングに同期させる画素電極ライン41を複数ラインとすることにより、バイアス回路52の搭載数を低減することができ、回路規模を抑制することができる。
【0095】
図14は、実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、1EA/4Lineの場合の残留キャリア及び光電変換オン領域を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、残留キャリア数を示す。1段目~4段目は、それぞれ、No1~No4の画素電極ライン41における残留キャリア数を示す。図15は、実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、1EA/4Lineの場合の残留キャリア及び残留キャリア数に影響を及ぼす期間を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、残留キャリア数を示す。1段目~4段目は、それぞれ、No1~No4の画素電極ラインにおける残留キャリア数を示す。
【0096】
図14に示すように、1EA/4Lineの場合には、読み出しラインがNo1~No4の画素電極ライン41を走査する間、光電変換オン領域は移動しない。画素情報を読み出された後で、光電変換オン領域における各画素電極ライン41の残留キャリアは減少する。
【0097】
図15に示すように、1EA/4Lineの場合には、No1よりもNo4の方が残留キャリアに影響を及ぼす期間が長くなる。よって、1EA/4Lineの場合には、1EA/1Lineの場合に比べて、残留キャリアの影響が大きくなる。しかしながら、その影響は、全画素電極ライン41にオン電圧を印加する比較例に比べれば格段に小さい。よって、変形例における回路規模削減の効果は、残留キャリアの影響よりも有利である。
【0098】
下記の表2は、実施形態の変形例に係るイメージセンサにおいて、読み出しラインを-Y軸方側に複数ライン走査するタイミングに同期して、光電変換オン領域を-Y軸方向側に走査する場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最小値及び最大値を例示した表である。
【0099】
表2に示すように、曇天午前10時太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、25000(lx)、80(μs)及び10ラインである。そして、バイアス回路52の搭載比率P、すなわち、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最小値は、いずれも10ラインである。一方、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最大値は、それぞれ、11ライン、13ライン及び17ラインである。ここで、最小値は、60fps時のライン数Lと同じライン数であり、最大値は、L+P-1である。
【0100】
曇天昼太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、32000(lx)、63(μs)及び8ラインである。そして、バイアス回路52の搭載比率Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最小値は、いずれも8ラインである。一方、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最大値は、それぞれ、9ライン、11ライン及び15ラインである。
【0101】
【表2】
【0102】
晴天午後3時太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、35000(lx)、57(μs)及び7ラインである。そして、バイアス回路52の搭載比率Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最小値は、いずれも7ラインである。一方、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最大値は、それぞれ、8ライン、10ライン及び14ラインである。
【0103】
晴天午前10時太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、65000(lx)、31(μs)及び4ラインである。そして、バイアス回路52の搭載比率Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最小値は、いずれも4ラインである。一方、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最大値は、それぞれ、5ライン、7ライン及び11ラインである。
【0104】
晴天昼太陽光の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、100000(lx)、20(μs)及び3ラインである。そして、バイアス回路52の搭載比率Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最小値は、いずれも3ラインである。一方、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最大値は、それぞれ、4ライン、6ライン及び10ラインである。
【0105】
雪山昼の場面では、照度、露光時間Tsec及び60fps時のライン数は、それぞれ、200000(lx)、10(μs)及び2ラインである。そして、バイアス回路52の搭載比率Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最小値は、いずれも2ラインである。一方、オン電圧を印加する画素電極ライン41のライン数Pを、2ライン、4ライン及び8ラインにした場合の残留キャリア数に影響する光電変換期間の最大値は、それぞれ、3ライン、5ライン及び9ラインである。
【0106】
このように、例えば、曇天昼太陽光のような比較的輝度が低い場所においては、バイアス回路52の搭載比率を高くしても、残存キャリアの影響を抑制することができ、回路規模を縮小することができる。また、雪山昼のような照度が高い場合には、曇天昼太陽光のような比較的輝度が低い場所に比べて、バイアス回路52の搭載比率を高くすることはできない。しかしながら、例えば、60fpsのイメージセンサにおいては、搭載比率を2ラインとすることができる。よって、回路規模を縮小することができる。
【0107】
次に、本実施形態及び変形例の効果を説明する。本実施形態のイメージセンサ1において、駆動回路50は、光電変換オン領域の画素電極ライン41にオン電圧を印加し、光電変換オン領域以外の画素電極ライン41にオフ電圧を印加する。よって、露光の必要のない画素電極ライン41にオン電圧を印加しないので、有機光電膜20に残留するキャリア数を低減することができる。これにより、高画質でかつ応答特性を向上させることができる。
【0108】
また、駆動回路50は、読み出しラインよりも走査が進行する前方の画素電極ラインにオン電圧を印加する。よって、あらかじめ飽和するまでキャリアを蓄積することができるので、画質を向上させることができる。
【0109】
光電変換オン領域に含まれる画素電極ラインのライン数は、オン電圧が印加される露光時間に基づいて設定される。また、露光時間Tsecは、有機光電膜20を照射する光の照度に基づいて設定される。よって、適切なライン数及び露光時間Tsecの画素電極ライン41にオン電圧を印加できるので、画質を向上させることができる。
【0110】
変形例においては、曇天、晴天、雪山等の照度に応じて、光電変換オン領域に含まれる画素電極ラインのライン数を設定する。よって、残留キャリアの影響を抑制しつつ、駆動回路50の規模を縮小することができる。
【0111】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態及び変形例の各構成は、相互に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 イメージセンサ
10 基板
20 有機光電膜
30 光電膜電極
40 画素電極
41 画素電極ライン
50 駆動回路
51 読み出し回路
52 バイアス回路
53 電圧可変電源
54 電源
60 制御部
FD 浮遊拡散容量部
TR1、TR2、TR3 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15