(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】清掃シート
(51)【国際特許分類】
A47L 13/17 20060101AFI20240311BHJP
A47K 11/10 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A47L13/17 A
A47K11/10
(21)【出願番号】P 2020014401
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】金丸 佳央理
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-178446(JP,A)
【文献】特表2000-509315(JP,A)
【文献】特開2002-102106(JP,A)
【文献】特開2011-026001(JP,A)
【文献】特表平07-504637(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211737(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0325649(US,A1)
【文献】国際公開第2014/129394(WO,A1)
【文献】特開2019-162279(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060351(WO,A1)
【文献】特開2017-013484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L13/00-13/60
A47K11/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙シートに薬液を含浸され、重ね合わされた端部の位置が同じになるように折り畳まれた状態で包装体に収容される清掃シートであって、
前記清掃シートの折り部と対向する捲り部を備え、
前記捲り部
のみに、エンボスにより前記清掃シートの他の部分と異なる模様とされる模様処理が施されていることを特徴とする清掃シート。
【請求項2】
前記捲り部は、撥水剤が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃シート。
【請求項3】
前記捲り部は、端部が波形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トイレなどを清掃するための清掃シートとして、薬液が含浸された状態で折り畳まれて包装体等の容器に収容されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような清掃シートは、重なりしろがわかりにくいため、開く位置がわかりにくく、また、シートが薬液によってくっついており、開きにくいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、折り畳まれていても開く位置がわかりやすく、開きやすい清掃シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
原紙シートに薬液を含浸され、重ね合わされた端部の位置が同じになるように折り畳まれた状態で包装体に収容される清掃シートであって、
前記清掃シートの折り部と対向する捲り部を備え、
前記捲り部のみに、エンボスにより前記清掃シートの他の部分と異なる模様とされる模様処理が施されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の清掃シートにおいて、
前記捲り部は、撥水剤が塗布されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の清掃シートにおいて、
前記捲り部は、端部が波形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、折り畳まれていても開く位置がわかりやすく、開きやすい清掃シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る折り畳まれた状態の清掃シートを示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係る開かれた状態の清掃シートを示す平面図である。
【
図3】(a)は、従来の紙の繊維配向を示す図、(b)は、本発明の繊維配向を示す図である。
【
図4】清掃シートのエンボス部分の拡大図及び断面図である。
【
図5】エンボスの接触面積の一例を示す説明図である。
【
図6】本実施形態の変形例に係る折り畳まれた状態の清掃シートを示す平面図である。
【
図7】(a)、(b)共に本実施形態の変形例に係る折り畳まれた状態の清掃シートを示す平面図である。
【
図8】本実施形態の変形例に係る折り畳まれた状態の清掃シートを示す平面図である。
【
図9】本実施形態の変形例に係る折り畳まれた状態の清掃シートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1から
図9を参照しつつ、本発明の実施形態である清掃シートとしてのトイレクリーナーを詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
なお、清掃シートは、トイレクリーナーを一例として説明するが、清掃シートには、清拭用途の薬液を含浸させたウェットティシューなども含まれる。
また、便宜的に、図に示したように、X方向及びY方向並びに上下方向及び左右方向を定めて説明する。
【0013】
[本実施形態]
本発明に係るトイレクリーナーSは、原紙シートがプライ加工(積層)されたものであって、所定の薬液が含浸されているウェットタイプのトイレ用清掃シートであることが好ましい。
【0014】
トイレクリーナーSは、例えば
図1に示すように、2つに折り畳まれた状態において、折り部Vを備え、折り部Vと対向する縁部に他の部分の色と異なる色で着色が施された捲り部1を備える。
【0015】
なお、ここでいう縁部とは、シート端からシート中心部までの一部分であり、シート端から0mm~7mmの距離に着色が施されるのが好ましい。
また、本実施形態における縁部への着色は、連続的な着色に限られず、断続的な着色でも構わない。
【0016】
なお、原紙シートは3枚以上の原紙シートをプライ加工されたものであると、後述するCMCの塗布に斑が生じてしまうため、2枚の原紙シートをプライ加工したものが好ましい。
また、原紙シートは、プライ加工されていない、1枚の原紙シートにより構成されていてもよい。
また、トイレクリーナーSの表面は原紙シートのままでも良いが、エンボス加工が施されていることが好ましく、例えば、
図2に示すように、2種類のエンボスEM11及びEM12が設けられている。
【0017】
原紙シートの1枚あたりの目付け量は、30g/m2~150g/m2程度である。なお、目付け量は、JIS P8124に基づくものである。
また、本実施形態のトイレクリーナーSの原紙シートは、便器等を掃除した後そのまま便器の水溜まりに廃棄できるよう、水解性の繊維集合体から構成されている。
【0018】
[繊維集合体]
繊維集合体としては、水解性を有する繊維集合体であれば特に限定されないが、単層又は複数層の紙又は不織布を好適に用いることができる。原料繊維は、天然繊維でも合成繊維でも良く、これを混合することも可能である。好適な原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維、ポリ乳酸等からなる生分解性繊維等を挙げることができる。また、これらの繊維を主体としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリニトリル繊維、合成パルプ、ガラスウール等を併用することができる。
【0019】
特に、繊維集合体として、少なくともパルプを含むものであることが好ましく、原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を適宜の割合で配合したものが適する。
より好ましくは、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50質量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものがあげられる。針葉樹晒クラフトパルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、繊維間隙間が減少し、水分蒸散が抑制されるため、トイレクリーナーSの乾きにくさを向上させることができる。
また、粉砕されたパルプからなるシート、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりしたシートにより構成されていてもよい。
【0020】
[水溶性バインダー]
また、トイレクリーナーSの原紙シートには紙力増強のための水溶性バインダーが付与されている。水溶性バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
【0021】
特に、水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
【0022】
(多糖誘導体)
多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンプン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)のアルカリ金属塩が好ましい。
【0023】
(CMC)
CMCについては、そのエーテル化度が0.6~2.0、特に0.9~1.8、更に好ましくは1.0~1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となるためである。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、薬液中の架橋剤である特定金属イオンとの架橋により、未膨潤化のまま原紙シートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうるトイレ用清掃シートとしての強度を発現することができるからである。
本実施形態のトイレクリーナーSの場合には、水溶性バインダーとして、CMCが付与されている。
【0024】
CMCは、原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCMCの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、トイレクリーナーSは、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて便器の縁等を強く擦っても破れにくくなるからである。
【0025】
(合成高分子)
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。
天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
【0026】
(CNF)
また、トイレクリーナーSには、セルロースナノファイバー(CNF)を添加することができる。
即ち、水溶性バインダー(本実施形態の場合には、CMC)には、CNFを添加することができ、原紙シートの比表面積はパルプのみの組成のものより大きくなる。
【0027】
ここで、CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
【0028】
CNFは、原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCNFの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、トイレクリーナーSは、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて便器の縁等を強く擦っても破れにくくなるからである。
【0029】
(CNFに使用可能なパルプ繊維)
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(CNFの解繊方法)
CNFの製造に用いられる解繊方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
なお、上記解繊方法などにより機械的処理のみ施した(変性させていない)CNF、即ち、官能基未修飾のCNFは、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたものに対し、熱安定性が高いため、より幅広い用途に使用可能であるが、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたCNFを本発明に使用することも可能である。
また、例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、酵素処理を施してもよい。化学的処理を施したCNFとしては、例えば、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等の、直径が3nm~4nmとなるiCNF(individualized CNF)(シングルナノセルロース)が挙げられる。
また、化学的処理や酵素処理のみを施したCNFや、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施したCNFでもよい。
【0031】
[繊維配向の比率]
また、トイレクリーナーSの縦横の繊維配向の比率(縦/横)については、特に限定するものではないが、0.8~2.0であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。
紙の製造工程である抄紙工程においては抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、一般的には、紙は、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並んでいる(例えば、縦:横=2.3:1等。
図3(a)参照)という特性がある。そのため、横方向の繊維密度が薄く繊維が断裂しやすい。即ち、拭くときの方向によって破れやすい。そこで、本実施形態においては、
図3(b)に示すように、トイレクリーナーSの縦横の繊維配向比率を0.8~2.0、好ましくは、0.8~1.2とすることで、どの方向から拭いても破れにくいトイレクリーナーSを提供することができる。なお、縦横の繊維配向の比率は、MD及びCD方向の湿潤強度の比により求めることができる。
【0032】
[薬液]
また、本実施形態のトイレクリーナーSには、水溶性バインダー(本実施形態のトイレクリーナーSの場合には、CMC)と架橋する架橋剤を含む所定の薬液が含浸されている。なお、薬液には、この他、グリコールエーテル類、水性洗浄剤、防腐剤、除菌剤、有機溶剤等の補助剤が含まれる。
当該薬液は、水溶性バインダーが含浸された後に、乾燥された原紙シートに対して、含浸される。
また、薬液は、トイレクリーナーSの基材である原紙シートの質量に対して100質量%~500質量%含浸させるが、好ましくは150質量%~300質量%である。
【0033】
(架橋剤)
架橋剤としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができるが、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
【0034】
(グリコールエーテル類)
グリコールエーテル類とは、2価アルコールであるグリコールの片末端、あるいは両末端の水酸基をエーテル化した構造であり、分子内に疎水性のアルキル基並びに親水性のエーテル基及び水酸基を有する化合物であり、界面活性剤に比べ分子量が小さく、従来の界面活性剤のみを含んだ洗剤よりも動的表面張力が低いため、薬液と汚れとの間の界面形成をより速く起こすことができる。また、グリコールエーテル類は、疎水性の油分や汚れと水を相溶化するカップリング剤としても働き、汚れを引き離し、再付着することを防止することができる。そのため、薬液にグリコールエーテル類を添加することで、トイレクリーナーSの拭き取り性能を向上させることができる。
【0035】
本発明における薬液には、グリコールエーテル類であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール モノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコール モノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が含まれている。
【0036】
特に、PGMEは、通常、洗浄成分として添加され洗浄力が向上することが知られているが、直接シート強度を向上する効果を示し、CMCと多価金属イオンによるシート強度向上効果を高める効果を持っている。その結果、高い消臭効果を奏するものと考えられる。PGMEの付与量は、20~60g/m2であるのが好ましく、より好ましくは26~40g/m2である。20g/m2未満であると消臭効果が十分得られない。また、60g/m2よりも多く付与しても、60g/m2付与した場合よりも大きな消臭効果は得られない。
DGMEは、PGMEと同様に、シート強度を向上する効果を有する補助剤である。DGMEの付与量は、5g/m2~30g/m2であるのが好ましく、より好ましくは10g/m2~20g/m2である。
ただし、最もシート強度を向上させることができるDGMEのみを添加した場合、使用者の手の脂を拭き取ってしまい、手荒れに繋がる恐れがある。そのため、手荒れを防ぎつつ、シート強度を向上させるために、DGME以外にPGME等のグリコールエーテル類を薬液に適正な配合で調合する必要がある。
【0037】
(水性洗浄剤)
水性洗浄剤としては、例えば、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。
【0038】
(防腐剤)
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。
【0039】
(除菌剤)
除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
【0040】
また、上述した薬液の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を薬液に含ませてもよい。例えば、防腐剤や除菌剤を可溶化する補助剤としてプロピレングリコール(PG)を使用することができる。
【0041】
[エンボス]
また、トイレクリーナーSの表面は原紙シートのままでも良いが、エンボス加工が施されていることが好ましく、トイレクリーナーSの場合、例えば、
図2に示す通り、2種類のエンボスEM11及びEM12がエンボス加工により施されている。
【0042】
エンボスの形状、数、面積率等は任意であるが、トイレクリーナーSの場合、エンボスEM11は、菱形格子となるように配置されており、これにより、エンボスEM11が正方格子や矩形格子に配置される場合と比較して拭きムラを軽減することができる。また、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されている。
【0043】
エンボスEM11は、
図4(a)に示すように、膨出部PR21が曲面の形状を有している。
また、エンボスEM12は、
図4(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
【0044】
そして、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されているので、エンボスEM11の膨出部PR21及びエンボスEM12の膨出部PR22は近接して密着することにより、
図4(c)に示すように連なったエンボスEM21として形成されることになる。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
【0045】
このように形成された2種類のエンボスEM11及びEM12により、清掃対象物等との接触面積を増やすことができるので、トイレクリーナーSの硬さが緩和されて、拭き取り性能が高くなる。
【0046】
すなわち、トイレクリーナーSの全面に、膨出部PR21が曲面であるエンボスEM11と、膨出部PR22が平面であるエンボスEM12を組み合わせて形成することにより、拭き取り作業時にトイレクリーナーSに力が加わった時点で各エンボスが変形して、初めて接触面積が増加することになるので、接触面積を増加させると共に、各エンボスの変形に起因して、しなやかさも向上することになる。
【0047】
例えば、
図5(a)に示すように、単一のエンボスEM11の場合には、拭き取り作業時にトイレクリーナーSに加わる力によりエンボスEM11が変形して生じる接触面積CN31は、エンボスEM11近傍に離散的に生じる。これに対して、2種類のエンボスEM11及びEM12を組み合わせた場合には、
図5(b)に示すように、拭き取り作業時にトイレクリーナーSに加わる力によりエンボスEM11及びEM12が変形して生じる接触面積SN32は、
図5(a)の接触面積CN31と比較して、増加することが分かる。
【0048】
また、2種類のエンボスEM11及びEM12は、通常のエンボスの効果を同様に得ることができ、トイレクリーナーSの風合い、吸収性及び嵩高性等を向上させることができる。さらに、連なったエンボスEM21は、通常のエンボスと同様に、エンボスを施すことによる見栄えの良さの効果も得ることができる。
【0049】
[折り加工]
トイレクリーナーSは、折り加工されることにより、2つ折りに折り畳まれ、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム内等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用されるが、このとき、
図1に示すように、シートのX方向又はY方向の中心位置からずれた位置に設けられた折り部Vによって、重ね合わされた端部の位置がずれるように折り畳まれる。
具体的には、トイレクリーナーSのX方向又はY方向の中心位置から1mmから5mmずれた折り部Vによって折り畳まれ、シートの端部が2mmから10mmずれて重なっていることが好ましく、シートのX方向又はY方向の中心位置から1.5mmから2.5mmずれた折り部Vによって折り畳まれ、シートの端部が3mmから5mmずれて重なっていることがさらに好ましい。
【0050】
上記したように、折りずれを起こすように折り部Vが形成されることで、折り畳まれたシート同士が薬液によりくっついていても、容易に剥がして広げることができる。また、複数プライのシートである場合に、これを誤って分離させてしまうおそれも低減することができる。
なお、シート端部のずれが2mmより小さいと広げ易くする効果が十分に得られず、また、10mmより大きいとシートが重なっていない範囲が広くなり過ぎて、シートが乾燥し易くなり、またシートの見栄えも悪化することから、上記の範囲が好ましい。
【0051】
なお、シートの端部がずれるようにして折り畳むことによって折り畳まれたシートを広げやすくする構成は、本実施形態に限られず、折り畳まれた清掃シートにおいて広く用いることができる。
また、
図6に示すように、折りずれを設けず、重ね合わされた端部の位置が同じになるように折り畳んでもよい。
【0052】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施の形態によれば、トイレクリーナーSは、折り畳まれた状態において、折り部Vを備え、折り部Vと対向する縁部に着色が施された捲り部1を備える。このため、使用者が折り畳まれたシートを広げるにあたって重なりしろがわかりやすくなり、開く位置がわかりやすくなる。
【0053】
[変形例]
以下、本実施形態の変形例につき説明する。
【0054】
また、本実施形態においては、捲り部1は着色のみ施されているものとしたが、これに限られず、例えば、油剤やシリコン等の撥水剤を捲り部1に塗布するようにしても構わない。
このようにすることで、捲り部1に薬液が含浸されず、折り畳まれた状態であってもシート同士がくっつきにくくなり、捲り部1だけが離間しやすくなるため、重なりしろがわかりやすくなるとともに、捲り部1をつまみやすくなり、シートを広げやすくなる。
【0055】
また、
図1においては、裁断工程における切断面である捲り部1の端部の形状が直線状である場合につき図示したが、裁断機器の形態を変更することにより、例えば
図7に示すように、波形状にしてもよい。
波形状としては、
図7(a)のような直線の波形状と、
図7(b)のような曲線の波形状が含まれ、一つ一つの波の大きさは、必ずしも全て同じでなくともよい
このようにすることで、折り畳まれたトイレクリーナーSの重なりしろがわかりやすくなるとともに、捲り部1の端部をよりつまみやすくなる。
なお、捲り部1の端部の形状は、
図7(a)、(b)に示したような波形状に限られず、他の形状としてもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、捲り部1に着色を施すものとしたが、これに限られず、
図8に示すように、ドット柄等の模様を入れるようにしてもよい。
このようにすることで、色の識別力が強くない使用者であっても、折り畳まれたトイレクリーナーSの重なりしろがわかりやすくなる。
また、
図8に示すような着色による模様に限られず、エンボスによる模様であってもよく、この場合、着色の工程を省略することができるとともに、触感の違いによってもトイレクリーナーSの重なりしろを確認することができるようになる。
【0057】
また、
図1においては、捲り部1を折り返さない場合につき図示したが、これに限られず、
図9に示すように、捲り部1を更に折り返すようにしても構わない。
このようにすることで、捲り部1がトイレクリーナーSの中でも特に厚みを有するようになるため、折り畳まれたトイレクリーナーSの重なりしろがわかりやすくなるとともに、捲り部1をつまみやすくなり、シートを広げやすくなる。
なお、捲り部1を折り返す向きとしては、
図9に示すような外向きへの折り返しに限られず、内向きへの折り返しであっても構わないが、外向きへの折り返しの方がより捲り部1をつまみやすくなるため、好ましい。
また、捲り部1と他の部分の厚さの違いによって捲り部1を認識できる場合、
図9に示すような着色は施されていなくても構わない。
【0058】
また、本実施形態においては、トイレクリーナーSは2つ折りに折り畳まれて収納されるものとしたが、これに限られず、折り部Vと対向する縁部に捲り部1を備えていれば、4つ折り又は8つ折りに折り畳んで収納するものとしてもよい。
また、本実施形態においては、トイレクリーナーSの一端部の縁部にのみ捲り部1を設ける場合につき図示したが、これに限られず、両端部の縁部に捲り部1を設けるようにしてもよい。
なお、このとき各捲り部1に施す着色、模様、及び縁部の形状の変更はそれぞれ異なるものとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0059】
S トイレクリーナー(清掃シート)
V 折り部
1 捲り部